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小学生いじめ観尺度の作成とその信頼性・妥当性の検討

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Academic year: 2021

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(1)教育カウンセリング研究 Vol. 10 No. 1 2020. 1 【資料論文】. 小学生いじめ観尺度の作成とその信頼性・妥当性の検討 四辻伸吾* 水野治久**. Developing a Scale for Assessing Elementary School Children’s Perspectives on Bullying, and Its Validity and Reliability Shingo Yotsutsuji* Haruhisa Mizuno**. 【要約】. 本研究の目的は,小学生がいじめに対してどのような見方・考え方を持っているかを捉える尺度である. 「小学生いじめ観尺度」を作成し,その因子構造,信頼性,妥当性を検討することであった。小学生のいじ めについての考え方に関する質問紙を用いて,小学校4~6年生599名を対象に回答を求めた。探索的因子. 分析(最尤法,プロマックス回転)により, 「いじめ一定理解」 , 「いじめ鋭敏感覚」, 「いじめ解決可能」の3因 子11項目からなる「小学生いじめ観尺度」が作成された。また, 「小学生いじめ観尺度」について信頼性と妥. 当性を検証したところ,一定の信頼性と妥当性が確認された。 キーワード:. 小学生いじめ観,いじめ一定理解,いじめ鋭敏感覚,いじめ解決可能. 【Abstract】. A scale was developed to examine elementary school children’s perspectives on bullying and its factor structure, reliability and validity were examined. A questionnaire survey was conducted with fourth to sixth graders (N=599) about their perspectives on bullying. Explanatory factor analyses (maximum likelihood procedure, promax rotation) were conducted and the factor structure was refined. As a result, the “Scale of Elementary School Children’s Perspectives on Bullying,” which consists of three factors and 11 items, was developed. The factors were: “Limited acceptance for the bullying,” “A keen sense of bullying,” and “Solvability for the bullying.” Furthermore, adequate reliability and validity of the scale were confirmed. Key words:. elementary school children’s perspectives on bullying, limited acceptance for the bullying, a keen sense of bullying, solvability for the bullying. 【問題と目的】. いじめ問題は教育現場が抱えている大きな課題の一. つである。平成25年には, 「いじめ防止対策推進法」が. であって,当該行為の対象となった児童等が心身の苦 痛を感じているものをいう」と定義されている。. いじめについては,その構造やプロセスから捉えよ. 成立し,国,地方公共団体及び学校がいじめの防止の. うとした様々な先行研究が散見される。いじめを構造. らないとされた。いじめ防止対策推進法では, 「『いじ. 者だけなく,観衆や傍観者など,それらを取り巻く. ための対策に関する基本的な方針を規定しなければな め』とは,児童等に対して,当該児童等が在籍する学 校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にあ る他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える. 行為(インターネットを通じて行われるものを含む。) *大阪教育大学附属平野小学校 Hirano Elementary School Attached to Osaka-Kyoiku University **大阪教育大学 Osaka-Kyoiku university. から捉えたものとして,いじめについて被害者と加害 様々な立場が関わっているとしている森田(1985)や Salmivalli, Lagerspetz, Björkqvist, Österman &. Kaukiainen(1996)などの研究が見られる。また,. Atlas & Pepler(1998), Kärnä, Voeten, Alanen, Poskiparta & Salmivalli (2010) ,Salmivalli, Voeten & Poskiparta(2011)は,いじめには周囲の児童生徒. が影響を及ぼしているとしており,いじめの状況にお.

