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業務監査知識の吟味 (5) : 内部監査人を守る者

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(1)

業務監査知識 の吟味

(5)

― 内部監査人 を守 る者―

I 序 H 挟 撃招来の可能性 配 当 面の難敵 Ⅳ 監 査人の核心的役割 りと義務的要件 V 監 査 における人間関係関連事項 Ⅵ ま とめ I 序 内部監査 に従事する監査人が 自ら所属する組織 において監査人 としての役割 りを遂行す るのは,職 歴開発 プログラムの一部分 として等,比 較的短期の任命 1 ) 期 間中だけの こと,あ るいは,他 の職務 との掛持 ちとしてであ り,そ の存立基 盤 は 自ら所属する組織内の他の職員 と何 ら異 るところはない。すなわち,そ れ は監査人が所属 している組織 によって具体的に規定 された ものであるか ら,内 部監査 人 を直接守 り,あ るいは,こ れに干渉 し得 る者は,そ の所属 している組 織以外 にない ように見 える。 これ とは異 り,独 立 した職業専 門家 としての外部監査人 を守 る者 には,法 律 があ り,監 査基準があ り,会 計士協会があ り,職 業専門家 としての正当な注意 義務 を全 うしている限 りにおいては,そ の身分 は幾重 にも守 られている。これ を表面的に見 るならば,内 部監査人に対する組織の保護 と外部監査人に対する 社会的な保護 との間には明 らかに大 きなギャップが存在 しているとい うことに なるであろう。 これには事情の相違 とい うことも確かに働いていることを認め 得 るであろ う。外部監査 人の職務従事 は専任であるのに対 して,内 部監査人の 叡 居 ヤ酉

(2)

彦根論叢 第 318号 職務従事 は長期的に専任の ものでない ;一 方は職業専門家 としての社会的認知 をすでに獲得済みであるのに対 して,他 方はそ うでない とい うことがある。 し か しなが ら,内 部監査人 ・外部監査人をめ ぐる事情の相違 とか両者における保 護の厚 さのギャップといったことに異 を唱えるのは,あ たか も,長 子の立場 を 羨む弟 ・弟の立場 を羨む長子の如 きもの,あ るいは,そ れに近い もの として, これを解す ることがで きるであろう。すべ て人が道遇する事情 に相違するとこ ろがあるのは,む しろ,当 然のこととい うべ きであって, しか も各人その保護 される深奥の ところにおいては,格 別大 きな相違はない もの と解すべ きであろ 2) う。実際の ところ,内 部監査人 としての役割 りを首尾 よく遂行 してい くために は,第 3者 的独立会計士 としての資格の有無 に関わ りな く,職 業専門家 として 習熟 してお くべ き事項が数多 く存在 している。内部監査人 としての役割 りを担っ ている間に与 えられる保護あるいは批判 は,実 際の ところ何処 より来たるもの であるのか,保 護は何故の ものであ り,批 判は何故の ものであるのか。 この問 題 を念頭 にお きつつ,以 下,内 部監査人のあ りように関する若子の業務監査知 識 について吟味することに したい。 工 挟 撃招来の可能性 内部監査人が 日々の業務活動 において接触する人々を要約 して,G.W.Park一 er氏は以下の 3種 類の人々を識別 している。すなわち,(ア )監査部長兼監督者, (イ)被監査者,(ウ )監査 プログラム担当部長がそれであると 内部監査人が負 わ なければならない 日々の苦労の多 くが被監査者関連の ものであることは言 うま で もない として も,内 部監査人 を支援する側である筈の (ア)監査部長兼監督者 お よび (イ)監査 プログラム担当部長は,そ れぞれの呆たすべ き職責 を定義 され た組織人 として描写 されていることは注意 を要する。すなわち,こ れ らの人々

1)G.W.parker, Tん θれ筋物 aιム切αをけウ竹σり°lИ働句Qθて初%物けSグsけθ物島 Gower House, 1995, p.50.

1)2)案 に相違 して,各 人に与 えられる事情の相違 によって,そ の保護 されるところに最後 まで重大 な影響が残 ることがあった とすれば如何 , と問われるならば,心 を轟 し,思 いを 轟 し,精 神 を轟 して為すべ きことを為 したのであれば,そ の後のことは,結 果 をも含めて, すべ て委 ね るべ しと答 える しか ないであろ う。

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業務監査知識の吟味 ( 5 ) 3 とい え ども, 内 部監査 人 を支援 す るための無 限大 の権 限 を与 え られてい る者で

はなくて,その為し得るところを制約された組織人であるにすぎない。それ故,

内部監査人 に対するその支援 について も,何 時 も,何 処 まで も温い ものである との保証 は何 ら存 しない と解すべ きである。 (ア)監 査部長兼監督者 監全部長 (兼監督者)が ,内 部監査 のためのコス トを払 って もそれを上回る 利益 を得 ることが可能であると見ている着眼点は何処であるのか明確 に把握 し, このことについて内部監査人に情報伝達 しているのは当然なことである。また, 被監査者が監査人 を無視するような態度 とか妨害的行動あるいは消極的行動 を とろ うとす るとき,自 らの体 を張 って,そ のような行動の阻止 に当るというの もその職務上当然 なことであると言 ってよぷと しか しなが ら,被 監査者 として は,依 然 として様 々な口実 ・抗弁 を用いて,監 査人を苦 しめることが可能であ る。 この ような事態 に直面 した とき,監 査部長 (兼監督者)が 内部監査人のた めに為 し得 るところは,せ いぜい,被 監査者 に対 しあるべ き態度 を奨励するこ 5 ) とであるにす ぎない。 監全部長 (兼監督者)が 行使 し得 る権限の制約は被監査者関連事項 にとどまっ ていない。G.W.Parker氏 にあっては,監 査部長 (兼監督者)は 「そのス タッ フに対 し (監査)プ ログラムに監査人 として参加するよう促 し,時 間を繰 り合 わせ て訓練 をうけさせ」,さ らには,「スタッフが監査 に協力 して くれたことに 対 し感謝の意 を表 さ」 なければならない程である告 また不思議 なことに,監 査 人 によって示 された指摘事項 は経営者 に対 してのみ報告 され,必 要な是正措置 は経営者 によって とられるとは到底読み とることので きない表現がなされてい る。す なわち,監 査部長 (兼監督者)は ,「監査人 によってなされた明確 な指 摘事項 を被監査者お よび他の関係 当事者 に対 し報告す ること」 また,「 自ら必 要 と認めた是正措置 をとったことの経過報告 を監査 プログラム担当部長 に対 し 7 )

