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セブンイレブン・ジャパンの中国戦略の進化 (分析リポート)

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(1)

セブンイレブン・ジャパンの中国戦略の進化 (分析

リポート)

著者

佐藤 幸人

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

185

ページ

40-47

発行年

2011-02

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004316

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  本稿ではセブンイレブン・ジャ パンの中国事業を議論する。セブ ンイレブン・ジャパンの挑戦は始 ま っ て か ら ま だ 一 〇 年 に 満 た ず、 成否を判断する段階ではない。し かし、日本を代表する流通企業で あるセブンイレブン ・ ジャパンが、 中国においてどのように事業を展 開しようとしているのかは、日本 のサービス業のアジアにおける今 後を展望するうえで重要な問題で あることから、観察するポイント を整理しておくことは意味があろ う。また、セブンイレブン・ジャ パンの経験から、中国事業に関す るインプリケーションを引き出す ことは可能である。   セブンイレブン・ジャパンの経 験が興味深いのは、その中国戦略 に 明 確 な 転 換 が あ る こ と で あ る。 セブンイレブン・ジャパンが二〇 〇 四 年 に 北 京 に 進 出 し た と き に は、積極的にパートナーを求めよ うとはしなかった。しかし、二〇 〇八年になると、上海におけるセ ブンイレブンの経営を台湾の統一 グループにライセンスすることを 発表した。セブンイレブン・ジャ パンは何故、中国戦略を変えたの だろうか。また、何故、ライセン シングを選び、合弁など他の選択 肢を選ばなかったのだろうか。そ して何故、他の企業ではなく、統 一グループだったのだろうか。   これらに加えて検討に値するポ イントは、セブンイレブン・ジャ パンが中国市場への進出を進める と同時に、グローバル戦略の策定 にも取り組んできたこと、かつ中 国戦略とグローバル戦略を結び付 けようとしてきたことである。本 稿では、二つの戦略の間にどのよ うなリンケージが構築されようと し て い る の か に つ い て も 検 討 す る。   以 下 で は ま ず 第 一 節 に お い て、 競争相手であるファミリーマート と対比しながら、 セブンイレブン ・ ジャパンの中国戦略の原型とその 背景を説明する。第二節では、セ ブンイレブン・ジャパンが上海市 場への進出に際してなぜ戦略を変 えたのかを分析する。 第三節では、 セ ブ ン イ レ ブ ン・ ジ ャ パ ン の グ ローバル戦略の構築に論及し、そ れが中国戦略の展開と連動してい ることを明らかにする。最後に第 四節では議論を整理し、今後の観 察のポイントを提示する。

セ ブ ン イ レ ブ ン ・ ジ ャ パ ン の 中 国 戦 略 の 原 型 ─ │ ァ ミ リ ー マ ー ト と 対比 し な が ら   筆 者 は 既 に セ ブ ン イ レ ブ ン・ ジャパンとファミリーマートの中 国戦略を比較している(参考文献 ① お よ び ③ )。 本 節 で は そ れ を も とに、セブンイレブン・ジャパン の中国戦略の原型の特徴と背景に あった考え方を示す。 ( 1)  セ ブ ン イ レ ブ ン ・ ジ ャ パ ン 単独経営戦略   セブンイレブンはアメリカのサ ウ ス ラ ン ド 社( Southland Corp. によって生み出されたコンビニエ ンスストア・チェーン(以下、C VSチェーン)である。セブンイ レブン・ジャパンは日本市場にお け る サ ウ ス ラ ン ド 社 の ラ イ セ ン シーであった。しかし、サウスラ ンド社が一九九〇年に深刻な経営 危機に陥ると、翌九一年、セブン イレブン・ジャパンはこれを救済 す る と と も に 過 半 の 株 式 を 獲 得 し、経営権を掌握した。サウスラ ン ド 社 は 一 九 九 九 年 に 7-Elev en, Inc. に 改 称 し、 二 〇 〇 五 年 に は セ ブンイレブン・ジャパンが全株式 を保有する完全子会社となった。   サウスランド社の国際化戦略は

