セキュリティログ統合管理システム(2)
―ログ改ざん検知対策―
金子 洋介 小林 信博 村澤 靖
三菱電機株式会社
1. はじめに
近年、情報社会の発展に伴い、コンピュータ
に関するセキュリティ事故が多発している。こ
の背景の下、事故原因の分析にログが利用され
る機会が増加し、正確な分析を行なうためにロ
グの完全性の維持が重要視されてきている。
本稿は、我々が開発したログ統合管理システ
ム[1]
のログ改ざん検知対策について報告する。
2. 課題
ログ改ざん検知対策を実現する上での課題を
示す。
(1) 脅威とセキュリティ対策の明確化
ログ改ざん検知対策を実現するためには、ロ
グ改ざんの原因となるログ統合管理システムに
対する脅威を漏れなく抽出し、脅威に対して効
果的なセキュリティ対策を検討する必要がある。
(2) ログ統合管理システムの機能強化
脅威によっては、OS の機能や平常時の運用で
対策できない可能性がある。これらの脅威に対
しては、ログ統合管理システムでのセキュリテ
ィ対策を検討し、ログ改ざん検知の機能を実現
する必要がある。
3. 解決策
前章で示したログ改ざん検知対策の課題に対
し、2 点の解決策を検討した。
(1) ログ統合管理システムの脅威分析
ログ統合管理システムの脅威分析を実施し、
ログ改ざんの原因となる全ての脅威を明確化し
た。また、抽出した各脅威に対し、動作環境、
運用、およびログ統合管理システムの機能強化
の 3 視点から、セキュリティ対策方針を検討し
た。
(2) ログ統合管理システムの機能強化
ログ統合管理システムの機能を強化し、動作
環境や運用での対策が困難な脅威に対応した。
尚、対応に当たり、現在のログ統合管理システ
ムの基本的な仕様や動作にインパクトを与えな
いように実現方式を検討した。
4. ログ統合管理システムの脅威分析
以下に、ログ統合管理システムの脅威分析手
法を示す。本手法は、参考文献[2]に記載された
手順を参考とした。
(1) 保護資産の識別
初めに、脅威源から守るべき資産を決定した。
本脅威分析では、図 1に示す通り、収集・管理
の対象とするログファイルだけでなく、ログ管
理サーバや管理対象端末など、ログの収集・管
理の動作に影響を及ぼす対象を保護資産とした。
ログ管理サーバ
インターネット or イントラネット
ログ管理
サーバ
管理対象端末(ユーザ端末、サーバ、etc)
管理対象
システム
ログファイル
出力
収集
統合
ログDB
WWWサーバ
保護資産
凡例
Windows OS
Windows OS
ログ管理
エージェント
ログ管理サーバ
インターネット or イントラネット
ログ管理
サーバ
管理対象端末(ユーザ端末、サーバ、etc)
管理対象
システム
ログファイル
出力
収集
統合
ログDB
WWWサーバ
保護資産
凡例
Windows OS
Windows OS
ログ管理
エージェント
図 1 保護資産
(2) 脅威の抽出
次に、保護資産の脆弱性と脅威源に着目し、
脅威を抽出した。本脅威分析では、管理者、端
末利用者、およびそれ以外の権限外のユーザを
脅威源とした。また、保護資産を、ログ管理シ
ステムを構成するハードウェア、ミドルウェア、
プログラム、および設定ファイルなど、詳細レ
ベルのエンティティにブレークダウンし、エン
ティティ単位で脅威を抽出した。
Security Log Management System (2)
Tamper Detection for the Security Log Management System
Yosuke Kaneko, Nobuhiro Kobayashi, and
Yasushi Murasawa
Mitsubishi Electric Corporation
3-341
3F-2
(3) セキュリティ対策方針の検討
最後に、抽出した全ての脅威に対し、セキュ
リティ対策方針を検討した。本脅威分析では、
現状のログ統合管理システムの機能や動作に影
響を与えないように留意し、パーミッション設
定やユーザ権限の分離などの動作環境での対応、
機器の安全な場所への設置や管理者に対する教
育や訓練などの運用での対応を検討した。ログ
統合管理システムの制限上、これらの対策が困
難な脅威に対しては、ログ統合管理システムの
機能強化で対応を検討した。
5. ログ統合管理システムの機能強化