行うこと」とされている。是正措置に関するこの記述は,経 営システム担当内

3 ) - 5 ) G . W . P a r k e r , o p c あら p . 3 9 . 6 ) - 7 ) 助α. , p . 4 0 . 8)乃 あα.,p.35.

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4 彦 根 論 叢 第 3 1 8 号 働 部監査 人の職務限定 に関す る氏 の記述 との関連 において矛盾するところはない として も,自 ら必要 と認める是正措置 をとり得 る程の権限を与えられている監 査部長 (兼監督者)が ,監 査 プログラム担当部長 に対 しては,こ れまた弱い立 場 にある者 として描 かれている。す なわち,以 下の如 くである。 「監査 プログラム とその 目的を今一つ十分積極的に支持 しない監査部長兼監 督者は,自 然 と,組 織の中で よ り戦略的な役割 りを担 ってい くにふ さわ しい者 であるのか どうか疑念 をもたせ ることになる。その関心事 と目標 は視野の狭 さ を映 した もので しかあ り得ず,こ の ことによって監査部長兼監督者は明 らかに 限定 を受 けることになるであろうし,協 働者 として会社の信頼醸成 と改善 に寄 9 ) 与す る とい うこともで きない ことになるであろう。 ( ウ) 監 査 プログラム担当部長 監査 プログラム担当部長の役割 りは,監 査 プログラムの考案 ・提案 ・開発 ・ 情報伝達 ・管理 ・保持 ・評価 ・改善 ・販売 に至 る広範囲な ものである とされて 1 0 ) いる。それ故,監 査 プログラム担当部長の任 にある者が組織 とその活動 ・製品 ・サービスについてのみならず,関 係のあるシステム ・法令 ・基準 ・実践規範 1 1 ) ・課業等々に精通 していることは,そ の職責上当然なことと認め得るであろう。 ただ,監 査 プログラム担当部長 には他の者 には要求 されないい くつかの資格要 件が必要であると言 われている。す なわち,以 下の如 くである。 (1)監 査 プログラムの主題 である局面 ・課題 に関わ りをもった如何 なる履 1 2 ) 行責任か らも独立 した ものであること。 ( 1 1 ) 監 査 人 としての経験 を有 している者であること,あ るいは,監 査人 と しての訓練 を受 けた者であること, もしくは,以 前 に監査 プログラムと密接 な 1 3 ) 関わ りをもった ものであること。 (iii)説得力があ り,理 路整然 としていて,誠 実性あ りと認め られている者 1 4 ) であること。 (市)物 わか りがよくて,感 受性の鋭い老練な交渉者であることを 9)万bづα., p.40. 1 0 ) - 1 7 ) r b , α. , p . 4 3 .

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業務監査知識の吟味 (5) 5 要件 (11)によって,監 査 プログラム担当部長は,内 部監査人が経験する困難 な状況 というものを他の誰よりもよく知ってお り,現 役内部監査人の技量を最 も的確 に査定 しうる者 として位置づけられている。また監査プログラム担当部 長には,他 の部長やスタッフが監査人に協力的でない場合にも,必 要な場合に は,強 化措置を講 じつつ監査プログラムの続行を飽 くまでも推進 していく権能 が賦与 されているそ これを極論すれば,周 囲の人々の協力が得られなくて,内 部監査人だけの力では監査業務を遂行 し得ないという事態が発生 したときにも, 監査 プログラム担当部長の力によって監査は進行するということになるであろ う。ただ,こ こでは彼に与えられている 「監査業務推進のための権能」という ことにも勝 って彼 自身のうちに周囲の者を屈服 させるだけのもの (要件 (血)

( i v ) ) が

あるということが注目されねばならない。監査プログラム担当部長た

は,要 件 (1)に よって,監 査人に対 し格別肩入れする者でないことが求められ ているか らである。監査 プログラム担当部長には,監 査人から出される被監査 者の行動 に関連 した苦情のみならず,監 査人の監査行為その他の行動 に関連 し た苦情 をも解決する責任が課 されていセう。 このように,現 役監査人の目に強力の な味方であるように思 える監査 プログラム担当部長は,必 ず しもそのような存 在 ではな くて,現 役監査人か らは相当な距離 を置いた存在 として解すべ きもの であることがわかる。 田 当 面の難敵 G.W.Parker氏 の描 いている被監査者 とい うものは,当 該領域あるいは機能 に関 しては大使 としての知識 と権限を有する支配人 ・部長級の上級者であ り, 監査 を成功 させ るも台無 しにする もその心次第 という強力な立場 にある者であ 1 8 ) る。それ故,監 査人が被監査者からの協力を運よく取附け得た場合はともかく, そのようにならなかった場合においては,被 監査者は監査人にとって最大の難 敵 と仮することになるであろう。G.W.Parker氏によれば,被 監査者の役割 り とは,案 内人あるいは良い助言者が有 している役割 りであって,何 が起きてい 18)-19)乃づ冴.,p.41.

