Title
[寄稿]ペプチド研究とハイペップ研究所沖縄ラボ設立(1)
ペプチド科学の現状と将来ならびにハイペップ研究所の
目指すところ
Author(s)
軒原, 清史
Citation
南方資源利用技術研究会誌 = Journal of the society tropical
resources technologists, 21(1): 23-31
Issue Date
2005-10-01
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/14211
ペプチド研究とハイペップ研究所沖縄ラボ設立 (
1
)
ペプチド科学の現状と将来ならびにハイペップ研究所の目指すところ
軒
原
清
史
*㈱ ハイペ ップ研究所 ・代表取締役 および最高科学責任者、南京 医科大学客座教授
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KiyoshiNoKIHARA
CEO andCSO ofHiPepLaboratories,ProfessorofNaTUingMedicalUniversity
要 旨 生体を構成するタンパク質はアミノ酸か らできている。アミノ酸が2個以上つながった物質がペプチ ドであり、分 子量の大きい物がタンパク質である。ペプチ ドは、生体内の認識による免疫応答、受容体を介する情報伝達など重要 な役割を担っている認識部位の核である。生体内の分子認識の中心はタンパク質同士の相互作用であるが、よりミク ロな観点からみるとペプチ ド同士の相互作用である。ペプチ ドの獲得は天然物からの抽出精製、遺伝子による産生に 加えて、生物化学 ・有機化学 ・物理化学の知識と技術とを要する化学合成によるが、その中でも化学合成によるペプ チ ドは分子設計ができるため産業上重要である。通常、生理活性ペプチ ドと呼ばれている物質は生体の機能、情動行 動までも制御 してお り、 このバランスが壊れることにより様々な疾患が起きる。またウイルスや細菌の感染機構、生 体の防御作用においてもペプチ ド同士の相互作用が基本であることがわかっている。ゲノム情報の拡大と充実化に伴っ てペプチ ドは重要な生体分子として再び脚光を浴びている。 とりわけ医薬への応用が再認識され、ヒトゲノム解明に よるパーソナル医療という視点でも注目されてきた。
Keywords:Solid-phase synthesis,Molecular recognition,Highly efficient peptide synthesis,
Combinatoriallibrary,Characterization,Peptidepharmaceuticals,Peptide-basedmateri -als,Peptide-array,Proteinchip.
はじめに
筆者は、2002年 に先駆的なバイオベ ンチ ャー企業 を目指 して創業 し、以来、革新的バイ オ関連商品の 創出に向けて研究開発 に研餌 を重ねてきた。2004年、 沖縄県が助成 を行 う 「平成1
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年度バイオベ ンチ ャー 企業研究 開発費補助金制度」 に採択 され、将来 のペ プチ ド関連物質製造工場 の設立 も視野 に入れて沖縄 ラボ ラ トリー を設立 したO 「なぜ 沖縄 に?」 とい う 質問を この半年間、方 々か ら浴びせ られた。筆者は *沖縄県うるま市字州崎12-76-203 東京 生 まれ の東京育 ちで ある。 その上、雪 山登撃 と スキー を愛 し、学 生時代 は年間7
