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パルスハイトコントロールの限界点を用いた瞬発的な力発揮特性の評価

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Academic year: 2021

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(1)(�). パルスハイトコントロールの限界点を用いた瞬発的な力発揮特性の評価. 27. (). パルスハイトコントロールの限界点を用いた 瞬発的な力発揮特性の評価. 1. 2. 3. 1. 1. 小野誠司 ,板谷厚 ,速水達也 ,大山卞圭悟 ,木塚朝博 1. 2. 3. 筑波大学体育系, 北海道教育大学教育学部, 信州大学全学教育機構. 要旨 多くのスポーツにおいて,短時間に大きい力を発揮する能力はパフォーマンス向上のため の重要な一要素となる.すばやい力発揮の能力を評価するために,これまでは力の増加率(Rate of force development:RFD)が一般的な指標とされてきた.しかし先行研究において,RFD を算 出する際にその算出区間や力レベルが統一されていないことに加え,競技者においてはその値が 天井効果を示すなどの問題もある.一方,すばやい力発揮の特徴において,力発揮時間を一定の 値に維持しながら力の増加率をコントロールすることにより力発揮レベルを変えていることが見 出されており,この発揮戦略は pulse height control(PHC)と呼ばれている.この PHC によって 発揮される力レベルには限界があり,個々によって異なる限界点を示すことが報告されている. そこで本研究は,PHC 限界点を用いたすばやい力発揮特性の評価を試み,競技者におけるすばや い力発揮特性の評価基準を再検討した.その結果,PHC 限界点を考慮した RFD には競技種目間 で有意な違いが認められ,すばやい力発揮の能力を評価するうえで,PHC 限界点の算出が有効な 手法となることが示唆された. キーワード:等尺性収縮,すばやい力発揮,バリスティック収縮,運動制御. フォーマンス向上には,すばやく大きな力を発揮す. .はじめに. る能力をより高めることが有効である. すばやく力を発揮する運動は,その制御機構が. さまざまなスポーツ場面における基本的運動能力. ゆ っ く り と し た 運 動 と 異 な る こ と か ら,バ リ ス. として,すばやく大きな力を発揮する能力が必要と. ティック運動と呼ばれている.先行研究において,. される.例えば陸上短距離種目を例に挙げると,加. バリスティック運動とは運動単位の高い発火頻度が. 速局面における足の接地時間は約 150 ms と非常に. もたらす短時間で最大速度の収縮と定義されてい. 短く,この短時間に大きい力発揮を実現できること. る. が短距離種目の重要な要素となる.また,陸上長距. よるものと考えられており,上位中枢であらかじめ. 離種目においても,近年ではレースの高速化に対応. 構築された運動プログラムによって遂行されている. するため,高い短距離走能力も求められるように. ことが明らかにされている .さらに,この制御時. なってきた.このように瞬発力を伴う競技種目のパ. 間は,筋活動の開始から終了まで約 100〜120 ms の. 1,2). .また,この運動はフィードフォワード制御に. 3).

(2) 28. バイオメカニズム. 24. ため,末梢からのフィードバック情報による運動の 修正が困難であると考えられている. 4,5). .. 78% maximum voluntary contraction(MVC)の範 囲にバラツキ,個人間で差異が認められたことを報. バリスティック運動のようなすばやく大きい力を. 告している.しかし,これまで PHC 限界点を考慮. 発揮する能力の評価指標として,力の発揮率(Rate. して RFD を算出した研究はなく,また,PHC 限界. of force development:RFD)が用いられている. 6,7). .. RFD は,発揮された力(力レベル)を力発揮に要し. 点を考慮した RFD と運動パフォーマンスとの関係 性も明らかではない.. た時間(力発揮時間)で除すことで算出され,単位. そこで本研究では,PHC と PWC それぞれの力レ. 時間あたりの力発揮能力と捉えることができる.