アジ研ワールド・トレンド No.184 (2011. 1)
55
本書
は
二
〇
〇
八年∼
〇九
年
度
に
実
施
し
た
﹁
イ
ス
ラ
ー
ム
金
融
の
グ
ロ
ー
バ
ル化
と
各
国
の
対
応
﹂
研
究会
の
最
終成
果
で
あ
る
。
日本
で
は
イ
ス
ラ
ー
ム
金融は
、
い
ま
だ
に
なじ
み
の
薄
い
仕
組
み
で
あ
る
。
二
〇〇〇年
代
後
半か
ら
日
本
で
も
イ
ス
ラ
ー
ム
金融
に
関
す
る書
籍や新聞記事などが増え
︵
参
考
文
献︶
、
イ
ス
ラ
ー
ム
金
融
と
い
う
言
葉
を
聞く
機会
は
増
え
て
い
る
。
し
か
し
、
イ
ス
ラ
ー
ム
金
融
は
﹁
金
利
が
つ
か
な
い﹂
と
い
う
こ
とは
わか
っ
て
い
る
が、
具
体
的に
は
ど
のよう
な
仕
組
み
に
な
っ
て
い
る
の
か
は
よくわ
か
ら
な
いこ
と
が
多
い
。
ま
た
そ
れ
を
確
か
め
よ
う
に
も
、
具
体
的
な
商
品
が
身
近にあるわけ
で
もな
い
た
め、
日
本
人
の
イ
ス
ラ
ー
ム金融
の
理解はなかなか進
ま
な
い
と
い
え
る
。
あ
る
いは
、
イ
スラ
ー
ム
≒中東
≒オイ
ル
マ
ネー
とい
う
連
想
で
、
イ
スラ
ー
ム
金
融
と
は
国
を
越え
た
巨
額
な
資
金
を扱う仕
組
み
であ
る
とい
う
理
解
で
あ
る
か
も
し
れ
ない
。
し
か
し
、
イスラ
ー
ム
金
融
は
、
そ
う
し
た
大
き
な
資
金
の流れだ
け
でなく
、
非
常
に
身
近
な金融
サー
ビ
ス
で
あ
り
、
イ
ス
ラー
ム金
融
の
盛ん
な国
では
、
普
段
の
金
融
取
引
がイ
ス
ラ
ー
ム
金融
の
や
り方
で
行
われ
て
い
る
。
イ
ス
ラ
ー
ム金融
と
通
常
の
コ
ンベ
ンシ
ョ
ナ
ル
金
融
の
機
能
は基本
的
に
同
じ
で
あ
る。し
か
し
そ
の
あ
り
方
は
国
に
よ
って
異
な
って
いる
。
本書
の
目
的
は
、
国
に
より異
な
るイ
ス
ラ
ー
ム
金
融
のあり
方
を
一
望す
る
こ
と
に
あ
る
。
本
書
の
タ
イ
ト
ル
の
と
おり
、イ
ス
ラ
ー
ム
金
融
は
、中
東
から
始
ま
り
、
アジ
ア
、
ヨ
ー
ロ
ッ
パ
と
今や世
界
に
広
が
っ
て
い
る
。
本
書
で
は
先
進
国、
開
発
途
上
国、
イスラ
ー
ム
国
、
非
イスラ
ー
ム
国
な
ど
政
治
的、
経
済
的
背
景
の
異
な
る
一
六の
国
・
地
域
をとり
あ
げ
、
各国
の
イ
ス
ラ
ー
ム
金
融
事
情
を解
説し
て
い
る
。
本書
は
二
部構成を
と
り
、
第
一
部
で
は
各
国の
様
子
を
個
別
に
ま
と
め
て
い
る
。
下
の図
は、国
の
違
い
も
し
く
は
共
通
点
を
確
認
し、
本書全
体
の
見
通
し
を
よ
くす
る
た
め
も
の
で
あ
る
︵序章︶
。
こ
れ
は
一
六
カ
国
・
地
域
の
うち
イ
ス
ラ
ー
ム
国
と
ム
ス
リ
ム
の
多
い
一
三
カ国
を
、
イ
ス
ラーム
金
融
に
対
す
る国
家
的
およ
び社
会
的
対
応
のベ
クト
ル
に
よ
っ
て
四
つ
の
グルー
プに分
け
て
い
る
。
お
お
むね
こ
の図
に
本
書の
構
成
と
主
旨
が
凝
縮
さ
れ
て
い
ると
い
え
る。
イスラ
ー
ム
金
融
の
あ
り
方
に
つ
い
て
考
え
るとき
、
実は
イ
ス
ラ
ー
ム
国
であ
る
こ
とと
イスラ
ー
ム
金
融
が
盛
ん
で
あ
るこ
と
は
単
純
に結
び付
つ
け
られな
い
。
イ
ス
ラ
ー
ム
国は、
イスラ
ー
ム
国
で
あ
る
が
ゆ
え
に
イ
スラ
ー
ム
金融を推
進
す
る
こ
と
が
難し
い
と
い
う
複
雑
な面
を
も
つ
。
ヨル
ダ
ン
、
サ
ウ
ジ
アラ
ビ
ア
、
エジ
プ
ト
︵
第
一
∼
三
章
、
図
のD
象
限
︶
は
その
よ
い
事
例
で
あ
る
。
一
方
、
一
九
八
〇
年
代に
イ
ス
ラー
ム化
を実
施
し
た
国
は
︵