(6)

6 彦 根論叢 第 318号 るのか監査 人 に理解 させ ,ま た,問 題 になってい る基準 ・実務規範 ・手続 ・法 令等 に対 す る準 拠性 の有 無 を示 す証拠 は何 処 を捜せ ば見 出 され るか につ き手助

けすることにあるとされている

とし

かしながら,人は必ずしもそのように良K

しい者ではな くて, しなければならないことはせず, してはならないことはす るとい うが如 くに,求 め られていること,期 待 されていることとは正反対の行 動 をとることので きる者である。内部監査人 としては, 少 くとも, こ の ような 最悪の シナ リオを想定 して, な おかつ, 欠 けるところな しとい うことが保証 さ れるように対応するを要するとい うことになるであろう。 被監査者 として してはな らない こと, こ れ についてG o W , P a r k e r 氏が掲 げて いる明細書全 9個 条の中,一 見,監 査人が直接知覚 し得 るように見 える以下の ものについては,そ の存在 を監査 プログラム担当部長 に直ちに報告することが 可能であるかの如 くである。 けんかごし 2 0 ) ・妨害者と して行動すること,喧 嘩腰であること,非 協力的であること。 しゃべ 2 1 ) ・監査人 と議論すること,あ るいは,つ まらないお喋 りをすること。 ・監査人に誤 つた判断をさせ ようとすること,あ るいは,監 査人を脇道へ逸 2 2 ) らせ ようとすること。 ・矛盾の存在が明らかになったときに,罪 を他者に負わせ,同 僚や経営者を 2 3 ) 批 半J する こ と。 2 4 ) 。いつも頭文字を用いること。 ところが,上 記いずれの事象 も,監 査人が監査 を遂行する途上で必然的に発生 すること,な いし,発 見 されることであ り,詳 細 を調べないうちから何 も見つ けることはできないという点において以下の個条と何 ら異るところはないこと がわかる。 ・証拠を隠 した り除去 したりすること,あ るいは,記 録 とか1青報の修正を行 2 5 ) うこと。 ・消極的な取組みをするように,あ るいは,(監 査人からの)質 問に対 し嘘 2 0 ) - 2 2 ) 乃 ケα. , p . 4 2 . 2 3 ) - 2 4 ) 乃 勉 . , p . 4 3 . 2 5 ) - 2 7 ) r b うα. , p . 4 2 .

(7)

業務監査知識の吟味 ( 5 ) 7

の応

窮rす

るように他者に影響力を行使 しようとしたり,脅 迫しようとす

る こ と。 ・監査 人 に対す る個人的感情 によって,あ るいは,被 監査者が所属 している 定 型 グル ー プの方針 に よって, 監 査 人 に提供 され るべ き答 の正直 さ,完 全

32ま

,あ

,消

気の散り

,あるいは,妨害についての手筈を整えること

叙上の如 き“被監査者 として してはならないこと" は , 調 査 を通 じて監査人 が発見 し,監 査 プログラム担当部長等関係者の力 を借 りてこれを制圧する以外 にない ものである。それ故,“被監査者 として してはならないことをしている"

ということが発見された暁には,被監査者は直ちにその地位から転落すること

になるであろう。 しか し,そ のためには,被 監査者の仕事について相当細部に 至るまで調査することができるということが前提 とされなければならない。G. W.Parker氏の如 く,ご まか し行為 ・詐欺 ・悪意のある実務 ・ぞんざいな実務 が見出されるという明らかな証拠が提示されているのでない限 り,被 監査者の 仕事 ゲF検 討 された り再評価 された りすることはあってはならないというので あれば,被 監査者のおのおのに対 しては目に見えない網を張って常時監視 して いることが必要になるであろう。そうでなければ,両 者 (被監査者としてして はならないことは為されていないということの確認と被監査者を被疑者の如 く に扱ってはいないということの確認)の 共存共立を確保することは不可能であ るという他はない。否,む しろ,人 は誰でも,何 処にいる時も絶えず見張られ ていると言えるようになっているのかもしれない。 “ 被監査者 として してはならないこと"に 比べるならば,“被監査者 として しなければならないことルとか “被監査者 として為 してお くべ きこと,“被監 査者 としてしようと思えばできること"な どは,相 対的に比重の軽い事柄であ ると考えることができる。すなわち,指 摘 されてみれば尤 もなことではあって 万bあα., p.43. rbづα。, p.41.

(8)

8 彦 根論叢 第 318号 も,違 反 に言 い逃 れの き く自由裁量 的要件 については,監 査 人 と被 監査 者 との 駆 引 きに委 ね られてい る と解 す る他 は ないで あ ろ う。 自 らに与 え られ てい る仕 事 の全分 野 に監査 プ ログ ラム担 当部 長以 下 関係 者 の介入 を要請せ ざる を得 ない とい うこ とは,監 査 人 と して余 りに も不名誉 な こ とと言 わ ざるを得 ない。 Ⅳ 監 査人の核心的役割 りと義務的要件 G.W,Parker氏 は経営 システム監査 の実施 目的 とともに監査人が この 目的 を 達成するうえで不可欠 な要件 を掲 げている。 これは言わば,そ れ らの是非 を問 いかけているもの と解することがで きるであろう。先ず,経 営 システム監査の 実施 目的 として掲 げ られている ところは以下の如 くである。 ロサ ンプリングによつて,求 め られていること ・規定 されていること ・為 さ れていることの間に不一致のあることが見出 された場合 には,そ のことを示す 客観的証拠 を発見 し,ま たそ うす ることによつて,経 営 システムに建設的な変 3 0 ) 更あるいは改善 を行 うには どの ような時が よいか識別す ること。 □発見事項 は,偏 見 な く,ま た非難や訴訟 に巻 きこまれることのない ように 3 1 ) 留意 しつつ,正 しく公平 に,そ して,素 早 く明瞭に記録 し報告すること。 ここに掲 げ られている監査実施 目的中,最 初の ものに示 されている “求め ら れていること ・規定 されていること ・為 されていることの間の不一致"が 意味 す ることについては,前 に筆者の解釈 を示 した。すなわち,そ れは肝心 な “経 営 システムに関 して求め られていること,た とえば,環 境問題 に関 しての法的 規制への服従等"が 完全 に為 されていない とい うことであ り,経 営 システムの 目的は曖味 さな く識別 されているにもかかわ らず,こ れを着実 に推進 してい く 3 2 ) ための規定 とか手続が未整備状態 にあるとい うことであった。このような解釈 に立つ とき,上 掲経営 システム監査の実施 目的は企業内構成員がそれぞれ会計 責任 を覚 えているか否か問いかけ, こ れ を確認す る もの となってお り適切 とい 30)-31)乃 づα.,p。40. 32)拙 稿 「業務監査 知識 の吟味 (4)一監査 人 と して恐 れるべ きこと一」,彦 根論叢,第 315号 (平成10年11月),151頁 。