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日以上 を山で過 ご して きた。 したが って、 「岩 と雪 山」 と 「海 ・暖 か い ところ」 とは正反対な好み を知 人はよ く知 って い るためである。筆者は文部科学省 ミレニアムプロジェ ク トに採択 された研究テーマの提案者、かつ研究代 表者であ り、成果 の発表 で文部科学省 に出入 りして いたためか、2003年秋、 名護市 ブセナで行われた大 学院大学設立記念行事 に呼ばれ、
10年ぶ りに沖縄 を 訪れ た。翌 日の沖縄 タイムス に このシンポ ジウムの 紹介記事が出たのだが、懇親会 のカ ラー写真が付 いてお り、その中央に筆者が写っていたのである。そ こで 「なぜ沖縄 に?」 という問いには 「神 (舵)の お告げ」 と答える しかない。従来か らの京都本社 ラ ボに加え、新 しい沖縄 ラボでは沖縄県出身者 を中心 に採用 し、研究効率を上げるとともに、バイオサイ エ ンス研究 を通 して、人材育成 を含め,社会に責献 しようとする大義名分 も果た したい。 本年2月、ハイぺ ップ沖縄 ラボ設立を記念 して、 サイエンス ・コンファレンスを開催 した。筆者の共 同研究者等 を沖縄 に招待 し講演 を賜 り、多数の沖縄 県の方にもご参加をいただいて大好評を得た。会の クロージングで琉球大学 ・屋教授にお言葉を賜った のが縁で、本稿の執筆に至った。ハイぺ ップ研究所 の研究テーマを中心に最先端ペプチ ド科学の現状 と 将来について
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回に分けて記述 したい。1.ハイペップ研究所
ハイぺ ップ研究所は筆者 によって2
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年3
月2
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日に設立登記された 「生体の分子認識の応用」 をめ ざすベンチャー企業であるO筆者 (創業考)はペプ チ ド・タンパク質 を中心に、上流か ら下流 まで (天 然物、化学合成、生物化学、構造解析、内分泌生理、 免疫学)広 い範囲で生体機能 と認識を中心 とする研 究に携わってきた。 タンパク質の一部であるペプチ ドは、生体内の認識による免疫応答、受容体 を介す る情報伝達な ど重要な役割 を担っている認識部位の 核である。生体内の分子認識の中心はタンパク質同 士の相互作用であるが、よ りミクロな観点で言えば ペプチ ド同士の相互作用である。ペプチ ドは数億円/Kg
の高付加価値品であ り、 グ ラムあた りでは ド ラッグや貴金属よりも高価である。ベンチャー企業 ・ ハイペ ップ研究所の特長は、 自己創作の開発ネタを 有 し (他か らの導入技術ではない)、創業者が独創 的アイデアを持って 自己資金で起業 している点であ る。 ライセ ンスを唯一の収入源 とするような、最近 のはや りの起業ではな く、 もの作 り (製造) を行 う 会社 として発展 させようとしてお り、我が国で しば しば見かける"バイオのブローカー"的企業ではない。 また、 創業時か らランニ ング コス トのための商品 群を有 してお り、 これ らの商品は自社の研究開発 に 使用 し適宜改 良を行 って いる。 そ の製品はHiPepTe
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◎ を駆使 したペプチ ド ・タンバ ク質 を 中心 とする生体機能 と分子認識の応用研究 に多用 し 南方資源利用技術研究会誌 ている。さらに、化合物ライブラリの構築を通 じて、 その応用か ら受託研究、受託 トレーニング、コンサ ルテーション、 また受託による合成 ・精製 ・解析検 定 ・探索 ・最適化等 も行っている。独 自の研究に必 要な試薬 ・消耗品 ・書籍等 も販売 している。2.
