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《特別寄稿》笑いと身体心理的健康・疾病との関連についての近年の研究動向 2010年~2020年の観察研究、介入研究を中心に

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特別寄稿

笑いと身体心理的健康・疾病との

関連についての近年の研究動向

―2010年~2020年の観察研究、介入研究を中心に―

要旨  笑いと健康に関する研究はここ数十年で 飛躍的に報告数が増えてきた。それに伴い 研究手法及び研究対象についても変遷がみ られるようになってきた。そこで本稿では、 2010年以降の笑いと身体心理的健康及び疾 病との関連について文献的レビューを行う とともに、今後の課題を提示することを目 的とした。文献検索の結果、うつ症状、不 安、睡眠の質に関する無作為介入研究が複 数行われるようになり、エビデンスレベル の高いメタ分析もいくつか報告されてい た。また、生活習慣病、要介護等の身体疾 患への影響も前向き研究での報告が増えて きた。これらの研究を、観察研究(①笑い と死亡、要介護との関連、②笑いと生活習 慣病との関連、③笑いと認知機能との関連)、 及び介入研究(①笑いが生活習慣病・身体 的指標に及ぼす効果、②笑いが心理的指標 に及ぼす効果)に分けて研究内容を概説し た。加えて、日常生活において笑いを増や すことに関連する因子についても文献をも とに考察した。本研究の結果、笑いはスト レス関連疾患及び生活習慣病など様々な疾 患の予防・管理に有用である可能性がある ことが示唆された。 はじめに  昔から「笑う門には福来る」「Laughter is the best medicine」などと言われるよ うに、国内外を問わず笑うことが健康に良 いということが経験的に知られてきた。一 方、1970年代のノーマン・カズンズの笑い による痛み軽減に関する自分の経験の報告 (Cousins, 1976)以来、多くの笑いと健康・ 疾病に関する研究報告があるが、科学的根 拠に関しては不十分なものも多かった。し かしながら、近年質の高い研究が報告され るようになり、笑いと健康・疾病に関する 研究の動向に変化がみられるようになって きた。  ヒトを対象とした研究における科学的根 拠(エビデンス)については、高いものか ら低いものまでの評価の基準となるエビデ

大平 哲也

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ンスレベルが知られている(表1)。例え ば、上記のノーマン・カズンズによる報告は、 彼自身の経験に基づくもので、エビデンス レベルで言えば「VI.症例報告」に位置 するものであり、エビデンスレベルは高く ない。また、落語や漫才等で笑った前後の 比較など対照群を伴わない研究は「V.処 置前後の比較など、前後比較や対照群を伴 わない研究」に位置し、同様にエビデンス レベルは高くない。臨床における治療ガイ ドライン等では、エビデンスレベルが少な くともIVa以上であることを推奨の基準と している。そこで、本論文では、笑いと健 康・疾病との関連を検討するにあたり、可 能な限りエビデンスレベルがIVa以上(情 報があまりない場合はIVbを含める)の文 献を検索し、近年の笑いと身体心理的健康・ 疾病との関連の研究動向をまとめることを 目的とした。加えて日常生活において笑い を増やすための因子についても文献をまと めた。これらにより、笑いが健康増進、疾 病予防・治療に応用できる可能性について 考察する。 学術論文の抽出  最初に、医学に関する学術データベース であるPubMed及び医学中央雑誌により文 献検索を行った。PubMedにおいてはキー ワードとして“Laughter”がタイトルに 含まれるものを、医学中央雑誌においては 同様にキーワードに“笑い”が含まれるも ので、2010年以降、2020年4月末までの文 献(医学中央雑誌においては学会発表を除 き、抄録が確認できるもの)を抽出した。 次に、抽出された文献のうち、総説論文に ついては、引用文献を確認し、関連する文 献を抽出した。さらに、著者が関わってい る共同研究等により印刷中を含む関連論文 を抽出した。  抽出の結果、PubMedにより259件の論 文が、医学中央雑誌により322件の論文 が検索された(PubMedとの重複を含む)。 このうち、笑いと身体心理的健康・疾病と の関連とは異なるテーマの論文、対象者が 未成年の論文、実験的な論文、観察研究に おいては対象数が不十分な論文(100人未 満)、及びエビデンスレベルがV以下の論 文(症例報告、対照のない介入研究等)を 表1.ヒトを対象とした研究のエビデンスレベル エビデンスレベル 研究の種類 I 無作為 (ランダム) 化比較試験のメタ解析 II 少なくとも一つの無作為 (ランダム) 化比較試験 III 無作為 (ランダム) 割付を伴わない同時コントロールを伴う比較試験 IVa 分析的疫学研究 (コホート研究) IVb 分析的疫学研究 (症例対照研究、 横断研究) V 処置前後の比較など、 前後比較や対照群を伴わない研究 VI 症例報告やケース ・ シリーズ VII 専門家個人の意見 高 低

