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地震動予測手法の違いが推定震度分布に及ぼす影響の要因分析

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Academic year: 2021

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Title

地震動予測手法の違いが推定震度分布に及ぼす影響の要因

分析( 本文(Fulltext) )

Author(s)

能島, 暢呂

Citation

[土木学会論文集A1(構造・地震工学)] vol.[68] no.[4]

p.[I_31]-[I_39]

Issue Date

2012

Rights

Japan Society of Civil Engineers(公益社団法人土木学会)

Version

出版社版 (publisher version) postprint

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/53189

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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地震動予測手法の違いが

推定震度分布に及ぼす影響の要因分析

能島 暢呂

1 1正会員 岐阜大学教授 工学部社会基盤工学科(〒501-1193 岐阜市柳戸1-1) E-mail:[email protected] 「全国地震動予測地図」の「震源断層を特定した地震動予測地図」と「確率論的地震動予測地図」では, 工学的基盤における強震動予測手法としてそれぞれ強震動シミュレーション手法による「詳細法」と距離 減衰式による「簡便法」が適用されている.本研究では,日本全国の主要活断層帯に発生する地震158ケ ースを対象として,両手法による推定震度分布の面積比較を行って整合性を検証した.さらに,揺れの広 がりの違いを震度5強以上,6弱以上,6強以上の面積比(詳細法÷簡便法)で表し,その要因分析を行っ た.モーメントマグニチュード,深部地盤モデルによる深部地盤深さ(せん断波速度700, 1700, 2700m/sの 各上面深度),平均せん断波速度を説明変数とした重回帰分析により,面積比の予測式を構築した. Key Words : seismic hazard map, strong motion prediction, detailed method, conventional method,

isoseismal area, moment magnitude, deep sedimentary layers

1. はじめに 地震調査研究推進本部調査委員会は,「全国地震 動予測地図」として「震源断層を特定した地震動予 測地図」と「確率論的地震動予測地図」を作成して おり1), 2),前者では強震動シミュレーション手法に よる「詳細法」が,後者では距離減衰式による「簡 便法」が適用されている.これら2種類の地震動予 測地図は,地震防災対策への活用という面では目指 すところは同一であり,両地図の融合を図って共通 の手法による地震ハザード評価を目指し,精度向上 を図ることは,将来の重要な課題とされている1), 3) 「確率論的地震動予測地図」に詳細法を適用するこ とは,その有力な方向性として検討されている3) しかしながら,全面的に詳細法を取り入れることは, 震源不特定地震の扱いや,震源断層のモデル化や地 盤構造のばらつき,計算負荷等の面から困難である. とはいえ,簡便法と詳細法の整合性を検証すること は,両地図の融合に先立って実施しておくべき重要 課題であり,簡便法に換えて詳細法を取り入れた場 合に想定される変化を検討しておくことが重要であ る. 詳細法による最大速度の推定にあたっては,簡便 法で用いられている最大速度の距離減衰式の予測値 の中央値±標準偏差の範囲や実地震での観測値から 大きく外れていないことが確認されている4).また, 詳細法と簡便法の震度分布の面的な比較を通じて, 整合性・妥当性の確認や各手法の特徴抽出といった 検証がなされている4).しかしそこでは,一つ一つ の活断層に限定して個別的に比較が行われるのが通 常であり,日本全国の活断層を対象とした網羅的な 整合性に関する検証は行われていない.そこで本研 究では,日本全国の主要活断層帯のすべてを対象と して,両手法により推定された推定震度分布の広が りを一定の震度以上の面積で比較し,網羅的な検証 を行うことにより,揺れの広がりの違いについて検 証し,その影響要因について分析を行うものである. 2. 使用データと揺れの面積の比較方法 本研究では,揺れの広がりを表す近似的な面積比 較方法として,所定の震度レベル(震度5強,6弱, 6強)以上となる震度曝露メッシュ数の集計を行う. 震度曝露メッシュ数とは「所定の震度レベルに曝さ れるメッシュ数」である.1メッシュあたりの面積 は緯度に依存するので厳密な面積比較にはならない が,地震ごとの強震域の比較においては,ほぼ等価 な結果を得ることができる.集計に用いたデータは, 2010年度版全国地震動予測地図に関して(独)防災 科学技術研究所の「地震ハザードステーションJ-SHIS5)」で公開されている4分の1地域メッシュ(約 250m四方)データである.検証を行う対象は,主 要活断層帯全178断層のうち詳細法が適用されてい る158断層とする. 主要活断層帯を対象とした地震動予測地図の作成 領域は,断層帯ごとに個別に設定されている.「詳 細法」では,断層端部からの水平距離が約50kmの