し. ベルに対する RFD の算出を試み,従来の方法で算. かしこれまでの研究では,その算出方法における力. 出された RFD の結果と比較することで,すばやい. 発揮時間と力レベルは統一されておらず,これまで. 力発揮特性の評価基準を再検討した.また,競技種. 8,9). は測定者の任意となっている. .そのため,それぞ. れの研究結果を単純比較できないのが現状である.. 目特性の違いが PHC 限界点およびに RFD に与え る影響についても検討した.. 例えば,RFD を算出する際にどの力レベルを基 準にするかによって値が変わる場合がある.この理 由として,すばやい力発揮の制御は一様ではなく, 力レベルによって以下に示す 2 つの制御様式が用い られていることが挙げられる.. .方法 2.1. 対象者. 研究対象者は大学体育会陸上部に所属している男. すばやい力発揮の制御について,力レベルと力発. 子短距離選手 11 名(平均年齢 20.9± 標準偏差 1.2. 揮時間に注目した報告がある.Ghez(1978),Gor-. 歳,身長 174.6±3.0 cm,体重 71.5±4.3 kg,100 m. 10,11). don ら(1987). は等尺性収縮において力発揮時間. 平均記録 11.11± 標準偏差 0.21 秒)および男子長. を一定の値に維持しながら力発揮率のみを変化させ. 距 離 選 手 10 名(年 齢 21.0±0.9 歳,身 長 169.1. ることによって力のレベルを変えていることを見出. ±2.8 cm,体重 58.2±2.6 kg,5000 m 平均記録 15. し,この制御を pulse height control(パルスハイト. 分 50.41 秒 ±51.74 秒) ,また,大学入学後は運動習. コントロール:PHC)と呼んでいる.PHC は制御さ. 慣のない(過去に運動経験有り)健常成人男性 11 名. れる変数(力発揮時間と力発揮率)を一つに減らす. (年 齢 22.4±1.0 歳,身 長 173.1±4.3 cm,体 重. ことにより,異なるレベルの力発揮を単純化する戦. 67.4±4.4 kg)であった.対象者には事前に口頭お. 略であり,フィードフォワード制御による単一の運. よび書面にて本研究の目的,方法,内容,測定項目. 動プログラムによるものと考えられている.この制. を説明し参加の同意を得た.本研究は筑波大学体育. 御様式 は最短 の 力 発 揮時間で行わ れ る こ と か ら. 系研究倫理委員会の承認を得て行った.. RFD を高めるには効果的となる. 一方,力発揮レベルの増加に伴い,付加的に力発 揮時間を延長させながら力発揮を行うようになり, この制御は pulse width control(PWC). 12,13). 2.2. 測定装置. 測定装置には足関節底背屈力測定器(東京精機社. に相当す. 製)を使用した(図 1) .この足関節底背屈力測定器. る.つまり,すばやい力発揮において,小さい力レ. は,足底が接触するプレートの高さおよび角度が調. ベルでは PHC が用いられ,比較的大きい力レベル. 節可能となっており,接続されたロードセルによっ. では PWC の制御様式が用いられているため,RFD. て特定の足関節角度において発揮された力を測定で. 算出時の力発揮が PHC と PWC のどちらによるも. きる.ロードセルから出力された足関節底屈力のア. 14). ナログデータは,データ収録ソフトウエア(Super. は,PHC から PWC に変わる力レベルを PHC 限界. Scope Ⅱ,GW インストルメンツ社製)によってデ. 点とし,対象者個々の値を算出した結果,約 56〜. ジタルデータ(サンプリング周波数:1 kHz)として. のかを考慮する必要がある.さらに,小野ら(1997).

(3) (�). パルスハイトコントロールの限界点を用いた瞬発的な力発揮特性の評価. 29. Peak force. Isometric force. Time to peak force 図2. 図1. 足関節底背屈力測定器. すばやい力発揮による力曲線. 目標値を設定し,各力レベルにつき 10 試技ずつ合 計 90 試技の力発揮を測定した.対象者の前方に 19. PC に収録した.. 2.3. インチモニター(RDT151X,三菱社製)を設置し,. 実験課題および解析項目. 対象者は安静座位姿勢の状態でプレートの上に足 を乗せ,膝関節および足関節は 90 度で固定された. 両腕は胸の前で交差組みにし,背の部分はシートに. 