(9)

業務監査知識の吟味 (5) 9 う他はないであろう。それ故次には,こ のような経営システム監査の核心的目 的を達成するための手段の適切性如何 ということが問われなければならない。 先ず,監 査すべ き部署に向かうまでの段階で確認 してお くべ き事柄 として以下 の 6点 があることをGo W.Parker氏は示 している。すなわち, 3 3 ) (1)監 査 を統制 す る こ と。 3 4 ) (11)積 極的 ・建設的な雰囲気 を作 り出 し,こ れを維持すること。 (五1)隅 々にお よぶ調査 のために,十 分 な技量 ・必要なすべての技量 を行使 3 5 ) し適用すること。 (iv)主 題の範囲 にかかわ りをもつすべ ての局面 に関 しての吟味事項 を注意 3 6 ) 深 く準備 してお くこ と。 3 7 ) (v)規 定 されている手続 に従 って監査 を行 うこと。 (vi)監 査人が云々の監査 テーマ,あ るいは,監 査領域,課 題 を担当 したの では不公平が生 じる恐れがい ささかな りともあるとい う場合 には,あ らか じめ,こ のことを監査 プログラム担当部長に打 ち明けてお くこと。 監査人 と監査対象領域の部長 ない し被監査者 との間に縁故関係がある 3 8 ) とい う場合 において も同様である。 ( i ) の 「監査 を統制すること」の意味は必ず しも自明なものであるとは考 え られない。あいに く,Go W.Parker氏はこの ことについて格別踏み込 んだ説明 3 9 ) を与 えていないので,今 試みに,こ れを以下の如 くに解 してみる。すなわち, 監査 人は,言 わば,監 査 (人)に 対 し潜在的に敵意 を抱いているか もしれない 人々の職域 に乗 り込 んで調査作業 を行お うとするのであるか ら,監 査作業現場 で衝突や小競合の発生する可能性 は固 よりあるもの と覚悟 しておかなければな らない。 しか しなが ら,監 査作業現場 における衝突や小競合いの発生は,理 由 の如何 を問わず問責事象 とな り得 ること,被 監査者の側 においてのみならず監 査人の側 において も同様 であるか ら,被 監査者 によって監査人の挑発的言動で ある ととられかねない ことは監査 人の側 においてこれを厳 に慎 しむことは言 う 3 3 ) - 3 7 ) G . W . P a r k e r , の c あけ. , p . 4 0 . 3 8 ) r b あα. , p . 4 1 . 3 9 ) 乃 づα. , p . 4 6 .

(10)

lo 彦 根論叢 第 318号 に及ばず,被 監査者の側からの冷遇その他の挑発的言動に道つても一切 これに 対応することのないように,そ してまた,仮 にこのことについての違反があれ ば厳罰に処す旨を監査実行チームの全メンバーに徹底 してお く必要があるであ ろう。このような方針のもとに,監 査実行チームがあたかも特別な戦闘集回の 如 くに一九 となつて働ける状態にあることとして,この 「監査を統制すること」 を解することができる。 監査作業に着手 した後,監 査人が守るべ き事項はおよそ以下の如 きものであ る。

(前)監 査範囲お よび時間基準の内にとどまること (remain within the andit sCOpe and timescale)。ただ し,監 査人が潜在的な問題がある

ことに気付 くようになつたのが監査範囲の境界線を調査 しているとき であつたとか,会 計期末辺 りの事象を調査 しているときであつたとか いう場合にはこの限 りでない。このような場合には,問 題解決に必要

なところまで精力的に追跡がなされるべきである。監査範囲外?問題

にまで及ぶというのでない限り,追 跡が熱烈なものであつても許容

4 0 ) れ る 。 監査 の範囲お よび時間基準 を曲げることはで きない ことであるけれ ど も,監 査の範囲お よび要求事項 を明確 にするため必要な人々と協力 し, これ らの人々の質問が合理的なものである限 り,そ の質問のすべてに ついて答 えること。 4 1 ) 職業専 門家 らしく,そ して,誠 実性 と正直 さをもって振舞 うこと。 証拠 を修正す るように,あ るいは,隠 す ようにとい う勧誘があっても, これを受 け入れない ようにするとともに,そ の ようにせ よとい う圧力 に屈す ることもない ようにす ること。 (この ような試みがあつた場合 においては,監 査 プログラム担当部長 に対 し,こ の旨,内 密に報告す 4 2 ) べ きである。) (対)安 全性および社会の安寧に関する地域規制に従 うことO(このような規 ”Ⅷ ・︲ X     X 40)-41)rb初 .,p.40.

