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民生委員の三つの活動領域とその課題 : 民生委員活動に関する文献研究 利用統計を見る

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(1)

活動に関する文献研究

著者名(日)

大村 美保

雑誌名

福祉社会開発研究

2

ページ

39-45

発行年

2009-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00004844/

(2)

 

Ⅰ.はじめに

民生委員制度は、その前身である済世顧問制度が創 設されて90年以上を経ており、また民生委員法が1948 年にできてから60年以上が経過した、歴史のある社会 福祉制度の一つである。もともとは救貧・防貧的な機 能を果たすものとして始まった制度であるが、戦後日 本社会の変化に伴い、その機能を拡大しながら、まだ 十分でなかった公的な社会福祉制度を民間活動として 支えてくると同時に、児童福祉法で定められた児童委 員としての役割を果たしてきた。 この間、社会福祉制度は、徐々に成熟してゆき、低 所得、高齢、障害、児童といった各分野で制度の専門 分化が進むとともに、社会福祉施設の整備が行われ、 また1990年代以降は在宅福祉サービスが大きく発展し た。さらに、介護保険法(2000年)、障害者自立支援法(2006 年)の施行により地域における福祉サービスの量が急速 に拡大した。しかしながら、制度の谷間にある問題や、 複合的な問題に対し公的サービスが総合的に提供され ていない等の問題がある。また、住民が地域での活動 を通じて自己実現をしたいというニーズが高まってい る。 このような中、最近まとめられた厚生労働省・これ からの地域福祉のあり方に関する検討会報告書「地域 における「新たな支え合い」を求めて-住民と行政の 協働による新しい福祉-」(2008年3月)は、地域にお ける身近な生活課題に対応する、新しい地域での支え 合いを進めるための地域福祉のあり方を検討すること が緊要な課題となっていると指摘している。そして、 民生委員について「住民主体の地域福祉活動を進める に当たり、相談支援体制の一翼を担うよう」見直しを 検討する必要があるとした。社会福祉法の改正に伴い 2000年に民生委員法が改正され、その基本理念が「保 護指導」から「相談、援助」へ、その性格が「名誉職」 から「給与を支給しない」へと変更されるなど、民生 委員の地域福祉の担い手としての性格がより明確にさ れているが、法制度のみならず、民生委員が実際に地 域の中で担うべき役割は何か、そしてその役割を果た すためどのような活動が求められるかが問われている といえる。 本稿は、民生委員の活動に関して文献研究を行い、 論点を整理することにより、今後の民生委員の活動に 関する議論に役立てることを目的としている。

Ⅱ.都民連活動記録の分析結果にみる

3つの活動領域

1.活動の種類

それでは、民生委員の活動にはどのようなものがあ るだろうか。民生委員の活動の分類方法の一つとして、 全国民生委員児童委員連合会(以下、全民児連)のま とめがあるが、それによると、民生委員の活動の基本 を「7つのはたらき」に整理している。すなわち、「社 会調査活動」、「相談活動」、「情報提供活動」、「連絡通 報活動」、「調整活動」、「生活支援活動」、「意見具申活動」 プロジェクト1RA 東洋大学大学院社会学研究科博士後期課程

大村 美保

民生委員の三つの活動領域とその課題

―民生委員活動に関する文献研究―

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のである。 もう一つの活動の分類方法は、活動記録による分類 である。活動記録とは、すべての民生委員が日々の実 際の具体的な活動の内容と件数の記録をとったもので あり、市町村を通じて都道府県に報告し、国が取りま とめて社会福祉行政業務報告(福祉行政報告例)の統 計資料としている。また、活動記録の様式は全国で統 一されている。 活動記録による民生委員の活動の分類としては、大 きく「相談・支援件数」、「その他の活動件数」、「連絡 調整回数」、「訪問回数」の4つに分かれており、後者3 つはさらにそれぞれ下位項目がある。「その他の活動件 数」の下位項目としては、「調査・実態把握」、「行事・ 事業・会議への参加協力」、「地域福祉活動・自主活動」、 「民児協運営・研修」、「証明事務」、「要保護児童の発見 の通告・仲介」の6つがある。また、「連絡調整回数」 の下位項目としては、「委員相互」と「その他の関係機関」 の2つがある。また、「訪問回数」には、「訪問・連絡活動」 と「その他」があり、前者は見守り、声かけなどを目 的とした対象者に対する訪問・連絡活動で、後者はそ れ以外の訪問活動である。活動記録では、これら11項 目すべてについて、いずれも延件数を記録することと なっている。i    

