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1.自発報告データベースとケース・コントロール研究

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.緒 言 日本薬剤疫学会の会誌「薬剤疫学」に最近掲載 された「個別症例安全性報告データベースを用い たケースコントロール研究」に関する論文1� が「読 者から」欄で取り上げられ2�,方法論上の問題を めぐっての質問と回答のやりとりの後に取り下げ られた3� .取り下げの理由は「読者から」欄にお ける質問内容とは直接には無関係のようだが,「薬 剤疫学」に掲載された論文が取り下げられるのは 異例のことである.本稿は編集部から「自発報告 データベース活用の可能性と留意点を薬剤疫学的 知見から解説してください」との依頼を受け,主 に自発報告データベースの reporting odds ratio (ROR)を用いる解析とケース・コントロール研 究との関係に焦点をあてて関連する問題を論述す る.

著者連絡先:〒 113-0034 東京都文京区湯島 1-2-13 御茶ノ水明神ビル 4 F NPO 日本医薬品安全性研究ユ ニット 久保田潔 TEL:03-5297-5860 FAX:03-5297-5890 E-mail:[email protected]

NPO 日本医薬品安全性研究ユニット

久保田 潔

.自発報告データベースとケース・コントロール研究

●企画/自発報告データベース活用の可能性と留意点

<抄録>自発報告データベースの reporting odds ratio(ROR)とケース・コントロール研 究との関係を解説する.

死亡登録データにおける proportional mortality studies で得られる proportional mortality ratio(PMR)はコホート研究のリスク比(risk ratio,RR)とみなすことはできないが,研 究対象の曝露と無関係と考えられる死亡を「コントロール」として得られる mortality odds ratio(MOR)は RR に等しくなることが期待され,死亡登録データから MOR を求め る研究はケース・コントロール研究とみなすことができる.

Rothman らは 2004 年,自発報告データベース研究でも同様に適切な�control events�を 見出すことにより,コホート研究の RR を,ROR として求める可能性に言及した.しかし, この提案にそって日本で実施された 20 の�control events�から得た ROR と,多数の「使 用成績調査」から求めた RR の比較では,RR と ROR の関係が大きくバラつくことが報告 された. 本稿の著者は,ケース・コントロール研究は「ケースを生み出したソース集団において実 施するコホート研究の相対リスクを求めようとする研究」でなければならず,自発報告デー タベースから ROR を求める研究をケース・コントロール研究とみなすことはできないと 結論する. 自発報告データベースの ROR など「不比例性の指標」は一義的にはシグナル検出のため の指標である.しかし,自発報告データはシグナル検出以外に,副作用の特徴づけ,因果 関係の判断などにも貢献しうる.また,シグナル検出の方法論自体も進化しつつあり,今 後のわが国の研究者の当該研究領域への貢献を期待したい. (薬剤疫学 2020;25(2):56-63) キーワード:副作用報告システム,データマイニング,ケース・コントロール研究,オッズ比

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.ケース・コントロール研究のオッズ比と コホート研究の相対リスク 適切に実施されたケース・コントロール研究の オッズ比はコホート研究の相対リスクと等しくな ることが知られているが,この関係を初めて明ら かにしたのはロジスティック回帰分析を提唱した ことで知られる Cornfield であったとされてい る4�.相対リスクは,リスク比,率比の総称であ る.コホート研究で比較される 2 群の観察開始時 の曝露がその後変化せず,観察期間が比較される 2 群で差がないなどの条件が満たされれば,コ ホート研究の結果を発生割合の比であるリスク比 で示すことができる.リスク比(risk ratio,RR) は,コホート研究が実施される集団内で曝露が あった者となかった者の人数をそれぞれ N1人と N0人,その集団で新たにアウトカムが発生した ケース(a 人)のうち,曝露があったケースとな かったケースの人数をそれぞれ a1人と a0人とす ると以下のように与えられる. RR=

