C A N C ER 5 (1996), p. 23-26 23
インドネシアにおけるノコギリガザミ漁の漁具と漁法
渡遺精一 ・
Suli stiono・横田賢史・伏屋玲子
ノ コ ギ リ ガ ザ ミ Scyllaspp は ワ タ リ ガ ニ 科 (Portunidae) に属し,ハワイ,日本,東南アジア, ニュージーランド,オ ーストラ リア,イ ンド,マ ダガスカル島, アフ リカ東岸 ,南 岸 に 広 く 分布 し ている (Sakai. 1976; Cowan. 1984). ノ コ ギ リガ ザ ミ は m u d crab あ る い は m angrove crab といわ れるようにマングローフf或や河口域に形成される 泥底の汽水域を生息場所とする. ノコギ リガザミ は東南アジアをはじめ多くの国々で漁獲されてい る大きな経済価値を持つ重要な水産資源で、ある . インドネシアにおいても重要な水産資源としてカ リマンタン( ボルネオ) ,ス マ トラ, ジャワ,イ リアンジャヤ( ニュー ギニア ) など多くの 地 械で i魚、獲され,ま た研 究 も 進 ん でいる (K asri. 1991; Soim . 1995). ノコギ リガザミの分類、については, Estampador (1949) が フ ィ リ ピ ン 産 の 標 本 を も と に 甲 殻 や ハ サミの色彩,前節、突起,生息場所などの違いから S. serγata, S. serrata var. taramωnosain. S. oceanica. S. tr仰 quebaricaの3 種 1 亜 種に区別した. Serene(1952) はEstam pador とH 様 の 凡 解 を 示 し た が Step henson and C am p bell (1960) は オ ー ス ト ラ リ ア 産 の 標 本 に つ い て 検 討 し たtilt果 S.serrata一 種 のみに統ー した. このようにノコギリガザミの分 類、はいまだ混乱している( 伏J t ; : . 減退, 1995) が,
ノコギリガザミの遺伝的特性,形態の特徴からみ
てScylla属は 三 つのタイプに分けることができる
(F山 eya and Watanabe. in press) .
ノコギリガザミはマングローブ
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或や河口J
点など の汽水域に生息するた め, マングローブ林のI
I¥'Jの 人り組んだクリークや土手沿いに発達する泌氏なSeii chi W ATANAflE, SULlSTIONO, M asashi YOKOTA.
Reik o F USEiA: The fi shing gears and m ethods of the日111d crab in Indonesia
どのごく浅い水域の特性に対
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したさまざまな漁 具 ,.
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魚、法で漁獲されている .ここでは,インドネシアにおけるノコギリガザ ミ漁の漁具と潟、
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去を紹介し,ノコギリガザミの資 源 の 現 状 とその維持について述べる.素 手 漁 法 (H and fishing: m enggllnakan tangan) これはも っともシンプルな漁法で,カニの穴に 直接手を突っ込んで、素手で、カニをつかみ 出す 方 法 である . ノコギリガザミは強大なはさみを持 って いるので大変危険な方法である . ハサミの破壊プJ はプラスチック製のボー ルペンを瞬時に して粉々 に砕くほどすさまじい . それ故,注意 し な け れ ば {壬
1
えをすることになる .鈎 棒 漁 法 (H ook stick fi shing: galah berpancing) これもシンプルな漁法で,針金の鈎をつけた竹 製 の 様 を ノ コ ギ リガザミの穴に差し込み鈎に引っ かけてカニを引きずり
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す 漁 法 ( 図 1) でKara wang, SlIrabaya などで行われている .カ ン テ ラ 漁 法 (Lantern or f1 ashlight fishin g: Oncor) この漁j去は夜
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¥ljにライト (ふつうの懐中iE
灯や カンテラ ) を手に持ちマングローフJ或やi"J
口域, あるいは養剤池の周りを照らして歩きノコギリカ 図1. 鈎棒による漁獲法. 竹竿の先につけた鈎で カ二をひ っか ける.24
インドネシアにおけるノコギリガザミi
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,((I,! ザミを発見したら手網ですくい取るか,鈎のついた竿で押 さえて 漁獲する. こ のためノコギ リガザ ミがよく見え る浅い場所でしか漁獲す ることはで きない .