2. 三つの活動領域

小林良二は、東京都民生委員児童委員連合会(以下、 「都民連」という)がデータ収集した東京都全域にいる 民生委員の活動記録をもとに、民生委員の活動件数に ついて活動内容11項目を用いた因子分析を行い、3因 子を抽出した(詳細は本誌掲載論文「東京都における 民生委員活動の統計的分析―単位民生児童委員協議会 を中心として―」を参照)。 第1因子は「連絡調整回数(その他の関係機関)」「連 絡調整回数(委員相互)」「その他の活動件数(民児協 運営・研修)」「その他の活動件数(行事・事業・会議 への参加・協力)」の因子負荷量が高い。これら第1因 子に属する活動領域は、民生委員活動を行う上での基 盤となる事項であると推測され、これをここでは「基 礎的活動」と呼ぶ。 第2因子は「相談・支援件数」「訪問回数(訪問・連 絡活動)」「その他の活動件数(地域福祉活動・自主活 動)」の因子負荷量が高い。前者の2つは対象世帯に対 する直接的な援助活動であり、後者はサロン運営等の 地域の福祉を増進するための活動等である。いずれも 民生委員が直接、対象に働きかける活動であることか ら、これを「直接支援活動」とする。 第3因子は「その他の活動件数(調査・実態把握)」「訪 問回数(その他)」の因子負荷量が高く、これらは関係 行政機関への協力業務としての調査等にあたることか ら、これを「行政協力活動」と呼ぶこととする。 なお、これら三つの因子のいずれにも分類できない ものとして「その他の活動件数」のうち「証明事務」「要 保護児童の発見の通告・仲介」の二つがあり、これらは、 他の活動とは独立した項目であるといえる。 民生委員の三つの活動領域 (1)基礎的活動  ①連絡調整(その他の関係機関)  ②連絡調整(委員相互)  ③その他の活動(民児協運営・研修)  ④その他の活動(行事・事業・会議への参加・協力) (2)直接支援活動  ①相談・支援  ②訪問(訪問・連絡活動)  ③その他の活動(地域福祉活動・自主活動) (3)行政協力活動  ①その他の活動(調査・実態把握)  ②訪問(その他) *分類できないもの  ①その他の活動(証明事務)  ②その他の活動(要保護児童の発見の通告・仲介)

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Ⅲ.各活動領域での活動実態とその課題

1.研究方法

CiNii(国立情報学研究所学術文献データベース)で 20008年8月に検索した民生委員に関する文献のうち、 社会福祉基礎構造改革以降の1997年から2008年8月まで に出されたもので、民生委員の役割・機能について論 じているのは、以下の4点である。 文献1:金井敏「制度創設90周年を迎えた民生委員・ 児童委員の機能を問う―期待と実態のはざまで―」、 10-19、社会福祉研究(101)、鉄道弘済会社会福祉部、 2008年4月 文献2:小松理佐子「地域における相談活動と家族支 援ネットワーク―民生委員児童委員の役割を考える― (特集:浮遊する家族と福祉課題)」、42-48、社会福祉研 究(98)、鉄道弘済会社会福祉部、2007年4月 文献3:金井敏「民生委員・児童委員活動における個 別援助活動のあり方について~福祉票の変遷と新しい 実践を通じて~」、79-89、地域福祉研究(28)、日本生命 済生会社会事業部、2000年5月 文献4:渡辺武男「これからの民生委員・児童委員活 動の役割と課題―行政・他機関との連携と福祉の風土 づくりをめざして―」、9-15、社会福祉研究(76)、鉄道 弘済会社会福祉部、1999年10月 本稿では、Ⅱ2で述べた小林の分析結果を用い、民 生委員の活動領域を(1)基礎活動、(2)直接支援活動、(3) 行政協力活動、の三つに分け、それぞれの活動領域に 関して、上述の四文献における記述をみることにより、 各活動領域の活動実態とその課題を抽出する。

