第3章
食品表示に関する法律の解説
食品表示に関係する法律の概要や食品表示を行う
際の疑問点に対するQ&Aを掲載しています。
1 関係する法律の概要
食品表示制度は、食品表示法、景品表示法、計量法、食品衛生法、健康増進法、医薬品医療機器等 法、米トレーサビリティ法等から成り立っています。 法律の名称 表示の目的 対象食品 表示義務事項 食品表示法 ・食品を摂取する際の安 全性 の確保 ・一般消費者の自主的か つ合理的な 食品選択 の機会の確保 食品関連事業者等が販売 する加工食品、生鮮食品、 添加物(設備を設けて飲 食させる場合を除く) 生鮮食品については、 11 ~ 13 ページ参照 加工食品については、 14 ~ 19 ページ参照 食品衛生法 飲食による衛生上の危害発生の防止 (器具、容器包装)- - 不当景品類及び不当表示 防止法(景品表示法) 虚偽、誇大な表示の禁止 - - 計量法 内容量の表示 容器包装で密封された表記義務商品 ①内容量②表記者の氏名または 名称および住所 健康増進法 健康の保持増進の効果等について虚偽誇大広告等 の禁止 販売に供する食品 - 医薬品、医療機器等の品 質、有効性及び安全性の 確保等に関する法律 食品に対する医薬品的な 効能効果の表示の禁止 容器包装に入れられた加工食品及びその広告 - 米穀等の取引等に係る 情報の記録及び産地情 報の伝達に関する法律 ( 米トレーサビリティ法 ) 食品事故時の流通ルート の特定および消費者の利 益の増進 一般消費者に提供・販売 する米・米加工品 産地情報1 関 係 す る 法 律 の 概 要
(1)法律の概要
1 関 係 す る 法 律 の 概 要 第3章
(2)行政処分および罰則
違反表示を行った業者は、次のような行政処分および罰則を受けることになります。①食品表示法
②食品衛生法
③景品表示法
指示に従わない場合 措置命令に 従わない場合 指示に従わない場合 命令に従わない場合 命令に従わない場合 表示事項を表示せずまたは遵守事項 を遵守しなかった場合 県知事による、営業許可の取消、営業の禁止・停止 個人:200 万円以下の罰金または2年以下の懲役 法人:1億円以下の罰金 食品を摂取する際の安全性に重要な 影響を及ぼす事項について、食品表 示基準に従った表示をしない場合 立入検査等を 拒んだとき 消費者庁長官、農 林水産大臣または 県知事による指示 消費者庁長官または県知事による「虚偽・誇大な表示」に対する措置命令 300 万円以下の罰金または2年以下の懲役(景品表示法第36条第1項) 消費者庁長官による課徴金納付命令 緊急の必要性 原産地の 虚偽表示 表示違反 消費者庁長官または 県知事による命令 県知事による回収等命令消費者庁長官または 個人:1年以下 の 懲 役 ま た は 100万円以下の 罰金、法人:1 億円以下の罰金 個人:2年以下 の 懲 役 ま た は 200万円以下の 罰金、法人:1 億円以下の罰金 個人:3年以下の 懲役または300万 円以下の罰金また は併科、法人:3 億円以下の罰金 個人:2年以下の 懲役または200万 円以下の罰金また は併科、法人:1 億円以下の罰金 50万円 以下の罰金1 関係する法律の概要
④計量法
⑥医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
200 万円以下の罰金または2年以下の懲役 勧告に従わない場合 勧告に従わない場合 命令に従わない場合 命令に従わない場合 厚生労働大臣による命令 誇大表示関係:100 万円以下の罰金 または6月以下の懲役 50 万円以下の罰金⑤健康増進法
厚生労働大臣による勧告 県知事による勧告⑦米トレーサビリティ法