(2) 小学生いじめ観尺度の作成とその信頼性・妥当性の検討. いて,集団のふるまいが,一人の子どものふるまいに. 大きな影響を与えていると考えられる(Salmivalli, Huttunen & Lagerspetz, 1997)。さらに,大西・吉. 田(2010)は,学級の集団規範がいじめ加害傾向に影 響を与える主な要因であるとしており,集団規範を考. 2. めに対する考え方にどのような因子が存在しているの かについては,先行研究において十分に明らかにされ. ているとは考えられない。鈴木(1990)は「いじめは根. 絶できるはずであると考えているか」 「その根絶は不可. 能であると考えているか」を基底として,いじめに対. 慮したいじめ対策を行うことの重要性を提起している。 する態度について調査を行っており,小学生・中学生 これらの先行研究は,いじめが発生したとき,児童. のいじめに対する意見と「いじめた経験」の関連につい. な立場でいるのかということについて捉えたものだと. めに対する意見は, 「いじめは人間のひどい心のあらわ. 生徒個人が集団の中でどのようにふるまい,どのよう 考えられる。一方,いじめをどのように捉え,どのよ うな意見を持っているのかという,個人のいじめに対 する認識や考え方に着目した研究が見られる。鈴木. (1990)は,小学生及び中学生を対象として,いじめ. に対する意見といじめの経験の関連を検証しており, いじめを根絶することができるかどうかについて「い. じめ根絶可能視群」 「いじめ根絶不可能視群」に分け, それらの違いといじめについて反対する程度との関連 を明らかにしている。また,笠井(1998)は,どのよ. て明らかにしている。ここで取り上げられているいじ. れで,人間としてなさけないおこないです」など主に いじめに対してどの程度反対の態度を示しているかに ついて尋ねる9項目で構成されている。これらは一つ 一つの項目ごとに検証されており,いじめに対する態. 度9項目を構造的に捉えようとするものではないが, カテゴリーとしては,いじめは根絶することができる かどうかという視点と,いじめを許容することができ. るかどうかという視点の2つで捉えている。これは, 森田(2010)がいじめについて, 「およそ人間が関係を. うな行為をいじめと捉えているかについて着目してお. 結べば,そこに影のように忍び寄る現象」としている. 嫌がらせをする」状況などがいじめと認識されやすく,. 風潮があることを認めた上で, 「いじめとは,人の生存. 無視をする」状況などはいじめとして認識されにくい. と重なるものであると考えられる。. り,小学生にとって, 「仲の悪い友人が,面白がって 逆に「仲良しの友人が,自分の行為のしかえしとして としている。さらに谷口(2010)は,中学生を対象と. ことや尾木(2013)がいじめを仕方ない現象だと捉える. 権に対する重大な侵害行為」であると捉えている視点 一方,森田(2010)はそれらの考えに加えて, 「いじ. してどのような行為をいじめと認識しているのかにつ. めが起きても,止まりやすい国と止まりにくい国があ. じめ行為に対しては,それが「いじめである」という. めた上で, 「いじめを止めることができる」という姿勢. いて調査しており,中学生は衝動的暴力や遊び型のい. 認識が低く,さらにそうした遊び型いじめに関しては, 被害経験のある生徒でさえ「いじめではない」との認. ることが事実である」としており,いじめの存在を認 の重要性を示唆している。この「いじめの存在を認め. た上で,いじめを止める必要がある」という視点は,. 識があることを示唆している。. 鈴木(1990)の研究にはないものであり,いじめに対す. が, 「いじめは決して許されないこと」と示しているこ. つであると考えられる。さらには,笠井(1998)や谷口. いじめに対する認識については,文部科学省(2013). る意見を構造的に捉えようとする時の必要な視点の一. とや,2011年の大津市における中学校2年生のいじ. (2010)は,どのような行為をいじめと捉えるかについ. 育委員会等に多数の抗議が行われた(共同通信大阪社. めと捉えるかどうかについては人によって異なってい. めを原因とする自殺について,当該中学校や大津市教 会部, 2013)ことをふまえると,社会的風潮としても. 「いじめは許されないこと」という考えに立つことが 重要であると推察される。しかしながら,いじめられ. て調査しており,同じ行為を見ても,その行為をいじ ると考えられる。これについてもいじめに対する考え 方と関わっていると推察される。. このように,いじめに対する考え方は様々であるが,. る側にも原因があるという意見が出ては議論が起きる. 子どもたちのいじめに対する考え方の背景にどのよう. 文部科学省の方針や社会的風潮とは別に,一人一人の. じめが発生する原因を把握する一つの視点となると考. ということが繰り返されている(元森, 2005)ように, いじめに対する考え方には差異があると推察される。. 先述のように,いじめ発生のメカニズムについては,. な因子が存在しているかについて把握することは,い えられる。また, 「いじめは許されないこと」と考える. べきであるという社会的風潮があるにもかかわらず,. 児童生徒が所属する学級集団が関わっていることや, 「いじめられる人にも悪いところがあるから仕方ない」 児童生徒のいじめに対する捉え方がいじめ加害行動に どのような影響を及ぼしているかについての言及は先 行研究において散見される。しかし,児童生徒のいじ. などと考える人がいる (酒井, 2010) ことをふまえると,. 「いじめについての考え方」を把握することは,いじめ. に対する予防・防止アプローチのための新たな視点に.

(3) 教育カウンセリング研究 Vol. 10 No. 1 2020. 3. なると推察される。例えば, 「いじめがあっても仕方が. 女子47名) ,5年生163名(男子79名・女子84名) ,6年. は絶対に許されない」と思っている児童が大半を占め. ⑶ 調査内容. ない」と思っている児童の割合が多い学級と, 「いじめ. ている学級では,いじめに対する予防・防止アプロー. チの仕方が異なってくるであろう。これをふまえると,. 生317名 (男子161名・女子156名) であった。. ① 「いじめ観」を尋ねる項目. 先行研究を参考に,小学生いじめ観尺度を構成する. 「いじめに対する考え方」を把握することは,いじめの. 項目について, 「 『いじめ』を受け入れる考え方」 「 『いじ. そこで,本研究では子どもたちがいじめに対してど. ることができるという考え方」という3つにカテゴラ. 予防・防止への第一歩となると考える。. のような考えを持ち,どのような態度をとっているの かについて着目する。先行研究をふまえ,これらの視 点は主に以下の3つに集約されると仮定した。一つ目. は,森田(2010)や尾木(2013)が指摘しているように. め』を鋭敏な感覚で捉える考え方」 「 『いじめ』は解決す イズされることを仮定し,事前項目として40項目を 作成した (Table 1)。. 「『いじめ』を受け入れる考え方」は,森田(2010),. 尾木(2013)が指摘するいじめの現象を受け入れて,. いじめの現象を受け入れて, 「ある程度認めることがで. 「ある程度認めることができるもの」 「仕方ないこと」. 程度受け入れる考え方」である。二つ目は,笠井 (1998). で使われた項目等を参考にして12項目を作成した。. きるもの」 「仕方ないこと」と捉える「『いじめ』を一定. と捉える視点や,鈴木(1990)のいじめに対する意見. や谷口(2010)が調査しているように,同じ行為を見て. 項目には, 「『いじめ』は悪いことだが,いじめられる. どうか,いじめを重大なものと捉えているかどうかに. ある。」のように, 「『いじめ』は悪いこと」 「必要なとこ. も,それをいじめであると捉える感覚を持っているか ついて言及する「『いじめ』を鋭敏な感覚で捉える考え. 方」である。三つ目は森田(2010)が指摘するように,. いじめの存在を認めた上で,そのいじめは止めること. 方もそれだけ強くなっていくのだから必要なところも. ろもある」のように,1つの項目に2つの論点が含ま れているように捉えられるものが含まれている。しか し,森田(2010) ,尾木(2013)が指摘するようにいじ. ができるものだということに言及する「『いじめ』は解. めという現象が,社会的望ましさからは否定すべきも. いずれもいじめという現象についての個人的な考えや. い側面があることを踏まえると, 「『いじめ』を受け入. 決することができるという考え方」である。これらは, 感想にとどまるものではなく,課題解決すべきいじめ 問題に向き合う視点に立った時に,自分自身がどのよ うな立場をとっているかということに言及するもので. のであるものの,現実の世界では受け入れざるを得な. れる考え方」についての表現を示すには,1つの項目 にその2つの要素を入れる必要があると考えた。. 「『いじめ』を鋭敏な感覚で捉える考え方」は, 「いじ. あると考えられる。そこで,本研究では,この3つの. めは許されない」としていじめの現象を否定するとと. 考え方」を「いじめ観」とし,それを捉える「小学生い. 為を見ても,それをいじめであると捉える感覚を持っ. 視点を包括する概念として, 「 『いじめ』に対する見方・ じめ観尺度」を作成することで,今後のいじめに対す る研究の新たな視点としたい。 【方法】. ⑴ 調査時期. 20XX年11~12月に調査を行った。. ⑵ 調査対象. 文部科学省(2014)におけるいじめ認知件数の平成. もに,笠井(1998)や谷口(2010)が指摘する,同じ行 ているかどうか,いじめを重大なものと捉えているか. どうかという視点や,鈴木(1990)のいじめに対する意. 見で使われている項目等を参考に17項目を作成した。. 「 『いじめ』は解決することができるという考え方」は,. 森田(2010)が指摘する,いじめの存在を認めた上で,. そのいじめを止めることに重きを置こうとする視点を 参考にして,11項目を作成した。. 作成された項目が想定した3つのカテゴリーにおけ. 25年度の調査では,中学校1年生で27,425件とピーク. る項目として適切であるかどうかについて,本調査を. に注目することが重要であると考えられる。これをふ. る学級担任6名により,内容的妥当性が検討され,確. となり,その前段階である小学校高学年段階のいじめ まえ,いじめの発生件数・認知件数がピークを迎える 中学校1年生の前の発達段階である小学校高学年を調. 行う小学校の校長や副校長,本調査の実施学級におけ 認された。. これら40項目について「とてもそう思う(5点) 」 「そ. 査対象とする。これをふまえ,同一都道府県内の小学. う思う(4点)」 「どちらでもない(3点)」 「あまりそう. このうち,記入ミスのなかった児童599名の回答を分. 答を求めた。教示文は「 『いじめ』に対する考え方につ. 校4校における4~6年生648名を調査対象とした。. 析の対象とした。内訳は,4年生119名(男子72名・. 思わない(2点) 」 「そう思わない(1点) 」の5件法で回. いて書かれた,いろいろな文があります。それぞれに.