脅威分析の結果、ログ統合管理システムで対
策が必要と判断した 2 つの脅威と、各脅威への
対策を述べる。また、対策を実現したログ統合
管理システムを図 2に示す。
5.1. ログ統合管理システムで対応すべき脅威
(1) 収集前に行なわれるログ改ざん
ログ統合管理システムはログファイルを定期
的に収集するように動作する。また、収集対象
のログファイルに制限はなく、特別な動作環境
や運用で保護する事はできない。そのため、悪
意を持ったユーザがログ統合管理システムの収
集前にログファイルを改ざんする可能性がある。
(2) 不注意や操作ミスによるログ改ざん
ログ統合管理システムは、複数の管理対象端
末のログを統合ログ DB で管理しており、収集後
は管理者が参照する。教育や訓練を強化したと
しても、不注意や操作ミスによりログが改ざん
される可能性がある。
5.2. 脅威に対する対策の実現方式
(1) 収集時のログ改ざん有無検証方式
前節(1)の脅威に対し、ログ収集時にログ統合
管理システムが改ざんの有無を検証する方式で
対応した。
本方式は、Windows オペレーティングシステ
ムのセキュリティ監査機能を利用する。本機能
により、ログファイルへの全プロセスのアクセ
ス履歴が監査ログへ記録される。ログ管理エー
ジェントは、ログの収集時に前回の収集時から
今回の収集時までに記録された監査ログを参照
し、不正アクセスの有無を検証する。これによ
り、収集内容の改ざん有無を判断する。
(2) 検証コードによるログ改ざん有無検証方式
前節(2)の脅威に対し、任意の時点で統合ログ
ログ管理サーバ
管理対象端末
ログ管理システム管理者
改ざん
脅威源
Windows OS
セキュリティ
監査機能
セキュリティ
監査ログ
アクセス監視
監視内容出力
管理対象
システム
ログファイル
出力
ログ管理エージェント
①ログ収集・転送
③検知コード生成
②収集時検証
監視情報参照
インターネット or イントラネット
収集
管理対象端末
統合ログDB
ログ管理サーバ
④ログ受信・投入
⑤保管コード生成
(1)ログ検証
転送
投入
参照
検証
WWWサーバ
Windows OS
改ざん
脅威源
ログ管理サーバ
管理対象端末
ログ管理システム管理者
改ざん
脅威源
改ざん
脅威源
Windows OS
セキュリティ
監査機能
セキュリティ
監査ログ
アクセス監視
監視内容出力
管理対象
システム
ログファイル
出力
ログ管理エージェント
①ログ収集・転送
③検知コード生成
②収集時検証
監視情報参照
インターネット or イントラネット
収集
管理対象端末
統合ログDB
ログ管理サーバ
④ログ受信・投入
⑤保管コード生成
(1)ログ検証
転送
投入
参照
検証
WWWサーバ
Windows OS
改ざん
脅威源
図 2 機能強化の実現方式
DB で管理するログの完全性を検証する方式で対
応した。
本方式は、ログ管理エージェントが、ログ収
集時にメッセージ認証コードである検知コード
を付与し、ログ管理サーバへ転送する。ログ管
理サーバは、ログ収集単位毎の前後関係を考慮
したハッシュチェーンである保管コードを付与
し、統合ログ DB で管理する。検証時は、統合ロ
グ DB に格納したログに対し、2 種類の検証用コ
ードを再生成することで完全性を判断する。
6. 評価
以上の通り説明した手法をログ統合管理シス
テムへ適用した。
脅威分析で 175 件の脅威を抽出した。抽出し
た全脅威に対し、運用と動作環境での対応、お
よびログ統合管理システムの機能強化によるセ
キュリティ対策方針を示すことができた。これ
により、ログの改ざん検知対策を実現した。
7. おわりに
ログ統合管理システムのログ改ざん検知対策
について報告した。これにより、ログの収集、
管理の全過程での改ざんを検知でき、完全性を
検証した上でログを活用することができる。
参考文献
[1]樋口他,“情報セキュリティサービス(1) –ログ統合管
理-”,第 67 回情処全大,4A-A,Mar.2006
[2]JEITA,“セキュリティ脅威とその対策方針 パッケー
ジ”,Apr.2005
[3]芦野他,“USB デバイスを用いたデジタルフォレンジッ
ク保全方式の提案と評価”,2005-CSEC-30, 2005/7/22
3-342
情報処理学会第69回全国大会