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「在宅摂食・嚥下障害患者のリハビリテーションと予防プログラム開発に関する研究」

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Academic year: 2021

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(1)在宅医療助成. 勇美記念財団. 2012( 平 成 24) 年 度 ( 前 期 ) 一 般 公 募 完了報告書. 『在宅摂食・嚥下障害患者のリハビリテーションと 予防プログラム開発に関する研究 』. 申請者:若林和枝 所属:恩賜財団. 済生会神奈川県病院. 看護部. 看護師. 所 属 機 関 所 在 地 : 神 奈 川 県 横 浜 市 神 奈 川 区 富 家 町 6- 6. 共同研究者:清水順市 所属:金沢大学医薬保健学総合研究域. 保健学系. 教授. 共同研究者:古川節子 現所属:医療法人社団元気会 前所属:恩賜財団. 横浜病院. 看護部. 看護部長. 済生会神奈川県病院. 看護部. 副看護部長. 提 出 年 月 日 : 平 成 25 年 8 月 31 日.

(2) 項目 Ⅰ .研 究 の 背 景 及 び 目 的 Ⅱ .研 究 方 法 及 び 対 象 者 Ⅲ .倫 理 的 配 慮 Ⅳ .機 器 の シ ス テ ム 開 発 の 経 過 及 び 研 究 結 果 Ⅴ .考 察 Ⅵ .研 究 の 感 想 と 今 後 の 課 題 Ⅶ .謝 辞 Ⅷ .引 用 文 献 Ⅸ .参 考 資 料.

(3) Ⅰ.研究の背景及び目的 人が生命を保つためには、口から食物を摂取して栄養を常に補充しなければならない 。 人は身体的に目立つ機能障害がなくても、身体機能は加齢に伴い徐々に低下がみられる。 その代表的な一つの現象として嚥下障害が挙げられる。食物の嚥下は下顎部、頸部、咽頭 部(咽頭鼻部、咽頭口部、咽頭喉頭部)に存在する多種の筋による協調運動によって行わ れる。明確な嚥下障害が確認できれば、嚥下障害のリハビリテーションが実施されるが、 中でも、緩徐な筋力低下の出現や嚥下のタイミングが遅延するなどで「むせる」現象が日 常生活において確認される。このように嚥下障害の兆候が見られた場合は、本人が気を付 けるように意識するなどが通常の対応法である。 嚥下障害は、脳実質の損傷である中枢神経損傷や嚥下に関わる筋の損傷でも出現する 。 嚥下運動に関わる筋として、舌骨上筋群の活動が重要 強化には呼吸抵抗負荷トレーニングが有効である. 2). 1). である。また、舌骨上筋群の筋力. と報告されている。人の下顎部や前頸. 部から嚥下時に発生する筋電図、嚥下音、甲状突起の運動、呼吸周期そして頭部から脳波 を記録することが可能である. 1.3.4). 。こ れ ら の 部 位 か ら 採 取 で き る 生 体 情 報 に 対 し て 、人 に. 侵襲を与えない方法で取得解析して、嚥下障害の予防の一助にすることが可能であると考 え た 。 し か し 、舌 骨 上 筋 群 は 解 剖 学 的 に 個 々 の 筋 は 小 さ く 、薄 い た め 、正 確 な 筋 活 動 を モ ニターしにくいことが問題である。そこで、皮膚表面から筋活動のモニターが可能な筋電 計 と 呼 吸 モ ニ タ ー が 同 時 に 可 能 な ト レ ー ニ ン グ 機 器 を 昨 年 度 開 発 し た 。( 図 1 ) 在宅での摂食・嚥下障害患者は食事以外の介護を必要とする場合が多く、患者の年齢や 理解力、また介護力を配慮したリハビリテーションが必要である。今年度は、その機器の 小型応用化を図り、在宅での嚥下訓練指標作成を研究目的とした。. 図1. -1-.