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除外した。さらに、心理的健康・疾病(うつ、 不安、ストレス等)をアウトカムとした介 入研究は数多くあり、本誌でも既に報告さ れていること(森田亜矢子, 2018)、及び既 に3件の系統的レビュー及びメタ解析が行 われているため、これらについては、より エビデンスレベルが高い無作為(ランダム) 化比較試験の結果のみを抽出した。最終的 に、引用文献、著者らが関わっている研究 を含めて、観察研究13件、介入研究21件(メ タ分析3件を含む)が抽出された。 観察研究  ① 笑いと死亡、要介護との関連  これまで、米国のプロ野球選手を対象と して、選手の写真上の笑顔と寿命との関連 が検討されている。1952年の時点で現役 であった230人のプロ野球選手の顔写真を 分析し、笑顔の程度を3段階に評価した 上で、その後の寿命との関連を検討した (Abel and Kruger, 2010)。2009年までの 追跡調査で184人が死亡し、笑顔との関連 を解析した結果、笑顔が全くみられなかっ た選手の平均寿命が72.9歳であったのに対 し、歯を見せて満面の笑みを浮かべていた 選手の寿命は79.9歳で、その差が7歳もあっ た。しかしながら、その後同様に米国のプ ロ野球選手を対象として再解析した結果で は、笑顔と寿命との関連はみられなかった (Dufner et al., 2018)。  一方、笑いと寿命(死亡)との関連をみ た研究は欧米を含めてこれまでほとんど なかったが、最近我が国の疫学研究にお いて、笑いと総死亡との関連が検討され た(表2)。山形県内の7つの市に住む40 歳以上の地域住民男女17,152人を対象とし て、日常生活における声を出して笑う頻度 を健診に併せて評価し、その後最大8年間 表2.笑いと死亡、介護、生活習慣病との関連についての観察研究 著者 公表年 対象者 対象人数 研究手法 アウトカム 結果の概要 Sakurada K, et al. 2020 山形県内の7市 の40歳以上の地 域住民 17,152人(男性 7,003人、女性 10,149人) 前向きコホ ート研究 (5.4年) 死亡、循環 器疾患発症 日常生活における声を出して笑う頻度が、 週1回以上の人に比べ て、 ほとんど笑わない人は性・年齢調整死亡リスクが1.93倍 (95% 信頼区間:1.15-3.06)、 性・年齢調整循環器疾患発症リスクが1.35 倍 (95%信頼区間 : 0.52-2.85) であった。 Tamada Y, et al. 2020 日本老年学的評 価研究(JAGES) に参加した65歳 以上の地域住民 14,233人(男性 7,162人、女性 7,071人) 前向きコホ ート研究 (3.3年) 死亡、新規 要介護 (2-5)認定 日常生活における声を出して笑う頻度が、ほぼ毎日の人に比べて、 ほとんど笑わない人は性 ・ 年齢調整死亡リスクが1.52倍 (95%信 頼区間 : 1.18-1.96)、 性 ・ 年齢調整要介護認定リスクが2.14倍 (95%信頼区間 : 1.68-2.74) であった。 Hayashi K, et al. 2016 日本老年学的評 価研究(JAGES) に参加した65歳 以上の地域住民 20,934人(男性 10,206人、女性 10,728人) 横断研究 心疾患、脳 卒中の有病 率 日常生活における声を出して笑う頻度が、 ほぼ毎日の人に比べ て、 ほとんど笑わない人は多変量調整心疾患有病リスクが1.21倍 (95%信頼区間:1.04-1.41)、多変量調整脳卒中有病リスクが1.67 倍 (95%信頼区間 : 1.30-2.15) であった。 Ikeda S, et al. 2020 CIRCS研究に参 加した茨城県の 40歳以上の地域 住民 1,441人(男性 554人、女性 887人) 前向きコホ ート研究 (4年) 血圧 日常生活における声を出して笑う頻度が、 ほぼ毎日の男性に比べ て、 週1回未満の男性は4年後の収縮期血圧、 拡張期血圧がとも に上昇していたが、 女性では関連がみられなかった。 大平、他 2013 CIRCS研究に参 加 し た 秋 田 県 、 大阪府の30歳以 上の地域住民 4,780人(男性 1,786人、女性 2,994人) 横断研究 糖尿病 日常生活における声を出して笑う頻度が、ほぼ毎日の人に比べて、 週1 ~ 5回の人は多変量調整糖尿病有病リスクが1.26倍 (95%信 頼区間 : 0.97-1.65)、 週1回未満の人は1.51倍 (95%信頼区間 : 1.08-2.11) であった。 大平、他 2011 CIRCS研究に参 加した大阪府の 65歳以上の地域 住民 横断研究:985 人、前向き研 究738人 横断研究、 前向きコホ ート研究 (1年) 認知機能低 下症状 日常生活における声を出して笑う頻度が、ほぼ毎日の人に比べて、 ほとんど笑わない人は性 ・ 年齢調整認知機能低下症状を有する リスクが2.15倍 (95%信頼区間 : 1.18-3.92)、 1年後に性 ・ 年齢 調整認知機能低下症状が出現するリスクが3.61倍 (95%信頼区 間 : 1.46-8.91) であった。