(4) 小学生いじめ観尺度の作成とその信頼性・妥当性の検討. 4. Table 1 小学生いじめ観についての40項目 「いじめ」を受け入れる 考え方. 2 「いじめ」は悪いことだけれど,もともと人間の心の中にある気持ちだから「いじめ」があってもしかたないことだ。 3 「いじめ」はいじめるわけがしっかりしているときは, 「いじめ」がゆるされる場合がある。 6 「いじめ」は,人間の自然なおこないで,いじめられる方も,それによってかえって強くなっていくので,よい経 験になる場合もある。 7 「いじめ」は悪いことだが,いじめられる方もそれだけ強くなっていくのだから必要なところもある。 9 「いじめ」は悪いことだが,いじめられる方もなおさないといけないところがあり,いじめがあってもやむをえない。 13 「いじめ」は現代の社会全体の問題である。 14 いじめる側もかわいそうだと思う。 21 いじめる側は,何かつらいことがあって,それが「いじめ」として表れているので,いじめる側もたすけてあげな ければならない。 22 少しのからかいが「いじめ」だと言われるのはおかしい。 29 いじめる人の気持ちはとてもよくわかる。 32 「いじめ」と「からかい」はちがう。 33 「いじめ」を意識しすぎると,人とかかわることが難しくなる。. 「いじめ」を鋭敏な感覚で 捉える考え方. 1 「いじめ」は人間のひどい心のあらわれで,人間としてなさけないおこないである。 4 「いじめ」にいじめる理由などは,ぜったいになく, 「いじめ」がゆるされる場合などあるはずがない。 5 「いじめ」は人間の最低のおこないで,よいとか悪いとかの問題ではない。 8 「いじめ」は,どんなわけがあってもゆるされない。 11 いじめられる方が悪いなどという考え方はぜったいにゆるされない。 12 「いじめ」はいじめる側に問題がある。 16 どんな場合でもいじめられる側の立場に立たないといけない。 19 いじめられている人はすでにつらいのだから,それ以上がんばる必要なく,周りが助ける必要がある。 26 いじめられる人の気持ちはとてもよくわかる。 27 「いじめ」という言葉を軽々しく口にするべきではない。 28 「みんなでなかよくしよう」と言われると逆に「いじめ」が起こりやすいので,むりやりなかよくする必要はない。 30 人のことをからかうことが, 「いじめ」のもとである。 31 テレビのお笑い番組で人をからかっているのは, 「いじめ」だと言える。 34 「いじめ」をなくすには「からかい」をなくすことだ。 35 世の中全体がもっと「いじめ」に敏感になる必要がある。 37 わたしたち,小学生自身が,自分たちの問題としてもっと真剣に「いじめ」に取り組む必要がある。 40 「いじめ」は世の中で一番いけないことである。. 「いじめ」は解決すること ができるという考え方. 10 「いじめ」は人間のいるところにはかならずあり,決してなくならない。 (逆転項目) 15 「いじめ」は人間の社会のどこにでもあり,決してなくならないと思う。 (逆転項目) 17 みんなで協力すればいじめはすぐにとめることができる。 18 いじめられている側は,いじめられないような力を身につけるとよい。 20 「いじめ」には必ず解決する方法があるので,なんとかしてそれを見つける必要がある。 23 「いじめ」は,どこにでもあるが,すぐに解決しなければならない。 24 「いじめ」をなくすことはできないが,解決することはできる。 25 「いじめ」をなくすことはできる。 36 「いじめ」があればすぐに友だちに相談すべきだ。 38 「いじめ」があればすぐに助けをもとめる必要がある。 39 「いじめ」があればすぐに先生に相談すべきだ。. ついて,みなさんはどのように思いますか。 『とても. 対人的に円滑な関係を持とうしているかについて尋ね. もっとも合うものひとつに〇をつけてください」で. 目標」因子10項目,計18項目からなり,妥当性と信頼. そう思う』から『そう思わない』までの5つのうちから, あった。. る尺度であり, 「向社会的目標」因子8項目, 「規範遵守. 性は確認されている。大西・吉田(2010)は,いじめの. ② 社会責任目標尺度. メカニズムに集団規範が影響するとしているが,本研. 責任目標尺度(中谷, 1996)との相関を検討した。社会. 鋭敏な感覚で捉える考え方」 , 「 『いじめ』は解決するこ. 「小学生いじめ観」の妥当性を検証するため,社会的. 究において作成する「小学生いじめ観」の「 『いじめ』を. 的責任目標尺度は,教室における規範やルールを守り, とができるという考え方」についても集団規範をふま.