(4) Ⅱ.研究方法及び対象者 生体情報は、下記の機器を連結して筋電位・頸部の状態及び顔面の表情をモニター画面 に表示させるシステムを開発し取得した。. パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ : ICONIA/W5 ( ACER 社 ) 小 型 無 線 多 機 能 セ ン サ ー : TSND121( ㈱ ATR-Promotions) 筋 電 計 : 筋 電 ア ン プ TS-EMG01( ㈱ イ ン タ ー ク ロ ス ). パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ の ICONIA/W5 ( ACER 社 ) の OS は Window8 で 作 動 し て お り 、 モ ニター画面はタッチパネル方式であるため指での操作が可能である。さらにキーボードと モ ニ タ ー が 分 離 で き る の で 、タ ブ レ ッ ト PC と し て 利 用 で き る 。今 回 は こ の 機 能 を 活 か し て タ ブ レ ッ ト 型 装 置 と し て 用 い た 。( 図 2) 小 型 無 線 多 機 能 セ ン サ ー は 大 き さ が 50×37×12mm、 重 量 は 22g( 電 池 含 む ) で あ る 。 筋 電 ア ン プ TS-EMG01 は 39×29×13mm、 重 量 は 10g ( 電 池 含 む ) で あ る 。 筋 電 位 は 有 線 の 連 結で小型無線多機能センサーへ伝達され、小型無線多機能センサーからタブレットへは無 線 ( Bluetooth) で 情 報 が 伝 達 さ れ る 。 筋 電 ア ン プ の サ ン プ リ ン グ 周 波 数 は 1kHz で あ り 、 こ の ア ン プ で 電 位 を 1,000 倍 に 増 幅 している。. 図2. 今回は、プレテストを研究協力者数名に実施後、在宅患者 1 名への使用を開始した。. -2-.

(5) Ⅲ .倫 理 的 配 慮 対象者には書面にて研究目的、方法、自由意思での参加であること、個人情報の保護を 説明し同意を得た。本研究は個人情報保護法並びに疫学研究に関する倫理指針に則って行 わ れ た も の で あ り 、 金 沢 大 学 医 学 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 受 け て い る 。( 承 認 番 号 175). Ⅳ.機器のシステム開発の経過及び研究結果 一 昨 年 開 発 し た 図 1 に あ る 筋 電 計 の 正 面 右 側 は 筋 電 位 増 幅 計 で あ り 、 筋 電 位 量 を LED ラ ンプの点灯により、フィードバックすることが可能である。さらに微調整用のボリューム が 設 置 さ れ 、電 位 量( 閾 値 )を 調 整 す る こ と が 出 来 る 。左 側 は 呼 吸 モ ニ タ ー と な っ て い る 。 吸 気 は 赤 色 LED ラ ン プ 、 呼 気 は 緑 色 LED ラ ン プ の 点 灯 に よ り 、 呼 吸 量 の フ ィ ー ド バ ッ ク も 可能である。 し か し 、こ の 方 法 で は 筋 電 位 が 出 現 し て い る こ と は 確 認 さ れ る も の の 、対 象 者 自 身 が「 ど のような動きをした時に筋電位が出現するか」をつかむことができない状況であった 。 今回の機器は、対象者は嚥下運動より頸部から発生する筋電位波形を見ながら、さらに 表情及び頸部の動きを見ながら運動が可能となる。また、タブレットに装備されているカ メラの角度すなわちタブレットの角度を移動させることにより、自分の見たいところを映 し出すことが可能となっている。この機種ではデータを保存することが可能であり、経時 的 変 化 を 追 う こ と も 出 来 る 。( 図 3 ). 図 3. タ ブ レ ッ ト PC 表 示 画 面. -3-.