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セブンイレブン・ジャパンの中国戦略の進化

も っ ぱ ら ラ イ セ ン シ ン グ で あ っ た。セブンイレブン・ジャパンは 経営を掌握した後、アメリカのセ ブンイレブン・チェーンの立て直 しに取り組んだものの、国際化戦 略を変更することはなかった。し かし、二一世紀に入ると日本市場 の成熟が進行し、成長の鈍化が明 らかになってきた。このような状 況のなか、セブンイレブン・ジャ パ ン は 海 外 市 場 へ の 進 出 に 着 手 し、中国市場をそのターゲットと した。   中 国 が ま っ た く 未 開 拓 の 市 場 だったわけではない。ローソンや 広東のセブンイレブン(後述)と いう外資系のCVSチェーンのほ か、 既 に 現 地 資 本 に よ る C V S チェーンが広がっていた。二〇〇 〇 年 代 半 ば に お い て、 大 規 模 な チェーンの店舗数は二〇〇〇店近 く に 達 し て い た。 し か し な が ら、 現地資本のチェーンは店舗の外見 こそコンビニエンスストアの体裁 をしていたものの、本来具備すべ き経営システムを持たず、海外の 標準からみればCVSチェーンと 呼 べ る も の で は な か っ た。 実 際、 ほとんどのチェーンが連年赤字を 続けていた。それゆえ、セブンイ レ ブ ン・ ジ ャ パ ン や 他 の 外 国 の チェーンからみれば、先進的な経 営システムを導入することによっ て競争上優位に立てる余地は十分 にあり、将来的にはマーケットの 構造を一変させる可能性すらあっ た。それは現在も変わっていない と考えられる。   セブンイレブン・ジャパンは二 〇〇四年、セブンイレブン北京を 設立し、中国市場に参入した。セ ブ ン イ レ ブ ン 北 京 の 資 本 金 の 六 五%はセブンイレブン・ジャパン が出資した。残りの株式は北京王 府井百貨グループと中国糖業酒類 グループが保有したが、両社はサ イ レ ン ト パ ー ト ナ ー に と ど ま り、 日常的にはセブンイレブン北京の 経 営 に 介 入 す る こ と は な か っ た。 すなわち、事実上、セブンイレブ ン・ジャパンが単独でセブンイレ ブン北京を経営することになった のである。筆者はこのようなセブ ンイレブン ・ ジャパンの戦略を 「単 独経営戦略」と呼んでいる。   セブンイレブン・ジャパンは二 つの理由から単独経営戦略を選択 したと考えられる。第一に、北京 およびその周辺をテリトリーとす るかぎり、パートナーに頼る必要 はなかった。 セブンイレブン ・ ジャ パンは規模が大きく、高い収益性 を持ち、豊富な経営資源を有して いたからである。   より重要なのは第二の理由であ る。セブンイレブン・ジャパンは セブンイレブン北京に対して特別 の任務を付与していた。 すなわち、 今後中国全土へと事業を展開して いくことを見据え、北京において 他の地域でも複製可能なモデルを 構築することを求めたのである。   しかも、これはさらに遠大な目 標とつながっていた。既に述べた ように、世界各地にはサウスラン ド社時代にライセンスしたセブン イレブン・チェーンが展開し、そ れぞれ独自のビジネスモデルを発 達させていた。実質的に世界のセ ブンイレブン・チェーンを統括す る こ と に な っ た セ ブ ン イ レ ブ ン・ ジャパンは、グローバル化の時代 においてモデルが過度に分化する ことは、ブランド・イメージを傷 つけかねないという懸念を抱いて いた。そこで世界のセブンイレブ ンが満たすべきミニマムの基準を 探る必要があると考え、その任務 を北京に課したのである。このよ うな目的がある以上、単独経営戦 略を選択し、他社の介入を排する ことは当然であった。   中 国 に お け る は じ め の 進 出 先 を、最大のマーケットである上海 ではなく、北京を選んだのも同様 の理由に基づいている。二〇〇〇 年代、上海ではローソンや現地資 本のチェーンが既に発達していた ので、消費者のコンビニエンスス トアに対するイメージが形成され ていた。それは新しいモデルを模 索するという試みを制約しかねな かった。そのような考慮から、セ ブンイレブン・ジャパンはまだコ ンビニエンスストアが普及してい ない北京を選択したのである。 ( 2)  セ ブ ン イ レ ブ ン と フ ァ ミ リ ー マ ー ト の 比較   ファミリーマートもセブンイレ ブン・ジャパンと同じ二〇〇四年 に、上海に進出した。ファミリー マートはアジア市場において、日 本のCVSチェーンのなかでは最 も豊富な経験を持っていた。ファ ミリーマートの戦略はセブンイレ ブン・ジャパンの単独経営戦略と は対照的に、パートナーを積極的 に求め、その資源を組み込むこと に よ っ て 発 展 を 図 る も の で あ る。 筆 者 は こ れ を「 チ ー ム 経 営 戦 略 」 と呼んでいる。上海でもこれを採 用した。   上海ファミリーマートは伊藤忠