命令に従わない場合 50 万円以下の罰金 勧告に従わない場合 農林水産大臣または県知事による命令 農林水産大臣または県知事による 「一般消費者に産地を伝達するために必要な措置を講ずべき旨」の勧告 県知事による公表、命令2 関 係 す る 法 律 の 解 説 第3章 JAS規格の制度が任意の制度であるため、これだけでは消費者保護に十分でないことから、昭和 45 年にJAS法を改正して導入されたのが品質表示基準の制度です。これは、消費者の経済的利益 を守るために、JASマークを付けていると否とにかかわらず、表示の適正化を図る必要がある品目 については、名称、原材料名、内容量等消費者が商品を選択する際に必要な事項の表示を事業者に義 務づけるというものです。 食品表示法の創設により、食品衛生法、JAS法、健康増進法の3法に定められていた58本の表 示基準が統合され、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)が定められました。
食品表示基準
食品表示については、これまで一般的なルールを定めている法律として、食品衛生法、JAS法、健康増進 法の3法がありました。しかし、目的が異なる3つの法律でそれぞれ食品の表示のルールが定められていた ため、制度が複雑でわかりにくいものになっていました。 そこで、食品の表示に関する包括的かつ一元的な制度を創設するものとして、食品表示法(平成25年 法律第70号)が策定されました。法律の目的が統一されたことにより、整合性の取れたルールの策定が可 能となったことから、消費者、事業者の双方にとって分かりやすい表示制度の実現が可能となりました。 食品関連事業者等(製造者、加工者、輸入者、販売者等)が、加工食品、生鮮食品または添加物を販売す る場合について、表示を義務づける食品表示基準が制定されています。2 関 係 す る 法 律 の 解 説
(1)食品表示法
2 関係する法律の解説
(2)食品衛生法
食品衛生法は、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずる ことにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図ることを目 的とし、不良な食品の消費により食中毒や感染症その他の事故が生じないよう、食品、食品添加物の 基準等を定めています。規格基準
○食品および添加物の成分規格 ○製造、使用、保存等の基準 《大臣告示》食品監視と衛生管理
○立入検査、収去、検査命令 ○食品衛生監視員(検疫所で は輸入食品監視、保健所で は営業者に対する監視指導 および国内流通品の監視) ○ HACCP(総合衛生管理製 造過程)の承認制度 ○食品衛生管理者、食品衛生 責任者、食品衛生推進員○飲食に起因する
健康被害の防止
○国民の健康の保護
営業許可
施設基準
管理運営基準
2 関 係 す る 法 律 の 解 説 第3章 ア 目的 消費者を惑わす過大な景品付き販売や、誇大な広告、不当な表示を規制し、公正な競争を確保し、 消費者の利益を保護することを目的としています。 イ 法の特徴 他の法令と異なり、特定の表示の義務づけはありません。また、書いてはいけないことも細かく 定められてはいません。一般消費者が見たときに、事実に反して優良または有利誤認するような表 示を禁止しています。
①景品表示法の概要
ア 優良誤認・・・品質、規格その他の内容についての不当表示 (ア) 実際のものよりも著しく優良であると示す表示 (例)「バターをたっぷり練り込んだ」と表示しているがバターを使っていなかった。 (イ) 事実に相違して競争事業者のものよりも著しく優良であると示す表示 (例)「合成保存料不使用は当社だけ」と表示しているが実際は他社でも同様だった。 (ウ)合理的な根拠がない効果・性能の表示 (例)食事制限することなく痩せられるかのように表示しているが、裏付けとなる合理的な根 拠を示す資料はなかった。 イ 有利誤認・・・価格その他の取引条件についての不当表示 (ア)実際のものよりも著しく有利であると誤認される表示 (例)「キャンペーン期間につき増量」と表示してあるが通常の内容と同じだった。 (イ)競争事業者のものよりも著しく有利であると誤認される表示 (例)「他社のどの商品よりもお得」と表示しているが実際は他社とかわりなかった。 ウ 商品の内容等が一般消費者に誤認されるおそれがあるとして内閣総理大臣が指定する不当表示 (平成 16 年 12 月現在6つが指定。このうち、食品に関するものは次の2つ。) (ア)無果汁の清涼飲料水等についての表示 果実の名称等を用いた無果汁の清涼飲料水について、無果汁である旨が明瞭に記載されて いない表示 等 (イ)商品の原産国に関する不当な表示 原産国の判別が困難な表示等 緑茶や紅茶については荒茶の製造の行われた国が原産国となります。 日本茶の茶葉と外国産の茶葉をブレンドした場合の原産国は、日本および当該外国となります。 原産国が二カ国以上になる場合は、配合量の多い順に表示することになります。②不当表示の種類