2.各活動領域での活動実態とその課題

(1)基礎的活動

基礎的活動とは、Ⅱ2で述べたように、①連絡調整 (その他の関係機関)、②連絡調整(委員相互)、③その 他の活動(民児協運営・研修)、④その他の活動(行事・ 事業・会議への参加・協力)の4つの活動から成る活 動領域である。 基礎活動に関する記述としては、金井が文献1にお いて、全民児連が2005年に実施した「民生委員・児童 委員活動および民児協活動に関する意識調査」(以下、 「意識調査」)の結果を紹介している。まず、①連絡調 整(その他の関係機関)と②連絡調整(委員相互)、す なわち連絡調整に関する事項について、「日常的に連 携している機関・人」は、民生委員の経験年数や役職 等によって異なっているとしている。連携先を「社協」 と回答したのは単位民児協の会長で82.0%、中堅民生委 員で72.0%であったが、新任委員では「単位民児協の会 長、先輩委員」が81.5%、また主任児童委員では「学校」 が78.0%であった。つまり、新任委員では先輩委員や会 長といった委員相互での連携が多く、経験者や主任児 童委員では、社協や学校など関係機関との連携が多い といえる。 次に、③その他の活動(民児協運営・研修)に関わ るものとして、「定例会で力を入れるべき点」に関する 民生委員の意識についての指摘がある。定例会は通常、 単位民児協で月1回程度開催されているが、定例会で 力を入れるべきという回答が最も多かったのは「活動 の悩みや事例を相談・協議する場」であり、次いで新 任民生委員では「先輩委員からの経験や技術の継承の 強化」、主任児童委員では「外部実践者や専門職との情 報・意見交換」となっている。これらの悩みや苦労を 相談できる場としての機能を定例会に求めているとい えよう。また、その際に、新任委員では特に委員相互 での連携の強化を、主任児童委員では関係機関との情 報交換を求めているといえる。なお、詳細は2(2)で 述べるが、「活動上の悩みや苦労点」に関する民生委員 の意識では、直接支援活動に関わるものが上位を占め ている。 これらのことから、新任委員では単位民児協の会長、 先輩委員といった委員相互で、単位民児協の会長、中 堅委員、主任児童委員では社協や学校といった関係機 関と、日常的に連絡調整をしているが、それだけでは 直接支援活動に関して悩みや苦労が十分に解消できて おらず、活動上の悩みや事例の相談の場を求めている、