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台湾ファ ト か ら な る 伊 藤 忠・ ー プ の 合 弁 企 業 で あ で あ り、 台 湾 フ ァ ミ 師 傅 」 ブ ラ ン ド の 即 席 ・ 五%となっている。 ル ー プ は 食 品 の 開 発・ の は 台 湾 フ ァ ミ リ ー 湾 か ら 派 遣 さ れ て い る。つまり、現段階の上海ファミ リ ー マ ー ト の 経 営 は 台 湾 フ ァ ミ リーマートが主導している。それ は台湾ファミリーマートが持つ四 つのユニークな資源に基づいてい ると考えられる(日台企業の提携 については、参考文献②の伊藤の 議論も参照されたい) 。   第一は文化的な資源、特に言語 である。台湾出身の経営幹部は中 国語を使えるので、 上海の消費者、 従業員、サプライヤー、政府とコ ミュニケーションがとりやすい。   第二は制度的な資源である。中 国の間接税は台湾と類似している ので、台湾のコンピュータ・シス テムを応用することができた。ま た、商習慣も共通している面があ る。   第三は経験および経験を備えた 人材である。特に台湾ファミリー マートの創業時の経験を上海での 立ち上げに活かすことができる。   第四は台湾企業間のネットワー クである。実際、頂新国際グルー プをパートナーに引き込んだのは 台湾ファミリーマートである。   セブンイレブン・ジャパンの単 独経営戦略とファミリーマートの チーム経営戦略は、それぞれ異な る長所と短所を持っている。チー ム経営戦略の長所は、立ち上げに 要する時間を短縮し、迅速に拡張 できることである。チームのメン バーの資源を結合することによっ て、投入できる資源がより豊富に なるばかりでなく、多様性を増す からである。特に上海と類似の条 件を持つ台湾ファミリーマートが 経営を主導しているため、より市 場に適合的な運営が可能になった と考えられる。   しかし、ファミリーマートの戦 略には長所の裏返しとして短所も ある。第一に、店舗網の拡張を急 ぎすぎてしまいかねないことであ る。 拡 張 の ス ピ ー ド が 遅 け れ ば チームは求心力を失う恐れがある か ら で あ る。 C V S チ ェ ー ン に とって理想的な展開は、まず各店 舗の安定したオペレーションを達 成し、次いで店舗網を拡げていく ことだが、上海ファミリーマート の各店舗の経営は最近まで十分に 安定していなかったという指摘が ある。第二に、現地市場に合わせ ようとすることで、大胆なアイデ アの採用が抑えられてしまうかも しれない。 そうなれば、 他のチェー ンと差別化する可能性が限定され てしまう。   一方、セブンイレブン・ジャパ ンの戦略の欠点は、拡張の速度が 遅いことである。その原因のひと つは、単独経営戦略と比べて投入 できる資源の量と多様性が限られ てしまうことである。しかし、よ り根本的な理由は単独経営戦略の 背景にあるセブンイレブン・ジャ パンの理想主義にある。セブンイ レブン・ジャパンは理想とするC VSチェーンの実現を目指し、理 想を阻むハードルを越えるために 時間を費やすことを厭わない。例 え ば 中 国 で は 小 売 店 が サ プ ラ イ ヤーから協賛金を受け取る商習慣 が一般化しているが、セブンイレ ブン北京では代わりに価格を引き 下げるようにサプライヤーを説得 し て き た。 地 方 政 府 に 対 し て も、 規制の見直しを求めてきた。この ような取り組みには時間がかかる ものの、達成すればチェーン経営 はより健全で透明なものとなり得 る。   セブンイレブン・ジャパンの理 想主義と、ファミリーマートの現 実 主 義 の 違 い が 鮮 明 に 現 れ る の は、店舗面積に対する考え方であ る。上海はもちろん中国では店舗 の賃料がおしなべて高く、また面 積の大きい物件は探しにくい。一 方、賃料に比べれば、コンビニエ