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(a) 詳細法による震度分布(ケース 1) (b) 簡便法による震度分布 (c) 簡便法による震度 6 弱の超過確率 図-1 詳細法と簡便法による震度分布および条件付超過確率地図(養老-桑名-四日市断層帯)5) 表-1 震度曝露メッシュ数の集計方法 ①詳細法全ケース 詳細法による複数ケースの震度分 布データをもとに集計した値 ②詳細法平均 詳細法の複数ケースに関する集計 結果を断層ごとに平均した値 ③簡便法期待値 距離減衰式に基づく推定震度の中 央値の震度分布データをもとに集 計した値 ④簡便法平滑化 距 離 減 衰 式 に 基 づ く 推 定 震 度 に =0.45 のばらつきを考慮した値 ⑤超過確率期待値 所定の震度以上となる確率で重み 付け集計した値 表-2 養老-桑名-四日市断層帯に関する震度曝露メッシュ 数の集計(4 分の 1 地域メッシュ数) 集計方法 5弱以上 5強以上 6弱以上 6強以上 ①詳細法全ケース Case 1 101400 68145 38055 15696 ①詳細法全ケース Case 2 102216 70494 40726 17795 ①詳細法全ケース Case 3 99167 65680 38365 16874 ①詳細法全ケース Case 4 99082 65610 37394 16981 ①詳細法全ケース Case 5 98724 64543 36160 16571 ①詳細法全ケース Case 6 96249 63261 34264 15955 ②詳細法平均 99473 66289 37494 16645 ③簡便法期待値 219581 123250 61151 26424 ④簡便法平滑化 246828 137707 71681 31950 ⑤超過確率期待値 232926 127401 64879 27798 範囲を含む矩形領域(M7程度で震度5強をおおむね 包含)である.これに対して「簡便法」では,断層 端部からの水平距離が約80kmの範囲を含む矩形領 域(震度5弱をおおむね包含)である. 「詳細法」では断層パラメータ設定(アスペリテ ィの配置方法や断層破壊開始地点など)の違いが及 ぼす影響を考慮するため,1断層あたり複数ケース のシミュレーションが行われており,延べ512ケー スとなっている.本研究では,まず全ケースに関す る詳細法による地表の推定震度分布データに基づい て震度曝露メッシュ数を集計し(①詳細法全ケー ス),さらに各断層の複数ケースに関する平均値を 集計した(②詳細法平均). 一方,「簡便法」は178断層すべてに適用されて おり,距離減衰式に基づく推定震度の中央値に基づ く地表の推定震度分布データを用いた震度曝露メッ シュ数の集計を行った(③簡便法期待値).また, 実際に観測される震度には,距離減衰式まわりのば らつきが加わるため,その影響も考慮した推計とし て,距離減衰式に基づく推定震度にσ=0.45のばら つき(最大速度の距離減衰式および最大速度から震 度への変換式のばらつきの合成値)6)を考慮した震 度曝露メッシュ数の集計も行った(④簡便法平滑 化).さらに各断層に起因する地震発生を条件とし て,距離減衰式のばらつきを考慮し,各震度レベル の超過確率を算出した条件付超過確率地図も公表さ れている.本研究では,各震度レベルに関する超過 確率によって重み付けした震度曝露メッシュ数も集 計した(⑤超過確率期待値).以上の集計方法を表 -1にまとめた. 3. 震度曝露メッシュ数の集計結果と詳細法・ 簡便法の比較 (1) 養老-桑名-四日市断層帯を対象とした集計 例としてまず,養老-桑名-四日市断層帯に関する データを図-1に示し,集計結果を表-2に示す.なお, 詳細法における震度分布は震度5強の範囲は必ずし も網羅されておらず,震度5弱以上および震度5強以 上における集計結果はやや過小評価となっている可 能性がある. 工学的基盤より浅い地盤構造(表層地盤)による 地震動増幅率の評価に用いられているのは,日本全 国地形・地盤分類250mメッシュマップに基づいて 推定された,地表から深さ30mまでの地盤の平均S 波速度(AVS30)であり,両地図で共通である2) 従って,地表の震度曝露メッシュ数を比較する上で は,表層地盤による地震動増幅率の影響は相殺され, 手法の相違が直接的に表れると考えてよい.