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(中央値5.4年)の総死亡との関連をみた 結果、週に1回以上声を出して笑う人に比 べて、週1回未満、月1回以上笑う人の 性・年齢調整死亡リスクは0.85倍(95%信 頼区間:0.59-1.19)、ほとんど笑わない(月 1回未満)人の性・年齢調整死亡リスクは 1.93倍(95%信頼区間:1.15-3.06)であ り、特にほとんど笑わない人において死亡 リスクが上昇しやすいことが明らかになっ た(Sakurada et al., 2020)。また、笑いの 頻度と死亡との関連は、性、年齢に加えて、 健診時の高血圧、糖尿病、喫煙、飲酒を調 整した後も同様の関連がみられており、笑 いの頻度はこれらの因子とは独立して死亡 を減らすことと関連している可能性が示唆 された。  さらに、笑いは死亡だけではなく、介 護にも影響している可能性が報告された。 日 本 老 年 学 的 評 価 研 究(JAGES: Japan Gerontological Evaluation Study) の2013 年調査に参加した9つの県の23市町村に住 む要介護認定を受けていない65歳以上の地 域住民男女14,233人を対象として、日常生 活における声を出して笑う頻度を質問票に て評価し、その後3年以上の間(中央値3.3 年)における総死亡及び新規の要介護認定 (要介護2~5)との関連をみた(Tamada et al., 2020)。その結果、ほぼ毎日声を出 して笑う人に比べて、週1~5回、月1~ 3回、ほとんど笑わない(月1回未満)人 における性・年齢調整死亡率は1.10倍(95% 信頼区間:0.92-1.32)、1.35倍(95%信頼 区間:1.07-1.70)、1.52倍(95%信頼区間: 1.18-1.96)であった。同様に、性・年齢 調整要介護認定率は1.13倍(95%信頼区間: 0.94-1.37)、1.22倍(95 % 信 頼 区 間:0.94 -1.59)、2.14倍(95%信頼区間:1.68-2.74) であった。また、性、年齢、高血圧、糖尿 病、喫煙、飲酒に加えて、家族構成、社会 参加、うつ症状、認知機能、日常生活機能、 教育歴及び収入を調整した結果、死亡との 関連に統計学的有意差はみられなくなった が、新規要介護認定との関連は、ほとんど 笑わない人で1.42倍(95%信頼区間:1.10 -1.85)倍と関連は弱まったものの同様に みられた。  これら2つの研究が示す重要な点は、同 じ笑いの質問票を用いて異なる地域、年代 の集団において総死亡との関連を解析した 結果、ほぼ同様の傾向が得られたことにあ る。すなわち、これらの結果はどの日本人 にも当てはまる可能性が高く、日常生活に おいて声を出して笑う頻度がほとんどない 中高年者(40歳以上の3.3%、65歳以上の 7.3%)は、ほぼ毎日笑っている人に比べ て(理由は何であれ)3~5年後に亡くな る可能性が高いということがほぼ言えそう である。また、65歳以上では、笑う頻度が ほとんどない人は、3年後に要介護認定に なる可能性も高く、日常生活で笑うことが 将来の寿命に加えて、健康寿命にも関連す ることが明らかになった。  ② 笑いと生活習慣病との関連  上述のように、笑いが寿命及び健康寿命 に関連するのであれば、何らかの疾患を介 して関連する可能性が考えられる。平成28 年国民生活基礎調査によれば、要介護の主

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な原因は第1位が認知症、第2位が脳血管 疾患(脳卒中)、第3位が高齢による衰弱 であり、これらと笑いとの関連をみること が重要である。  笑いと循環器疾患との関連については、 横断研究、前向きコホート研究にて報告さ れている。日本老年学的評価研究(JAGES) の2013年調査に参加した65歳以上の地域住 民男女20,934人を対象として、日常生活に おける声を出して笑う頻度と心疾患、脳卒 中との関連を横断的にみた結果、ほぼ毎日 声を出して笑う人に比べて、週1~5回、 月1~3回、ほとんど笑わない(月1回未 満)人における多変量調整(性、年齢、肥 満度、飲酒、喫煙、身体活動、及びうつを 調整)心疾患有病率は1.13倍(95%信頼区 間:1.03-1.25)、1.18倍(95%信頼区間:1.03 -1.35)、1.21倍(95%信頼区間:1.04-1.41) であった(Hayashi et al., 2016)。同様に、 多変量調整脳卒中有病率は1.12倍(95%信 頼区間:0.93-1.34)、1.28倍(95%信頼区 間:1.01-1.63)、1.67倍(95%信頼区間:1.30 -2.15)であった。さらに、上述の山形県 内の地域住民17,152人を対象とした研究で は、笑いと循環器疾患(心筋梗塞及び脳卒 中)発症との関連を前向きコホート研究で 検討した結果、週に1回以上声を出して笑 う人に比べて、週1回未満、月1回以上 笑う人の性・年齢調整発症リスクは1.63倍 (95%信頼区間:1.08-2.39)、ほとんど笑 わない(月1回未満)人の性・年齢調整発 症リスクは1.35倍(95%信頼区間:0.52- 2.85)であり(Sakurada et al., 2020)、笑 いの頻度が少ない人において循環器疾患が 発症しやすいことが示唆された。  さらに、循環器疾患の危険因子である 高血圧、糖尿病との関連についても横断 研究、前向きコホート研究で報告されて いる。Circulation Risk in Communities Study(CIRCS)に参加した茨城県の地域 住民男女1,441人を対象として、毎年健診 時の血圧を4年間追跡調査した結果、日 常生活における声を出して笑う頻度がほ ぼ毎日の男性では、2010年の収縮期/拡張 期血圧が平均132.2/77.0mmHg、2014年が 平均133.0/76.6mmHgとほとんど変化がな かったのに対して、笑う頻度が週1回未満 の男性では2010年が平均130.7/75.9mmHg、 2014年が平均134.1/78.9mmHg と4年間に おいて収縮期血圧、拡張期血圧がともに有 意に上昇していた(Ikeda et al., 2020)。一 方、女性ではこれらの関連はみられなかっ た。また、同じCIRCS研究に参加した秋田 県、大阪府の地域住民男女4,780人を対象 として、日常生活における声を出して笑 う頻度と糖尿病の有病率との関連をみた 結果、ほぼ毎日声を出して笑う人に比べ て、週に1~5回程度笑っている人の多変 量調整(性、年齢、肥満度を調整)糖尿病 有病リスクは1.26倍(95%信頼区間:0.97 -1.65)、笑う頻度が週1回未満の人は1.51 倍(95%信頼区間:1.08-2.11)であった (大平, 他, 2013)。また、男女別にみると、 男性に比べて女性の方が笑いと糖尿病との 関連がみられた。さらに、この集団を平均 5.4年間追跡調査し、笑いの頻度と糖尿病 発症との関連を前向きに検討した結果、男 女ともに笑いの頻度と糖尿病発症との有意