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といえる。

(2)直接支援活動

直接支援活動とは、①相談・支援、②訪問(訪問・ 連絡活動)、 ③その他の活動(地域福祉活動・自主活動) の三つの活動から成る活動領域である。 直接支援活動は、対象世帯や地域住民に対して民生 委員が直接働きかける活動である。 再び、金井が文献 1で紹介している「意識調査」をみると、民生委員の「今 後重要となる活動」に関する意識は、「高齢者、障害者、 児童の個別援助活動」(75.6%)、「災害時の救援活動、ネッ トワークづくり」(52.5%)、「ふれあいサロン」(47.7%) の順に高くなっている。これらいずれも直接支援活動 に属する項目であり、民生委員は直接支援活動が今後 重要となると考えていることがわかる。 次に、直接支援活動のそれぞれの項目についてみて いくこととする。 まず、①相談・支援及び②訪問(訪問・連絡活動)といっ た個別援助についてであるが、文献1及び文献2にお いて、相談・支援件数は1980年代後半から2005年度ま で緩やかに減少し2006年度は増加しているとある。こ のことについて小松は、文献2で、地域の中で相談を 受ける専門職が増加し、専門知識・技術をもたない民 生児童委員に相談や支援を求める必要性が低下したと 考えられる、と述べている。 また、相談・支援の内訳であるが、文献1で「子ど も分野」において2006年度で対前年度比13。0%増加し ていることが示された。また、文献2で小松は、相談・ 支援のうち「日常的な支援」が増加し大きな割合を占 めていることから、事例をもとに民生委員の対象とす る世帯像に触れ、こうした支援を民生委員から受ける 世帯は、家族・親族のサポートネットワークをもって いない小規模の家族、あるいは家庭を運営する上で中 心的な立場に置かれている人が、十分な判断能力をも ちえていない、と指摘した。ここから、民生委員の援 助の対象として、単にサービスを紹介すれば援助が終 結するのではない、多様な課題を抱えた世帯が増加し ている姿が浮かんでくる。 こうした個別援助について民生委員はどのように考 えているのだろうか。これについては金井が文献1で 「意識調査」による「活動上の悩みや苦労点」を示して おり、1位が「プライバシーにどこまで踏み込んでい いのか戸惑う」、次いで経験者では「制度改正が多く、 知識や情報が追いつかない」、新任及び主任児童委員で は「援助対象者へのかかわり方や援助の範囲・方法」 となっている。民生委員が他の活動に比べて個別援助 に関わる悩みや苦労を多く感じていることがわかる。 こうした個別援助の悩みや苦労の背景にはどのよう なものがあるか。金井は文献1で個人情報との関係に 触れ、行政からの情報が民生委員にあまり届いておら ず、支援を要する人の情報を民生委員自らが自分の足 で把握する必要がある、とその難しさを課題として挙 げている。さらに金井は文献3で、基本となる個別援 助の方法論についてほとんど議論されないままにきて いるのではないか、と疑念を投げかけ、福祉専門職と は異なる特性を活かした固有な活動方法として捉え直 す必要がある、と述べている。もし、情報が不十分な ままで支援を要する人の情報を自ら把握せざるを得ず、 情報を得たとしてもその後に続く個別援助の方法論が あまり議論されずにきているとするならば、各民生委 員が個別援助に際して抱く悩みや苦労はかなり大きな ものであると考えられる。 次に、③その他の活動(地域福祉活動・自主活動) に関わる記述を見ていくこととする。文献4で渡辺は、 民間社会福祉団体としての社協の設立とその活動展開 において、従来の福祉行政への協力に加え、新たに住 民の立場から地域福祉推進の担い手としてその役割が 期待されてきた、と述べている。前述したが「今後重 要となる活動」の上位に「災害時の救援活動、ネットワー クづくり」「ふれあいサロン」が位置しており、民生委 員自身その役割期待の大きさを認識していると思われ る。 直接支援活動に関してまとめると、以下のようにな る。民生委員自身、直接支援活動(個別援助と地域福 祉活動・自主活動)が今後重要になると意識している。 個別援助では、地域の中で相談を受ける専門職が増加 し、専門知識・技術をもたない民生児童委員に相談や

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  支援を求める必要性が低下しており、相談・支援が減 少傾向であるが、児童分野は伸びている。その対象世 帯は多様な課題を抱えた世帯が増えてきている。しか しながら、情報の不十分さや個別援助の方法論の未整 理といった背景から、民生委員は個別援助に際して悩 みや苦労を抱いている。地域福祉活動・自主活動につ いては地域福祉推進の担い手としての役割期待が近年 高まっている。

(3)行政協力活動

行政協力活動とは、①その他の活動(調査・実態把握)、 ②訪問(その他)】の二つの活動から成る活動領域であ る。 行政協力活動は、①その他の活動(調査・実態把握)、 ②訪問(その他)ともに、行政や関係機関の実施する 調査への協力や、行政や関係機関からの文書等の配布 協力等の、行政機関への協力業務が主なものである。 文献4で渡辺が述べているように、民生委員は、民 生委員法に福祉行政への協力機関として位置づけられ ていることが、この活動領域の根拠となっている。こ の活動領域について、金井は文献3において、民生委 員の「行政への「協力」は増え、忙しさは増すばかり である」と述べている。また、金井は文献1において、 民生委員が福祉に関するほとんどの制度にかかわるこ とになっているとした上で、時代状況や今日必要とさ れている職務に照らし、法制度や通知の整理も必要で はないか、と投げかけるとともに、行政(市町村)が 法令や通知等を正確に理解して窓口を一本化して対応 する必要性を述べた。さらに渡辺は、協力機関の意味 と内容に課題があると指摘し、強制力をもつ安上がり な人的資源として民生委員が使われ、協力の意味は現 場で空文化していると述べている。 行政協力活動についてまとめると、制度創設時から 持たされている機能として行政への協力事務が残され ているが、現在では福祉に関するほとんどの制度にか かわることになっている。市町村行政の責任が明確と なっていないために協力の内容が整理されていないこ とも相まって、民生委員の忙しさにつながっている面 がある。