(11)

業務監査知識の吟味 ( 5 ) 1 1 制 に よって容観 的 な証拠 を収集す る こ とに支障が あ った とか, 監 査 の 4 3 ) 範囲が制限されたという場合にはこのことについて報告すること) 先ず (vii)の「監査範囲」 とは何 を意味するものであるのか考えてみよう。た とえば,環 境問題に対する社会の要求に応えるために,経 営システムが設定す るであろうと思われる目的には,前 記引用の如 く,(イ )法的規制に対する服従, (口)汚染事故発生の危険 とそれに伴 う失費の削減,(ハ )緊急時に採 られるべ き 4 5 ) 手続の設定等々総計11項目のものが存在 している。今年度においては,こ の11 項 目のすべて,あ るいは,こ の中の数項目のみを監査対象 とする旨監査人が決 定 したとすれば,監 査人によつて選ばれた上記項 目が監査範囲となるというの が 「監査範囲」に関する素朴な解釈であろうと思われる。 しか しながら,こ の ような解釈 をもって しては,「監査範囲の境界線」が何 を意味するものである のか判然 としない。ここに,「監査範囲」の第 2の 解釈 として,た とえば,(イ ) 汚染事故発生の危険とそれに伴 う失費の削減,が 計画通 り進んでいるかどうか 調査する場合を取 り上げて考えてみると,各 地に点在 している自社事業場のお のおのについて何個所か調査地点を設定 し,水 質調査 ・土壌調査 ・灰塵調査 を 実際に行わなければ何 も発言することができないわけであ り,こ の各種調査の ためのポイント (地点)を もって 「監査範囲」 と解する立場が成 り立つ。この ような解釈に立つ とき,「監査範囲の境界線」 とは 「監査人は云々のところま では実際に調査活動 を行 うが,他 のものについては行わないとする調査活動の 最前線」 と理解することができるであろう。(x)監査人が証拠を修正せよとか 隠すようにという勧誘や圧力を受けたときの措置 としての監査プログラム担当 部長宛報告が内密のものであるようにとの指示は,格 別な意味をもつものでは なくて,い ずれ厳 しい処罰の下 らざるを得ない被監査者にとっては不名誉なこ とであるが故に,そ このところを配慮 して,と いう以外に考えられないであろ う。(対)「安全性および社会の安寧に関する地域規制に従 うこと」については, たとえば,廃 棄物の処分法について自社に定められているものがあ り,そ の通 4 2 ) - 4 4 ) 乃 初 . , p . 4 1 . 4 5 ) r b をα. , p p . 2 5 - 2 6 .

(12)

12 彦 根論叢 第 318号 り行 われていた として も,自 社の事業場が存在 している地域 においては,そ れ と異 なる規制が敷かれているか もしれない という場合 を想定することがで きる であろう。この ような場合 には,自 社の定める規制 に従 った処分法であるか ら 問題 な しとす るのではな くて,自 社 にとっての他者である地域の規制 に照 らし て問題 ないか判断す るようにとの要請であると考 えることがで きる。如何 にし て も譲ることので きない主張である場合はい ざ知 らず,自 己の主張 を押 え他者 の主張 を受け入れるとい うことは,一 見敗北のようであって実際はそうでな く, 賢明な選択行動 と解す ることがで きるであろう。 以上の如 く,内 部監査人の独立性,被 監査者 に対する配慮 と共に,不 正 に対 す る毅然 とした態度,職 業専 門家 としての外観 と誠実性 ・正直 さなど凡そ浴び せ られる可能性 ある批判 に対応 した要件が,監 査 目的達成のための手段 として 列挙 されていることを認めることがで きる。 しか しなが ら,人 とい うものは如 何 なる場合 において も,義 務的要件が満たされた状況が備 えられているならば それだけで好意的 ・協力的な行動 に出て くれるものでは必ず しもない と考 える のが妥当である。人は互いに相手方 を見て,如 何 なる行動 に出でるべ きか推 し 測 つていると考 えることがで きる。 もし内部監査人が監査部長兼監督者や監査 プログラム担当部長か らよリー層の支 援 を得たい と願い,被 監査者か らもより 一層の協力をとりつけたいと願 うなら,義 務的要件の充足の他 に少 くとも今一 つのプラスαが必要である。 V 監 査における人間関係関連事項の充足 被監査人 を して 「次 回の監査が楽 しみである。 自分 も監査人になってみたい 4 6 )

程である。

」 と″

ふ底思わせることができ,監 査プログラム担当部長からも 「

査人によって発見された事項は正 しくその通 りのものであり,申 し分のない監

4 7 ) 査が行われた。」 との評価 を受けることができるならば,(内 部)監 査人として はこれに過 ぎる満足はないものと言 うことができるであろう。 しかしながら, このような状態を現実に来たらせるためには,監 査人と被監査者,あ るいは, 46)-47)rbあ α.,p.45.

(13)

業務監査知識の吟味 (5) 13 監査 人 と監査 プログラム担 当部長 との間 に良好 な人 間関係 が保持 されているこ とが どうして も必要であると今,監 査人においてこのような人間関係の構築を 望 む とい うのであれば,動 くべ きは監査人 自身であって,い ささかな りとも他 者 に要求するところがあってはならない とい うことがで きるであろう。被監査 者等関係者 との人間関係 を良好 な状態 に保 ち,常 に支障な く監査業務 を遂行 し 曇岳査畠 i3冒 皆禄母│ナ る職業専門家 としての (内部)監 査人には以下の如 き (ア) て きぱきしていること。 (イ)統 制 された者であるとい うこと。 (ウ)内 緒事 をも打 ち明け られるとい う信任の厚 さお よび頼 りになること。 (工)ネ L儀正 しく,丁 寧であること。 (オ)勤 勉であること。 (力)思 慮深いこと。 (キ)外 交手腕のあること。 (ク)公 平で分別のあること。 (ケ)親 切かつ快活であること。 (コ)客 観 的であること。 (サ)忍 耐強い こと。 (シ)根 気 の よい こと。 (ス)人 前 に出て も恥か しくない身形 を していること。 (セ)時 間を守 る者であること。 (ソ)敏 感 な者であること。 (夕)ユ ーモアとか機知 を用いることによって協調的な雰囲気を持続させる ことがで きる者であること。 (ア)の意味するところは,監 査が時間潰 しではないことを暗黙の うちに被監 査者 にも示す とい うことであ り│(オ )の 「勤勉であること」 とも相通 じる要件 4 8 ) r b ぢα. , p . 4 5 - 4 6 . 4 9 ) 乃 ぢα. , p . 4 6 - 4 7 .