(6) そ こ で 在 宅 患 者 の 90 歳 代 女 性 に 使 用 を 開 始 し た 。 対 象 者 は 、 時 々 汁 も の を 飲 ん だ 時 に むせることがあるが、運度麻痺や日常生活に支障をきたす身体的な症状はなかった。 開発した機器を使用し、訓練プログラム(参考資料参照)は、プレテストを行った研究 協 力 者 か ら 得 ら れ た 結 果 を 基 に 作 成 し た 内 容 を 行 っ た と こ ろ 、対 象 者 か ら は「 こ れ ま で は 、 運動をさせられていたが、この方法は自分から運動をしていくという感じがある」との感 想 が 得 ら れ 継 続 性 の 高 い こ と が 示 さ れ た 。( 図 4 ). 図4. Ⅴ.考察 これまで、嚥下障害者のリハビリテーションは、対象者は訓練させられていたという立 場であったが、今回の方法は筋電位と頸部の動きの両者を画像上で視覚的フィードバック が可能となり、自分が訓練を行なっているという意識を向上させることが可能となった 。 さらには、電子機器の発達により、対象者への身体的負担が軽減することで心理的負担も 同時に軽減することができた。 嚥下障害の原因は中枢神経系に問題を有している場合は、神経の回復を待たなければな ら な い 。し か し 、 「 時 々 む せ る 」こ と や「 飲 み に く い 」な ど の 嚥 下 障 害 に お い て は 、嚥 下 に 関与する末梢性の筋収縮の問題として、廃用性の筋力低下や嚥下のタイミングなどが挙げ られる。 嚥下リハビリテーションにおいて、筋活動の促しは間接訓練の分類になる。この訓練は 現時点において、いつどのような方法で行うと効率的であるか等の明確な提示ができてい ない。高齢者において筋収縮時間が延長し、さらに嚥下障害を有するとさらに咽頭期が延 長していることがわかっている デルゾーン手技. 5,6,7). 4). 。一般的に嚥下に関わる筋活動を促すための運動はメン. が用いられている。この手技の効果に対する報告はない。以上のよ. う に 嚥 下 に 関 す る 筋 電 位 に お い て は 、若 年 者 と 高 齢 者 の 比 較. 4). は あ る が 、そ の 筋 活 動 、筋. 収縮の効果に関する報告がない。摂食・嚥下機構は神経・筋の協調性が存在して成立して いる。そのために効果期である筋活動そのものが重要である。今後は、この領域において 訓練プログラムの発展が望まれる。 -4-.

(7) Ⅵ.研究の感想と今後の課題 今回の研究では、機器の小型応用化を目的とし、当初携帯電話(スマートフォン)への システム開発を行ったが、開発経過の中でこの機器を高齢者が使用するに当たっての問題 に 直 面 し た 。そ れ は 高 齢 者 の 視 力 低 下( 老 眼 を 含 む )で あ る 。視 力 低 下 は 40~ 50 歳 ぐ ら い か ら 始 ま り 、60 歳 を 超 す と 急 激 に 低 下 す る と 言 わ れ て い る 。視 野 も 上 下 方 向 に 狭 く な る た め、頭上や足元が見えにくくなる。空間の奥行きなどを覚知する立体視の能力も、視力の 低 下 と 共 に 確 実 に 低 下 す る 。 単 に 小 型 化 を 図 っ て も 、実 際 に 使 用 す る こ と が 予 測 さ れ る 高 齢者にとっては、使用しにくい機器となることが分かった。そこでタブレット型端末への システム開発へと変更した。 残された課題として、電極の装着がある。現在は慣れるまで介助者が必要である。今後 カラータイプでドライ電極を応用することにより、装着が自分で可能となり負担が軽減出 来る。また、コンピュータ上のソフトの簡略化により、操作をしやすくする研究が必要で ある。 嚥下訓練の実施時には、対象者の集中力や疲労度に配慮した時間配分を考慮し、さらに 他の生活関連動作や、社会的・認知コミュニケーション能力の向上にも合わせてアプロー チすることも重要である. 8). と 報 告 さ れ て い る 。前 述 の 点 を 考 慮 し な が ら 、今 後 は 対 象 数 を. 増やしデータを蓄積することにより、嚥下に関わる筋(群)活動の訓練プログラムを改良 したいと考えている。. Ⅶ.謝辞 今回の研究にご協力を頂いた対象者の皆様と、関係施設の職員の皆様に深謝致します。. 本 研 究 は 、 在 宅 医 療 助 成 勇 美 記 念 財 団 の 2012 年 度 前 期 ( 一 般 公 募 ) の 研 究 助 成 を 受 け て行われた。. -5-.