(5) 教育カウンセリング研究 Vol. 10 No. 1 2020. 5. えて円滑な対人関係を目指すものであると考えられ, 【結果】 社会的責任目標尺度と正の相関を示すことが予想され. ⑴ 「小学生いじめ観」の探索的因子分析. 考え方」とは負の相関を示すことが予想される。. 均値+標準偏差が最大値である5を超えるという天井. る。また「小学生いじめ観」の「『いじめ』を受け入れる. これらについて, 「いつもあてはまる(5点)」 「とき. どきあてはまる(4点)」 「どちらともいえない(3点)」. 「あまりあてはまらない(2点)」 「どんなときもあては まらない(1点)」の5件法で回答が求められた。教示. 「小学生いじめ観」における各項目得点において,平. 効果が16項目(1・4・5・8・13・15・19・20・23・24・. 26・27・32・36・38・39)において見られた。また,. 平均値-標準偏差が最小値1を下回るという床効果が. 4項目(3・6・7・31)において見られた。本研究で作成. 文は「つぎのページには,みなさんの学校や友だち,. する「小学生いじめ観尺度」は学級集団を全体として捉. な文があります。それぞれの文について,みなさんは. 可能性も考えられるため,可能な限り児童の回答に偏. 先生などに感じる気持ちについて書かれた,いろいろ. 自分にどのくらいあてはまると思いますか。 『いつもあ てはまる』から『どんなときもあてはまらない』までの 5つのうちから,もっとも合うと思うものひとつに○ をつけてください」であった。 ③ 児童のSelf-control尺度. 「小学生いじめ観」の妥当性を検証するため児童の. Self-control尺度(庄司, 1993)との相関を検討した。. えることで本尺度を集団の変容を目的として活用する. りのない項目で構成された尺度が望まれる。これより, 本研究では天井効果及び床効果の見られる項目につい ては削除することにした。削除された項目の平均及び. 標準偏差をTable 2に示す。残った20項目に因子分析. (最尤法・プロマックス回転)を行った。その結果,固. 有値の減衰状況(3.938, 1.980, 1.597, 1.175, 1.120,. 1.076, 1.003…)及び因子の解釈可能性,さらに当初に. 児童のSelf-control尺度は,Self-control(自己統制). 仮定した「小学生いじめ観尺度」の項目が3つのカテゴ. 1因子20項目からなり,信頼性と妥当性は確認され. られた。. の個人差を測定するために開発されたものであり, ている。 「小学生いじめ観」における「『いじめ』を鋭敏 な感覚で捉える考え方」 「『いじめ』は解決することが. できるという考え方」についても,いじめ行動に対す る自己統制の視点をふまえたものと予想され,児童の. リーであったことから3因子構造が妥当であると考え 因子数を3に決定し因子分析(最尤法・プロマック. ス回転)を行った。因子負荷量が.40に満たない9項目. (11・12・16・18・22・28・30・33・34)を除外し,残. りの11項目に対して再度同様の因子分析を行った。. Self-control尺度と正の相関を示すことが予想される。 その結果,いずれかの因子に.40以上の高い因子負荷 また, 「小学生いじめ観」における「『いじめ』を受け入. 量を示し,第1因子5項目(2・9・14・21・29),第2. これらについて, 「いつもはい(4点) 」 「ときどきはい. 25),計11項目という単純構造が見られた。探索的因. れる考え方」とは負の相関が予想される。. (3点)」 「たまにはい(2点)」 「いつもいいえ(1点)」の. 4件法で回答が求められた。教示文は, 「文を読んで, あなたはいつもどうしているか考えて,そうしている. 因子3項目(35・37・40),第3因子3項目(10・17・ 子分析の結果についてTable 3に示す。. 第1因子は, 「いじめる人の気持ちはとてもよくわか. る。」 「いじめる側は,何かつらいことがあってそれが. ときは『いつもはい』,ときどきしているなら『ときど. 『いじめ』として表れているので,いじめる側もたすけ. いときは『いつもいいえ』をえらんで,あてはまるも. これらは,いじめに対する社会的風潮としての価値観. きはい』,たまにしかしないなら『たまにはい』,しな のに〇をつけてください」であった。 ⑷ 分析. 因子分析及び相関分析はSPSS ver22.0を用いた。. ⑸ 手続き. てあげなければならない。」などの5項目が見られた。 とは異なり,いじめという現象について一定の理解を 示すものであると考えられる。これを受け,第1因子 には「いじめ一定理解」と命名した。. 第2因子は, 「世の中全体がもっと『いじめ』に敏感. 各小学校において,所属長の許可を得て,調査を. になる必要がある。 」などの3項目が見られた。これら. で行った。倫理的配慮として「成績とは無関係である. 鋭い感覚でいじめにのぞまなければならないというこ. 行った。調査は,後続の別調査との都合により記名式 こと」 「調査以外の目的では使用しないこと」について. 質問紙に記載し,いじめに関する質問項目であること. をふまえ, 「途中で答えたくなくなれば回答しなくて もよい」と口頭で伝えた。. は,いじめというものについて,容認することなく, とを示唆しているものであると考えられる。これを受 け,第2因子には「いじめ鋭敏感覚」と命名した。. 第3因子は, 「『いじめ』をなくすことはできる。」な. どの3項目が見られた。これらはいじめの存在は認め た上で,いじめをなくすことが可能だということにつ.