(14)

彦根論叢 第 318号 として首肯す ることがで きるであろ う。注意 して考慮 すべ き要件 は,(イ )の 「統制 された者であること」お よび( 工) の 「礼儀正 しく,丁 寧であること」で ある ように筆者 には思 われる。G.W.Parker氏の示す ところによれば,「統制 された者 であ るこ と」 とは,「具合 いの悪 い感情 を見せ ない こと」 あるいは 「自分の思い通 りに感情 を表わさない こと」,「敵意のこもった感化 に支配 され 5 1 ) ないこと」 ということであ り,そ の望ましさについて異論のあ りよう筈 もない。 要するに,被 監査者の側から大いに気に障ることをされることがあったとして も,「むっとしない」「腹を立てない」 こととしてこれを解することができるで あろう。 しか しながら,こ れとの関連において 「ネL儀正 しく,丁 寧であること」 の内容をG.W.Parker氏の説明に見るとき,以 下の如 くに表現 されている。 「気に障ることをされた場合においてさえも,道 理をわきまえた人の礼儀正 しさというものは,洗 練 された行動の基礎であるということ,こ のことは分か 5 2 ) りきつた真理である。」 そ もそ も 「気 に障 ることをされた場合 にも」 とい う表現が指 し示す ことは, 「被監査者が監査 人 に対 し何事 か を意図的に仕掛 けた」 とい うことと解 される であろう。 ここで監査人が立腹 し何 らかの行動 に出ることは,正 しく被監査者 の仕掛 けた挑発 に乗 ることになるが故 に,こ こは懸命 に堪忍 して争いを回避す べ きことではあるけれ ども,そ うであるか らといって,あ たか も何事 もなかっ たかの如 くに,た だ粛々 と監査作業 を進めてい くとい うのは,被 監査者の側か ら何 ら文句のつけようがない賢明な対処法であるとして も,被 監査者の存在 を 無視 した冷い対処法である とい う他 はない。 この ような対処法 に接 した とき, 「監査人恐 るべ し」 との思いが被監査者の心 中に生 じる保証はない し,何 より も,被 監査者が監査人に心服する道はこれによつて完全 に閉ざされたと解する ことがで きる。た とえ被監査者 との争いは避けるとして も,抗 議の意思表示 を 何 らかの形 で示す ことの方が,「気 に障ることを仕掛 けて きた」被監査者 に対 し愛 をもって接す ることになるであろ うし,「内緒事 をも打 ち明けられるとい う信任 ・信頼」 を築 き上 げてゆ くうえでの端緒 となる着実 な方法であるように 50)-53)乃 あα.,p.46.

(15)

業務監査知識の吟味 ( 5 ) 1 5 筆 者 には思 われ る。 ( 力) の 「思慮深いこと」 とい う要件 は,包 括的な概念であるが故 に,本 来的 には,(力 )を除 く(ア)∼ (夕)のすべ ての内容 を網羅する要件であるが,G.W. P a r k e r 氏が これに与 えている意味 は限定的な ものである。すなわち,「監査人 の知 っている情報ではあるが,他 の人に不利 な影響 を及ぼすであろうと思われ る秘密情報 は何であれ,こ れを被監査者あるいはその他の人々に漏 らさないこ 5 4 ) と」 というのがそれである。このような意味における要件 (力)は,ま た,前 掲 要件 (イ)と密接な関連性 をもっていることがわかる。(キ)の 「外交手腕のある こと」 という要件の内容 もまた以下に紹介 している如 く限定的なものである。 すなわち, 「監査人が精神 を集中すべ きは,問 題点に対 してであってす人身攻撃 とか人 が為 した誤 りに対 してであってはならなぼ告」 このような主張は,恐 らく,「罪を憎んで人を憎まず」を通 り越 した規範的 命題 と解すべ きものであって,是 認 されるべ きものであるか否かG.W.Parker 氏は読者に問いかけていると解すべ きものであろう。筆者 としては,「人を憎 まず」は固より首肯すべ きことであるとしても,「罪」 とか 「誤 り」を憎まな いということは 「人を愛すこと」 と相容れないことであるが故に,こ の限 りに おいて,G.W.Parker氏 の見解に同意することができない。人を恐れ,人 の気 に障ることは一切これを差控えるということは,一 見,人 を愛することのよう に見えて,実 際はその逆であることに気付 く必要があるように思われる。 (ク)の 「公平で分別のあること」,(ケ )の 「親切かつ快活であること」,(コ ) 「客観的であること」 という3要 件は,G.W.Parker氏 にあっては,ほ ぼ同様 な意味内容 をもった要件である。G.W.Parker氏にあっては,「親切かつ快活 であること」 とは,「党派的な人物でないこと」あるいは 「余 りにも情にもろ

いということのないこと」だからであるといずれも,要件(イ

)を

支える不可欠

な要件であることは明らかであろう。

(サ)の 「

忍耐強いこと」,(シ)の 「

根気のよいこと」という2要件も,ま た,

5 4 ) - 5 7 ) / b づα. , p . 4 7 ,

(16)