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(2) すべての活断層帯を対象とした集計 次に,すべての活断層帯178断層に4つの集計方法 (②詳細法平均,③簡便法期待値,④簡便法平滑化, ⑤超過確率期待値)を適用して集計を行った.以下 4章までは,紙面制約のため震度6弱以上の集計結果 について示すこととする. 図-2は,⑤超過確率期待値を基準として,③簡便 法期待値,④簡便法平滑化,②詳細法平均を基準化 したものである.横軸の活断層番号は,J-SHISのフ ァイル規約5)で定められた主要活断層帯断層コード (F000101 標津断層帯~F010901 人吉盆地南縁断 層)の順に割り振ったものである(末尾の21断層を 除いてほぼ日本列島の北から南の順となっているが, 詳しくはファイル規約5)を参照されたい).なお詳 細法が適用されていない19断層については表示して いない.全般的に,④簡便法平滑化>⑤超過確率期 待値>③簡便法期待値>②詳細法平均の順に大きな 値をとる傾向にある.④簡便法平滑化と⑤超過確率 期待値による震度6弱以上の揺れが相対的に広くな る理由は,ばらつきを考慮して高震度の出現を確率 論的に見込んでいることによるものである.ばらつ きの処理方法が異なる④簡便法平滑化と⑤超過確率 期待値では,大きな違いは見られないが,④簡便法 平滑化の方が面積を数%程度広く評価していること がわかる. 図-3は,ばらつきを考慮しない③簡便法期待値 (横軸)と②詳細法平均(縦軸)による震度曝露メ ッシュ数を比較したものである(震度5弱以上およ び6強以上については,後出の図-11参照).おおよ そ20000メッシュ以下の領域では,ばらつきが大き いものの,②詳細法平均と③簡便法期待値は大きな 偏りなく分布しており,詳細法による強震動評価が 平均的に距離減衰式の傾向と整合していることを示 唆している.一方,震度曝露メッシュ数がおおよそ 20000メッシュ以上の領域では,③簡便法期待値は ②詳細法平均よりも系統的に大きな値をとっている ことがわかる. 4. 詳細法と簡便法による揺れの広がりの違い の要因分析 (1) モーメントマグニチュードMwに注目した検証 図-3の傾向を分析するため,地震規模を表すモー メントマグニチュードMwに注目して検証する.簡 便法と詳細法の揺れの広がりの違いの要因をより詳 細に検証するために,ここでは震度曝露メッシュ数 を用いて面積比r(②詳細法平均÷③簡便法期待 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 10 0 10 2 10 4 10 6 10 8 11 0 11 2 11 4 11 6 11 8 12 0 12 2 12 4 12 6 12 8 13 0 13 2 13 4 13 6 13 8 14 0 14 2 14 4 14 6 14 8 15 0 15 2 15 4 15 6 15 8 16 0 超 過 確 率 期 待 値 に 対 す る 比 率 活断層番号 超過確率期待値 簡便法期待値 簡便法平滑化 詳細法平均 図-2 「超過確率期待値」の震度曝露メッシュ数で基準化した比較(震度 6 弱以上) 100 1000 10000 100000 1000000 100 1000 10000 100000 1000000 詳 細 法 平 均 簡便法期待値 y = 16106e‐1.48x 0.1 1 10 6 6.2 6.4 6.6 6.8 7 7.2 7.4 7.6 7.8 詳 細 法 平 均 ÷ 簡 便 法 期 待 値 モーメントマグニチュードMw 相関係数:‐0.494 図-3 震度曝露メッシュ数の比較(震度 6 弱以上) 図-4 面積比 r(詳細法÷簡便法)とMwの関係 (震度 6 弱以上)