(8) Ⅷ.引用文献 1)中 村 文 ,今 泉 敏:予 告 の 適 否 が 飲 料 の 嚥 下 運 動 に 及 ぼ す 影 響 図を介した検討―. -嚥下音および表面筋電. 日 本 摂 食 ・ 嚥 下 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 学 会 雑 誌 . 15, 264-273, 2011. 2)福 岡 達 之 ,杉 田 由 美 ,川 阪 尚 子 ,吉 川 直 子 ,野 崎 園 子 ,寺 山 修 史 ,福 田 能 啓 ,道 免 和 久 . 呼 気 抵 抗 負 荷 ト レ ー ニ ン グ に よ る 舌 骨 上 筋 群 の 筋 力 強 化 に 関 す る 検 討 .日 本 摂 食・嚥 下 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 学 会 雑 誌 2011; 15; 174-182. 3)清 水 順 市 ,杉 山 み ち 子 ,五 味 郁 子 ,他:高 齢 者 の 嚥 下 に お け る 下 顎 部 筋 活 動 の 呼 吸 周 期 . 神 奈 川 県 立 保 健 福 祉 大 学 誌 2, 1-7, 2005 4) 清 水 順 市 , 杉 山 み ち 子 , 五 味 郁 子 ,他 : 老 年 嚥 下 障 害 者 に お け る 嚥 下 咽 頭 期 の 特 性 . OT ジ ャ ー ナ ル 41, 309-312, 2007 5) 藤 島 一 郎 . 脳 卒 中 の 摂 食 ・ 嚥 下 障 害 . 医 歯 薬 出 版 , 2004. 6) 藤 島 一 郎 . 動 画 で わ か る 摂 食 ・ 嚥 下 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン . 中 山 書 店 , 2004. 7) 向 井 美 恵 , 鎌 倉 や よ い . 摂 食 ・ 嚥 下 障 害 の 理 解 と ケ ア . 学 習 研 究 社 , 2003. 8)若 林 和 枝 ,清 水 順 市 .摂 食・嚥 下 障 害 へ の 取 り 組 み ‐ 長 期 間 の 経 管 栄 養 か ら 経 口 摂 取 が 可 能 と な っ た 一 事 例 ‐ . 第 37 回 日 本 看 護 学 会 論 文 集 ― 老 年 看 護 ― . 139‐ 141.2006.. -6-.

(9) Ⅸ .参 考 資 料. 【嚥下に関わる筋(群)活動の訓練プログラムと留意点】 ① 筋電電極の貼付部位は下顎部、舌骨上部、左右と一方とする。 ② 電 極 は 鏡 を 見 な が ら 行 う こ と に よ り 、一 人 で 可 能 と な る 。電 極 の 接 着 力 が 弱 い 場 合 は テ ープで固定する。 ③ 採取する目的筋は筋腹が小さいため、一筋を採取できないため筋群としてとらえる。 ④ 嚥下状態を仮定し筋収縮を発生させるので、空嚥下の要領で開始する。 ⑤ 持続時間を延長することを求めるので、事前に呼吸法を実施する。 ⑥ 甲状軟骨部の指を当て、拳上を確認しながら行う。 ⑦ 対象者の全身状態に合わせて実施するが、一回の訓練時間は 5 分程度にする。 ⑧ 一 日 に 数 回( 午 前 2 回 、午 後 2 回 )実 施 す る 。 (疲労度や状態に応じ回数は増減させる) ⑨ 疲れたら休憩を入れる。連続で行わない。. -7-.

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