目標とする力レベルおよびその ±5%の力レンジを 表示した.目標とする力レベルはランダムに表示し た.試技間には疲労の影響を避けるため,適度な休 憩をはさんで行った. 力曲線から,力の立ち上がり(onset)は,出力し. 接触した状態を保つように指示した.運動課題は,. た力レベルの 3%を超えた地点を力発揮の onset と. 等尺性収縮での足関節底屈運動とし,できる限りす. した(Hodges et al. 1996) .測定された 90 個の力. ばやく力を発揮させた.測定手順として,まず対象. 曲線から,各試技における力の onset から最大値に. 者の最大随意収縮力(MVC)を測定した.MVC 試. 達するまでの力発揮時間(time to peak force)およ. 技 3 回それぞれの力曲線から,以下の 2 種類の方法. び力レベル(peak force)を算出した(図 2).各試技. で RFD を算出した.1 つ目は時間を基準にした算. における RFD の算出は,peak force を time to peak. 出方法で,力発揮開始から 100 ms で到達する力レ. force で除すことによって求めた.. 15). ベル(% MVC)を求め RFD を算出した.この力発. 次に,力発揮時の各力曲線をみると,力レベルが. 揮開始から 100 ms における RFD の算出は,力発揮. 大きくなるに伴い,ピークまでの力発揮時間が延長. の立ち上がり局面を評価するために有効な指標であ. するだけでなく,力曲線の形状が変化することが分. 9). ると考えられている .2 つ目は力レベルを基準に. かる(図 3,横列) .この力曲線の特徴を識別するた. し,40% MVC の力レベルに要する力発揮時間を求. め,力曲線を 2 階微分し加速度曲線(d F/dt )を算. め RFD を算出した.この理由として,バリスティッ. 出し,力が最大値に達するまでに正の加速度成分の. ク収縮による力発揮のレベルが 50% MVC を超え. ピークが 1 つ出現するものを単ピーク型,2 つ以上. ると RFD が低下傾向を示すため,本実験では RFD. 出現し 2 つ目以降が加速度 0 を超えるものを多ピー. 8). 2. 2. の算出を 40% MVC に設定した .RFD は,力レベ. ク型,そして,2 つまたはそれ以上出現するが 2 つ. ル(% MVC)を力発揮時間で除すことで算出した.. 目以降が加速度 0 を超えないものを準多ピーク型と. MVC 試技 3 回において算出した RFD の平均値を. 定義した(図 3,縦列).加速度成分の 2 つ目以降の. 各対象者の代表値とした.. ピークがゼロを超えるときは,一度減速した力の発. MVC 測定後,各対象者の 3 回の MVC 平均値に. 揮速度が再度増加する局面が出現し,力曲線が二峰. 基づいて,10-90% MVC の力レベルを,10%刻みで. 性を示す.しかし,2 回目以降の加速度のピークが.

(4) 30. バイオメカニズム. 24. ༢ࣆ࣮ࢡᆺ. ‽ከࣆ࣮ࢡᆺ. ከࣆ࣮ࢡᆺ. Force. dF/dt. d2F/dt2. 図3. 力曲線による力発揮様式の分類. ゼロより小さいときは,一度減速した速度の増加は. 100. の厳密には二峰性を示さない. 上記のもと 3 つに分類した力曲線から,準多ピー ク型を単ピーク型に含めたグループを作り算出を行 う方法と,準多ピーク型を多ピーク型に含めたグ ループで行う 2 つのペアリング方法を用いた.各試. peak force㸦%MVC㸧. 生じないため,力曲線の形状に変化は見られるもの 80 60 40 ༢ࣆ࣮ࢡᆺ ‽ከࣆ࣮ࢡᆺ ከࣆ࣮ࢡᆺ. 技(全 90 試技)における力レベルと力発揮時間のプ 20. ロットと回帰直線を図 4 に示す.力曲線に基づいて 分類した 2 つのペア,つまり,単ピーク&準多ピー. 0. ク型グループ vs 多ピーク型グループ(破線),およ. 0. 200. び,単ピーク型グループ vs 準多ピーク&多ピーク. 400. 600. 800. 1000. Time to peak force㸦ms㸧. 型グループ(実線)それぞれに回帰直線を当てはめ. 図4. PHC 限界点の算出. た.算出した 2 つの方程式からその交点の力発揮レ ベルを求め,PHC 限界点を算出した.回帰直線は最 小二乗法を用いた.. 2.4. 統計処理. データ分析に用いた統計処理は,一元配置の分散 分析を行い,F 値が有意である場合には事後検定と.