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値)を定義する.図-4は,Mw(横軸)と詳細法平 均の簡便法期待値に対する震度6弱以上の面積比r (縦軸)の関係を示したものである.Mw≧6.9では 詳細法が簡便法を上回る断層はなく,Mwが大きい ほど詳細法による面積は簡便法による面積より狭く 評価される傾向にあり,弱い負の相関(相関係数 R=-0.494)を示している. 簡便法では,断層の不均質すべりの影響を考慮せ ず,断層全体を均質なものとして捉え,断層最短距 離をパラメータとする距離減衰特性に基づいて地震 動強度が評価されている.このため工学的基盤上で は断層周辺にほぼ一様に強震域が広がり,図-1(b)に もその傾向が現れている.これに対して詳細法によ る強震域は,アスペリティ周辺,フォワード・ディ レクティビティの方向,揺れやすい地盤が主体とな り,揺れの強弱のコントラストが明確である.その 傾向は図-1(a)にも現れている.Mwが大きい場合, こうした効果がより顕著となり,詳細法に対して簡 便法が過大評価となると推察される. 逆にMwが小さい場合では,簡便法では(少なく とも距離減衰式の中央値レベルでは)強震域が現れ ない.これに対して詳細法では,アスペリティ近傍 やディレクティビティの影響で局所的に強震域が現 れる.図-2でMwが小さい領域で,詳細法が簡便法 を大幅に上回る断層があることの理由としては,こ の点が挙げられる.また,Mwが小さい場合でも詳 細法が簡便法を大きく下回っている断層も多い.ア スペリティ,ディレクティビティ,軟弱地盤などの 位置関係により,強震域が現れなかったことによる と考えられる. 以上,面積比rの傾向をMwによって説明すること を試みたが,図-4のプロットは,図中の左下三角部 分に広くばらついており,Mwに加えて他の影響要 因も考慮する必要があることがわかった. モーメントマグニチュード以外の断層パラメータ として,断層上端深さおよび下端深さと面積比rと の関係を調べたところ,ほぼ無相関であることが確 認された.また,断層タイプ(逆断層,横ずれ断層, 正断層)との関係を調べたところ,明確な傾向は見 出されなかった. (2) 深部地盤の増幅特性に関する既往研究 詳細法では工学的基盤における地震動予測を行う 際に,S波速度3km/s程度の地震基盤以浅の深部地盤 構造における地震波の屈折・反射による増幅効果が 考慮されており,予測された地震動時刻歴に基づい て算定される震度にもその効果が反映されている. 簡便法では距離減衰式により工学的基盤での地震動 予測を行うため,こうした増幅効果については平均 的に見込まれているものの,サイトごとの増幅効果 の違いは考慮されていない. 深部地盤構造は地震動の長周期側の増幅に及ぼす 影響が大きいため,その増幅特性に関しては,工学 的観点から応答スペクトルを対象とした検討例が多 い. 片岡ら7)は,やや長周期地震動を対象とした加速 度応答スペクトル(周期2~20秒,減衰定数1%, 5%)の距離減衰式を構築し,観測点補正値をもと に,日本全国の地点補正倍率を求め,平野ごとに特 徴的な増幅特性が地下構造と関連付けられることを 示した.Day et al. 8)はロサンゼルス地域を対象とし て,3次元地震動シミュレーションに基づいて加速 度応答スペクトル(周期2~10秒)の増幅度と深部 地盤構造との関係を考察し,S波速度1.5km/s層深度 をパラメータとする増幅度予測式を構築した.糸 井・高田9)は,日本全国の地震基盤から工学的基盤 の加速度応答スペクトル(周期0.4~5秒)の深部地 盤増幅率について,深部地盤構造モデルから求めら れるS波速度1.0km/s, 1.5km/s層深度もしくは平均S波 速度(深さ500mおよび1000mまで)を説明変数とす る予測式を提案した.横田ら10)は,日本全国の地点 における長周期地震動の増幅率と深部地盤の一次固 有周期との関係を整理し,深部地盤の一次固有周期 をパラメータに含む距離減衰式を構築して,周期10 秒までに補正効果があることを確認している. このように距離減衰式による応答スペクトル評価 においては,深部地盤の増幅効果を考慮するための 補正法が提案されており,将来的に地震動予測地図 の予測手法が高度化される可能性がある.深部地盤 による震度増分については,応答スペクトルの増幅 特性と震度計算のためのフィルター特性との兼ね合 いで規定されると考えられるが,工学的観点から震 度指標が検討対象とされることは少ない.本研究で は上記の既往研究を参考にして,簡便法と詳細法の 違いを説明する要因として,深部地盤構造による増 幅効果に注目した検討を行う. (3) 深部地盤構造に注目した検証 本 研 究 で は , 「 地 震 ハ ザ ー ド ス テ ー シ ョ ン J-SHIS5)」で公開されている3次メッシュデータの深部 地盤モデルデータ11)を用いた検討を行う.深部地盤 深さD[m]は33種類のS波速度の各層の深さがデータ 化されており,本研究ではこの中から,工学的基盤 相当(VS =600m/s)に近い第8層(VS =700m/s)上面 深度D700[m],中間層として第21層(VS =1700m/s) 上 面 深 度D1700[m] , 地 震 基 盤 面 相 当 の 第 29 層 ( VS =2700m/s)上面深度D2700[m]を用いる.なお,地域 ごとに異なる調査結果に基づくデータベースとなっ ているため,VS = 700, 1700, 2700m/s に相当する層が 全メッシュで定義されているわけではない.そこで 各メッシュでVS =700, 1700, 2700 m/s 以上となる層が 始めて現れる層の深さを採用した.加えて地震基盤 から工学的基盤まで地盤特性の総合的指標としてVS =600 ~ 2700m/s 層 ま で の 平 均 せ ん 断 波 速 度 AveVS [m/s]を用いる. 例とし て大分平野 -由布院断層帯西部周辺のVS =2700m/s層の深度を図-5に示す.ここでDとAveVS は3次メッシュごとに定義される.既往研究におい てはサイトごとの地震動評価を目的として,深部地 盤の増幅効果を1次元的に考え,各サイト直下で評

