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微量元素の固相抽出分離操作における溶出プロセスの自動化

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微量元素の固相抽出分離操作における溶出プロセスの自動化

三根由加味木村泰我横田優貴源明誠加賀谷重浩



富山大学学術研究部工学系〒富山市五福  番地 

Automatization of elution process for solid-phase extraction

of trace element

MINE Yukami, KIMURA Taiga, YOKOTA Yuki, GEMMEI-IDE Makoto, KAGAYA Shigehiro

Faculty of Engineering, University of Toyama, Toyama 930-8555, Japan (Received January 2nd, 2021, Accepted February 1st, 2021)

A system was developed to automatize the elution process in solid-phase extraction of trace element. The system consisted of a peristaltic pump and two switching valves. The switching valves were controlled by Arduino Uno, which is a microcontroller board. In the extraction process, a chelating resin, Presep PolyChelate, which is a macroporous methacrylate resin immobilizing partly carboxymethylated polyethyleneimine as a functional group, was used. The chelating resin was packed into a luer-type cartridge; a sample solution containing Ni as a trace element was passed through the cartridge to extract Ni with the resin. The cartridge was put on the system, and then the extracted Ni was eluted automatically. In this study, the conditions for the elution of Ni were optimized.

Key Words: solid-phase extraction, trace element, elution process, automatization, Arduino Uno

1 1.. 緒緒 言言  キレート樹脂を用いる固相抽出分離法は微量元素の 分離濃縮に有用な方法の一つである1-10)。この方法は, 微量元素の抽出プロセス,溶出プロセスにより構成さ れる。抽出プロセスにおいては,pH 調整した試料溶液 を,キレート樹脂を充填した固相抽出カートリッジに 一定流量で通液する。この時,試料溶液中の微量元素 がキレート樹脂に抽出される。溶出プロセスにおいて は,純水などをカートリッジに通液して洗浄した後, 硝酸など適切な溶離液を通液し,抽出された微量元素 を溶出する。この溶出液に含まれる微量元素を原子ス ペクトル分析などにより定量する。  固相抽出分離法における抽出プロセスにおいては, 操作が単純ゆえ試料採取現場で実施することが可能で あると考える。例えば,環境水分析において,採水現場 にて試料水のろ過,pH 調整などを必要に応じて行った 後,これをバッテリー駆動のポンプやプラスチック製 のシリンジなどを用いて固相抽出カートリッジに通液 することにより,研究室にはカートリッジを持ち帰る だけでよいことになる。試料水を研究室まで運搬する のが困難な場所で採取しなければならない場合や,多 点での採水により数多くの試料水を運搬しなければな らない場合には労力を大幅に削減することができるだ ろう。一方,溶出プロセスにおいては,溶離液として硝 酸などの強酸を用いる場合が多く,運搬時,操作時に 漏洩などの問題が生じる恐れがあることから採水現場 での操作は好ましいとは言い難い。このため溶出プロ セスは研究室で行うのがよいと考える。ここで,一連 の溶出操作を自動化できるシステムがあれば極めて便 利であるが,そのようなシステムは見当たらない。  ところで,固相抽出分離法の操作は,液液抽出法5,9,10) や共沈法9-12)のそれらに比べ単純であり,かつ流れ式で 行うことができるため,流路切換えバルブ,送液ポン プなどを用い,これらをプログラム制御した流れ式シ ステムを構築すれば自動化することが可能である3,13,14)。 現在,いくつかの自動化システムが市販されている15)。 しかしながら,いずれも高価であり,より安価なシス テムの開発が望まれている。  このような背景を受け,本研究では微量元素の固相 抽出分離法における溶出プロセスを自動化するため

E-mail: [email protected]

