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東アジアにおける専門職労働移動 (特集 国際シンポジウム 東アジア地域統合と日本 -- 国家・市場・人の移動)

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Academic year: 2021

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東アジアにおける専門職労働移動 (特集 国際シン

ポジウム 東アジア地域統合と日本 -- 国家・市場

・人の移動)

著者

Manolo Abella

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

164

ページ

14-15

発行年

2009-05

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004756

(2)

アジ研ワールド・トレンド No.64(2009. 5)― 4   ア ジ ア に は 非 常 に 豊 か な 人 的 資 源 が あ る 。 ま た こ の 地 域 は 、 戦 後 五 〇 年 の 間 に 教 育 に 多 額 の 投 資 を し て き た 。 そ れ が 、 ア ジ ア が 他 の 地 域 に 比 べ て 強 い 国 際 競 争 力 を 持 つ 源 泉 に な っ て い た と 考 え ら れ る 。   一 方 現 在 、 世 界 的 な 人 材 獲 得 競 争 が 起 こ っ て い る 。 マ イ ク ロ ソ フ ト 社 の ビ ル ・ ゲ イ ツ 氏 は ア メ リ カ の 議 会 で 、 も っ と 簡 単 に I T 専 門 家 が ア メ リ カ に 入 国 で き る よ う に 、 当 該 ビ ザ を 発 給 す る 条 件 を 緩 和 す べ き だ と 語 っ た と い う 。 こ の 発 言 に 世 界 的 な 人 材 獲 得 競 争 の 激 し さ が 象 徴 さ れ て い る 。 そ の よ う な 状 況 下 で 、 ア ジ ア の 豊 か な 専 門 職 人 材 の 動 向 が 注 目 さ れ て い る 。

  本 報 告 で 取 り 上 げ る テ ー マ は 以 下 の 三 つ で あ る 。 第 一 に 、 専 門 職 の 移 動 先 が 東 ア ジ ア に シ フ ト し た か ど う か と い う こ と で あ る 。 歴 史 を 振 り 返 っ て み る と 、 東 ア ジ ア の 専 門 職 ・ 専 門 家 は 主 と し て 欧 米 に 行 く 傾 向 が あ っ た 。 こ れ に つ い て は 植 民 地 と 宗 主 国 の 関 係 や 、 欧 米 の 人 材 不 足 、 貿 易 ・ 投 資 に よ る 関 係 の 深 化 が あ っ た と 考 え ら れ る 。 し か し な が ら 今 日 、 東 ア ジ ア の 経 済 統 合 が 進 む に つ れ て 、 こ の 専 門 職 の 国 際 移 動 の 流 れ に 大 き な 変 化 が あ っ た か ど う か に つ い て 検 討 し た い 。 第 二 に 分 析 し た い 点 は 、 移 民 政 策 に つ い て で あ る 。 つ ま り 東 ア ジ ア 諸 国 の 移 民 受 入 政 策 は 欧 米 の 国 々 の そ れ と 比 べ て 魅 力 的 な の か ど う か と い う こ と で あ る 。 第 三 の 点 は 、 東 ア ジ ア の 国 々 が 高 学 歴 の 労 働 者 を ど れ だ け 大 量 に 輩 出 し て い る か と い う こ と で あ る 。 こ れ ら の 点 に つ い て 、 で き る 限 り 事 実 や デ ー タ に 基 づ い て 分 析 す る 。