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セブンイレブン・ジャパンの中国戦略の進化

ンスストアが販売する商品の価格 は低い。ファミリーマートはこの ような条件を考慮し、ある程度狭 い店舗も許容している。このよう な考え方は同様の条件を持つ台湾 の経験に基づいている。一方、セ ブンイレブンは消費者のニーズに 十分応えうる店舗のあるべき姿を 追求し、そのためには一定以上の 面積が必要であると考える。具体 的には一〇〇平方メートルを下限 としている。このような条件を設 定 す れ ば、 当 然、 物 件 は 限 ら れ、 出店のスピードは低下する。しか し、他のチェーンと明瞭に差別化 し た 店 舗 を 作 る こ と が 可 能 に な る。

二.戦略

進化

( 1)  セ ブ ン イ レ ブ ン 上 海 の 設 立 と セ ブ ン イ レ ブ ン ・ ジ ャ パ ン の 戦略 の 進化   セブンイレブン・ジャパンは二 〇〇八年に上海市場への進出を発 表し、翌二〇〇九年に一号店を開 設した。しかしながら、セブンイ レブン・ジャパンが直営した北京 と異なり、上海のチェーンの経営 は台湾の統一グループにライセン スした。すなわち、セブンイレブ ン・ジャパンは上海に進出するに あ た っ て 単 独 経 営 戦 略 を 改 め、 パートナーを求め、その力を借り ることを選んだのである。   新しい戦略の理由を検討する前 に、セブンイレブンの二〇一〇年 現在の中国における状況を説明し て お こ う( 図 1)。 中 国 で は じ め にセブンイレブン・チェーンがつ くられたのは広東省である。これ を展開したのは香港でチェーンを 経 営 し て い た デ イ リ ー フ ァ ー ム・ グループである。北京のチェーン は、前述のように、セブンイレブ ン・ジャパンの子会社であるセブ ン イ レ ブ ン 北 京 が、 7-Elev en, Inc. か ら ラ イ セ ン ス さ れ 経 営 し て い る。 天津市と河北省の権利も持ち、 二〇〇九年に天津にも進出した。   セブンイレブン・ジャパンは二 〇〇八年にセブンイレブン中国を 設立した。 これに対して 7-Elev en, Inc. か ら、 香 港・ マ カ オ、 広 東、 北京、天津、河北以外の中国のマ ス タ ー ラ イ セ ン ス 権 が 与 え ら れ た。つまり、セブンイレブン上海 はセブンイレブン中国からライセ ンスされているのである。セブン イレブン上海は統一グループの子 会社であり、 セブンイレブン ・ ジャ パンとは資本関係はない。   セブンイレブン・ジャパンが上 海進出においてライセンシングを 選択したことは、中国事業が基礎 固めから拡張の段階に入ったこと にともなって、戦略が進化したこ とを示している。筆者は二〇一〇 年二月二五日にセブンイレブン中 国の大塚和夫会長を訪ね、インタ ビューを行った。以下ではそのイ ンタビューをもとに戦略の進化の 要因を分析していきたい。 セブンイレブン北京 セブンイレブン上海 広東のセブンイレブン 台湾のセブンイレブン 香港のセブンイレブン 韓国のセブンイレブン タイのセブンイレブン 北京王府井百貨グループ 中国糖業種類グループ 統一グループ デイリーファーム・グループ ロッテ・グループ CP グループ セブン&アイ・ ホールディングス セブンイレブン・ ジャパン セブンイレブン中国 7-Eleven, Inc. 図1 セブンイレブンの資本およびライセンシング関係 (出所)筆者作成。 (注)実践は資本関係、破線はライセンシング関係。