16 彦 根論叢 第 318号 相似 た意味 内容 を もつ要件 で あ る。 これ は,テ ス トす る側 の監査 人が,そ のテ ス トの過程 において,被 監査 者 の側 か ら逆 に非公式 にテス トされてい るこ とも あ りうるということ,そ して,そ のような場合における監査人側の最上の対応 策はこれ以外 にないということをも併せて明らかにしている。すなわち,被 監 査者の側において監査人に対 し垣間見せる敵意は本物であるか否かはいずれに せ よ,監 査人が現実に直面するところのものであ り,監 査人の注意を外 らそう との試みがなされていることは明々白々なことであ り,証 拠隠 しの行われてい ることは紛れもない事実であるとしても,監 査人は短気 を起こしてはならない ということである。このような監査に対する妨害工作が見せかけのものである か否かは不明であるとしても,監 査人が種々の妨害工作に印,も怯むことなく問 5 7 ) 題点の調査 ・追求 を続 けてい くことがで きるとい うことは,監 査人の心 に僅か な りとも曇 るところがない とい うこと,そ してまた,い かなる難関をも克服 し ていける味方が監査人 と共 に居 るとい うことを意味す るものである。 このこと は,ま た,監 査人 を試みる者 も,い ずれは,監 査人の前 に降伏せ ざるを得 ない 者であることを意味 している。 (ス)「人前 に出て も恥ずか しくない身形 を していること」 について。 この要 件が満 た されているな らば,被 監査者は監査人 を見てこれに心服することにな るな どとは勿論考 えることがで きない。監査人ならず とも,み すぼ らしい身形 をしている場合,あ るいは,過 度 な略装 を している場合 には,こ のことだけの ために,こ れを見ている人の方が不快 を感 じ,相 手方 に対する尊敬 とか信頼で はな くて,嫌 悪の情 とか横柄 な心 を見ている人の内に生 じさせ ることが往往 に してあ り得 るとい うことは確かである。 このようなことは余 りにも物質に起因 す ることであるが故 に,重 要性 において も他の要件 より劣 るように見 えて実は そ うでない とい うこと,一 個の重要な要件 として認めるべ きであるとい うこと をGo W,Parker氏は指摘 していると解す ることがで きる。 この要件 は確かにそ の通 りの もの として首肯すべ き要件ではあるが, しか しなが ら,こ の要件 に対 し一言異議 を唱 えたい思いが誘発 されるのは,こ こで求め られている事柄が, 矢張 り 「身形」 に限定 されていることにあると考 えることがで きるであろう。

(17)

業務監査知識の吟味 ( 5 ) 1 7 この点 に関す るG.W.Parker氏 の主張 の本 質 は,「人前 に出 て も恥 か し くない 状 態 を保 ってい る ように」 と解 すべ きものであ ろ う。 「監査 人 はその外 面 のみ ならず,否 ,外 面 にも増 して,内 面 を清 く保 つてお くように」 とい うが如 くに G.W.Parker氏 の掲 げている要件 (ス)を解することには無理があるか もしれな い として も,本 当の ところはこのように解すべ きものであると筆者は考えてい る。 (セ)「時間を守る者であること」などは,一 見,他 の要件に伍 して取 り上げ られるべ きものであるのかどうか議論の対象になり得る程の小 さな要件に思わ れるであろう。 しか しなが ら,被 監査者 と約束 した面会時間に監査人が遅れる ということがあるならば,直 接的には,被 監査者の不興 ・いらだちを招 くこと になるであろうし,長 期的には,監 査人側の約束違反は被監査者を守る一種の 武器の如 きものとして,そ の記憶 にとどめられざるを得ないものとなる。この ような事態は,被 監査者から成丈多 く協力を取 り付けたいと願 う監査人にとっ て,決 して小 さくないマイナス的事象 として作用するであろうことが予想され る。G.W.Parker氏の如 く,ご まか し行為 ・詐欺 ・悪意のある実務 ・ぞんざい な実務が見出されるという明らかな証拠がある場合は別 として,内 部監査の目 的は非難 とか罰を招 くような事共の存否を尋ね求めることではないと宣言 して 5 8 ) いる場合 においてさえも,監 査人は被監査者か らの攻撃の対象にな り得 る存在 5 9 ) である とい うことをよくよく念頭 においてお く必要がある。あるいは,被 監査 者の側 における言い訳 を許 さない監査 を行 うためには,監 査人の側 には非難す べ き点は何 も認め られない とい う状態 を保 っていることが前提条件 として必要 6 0 ) になると言 うこともで きるであろう。 (ソ)(夕)の 2要 件 は,元 来 1個 の要件で あった もの を分析 して掲 げた もの と理解することがで きる。すなわち,監 査 開 始後順調 なごやか に進行 していた監査 も,監 査人の機転 ・配慮がなければ,突 如 として監査 人 ・被監査者間に緊張が生 じ,両 者間の協調的雰囲気が害 される とい う事態 に発展することは大いにあ り得 ることと言わなければならない。 し 58)rbウ冴., p.41. 5 9 ) 乃 勉 . , p . 4 2 . 6 0 ) r b ウα. , p . 4 7 .

(18)

1 8 彦 根論叢 第 318号 か しなが ら,こ の ような事態 は単 に無益 であ るばか りで な く,監 査 人 に とって は 自己の問題解 決能力欠如 を明確 に示す もの となるが故 に,こ の ような事態の

発生は何としてとこれを阻止するということでなければならないであろう。ユー

モアとか機知 を用いてこの ような事態 を回避 し,不 利 な結果 を来たらせない と い うことがで きるためには,監 査人は自らを客人 とするのではな くて,む しろ, 客人 をもてなす側の者の如 くに謙遜 に気配 りをするように求めているのが この 要件である と解することがで きる。 Ⅵ ま とめ 以上の議論は内部監査人となり得るものについて特別な選抜上の配慮 をする ことは不要であるとの前提のもとに成 り立つ ものである。如何にも前 2節 にお いて紹介 したような要件のすべてを無理なく満たすことのできる人物のみ職員 として在籍 しているというのであれば,そ の中の誰が何時内部監査人 として選 任 されようとも内部監査はスムーズに行われることであろう。ただ現実は必ず しもそうではないが故に,監 査人として不適当な者が適当とみなされて適材適 所が満たされていないことに起因する損失が生 じる可能性はあると言わなけれ 6 1 ) ばならない。人は運命論に降伏すべ きでないというのであれば,こ のような損 失 を回避するための手立てということが捜 し求められなければならないであろ う。 理想的な監査人候補者に備っているべ き人格の有無を判断するに際 しても, 私達が通常用いる基準は一定の行動上の特徴 (表面的特色)で あると解するこ 6 2 )