(6) 小学生いじめ観尺度の作成とその信頼性・妥当性の検討. 6. Table 2 小学生いじめ観尺度において削除された項目 M. SD. 1. 「いじめ」は人間のひどい心のあらわれで,人間として なさけないおこないである。. 4.50( .83). 4. 「いじめ」にいじめる理由などは,ぜったいになく, 「いじめ」がゆるされる場合などあるはずがない。. 3.96( 1.17). 3. 「いじめ」はいじめるわけがしっかりしているときは, 「いじめ」がゆるされる場合がある。. 1.79( 1.05). 5. 「いじめ」は人間の最低(さいてい)のおこないで,よいとか悪いとか の問題ではない。. 6. 「いじめ」は,人間の自然なおこないで,いじめられる方も,それだけ強くなっていくので,よい経験になる場合もある。 7. 「いじめ」は悪いことだが,いじめられる方もそれだけ強くなっていくのだから必要なところもある。 8. 「いじめ」は,どんなわけがあってもゆるされない。. 4.08( 1.09) 2.10( 1.17) 1.98( 1.11) 4.02( 1.21). 11. いじめられる方が悪いなどという考え方はぜったいにゆるされない。. 3.66( 1.22). 12. 「いじめ」はいじめる側に問題がある。. 3.71( 1.11). 13. 「いじめ」は現代(げんだい)の社会全体の問題である。. 4.01( 1.08). 15. 「いじめ」は人間の社会のどこにでもあり,決してなくならないと思う。. 3.80( 1.22). 16. どんな場合でもいじめられる側の立場 に立たないといけない。. 3.13( 1.39). 18. いじめられている側は,いじめられないような力を 身につけるとよい。. 2.73( 1.28). 19. いじめられている人はすでにつらいのだから,それ以上がんばる必要なく,周りが助ける必要がある。. 3.90( 1.15). 20. 「いじめ」には必ず解決する方法があるので,なんとかしてそれを見つける必要がある。. 4.06( 1.07). 22. 少しのからかいが「いじめ」だと言われるのはおかしい。. 3.45( 1.24). 23. 「いじめ」は,どこにでもあるが,すぐに解決しなければならない。. 4.19( .94). 24. 「いじめ」をなくすことはできないが,解決することはできる。. 3.90( 1.14). 26. いじめられる人の気持ちはとてもよくわかる。. 3.83( 1.20). 27. 「いじめ」という言葉を軽々しく口にするべきではない。. 4.02( 1.12). 28. 「みんなでなかよくしよう」と言われると逆に「いじめ」が起こりやすいので,むりやりなかよくする必要はない。. 3.18( 1.30). 30. 人のことをからかうことが, 「いじめ」のもとである。. 3.60( 1.23). 31. テレビのお笑い番組で人をからかっているのは, 「いじめ」だと言える。. 1.56( .96). 32. 「いじめ」と「からかい」はちがう。. 3.79( 1.24). 33. 「いじめ」を意識しすぎると,人とかかわることが 難しくなる。. 3.88( 1.11). 34. 「いじめ」をなくすには「からかい」をなくすことだ。. 3.06( 1.24). 36. 「いじめ」があればすぐに友だちに相談すべきだ。. 4.04( 1.16). 38. 「いじめ」があればすぐに助けをもとめる必要がある。. 4.17( 1.05). 39. 「いじめ」があればすぐに先生に相談すべきだ。. 4.06( 1.20). Table 3 小学生いじめ観尺度の因子分析の結果ならびに項目平均と標準偏差 I Ⅰ いじめ一定理解 (α=.675). 29. いじめる人の気持ちはとてもよくわかる。. 因子 Ⅱ. Ⅲ. 平均. SD. .617. -.067. .760 2.573 (1.314). .587. .218. .118 3.242 (1.312). .531. -.112. -.022 2.604 (1.246). .508. -.070. .150 2.175 (1.131). .482. -.028. -.039 2.712 (1.451). .040. .796. -.054 3.524 (1.155). .023. .651. .001 3.825 (1.171). -.230. .434. .071 3.459 (1.288). 25. 「いじめ」をなくすことはできる。. .106. -.003. 17. みんなで協力すればいじめはすぐにとめることができる。. .067. .126. 21. いじめる側は,何かつらいことがあって,それが「いじめ」として表れているので,いじめる 側もたすけてあげなければならない。. 9. 「いじめ」は悪いことだが,いじめられる方もなおさないといけないところがあり, 「いじめ」 があってもやむをえない。 2. 「いじめ」は悪いことだけれど,もともと人間の心の中にある気持ちだから「いじめ」があって もしかたないことだ。. 14. いじめる側もかわいそうだと思う。 Ⅱ いじめ鋭敏感覚 (α=.660). 35. 世の中全体がもっと「いじめ」に敏感(びんかん)になる必要がある。. 37. わたしたち,小学生自身が,自分たちの問題として もっと真剣に「いじめ」に取り組む必要 がある。 40. 「いじめ」は世の中で一番いけないことである。 Ⅲ いじめ解決可能 (α=.656). 10. 「いじめ」は人間のいるところにはかならずあり,決してなくならないと思う。 (逆転項目). .192. .860 3.204 (1.393). −.579 3.279 (1.348) .492 3.648 (1.320). 27.212 15.077 12.635. 寄与率 (%). 因子間相関. .157. Ⅰ. Ⅱ. Ⅰ. Ⅱ. -.266. Ⅲ. -.351 .333.