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的な価値は便利、 スピード、 清潔、 安全などであり、二四時間三六五 日営業するノウハウや会計、物流 のシステムを核心的な能力だと考 えている。 これらを踏まえながら、 中国市場に適合的なビジネスモデ ルを模索してきた。その象徴が店 内調理のシステムである。調理の 最 終 段 階 を 各 店 舗 で 行 う こ と に よ っ て、 出 来 た て で 熱 々 の、 「 シ ズル感のある」食事を消費者に提 供することができる。中国の消費 者の嗜好に合わせて開発したシス テムであり、日本から持ち込んだ ものではない。実際、北京では店 内 調 理 に よ る 食 事 は 主 力 商 品 に なっている。このほか、日本式の おでんも好評で、 特に白滝、 大根、 卵がよく売れているという。   店内調理やおでんはファースト フードとされる。ファーストフー ドは単に売上高を伸ばすだけでは なく、各店舗の粗利益率を引き上 げるという効果がある。それはC V S チ ェ ー ン に と っ て、 フ ラ ン チャイズ方式導入の前提となると い う 戦 略 的 な 意 味 を 持 っ て い る。 CVSチェーンの発展させるため にはフランチャイズ方式を採用す ることが望ましい。フランチャイ ズ店はチェーン本部の直営店と比 べて、店長に対してより強い誘因 が働き、その業績も一般的に優れ ているからである。フランチャイ ズ方式を導入するためには一定以 上の粗利益率が前提となる。店舗 と本部の間で分け合う粗利益が小 さければ、本部は利益を得られな いばかりか、 誰もフランチャイズ チェーンに加盟しようとしないか らである。一般的に少なくとも三 割の粗利益率が必要とされる。そ のためには他のチェーンとの差別 化が必要となる。ファーストフー ドは各チェーンが独自に開発して いるので差別化が可能となり、粗 利 益 率 を 引 き 上 げ る こ と が で き る。このように、店内調理の成功 はセブンイレブンが中国で将来フ ランチャイズ・チェーンを展開す る基礎を確立したことを意味して いるのである。   とはいえ、ビジネスモデルの確 立は単独経営戦略を改める必要条 件ではあるが、 十分条件ではない。 . .