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な関連がみられ、ほぼ毎日声を出して笑っ ている人に比べて、週1回未満の人は多変 量調整糖尿病発症のリスクが1.84倍高かっ た。  以上の結果を踏まえると、笑いの頻度が 少ない人では、高血圧、糖尿病が発症しや すくなる可能性があり、その結果、心筋梗 塞、脳卒中等の循環器疾患が引き起こされ て、要介護や死亡の原因になる可能性が考 えられる。この流れを明らかにするために は、笑いを増やすことによって高血圧、糖 尿病が改善・予防されることを確認する必 要がある。  ③ 笑いと認知機能との関連  認知症は前述のように要介護の原因の第 1位であり、超高齢化社会を迎えている我 が国においては認知症の増加が大きな社会 問題になっている。実際に、厚生労働省の 調査によれば、2012年に462万人と推計さ れた認知症の人数が、2025年には700万人 (65歳以上の5人に1人)に増加すること が推計されている。これまで、笑いの頻度 と認知症との関連を直接検討した研究はほ とんど報告されていないが、以下の研究結 果から笑いと認知症は関連する可能性が高 いと推測される。  CIRCS研究に参加した4,780人を対象と して、笑いの頻度と年齢との関連を検討し た結果、男女ともに笑いの頻度は年齢とと もに減少していたことから、笑いは老化指 標の一つとも考えられる。上記の対象者の 内、大阪府の65歳以上の男女985人を対象 にして、介護予防のための生活機能調査 票に準じて、物忘れなどの認知機能に関 する症状を調査した(大平, 他., 2011)。そ の結果、「認知機能低下症状あり」にあて はまった人は全体の26%であり、その頻度 は年齢とともに高くなった。次に、「認知 機能低下あり」の頻度をほぼ毎日声を出し て笑う人と比較した結果、笑う頻度が少な い人ほど認知機能低下ありのオッズ比が高 く、ほとんど笑わない(月1回未満)人 の性・年齢調整後の認知機能低下を有す るリスクは2.15倍(95%信頼区間、1.18- 3.92、p=0.01)であった。また、笑いの頻 度との関連がみられた生活習慣のうち、従 来から認知機能との関連が知られている喫 煙の有無、うつ症状の有無を調整した上で 笑いの頻度と認知機能との関連を検討し ても、ほぼ同様の傾向がみられた。さら に、認知機能が正常な人を1年間経過観察 した結果、笑いの頻度が少ない人からより 認知機能低下症状が発症しやすいことが確 認され、ほぼ毎日声を出して笑う人に比べ て、ほとんど笑わない(月1回未満)人の 性・年齢調整後の認知機能低下症状の出現 リスクは3.61倍(95%信頼区間、1.46-8.91、 p=0.005)であった。したがって、笑いの 頻度が少ないことは認知機能の低下と強く 関連することが示唆され、前述の日本老年 学的評価研究(JAGES)でみられた笑い の頻度が少ない人から要介護になりやすい という結果を支持する結果であったと考え る。 介入研究  ① 笑いが生活習慣病・身体的指標に