©2021 International Association of Ecotechnology Research

Original Article



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のシステムについて検討した。市販のペリスタルティ ックポンプおよび流路切換えバルブを用い,安価に入 手可能なワンボードマイコン Arduino Uno(SWITCH SCIENCE)16)で流路切り替えバルブを制御するシステ ムを構築した。本研究では,微量元素としてNi を用い, Ni の溶出挙動をもとにこの自動化溶出システムの条件 最適化を行った。 2 2.. 実実験験方方法法 2 2.. 11 装装置置 試料溶液のpH の測定には堀場製作所製 F-22 型 pH メータを使用した。Ni の定量には Agilent Technologies 製 4200 マイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置 (MP-AES)を用いた。波長 352.454 nm で測定するこ とにより,少なくとも0.1 mg/L 以上の Ni を定量するこ とができる。 2 2.. 22 試試薬薬

 本研究に用いた水はすべてMerck 製 Milli-Q Gradient

により得られた超純水を使用した。キレート樹脂は, 富士フイルム和光純薬から購入したPresep PolyChelate を固相抽出カートリッジから取り出し,巴製作所製ル アー型カートリッジ(Type M, 容量 0.5 mL)に 0.20 g ま たは0.02 g を充填して使用した(Fig. 1)。Ni 標準液(1000 mg/L)は関東化学より購入し,使用前に適宜希釈して 用いた。硝酸は電子工業用(富士フイルム和光純薬)の ものを,その他の試薬は特級または分析グレードのも のを使用した。 2 2.. 33 固固相相抽抽出出分分離離操操作作 2 2.. 33.. 11 抽抽出出  既報17)に準じNi を抽出した。検討には,5 mmol/L CH3COONH4溶液100 mL に Ni 標準液 10 µL - 100 µL を添加し,pH を NH3水およびHNO3を用いて5.5 に 調整した試料溶液(Ni 濃度 0.1 mg/L - 1 mg/L)を用 いた。ルアー型カートリッジ内にメタノールを満た して樹脂を一晩含浸させた後,メタノール5 mL,3 mol/L HNO3 10 mL , 超 純 水 20 mL , 0.1 mol/L CH3COONH4溶液10 mL の順にカートリッジ上部か ら通液して樹脂をコンディショニングした。試料溶 液を3 mL/min で通液し,Ni を樹脂に抽出した。そ の後,超純水20 mL を通液し,カートリッジ内を洗 浄した。この操作により試料溶液中のNi はほぼ定量 的に抽出可能である17) 2 2.. 33.. 22 溶溶出出  本研究において構築したシステムの概要をFig. 1

Table 1 Information on flow line of each section in the

automatic elution system

Section i.d. (mm) L (mm) HNO3 - V2 2 475 H2O - V2 2 475 V2 - Cartridge 0.5 380 Cartridge - V1 2 390 V1 - Sample solution 0.5 645 a V1 - Drain 0.5 740 a

i.d.: Inner diameter. L: Length.

a: PTFE tube and tube for peristaltic pump.

Table 2 Operation sequence of the automatic elution system

Step V1 V2 Time (s)

Home Drain H2O -

1 Drain HNO3 40 2 Sample HNO3 20 3 Sample H2O 120 4 Drain H2O 60 に示す。P1 および P2 はペリスタルティックポンプ (EYELA 製 SMP-23:3 流路のうち 2 流路を使用), V1 および V2 は 4 方切換えバルブ(FLOM 製 VA-11:接液部 PEEK 製,流路径 2 mm)を示しており, これらは内径2 mm または 0.5 mm の PTFE 製チュー ブで接続されている。それぞれの流路区間の内径お よび長さをTable 1 に示す。V1 および V2 は外部端 子を 5 V Relay Module for Arduino DSP AVR PIC (SainSmart)に接続し,これを Arduino Uno により 制御して短時間接続させることによりバルブを順方 向または逆方向に駆動する。抽出操作後のカートリ ッジはFig. 1 のように装着する。H2O または HNO3 はカートリッジ下部より供給される。  Table 2 に動作シーケンスを示す。動作開始前の流 路は,Fig. 1 のように V1 は Drain 側,V2 は H2O 側 となっている。動作開始とともにV2 が HNO3側に 切り替わる(Step 1)。HNO3がV1 に到達する直前に V1 が Sample 側に切り替わり(Step 2),一定時間経 過後にV2 が H2O 側に切り替わる(Step 3)。HNO3 および一定量のH2O が Sample 側に達した後,V1 が Drain 側に切り替わり,一定時間経過後に動作終了と なる(Step 4)。なお,ペリスタルティックポンプの 流量は3 mL/min とし,手動で動作開始直前に作動, 終了直後に停止させる。Sample 側から排出された溶 液を10 mL に希釈し,これに含まれる Ni を定量す る。 - 2 - 2

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Fig. 1 Schematic diagram of an automatic elution system. i.d.: Inner diameter.