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価された深部地盤深さパラメータ8),9)や一次固有周 期10)を説明変数とした補正方法が提案されている. 本研究では,強震域の広がりを評価対象とするため, 各断層周辺での傾向を代表しうる固有の値とする必 要がある.そこで試みとして,ある対象範囲内で平 均値をとることとする.その対象範囲については, (i) 詳細法の解析領域全体,(ii) 詳細法の解析領域を 16分割した中央部分の4分の1の領域(図-6参照), (iii) 断層面直上の領域(強震動評価のために定めら れた断層のポリゴンを地上に投影した領域(図-6参 照),ただし横ずれ断層については地表投影された 断層線が通過するメッシュ群),の3種類を検討対 象とし,それぞれの範囲内における平均値を算出し た.次章の分析では(i)~(iii)に関する結果を示すが, 紙面制約のため,本章では(ii)で規定される領域を 対象とした例のみを示すにとどめる. 震度 6 弱以上の面積比 r(詳細法÷簡便法)と深 部地盤深さ D との関係を図-7 に示す.両対数軸上 での回帰直線も示している.すべての層に関して, 図-5 Vs=2700m/s 層の上面深度 図-6 詳細法の解析領域全体,その中央 4 分の 1 の領域 ( 大分平野-由布院断層帯西部付近5) ) および断層直上の領域(背景図は大分平野-由布院 断層帯西部の地震による予測震度分布5) 1000 2000 3000 y = 653573x‐1.836 0.1 1 10 詳 細 法 平 均 ÷ 簡 便 法 期 待 値 平均せん断波速度 (m/s) 相関係数:‐0.346 図-8 面積比r(詳細法÷簡便法,縦軸)と平均せん 断波速度 AveVSとの関係(震度 6 弱以上) y = 0.2212x0.2796 y = 0.1192x0.3126 y = 0.056x0.3561 0.1 1 10 1 10 100 1000 10000 詳 細 法 平 均 ÷ 簡 便 法 期 待 値 各せん断波速度上面の平均深さ (m) Vs=700m/s(相関係数:0.467) Vs=1700m/s(相関係数:0.542) Vs=2700m/s(相関係数:0.511) 図-7 面積比r(詳細法÷簡便法,縦軸)と深部地盤深さ D(横軸)との関係(震度 6 弱以上)

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(a) Mw (b) logD700 (c) logD1700 (d) logD2700 (e) logAveVS