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  及ぼす効果  笑いが生活習慣病に及ぼす効果につい ての研究は、2000年代から報告されてい る。筑波大学の研究グループは、中高年の 糖尿病患者19人を対象として、最初の日は 参加者に対して昼食後に糖尿病の講義を40 分間聴いてもらい、次の日は同じ昼食後 に漫才を40分間鑑賞し大笑いしてもらっ た。両日ともに昼食前と昼食後2時間の血 糖値を測定し比較した結果、講義の日の血 糖値は151mg/dLから274 mg/dLに急上昇 したのに対し、漫才の日では178mg/dLか ら255mg/dLにとどまり、その差が46mg/ dLもあった(Hayashi et al., 2003)。しか しながら、この研究では短時間の効果のみ が検討されており、笑いの糖尿病への長期 的な効果については明らかではなかった。  そこで、2010年以降における生活習慣病 に対する笑いの介入研究を抽出した(表 3)。60歳以上の地域住民27人を対象として、 無作為に介入群と対照群に分けて、介入群 には1回120分の笑い療法(落語、漫才等 の鑑賞と軽度の運動を組み合わせたプログ ラム)を10週間実施した結果、介入群は対 照群と比べて、糖尿病のコントロールの指 標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)が有 意に改善した(Hirosaki et al., 2013)。ま た、骨密度及び自覚的健康感にも改善がみ られた。したがって、笑いは糖尿病のコン トロールを長期的に改善させる可能性が示 表3.笑いと身体疾患及び身体的指標との関連についての介入研究 著者 公表年 対象者 対象人数 研究手法 介入内容 アウトカム 結果の概要 Tavakoli T, et al. 2019 外来通院中 の過敏性腸 症候群患者 60人(笑い介入 群20人、抗不安 剤介入群20人、 対照群20人) 無作為化 介入研究 1回60分の笑 いヨガを7回 過敏性腸症候 群の症状、不 安 笑い介入群は対照群及び抗不安剤投与群と比べて、 介 入後に過敏性腸症候群の症状がより大きく改善していた。 また、 不安症状も同様に改善していたが3群間に有意差 はみられなかった。 Fujiwara Y, et al. 2018 健常学生(看 護学部) 90人(笑い介入 群45人、対照群 45人) 無作為化 比較研究 15分の計算作 業後に5分の 笑い声の聴取 自覚的ストレ ス、心拍数、 自律神経機能 笑い聴取群は対照 (安静) 群ともに、 介入後に自覚的 ストレスが低下したが、 笑い聴取群は対照群に比べて、 心拍数が減少し、 副交感神経機能の上昇がみられた。 Fujisawa A, et al. 2018 健常大学生 120人(笑いヨガ 介入群40人、笑 い視聴介入群 40人、対照群40 人) 無作為化 比較研究 笑いヨガ30分、 コメディ映画 視聴30分、読 書30分 唾液中コルチ ゾール、 DHEA、及びコ ルチゾール 笑いヨガ群とコメディ映画視聴群は介入後に唾液中コル チゾール値及びコルチゾール/DHEA比が低下した。一方、 DHEAの増加はみられなかった。 Law MM, et al. 2018 健常者 72人(笑い介入 群24人、笑い視 聴介入群24人、 対照群24人) 無作為化 比較研究 偽笑い(強制 笑い)6分、ユ ーモアビデオ 視聴6分 心拍数、心拍 変動 偽笑い介入群とユーモアビデオ視聴群はどちらも介入後 に心拍数の増加、 心拍変動 (副交感神経機能指標) の 上昇がみられた。 Kong M, et al. 2014 放射線療法 を受ける予定 の乳がん患 者 37人(介入群18 人、対照群19 人) 無作為化 介入研究 1回60分の笑 い療法を週2 回8週間 放射線皮膚炎 の有無 笑い介入群は対照群と比べて、 放射線治療8週間後のグ レード2以上の皮膚炎になる率が低かった。 また、 痛み についても少ない傾向がみられた。 Hirosaki M, et al. 2013 60歳以上の 地域住民 27人(介入群14 人、対照群13 人) 無作為化 介入研究 1回120分の 笑い療法を週 1回10週間 骨密度、ヘモ グロビンA1c、 血糖、脂質、 体重 笑い介入群は対照群と比べて、 介入後に骨密度、 ヘモ グロビンA1c値、 及び自覚的健康度に改善がみられた。 Toda M, et al. 2012 若年(20-25 歳)及び高齢 (62-83歳)健 常者 30人(若年群15 人、高齢群15 人) 比較介入 研究 15分の計算作 業後に30分の 笑いのビデオ 視聴 唾液中クロモ グラニンA、唾 液流量 若年者においては笑いのビデオ視聴後のクロモグラニン A値が笑いのないビデオ視聴後に比べて低くなっていた が、 高齢者では関連がみられなかった。 Sugawara J, et al. 2010 23~43歳の 健常者 17人 クロスオ ーバー介 入研究 60分の笑い ビデオ視聴 を1回 血管内皮機 能 コメディビデオを視聴した後はドキュメンタリービデオを視 聴した後に比べて血管内皮機能が改善していた。

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唆された。さらに、笑いの糖尿病コントロー ルに対する効果については、他の対象者に おいても同様の結果が得られている(大平, 他, 2013)。一方、笑いが初期の動脈硬化の 指標である血管内皮機能を改善させる可能 性について、健常者17人を対象とした研究 では、60分間コメディビデオを視聴した後 はドキュメンタリービデオを視聴した後に 比べて有意に血管内皮機能が改善すること が報告されている(Sugawara et al., 2010)。 しかしながらこの研究を含めて高血圧、脂 質異常、動脈硬化等、他の生活習慣病に対 する長期的な効果についての研究はほとん どなく、今後の報告が期待される。  笑いが身体的指標に及ぼす効果について は、ストレス関連指標や自律神経系に及ぼ す効果が主に検討されている。若年健常 者15人において笑いのビデオ視聴後に交 感神経系の指標であるクロモグラニンA値 が、笑いのないビデオ視聴後に比べて低 くなっていた(Toda and Ichikawa, 2012)。 また、心拍変動を用いて自律神経系機能 を評価した研究では、健常者72人におい て、6分間の偽笑い(面白くなくても笑う という行動をとってもらう)及びユーモア ビデオ視聴による自然な笑い後はどちらも 介入後に副交感神経機能の上昇、すなわち 心身のリラクゼーションに有用であるこ とが確認された(Law et al., 2018)。同様 に、笑いヨガとコメディ映画視聴では、ど ちらも唾液中コルチゾール値の低下がみら れた(Fujisawa et al., 2018)さらに、大 学生90人を対象とした研究では、ストレス 負荷後に5分間笑い声を聴取することに よって、副交感神経機能の上昇がみられた (Fujiwara and Okamura, 2018)。したがっ て、笑いの心身のリラクゼーション効果に ついては、何を理由にして笑うかというこ とよりも、笑うという行動が大事であり、 しかも、自分が笑っていなくても、笑い声 を聴いただけでも効果が得られる可能性が 考えられる。  それ以外の身体的疾患に関してもいくつ か笑いの効果について検討されている。放 射線療法を受ける予定の乳がん患者37人に 対して、放射線治療中に1回60分間の笑い 療法(笑いの知識習得、笑い体操等)を週 2回8週間実施した結果、笑い療法を受け た人はそうでない人に比べて、8週間後の 放射線腫瘍医によって評価された放射線皮 膚炎の程度が軽度であった(Kong et al., 2014)。また、痛みについても少ない傾向 がみられた。さらに、過敏性腸症候群で外 来通院中の患者60人を対象として、抗不 安剤による治療群と1回60分の笑いヨガ (Laughter Yoga)を7回実施する群に分 けて比較した結果、笑いヨガを行った群は 対照群及び抗不安剤投与群に比べて症状 がより改善する傾向がみられた(Tavakoli et al., 2019)。これらの結果から、笑いは 長期的に免疫系や消化器系に影響を及ぼす 可能性が考えられるが、いずれにしてもこ れらの効果のメカニズムについてはまだ明 らかではない。  ② 笑いが心理的指標に及ぼす効果  笑いがうつ症状、不安、生活の質(QOL) 等の心理的健康に及ぼす影響については、