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セブンイレブン・ジャパンの中国戦略の進化

では、何がセブンイレブン・ジャ パンに戦略の変更を迫ったのだろ うか。   セブンイレブン・ジャパンが戦 略を変えた第二の理由は、中国市 場 の 成 長 に 適 応 す る た め で あ る。 セブンイレブン・ジャパンは日本 最大のCVSチェーンだが、巨大 で高成長を続ける中国市場で発展 していくには自社の資源のみでは 明らかに不十分であることを認識 するに至った。そのため、セブン イレブン・ジャパンは単独経営だ けではなく、他社とも提携し、そ の資源を使って発展を加速するこ とを選択したのである。大塚会長 はつぎのように述べている。   「 中 国 は こ れ だ け の ス ピ ー ドで伸びていますので、こん な大きな国を、われわれセブ ン イ レ ブ ン・ ジ ャ パ ン と か、 セブン&アイだけでやろうと いっても、多分、こちらの発 展のスピードに着いていかな いのではないかと(考えまし た) 。[中略]まあ幸いなこと に香港にもセブンイレブンは ある。台湾にも韓国にもセブ ンイレブンはある。 ですから、 そういうおんなじ商売をやっ ている人の力を借りて同時多 発的にやらないと、特にこの 巨大な中国では多分間に合い ません。 」   客観的にみても、セブンイレブ ン・ジャパンが単独経営戦略を改 め、拡張を加速することは、ライ バルであるファミリーマートのパ フォーマンスと比較すると合理的 である。前述のように、両社は同 時に中国に進出した。しかしなが ら、セブンイレブン北京の店舗数 が二〇一〇年九月において一〇〇 に達しないのに対し、上海ファミ リーマートの店舗数は同年一〇月 において四〇〇近い。また隣接エ リアへの拡張においては、セブン イレブン北京の天津進出が二〇〇 九年だったのに対し、上海ファミ リーマートは二〇〇七年に蘇州に 進出している。第二のマーケット への進出では、セブンイレブンは 二 〇 〇 九 年 に 上 海 に 進 出 し た が、 ファミリーマートは二〇〇六年に 広州に進出している。さらに、セ ブンイレブン北京はいまだ直営店 のみだが、ファミリーマート上海 はフランチャイズ・チェーンの展 開を始めている。このような拡張 の速度の違いが、 セブンイレブン ・ ジャパンの戦略の進化を後押しし たのかもしれない。 ( 2) 統 一 グ ル ー プ へ の ラ イ セ ン シ ン グ   新 し い 戦 略 の つ ぎ の 段 階 と し て、セブンイレブン・ジャパンは どこにライセンスをするかを選択 する必要があった。何故、統一グ ループを選んだのだろうか。   統一グループは一九六七年に台 湾で設立された食品メーカーの統 一 企 業 を 中 核 と す る ビ ジ ネ ス グ ループである。統一グループは流 通業への進出を図って一九七九年 にサウスランド社からセブンイレ ブン・チェーンの台湾での経営権 を 獲 得 し た。 セ ブ ン イ レ ブ ン・ チ ェ ー ン は 二 〇 一 〇 年 九 月 現 在、 四七〇〇店あまりを展開する台湾 最大のCVSチェーンである。ま た、統一グループは中国市場に早 くから進出し、種々の食品の製造 や流通および飲食業を経営してい る。たとえば上海のスターバック スを経営しているは統一グループ である。上海ファミリーマートに 出資している頂新国際グループと は、即席麺や飲料の分野でライバ ル関係にあり、CVSチェーンで も上海で競争することになったわ けである。   セブンイレブン・ジャパンから みた場合、台湾で豊富な経験と成 功した実績を持つ統一グループは パートナーとして正負両面を持っ ている。ネガティヴな面とは、台 湾で成功を収めている統一グルー プは自らのビジネスモデルを用い る こ と を 望 み、 セ ブ ン イ レ ブ ン・ ジャパンが求めるモデルを受け入 れようとしない恐れがあることで ある。前述のように、セブンイレ ブン・ジャパンにとって中国での 事 業 展 開 は、 セ ブ ン イ レ ブ ン・ チェーンのグローバルな基準を構 築する第一歩である。上海で北京 とは異なるビジネスモデルが生ま れることは許容できることではな い。   一 方 、 豊 か な 経 験 と そ れ に 基 づ く 知 識 を 持 つ 統 一 グ ル ー プ な ら ば 、 そ れ ら を 移 転 す る こ と に よ っ て 、 事 業 を立 ち 上 げ る 時 間 を 節 約 す る こ と が で き る 。 セ ブ ン イ レ ブ ン ・ ジ ャ パ ン は 後 者 のメ リ ッ ト を 優 先 し 、 統 一 グ ル ー プ を 選 択 し た 。 大 塚 会 長 は つ ぎ の よ う に 述 べ て い る 。   「(統一グループは)少なく ともセブンイレブンの商売と いうものはこういうものだと い う の は わ か っ て い ま し た。 [ 中 略 ] イ ロ ハ の イ か ら や る 必要はないのです。一〇必要 でしたら、一足飛びに六、七 からですね、だだっと短期間

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ま す。 [ 中 略 ] 単 刀 直 イ ン ト は こ こ で す と、 こ う し て く だ さ い と、 て く だ さ い と か で す 。 経 験 を 蓄 積 し て い た。 ル の 分 化 と い う ネ ガ )。 筆 者 が 二 〇 一 〇 年 三 た の は city café と い う

三.