(7) 教育カウンセリング研究 Vol. 10 No. 1 2020. 7. Table 4 小学生いじめ観尺度の基本統計量及び性差・学年差 男子. 女子. 主効果. 交互作用. 4年 n=72. 5年 n=79. 6年 n=161. 4年 n=47. 5年 n=84. 6年 n=156. 性別 df=1,593. 学年 df=2,593. df=2,593. M (SD). M (SD). M (SD). M (SD). M (SD). M (SD). F値. F値. F値. いじめ一定理解. 2.675 2.7106 2.648 ( .900) ( .876) ( .832). 2.660 2.769 2.591 ( .965) ( .795) ( .844). .002 n.s.. 1.026 n.s.. .265 n.s.. いじめ鋭敏感覚. 3.495 3.603 3.661 (1.004) (0.941) ( .908). 3.582 3.564 3.620 ( .899) ( .887) ( .955). .000 n.s.. .556 n.s.. .212 n.s.. いじめ解決可能. 3.324 3.063 3.126 (1.075) (1.142) (1.017). 3.376 3.266 3.164 (1.030) (1.036) (1.018). 1.090 n.s.. 1.678 n.s.. .353 n.s.. Table 5 小学生いじめ観と社会的責任目標尺度及び児童のSelf-contorol尺度の相関 小学生いじめ観. 社会的責任目標尺度. いじめ一定理解. いじめ鋭敏感覚. いじめ解決可能. 向社会的目標. -.199**. .313**. .210**. 規範遵守目標. -.270. .257. .186**. -.236. .256. .219**. 児童のSelf-control尺度. **. **. **. **. p<.01. **. いて言及されたものであると考えられる。これを受け, のいずれにおいても交互作用は認められず,性別・学 第3因子は「いじめ解決可能」と命名した。. クロンバックのα係数は,.675, .660, .656であり,. 内的整合性については十分とは言えず,課題が残され. 年の主効果も認められなかった。 ⑶ 妥当性の検証. 小学生いじめ観尺度の併存的妥当性の検証のため,. たと考えられる。これは各因子が3~5項目と少ない. 「社会的責任目標尺度」, 「児童のSelf-control尺度」と. される。しかし,尺度作成の先行研究として,飯田・. 本研究のデータにおけるα係数は, 「社会的責任目標. 項目で構成されていることが要因の一つであると推察. 石隈・山口(2009)ではα係数が.65を示したことにつ. いて, 「低くはあるが,ある程度の内的一貫性は示され た」と記載していることや,関口・濱口(2015)におい. てα係数が.68を示したことについて, 「α係数がわず. の相関を調べた。この結果についてTable 5に示す。 尺度」の下位尺度, 「向社会的目標」, 「規範遵守目標」 において,.892, .823,児童のSelf-control尺度にお いて,.790となり一定の内的整合性が確認された。. 「いじめ一定理解」は, 「向社会的目標」との間に弱い. かに低いものの,使用に耐えられる範囲の信頼性に収. 負の相関(r=-.199, p<.01), 「規範遵守目標」との. おいても使用に耐えられるものであると捉える。これ. control尺度」との間に弱い負の相関(r=-.236,. した得点を算出し,小学生いじめ観尺度の下位尺度得. 目標」との間に正の相関(r=.313, p<.01) , 「規範遵守. 以上より,得られた項目は, 「いじめ一定理解」因子. のSelf-control尺度」との間に弱い正の相関(r=.256,. まっていた」と記載していることをふまえ,本研究に をふまえ,各因子の項目の得点を加算し,項目数で除 点とした。. 5項目, 「いじめ鋭敏感覚」因子3項目, 「いじめ解決可 能」因子3項目の計3因子11項目であり,これを「小. 学生いじめ観尺度」とした。なお,回転前の3因子で. 11項目の全分散を説明する割合は54.924%であった。. ⑵ 各下位尺度の基本統計量と性差・学年差. 間に弱い負の相関(r=-.270, p<.01), 「児童のSelf-. p<.01)が見られた。 「いじめ鋭敏感覚」は, 「向社会的. 目標」との間に弱い正の相関(r=.257, p<.01) , 「児童. p<.01)が見られた。 「いじめ解決可能」は, 「向社会的. 目標」との間に弱い正の相関(r=.210, p<.01), 「規. 範遵守目標」との間に弱い正の相関(r=.186, p<.01),. 「児童のSelf-control尺度」との間に弱い正の相関 (r=.219, p<.01)が見られた。これらより, 「小学生. 各下位尺度の基本統計量と性差・学年差を検討した。 いじめ観尺度」について一定の妥当性が確認された。. その結果をTable 4に示す。性差・学年差については, 性別及び学年を独立変数とし,各下位尺度を従属変数. とした2要因の分散分析を実施した。その結果, 「い. じめ一定理解」, 「いじめ鋭敏感覚」, 「いじめ解決可能」. 【考察】. 本研究の目的は, 「小学生いじめ観尺度」を作成し,. その信頼性と妥当性を検討することであった。探索的.