ペプチ ドアレイによるプロテインチ ッ
プの研究開発
独 自の研究 として現在最 も注力している課題は、 次世代バイオチ ップ、ペプチ ドアレイによるプロテ イ ン検出用チ ップの開発である。[ト3] 筆者 らのコンセプ ト (図 1)は一般に研究されて いる抗体 によるプロテイ ンチ ップとは異な り、 1
対 1の相互作用の考えに基づいてはいないため、実際 のタンパク質の相互作用によ り近いと考えている。 われわれは、タンパ ク質 とペプチ ドアレイの認識を 各タンパク質 に特徴的なバーコー ド模様 を描き出さ せて可視化するフィンガープ リン ト法を世界に先駆 けて発明 し、タンパク質よ りも分子が小さいために アフイニティが低いと考え られているペプチ ドを用 いたアレイによるタンパク質の定性的 ・定量的解析 基盤技術の確立に成功 した。ペプチ ドの固相合成は コンビナ トリアルケ ミス トリのルーツであ り、合成 方法は確立されているO合成ペプチ ドは位置特異的 に基板 に固定化でき、有効な固定化量を任意に調節 す ることが可能である。 また、ペプチ ドはタンパク 質よ りも低分子でデザイ ンしやす く、任意の位置に 任意の標識や機能性分子団を結合できる (検出デザ イ ンにお けるフ レキ シビリテ ィ)、 また、DNAリ コンビナ ン トとは異な り、糖鎖や脂質、分子間距離 の調節、環状化、非天然アミノ酸や微量検 出用標識 分子の自由な組み込み等が可能である。 したがって 研究ターゲ ッ トに応 じたカスタムメイ ドのチ ップの 製作が容易 となる。抗体チ ップでは多数の抗体が必 要であり、また、抗体の安定性 ・再現性 ・固定化量 ・ 固定化位置のバ ラツキ ・交差反応性の問題、そ して 価格の問題等、実用性を阻む要因が多い。それに比 べ、我々のコンセプ トによるバイオチ ップは、固定 化す るライブラ●Uの種類 と数が遥かに少な く、マス スクリーニ ングに適 している。すなわち、デザイ ン 合成ペプチ ドアレイの大きな利点は安定品質のチ ッ プの工業生産が可能であるといえよう。 さらに、繰 り返 しの使用が可能であ り価格競争力が大きい。類似の研究は国際的にもまだ見 られず、 この独 自のコ ンセプ トを日本発で世界に先駆けて実用化 しようと 奮闘 しているところである。 タンパ ク質の機能単位構造 をデザイ ンし、化学合 成 した標識ペプチ ドをセ ンサー素子 としてアレイ化 し、タンパ ク質の同定 ・定量するための次世代プロ テイ ンチ ップを製造す るのが当該研究課題の中心で タンパク▼データベース DNAデータJ<-ス ある。沖縄 ラボで行 う主な研究は、高純度なアレイ 用多種ペプチ ドの化学合成である。 当該研究か ら生 み出された製品は、分子識別 のための次世代バイオ チ ップ研究はもとよ り、診断や健康モニター、環境、 食品検査な ど幅広 い分野で利用できる。 当該製品は 社会に迅速 ・高効率 ・省エネ ・低価格化 をもた らす。 そ して、 この効用 を必要 とす る産業は広範であるた 三次元暮童 Ittt巨l子含有 JtプチFライ ブ ラ リ JtプチF'ライ ブラ リ -I-i f',・・;・f 皇 It'EI・11: tk -I 機能性ペプチ ド7レイ プロテインフィンガープリント 丑 品- Jt丘 の ■tttペプチF7レイチ.Jブ カ ス タムメイド′テーラーメイFバイオ手.Jブ 空暮分子のロケ-シ1ン*薫定圭デバイス ペプチF.プロテインチップ書■センシング宅Z 億 円 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 タンパク質 千 図 1.次世代バイオチ ップの開発 コンセプ ト /. ′T 戸 】 海外シェア ー 一 il ■■■■■ 】 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 年 ○世界市 塙チップのマーケット全体 ■ Hipepペプチドアレイの推定シェア 図2.プロテインチ ップの国際市場予測 とハイペ ップ研究所の控えめなシェア予測
め、 このような新規バイオチ ップを応用す ることは