(5) (�). パルスハイトコントロールの限界点を用いた瞬発的な力発揮特性の評価. 31. して Tukey の HSD 検定を行なった.有意水準は. force により明確に定義することは難しい.そのた. 5%とした.. め本研究では,力曲線の 2 階微分(d F/dt )により. 2. 2. 加速度曲線を算出し, それに基づいて力発揮様式を, 単ピーク型,多ピーク型とその中間の準多ピーク型. .結果 3.1. MVC 試技における RFD の群間比較. 最初に,MVC 試技における RFD の算出を,先行. と分類し(図 3) ,PHC 限界点を評価した. (1) 準多ピーク型を単ピーク型に含めた場合の PHC 限界点の群間比較. 研究に基づいた 2 種類の方法(実験課題 2.3 参照). 準多ピークを単ピーク型に含めたグループと多. を用いて行った.分散分析によって対照群,長距離. ピーク型グループそれぞれに回帰直線を引き(図 4,. 群,短距離群の RFD 値を比較した結果,力発揮開. 破線),その交点に相当する力発揮レベルを求め. 始から 100 ms の RFD においては,3 つの群間に有. PHC 限界点を算出した.その結果,PHC 限界点は,. 意 な 主 効 果 は 認 め ら れ な か っ た(対 照 群,0.38. 対 照 群 で 77.2±6.3% MVC,長 距 離 群 で 82.5. ±0.13% MVC/ms;長距離群,0.35±0.14% MVC/. ±8.1% MVC,短距離群で 80.4±10.7% MVC で. ms;短距離群,0.37±0.18% MVC/ms).また,40%. あり(図 5),分散分析の結果,有意な主効果は認め. MVC を基準として算出した RFD においても,群. られなかった.. 間に有意な主効果は認められなかった(対照群, 0.28±0.12% MVC/ms;長距離群,0.32±0.17% MVC/ms;短距離群,0.35±0.16% MVC/ms).. 3.2. パルスハイトコントロール限界点の群間 比較. (2) 準多ピーク型を多ピーク型に含めた場合の PHC 限界点の群間比較 次に,準多ピークを多ピーク型に含めたグループ と単ピーク型グループそれぞれに回帰直線を引き (図 4,実線),その交点の力発揮レベルを求め PHC 限界点を算出した.その結果,対照群で 69.4±5.6%. 次に,pulse height control(PHC)の限界点を用い. MVC,長距離群で 77.3±6.7% MVC,短距離群で. てすばやい力発揮の評価を試みた.すばやくかつ大. 80.2±5.6% MVC であった(図 6).分散分析の結. きい力を発揮するためには,RFD をより大きくす. 果,有 意 な 主 効 果 が 認 め ら れ た(F2,29 =9.67,p. ることが求められる.つまり力発揮時間を延長させ. <0.001) .事後検定の結果は,長距離群,短距離群. ることなく一定に維持しながら力レベルを変える戦. ともに対照群より有意に大きい値となった.. 略が効果的である.しかし,力曲線におけるピーク. (3) PHC 限界点を考慮した RFD の群間比較 ここまでの結果から,準多ピークと多ピークを合. も力レベルの大きさに従って緩やかな増加を示すた. わせて多ピーク型と表記する.PHC 限界点以下の. め,各対象者における PHC 限界点を,time to peak. 単ピーク型の力曲線から各対象者の RFD を算出し. 100 PHC㝈⏺Ⅼ㸦%MVC㸧. PHC㝈⏺Ⅼ㸦%MVC㸧. までの時間(time to peak force)は,PHC において. 80. 60 ᑐ↷⩌. 㛗㊥㞳⩌. 㸨. 100 㸨 80. 60. ▷㊥㞳⩌. 図 5 単ピークおよび準多ピーク型を PHC とした限 界点の群間比較. ᑐ↷⩌ 図6. 㛗㊥㞳⩌. ▷㊥㞳⩌. 単ピーク型のみを PHC とした限界点の群間比較.