r

a1 N1

r

a0 N0

以下に示すように,コホート研究で研究対象と なったアウトカムと曝露に関するケース・コント ロール研究を「適切に実施」すれば,ケース・コ ントロール研究のオッズ比はリスク比に等しくな る.また,十分明確に定義可能なソース集団の中 で実施されるネステッド・ケース・コントロール 研究で,リスクセット・マッチングまたは un-matched density sampling によりコントロールを 「適切に」選択すれば,ケース・コントロール研究 のオッズ比はコホート研究における発生率比に等 しくなる5� . 逆にケース・コントロール研究は,(コホート研 究に比べて)「たいていはかなり少ない費用と時 間で」6� コホート研究を実施すれば得られるはず のリスク比や率比をオッズ比として求める研究と 考えることができる.「適切に実施された」の中 身としてまず強調されるのは,「ケースを生み出 したソース集団からコントロールを選択する」点 である7a� .より厳密には「ソース集団からのコン トロールの選択では,ソース集団を代表するコン トロールを選択」しなければならない.この時, サンプリングに伴うエラーを無視すれば,コント ロール b 人のうち,曝露があった者となかった者 をそれぞれ b1人と b0人とすると,その比である曝 露オッズ(曝露「有」対「無」,b1/b0)とソース集 団における曝露オッズ(N1/N0)は等しくなる. す な わ ち,b1/b0=N1/N0の 関 係 が 満 た さ れ る. ソース集団におけるケースの曝露オッズは a1/a0 であり,ケースの曝露オッズをコントロールの曝 露オッズで割って求められる曝露オッズ比(ex-posure odds ratio,以下単に OR)は以下に示すと おり,リスク比に等しくなる. OR=

r

a1 a0

r

b1 b0

r

a1 a0

r

N1 N0

r

a1 N1

r

a0 N0

=RR 日本で実施され,研究に協力する複数の病院に入 院した患者からケースを特定するケース・コント ロール研究では,通常ソース集団を十分明確にで きない8�.このような場合,「ソース集団を代表す るコントロールを選択する」という条件を厳密に 満たすことは難しい.しかし,そのような場合に も最低限,曝露の有無がコントロールの選択に影 響することを避け,ケースを生み出したと考えら れるソース集団(�secondary base�7b� )を想定し て,b1/b0=N1/N0の関係が満たされると考えらえ るコントロールを選択することが必要である. .Proportional mortality studies と

ケース・コントロール研究

Modern Epidemiology 第三版には,死亡に関す る登録だけを用いて,特定の曝露と特定の死因と の関係を研究する proportional mortality studies に関する記述が見られる7c�

.ある集団において発 生したすべての死亡が十分正確に記録されてお り,その記録を生前の曝露(ここでは特に特定の 薬の使用)の情報とリンクすることが可能な死亡 登録を考えよう.Proportional mortality studies では,一定期間に登録される死亡者総数 D 人を 特定の曝露があった者となかった者,それぞれ D1人と D0人に区分し(D1+D0=D),そのうち特

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定のアウトカムで死亡した者 d 人を当該曝露の あった者となかった者,それぞれ d1人と d0人(d1 +d0=d)に区分する.特定の曝露があった D1人 に占める特定のアウトカムで死亡した d1人の割 合を,当該の曝露がなかった D0人に占める特定 のアウトカムで死亡した d0人の割合で割ったも

の が 以 下 に 示 す proportional mortality ratio (PMR)である. PMR=

r

d1 D1

r

d0 D0

PMR はコホート研究のリスク比に対応するが, PMR は d 人の死亡イベントが発生した(生存者 の)ソース集団において,特定の曝露と死亡アウ トカムとの関連を明らかにするコホート研究のリ スク比には通常一致しない.理由は,死亡の割合 は疾患や年齢により異なり,ある特定の期間に死 亡した D 人における曝露の分布は,その死亡を 生み出したソース集団における曝露の分布とは異 な る(D1/D0≠N1/N0)か ら で あ る.1981 年 に Miettinen らはこの問題を取り上げ,PMR ではな く,当該曝露と無関係と考えられる死因で死亡し た者 f 人をコントロールとして曝露オッズ比を求 めるべきであるとし,その曝露オッズ比を mor-tality odds ratio(MOR)と呼んだ9)