(8) 小学生いじめ観尺度の作成とその信頼性・妥当性の検討. 8. 因子分析の結果,3因子11項目からなる「小学生いじ. ついて多くの児童が「とてもそう思う」を回答したこ. 第1因子は, 「いじめ一定理解」と命名された。いじ. 対する考え方の差異を検討する項目としては,必然的. め観尺度」が作成された。. めが社会における大きな問題であり,多くの人々がマ. スメディア等で深刻な「いじめ事件」に触れる機会があ. とは当然のことであると考えられ,小学生のいじめに に除外に至ったと推察される。. また,最終的に採用された小学生いじめ観尺度11項. ることを考えると,いじめに対して「仕方がないこと」. 目において,性差,学年差を検討した結果,いずれの. ものであると捉えることもできる。しかし,森田(1985). 規範行動(山田・小泉・中山・宮原, 2013)や共感性(長. と捉えることは「いじめ予防・防止」の方向性に反する. やSalmivalli et al. (1996)がいじめを取り巻く状況の. 中において様々な立場があると示唆しているように, それらの立場の中で小学生はいじめに対する考え方に ついても様々な視点に立っている可能性がある。その. 因子においても,性差及び学年差は見られなかった。 谷川・堀内・鈴木・佐渡・坂元, 2009)に関する先行研. 究において,どの尺度得点においても,女子の得点が. 男子の得点に比べて高いことが確認されている。また, 山田ら(2013)は,規範行動は年齢とともに減少すると. ため,社会的風潮をふまえると否定的に捉えるべきい. している。しかし,小学校高学年の「いじめ観」におい. のでなく,いじめというものの存在を仕方なく認めて. れなかった。これより, 「 『いじめ』に対する見方・考え. じめについて,肯定とまではいかないが,否定をする いるということが考えられる。. 第2因子は, 「いじめ鋭敏感覚」と命名された。いじ. め問題は,教育現場が抱える課題として広く認識され. ている。文部科学省(2013)が「いじめは決して許され. ては,これらの特徴とは異なり,性差や学年差は見ら. 方」については,男女による差や学年差は見られない 可能性があると考えられ,この点については更なる調 査を重ねる必要がある。. また併存的妥当性の検証として, 「いじめ解決可能」. ない」としていることやいじめ防止対策推進法が成立. 「いじめ鋭敏感覚」と, 「向社会的目標」, 「規範遵守目. という立場に立つ姿勢は一般的な考えと相違ないと考. 「いじめ一定理解」と「向社会的目標」 , 「規範遵守目標」 ,. したこと,社会的風潮も含めると「いじめ鋭敏感覚」 えられる。. 第3因子は, 「いじめ解決可能」と命名された。これ. は,いじめが起こることを認めた上で,そのいじめは 解決することができる,あるいは解決しなければなら. 標」, 「児童のSelf-control尺度」の有意な正の相関,. 「児童のSelf-control尺度」の有意な負の相関が見られ. た。これは予測通りであり, 「小学生いじめ観尺度」に ついて一定の妥当性が示唆されたと考えられる。. 以上,本研究において, 「 『いじめ』に対する見方・考. ないとする因子である。森田(2010)は,いじめの存在. え方」と定義された「いじめ観」を把握する「小学生い. 姿勢の重要性を示唆しており, 「いじめ解決可能」はこ. 度」を活用することで,小学生の「いじめ観」を把握し,. を認めた上で, 「いじめをとめることができる」という の視点と概ね合致すると考えられる。. 一方,小学生いじめ観尺度を作成するにあたり,当. 初の40項目から最終的に11項目となり,多くの項目が. じめ観尺度」を作成したが,この「小学生いじめ観尺 教育現場で起こるいじめのメカニズムを捉える新たな 視点とすることができると考える。. また,いじめについての対策として急がれるのは,. 削除された。削除された項目の多くに天井効果が認め. いじめの発生件数そのものを減少させることができる. 規範意識」であると考えることも可能である。いじめ. あろう。今後,この「いじめ予防・防止アプローチ」と. られたということは,これらはいじめに対する「共通 防止対策推進法の第一条で「いじめが,いじめを受け た児童等の教育を受ける権利を著しく侵害し,その心 身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与える のみならず,その生命又は身体に重大な危険を生じさ. せるおそれがあるものであること」とされていたり, 第四条で「児童等は,いじめを行ってはならない」と されていたりするように,いじめは法律上否定されて いるものであり,社会的にも認められているものでは ない。これらをふまえると,天井効果が認められた. 「1.『いじめ』は人間のひどい心のあらわれで,人間と. してなさけないおこないである。」や「8.『いじめ』は,. どんなわけがあってもゆるされない。」などの項目に. ような「いじめ予防・防止アプローチ」を進めることで. して本研究における「小学生いじめ観尺度」を効果測定. の視点として活用することができると考える。 「小学生 いじめ観尺度」の3つの下位尺度である「いじめ解決可. 能」 「いじめ一定理解」 「いじめ鋭敏感覚」のうち, 「いじ. め解決可能」はいじめの存在は認めた上で,いじめを なくしていくようにアプローチしていくことについて 言及されたものであり,この下位尺度得点を高めてい くことは「いじめ予防・防止」へとつながる可能性のあ. るものであると考える。また, 「いじめ鋭敏感覚」は, いじめというものについて,容認することなく,鋭い 感覚でいじめにのぞまなければならないということを 示唆しているものであり,これについても下位尺度得.