33.. 結結果果おおよよびび考考察察 3 3.. 11 シシスステテムム構構築築 本溶出システムにおいては,カートリッジ下流にペリ スタルティックポンプを設置しており,H2O はカートリッ ジを経由してこのポンプで吸引される。これは V1-カー トリッジ間およびカートリッジ-V2 間の流路体積を小さく し,抽出されたNi の溶出に要する HNO3量を減ずるた めである。ここでは本溶出システムへのカートリッジの 装着,流路の内径について検討した。 3 3.. 11.. 11 カカーートトリリッッジジのの装装着着 Fig. 1 に示した通り,樹脂を充填したコマ型カートリッ ジの上部はメス,下部はオスのルアーフィッティングと なっている。微量元素の固相抽出分離においては,一 般的にカートリッジ上部からコンディショニング溶液,試 料溶液,溶離液などを通液する。本検討においても, 抽出プロセスにおいては上部から各溶液を通液した。 Fig. 1 の溶出システムにカートリッジ上部が V2 側にな るよう装着し,カートリッジ上部から H2O を通液したとこ ろ,カートリッジ下流において流路内に気泡が確認され た。カートリッジ内には樹脂が充填されているため吸引 時にはそれが抵抗となりカートリッジ下部のルアーフィ ッティング部分から空気を吸引し,これが気泡となった と考えられる。この気泡の発生は,カートリッジ下部が V2 側になるように本溶出システムに装着し,カートリッ ジ下部よりH2O を通液することで大幅に抑制することが 可能であった。なお,カートリッジに充填する樹脂量を 変化させたところ,少なくとも0.02 g – 0.20 g までの範 囲では気泡の発生はほぼ同等であった。また,HNO3 を通液しても同様であった。以上の結果より,カートリッ ジはFig. 1 に示したように装着することとした。 3 3.. 11.. 22 流流路路のの内内径径 本溶出システムのすべての流路を内径 0.5 mm の PTFE チューブとした場合,3.1.1 に従いカートリッジを 装着しても流路内に気泡が不定期に確認された。これ はチューブ内径が小さいことによるH2O,HNO3の吸引 時の抵抗が大きく,各コネクタ部位から空気が吸引され てしまうためであると考えられる。流路すべてを内径 2 mm のチューブに変更したところ,気泡は確認されなか った。しかし,このチューブは外径3 mm であることから, ペリスタルティックポンプとの接続が困難であり,また柔 軟性に乏しいことから溶出液を遠沈管やメスフラスコに 採取する際に取り扱いづらかった。そこで V1 より上流 を内径2 mm,下流を 0.5 mm のものにしたところ,気泡 は確認されず,また取り扱いも容易となった。しかし, V2-カートリッジ間の流路体積が大きくなり,HNO3の吸 引に要する時間が長くなったため,この区間のみ 0.5 mm のものを使用することにした。 3 3.. 22 溶溶出出ののたためめのの条条件件最最適適化化 3.1 で構築したシステムを用い,Ni 溶出のための最適条 件について検討した。 3 3.. 22.. 11 HHNNOO33濃濃度度 Presep PolyChelate に抽出された Ni を含むいくつかの元 素の溶出には3 mol/L HNO3が用いられている17)Ni を - 3 - 3

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Fig. 2 Effect of HNO3 concentration on the recovery of Ni.