.当該曝露と 無関係と考えられる死因で死亡した者 f 人のうち 当該曝露があった者となかった者をそれぞれ f1人 と f0人( f1+f0=f)とすれば,その曝露オッズ( f1/ f0)は問題となる死亡(d 人)とコントロール( f 人)を生み出した(生存者の)ソース集団(N 人) の曝露オッズ(N1/N0)に等しいと考えることが できる( f1/f0=N1/N0).したがって MOR は,以 下に示すように曝露を生み出した集団において死 亡イベントをアウトカムとして実施するコホート 研究で得られるリスク比に等しくなることが期待 される. MOR=

r

d1 d0

r

f1 f0

r

d1 d0

r

N1 N0

r

d1 N1

r

d0 N0

=RR

Modern Epidemiology 第三版には,「MOR を用 いることにより,proportional mortality studies

がケース・コントロール研究として記述され,ま た,実施されることが多くなってきている」と記 載されている7c) . .自発報告の ROR とケース・コントロール研究 死亡登録データベースにおける proportional mortality studies と副作用の自発報告のデータ ベースを用いる解析には,発生割合を計算するの に必要な「分母」情報がなく,「分子」情報しかな いという共通点がある.MOR の計算において, 当該曝露と無関係と考えられる死因で死亡した者 f 人に関する情報は,本来「分子」情報だが,その 曝露オッズはソース集団(分母)における曝露オッ ズとみなすことができる.「同様の扱いが自発報 告 に 関 し て も 可 能」と の 発 想 か ら 2004 年 に Rothman らは自発報告において proportional re-porting ratio(PRR)で は な く rere-porting odds ratio(ROR)を用いるべきであると主張する論文 を発表した10).Proportional mortality studies に

おける PMR は自発報告データの解析における PRR に,MOR は ROR に対応する.Modern Ep-idemiology 第三版にも自発報告の解析において PRR よりも ROR が有用であるとの記述がみられ る7c).Rothman らは,MOR を用いる

propor-tional mortality studies と同様,ソース集団にお ける曝露の分布と同一の�control events�を見出 して ROR を求めれば,その研究はケース・コン トロール研究とみなせる(�The ROR should be estimated using the same principles as the MOR, viewing the database as a case-control study.�10)

) と主張している.ただし,自発報告データベース では,「実際に発生したアウトカムの一部しか含 まれない」という proportional mortality studies では通常発生しない問題が存在し,Rothman ら の当該論文の Appendix では,ROR を用いた自 発報告データベースにおける研究をケース・コン トロール研究とみなすためには,特定の薬におけ る特定のイベント(例:肝不全)の報告割合が, その薬のそれ以外のイベントの報告割合と同一で あることが必要であるとしている. 2004 年の Rothman らの論文は直接的には,

