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評価は評価では決まらない(PDF:93KB)

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日本労働研究雑誌 1 普遍的にベストの評価制度は存在しない 「評価は公正かつ客観的に行われなければなら ない」。こうした「あるべき論」を聞くと,何か 普遍的にベストの評価制度がありそうであるが, どの企業にも,どの社員にも適用できる普遍的に ベストの制度はない。評価制度を考えるさいの重 要な出発点である。 評価には「何を評価するのか(つまり評価にあ たって何を重視するのか)」と「いかに評価する のか」の二つの側面があり,後者については確か に普遍的なことがありそうである。たとえば「あ る能力を重視する」という評価基準を設定した ら,どの社員にも等しく適用されねばならない。 また基準に基づいて上司が部下を評価するさいに は,主観的ではなく客観的に行われなければなら ない。技術的にどのように実現するのかについて は難しい点が多くあるが,評価を行うさいに守る べき普遍的な原則であろう。しかし「何を評価す るのか」については,そうした普遍的な解はない。 この点は,サッカー・チームをみると分かりや すい。監督が変わると重用されるプレーヤーが変 化する。チームの勝利に貢献するプレーヤーを高 く評価することでは監督による違いはないが,ど のようなプレーヤーが勝利を生むかが不確実であ るため,監督が考える戦略によって,どのような プレーヤーが望ましいかを決める基準(つまり, プレーヤーを評価する基準)は異なってくる。企 業も同じことである。経営に貢献する社員を高く 評価する点では変わらなくても,どのような経営 を行うのかは企業によって異なり,そのため評価 にあたって重視することは企業によって異なる。 また同じ企業のなかでも,社員に期待することが 異なれば,評価するにあたって重視することは異 なってくる。 「ましな組合せ」の選択は経営に依存する このようにみてくると,すべての企業,社員に 適用すべき評価の一般解はなく,それぞれの文脈 の中で成立する特殊解しかないということになる が,それでも,ある環境条件のなかで共通する傾 向は見出せるかもしれない。 そのさいに注意すべきことは,どのような制度 をとったとしても功罪両面があるということであ る。たとえば個人プレーを重視する評価を行う と,個人のモチベーションは高まるがチームプ レーが阻害され,チームプレーを重視すると, チームプレーは促進されるが怠ける個人が増える かもしれない。評価制度にはこのような多くのト レードオフが複雑に絡み合っているので,そのな かから「ましな組合せ」を選択するというのが現 実である。 そうなると「ましな組合せ」はどう決まるのか が問題になるが,それは,評価制度そのものをい かに精緻に見ても分からない。「ましな組合せ」 の選択が企業のとる経営の考え方,あるいはそれ を規定している市場の特性に規定されるからであ る。個人プレーを捨ててチームプレーを重視する 選択肢も,その逆の選択肢もありうるのである。 年功的人事管理のもとでの評価制度を成果主義に 基づく評価制度に変えたために,チームプレーが 阻害されたといかに批判してもあまり意味のない ことである。チームプレーが阻害されることは想 定の範囲内のことであり,それでも成果主義型の 評価制度をとるという選択もありうるのである。 どのような評価制度をとるかは,評価制度では 決まらない。これが評価制度を考えるさいの基本 であるように思う。 (いまの・こういちろう 学習院大学教授)

提 言

評価は評価では決まらない

今野 浩一郎

参照

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