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世紀サイエ ンスのパ ラマ ウン トである。社会的効 果では新規産業規模の創出は極めて多岐にわた り、 産業プロセスに大変革 をもた らす ことが期待できる。 図2はプロテイ ンチ ップの国際市場予測である。受 託分析や周辺機器 ・ノウハ ウ ・ライセ ンス料な どを 含 まない筆者 らによるチ ップの売 り上げ を控 えめに 予測 した。3.ペプチ ド創薬の世界市場 とペプチ ド化
学合成の現状 ・展望
(1)背 景 ペプチ ド医薬特有の制約 ・難点か ら、多 くの製薬 会社ではペプチ ド医薬の開発 を放棄 してきた。特 に、 我が国ではペプチ ドは薬 にな らないという誤 った認 識をす る者が少なか らず居たため、国際的 に遅れ を 取った感は否めない。 コンビナ トリアルケ ミス トリ のブームが去 った今、欧米では再びペプチ ド合成が 創薬の面で も重視 されている。化学合成ペプチ ドが 再評価 を受けているが、大量生産の能力、すなわち、 設備 ・ペプチ ド科学の能力 ・プ ロセス開発能力 ・検 定の ノウハウを全て揃 って有す るところは世界で も 少ない。現在、4
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種以上の薬剤 がFDA
の認可 を得 て市販 され、実際の治療 に使われている。 (2)ペプチ ド医薬の研究開発増大 ペプチ ド創薬復活の理 由は次の9点 に集約 される。 ① ヒ トゲ ノムプ ロジェク トか らペプチ ド新規 治療 薬候補出現が続 出 している。すなわち、新規医薬品 ターゲ ッ トが増大 している。② ペプチ ドは催奇性、 毒性が無 く、代謝性 に優れて いる。③ ペプチ ドは 合成法、検定法がよ く確立 されてお りライブラ リ構 築 も容易である (構造活性相関をシステマチ ックに 進めることができる)0④ ペプチ ド研究全盛時代の 特許が切れ始めた。(9 イ ンシ リコを中心 として、 構造活性相関の諸技術が格段 に進歩 した。 したがっ て、内分泌的ペプチ ドを元 に低分子化合物化へ分子 設計をする手法が実用化 している。⑥ 代替投与ルー ト及び徐放製剤技術 が開発 されて きた。 ⑦1
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∼ ton規模 での効率的な製造技術 が確立 されつつ ある。⑧ 様 々な疾患領域での使用が考 え られ、慢 性 ・急性双方で も使用で きる。⑨ 外部委託が増大 している (薬事法改正 による)0 南方資源利用技術研究会誌 (3)ペプチ ド薬の市場規模 と用途 総薬剤市場3
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億 ドル(
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兆 円) のうちペプチ ド ・タンパ ク質は11%を占める。 この中で化学合成 ペプチ ドは約3
分の 1であ り、年間1
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%
以上の増加 を示 してきた。ペプチ ドの商業的な用途は、基礎研 究分野、試薬 (生物学的 ・生理学的 ・薬理学的研究、 その他)、 抗体生産、標準物質、基質等の製造、タ ンパ ク質 の精製、アフィニテ ィー ・カラムの リガ ン ド等、創薬ツール (ペプチ ド ・ライブラリ- ドラッ グ ・デザイ ン用)、 in-vivo検査薬 (分泌機能検査 ・ 術 前処置・
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一線造影剤)、 原薬 (ホルモ ン療法 ・ 新規阻害剤 ・抑制剤)、そ して、 生体材料等 きわめ て広汎である。特 にペプチ ドの新たな応用 として最 近 の脚光 を浴びて いるのは, 新規Ⅹ