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PRR を提唱した(より正確には,それまで英国の 自発報告システムの Yellow Card System におい て経験的に使われてきた方法を論文として発表し た)Evans ら11�に向けられている.Rothman らの 論文を受けて,Evans らは Rothman らの主張は 混乱しており,そもそも ROR も PRR もシグナル 検出のための指標にすぎないこと,稀なイベント ではオッズ比とリスク比はほぼ一致するが,ROR と PRR も通常,数値的にはほぼ一致すること, ROR も PRR も�broad indication of the strength of that signal�とみなすべきこと,どのようなイ ベントを�control events�として選択すべきかは 重要な問題だが,その問題は ROR と PRR のいず れがより適切か,という問題とは無関係である, と反論した12� .日本のデータを使った研究 Rothman らと Evans らの論争を受けて,日本 のデータを使った研究が実施された13�.Rothman らの論文10�の Appendix では,自発報告から ROR を求める研究をケース・コントロール研究とみな す条件として,「特定の薬における特定のイベン ト(例:肝不全)の報告割合が,その薬における それ以外のイベントの報告割合と同一である」を 挙げている.しかし,自発報告では同一の薬使用 後に副作用が疑われる複数種類のイベントが発生 した場合,異なる種類のイベントの報告割合は異 なると考える方が自然であろう.むしろ多数のイ ベントから「報告割合が薬によらず一定」かつ「ほ とんどの薬と無関係」のイベントを見出して,適 切な�control events�とする方が現実的と考えら れる.ほとんどの薬と無関係で,「報告割合が薬 によらず一定」である�control events�が見出せ るのなら,検討対象の�case events�の曝露オッ ズ を�control events�の 曝 露 オ ッ ズ で 割 っ た ROR は原理的にはソース集団でコホート研究を 実施した時のリスク比と等しくなることが期待さ れる. 本来,自発報告は,使用した薬との何らかの関 連が疑われたアウトカムが報告されるものであ り,その中から曝露と無関係のイベントを見出す ことは容易ではない.しかし,一般に薬の副作用 として発生することがあると考えられているイベ ント(例:発疹,肝機能異常)は,実際には薬と 無関係であっても薬の副作用であることが疑わ れ,報告される機会が多いと考えられる.そのよ うなイベントで,かつ発生率が薬によらずほぼ一 定で,かつ発生率が比較的高く,報告割合が薬に よらず一定であるようなイベントを適切な�con-trol events�とみなすことができる.当該研究で は,全般的に自発報告される頻度が高く,また, 日本で画一的な方法で長年にわたり実施された数 百に上る「使用成績調査」における発生割合が比 較的一定しており,かつ多くの薬で自発報告にお ける PRR が 1 から大きく離れていないという複 数の条件を満たす�control events�の候補を探し, 最終的に,発疹,肝機能異常,食欲不振,嘔吐, 吐き気などの 20 の�control events�を選択し た13� .自発報告のデータから,評価対象の特定の 薬(曝露)-イベントのうち,特定のイベントにお ける曝露オッズ(評価対象の薬の使用「有」対「無」 の比)と 20 の�control events�における当該の 薬の使用に関する曝露オッズから求めた曝露オッ ズ比として ROR を算出した.また,特定のイベ ントにおける曝露オッズと,20 の適切な�con-trol events�を除外したイベント(すなわち, �control events�としては「適切とはいえない」 イベント)の曝露オッズを用いた ROR も算出し た.さらに,これらの ROR を「使用成績調査」か ら求めた RR と比較した.結果は図 1の(a)(b) に 示 す と お り で あ る.ROR を 20 の�control events�から求めたのが(a)であり,それ以外の 「適切とはいえない」イベントから求めたのが(b) である.いずれの ROR に関しても ROR 対 RR に正の相関はあるものの,個別の薬-副作用の ROR と RR の乖離は時に甚だしく,たとえば ROR=1 でも RR は 0.01 から 1000 の範囲に分布 していた.実際に発生した副作用のうち,報告さ れるのは一部にすぎず,報告割合は様々な影響を 受けることが知られているが,そのために起こる 報告割合のバラつきと,薬の適応となる疾患に よって�control events�の発生率が大きく異なる

(5)

ことなどが主たる理由で ROR 対 RR のプロット の大きなバラつきを結果したと考えられる.「す べてのケースが把握されている」「コントロール における曝露の分布がソース集団における曝露の 分布に等しい」などの「適切に実施」されるケー ス・コントロール研究の条件が満たされていない ことを強く示唆する結果であった.一般に ROR や PRR の大きさの違いをリスク比の大きさの違 いと混同してはならないこと,ROR や PRR が大 きいことが,薬とイベントとの間に因果関係があ る可能性がより高いことを示すわけではないこと が強調されるが,図 1に示す ROR 対 RR のプロッ トの大きなバラつきからもその点は納得できよ う.ただし図 1の(a)と(b)を比較すると(a) の 20 の適切な�control events�を用いて ROR を 計算した時の ROR と RR の相関 0.280 は(b)の それ以外のイベントを使って ROR を計算した時 の 0.217 より 1 に近く,(a)では ROR が 5 から

10 前後以上なら概ね RR も 1 を超えるように見 受けられる.したがって適切な�control events� を用いれば ROR を因果関係に関する�broad in-dication�とみなすことは許されるのかもしれない. 以下に,同様の考えに基づいて PRR の大きさ 自体の違いを�evidence score�の算出に利用し た例を紹介する. .自発報告における impact analysis と PRR 英 国 で 長 年,医 薬 品 安 全 性 監 視 に 携 わ っ た Waller らは,見出されたシグナルのうち,さらに 検討を要する薬-副作用の優先順位付けのための �impact analysis�に PRR の大きさ自体を利用す ることを提案している14) .Waller らの�impact analysis�では�evidence score�と�public health score�の 2 つのスコアが計算される.このうち �evidence score�は「PRR の大きさ」「エビデン スの強さ」「生物学的な尤もらしさ(biological plausibility)」の 3 要素から計算される.「PRR の 大きさ」については([PRR]+[PRR の 95%信頼 区間の下限])/2 を計算し,それが>20,>15-20, >10-15,>5-10,C5 のいずれになるかで異なる スコアを与える(([PRR]+[PRR の 95%信頼区 間の下限])/2 は,95%信頼区間が狭い場合には, PRR の点推定値とほぼ同一になるが,95%信頼区 間が広い場合には,PRR の推定値よりも低い値に なり,95%信頼区間の下限が 0 に近ければ点推定 値の約半分になる).さらに�evidence score�の それ以外の要素である「エビデンスの強さ」と「生 物学的な尤もらしさ」にもスコアを与え,これら 3 つ を 総 合 し て 最 終 的 に�evidence score�を �strong�と�weak�に二分する.さらに,1 年間 に報告される該当の薬-イベントに関する自発報 告の数や死亡に至る可能性があるか,などから算 出する�public health score�(最終的に major と minor に 2 分)の結果から作られる 2×2 テーブ ルでシグナルを 4 種類に分けてその後とるべき対 応を区別する14)