図-9 面積比 log r(詳細法÷簡便法,縦軸)と各要因の関係(震度 6 弱以上) 平 均 深 さ と 面 積 比 r に 弱 い な が ら も 正 の 相 関 (R=0.467~0.542)が認められ,深部地盤深さが深 いほど地震動が大きく増幅されることを示している. 同様に,面積比 r と平均せん断波速度 AveVSとの関 係を図-8 に示す.弱い負の相関(相関係数 R=-0.346)が見られ,対象範囲内の平均せん断波速度 が遅い断層では,詳細法により集計された面積が簡 便法よりも相対的に大きくなる傾向を示している. (4) 移動平均による影響要因の検討 (1)~(3)に示した影響要因について,さらに詳し く検討する.震度6弱以上の面積比rの常用対数log10r と各要因の関係を図-9に示す(以下では対数はすべ て常用対数とし底の10を省略).Mw以外の説明変 数は常用対数をとって表示しており,図中の赤線は 移動平均を示す.面積比logrとMwの関係をみると, 移動平均はほぼ直線的であるものの,若干下に凸の 傾向が見られる. log r と 深 部 地 盤 深 さ D の 常 用 対 数 ( logD700, logD1700,logD2700)について移動平均をみると,深 さが一定以上の深さになるとlog rの値の推移は頭う ちとなる傾向が見られ,移動平均は上に凸の形状を 示す.一方,log rとlogAveVSについては,移動平均 から判断すると,平均せん断速度が一定以上になる と急激に面積比が低下する傾向が見られる. 5. 簡便法による揺れの面積の補正モデル (1) 予測モデル式 詳細法の簡便法に対する面積比rを目的変数,上 記の各要因を説明変数とする重回帰分析を行い,予 測モデル式を構築する.図-9に表示された移動平均 線を見ると,直線的傾向からはずれる部分がある. この傾向を踏まえ,予測モデル式は,式(1)に示すよ うに,まず各説明変数の2次の項まで考慮しておき, 変数減少法を適用して,赤池情報量規準AICが最小 化されるモデル選択を行うこととした. 2 1 2 2 1 700 2 700 2 1 1700 2 1700 2 1 2700 2 2700 2 1 2 log log (log ) log (log ) log (log ) log (log ) w w s s r a b M b M c D c D d D d D e D e D f AveV f AveV            (1) AICは,モデルのデータへの当てはまりの良さ (対数尤度:大きいほど良好)を表す項と,モデル の複雑化に対するペナルティ(パラメータ数:少な いほど良好)を表す項からなる.AICを最小化する モデルを選択すれば,予測精度とシンプルさのバラ ンスがとれた良好なモデルが選択される. (2) 結果と考察 震度5強以上,6弱以上,6強以上の各震度レベル の面積比r(詳細法÷簡便法)について得られた予 測式(1)のモデル係数を表-3に示す.深部地盤パラメ ータの平均化対象範囲を, SA( 詳細法の解析領域 全体), CA( 詳細法の解析領域を16分割した中央 部分の4分の1の領域), FT( 断層面直上の領域) としたすべての結果を表示している.赤池情報量規 準AICが最小化されるモデルは,震度レベルに関わ らずCAとなった.震度レベルが低いほど推定精度 が高い傾向を示し,震度5強以上,6弱以上,6強以 上の順に,常用対数標準偏差は0.107, 0.172, 0.497と なった. 面積比log rの実測値(縦軸)と予測モデル式によ る予測値(横軸)を図-10に示す.1:1線に並行する プロットは95%信頼区間を示す.震度5強以上およ び6弱以上については高い相関(相関係数はそれぞ れR=0.868, 0.829)を示しており,詳細法と簡便法の 揺れの広がりの違いを,式(1)と表-3の予測モデルで かなり説明可能であると考えられる.震度6強以上 については,相関係数R=0.687とあてはまりが悪い. 最後に,距離減衰式そのものに新たなパラメータ を加えることなく,簡便法を用いた予測震度分布の 面積に補正を行うことで,詳細法に整合させた結果 を示す.図-11に示すように,震度5強以上および6 弱以上では,詳細法平均と補正前の簡便法期待値と の相関係数はそれぞれR=0.723, 0.726であったのに対 し,補正後はR=0.929, 0.923となり,詳細法による面 積との整合性が高くなっている.簡便法が詳細法を 大幅に上回った評価となっている部分で補正効果が 大きく,系統的なずれも解消されている. 震度6強以上については,相関係数がR=0.593から 0.807に改善されたものの,1000メッシュを下回る ような小規模の地震を中心に大きなばらつきが残っ ている.こうしたケースでは面積比の値は不安定と なり,図10-(c)に示したように面積比のレンジは広