Table 3 Recovery of Ni in solutions containing Ni at

various concentrations Ni (mg/L) Recovery (%) 0.10 108, 110 0.25 109, 102 0.50 109, 106 1.0 94, 102, 95, 98, 96, 98, 107, 105 抽出した後のカートリッジを本システムに装着し,HNO3濃 度を変化させてNi を溶出した結果をFig. 2 に示す。抽出 されたNi は 0.5 mol/L 以上の濃度でほぼ定量的に回収可 能であった。今回は,Ni 定量に用いる MP-AES への影響 も考慮し,1 mol/L HNO3を溶離液として採用した。なお, Ni 以外の元素の固相抽出分離に本システムを適用する 場合,HNO3濃度については再検討する必要がある。 3 3.. 22.. 22 溶溶出出おおよよびび洗洗浄浄時時間間

HNO3を送液する時間(Step 1 および Step 2)を変化させ,

Ni 溶出に及ぼす影響について検討した。Step 1 および Step 2 の合計時間を少なくとも 60 s 以上とすることで Ni は ほぼ定量的に回収されたことから,HNO3送液時間は60 s に決定した。ここで,Step 1 の時間は HNO3-V2-カートリッ ジ-V1 の間の流路体積に依存する。本システムにおいて, HNO3がV2 からカートリッジを経て V1 に到達するまでの 時間は35 s - 40 s の間であったことから,Step 1 を 40 s, Step 2 を 20 s とすることにした。 次に,HNO3を送液後,H2O側に流路を切り替え(Step 3), 流路内のHNO3を押し出すとともに流路ならびにカートリッ ジ内を洗浄するために要する時間について検討したとこ ろ,60 s 以上でほぼ一定の回収率が得られた。本検討で は,カートリッジを通過したHNO3およびH2O をメスフラス コに採取し,10 mL に希釈して MP-AES に供していること から,Step 3 を 120 s と長めにとることとした。 3 3.. 22.. 33 流流量量 ペリスタルティックポンプの流量を変化させ,Ni 溶出に 及ぼす影響ついて検討した。本検討においては,流量を

3 mL/min とした場合の時間(Table 1)を基準とし,HNO3お

よびH2O の通液量が一定になるよう時間を調整した。得ら

れた回収率の平均値(n = 2)は,99 %(1 mL/min),98 %(3

mL/min),78 %(5 mL/min)となり,3 mL/min までは定量的 に溶出できることが明らかとなった。今回は迅速性の観点

から3 mL/min を採用した。これにより,HNO3 3 mL,H2O

6mL がカートリッジ内を通過することになる。 3 3.. 22.. 44 NNii 濃濃度度 試料溶液100 mL 中の Ni 濃度を変化させて抽出させ, 本システムを用いて溶出したときの Ni 回収率について検 討した。得られた結果をTable 3 に示す。これらの結果より, 樹脂への Ni 抽出量が変化しても定量的に溶出可能であ ることが明らかとなった。一連の溶出プロセスに要する時 間は1 検体あたり 5 min 以内であり,1 h あたり 10 検体以 上の処理が可能であった。 4 4.. 結結 論論 以上,本研究において,固相抽出分離操作の溶出プロ セスを自動化するためのシステムの構築に成功した。流

路切換えバルブをArduino Uno と Relay Module とを用

いて制御するためのプログラムを開発した。これにより,コ マ型カートリッジに充填した市販キレート樹脂 Presep PolyChelate に Ni を抽出した後,カートリッジをシステム に装着し,これにペリスタルティックポンプで 1 mol/L HNO3を3 mL/min で送液することにより,樹脂に抽出さ れた Ni をほぼ定量的に溶出することが可能となった。本 システムは安価なマイコンボード,リレーならびに単純な 電子回路,市販のペリスタルティックポンプおよび流路切 換えバルブ,汎用のコネクタ,PTFE 製チューブで構成さ れ,作製も容易である。本システムを用いることにより,微 量元素の固相抽出分離における溶出操作が極めて簡便 になる。 謝 謝辞辞  本研究の一部は公益財団法人ソルト・サイエンス 研究財団の助成(No. 2004)を受けて行われた。 引 引用用文文献献

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Table 2  Operation sequence of the automatic elution system
Fig. 2  Effect of HNO 3  concentration on the recovery of Ni.

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