.自発報告とシグナル検出

Waller の�An introduction to

pharmacovigi-(a)

ρ=0.280 101 102 ROR 104 103 10-2 10-3 RR104 103 10-2

(b)

ρ=0.217 ROR 104 103 10-2 10-3 RR104 103 図 1 自発報告から求めた ROR と使用成績調査の RR の対比

(a) 適切な�control events�で ROR を求めた場合 (b)�control events�以外のイベントで ROR を求めた

場合

(6)

lance�第一版(邦訳「医薬品安全性監視入門: ファーマコビジランスの基本原理」)の Fore-word(序文)において,2012 年から 6 年間,欧州 医薬品庁(European Medical Agency,EMA)の Pharmacovigilance and Risk Assessment Com-mittee(PRAC)の Chair を務めた Dr. June Raine は,「自発報告=シグナル検出の手段」という �stereotyped�な旧来の見解に反対して,「単一の 副作用(ADR)症例の報告などのより不確かな形 態の情報から始めて,エビデンスの序列を上に向 かっていくというような議論は,もはや正しいと は言えず,複数の種類のエビデンスを組み合わせ るなどの総合的な手法を論ずることが必要になり つつある」と記述している15� .2007 年のロシグリ タゾンと心筋梗塞の関連に関する「シグナル」は 42 の臨床試験のメタアナリシスから得られたも のであることを思い起こせば16� ,「自発報告=シ グナル検出の手段」「臨床試験=シグナルのテス ト」というような�stereotyped�の見解には問題 があることは納得できよう.同様に,Modern Epidemiology 第三版で Rothman は「仮説生成の 研究と解析的研究との区別は概念的に正確といえ ない.仮説を生成するのは研究者であり,研究そ のものではなく,いかなるタイプのデータも仮説 検証に使うことが可能である」と述べている7d� . 「いかなるタイプのデータ」には自発報告された 複数の症例報告(ケースシリーズ)も含まれる. 正確かつ詳細に記載された症例報告(自発報告) は副作用を特徴づけるうえで重要であり,適切な タイプ分けが対処の方法(management)に直結 することがあり17�,曝露から副作用の発現までに 要する時間間隔に関する情報が臨床試験を計画す るうえでも役立つこともあり18� ,そもそもの薬と アウトカムとの因果関係の有無の判断に寄与する こともある.このうち因果関係の有無の判断に寄 与するのは,症例報告に記載された曝露開始とア ウトカム出現の時間的前後関係が合理的か,�de-challenge�(中止後の軽快)や�rechallenge�(再 投与後の再発)に関する情報があるか,当該の薬 以外の併用薬や合併症などの他の要因が考えられ ない複数の報告が存在するかなどの情報である. したがって,自発報告の役割は ROR や PRR など を算出し,シグナル検出することだけにとどまる わけではない. シグナル検出法において ROR や PRR は�dis-proportionality measure�(不比例性の指標)とし て知られている(「均衡」の語が使われることもあ るが,「均衡がとれている」は大きさが同等である ことを意味し,割合が同一かを問題にする�dis-proportionality�の訳語としては適切とは考えら れない).不比例性の指標は EMA や FDA のシ グナル検出に関するガイドライン・論文などで, 現在も重要な役割を果たすものとして言及されて いる19�,20� .近年,シグナル検出に不比例性の指標 とともに自発報告の他の要素を利用しようとする 試みが見られる.たとえば WHO Uppsala Moni-toring Centre(UMC)の�vigiRank�は不比例性 の指標のほかに informative reports(必要な要素 がそろっている報告)の数,報告された地域の数 などの複数の要素から算出されるもので,不比例 性の指標だけの場合よりも真の副作用をよりよく 予測できるとされている21� .オランダの薬剤監視 センター Lareb でも同様に ROR のほかに,報告 数,医療専門家からの報告数の割合など 5 つの変 数から作られたモデルが用いられており,ROR だけを用いた場合よりも真の副作用をよりよく予 測できることが報告されている22� .米国 FDA で は,不比例性の指標に加えて,テキストマイニン グや機械学習の方法をとりいれた新しい方法を開 発しようとしている20� . .結 語 ROR はケース・コントロール研究の中心概念 のオッズ比を用いてはいるが,図 1に示すように, 個別の副作用と薬について計算される ROR は ケースを生み出したソース集団で実施されるコ ホート研究で得られることが期待される相対リス クとは通常一致せず,自発報告データから ROR を求める研究をケース・コントロール研究とみな すことはできない.ROR をはじめとする不比例 性の指標は,適切な「コントロールイベント」を 慎重に選べば因果関係に関する�broad