とができるであろう。しかしながら,職 場における面談あるいは短期間の観察

のうちにこれを把握 し,そ こから所定の時 ・所定の人に及んでいる文化的圧力

61)rbあα.,p.50。 実生活 において捜 し求め られる候補者は,以 下の如 き人すべ てに及が と されているけれ ども,そ うであるか らといって誰で もが適合者 になるとい うことにはな ら ない と解 してよいであろう。 「不適合 因子が余 りに も極端 な ものでな く,か つ,そ の他すべての個人的特徴 ・素質 ・ 技量が容認 し得 る もの,あ るいは,現 在容認 し得 る状態 にはな くて も,そ の ように開発す ることが可能である者」 62)-65)乃 初 .,p.46.

(19)

業務監査知識の吟味 (5) 19 ・仕事 に関す る動機付 けに左右 されない根本的人格 因子 (根源的 ・人格的特徴) 6 3 ) を認識することは全 く困難であると言わざるを得 ない。人には自らの行動 をコ ン トロールする能力がそれぞれ与 えられてお り,そ の結果,器 用 な人間にはそ 64) のタト観に臨 されることがあ り得るということがその理由として識別されている。 実はこのような背景のもとにおいても然るべ き地位への候補者選任が間違いな く行われるようにということから,精 神測定テス トとして知 られる科学的人格 6 5 ) 素描法が開発 され頻繁 に用い られるに至 った とい うのである。この ことを承知 66) してお り,ま た運命論 に降伏す ることを潔 しとしない告のG.W.Parker氏は, 内部監査人の選任 に精神測定テス トを適用することには無理があると考 えてい る。その論理は,ひ とえに,一 時的に,あ るいは,片 手間的に内部監査部門に 在籍す るにす ぎない内部監査人 ( 候補者) を 正規の職業専 門家 としては受け容 6 7 ) れることがで きない とい うことにある。 しか しなが ら,内 部監査人 としての在 任期 間の長短 にかかわ りな く,在 任 中の内部監査人は職業専 門家 として期待 さ れ,そ れに相応 しい職責 を担 うもの と解 してよいであろう。そ うでない とい う のであれば,前 2節 の議論 も頭初か ら無益 な ものであった と言わざるを得 ない であろう。内部監査人 を正規 に置 くことは不要であるとい うのであれば,す べ ての議論 はただのお しゃべ りと仮 し,止 まざるを得 ない。 しか しそ うで もない とい うのであれば,正 規の職業専門家 としての外観 ・形式的要件 ・誠実性 ・プ ライ ドを内部監査人か ら除去 して しまって,果 た して どれだけの ものが内部監 査 人の もとに残存するのか と問わなければならない。現段階においては未だ精 6 8 ) 神測定 テス トは精巧 な ものでないが故 に, そ の弱点 を考慮 してお くべ きことは 乃あα.,p.21. 万Dあα., p.50. rbぁα., p.47-48. 精神測定 テス トは,数 十年来,性 格 に関する種々の科学的モデルを用いて幾百 とな く開 発 されて きているに もかかわ らず,科 学的モデル自体必ず しも矛盾 しない もの と限 らず, また,同 じ用語で表現 されているわけで もない とい うのが弱点の第 1で あ り,大 抵の精神 測定 テス トは性格力学 ない し状況の重要性 を顧慮 した ものになっていないので,早 撮 り写 真 の如 き不正確 な画像 しか得 られない とい うのが弱点の第 2で ある とい う。それ故,精 神 測定 テス トの結果 を唯一の査定基準 とす るようなことはあってはな らず,認 知 テス ト ・課 業の出来栄 え ・グループの成績 ・面接 に基礎 をおいた査定基準等その他 の査定基準 と/

(20)

︱ 十 2 0 彦 根論叢 第 318号 言 うまでもないことである。 しか しながら,内 部監査人の職務従事は長期的専 任のものでないという職業専門家 としての弱点を補強するものとして,内 部監 杢人 (候補者)に 対 し精神測定テス トをあらか じめ課 してお くことには利益は` 6 9 ) あっても不利益はないのでないかと筆者は考える。いささかなりとも純益があ るという場合においては,こ れは大切にすべ きものであって放棄すべ きもので あるとは考えられない。 \ ともに考慮 されるべ きもの とG.W.Parker氏 は認識 している。ただ,そ の ような精神測 定 テス トの中にあ って も,R.Cattellの考案 になる16性格 因子 テス トと呼 ばれ る ものは, その妥 当性 と信頼性 において一般 に比類 な きものであ り,そ の他のテス トの 目盛 り検定 ・ 正 当性 の立証用の基準 となるに至 っているが如 くに,あ る程度,依 存可能なもの もあるこ とは注意 を要する。 69)前 掲R.Cattellの16性格因子テス トに基礎 をおいた 「監査人向 き理想的な性格 プロフイー ル」 によれば,せ かせか した神経質な人 ,心 配性 な人 ・急進的な人 ・慣例 にとらわれない 人 ・す ぐに怒 る人 ・疑 うとい うことを知 らないお人好 し ・集団行動 の好 きな人 ・知性 の低 い人 ・情 に もろい人 ・断回 とした ところのない人は監査人 に不向 きであ り,遠 慮勝 ちでは あるが積極 的であ り,素 直であ り,温 厚 ではあるが我の強い ところ もあ り,日 々反省 をよ くす る者 ではあるが顕示的 な ところ もあ り,臆 病 なところがあるか と思えば大胆 なところ もあ り,こ だわ り少 くさらりとした,柔 軟性 とともに意固地なところも持ち合わせている, こうい う性格の人が理想的な人 とい うことである。G.W.Parker,の .cケ.,pp.49-50,

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