略の結合

  セブンイレブン・ジャパンは中 国 事 業 の 発 展 を 図 る の と 並 行 し て、グローバル戦略の構築にも取 り組んできた。サウスランド社が セブンイレブン・チェーンを経営 していた時代には、システムやノ ウハウの指導は行ったものの、各 国のチェーンの経営はそれぞれの ライセンシーに任せていた。サウ スランド社が世界のセブンイレブ ンを動員して統一的な戦略を展開 することはなかった。セブンイレ ブン・ジャパンがサウスランド社 の経営を引き取った後も、この路 線は継続した。しかし、二〇〇〇 年 代 に 入 っ て セ ブ ン イ レ ブ ン・ ジャパンはより積極的な姿勢に転 じた。すなわち、世界的な広がり を 持 つ セ ブ ン イ レ ブ ン の ネ ッ ト ワークを活用することを考えるよ うになったのである。   第一に、世界のセブンイレブン のネットワークが持つ規模を使っ て、コストを引き下げようとして いる。例えば世界のセブンイレブ ン が 一 括 し て 共 同 購 入 す る な ら ば、サプライヤーに対して大幅な 値引きを要求できる。固定費とな る商品開発もスケールメリットを 活かして効率的に行うことができ る。実際、日本とアメリカのセブ ン イ レ ブ ン は 二 〇 〇 九 年 に カ リ フォルニア ・ ワインを共同購入し、 「 ヨ セ ミ テ・ ロ ー ド 」 と い う プ ラ イベートブランドで販売した。こ のワインは北京や上海でも売られ た。二〇一〇年にはボルドーワイ ン の 販 売 も 始 め た( 『 日 経 M J 』 二〇一〇年九月二四日) 。   第二に、世界的なネットワーク を使い、どこで最も低価格で調達 で き る か 容 易 に 探 す こ と が で き る。調達するのは商品ばかりでは なく、 資材や消耗品も対象となる。 既に看板を中国で製造し、香港や インドネシアのセブンイレブンに 供給したことがある。   このようなグローバル戦略にお いて中国が重要な役割を果たすこ とは明らかである。第一に、世界 のセブンイレブン・チェーンの規 模 を さ ら に 拡 大 し て い く た め に は、中国において成長していくこ とが不可欠である。第二に、看板 のケースが示すように、中国は低 コストの生産国でもある。中国で ネットワークを拡げれば、廉価な 商品や資材を調達し、他のセブン イ レ ブ ン に 供 給 す る こ と が で き る。   同時にグローバル戦略はセブン イレブンの中国における発展を促 す効果も持っている。前述のよう に、調達や開発のコストを下げる ことができるからである。大塚会 長は、 中国では所得の増加が続き、 また消費者が豊富な商品情報を持 つようになってきているため、同 じ も の を 売 っ て い て も 売 れ な い、 だから新しい商品、他店にはない 商品が非常に重要になっていると 述べている。世界のセブンイレブ ンが連携すれば、コストを抑えな がら新商品の開発を進めることが できる。   興味深いことは、このようなグ ローバル戦略のもとで広東のセブ ンイレブンの位置づけが明確にな り、また重要性を増しているよう にみえることである。前述のよう に、広東のセブンイレブンは元々 セブンイレブン・ジャパンとは直 接の関係がなく、 独自に発展した。 そのため、セブンイレブン・ジャ パンの中国戦略にとって、攪乱要 因になりかねない存在だったと考 えられる。しかしながら、上述の グローバル戦略が構築されること によって、広東のセブンイレブン が持つ五〇〇以上の店舗は、世界 のセブンイレブンの規模を支える