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indica-tion�とみなすことは可能かもしれないが(図 1(a) 参照),一義的にはシグナル検出のための指標で ある.EMA や米国 FDA では不比例性の指標を その他の情報と組み合わせて,真の副作用をより よく予測できる新しい指標を見出す試みが行われ て い る.ま た,シ グ ナ ル 検 出 は シ グ ナ ル 管 理 (signal management)の初期の一段階にすぎず23) , 検出されたシグナルからさらに詳細に検討すべき シグナルを選び出し,何らかの行政アクションま たは薬剤疫学的調査の実施などの後期の段階での 判断につなげる一連の過程の一部としてとらえる ことも重要であろう.しかし,シグナル検出法自 体の改良も重要であり,日本におけるシグナル検 出法の研究が,海外の動向も注視しながら,今後 さらに発展していくことを期待したい. 文 献 1) 小林哲,柴田寛子,石井明子.Infliximab による「注 入に伴う反応」と併用薬との関連性:個別症例安全 性報告データベースを用いたケースコントロール研 究.薬剤疫学2019;24:43-52.DOI:https://doi. org/10.3820/jjpe.24.e1. 2) 竹綱正典,小林哲.読者から Infliximab による「注 入に伴う反応」と併用薬との関連性:個別症例安全 性報告データベースを用いたケースコントロール研 究 に つ い て.薬 剤 疫 学2020;25:39-40.DOI: https://doi.org/10.3820/jjpe.25.39 3) 薬剤疫学会誌編集委員会.掲載論文取り下げのお知 らせ.薬剤疫学2020 25:3E.DOI:https://doi. org/10.3820/jjpe.25.3E.

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In the current review, the relationship between the reporting odds ratio(ROR)and the case-control study is addressed.

The proportional mortality ratio(PMR)obtained in the proportional mortality studies in the death registry cannot be regarded as the risk ratio(RR)in the cohort study, but, the mortality odds ratio(MOR) estimated by using deaths unrelated to the exposure as�controls�can be regarded as the RR.

In 2004, Rothman et al proposed to estimate the ROR which can be regarded as the RR by using proper �control events�in the spontaneous reports database. However, in the study conducted in Japan where the RORs estimated from 20�control events�were compared with the RRs obtained from many�drug use investigations�,the ROR vs RR plots were so diverse.

The author of the current review concludes that the study estimating the ROR in the spontaneous reports cannot be regarded as the case-control study as the case-control study should estimate the RR of the cohort study in the source population as the odds ratio(OR).

The�disproportionality measures�like the ROR in the spontaneous reports database should be used primarily to detect the signals of the association between a drug and an adverse outcome. However, spontaneous reports can contribute to the characterization of the adverse drug reactions and to determining the causal relationship as well. The methods of signal detection are evolving and it is hoped that Japanese researchers contribute to their further developments.

(Jpn J Pharmacoepidemiol 2020; 25(2): 56-63)

NPO Drug Safety Research Unit Japan Kiyoshi KUBOTA

●Special Issue on�Possibility and Point to Consider of Utilizing Spontaneous Report Database�

.Spontaneous Report Database and Case-control Studies

〈Abstract〉

参照

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