イ
ラ
ン、
パキス
タ
ン
︶
は、
イスラ
ー
ム
金
融の
草分け的な事例と
し
て
取
り
上
げ
ら
れ
る
も
の
の
、
現在
の
国
際的潮流
の
中
心
か
ら
は
はず
れ
て
い
る
。︵
第
四
章、
第
五
章、
A
象
限︶
。
イスラ
ー
ム
金
融
が
経
済
的
な
要
因
か
ら
拡
大
し
て
い
る
湾
岸諸
国
︵
C
象
限︶
お
よ
び
マ
レー
シ
ア
、
イ
ン
ド
ネシ
ア
︵
B象
限
︶
に
つ
い
て
は
第
六∼
八章
で、
制度や各個別
イ
ス
ラー
ム
金
融
機
関
の
分
析
を
行
っ
て
い
る
。
現在
の
イ
ス
ラ
ー
ム
金
融
の
発
展
を
け
ん
引
しているの
は
、
マ
レ
ー
シア
に
加
え
金
融
先
進国
で
あ
るイ
ギ
リ
ス
な
ど
の
非
イ
ス
ラ
ー
ム
国で
あ
る
。
イ
ス
ラ
ーム
金
融
が
よ
り
普
遍
的
な金
融
取
引
に
発
展
し
て
い
く
た
め
に
は
非
イ
ス
ラ
ー
ム
国
の
視
点
が
不
可
欠
で
あ
る
。
今
後
、
日本
が
イ
ス
ラ
ー
ム
金
融
を
取
り
入
れ
る
上
で
、
参
考にな
る
の
も
第
九
章
で
と
り
あ
げ
る
イ
ギ
リ
ス
、
シ
ン
ガ
ポ
ー
ル
、
香
港
、
フ
ランスの
取り
組
み
で
あ
ろ
う
。
ま
た
、
こ
れ
ら
各
章
で
まとめた
国
別
の事
情に
つ
い
て
、
制
度
の違
いが
一
望
で
き
るよう
に
イ
ス
ラ
ー
ム金
融に
関
する
制
度
比
較
を付
表
と
し
て
まとめ
て
い
る
。
第二
部
で
は、各
国
事
情
か
ら
離
れ
、第
一
部で
説
明
さ
れ
た
各
国のイ
ス
ラ
ー
ム
金
融
の
在り
方
の
違
い
が
ど
の
よ
うな
要因
に
よ
っ
て
生じ
る
の
か
に
つ
い
て
分
析
し
、
国
ご
と
の
違
い
を
考
察
し
て
い
る ︵
第
一
〇
章
︶ 。
国
や
立
場
に
よ
る
違
い
が
イ
ス
ラ
ー
ム
金融
の多
様
性
を生
む
一
方
で
、
グ
ロ
ー
バ
ル
化
に
よ
り
普遍
的な金
融
取引
に
必
要な標
準
化に
むけ
て
収
斂
す
る
動
きもあ
る
。
第
一
一
章
で
は
こ
う
し
た
多様化
と
収斂
の
方
向性
に
つ
いて
イ
ス
ラ
ー
ム
銀
行
の
流
動
性
管
理
と
い
う
具体
的な事例を
と
り
あげ考
察
し
て
い
る
。
日本
で
の
イ
ス
ラ
ー
ム
金
融
の
理解とビ
ジネ
スとし
て
の
具
体
的
な
検
討
が
足
踏
み
する
中
で
、
世
界ではイ
ス
ラ
ー
ム
・
非
イ
ス
ラーム
国
の
区
別
な
く
、
イ
ス
ラーム金
融
は
コン
ベ
ン
シ
ョ
ナ
ル
な
金
融
に
並
ぶ
も
う
ひ
と
つの
金
融
手
法
と
し
て
、
そ
の
重
要
性
が
認
識
され
確
実
に
拡
大
し
て
い
る
。
本
書
で
紹
介
する国々
も
、
方
法
は異
なるも
の
のイ
ス
ラーム金
融
導
入に取
り
組
ん
で
い
る。
各国
のイ
ス
ラ
ーム
金
融
事
情
を
知
る
こ
と
が
、
周
回遅れ
の
日本
で
の
イ
ス
ラ
ー
ム金融
へ
の
関
心に
つ
な
がれ
ば
幸
い
で
ある。
︵はまだ
みき/
ア
ジ
ア
経
済
研
究
所
国際
経
済
研
究
グルー
プ
︶
︽参考文献︾
①
北村歳治
・吉田悦章
[二〇〇八]
﹃現代の
イスラム金融﹄日経BP社。
②
小杉泰
・長岡慎介
[二〇一〇]
﹃
イスラー
ム銀行︱金融と国際経済﹄山川出版社。
③
吉田悦章
[
二〇〇七]
﹃イスラム金融入門﹄
東洋経済新報社。
D
C
B
A
イスラーム的要因
経済的要因
民間・個人
政府
UAE
クウェート
バハレーン
カタル
マレーシア
シンガポール
インドネシア
エジプト
ヨルダン
サウジアラビア
オマーン
イラン
パキスタン
スーダン
濱田美紀・福田安志
編
﹁世界
に
広が
る
イ
ス
ラ
ー
ム
金
融
中東
か
ら
ア
ジ
ア
、
ヨ
ー
ロ
ッ
パ
へ
﹂
アジ研選書二三
アジア経済研究所
■
濱田 美紀
■
新刊
紹介
図 イスラーム金融に対する国家・
社会的要因による類型