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くなる.このため低震度レベルよりも補正が困難で あると考えられる.揺れの面積比較を行う場合は, 震度5強以上もしくは6弱以上の方が安定した分析が できるといえる. 6. まとめと今後の課題 本研究で得られた成果を以下に示す. 1) 評価手法の違い(簡便法と詳細法)とばらつき の考慮の有無という 2 つの観点から,4 つの集 計方法(詳細法平均,簡便法期待値,簡便法平 滑化,超過確率期待値)を用いて,主要活断層 帯 158 断層を対象として推定震度分布の面積比 較を行って整合性を検証した.全般的に,簡便 法平滑化>超過確率期待値>簡便法期待値>詳 細法平均の順に大きな値をとる傾向にあること がわかった. 2) 揺れの広がりの違いを一定の震度以上の面積比 (詳細法平均÷簡便法期待値)で表し,モーメ ントマグニチュード,深部地盤モデルによる深 部地盤深さ(せん断波速度 700, 1700, 2700m/s の 各上面深度),平均せん断波速度との関係を検 証した.モーメントマグニチュードは面積比と 負の相関を持ち,深部地盤深さは正の相関,平 均せん断波速度は負の相関を持つことがわかっ た.この結果は,震度評価のプロセスで深部地 盤の増幅効果を導入する必要性があることを示 唆するものである. 3) 上記パラメータの 2 次までの項を説明変数とし た重回帰分析により,面積比の予測式を構築し た.AIC 最小化を基準としたモデル選択の結果, 深部地盤パラメータの平均化対象範囲を,詳細 法の解析領域中央部 4 分の 1 の領域(CA)とした ケースで最良モデルが得られた. 4) 上記予測式を用いて,簡便法による予測面積の 補正を試みたところ,震度 5 強以上および 6 弱 以上については高い補正効果が確認された.一 方,震度 6 強以上については,該当メッシュ数 が少ない小規模地震のケースを中心に比較的大 きなばらつきが残る結果となった. 本研究では,詳細法と簡便法による揺れの面積の 整合化を図る補正式を提案したが,その妥当性につ いては観測データや既往研究による検証を要するも のであり,今後の課題である.個別の地震イベント を対象として直接的に検証する方法としては, (独) 産業技術総合研究所が公開する「地震動マップ即時 推定システム(QuiQuake) 12)」で空間補間された面的 震度分布を用いて,詳細法と簡便法による予測結果, および本研究の方法で補正した結果の4つで比較を 行う方法が考えられる.間接的方法としては,周期 帯ごとに得られた地点補正倍率7)や応答スペクトル の距離減衰式の補正係数13)を,震度指標に影響する 周期帯域で総合化するとともに,断層周辺(強震 域)で面的に総合化する方法が考えられる. 表-3 面積比 log r(詳細法÷簡便法)の予測モデル式(1)の係数 震度レベル 5 強以上 6 弱以上 6 強以上 深部地盤パラメ ータの平均化対 象範囲* SA CA FT SA CA FT SA CA FT a 3.963 -35.834 -8.502 294.095 17.416 3.071 578.764 1.248 0.833 b1 -0.581 -0.569 -0.592 -0.617 -4.490 -0.670 -0.986 -0.955 b2 0.279 -0.073 c1 0.114 0.405 0.724 0.821 0.050 2.146 2.242 0.524 c2 -0.107 -0.194 -0.228 -0.628 -0.652 -0.149 d1 0.696 0.336 0.422 1.235 0.795 1.016 2.464 1.714 1.690 d2 -0.174 -0.098 -0.069 -0.261 -0.187 -0.512 -0.331 -0.295 e1 1.485 0.279 0.321 0.337 4.160 0.451 e2 -0.191 -0.554 f1 -1.133 24.837 7.449 -177.705 -352.359 f2 -4.029 -1.174 26.931 -0.226 -0.186 53.126 AIC -649.02 -697.79 -625.68 -493.52 -548.47 -511.73 -192.62 -208.51 -183.56 R2 (Adjusted) 0.661 0.753 0.633 0.557 0.687 0.620 0.425 0.472 0.378 R 0.813 0.868 0.796 0.746 0.829 0.788 0.652 0.687 0.615 常用対数 標準偏差 0.125 0.107 0.129 0.204 0.172 0.187 0.519 0.497 0.534 * SA=解析領域全体,CA=解析領域全体の 4 分の 1,FT=断層直上

(9)

1000 10000 100000 1000000 1000 10000 100000 1000000 詳 細 法 平 均 簡便法期待値(補正なし・あり) 簡便法期待値(相関係数:0.723) 補正簡便法期待値(相関係数:0.929) (a) 震度 5 強以上 (a) 震度 5 強以上 100 1000 10000 100000 1000000 100 1000 10000 100000 1000000 詳 細 法 平 均 簡便法期待値(補正なし・あり) 簡便法期待値(相関係数:0.726) 補正簡便法期待値(相関係数:0.923) (b) 震度 6 弱以上 (b) 震度 6 弱以上 1 10 100 1000 10000 100000 1 10 100 1000 10000 100000 詳 細 法 平 均 簡便法期待値(補正なし・あり) 簡便法期待値(相関係数:0.593) 補正簡便法期待値(相関係数:0.807) (c) 震度 6 強以上 (c) 震度 6 強以上 図-10 面積比 log r の推定値と実測値の比較 図-11 詳細法平均と簡便法期待値(補正無・有)の比較

(10)