Ⅳ.民生委員の活動に関する論点

これまで、民生委員の三つの活動領域ごとに活動実 態とその課題に関する文献の記述をみてきた。 それでは、民生委員の活動は今後どうあるべきだろ うか。それを考える上では、民生委員は果たすベき役 割・機能は何であるのか、そしてどのようなネットワー クの中でその役割・機能を果たすのか、という議論が 抱き合わせであろう。その上で初めて、そうした役割・ 機能を果たすための民生委員の固有の活動とは何かが 明確になるのではないだろうか。 ここでは、まず、上述の四文献から、民生委員の今 後の活動の方向性とともに、その文献ではどのような ネットワークを想定しているのか、またそうした活動 を支えるための条件は何かについて記述をみていく。 その後、筆者の見解を述べたい。

1.文献による今後の方向性

(1)直接支援活動の重視

四つの文献とも、民生委員の3つの活動領域のうち、 直接支援活動を中心とした活動を行う方向性を示唆し ている。 金井は、民生委員制度には「行政協力活動」と「自 主活動」の二面的性格があるが、「行政協力事務をベー スにさまざまな分野への協力を期待されて現在に至っ ている。しかし、近年の法律・通知の動向や実際の活 動から素直に見つめ直せば、地域福祉の協力者として の位置づけになろう。」と文献1で述べている。これは、 民生委員の三つの活動分野のうち、行政協力活動に対 して、直接支援活動、すなわち個別援助と地域福祉活動・ 自主活動を民生委員活動の核に据えるべきとの主張で あると考えられる。同様に渡辺も文献4で、民生委員 に地域福祉の推進役を期待している。

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金井と小松は、直接支援活動の中でも、特に個別援 助について言及している。金井は、文献3において、 民生委員が対象者に関する記録をとる様式である「福 祉票」を用いた個別援助のあり方を論じ、民生委員の 個別援助は他の専門職種にはない固有な方法論が見出 せるのではないかと述べている。また、小松は、援助 を要する家族への支援を行うネットワーク形成につい て論じており、民生委員の行う個別援助を地域で活か す仕組みづくりについて述べている。

(2)ネットワーク

(1)では民生委員が直接支援活動へ軸足をシフトす べきであるという方向性が示されたが、それではどの ようなネットワークの中でその役割を果たしていくべ きだろうか。 金井は、文献1において、例えば地域包括支援セン ターや障害者生活支援センター、児童家庭支援センター との関係では情報提供や見守りといった役割を民生委 員が担う、というように、専門職のチームの一員とし て活動することが望まれる、と述べている。 それに対し小松は、民生委員を、専門職のチームの 一員ではなく、近隣のネットワークに属するものとし て位置づけた。すなわち、民生委員は日常的な支援を 求める家族への個別援助を行いつつ近隣のネットワー クを形成するものと考えている。そして、その近隣の ネットワークと専門職のネットワークとを融合させる 役割を、近隣ネットワーク側では民生委員、専門職ネッ トワーク側では社会福祉専門職に期待している。

(3)条件

最後にこのような民生委員の活動を支える条件につ いてみていく。金井は行政、サービス実施団体、地域 住民の理解をあげ、民生委員の活動が他者に活動を認 めてもらい評価されることが、やりがいに結び付き、 後継者育成とソーシャルワークの展開に貢献できると している。 またこれと関連して金井は、文献1で民児協の活動基 盤の整備についてふれ、民児協活動の外部評価、活動 エリアの整合性の確保、社協との協働などについて述 べている。さらに、個別支援のために必要なネットワー クの形成のための課題としては、①リスク管理に対す る行政の責任での取り組み、②地域で連携した活動が 展開されるような専門機関からの体制づくりが活動基 盤の整備として重要であるとしている。 また、渡辺は、民生委員が地域福祉の推進役として の役割を果たすため条件整備として、福祉行政や社協 等との研究・協議の場の設置による新たな協力関係の 構築、民生委員活動を支援する有給専任の職員(仮称: 民生委員活動支援専門員)の配置、市民主導による福 祉の風土づくりへの貢献、などについて述べている。