(6) 32. バイオメカニズム. 24. 㸨 RFD㸦%MVC/ms㸧. 0.6 RFD㸦%MVC/ms㸧. 0.6. 㸨. 0.4. 0.2. 㸨 㸨. 0.4. 0.2. 0.0 ᑐ↷⩌. 0.0. ᑐ↷⩌ 図7. 㛗㊥㞳⩌. 図8. ▷㊥㞳⩌. 㛗㊥㞳⩌. ▷㊥㞳⩌. 多ピーク型 RFD の群間比較. 単ピーク型 RFD の群間比較. かどうかが不明瞭であった.そこで,まず準多ピー た.この試技における RFD は,力曲線における. ク型を多ピーク型に含め PHC 限界点の算出を行っ. peak force(% MVC)を time to peak force で除す. たところ,長距離群,短距離群ともに対照群より有. こ と に よ っ て 求 め た.そ の 結 果,対 照 群 で 0.21. 意に大きい値となった(図 6) .この結果は,短距離. ±0.06% MVC/ms,長 距 離 群 で 0.26±0.05%. 群に必要とされるすばやい力発揮の評価には,単. MVC/ms,短距離群で 0.44±0.14% MVC/ms であ. ピーク型のみを PHC として分類することが妥当で. り(図 7),有意な主効果が認められた(F2,29=17.37,. あることを示している. 一方, 準多ピーク型を単ピー. p<0.001).事後検定の結果は,短距離群は対照群. ク型に含めて算出した結果,群間における有意な主. および長距離群より有意に大きい値となった.. 効果は認められなかった(図 5) .これらの結果は,. (4) 多ピーク型 RFD の群間比較. 準多ピーク型における力発揮においては,単ピーク. 次に,準多ピークを含む多ピーク型の力曲線から. 型に比べ力発揮時間の延長が大きく影響するため,. 各対象者の RFD を算出したところ,対照群で 0.06. 多ピーク型における力発揮の特徴に相当すると考え. ±0.02% MVC/ms,長距離群で 0.1±0.04% MVC/. られる.また,Ghez ら(1978) は,PHC での力発. ms,短距離群で 0.16±0.09% MVC/ms であった. 揮は単一運動プログラムによるものであると述べて. (図 8) .分散分析の結果,有意な主効果が認められ. いる.つまり,準多ピーク型の加速度成分に複数の. た(F2,29=10.24,p<0.001).事後検定の結果は,短. ピークが見られる現象は,単一プログラムによるも. 距離群は対照群および長距離群より有意に大きい値. のではないことを示唆している.したがって,本研. となった.. 究における単ピーク型の力発揮のみが,単一プログ. 10). ラムによるフィードフォワード制御による力発揮の 特徴であると推察される.. .考察 4.1. 一方,高い力発揮レベルにおいて力発揮時間を延. PHC 限界点の群間比較. 長させることにより力発揮を行う pulse width con-. 本研究では,PHC の限界点を用いた力発揮の制 御特性について検討した.各力曲線の特徴を識別す 2. 2. 12,13). trol(PWC)がある. .この制御には複数の運動プ. ログラムが関与していることが報告されている.例. るため,力曲線を 2 階微分し加速度曲線(d F/dt ). えば,大きい力発揮レベルが必要とされる際には,. を算出し,単ピーク型,多ピーク型そして準多ピー. あらかじめ 2 つ以上の運動プログラムを用意し必要. ク型と定義した(図 3).準多ピーク型は,単ピーク. に応じて複数の指令を発する複合的な制御が関与す. 型と比べて力曲線の形状に変化は見られるものの,. ると考えられている.したがって,本研究でみられ. 加速度の 2 つ目以降のピークがゼロより小さく力曲. た多ピーク型と準多ピーク型の力発揮様式は,複数. 線が二峰性を示さないことから,PHC に含まれる. の運動プログラムを反映した PWC に基づいてお.