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セブンイレブン・ジャパンの中国戦略の進化

重要な要素であることが明らかに なったのである。

  上海のセブンイレブンの各店舗 のパフォーマンスは良好のようだ が、 まだ店舗数は少ない。 したがっ て、セブンイレブンの上海そして 中国での事業の成否を判断するの は早計といえよう。 しかしながら、 セブンイレブン・ジャパンの中国 における経験から、外資系企業が 中国市場で直面することになる課 題と、それに対するひとつの回答 のあり方を引き出すことは可能で ある。また、それは今後のセブン イレブンを観察するポイントも示 唆する。   セブンイレブン・ジャパンの課 題は、つぎの二つの目標をいかに 達成するかであったといえる。第 一の目標は、中国市場で独自の優 位性を確立し、他のチェーンと差 別化し、収益性を高めることであ る。第二に、大きくかつ急速に成 長する中国市場に浸透し、高い成 長性を実現することである。もち ろんこれらは中国に限ったもので はなく、企業にとっては普遍的な 目標であるが、中国市場の規模と 高成長のため、二つの目標への取 り組みをどのようにバランスさせ るかが際立ってユニークかつ重要 な課題となるのである。   単純化して考えるならば、ひと つの極にある考え方は成長の機会 を重視し、堅固な優位性と高い収 益性の確立を待たずに拡張に力を 入れるというものである。それに 対し、セブンイレブン・ジャパン は 反 対 の 極 に 近 い 戦 略 を 選 択 し た。すなわち、まず北京で店内調 理をはじめとする独自のビジネス モデルを作り上げた。それを踏ま えながら、つぎにライセンシング によって統一グループの資源を動 員し、成長を加速しようとしてい る。CVSチェーンの場合、地域 ごとにライセンスするエリア・フ ランチャイジングによって同時並 行的な発展を図れるため、このよ う な 二 段 階 戦 略 が 特 に 有 効 と な る。   こうしてセブンイレブン・ジャ パンの理想主義と拡張スピードの 加速の間の矛盾は、原理的には一 定程度解消された。今後観察すべ きは、ここで述べたような見通し どおりに、セブンイレブンが中国 での発展を加速していくかどうか である。二〇一〇年秋に発表され た 成 都 へ の 進 出 は( 『 日 本 経 済 新 聞 』 二 〇 一 〇 年 一 〇 月 二 七 日 )、 加速を示す証左かもしれない。   とはいえ、 セブンイレブン ・ ジャ パンの理想主義は、より具体的な レベルでもうひとつのトレードオ フを抱えていることも指摘してお きたい。すなわち、店舗面積に明 瞭に現れているように、セブンイ レブン・ジャパンのモデルの要求 を満たすことは容易ではない。そ のため、出店のスピードが制約さ れてしまう。また、成長への足枷 はライセンシーとの間の潜在的な 摩擦の元である。この問題がどの ように扱われるのかは、これから の観察におけるもうひとつの注目 点である。 ( さ と う   ゆ き ひ と / ア ジ ア 経 済 研 究所   新領域研究センター) 《参考文献》 ① 佐 藤 幸 人[ 二 〇 〇 七 ]「 台 湾 の コンビニエンスストア・チェー ン │ │発 展 の 軌 跡 と 今 後 の 課 題 」『 交 流 』 第 七 八 〇 号   一 ― 八ページ。 ② Ito S hin go [2 00 9] "J ap an es e-Ta iw an es e Jo in t V en tu re s in Ch in a: Th e P uz zle o f t he H ig h S u rv iv a l R a te ," C h in a In fo rm ati on , v ol. 23 , n o.1 , p p. 15-44. ③ Sato Yukihito [2009] "Strateg ic Ch oic es o f C on ve nie nc e S to re Ch ain s i n Ch in a: 7-E lev en a nd Fa m ily M art ," C hin a I nfo rm ati on , vol.23, no.1, pp.45-69.

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