景品表示法では特定の表示の義務づけはありませんが、様々な事業者団体が自主的に表示について のルール(公正競争規約)を定めています。規約では必要な表示事項や特定事項の表示の基準、特定 用語の表示の禁止などが定められており、規約の参加事業者の商品で、規約に従い適正な表示をして いると認められる商品について「公正マーク」をつけることができます。③公正競争規約
(3)景品表示法
2 関係する法律の解説
ア 目的 第1条では、「この法律は、計量の基準を定め、適正な計量の実施を確保し、もって経済の発展 および文化の向上に寄与することを目的とする。」と規定しています。 イ 用語の定義 第2条では、この法律での「計量」、「計算単位」「取引」、「証明」、「計量器」、「特定計量器」、「標 準物質」、「計量器の校正」、「標準物質の値付け」等の用語について定義しています。 ウ 適正な計量の実施 第 10 条では、「物象の状態の量について、法定計量単位により取引または証明における計量を する者は、正確にその物象の状態の量を計量するように努めなければならない。」と計量者の義務 を定めています。 エ 特定商品の計量 第 12 条では、政令(特定商品の販売に係る計量に関する政令)で定める商品(「特定商品」と いう。)の販売の事業を行う者は、その特定物象量(特定商品ごとに政令で定める物象の状態の量 を言う。)を法定計量単位により示して販売するときは、政令で定める誤差(「量目公差」という。) を超えないように、その特定物象量の計量をしなければならないことを定めています。 オ 密封した特定商品に係る特定物象量(内容量)を表記すべき商品 第 13 条では、政令第5条で定める特定商品(33 ページに例示記載された食品等)の販売の事 業を行う者は、その特定物象量に関し密封をするとき、量目公差を超えないようにその特定物象 量の計量を行い、その容器または包装に内容量を表記するよう定めています。また、その際は表 記する者の氏名または名称および住所を付記すべきことを定めています。計量法の概要
(4)計量法
(5)健康増進法
この法律に基づく制度として、次のようなものがあります。 特別用途食品は、健康増 進法第 26条に規定された 食品で、消費者庁長官の許 可が必要です。①特別用途食品制度
(消費者庁の審査必要) 妊産婦、授乳婦用粉乳 病 者 用 食 品 (許可基準型) ・低たんぱく質 ・アレルゲン除去食品 ・無乳糖食品 ・総合栄養食品 (個別評価型) 特定用途食品等について 特定用途食品2 関 係 す る 法 律 の 解 説 第3章 健康保持増進効果等に関する広告等について、「著しく事実に相違する」または「著しく人を誤認さ せる」ような表示はしてはいけません。例えば、以下のような表示は、表示内容のみで事実と相違す るまたは人を誤認させると判断できるため、規制の対象となります。 ア 医療・薬事・健康増進等に関連する事務を所掌する行政機関等による認証、推薦等を取得してい ることを表示していても、そのような制度が実在しない場合や、当該認証等の制度の趣旨とは異 なる趣旨で表示することにより、健康保持増進効果等が認証等を受けたものと誤認させる場合 イ 医師や歯科医師の診断・治療によらなければ一般的に治癒が期待できない疾患について、医師ま たは歯科医師の診断、治療等によることなく治癒できるかのような表現を用いている場合 ウ 最上級(最高、絶対、抜群)などの表現を用いている場合 エ 断定的な表現にはよらずに、伝聞、他者の表現等を通じて健康の保持推進の効果がある可能性を 表示している場合
②虚偽誇大広告等の禁止