(7) (�). パルスハイトコントロールの限界点を用いた瞬発的な力発揮特性の評価. り,単ピーク型の力発揮は単一プログラムによる PHC に基づいていることが推察される.. 33. ベルを変える戦略であるが, 本研究結果から, 単ピー ク型による PHC であっても力発揮時間の変化(傾. 本研究より,準多ピーク型を多ピーク型に含め. き)が群間によって異なっており,その結果,単ピー. PHC 限界点の算出を行った場合,長距離群,短距離. ク型 RFD に違いがみられたと考えられる.以上の. 群が対照群に比べ有意に大きい値となった(図 6).. ことから,同様の単一プログラムによる制御におい. この結果は,各対象者の PHC 限界点は,単一プロ. ても,運動習慣および競技種目により,すばやい力. グラムから成る制御が可能な力レベルの上限を示す. 発揮の能力が異なることが示唆された.. ということができる.そのため,PHC 限界点の高い. 一方,準多ピークを含む多ピーク型は PWC を用. 対象者は,すばやい力発揮に有効な戦略をより高い. いた力発揮による RFD と捉えることができる.. レベルまで利用することができるものと示唆され. PWC は力発揮時間を延長させて力レベルを付加的. る.. に調節し,複数の運動プログラムが関与すると考え. 4.2. PHC 限界点を考慮した RFD の群間比較. られており,比較的高い力発揮レベル(PHC 限界点 以上)で用いられている.本研究結果から,この多. すばやい力発揮には制御様式の違いだけでなく,. ピーク型区間から算出された RFD においては,短. 運動単位の動態も関与することが明らかにされてい. 距離群のみが対照群および長距離群より有意に大き. 16). 17). る.Enoka(1997) や Van Cutsem ら(1998) は,. い値を示すことが明らかになった(図 8).つまり,. 持続的なレジスタンストレーニングが筋線維だけで. 多ピーク型を示す PWC においても,力発揮時間の. なく神経系や運動単位の動員様式にも影響を及ぼし. 変化(傾き)が群間によって異なると考えられ,そ. ていることを報告している.運動単位の発火頻度や. の結果,多ピーク型 RFD に違いがみられたと推察. 同期化が,すばやい力発揮に重要な役割を果たして. される.また,比較的大きい力発揮に用いられる複. おり,トレーニングによって,運動単位発火頻度の. 数の運動プログラムにおいても,競技特性によって. 増加や同期化が生じることにより力の発揮率が高く. 力発揮の様式が異なると考えられる.これらの結果. 18〜20). なることが明らかにされている. .Ricard ら. は,すばやい力発揮を単にフィードフォワードが関. (2005) は力発揮初期において RFD が高い対象者. 与する短時間の運動に限定して評価するのではな. の特徴として,バリスティック収縮時には,筋活動. く,PHC と PWC を含んだ包括的な運動制御として. 開始直後の振幅が高く,中央周波数も変化すること. 捉えて評価することの重要性を示すものである.. 8). を報告しており,その要因を運動単位の同期化であ. 今後の課題として,陸上短距離および長距離種目. ると考察している.以上のことから,短距離群と,. の場合,短時間に大きい力を発揮する能力に加え,. 対照群および長距離群における PHC 限界点の違い. 加速局面において短い接地時間のなかで強い切り返. は,単一や複数の運動プログラムなど中枢において. し動作ができることも重要な要素となる.吉田ら. 構築された運動プログラムを含んだ運動単位活動様. (2016) は,切り返し動作中の伸長-短縮サイクル. 式の差異に基づくものであることを示唆している.. 運動の遂行能力(リバウンドジャンプ指数:RJ-in-. 本研究では,PHC 限界点を考慮して RFD を算出. dex)と,運動プログラムに関与する運動開始前の. した.その結果,単ピーク型から算出された RFD. 運動野皮質内抑制回路について検討し,運動開始前. は,短距離群が対照群および長距離群より有意に大. の脳内状態が RJ-index に影響を及ぼすことを明ら. きい値であった(図 7).この単ピーク型は,PHC を. かにした.このように,すばやい力発揮時のバリス. 用いた力発揮と捉えることができるため,単ピーク. ティック収縮には,本研究で用いた等尺性収縮だけ. 型 RFD は,PHC 限界点の高さと PHC 限界点以下. でなく,運動中の切り返し動作も含まれるが,これ. の傾きにおける群間の差異を示すものである.PHC. らの関係性は明らかでなく,今後は PHC 限界点と. は力発揮時間を比較的一定の値に維持しながら力レ. 伸長-短縮サイクルの遂行能力の関係性についても. 21).