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健常者や患者を問わず、そして年齢を問わ ず多くの報告がある。健常学生を38人を対 象として、笑いヨガの効果をみた研究では、 週2回1カ月間の笑いヨガへの参加後に対 照群と比べて全般的な健康感、特に身体症 状、不安・不眠、うつ症状の改善がみら れたことを報告している(Yazdani et al., 2014)。同様に、地域住民高齢者(Ghodsbin et al., 2015; Ko and Youn, 2011; Shahidi et al., 2011)においてもうつ症状、不安、睡 眠の質に関する笑いの効果が報告されて いる。また、がん患者(Kim et al., 2015; Morishima et al., 2019)、パーキンソン病 患者(Memarian et al., 2017)、人工透析 患者(Heo et al., 2016)、うつ症状を有す る者(Bressington et al., 2019)、ナーシン グホームの入居者(Low et al., 2014)を対 象としても、不安、うつ症状、睡眠の質等 に関する笑いの効果が報告されている。  さらに、笑いの心理的健康への効果につ いてはメタ分析や系統的レビューも行われ ている(Demir Doğan, 2020; van der Wal and Kok, 2019; Zhao et al., 2019)。笑いの うつ症状、不安、睡眠の質への効果につい 表4.笑いと心理的指標との関連についての介入研究 著者 公表年 対象者 対象人数 研究手 法 介入内容 アウトカム 結果の概要 Morishima T, et al. 2019 40~64歳の がん患者 56人(笑い介入 群26人、対照群 30人) 無作為化 介入研究 1回60分の笑 い療法を隔週 で4回 生活の質 (QOL) 笑い介入群は対照群と比べて、 介入後に認知機能 及び痛みに関するスコアに改善がみられた。 Bressington D, et al. 2019 うつ症状を有 する者 50人(笑い介入 群23人、対照群 27人) 無作為化 介入研究 1回45分の笑 いヨガを4週 間で8回 うつ症状、生 活の質(QOL) 笑い介入群は対照群と比べて、 介入後にうつ症状 が減少し、 生活の質に関するメンタルヘルスに改善 がみられた。 一方、 3ヶ月後にはその効果はみられ なくなった。 Memarian A, et al. 2017 パーキンソン 病患者 24人(笑い介入 群12人、対照群 12人) 無作為化 比較研究 1回45分の笑 いヨガを週2 回8週間 不安、睡眠時 間、睡眠の質 笑いヨガ介入群は対照群に比べて、 介入後に不安 が減少し、 睡眠の質が改善した。 一方、 睡眠時間 には影響はみられなかった。

Heo EH, et al. 2016 透析患者

29人(笑い介入 群11人、対照群 18人) 無作為化 比較研究 1回60分の笑 い療法を週1 回4週間+毎 日の笑い15秒 気分、 生活 の質 (QOL)、 コルチゾール (QOL)、 コル チゾール 笑い介入群は対照群と比べて、 介入後に気分、 症 状、 及び社会的交流の質が改善した。 Kim SH, et al. 2015 外来通院中 のがん患者 62人(介入群33 人、対照群29 人) 無作為化 介入研究 1回60分の笑 い療法を3回 気分障害、自 己肯定感 笑い介入群は対照群と比べて、 介入後に気分障害 がより改善し、 自己肯定感がより高くなっていた。 Ghodsbin F, et al. 2015 60歳以上の 地域住民 72人(介入群36 人、対照群36 人) 無作為化 介入研究 1回90分の笑 い療法を週2 回6週間 全般的健康 感、身体症 状、不安・不 眠、うつ 笑い介入群は対照群と比べて、 介入後に全般的な 健康感、 特に身体症状、 及び不安 ・ 不眠について 改善がみられた。 Yazdani M, et al 2014 看護学生(男 性) 38人(介入群19 人、対照群19 人) 無作為化 介入研究 1回60分の笑 いヨガを週2 回1カ月間 全般的健康 感、身体症 状、不安・不 眠、うつ 笑い介入群は対照群と比べて、 介入後に全般的な 健康感、 及び下位尺度の身体症状、 不安 ・ 不眠、 うつ症状について改善がみられた。 Low LF, et al 2014 ナーシング ホーム入居 高齢者 398人(介入群 189人、対照群 209人) クラスター 無作為化 介入研究 ユーモア療法 を毎週9~12 週間実施 興奮、幸福度 ユーモア療法介入群は対照群と比べて、介入後 (13 週) 及び26週後まで興奮症状が減少し、 幸福感が 上昇した。 Ko HJ, et al. 2011 65歳以上の 地域住民 109人(介入群 48人、対照群61 人) 無作為化 介入研究 1回60分の笑 い療法を週1 回4週間 うつ、認知機 能、日常生活 機能、生活の 質 笑い介入群は対照群と比べて、介入後にうつ症状、 不眠、 及び睡眠の質に改善がみられた。 Shahidi M, et al. 2011 60歳以上の 地域住民の 内、うつ症 状がある女 性 70人(笑い介 入群23人、運 動介入群23 人、対照群24 人) 無作為 化介入 研究 笑いヨガ、も しくは約30分 の有酸素運 動を1回 うつ、生活の 満足度 笑い介入群及び運動介入群は対照群と比べて、 う つ症状及び生活の満足度に改善がみられたが、 笑 い介入と運動介入との間に差はみられなかった。