2.筆者の視点

以上のことを踏まえて、最後に筆者の考えを記して おく。

(1)「地域福祉活動・自主活動」「個別援助」

「はじめに」において述べたように、現在では社会福 祉制度・サービスが成熟しており、民生委員が制度発 足当時から持たされていた社会福祉制度・サービスの 民間サイドでの補完機能は、現在ではそれほど大きく 期待されていないように思われる。例えば介護保険制 度では介護支援専門員が専門的な相談支援を行ってお り、また地域包括支援センターで総合相談が展開され るなど、高齢者やその家族に対する支援は充実してき ており、住民が民生委員にこうした専門的な相談をす ることは稀であろう。しかしながら、制度の谷間にあ る問題や、複合的な問題への対応は、地域ではまだ十 分ではない状況にある。こうした課題に対して、行政・ 他の専門機関・そして地域住民とともに解決していく ことが民生委員に求められているであろう。 これまでみてきたように、民生委員の活動は「地域 福祉活動・自主活動」「個別援助」といった直接支援活 動が中心になっているが、地域住民の地域における活

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  動に対するニーズもまた高まっている。このような中 で民生委員は地域住民と同じ「民間」の立場でどのよ うな役割を持って上記の今日的課題に向かうべきかが 問われている。ここでは地域の代表として、地域住民 がその対象者をどう見ているのか、本人はどのように 困っている様子なのか、周囲はどう困っているのかを 専門職に伝えるとともに、住民や地域に対しては、今 地域にどんな課題があるのか、どのように対応してい くのかについて、住民に投げ返し、住民のボランティ ア活動につなげることが求められていると考える。

(2)基礎的活動

基礎的活動については、民生委員同士の横のつなが りや研修、専門機関への連絡や連携が求められている が、これらについては、単位民児協を中心とする組織 的な取り組みが求められるであろう。特に、単位民児 協の事務局体制については、行政などによる支援が必 要であると思われる。

(3)行政協力活動

行政協力活動については、民生委員のなかで、次か ら次へと投げかけられてくる行政課題に対する不満が 強い。ここでは、市町村の側で、さまざまな法律や制 度を十分整理して分かりやすく民生委員に伝えるとと もに、行政の担当部署間での連携を十分とって、対応 に混乱が見られないようにすべきであると考える。

(4)活動領域に分類できない活動

三つの活動領域に分類できない活動として、①証明 事務と②要保護児童の発見の通告・仲介の二つがある。 平成19年度社会福祉行政業務報告では「その他の活動 件数」に占める「証明事務」の割合は2.5%、「要保護児 童の発見の通告・仲介」の割合は0.5%と少ない。しか しながら、小林による因子分析の結果からは、これら 二つの活動は、これまで述べてきた三つの活動領域と は独立して一定の業務があるといえる。地域において 他に代替する機能をもつ機関がない、あるいは少ない のであれば、これらの活動を民生委員が行う意義は少 なくないといえる。

Ⅴ.おわりに

本稿では、ここ10年間に出された民生委員に関する 文献を4つ選び、90周年を迎えた民生委員制度に関す る課題と対応策について整理してきた。 民生委員制度は、2000年の法改正以来、地域福祉を 推進する立場から、住民の立場に立って住民とのネッ トワークを形成するとともに、見守り活動などの個別 支援活動を行うことが求められている。このためには、 民生委員自らが、住民のネットワークに積極的に関わ るとともに、民生委員自らが、活動の主体になること が求められている。このような活動が定着してくれば、 行政を含む専門機関との連携や協力体制も新たな局面 に進めるのではないかと思われる。 本稿で行った論点の整理に基づいて、今後さらに研 究をすすめてゆきたいと考える。

【文献】

金井敏(2008)「制度創設90周年を迎えた民生委員・児童委員 の機能を問う―期待と実態のはざまで―」、10-19、社会福 祉研究(101)、鉄道弘済会社会福祉部 金井敏(2000)「民生委員・児童委員活動における個別援助活 動のあり方について~福祉票の変遷と新しい実践を通じ て~」、79-89、地域福祉研究(28)、日本生命済生会社会事 業部 厚生労働省「平成19年度社会福祉行政業務報告」 小松理佐子(2007)「地域における相談活動と家族支援ネット ワーク―民生委員児童委員の役割を考える―(特集:浮 遊する家族と福祉課題)」、42-48、社会福祉研究(98)、鉄 道弘済会社会福祉部 渡辺武男(1999)「これからの民生委員・児童委員活動の役割 と課題―行政・他機関との連携と福祉の風土づくりをめ ざして―」、9-15、社会福祉研究(76)、鉄道弘済会社会福 祉部

【注】

i 活動記録ではこれら件数に加えて、相談支援活動の対象世帯 と相談内容を記録している。

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参照

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