(8) 34. バイオメカニズム. 24 22). 詳細に検討していく必要がある.. 4.3. いる .その結果,15〜55%のどの区間においても. MVC 試技における RFD の群間比較につ いて. 健常者の RFD が高い値を示した.パーキンソン病 患者は PHC によるすばやい力発揮が困難なため, 力発揮時間が健常者よりも長く,結果として全ての. 本研究では,従来の算出区間を用いた RFD につ. 力発揮レベルにおいて RFD の値が健常者と比較し. いても,確認の目的で検討した.まず,時間を基準. て小さい値となった.この結果は,収縮様式が顕著. とした方法では,力発揮開始から 100 ms の RFD を. に異なる対象者の比較であったため,比較的低い%. 算出した(結果 3.1 参照).先行研究においても力発. MVC 区間の RFD においても群間に差が認められ. 揮の立ち上がりの能力を評価するために,early. たと推察される.. phase として <100 ms の RFD が算出されている. 9). 一方,本研究において,40% MVC を基準に算出. Andersen ら(2010) は,競技者が対象ではないが,. した RFD に群間で有意な差が認められなかった結. レジスタンストレーニングの効果を <100 ms の. 果を考えると,対象者が競技者の場合や比較的高い. RFD を用いて評価し,100 ms 以内の early phase で. 筋力を持つ健常者を対象とした場合は,低い(60%. は変化がなく,100 ms 以上の late phase で違いが認. MVC 以下)力発揮レベルでは収縮様式の違いが顕. められたことを報告している.本研究において 0〜. 著ではないため,少なくとも先行研究で用いられて. 100 ms 区間の RFD では群間に有意な差がみられな. きた算出方法における RFD では力発揮の特性の違. かったのは,100 ms 以内の phase では力発揮様式. いを適切に評価できなかった可能性がある.した. に違いがなかったことが推察され,競技者群を対象. がって,競技者のようなすばやくかつ高い筋力発揮. とした比較には適切な算出区間ではないと考えられ. が可能な対象者を比較する場合,まず個々の力発揮. る.. 様式が力レベルによって異なるかどうかを,PHC. 次に,% MVC 区間に基づき 40%区間で算出した RFD においても,群間に有意な差は認められなかっ. と PWC を考慮したうえで比較検討する必要性があ ると考えられる.. た.この結果は,競技者のような高い力発揮能力を 持つ対象者の群間比較においては,従来用いられて. .まとめ. きた比較的低い% MVC を算出基準とするのは適切 8). でないと考えられる.Ricard ら(2005) は急激な筋. 本研究は,パルスハイトコントロール(PHC)限. 収縮によるバリスティック収縮と徐々に筋収縮を行. 界点を用いたすばやい力発揮特性の評価を試み,競. うことによって起こるランプ収縮との違いを,%. 技者間におけるすばやい力発揮特性の評価基準を検. MVC に基づいて算出した RFD を指標として比較. 討した.その結果,従来用いられてきた RFD では. している.その結果,同じ力発揮レベル(% MVC). 評価できない対象者においても,PHC 限界点には. においては,バリスティック収縮時の RFD がラン. 有意な違いが認められた.さらに,PHC 限界点に基. プ収縮時より高い値であったことを報告している.. づいて RFD を算出した結果,短距離群が対照群お. バリスティック収縮では筋収縮時間がランプ収縮に. よび長距離群より有意に大きい値であった.これら. 比べ短いため当然の結果と言えるが,収縮様式によ. の結果から,すばやい力発揮の能力を評価するうえ. る違いや介入による収縮力の効果を比較するために. で PHC 限界点の算出が有効な手法となることが示. は,% MVC を基準とした算出が適切であると考え. 唆された.. る. また,Park ら(2006)は,健常者とパーキンソン 病患者のすばやい力発揮特性について,% MVC 区 間に基づいて算出した RFD を指標として比較して. 参考文献 1) Van Cutsem, M. and Duchateau, J.:Preceding muscle activity influences motor unit discharge and rate of torque.

(9) (�). パルスハイトコントロールの限界点を用いた瞬発的な力発揮特性の評価. development during ballistic contractions in humans, Journal of Physiology, 562, 635-644,(2005). 2) Desmedt, J. E. and Godaux, E.:Ballistic contractions in man:characteristic recruitment pattern of single motor units of the tibialis anterior muscle, Journal of Physiology, 264(3), 673-693,(1977). 3) Hanneton, S., Berthoz, A., Droulez, J. and Slotine, J. J.: Does the brain use sliding variables for the control of movements?, Biological Cybernetics, 77(6), 381-393, (1997). 4) Desmurget, M., Epstein, C. M., Turner, R. S., Prablanc, C., Alexander, G. E. and Grafton, S. T.:Role of the posterior parietal cortex in updating reaching movements to a visual target, Nature Neuroscience, 2(6), 563-567,(1999). 5) Pruszynski, J. A., Kurtzer, I., Nashed, J. Y., Omrani, M., Brouwer, B. and Scott, S. H.:Primary motor cortex underlies multi-joint integration for fast feedback control, Nature, 478(7369), 387-390,(2011). 6) Gruber, M. and Gollhofer, A.:Impact of sensorimotor training on the rate of force development and neural activation, European Journal of Applied Physiology, 92(12), 98-105,(2004). 7) Viitasalo, J. T. and Komi, P. V.:Interrelationships between electromyographic, mechanical, muscle structure and reflex time measurements in man, Acta Physiologica Scandinavica, 111(1), 97-103,(1981). 8) Ricard, M. D., Ugrinowitsch, C., Parcell, A. C., Hilton, S., Rubley, M. D., Sawyer, R. and Poole, C. R.:Effects of rate of force development on EMG amplitude and frequency, International Journal of Sports Medicine, 26(1), 66-70, (2005). 9) Andersen, L. L., Andersen, J. L., Zebis, M. K. and Aagaard, P.:Early and late rate of force development:differential adaptive responses to resistance training?, Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 20(1), e162-169, (2010). 10) Ghez, C. and Vicario, D.:The control of rapid limb movement in the cat. Ⅱ. Scaling of isometric force adjustments, Experimental Brain Research, 33(2), 191202,(1978). 