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てメタ分析が行われた結果、いずれも笑う ことによる症状改善への有用性が明らかに されている。さらに、特筆すべき点として、 メタ分析の結果、ユーモアを用いた笑いよ りもユーモアを用いない笑い(笑いヨガ等) の方がうつ症状の改善に有効であるとい う結果が示された(van der Wal and Kok, 2019)。これは、うつ症状を有する者の場合、 通常のユーモアを用いた笑いでは笑えない 場合も多いが、笑いという行動をとること は可能である。したがって、面白いから笑 うのではなく、笑うから面白くなる(楽し くなる)ということであり、笑うという行 動がうつ症状の改善に重要ということを示 唆する結果であったと考える。 日常生活において笑いを増やすことに関連 する因子  これまで、笑いと心理社会的因子及び生 活習慣との関連についても検討が行われて いる。日本老年学的評価研究(JAGES) に参加した65歳以上の地域住民20,006人を 対象とした研究では、世帯における等価収 入が最も高い群は低い群に比べて、日常 生活においてほぼ毎日声を出して笑う頻 度が、年齢調整後に男性で1.43倍(95%信 頼区間:1.33-1.54)、女性で1.30倍(95% 信頼区間:1.23-1.38)であった(Imai et al., 2018)。また、友達に会う頻度が週に2 回以上あることや社会活動に多く参加して いることが笑いを増やす要因であった。さ らに、家族構成も笑いの頻度と関連があり、 男性では、妻と一緒に暮らしているとさら に笑いが増えるが、女性ではその関連は弱 まり、夫とは限らずに誰かと一緒に暮らし ていると笑いが増える傾向がみられた。す なわち、男女ともに経済的に恵まれていた としても一人暮らしだと笑いはそれほど増 えないが、経済的に困窮していたとしても、 男性では妻と、女性では夫に限らず誰かと 一緒に暮らすことが日常生活において笑い を増やすことに繋がる可能性がある。また、 家族がいない場合は、友人に会う回数を増 やす、社会活動に参加することが笑いを増 表5.笑いを増やす要因に関する観察研究 著者 公表年 対象者 対象人数 研究手法 アウトカム 結果の概要 Imai Y, et al. 2018 日本老年学的評 価研究(JAGES) に参加した65歳 以上の地域住民 20,006人(男 性9,912人、女 性10,094人) 横断研究 笑いの頻度 世帯における等価収入が最も高い群は低い群に比べて、 日常生 活においてほぼ毎日声を出して笑う頻度が、 年齢調整後に男性で 1.43倍(95%信頼区間:1.33-1.54)、女性で1.30倍(95%信頼区間: 1.23-1.38) であった。 Hirosaki M, et al. 2018 福島県「県民健 康 調 査 」 に 参 加 した避難区域の 地域住民 52,320人(男 性23,115人、 女性29,205 人) 横断研究 笑いの頻度 運動習慣がほぼ毎日ある人、 及びレクリエーション活動によく参加 している人は、 ない人に比べて性 ・ 年齢調整後にそれぞれ2.88倍 (95%信頼区間 : 2.72-3.06)、 及び3.19倍 (95%信頼区間 : 2.99 -3.40) ほぼ毎日声を出して笑う頻度が多かった。 井奈波、他. 2019 総合病院に勤務 する看護師 321人(女性の み) 横断研究 笑いの頻度 仕事の負担が少ないことや同僚からのサポート、 尊重報酬、 及び 安定報酬が高い人ほどほぼ毎日笑う頻度が多かった。 井奈波 2015 総合病院に勤務 する看護師 175人(女性の み) 横断研究 笑いの頻度 職業ストレスが少ないことに加え、 健康的なライフスタイルを送っ ていること、 喫煙していないこと、 及び栄養のバランスを考えて食 事をとることがほぼ毎日笑う頻度と関連していた。 大平 2019 CIRCS研究に参 加 し た 秋 田 県 、 大阪府の30歳以 上の地域住民 4,780人(男性 1,786人、女性 2,994人) 横断研究 笑いのもと 男女ともに、 笑いのもとは 「家族や友人と話をしているとき」 を選 んだ人が最も多く、 次いで 「テレビやビデオをみているとき」 「子 供や孫と接しているとき」 の順であった。