表 示 例 考 え 方 厚生労働省から輸入許 可を受けたダイエット 用健康食品です。 食品の輸入に当たって、厚生労働省が個別の許可を行う制度は設け られていないが、こうした表示をすることにより、厚生労働省が当該 健康食品の効果を個別に認証していると認識されて、健康の保持増進 の効果があることが確認されていると誤認される。 表 示 例 考 え 方 医者に行かずとも ガンが治る! 通常、がんのような重篤な疾病は、医師による診断および治療が必要 となるが、こうした表示は、医師による診断治療がなくとも、当該疾病 が治癒することができると誤認を与えるため、誇大表示に該当する。 表 示 例 考 え 方 最高のダイエット 食品 通常、健康の保持増進の効果は、個々人の健康状態や生活習慣等多 くの要因により異なっており、現存する製品の中で最高の効果を発揮 することは立証できないため、最上級の表現を用いる広告等は虚偽表 示に該当する。 表 示 例 考 え 方 ○○に効くと言われ ています。 「××は、○○にいいと言われています。」等と伝達調により表示し、世間の噂・評判・伝承・口コミ・学説等があること等をもって、健康 の保持増進の効果がある旨を強調し、または暗示するものについても、 例えば、○○の内容が医師または歯科医師の診断、治療等によらなけ れば一般的に治癒できない疾患に係るものである場合には、当該食品 によって当該疾病を治癒することができると誤認を与えることとなる ため、誇大表示に該当する。 また、「言われています」という表現を用いることにより「誰が言っ ているのか」等を敢えて明示せず、曖昧な表現により反証の余地を最 小化したとしても、○○の内容が社会通念に照らして事実と認め得な い場合には虚偽表示に該当する。 ※厚生労働省通知 「食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止および 広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)に係る留意事項について」より2 関係する法律の解説
(6)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律では、「医薬品的な効能効果」を 「標榜する」ものは、実際には効果があるかどうかにかかわらず、「医薬品」としてみなされます。 「医薬品的な効能効果」とは、病気の治療または予防を目的とする効能効果および身体の機能の一般 的増強、増進を主たる目的とする効能効果のことをいいます。 「標榜」には、食品の容器に直接表示する場合のほか、次のような方法も含まれます。 ア.容器、包装、添付文書等の表示物 イ.チラシ、パンフレット ウ.テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の広告 エ.代理店、販売店に教育用と称して配付される商品説明資料 オ.使用経験者の感謝文、体験談集 カ.店内広告 ※キ.店頭、説明会、相談会等での口頭で行われる演述 ※ク.小冊子、書籍 ※特定の商品名を示していない場合でも、商品と同一売場に置いたり、特定の商品の購入申込書とと もに送付したりすれば、広告とみなされます。 ア 疾病の治療または予防を目的とする表現 ・糖尿病、高血圧、動脈硬化の人に ・胃、十二指腸潰瘍の予防に ・便秘の解消に ・ガン予防に など イ 身体の組織機能を増強、増進する表現 ・疲労回復 ・強精強壮 ・老化防止 ・血液浄化 など ウ 疾病等による栄養素の欠乏時等に使用することを特定した表現 ・病中病後の体力低下時の栄養補給に ・肉体疲労時の栄養補給に など エ 「頭髪」、「目」、「皮膚」等の特定部位への「栄養補給」等を標榜し、 その部位の改善、増強等ができる表現 ・目の健康に役立つ○○○を配合しています。 など医薬品的な効能効果と判断される事例
(7)米トレーサビリティ法
米トレーサビリティ法では、お米、米加工品に問題が発生した際に流通ルートを速やかに特定するた め、生産から販売・提供までの各段階を通じ、取引等の記録を作成・保存します。また、お米の産地情報を 取引先や消費者に伝達します。2 関 係 す る 法 律 の 解 説 第3章