釣り漁法 (Rod fi shi ng: Pancin耳)
釣 竿 と 餌 お よ び 手 綱 を 用 い る 漁 法 で あ る . Karawangでは竹を縦に告IJってキ111く
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J ったl 120cm ぐらいの長さの竿に150cmほどの糸をつけ,その 先端に針金で輸を取り 十l
け, その輸に官Jf をつける 間lj1なi
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) が使われ ている . 針 金の輸に は ベ ン ケ イ カ ニ 煩 (,veoetises品川laな と つ の 死 骸 を1) : [ ,ずつ餌としてつける. 針金の輸の 一端がは ずれるようになっており,カニの片方の側部から もう ーブJの1WJ部へと貫通するように針金を通し , 輸を閉じる. 餌とするカニが十分にないときには カニの胸lも利用 し数本を串刺しにして使用する . 20本ぐらいの竿を 用意し,土手に沿 って10 - 2 0 mI
II-J隔で仕掛けを投入する. 竿の手元は土手につき これらの竿を )11(t需 にみて 回り竿先が揺れ ていればゆ っ くりと竿 を上げ餌にとりついているノコギ リガザミを手綱 ですくい取る. 図2 . 釣りによる漁獲法. 竹製の釣竿 と糸の先に は餌と するカニ が取り付け られる. 篭漁法 (Trap: W a d o n g) 中 部 ジ ャ ワ の イ ン ド 洋 側 の Ci lacalコにある Segara A nakanラグー ンや Bali 島なと多くの 地域 で竹製の篭 (閃3) を 用いてノ コギ リガザミを漁 獲している (波法 .Suli stiono, 1993) 竹を縦に 平たく削 ったものを間隔をあけ並べ怖状あるいは 円筒状にし,向. 端にカエシをつける. 篭の中に併 をいれて小舟に2 0 - 3 0個積み込みマングローブ域 や河口域に設置する. 一晩放同し,ノコギリガザ ミが餌に引き笥せられ篭に人 ったところを次の 明 に引き上げる. トラ ップ漁法 (T rap: Pintur) 縦に訓 って削 った竹で、直径50cmほどの円形の枠 を作り そこに綱地を張 った点、共 (岡4) を用いて 行し" C ilacapのScga ra A n akan ラグーンをはじ め名地 で、行われている漁法である. 漁具を沈める ための金属の重し( 鉄製) と , カニを引き ?寄せる 合を 見計 らって漁具を引き上げ る. このリフトネ ッ トを月れ、ればややi架いところでも漁獲を行うこ とが可能である. トラ ップ漁法 (T rap: D ak kang) PinturとIr
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係法で,竹でIIJ )
彩の枠をh
り綱地を張り,これに A :II'1 に俸を II てた i.((I,!! (同 5 ) を用いる 網地の中には仰を仕掛け俸を水氏 に突き刺し, しばらく放 同 し併に誘づ │されて集ま ったノコギ リガザ ミを 捕獲す る. さで網漁法 (Lift net: A nco) 十字に剤│んだ竹の絡に四ffJの網を取り付け,四 図3 . 篭による漁獲法. 竹製の篭に餌を入 れて力 こが入ったところを 引き上げる渡遺精一 .Sulistiono・横田賢史 ・伏屋玲子
25
隅 に竹のブームをつけて 一点でまとめ長 い竹竿 で 上げ下げする漁具( 図6
) で,魚類やエビをおも にねらうがノコギ リガザミも混獲される. 綱をし ばらく水中に浸けておき魚やエビが入 った頃合を「ク
図4. トラップによる漁獲法. 円形の枠に網地を張 っ た漁具で鉄製の錘をつけてある . 中央に魚など の餌をつける. 水深がかなりあ って も漁獲可能 である. 図5 . トラ ップによる漁獲法. 水路の底に俸を突き刺 して漁獲する . 浅いところで使用される. みて引き上げる. 多くの地方で行われている.刺網漁法 (C rab gil lnet: Jaring Kepiting) ナイロンモノフィラメント製の網地で目合いが 15cm,立 ち が1.5 mぐらいの 刺 網 (図 7) を 使 用 し て ノ コ ギ リ ガ ザ ミ を 漁 獲 す る . Ci lacap の 図6. さで網による漁獲法. 網を上げ下げ して移 動してきたカニを捕獲する .
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図7. 車1 ] 網による漁獲法. 海底に仕掛けて移動し てきたカ ニを網に絡ませて捕獲する.26 イントネシアにおけるノコギリガザミ漁の漁只ーと漁il Segara A n a k an ラグーン においては 束悦凋は2 5 mぐ らいで lユニットにな って おり,通常4ユニット の網をつなげ,底から立ち上がるように網を設置 し ノ コ ギ リ ガ ザ ミ を j魚j陛ーする ( A ri moto et al. 1994 ) . 刺 網 (3 枚 網 ) 漁 法 (Triple- w a ll ed trammel net目Jar in g) ナイロンモノフィラメント製の網地を 3枚合わ せた網を使用し,おもにクルマエビ類や魚類を漁
挫する. C il aca pのSega ra A n aka n ラグーンにお
いては網の外似IJの 日 合 い が14cm内側 の 目 合 い が 4 cm,立ちが1.5 mぐらいの刺網である (Arim oto et al. 1994) . この漁法によ ってノコギ リガザミも 混獲される. 漁獲されたノコギリガザミは可. いに傷つけるこ とのないように甜脚と歩胸lをさご榔子の繊維で縛 られ,地域ごとにある集積所 に集められ買い取ら れ/1 ¥尚 される. 漁獲物の 一部は竹製のケージに入 れられ誌去をされた後 1IJ1¥日lされ る. ノコギ リガザミはこのようにさまざまな治、法で 漁狼されているが,その資源泣の評価は十分に行 わ れ て い る と は い い が た い (Sul ist iono et al.,
1994) . 遺伝学的には少な くとも 3つ の タ イ プ が 存在するので,これらを別々に管理する必裂があ り, タイプごとの資源調査が求められよう. ノコ ギリガザミの成長はかなり速いが過伎の漁獲を行 えば資 源が枯渇する可能性があ る また,ノコギ リガザミは沿作のごく限 られた環境で生活してい ること か ら,このような環境の維持はこの 漁業 を 維持するうえで最も重要な要因であり,環境が破 壊されたならばノコ ギリガザ ミそのものの 消失へ つながるであろう .
文 献
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