一線造影剤、疾 患部位への治療薬送達ベクター、遺伝子治療、新規 治療薬 (癌 ・感染症 ・肥満 ・骨粗怒症 ・炎症 ・アル ツハイマー病)等である。 また、材料 としてのペプ チ ドも注 目を集めてお り、ハイペ ップ研究所の主研 究テーマの一つである。ペプチ ド医薬の実用化のキー はデ リバ リー システムであ り、徐放ポ リマー、 リポ ゾームあるいは霧状化鼻粘膜投与な ど多 くの専門技 術 とノウハウが開発 されている。 (4)ペプチ ド医薬の応用分野 ペプチ ド医薬の応用分野はきわめて広汎であるC 治療分野 (下線はHiPep研究所の主力テーマに関連): ア レルギー ・鴨息、鎮痛剤,抗ウイルス剤、 関節炎、脱毛症、カルシウム代謝、中枢神経、 癌,心臓病、糖尿病、てんかん、胃腸炎、腫 癌、婦人科疾患、止血剤、免疫疾患、イ ンポ テ ンツ、失禁、感染症、炎症、肥満、眼科領 域、 ワクチ ン、虚血性疾患 (血管新生) 診断分野 :ホルモ ン、 ウイルス、腫療イ メー ジング (5) ペプチ ド生産法 ペプチ ド生産法 には化学合成 (液相法、 固相法、 併用法)・天然物か らの抽 出精製 ・リコンビナ ン ト 発現 (yeast,bacteria,mammaliancell,transgenic animals)・セ ミ合成 ・エ ンザ イム合成等 があ り、 それぞれターゲ ッ トによって有用性が異なるが、通 常天然か らの入手が困難な ヒ ト型ペプチ ドな らびに 非天然型 アミノ酸 による置換型 (構造活性の研究か ら最適最大化 させた化合物)な どでは化学合成がきわめて有利である。 創薬か ら臨床への実用化 という観点では、合成の スケールア ップ と大量の精製法がキーテクノロジー である。精製法では各種 クロマ トグ ラフィー (イオ ン交換、 逆相HPLC、 分子ふ るい、 分配、 ア フイ ニテ ィ)による方法、 向流分配,結晶化 (通常煤護 ペプチ ド),沈殿、抽 出法 (通常は中間体)、限外液 過な どの手法が知 られているが、現実的 には、それ ぞれの物質 によ り、 これ らを組み合わせ ることが重 要である。筆者は1993年頃当時の島津製作所バイオ 機器部で世界に先駆けて連続フロー型のラージスケー ル合成 の開発 を実施[4」したが、 当時の経営者の判断 ミスで中断させ られた。ペプチ ドの最終精製のス ト ラテ ジーには、凍結乾燥、スプ レイ ドライ、沈殿 ・ 結晶化等があ り、 いずれ も多 くのノウハ ウか ら成 り 立つ重要な ものである。 ここで も、それぞれ アミノ 酸配列や化学合成のプ ロセスによ り千差万別な手法 が要求 される。 したがってプ ロセスの最適化は大 き な利益 をもた らす。 表1は市販中の合成ペプチ ドの推定需要の例であ る。 実 際 に100kgスケールか らか らtonスケ-ル が想定 されて いる。表
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は現在市販合成ペプチ ドの 例である。 (6)高効率な合成 と検定、合成 困難なペプチ ド 高効率合成 という言葉は筆者 らが1985年頃か ら使 い始 めた"highlyefficientsynthesis"の和語 で あ り、合成 品が純度 にお いて液相合成 よ り劣 るとされ た固相ペプチ ド合成 を改良 して効率 を向上させた と い う意味であった。高効率 という定義 を筆者は次の よ うにとらえて いる。①迅速な合成 (Simultaneous MultipleSynthesis):多種 品 目を同時 に合成すれ ばペプチ ド1種 当た りの合成時間は短 い。(参メカニ カル ロスの少ない、マス リカバ リーの高い合成。③ 高収量 ・高収率 :反応性 の高 いアシル成分 とクリー ペイ ジ (固相担体か らペプチ ドを切断遊離 させ るこ と) も含め副反応 を最小に抑える。④安全性 :試薬、 装置の操作、廃液 (排 出量 も含 めた、危険性の少な い非 目的物 としての反応副生成物)。(9低価格 :装 置 ・試薬、および合成のランニ ングコス トにおいて 表1 市販 中の合成 ペプチ ドの推定需要の例 売 上 生 産 量 ゴナ ドレリンアンタゴニス ト>
20億米 ドル 150-200kgACE
阻害剤>
40億 ドル 100ton以上 表2 現在市販合成ペプチ ドの例 ペ プ チ ド 名 構成 アミノ酸数 生 産 量 ま た は 需 要 カル シ トニ ン 32 10kg/year Leuprolide 9 20kg/year T-20抗 HⅠⅤ 薬 36 500kg-1ton/year(推定)有利であること。 この高効率合成 を実現するために は、操作性の良い優れた装置 とともに、安定供給 と 優れた特質 を有する高純度の側鎖保護アミノ酸誘導 体、優れた リンカー、合成中の膨潤性、機械的強度 に優れた特質 を有す る担体、反応性 に優れた副反応 の少ない縮合剤な どが不可欠である。高効率合成 を 実行するために多 くの試みがなされてきた。筆者も