11) Gordon, J. and Ghez, C.:Trajectory control in targeted. 35. force impulses. Ⅱ. Pulse height control, Experimental Brain Research, 67(2), 241-252,(1987). 12) Baloh, R. W., Sills, A. W., Kumley, W. E. and Honrubia, V.: Quantitative measurement of saccade amplitude, duration, and velocity, Neurology, 25(11), 1065-1070,(1975). 13) Corcos, D. M., Agarwal, G. C., Flaherty, B. P. and Gottlieb, G. L.:Organizing principles for single-joint movements. IV. Implications for isometric contractions, Journal of Neurophysiology, 64(3), 1033-1042,(1990). 14) 小野誠司,岡田守彦,木塚朝博,谷井克則:すばやい等尺 筋性収縮における力レベルと発揮戦略,体力科学,46,289295,(1997). 15) Hodges, P. W. and Bui, B. H.:A comparison of computerbased methods for the determination of onset of muscle contraction using electromyography, Electroencephalogr Clinical Neurophysiology. 101(6), 511-9,(1996) 16) Enoka, R. M.:Neural adaptations with chronic physical activity, J Biomech, 30(5), 447-455,(1997). 17) Van Cutsem, M., Duchateau, J. and Hainaut, K.:Changes in single motor unit behaviour contribute to the increase in contraction speed after dynamic training in humans, Journal of Physiology, 513, 295-305,(1998). 18) De Luca, C. J., LeFever, R. S., McCue, M. P. and Xenakis, A. P.:Behaviour of human motor units in different muscles during linearly varying contractions, Journal of Physiology, 329, 113-128,(1982). 19) Desmedt, J. E. and Godaux, E.:Ballistic contractions in fast or slow human muscles:discharge patterns of single motor units, Journal of Physiology, 285, 185-196,(1978). 20) Van Cutsem, M. and Duchateau, J.:Preceding muscle activity influences motor unit discharge and rate of torque development during ballistic contractions in humans, Journal of Physiology, 562, 635-644,(2005). 21) 吉田拓矢,丸山敦夫,苅山靖,林陵平,図子浩二:プレセッ ト中の運動野短間隔皮質内抑制がドロップジャンプのパ フォーマンスに及ぼす影響,体力科学,65(4),401-413, (2016). 22) Park, J. H. and Stelmach, G. E.:Force development during target-directed isometric force production in Parkinsonʼs disease, Neuroscience Letters, 412(2), 173-178,(2007)..

(10) 36. バイオメカニズム. 24. Evaluation of rapid force development using the maximum force produced by pulse height control 1. 2. 3. 1. 1. Seiji ONO , Atsushi ITAYA , Tatsuya HAYAMI , Keigo OHYAMA-BYUN , Tomohiro KIZUKA 1. Faculty of Health and Sport Science, University of Tsukuba, Department of Physical Education, Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education, 3 School of Humanities and Social Science, Shinshu University. 2. Abstract The ability of rapid force development is one of the important factors for improving the physical performance. It has been known that rapid isometric force is controlled by a central motor program to keep the rise time relatively constant independent of force amplitude(pulse height control). The advantage of using pulse height control is to increase rate of force with force amplitude. However, this strategy is thought to be applicable up to about 50-60% of MVC. When the force level increases further, subjects often switch to pulse width control to increase the time to peak force. The purpose of this study was to determine the force level(turning point)at which subjects switch from pulse height control to pulse width control. This turning point was defined as the maximum force produced by pulse height control. We then attempted to examine whether this turning point is different among subjects. Our results showed that a turning point(% MVC)between two strategies was detected in all subjects and the mean values were significantly higher in the sprinter group than that in the control group. Our results suggest that each subject has different limits of force level produced by pulse height control. Key Words:isometric, rapid force development, ballistic contraction, motor control.

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図 2 すばやい力発揮による力曲線

参照

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