  最 近 O E C D は 、 加 盟 国 に 居 住 す る 、 高 等 教 育 を 受 け た 移 民 に つ い て の デ ー タ を 発 表 し た 。 こ れ に よ れ ば 現 在 、 三 七 〇 万 人 の 高 等 教 育 を 受 け た 東 ア ジ ア か ら の 移 住 者 が O E C D 諸 国 に 住 ん で い る 。 中 で も 三 分 の 二 が ア メ リ カ に 住 ん で い る ( 図 1 )。 つ ま り 東 ア ジ ア の 高 等 教 育 卒 業 者 の 多 く が 、 ア ジ ア 以 外 に 住 ん で い る わ け で あ る 。   送 り 出 し 国 の 内 訳 で あ る が 、 東 ア ジ ア か ら 最 も 多 く の 高 学 歴 移 民 を 送 り 出 し て い る の は 中 国 で 、 そ の 数 は 一 二 〇 万 人 に 及 ぶ 。 そ の 移 動 先 と し て は 、 ア メ リ カ 、 カ ナ ダ 、 日 本 、 オ ー ス ト ラ リ ア の 順 に 多 い 。 第 二 位 は フ ィ リ ピ ン で 八 九 万 人 で あ る 。 日 本 は と 言 え ば 二 八 万 人 で 、 そ の 多 く が ア メ リ カ や 西 ヨ ー ロ ッ パ に 住 む ビ ジ ネ ス マ ン や 経 営 者 ・ 管 理 職 で あ る 。 さ ら に 韓 国 か ら は 四 三 万 人 、 そ し て ベ ト ナ ム か ら は 三 五 万 人 が O E C D 諸 国 に 移 り 住 ん で い る 。 ち な み に 、 イ ン ド 人 は 一 〇 〇 万 人 以 上 が 高 等 教 育 移 民 と し て O E C D 諸 国 に 住 ん で い る 。 注 意 す べ き こ と は 、 こ れ ま で 挙 げ た 数 字 が 、 O E C D に 加 盟 し て い な い シ ン ガ ポ ー ル や マ レ ー シ ア に 移 り 住 む 東 ア ジ ア の 人 々 を 含 ん で い な い 、 と い う こ と で あ る 。 例 え ば シ ン ガ ポ ー ル に は 一 〇 万 人 以 上 の 他 の 東 ア ジ ア 出 身 専 門 職 が 住 ん で い る と 言 わ れ て い る 。   次 に ア メ リ カ へ の 移 民 を 例 に と り 、 こ れ ら 高 学 歴 者 の 就 業 す る 業 種 の 内 訳 を 分 析 し よ う 。 ア メ リ カ に 住 ん で い る 東 ア ジ ア 生 ま れ の 高 等 教 育 修 了 者 は 一 七 〇 万 人 い る 。 そ の 一 八 % が 医 療 お よ び 社 会 福 祉 関 係 ( 病 院 、 介 護 施 設 ) で 働 い て い る 。 さ ら に 一 五 % が 製 造 業 、 一 三 % が 不 動 産 業 、 一 一 % が 貿 易 と い う 内 訳 で あ る 。 フ ィ リ ピ ン 人 の 多 く が

マノロ・ア

イギリス 4% 日本 5% オーストラリア 6% その他 7% アメリカ 64% カナダ 14% 図1 東アジア出身高学歴労働者の居住地 (出所)OECDデータ・ベース。

(3)

5 ―アジ研ワールド・トレンド No.64(2009. 5) 医 療 に 従 事 し て お り 、 日 本 人 や 韓 国 人 は 主 に 貿 易 に 従 事 し て い る 、 と い う 特 徴 が あ る 。   で は 、 東 ア ジ ア か ら の 専 門 職 の 異 動 先 が 北 米 中 心 か ら 幾 分 か で も 変 わ っ た の か と い う と 、 そ の 答 え は 否 で あ る 。 ア メ リ カ と カ ナ ダ は 二 国 だ け で 二 九 〇 万 人 の 大 卒 者 を 東 ア ジ ア か ら 受 け 入 れ て い る 。 こ れ に 対 し 、 中 国 の 上 海 で は 五 〇 万 人 、 シ ン ガ ポ ー ル で は 一 〇 万 人 以 上 の 東 ア ジ ア 出 身 の 高 学 歴 人 材 を 受 け 入 れ て い る も の の 、 日 本 や 韓 国 で は ま だ ま だ 少 な い か ら で あ る 。   よ り 具 体 的 に は 図 2 が 示 す よ う に 、 日 本 に は 二 〇 〇 六 年 に 約 一 六 万 人 の 高 学 歴 専 門 家 が 居 住 し て い た 。 二 〇 〇 二 年 か ら 二 〇 〇 六 年 ま で の 高 学 歴 居 住 者 の 伸 び は 年 率 二 九 % と い う 高 さ で あ る 。 し か し 一 六 万 人 と い う 数 は 他 国 に 比 べ て 決 し て 多 く は な く 、 こ れ ま で 日 本 は あ ま り 外 国 の 熟 練 労 働 者 に 依 存 せ ず 、 経 済 発 展 し て き た と 言 え る 。 た だ し 、 他 の 国 々 が 国 際 的 に 人 材 を 争 奪 し て い く 中 で 、 今 後 も こ の や り 方 が 継 続 で き る か ど う か は 定 か で は な い 。