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年以来、市販のいくつかのペプチ ド自動合成機 の改良 (ハー ド, ソフ ト両面) をは じめ、プロ トコ ルやケミス トリの研究を行い、1
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年には今までの 経験 を生か して 自前の装置PSSM-8
を開発 し高効 率合成システムを構築 した。機械デザイ ンにおいて 最 も重要な点は、 ロボ ッ ト的動作中のクロスコンタ ミネーションのないこと、異物混入や使用する試薬 カスの蓄積な どがないこと、効率の良い携搾および 試薬の輸送法等である。 さらに、実際の生理活性ペ プチ ド合成を通 じて合成プロ トコルを最適化 し、 ロ ボ ッ ト動作のソフ トウエア製作に生か した。 この装 置は研究用ペプチ ド合成のための装置 としてそのフ レキシビリティと経済性 を含め理想的なシステムで ある と自負 して いる。【5-111そ して、 この経験 を活か し、かねてから提案 していたコンビケム関連のロボッ トア ー ム を用 い る 自動 合 成 シ ス テ ム 開 発 研 究 を平成10年度補正予算で、NEDO委託 にて実施 し た。【15]現在では 「高効率合成」 という表現は、若干 意味の異なる、 「ハイスル-プ ッ ト合成」 という言 葉に代わっている。 高効率ペプチ ド合成には、なおいくつかの問題点 が残っている。ポス トトランス レーションによる修 節 (ホスホ リル化、グリコシル化や複数のジスルフィ ド結合)ペプチ ドの調整には、 自動合成装置の善 し 悪 しとは直接関係な く、多 くの知識 ・経験 ・技術な どが要求 される。ペプチ ドの合成 しやす さ ・難 しさ は、すべてそのアミノ酸の配列に依存 している。ペ プチ ドのバ ックボー ンが βシー トまたは、他の二次 構造 をとることで、分子間あるいは分子内に水素結 合が生 じ、 これが立体障害 とな りアシル化 または Nα
の脱保護が され にくくな り、次の縮合反応が完 全に進行 しな くなるような配列がある。 このような シーケンス依存のコンフォメーシ ョンによるアシル 成分の反応性の悪 さを"難 シーケンス"と呼ぶ。かつ て筆者は これを解決す るために、繰 り返 しカ ップ リ ングを行ったが、大 した効果 も出ず、試薬の無駄で 南方資源利用技術研究会誌 あったため、その後の高効率化において採用 しなかっ た。 反応温度 を上げ る試み もな されたが、 副反応 や ラセ ミ化な どの問題 を残 して きた。 ラセ ミ化やAs
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残基 の β転移 は合成 中のみな らず 生体 内で も 時間経過 とともに起 こる現象であるため、 これを完 全 に抑制することは困難である。デタ-ジェン トの 添加 といった反応溶媒の工夫、よ り反応性 を高めた 縮合剤の開発、難 シーケ ンスのバ ックボー ンに N-置換アミノ酸誘導体 を用いる方法などが知 られてい るが、煩雑な操作は自動合成では問題 となる。筆者 は多 くの改良手法を駆使 し、よ り強いβシー トをと るヘキサペプチ ドの8回繰 り返 し、48残基のシルク 関連ペプチ ドの合成 を行 った。 また、最近、難 シー ケンスを含むHIV-V3ペプチ ドの合成で各種のよ り 効率のよい手法を試行 し検討を行った。【1618] 難 シーケンスペプチ ドは合成のみな らず、精製 ・ 検定 も困難である。合成 とともに、合成物の精製 ・ 検定は不可欠で多 くのノウハウがあ り、いい加減な 検定がその先の生物化学的な研究の大きなブ レーキ となるケースも多い。最近では、生体関連物質のイ オン化技術の向上によ り質量分析の技術が進歩 し, 極 めて微量な検定が実施できるよ うになった。fL9120] 例 えば、MALDLTOFを用 いると数100fmolで も 検定で きる場合が多 く、MS/MS