(9) 教育カウンセリング研究 Vol. 10 No. 1 2020. 9. 点を高めていくことは, 「いじめ予防・防止」へとつな. まえると,いじめの予防・防止の観点から,過剰表現. 定理解」は,いじめについて,決して肯定できるもの. こと」と捉える度合いが増していくことは一定の意義. がる可能性があると推察される。さらに, 「いじめ一 ではないが,社会においていじめが発生するのは仕方 がないという「諦め」の考えを持ったものであり,この. 下位尺度得点が低くなることについても, 「いじめ予 防・防止」へとつながる可能性が考えられる。. 最後に本研究の展望及び検討課題について述べる。. 第1に, 「小学生いじめ観」が,学校現場における実際. のいじめの発生とどのように関連しているのかを明ら. であっても児童が「 『いじめ』は世の中で一番いけない があると考えられる。これより本研究においては, 「小 学生いじめ観尺度」の一項目として「『いじめ』は世の. 中で一番いけないことである」を採用した。しかし, 今後は,表現の曖昧さによる解釈の違いを防ぐため, 項目の修正も視野に入れて検討をしていく必要がある と考えられる。. また,尺度作成にあたり同一都道府県の小学校4校. かにすることである。本研究においては妥当性の検証. において調査を行ったが,より客観性の高い尺度を作. 1996)」と「児童のSelf-control尺度(庄司, 1993)」の. 府県も含めた調査を行うとともに,調査数を増やす必. として「小学生いじめ観」と「社会的責任目標尺度(中谷, 関連に焦点を当てたが, 「小学生いじめ観」と「実際に. 『いじめ』を受けているかどうか」の関連を明らかにす. ることは, 「いじめ観」が「いじめ予防・防止アプロー チ」の新たな視点となることの意義へとつながってい くと考えられる。また,小学生が学校生活の中でその. 成するには,今後は,同一都道府県内だけではなく他 要性があると推察される。また,下位尺度の項目数が 3~5項目で構成されていることをふまえると,より 信頼性の高い尺度に向けて項目数を増やすことも今後 の課題であると考えられる。. 本研究においては, 「いじめ観」に着目したが, 「いじ. 大半の時間を過ごす学級に関わる要因や学習意欲,自. め行動」に着目したいじめ予防・防止アプローチは「い. 観」の要因についてさらに明らかすることができ,同. しかし, 「いじめ観」については価値観がともなってく. 尊感情などとの関連も検証することで, 「小学生いじめ 様に新たな「いじめ予防・防止アプローチ」を充実した ものとすることができるであろう。. 第2には,本研究結果においては,小学生児童のい. じめに対する考え方について焦点を当てたが,今後, 教師や保護者など教育現場に関わる様々な立場の人た. ちの「いじめ観」を捉えることにより, 「いじめ予防・ 防止」の視点からより効果的なプログラムを構築でき る可能性があると考えられる。. 一方検討課題としては, 「いじめ鋭敏感覚」の項目に. おいて, 「『いじめ』は世の中で一番いけないことであ. る。」のように,過剰表現とも捉えられる項目が含ま. れていることが挙げられる。 「世の中で一番いけない こと」という捉え方は,調査をする時点での社会的風 潮やマスメディアによる報道等の影響を受けているこ とが考えられる。また「世の中で一番いけない」という. 表現も, 「法的に許されないと捉えるもの」であるのか,. 「道徳的に許されないと捉えるもの」なのかについて曖. 昧な表現であると考えられる。もし「法的に許されな いと捉えるもの」と解釈してしまうと,いじめを刑法. 上の様々な犯罪と比較して考えてしまうことになり,. 項目に対する回答の仕方が変わってくる可能性もある。. じめ行動」をなくすという明確な目的が考えられる。 るので,人それぞれの捉え方は「多様」であると言える。 文部科学省(2013)が示すように「いじめは決して許さ. れない」という考え方に同意することは社会的風潮と してのぞましいと考えることができる。 「いじめ観」に 着目した場合,そのようないじめに対して,社会的風 潮等の観点からよりのぞましい考え方に変容すること を目的とした「いじめ予防・防止アプローチ」を確立す. ることが必要であると考えられる。今後は本研究の知 見をふまえ,新たな「いじめ予防・防止アプローチ」へ とつなげていくことが望まれる。 【引用文献】. Atlas, R. S., & Pepler, D. J.(1998) . Observations of bullying in the classroom. Journal of Educational Research, 92, 86-99.. 長谷川真理・堀内由樹子・鈴木佳苗・佐渡真紀子・坂元. 章(2009) .児童用多次元共感性尺度の信頼性・妥. 当性の検討 パーソナリティ研究, 17, 307-310.. 飯田順子・石隈利紀・山口豊一(2009).高校生の学校 生活スキルに関する研究 学校心理学研究, 9, 25-35.. 本項目の平均値が3.459,標準偏差は1.288であるこ. Kärnä, A. Voeten, M., Poskiparta, E., & Salmivalli,. する捉え方は様々であると推察される。しかし,文部. classroom contexts: Bystandersʼ behavior. とを考えると回答にはばらつきが見られ,本項目に対. 科学省(2013)が「いじめは決して許されない」として. いることやいじめ防止対策推進法が成立したことをふ. C.(2010). Vulnerable children in varying. moderate the effects of risk factors on victimization. Merrill-Palmer Quarterly,.

(10) 小学生いじめ観尺度の作成とその信頼性・妥当性の検討. 56, 261-282.. 笠井孝久(1998).小学生・中学生の「いじめ」認識 教育心理学研究, 46, 77-85.. 共同通信大阪社会部(2013).大津中2いじめ自殺(pp. 66-70) PHP新書. 中谷素之(1996).児童の社会的責任目標が学業達成 に影響を及ぼすプロセス 教育心理学研究, 44,. 389-399.. 文部科学省(2013).いじめの防止等のための基本的 な方針. 文部科学省(2014).児童生徒の問題行動等生徒指導 上の諸問題に関する調査. 森田洋司(1985).学級集団における「いじめ」の構造 ジュリスト, 836, 29-35.. 森田洋司(2010).いじめとは何か 中公新書. 元森絵里子(2005).現代日本における「子ども」の揺 らぎ ─ 中学生新聞投書欄から分析する子どもか. ら見た「子ども」─ 教育社会学研究, 76, 149-. 168.. 10. Salmivalli, C., Huttunen, A, & Lagerspetz, K. M.. (1997). Peer networks and bullying in schools. Scandinavian Journal of Psychology, 38, 305-312.. Salmivalli, C., Lagerspetz, K., Björkqvist, K.,. Österman, K., & Kaukiainen, A. (1996).. Bullying as a group process: Participant roles. and their relations to social status within the group. Aggressive Behavior, 22, 1-15.. Salmivalli, C., Voeten, M., & Poskiparta, E.(2011) . Bystanders matter: Associations between. reinforcing, defending, and the frequency of bullying behavior in classrooms. Journal of Clinical Child & Adolescent Psychology, 40, 668-676.. 関口雄一・濱口佳和(2015).小学生用関係性攻撃観 尺度の作成 教育心理学研究, 63, 295-308.. 庄司一子(1993).児童のSelf-controlの発達的検討 教育相談研究, 31, 47-58.. 尾木直樹(2013).いじめ問題をどう克服するか 岩. 鈴木康平(1990).いじめに対する態度と価値観 熊. 大西彩子・吉田俊和(2010).いじめの個人内生起メ. 谷口明子 (2010).中学生のいじめ認識 ─ いじめ経験. 波新書. カニズム ─ 集団規範の影響に着目して ─ 実. 験社会心理学研究, 49, 111-121.. 酒井亮爾(2010).小学校におけるいじめ(4) 愛知学 院大学心身科学研究所紀要 心身科学, 2, 95-103.. 本大学教育学部紀要 人文科学, 39, 285-302.. との関連から ─ 教育実践学研究, 15, 193-202.. 山田洋平・小泉令三・中山和彦・宮原紀子(2013).小 中学生用規範行動自己評定尺度の開発と規範行動 の発達的変化 教育心理学研究, 61, 387-397.. (2018.1.18受稿,2019.8.8受理).

(11)

Table 2 小学生いじめ観尺度において削除された項目 M SD 1. 「いじめ」は人間のひどい心のあらわれで,人間として なさけないおこないである。 4.50(  .83) 3

参照

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