一般に,揺れの面積そのものが予測対象となるケ ースは少ないと考えられるが,特に地震による被害 総量を対象としたリスク評価を行う場合は,強震域 の広がりが重要な意味を持つため,両手法の整合は 重要な検討課題である.本研究では,詳細法による 揺れの面積をターゲットとして,簡便法による揺れ の面積を補正するという方法をとった.しかしその 一方で,詳細法による評価の検証が必要であること も事実であり,過大評価か過小評価かは相対的な関 係に過ぎない.今後,前述した詳細な比較を実施し, 簡便法による地震動予測手法の高度化や,「震源断 層を特定した地震動予測地図」と「確率論的地震動 予測地図」の融合を目指すための検討を進める方針 である. 謝辞:本研究を実施するにあたり,(独)防災科学技 術研究所 藤原広行氏,森川信之氏,清水建設(株) 石川 裕氏,奥村俊彦氏,宮腰淳一氏,藤川 智氏に 有益なご議論とご助言をいただいた.また分析にあ たっては,(独)防災科学技術研究所の「地震ハザ ードステーションJ-SHIS5)」の公開データを利用し た.記して謝意を表する次第である. 参考文献 1) 地震調査研究推進本部地震調査委員会:全国地震動予 測地図 2010年度版,地図編+手引き・解説編,2010.5. 2) 地震調査研究推進本部地震調査委員会:全国地震動予 測地図 技術報告書,2009. 3) (独)防災科学技術研究所:地震動予測地図の工学利用 -地震ハザードの共通情報基盤を目指して-,<地震 動予測地図工学利用検討委員会報告書>,防災科学技 術研究所研究資料第258号,2004. 4) (独)防災科学技術研究所:糸魚川―静岡構造線断層帯の 地震を想定した地震動予測地図作成手法の検討,防災 科学技術研究所研究資料第245号,2003. 5) (独)防災科学技術研究所:地震ハザードステーション(J-SHIS; Japan Seismic Hazard Information Station) ホームペ ー ジ , http://www.j-shis.bosai.go.jp/ ( 2011 年12 月 1 日 閲 覧). 6) 能島暢呂,藤原広行,森川信之,石川 裕,奥村俊彦, 宮腰淳一:震度曝露人口による活断層の地震リスク評 価,日本地震工学会論文集 第10巻,第2号,pp.22-40, 2010. 7) 片岡正次郎,松本俊輔,日下部毅明,遠山信彦:やや 長周期地震動の距離減衰式と全国の地点補正倍率,土 木学会論文集A,Vol.64,No.4,pp.721-738,2008. 8) Day, S.M., Graves, R., Bielak, J., Dreger, D., Larsen, S.,

Olsen, K.B., Pitarka, A. and Ramirez-Guzman, L.: Model for Basin Effects on Long-Period Response Spectra in Southern California, Earthquake Spectra, Vol.24, pp.257-277, 2008. 9) 糸井達哉,高田毅士:深部地盤増幅特性を考慮した地 震動距離減衰式の有効性の検討,第13回日本地震工学 シンポジウム,pp.3889-3896,2010. 10)横田崇,池内幸司,矢萩智裕,甲斐田康弘,鈴木晴 彦:長周期地震動の距離減衰および増幅特性,日本地 震工学会論文集,第11巻,第1号,pp.81-101,2011. 11)(独)防災科学技術研究所:強震動評価のための全国深 部地盤構造モデル作成手法の検討,防災科学技術研究 所研究資料,第337号,2009. 12)(独)産業技術総合研究所:QuiQuake -地震動マップ即 時推定システム- ホームページ(2011 年 12 月 1 日閲 覧).http://qq.ghz.geogrid.org/QuickMap/about.html 13)糸井達哉,高田毅士:深部地下構造における地震動増 幅特性を考慮した内陸直下地震に対する硬質地盤上の 地震動応答スペクトル予測式の簡易補正法,日本地震 工学会論文集,第12巻,第1号,pp.43-61,2012. (2011.12.15 受付,2012. 2.27 修正,2012.3.6 受理)

COMPARISON AND ANALYSIS OF SPATIAL EXTENTS OF

ISOSEISMAL REGIONS USING DETAILED AND CONVENTIONAL METHODS

FOR STRONG MOTION PREDICTION

Nobuoto NOJIMA

Strong ground motions at the engineering bedrock for "Seismic Hazard Maps for Specified Seismic Source Faults" and "Probabilistic Seismic Hazard Maps" are evaluated using a strong motion simulation model (a detailed method) and an empirical attenuation model (a conventional method), respectively. In this study, spatial extents of isoseismal regions evaluated by both methods are compared for 158 cases of earthquakes occurring on major active faults. A multi-regression model is derived for prediction of the ra-tio of isoseismal areas (detailed / convenra-tional) with independent variables such as moment magnitude, depths of the bedrock surface of deep sedimentary layers and average shear-wave velocities.

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