等 の利用で さ ら に部分的な構造 も推定できる。一方、質量分析の落 とし穴は、"物質のイオン化され易さの違い"にあり、 極めてイオン化 されやすい、微量に存在する副反応 物があたかも主成分のように検出される場合がある。 また、それぞれのイオン化法、検出法によ りその特 徴は異な り、厳密で完全な検定 となると豊富な知識 と経験、そ して異なる手法 による装置の組み合わせ が不可欠である。 このことは分析全般 にいえること であるが、一種の装置ですべてができることはな く、 これ らを組み合わせて用い、その結果 を総合的に解 読 し判断できるのが研究者である。 筆者は穏和な条件でエ ドマ ン分解 によるシスチン とジスルフィ ド結合の同定法を発表 した。[2125] 最近、 ジスル フィ ドは しば しば質量分析でも同定 できるようになった。 しか し、血清アルブミンは3
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個のシステイ ンがあ り、そのうち34個がジスル フィ ド結合で結ばれてお り、質量分析だけでは完全に決 め られなかった。筆者 らは リコンビナ ン ト ・ヒ ト血 清アルブミンの17本のジスルフィ ドをエ ドマン ・シーケンサーで完全に同定することに成功 した。[26】 筆者 らはまた、数年前にエナンショマ-ラベ リン グの手法 を用いるD/Lアミノ酸分析装置 を開発 し た。 このキラル分離はジアステ レオマー分離 とは異 な り、 ラセ ミ化の検定での非天然アミノ酸や ライブ ラリ構築のためのビルデ ィングユニ ット各種、特に、 キラルセ ンターが複数個所ある場合な どに有用であ る。D/L分析は最近 のコンビナ トリアルケ ミス ト リの普及によ り、また注 目されている。【2728】 結 語 ゲ ノム情報の拡大 と充実化 に伴ってペプチ ドは重 要な生体分子 として再び脚光 を浴びている。 とりわ け、医薬への応用が再認識 され、 ヒ トゲ ノム解明に よるパーソナル医療 という視点か らも注 目を浴びて いる。生体は特異性 と選択性の高い、 しかも省エネ ルギー型反応 による分子同士の相互作用 (認識) を 用いて各種の情報伝達 を行 い、恒常性 を維持 してい る。その認識機構において中心 となるのはペプチ ド・ タンパク質同士の相互作用である。その機構は極め て特異的であ り、分子の多様性が これに対応 してい る。分子認識を産業に応用するために提唱されてい るコンビナ トリアルケミス トリの技術はペプチ ド固 相合成か ら始 まった技術である。数多 くの化合物 を 可能な限 りの組み合わせで合成することは、その種 類 も天文学的な数 とな り、膨大になる原料費や人件 費を考えても現実的ではない。そ こでタンパク質デー タベースを活用 したデザインペプチ ドが有用 となる。 ペプチ ドは生体機能の中核 を成すが、代謝がよ く比 較的安全である。その上、高効率 (迅速 ・高収率 ・ 高純度)合成法が確立されている。過去、ペプチ ド が薬にはな らないという認識が広 く行き渡ったが、 これはペプチ ド医薬が多 くの場合注射による投与 し か方法が無 く、いわゆるデ リバ リーの問題であった。 しか し現在では、新 しい投与法 も開発され、ペプチ ド薬として多 くが市販 され、実際の治療 にも使われ ている。 現在 の医療分野でのペプチ ド薬 の市場は 200億米 ドルを超 えてお り、 しか もこの数年ペプチ ド薬の需要は米国を中心に確実に伸びている。事実 tonスケールの製造 も行われるようになった。薬剤 のみな らず材料への応用 も含め、ペプチ ドは国際的 に再評価されつつある。ハイペ ップ研究所では この ペプチ ドを分子認識素子 として産業へ応用するため の研究 を実施 している。 次回は、ハイペ ップ研究所の独 自技術である、合 成ペプチ ドのコンビナ トリアル ライブラリと天然物 ライブラリに関 して記 したい。本論文 に記 したペプ チ ドアレイの研究は以下の科学研究開発補助金 (揺 案 ・研究代表 軒原清史)の支援 を受けている。 こ こに謝意 を表 す る :平 成12-14年度 科 学技術 庁 (現文部科学省) ミレニアムプ ロジェク ト、革新的 な技術 開発提案公募研究、平成16-18年度 沖縄県 バイオベ ンチ ャー企業研究開発費補助金、平成16 -17年度 産業技術実用化 開発 費助成事業 (NEDO 産業技術実用化開発費補助事業) 参考文献 [1] 軒原清史、三原久和、 タンパク質 ・核酸 ・酵 素、共立出版,47,626-632,2002. [2]軒原清史,大山貴史、白井健二、米村耕一、 富 崎欣 也、 三原 久 和 ,高分 子論文集、61, 523-532,2004.