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やすことに繋がる可能性があると考えられ た。  東日本大震災等の大きなストレスは日常 生活における笑いを減らすことがわかって いる。東日本大震災後に福島県で行われた 調査では、他の地域に比べて笑いの頻度が 極端に少なかった(Hirosaki et al., 2018)。 一方、こうした大きなストレス状況におい ても、笑いの頻度が維持されている人も いる。その要因を福島県の避難区域住民 52,320人を対象として検討した結果、家族 が多いこと、家族が離散していなかったこ と等の家族に関することに加えて、運動習 慣、及びレクリエーション活動への参加が 笑いの頻度と関連していた。運動習慣がほ ぼ毎日ある人、レクリエーション活動によ く参加している人は、ない人に比べて性・ 年齢調整後にそれぞれ2.88倍(95%信頼区 間:2.72-3.06)、及び3.19倍(95%信頼区間: 2.99-3.40)ほぼ毎日声を出して笑う頻度 が多かった(Hirosaki et al., 2018)。した がって、ストレス状況下においては、運動 や社会活動を継続することが笑いを維持す ることに繋がる可能性がある。  上記の2つの研究に共通していることは、 家族構成及び社会活動が笑いを増やすこと に関連しているということである。次に、 CIRCS研究に参加した秋田県、大阪府の 30歳以上の地域住民4,780人を対象として、 いわゆる「笑いのもと」は何なのかを調査 した結果を示す(図1)。女性では、「家族 や友人と話をしているとき」を選んだ人が 約82%と最も多く、「テレビやビデオをみ ているとき」「子供や孫と接しているとき」 がそれに続く回答であった。男性でも同様 に「家族や友人と話をしているとき」「テ レビやビデオをみているとき」「子供や孫 と接しているとき」の順で回答が多くみら れたが、女性に比べてその頻度は少なめで あった(大平, 2019)。したがって、男女 ともに人と会話している時に笑いが最も多 く起こっており、人と話をする機会を増や 図1.男女別にみた日常生活における笑いのもと(複数回答)

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すことが重要と考えられる。すなわち、家 族構成や社会活動への参加は人と話をする 機会を増やすことにより笑いを増やすこと に繋がっている可能性がある。さらに、勤 務者においても健康的なライフスタイルを 送っている人や、同僚のサポートを受けて いる人ほどほぼ毎日笑う頻度が多くなって おり(井奈波, 2015; 井奈波, 他, 2019)、地 域住民と同様によい生活習慣と人間関係が 笑いの頻度に影響していると考えられる。  一方、一人暮らしの人や社会活動への参 加が苦手もしくはできない人も多い可能 性がある。その場合、前述のメタ分析の 結果からも面白くなくても笑う、「笑いヨ ガ」などのユーモアを用いない笑いが役に 立つ可能性がある。「笑いヨガ(Laughter Yoga)」は1995年にインド人医師のマダ ン・カタリア博士が作った健康法である (Shahidi et al., 2011)。そもそも、「笑い」 は体操としての笑いでも、面白いと感じて 本当に笑っても、身体への健康効果はほと んど一緒であるという考えから「笑いヨガ」 は生まれた(実際にこれまでの研究結果を みるとその通りである)。「笑いヨガ」では、 ユーモア、冗談、コメディは一切必要なく、 理由なく笑う、言わば「笑いの体操」であ る。最初は体操として笑うが、皆で笑って いると、笑いの伝染力が働き、だんだんと おかしくなって無理なく笑えるようになる (これは、笑い声を聴くだけでストレスが 減少するという報告とも一致する)。「笑い ヨガ」では体操と呼吸法を組み合わせるこ とにより、有酸素運動とリラクゼーション の双方の効果が期待できることからメカニ ズム面でも有用性は期待できる。 おわりに  笑いと健康との関連について、主に2010 年以降の研究報告をまとめた結果、心理的 健康への影響については、うつ症状、不安、 睡眠の質に関する無作為介入研究が複数行 われるようになり、エビデンスレベルの高 いメタ分析の結果では、笑いのうつ症状、 不安、及び睡眠の質への改善効果が明らか になった。また、生活習慣病、要介護等の 身体疾患への影響に関する報告が増えてお り、笑うことが死亡や介護を抑制する可能 性、及び生活習慣病を予防する可能性が前 向き研究で明らかになってきた。一方、身 体疾患に関する介入研究についてはまだ少 なく、今後は身体的疾患及び身体的因子を アウトカムにした研究が増えることが望ま れる。  笑いと健康に関する研究は、ここ数十年 で飛躍的に数が増えており、今後さらにエ ビデンスが増えることが期待される。笑い や笑顔は人を介して増えていき、笑いの効 果は個人のみではなく、社会的に大きく拡 がる可能性がある。最近の新型コロナウイ ルス感染症が社会的に大きな問題になって いるが、笑いは既に多くの研究により免疫 力を保つことに有効であることが報告され ていることから、新型コロナウイルス感染 症に予防的に働く可能性が考えられる。そ の一方で、笑いには人とのコミュニケー ションが大きく影響しているが、感染予防 のために、人とのコミュニケーションのあ り方が変わる可能性があり、そのことが笑

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いの頻度に影響すると考えられる。ソー シャルディスタンスを保つ中でのコミュニ ケーションは屋内での会話を減らすが、屋 外での活動を多くする可能性がある。また、 ソーシャルネットワークサービスを利用し た遠隔会話のシステムも充実し、コミュニ ケーションのあり方が多様化してきた。制 限された生活の中で、いかに笑いや笑顔を 増やしていけるかが今後の課題である。  笑いは日常生活において費用もそれほど かけずに増やすことができるものであり、 疾病予防・健康維持のための健康法として 費用効果が大きい。また、笑いは子供から 高齢者まですべての年代の健康に影響する 可能性があり、笑いと健康に関する研究が 進めば、我が国の健康寿命の延伸に大きく 貢献できる可能性がある。 引用文献

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