  次 に 、 こ れ ま で 分 析 し て き た 高 学 歴 の 人 々 に と っ て 、 東 ア ジ ア 各 国 の 移 民 政 策 が 、 魅 力 的 な も の か ど う か を 検 討 す る 。   ま ず 確 認 し た い こ と は 、 東 ア ジ ア に は ア メ リ カ 、 カ ナ ダ 、 オ ー ス ト ラ リ ア 、 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド の よ う に 移 民 が 中 心 と な っ て 構 成 し て い る 国 は な い と い う こ と で あ る 。 し た が っ て 、 永 住 は 、 そ の 国 の 国 民 と 結 婚 で も し な い 限 り 難 し い 。   ま た 、 全 て の 東 ア ジ ア の 国 々 の 移 民 政 策 は 、 非 熟 練 労 働 者 と 熟 練 労 働 者 に 対 し て 異 な っ た 扱 い を し て い る こ と が 指 摘 で き る 。 例 え ば シ ン ガ ポ ー ル で は 、 ス キ ル の 高 い 労 働 者 に は 永 住 を 奨 励 す る 政 策 が あ る が 、 非 熟 練 労 働 者 に は 永 住 を 奨 励 し て い な い 。 ま た 東 ア ジ ア の 移 民 受 入 推 進 政 策 は 欧 米 と 比 べ る と あ ま り 魅 力 的 で は な い 。 一 例 を 挙 げ れ ば オ ー ス ト ラ リ ア や カ ナ ダ 、 イ ギ リ ス で は 、 イ ン タ ー ネ ッ ト を 通 じ て 自 分 の 情 報 を 入 力 す る と 、 永 住 対 象 と な っ て い る か ど う か を 調 べ る こ と さ え 可 能 で あ る 。   国 際 的 な 専 門 職 人 材 獲 得 競 争 の 一 つ の 重 要 な 入 り 口 が 大 学 で あ る と 言 わ れ て い る 。 ま ず は 留 学 を し 、 卒 業 後 に 同 じ 国 で 働 く 、 と い う 順 番 で 高 等 教 育 人 材 の 移 住 が 起 こ っ て い る 。 ま ず 大 学 に 入 学 す る 際 に 選 抜 が あ る の で 、 そ こ で 既 に 優 秀 な 人 材 が ふ る い に か け ら れ て い る 。 こ の パ タ ー ン の 人 材 流 入 を 意 識 し 、 例 え ば ド イ ツ で は 英 語 で 授 業 を 行 う 大 学 が で き て い る し 、 日 本 で も そ の よ う な 大 学 が あ る と 聞 く 。

  最 後 に 、 東 ア ジ ア に お け る 高 学 歴 労 働 者 の 供 給 に つ い て 検 討 し よ う 。 統 計 に よ れ ば 、 東 ア ジ ア の 高 等 教 育 卒 業 者 は 中 国 が 最 も 多 く 五 六 〇 万 人 、 日 本 が 次 い で 一 〇 〇 万 人 超 、 さ ら に フ ィ リ ピ ン 、 イ ン ド ネ シ ア の 二 国 の 合 計 で 一 〇 〇 万 人 、タ イ が 五 〇 万 人 、マ レ ー シ ア が 二 〇 万 人 と な っ て い る 。 留 学 等 に よ る 頭 脳 流 出 が 多 い こ と も 考 慮 す る と 、 東 ア ジ ア の 成 長 を 維 持 す る た め に は 、 こ の よ う な 数 で は 足 り な い 可 能 性 が あ る 。   高 学 歴 労 働 力 需 給 バ ラ ン ス は 、 大 変 複 雑 で も あ る 。 と い う の は 、 労 働 者 が 有 す る ス キ ル ご と に 、 労 働 力 の 需 給 を 一 致 さ せ る 必 要 が あ る か ら で あ る 。 例 え ば フ ィ リ ピ ン で は 、 高 等 教 育 を 受 け た 階 層 の 失 業 率 の 方 が 、 教 育 水 準 の 低 い 階 層 の 労 働 力 の 失 業 率 よ り 高 い 。 さ ら に い く つ か の 東 ア ジ ア 諸 国 に 共 通 す る 問 題 と し て 、 若 年 層 の 減 少 が 挙 げ ら れ る 。 こ れ は 香 港 、 シ ン ガ ポ ー ル 、 韓 国 、 日 本 と い っ た 高 所 得 国 ・ 地 域 で 深 刻 で あ る 。

  結 論 を 言 え ば 、 東 ア ジ ア の 高 学 歴 労 働 力 が 欧 米 に 向 か う 傾 向 に 変 化 は な い 。 ま た 、 東 ア ジ ア の 移 民 受 入 政 策 は 欧 米 諸 国 の そ れ に 比 べ て 魅 力 的 で な い の で 、 ア ジ ア の 高 学 歴 専 門 家 が 東 ア ジ ア の 国 で 働 き た い と 思 え る よ う な 政 策 を 打 ち 出 す 必 要 が あ る 。 人 材 獲 得 競 争 が 激 し さ を 増 し て い る 現 在 、 東 ア ジ ア に 高 学 歴 人 材 の プ ー ル を 作 っ て い く た め に も 、 よ り 拡 大 さ れ 統 合 さ れ た 東 ア ジ ア コ ミ ュ ニ テ ィ の 役 割 が 増 す こ と に な ろ う 。 ( Manolo  Abella / 国 際 労 働 機 構 チ ー フ ・ テ ク ニ カ ル ・ ア ド バ イ ザ ー ) 図2 日本在留の専門職外国人登録者数の在留資格別推移 44 45 48 55 57 21 21 23 29 35 17 17 18 18 18 13 13 13 18 15 100 0 20 40 60 80 120 140 160 180 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 人文知識・国際業務 技術 教授および教育 技能 企業内転勤 その他 ︵ 単位   千人 ︶ (出所) 法務省入国管理局発表の 外国人登録者統計を加工 したものである。

参照

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出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所/Institute of Developing Economies (IDE‑JETRO) .