[3] Nokihara,K.,Ohyama,T.,Usui,K.,Yonemura, K.,Takahashi,M.andMihara,H.
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4,ed:Epton,R.,MayflowerScientific,UK,83-88(2004). [4] Nokihara,K"andNakamura,S
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[5〕 軒原酒史、 島津評論、48,225-236,1991,ペ プチ ド合成 における合成品の検定の為のプロ テイ ン ・ペプチ ドシーケンサーの活用
[6] Nokihara,K.,Yamamoto,氏.,Hazama,
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Innovation and
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Osaka,203-208,1992.
島津評論、
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軒原酒史、化学 と生物、学会出版セ ンター、3
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[
1
4
]
軒原酒史、生体材料,1
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(日本バ イオマテ リアル学会誌、高分子刊行会出版)[
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森 田直樹、軒原酒史、 島津評論、5
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.
[
2
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山 口実、軒原清史、 島津評論、5
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著 者 : 軒原清史 (薬学博士) プロフィール 株式会社ハイぺ ップ研究所 代表取締役兼最高科学責任者1
9
71年東京農工大学 工学部 工業化学科卒業後、1
9
7
3
年 ドイツ ・ア-へ ン工科大学 (留学)、 ドイツ 羊毛研究所 ・イ ンス リン ・ペプチ ド研究部門研究員 を経て、1
9
7
9
年か ら県立静岡薬科大学薬学部 (現、 県立静岡大学)教官、1
9
8
5
年 ドイツ政府の招碑によ り再び渡独、ハイデルベルグ大学医学部講師 ・客員 教授、GBF-
ドイ ツ国立バイオテクノロジー研究所 研究員、1
9
9
0
年か ら㈱ 島津製作所、バイオ機器部 研究開発担 当 ・専門部長 を経て、組織改編 によ り、1
9
9
4
年か らライフサイエンスセ ンター長 ・兼、中央 研究所主幹研究員 (部長研究員)1
9
9
6
年か ら技術推 進部専門部長 として㈱島津総合科学研究所設立準備、1
9
9
7
年㈱ 島津総合科学研究所 を設立、主席研究員 として出向、2
0
0
2
年㈱ 島津製作所退職、株式会社ハ イペ ップ研究所 を設立、現在 に至る。 主な兼任公職 :東京農工大学工学部客員教授、東京 都神経科学総合研究所非常勤研究員 (神経生化学研究部 門)、伽バイ オイ ンダス トリー協会 コ ンビケム 調査委員会委員、伽化学技術戦略推進機構 調査研究 委員会委員、 九州工業大学非常勤講師