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大学生の次世代育成意識とその関連要因

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日本橋学館大学紀要 第 14 号(2015) 原著論文

1.はじめに

次世代を担う子どもを養育する資質や準備性 に つ い て 、 心 理 学 領 域 に お い て は 「 世 代 性 」 (Erikson, 1950; Erikson & Erikson, 1997)、 「次世代育成力」(原・舘,1991;菱沼・落合・ 池田・高木,2009)、「養護性」(小嶋,1989;楜 澤,2012)、「親準備性」(岡本・古賀,2004)、「親 性準備性」(伊藤,2003)といった概念が用いら れてきた。 「世代性」(generativity)は、Erikson の心理 社会的発達理論における中年期の発達課題とさ れ、「次世代を確立させて導くことへの関心」 (Erikson, 1950)と定義された。この概念は、元々 は一義的に親による子育てと関連付けられ「生殖 性」と訳されていたが、「子孫を生み出すこと (procreativity)、生産性(productivity)、創造 性(creativity)を包含するものであり、(自分自 身の)更なる同一性の開発に関わる一種の自己- 生殖(self-generation)も含めて、新しい存在や 新しい製作物 や新しい概念を生み出す こと」 (Erikson & Erikson, 1997)と包括的に再定義さ れている。 この「世代性」を理論的背景とし、次世代の子 ども達を育てることに対して持つ、自己に関する 肯定的評価に注目した概念が「次世代育成力」(菱 沼ら, 2009)である。この概念は原・舘(1991) によって「性別にとらわれず、次の世代を育てる 2014 年 10 月 6 日受理

Factors related to the attitude towards nurturing the next generation in university students

*1 Taeko TERAMOTO *2 Yoshiyuki SHIBAHARA 日本橋学館大学リベラルアーツ学部

大学生の次世代育成意識とその関連要因

寺本 妙子

∗1

柴原 宜幸

∗2 大学生 418 名を対象に、次世代育成意識(養護性、次世代育成力)と家族要因(きょうだい地位、 親への信頼感)、および、性別の関連について検討した。性別、年下きょうだいの有無、および、 クラスタ分析によって抽出された親への信頼感パターンを独立変数、養護性尺度得点(4 領域)と 次世代育成力尺度得点(4 領域)を従属変数とする 3 要因分散分析の結果、次の点が明らかになっ た。女子、および、年下きょうだいがいる男子の場合、次世代育成意識が高くなる領域が確認さ れた。この結果から、女子に対する社会・文化的な性役割の期待や女子のライフサイクルの影響、 および、男子における日常的な養育体験の効果が示唆された。親への信頼感の高さは次世代育成 意識全般における高さと関連し、親との関係性が次世代育成意識に全般的に影響を与えているこ とが示唆された。しかし、女子においては、親への信頼感が低い場合であっても、男子より高い 次世代育成意識を示す特異なパターンが認められ、女子の有するレジリエンスが示唆された。 ……… キーワード ……… 次世代育成力 養護性 大学生 家族要因 性別

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能力」として提唱されたが、菱沼ら(2009)は「次 世代の子どもたちを育てることへの自信」と定義 して、青年期の者を対象とした測定尺度の開発を 試みている。

一方、「養護性」(nurturance)は、Fogel, Melson, & Mistry(1986)により理論化された nurturance に由来し、「相手の健全な発達を促進 するために用いられる共感性と技能」と定義され ている(Fogel & Melson,1989; 楜澤,2012)。 養護性には、生涯を通して発達する、様々な対象 に対して行いうる、相手を慈しみ育てるという3 つの特徴がある(楜澤, 2012)。第一の特徴は、 成人期になって突発的に顕在化するのではなく、 幼児期から徐々に発達する点にある。第二に、養 護性の対象として子どもに限定されず、障がいを 持つ老人、一時的に有能性を失っている状態にあ る人、怪我や疾病を負っている人、更には、動植 物等も含まれる点にある。第三に、慈愛の精神が 重視されており、この性質は他者の利益を尊重す る向社会性とは異なるものとされる。幼い子ども (友達、きょうだい)や動植物にも発揮され得る 養護性の本質は、相手の成長・発達を促す資質で あり、幼少期から発現し、後には我が子に対して 転移すると捉えられている(Fogel, Melson, & Mistry,1986 ; 蘆田,2010)。 また、「親準備性」(岡本・古賀,2004)には、 親が子どもを養育する役割(養育役割)と家族経 営の視点が包含され、「子どもが将来、家庭を築 き経営していくために必要な、子どもの養育、家 族の結合、家事労働、介護を含む親としての資質、 およびそれが備わった状態」と定義されている。 そして、「親性準備性」(伊藤,2003)は、将来の 親役割の遂行に限定しない生涯発達的視点から、 「子育てを支援する社会の一員としての役割を 果 た す た め の 資 質 」 と 定 義 さ れ る 。 このように、視点の異なる様々な概念が提唱 されているが、いずれも次世代を育む営みであり、 次世代への関心と貢献、相手への慈しみという人 間のポジティブな側面が反映している。本研究で は、これらの概念を包括的に捉え、次世代を育む ことに対する関心・態度を「次世代育成意識」と 定義した。そして、近い将来において子どもの養 育者になる予備軍とも捉えられる大学生の次世 代育成意識に注目した。大学生という時期は、職 業選択をはじめ、結婚や子どもの養育等の私生活 をも含んだ将来展望の模索を現実的な課題とし て意識する時期でもある。「仕事と生活の調和(ワ ーク・ライフ・バランス)」が求められる昨今に おいて、彼らの次世代育成意識の様相を明らかに することは、このような課題への取り組みの理解 と支援に資する知見を提供すると期待できる。 大学生の次世代育成意識に関する先行研究で は、次のような関連要因が報告されている。楜澤 (2012)は、養護性を測定する心理尺度(養護性 尺度)を用いて、性別ときょうだい地位(出生順 位)との関連について検討した。全般的に女子の 方が男子より高い養護性を示す傾向が見られ、き ょうだい地位に関しては、養護性尺度の下位尺度 である「幼い子どもに対する技能の認知」におい て、女性の長子が他より高い傾向が認められた。 また、菱沼・落合・池田・高木(2010)は、次世 代育成力を測定する尺度(次世代育成力尺度)を 用いて、自身の親との関係性の良好さと次世代育 成力の高さの関連を見出した。親準備性における、 性別や親との関係性との関連は、岡本・古賀(2004) でも指摘されていた。このように、きょうだい地 位や親との関係性といった家族要因や性別は、次 世代育成意識に影響を与える要因と考えられて いる。 しかし、これらの関連要因の検討には異なる 心理尺度が用いられており、各々の尺度が網羅す る範囲には相違点が認められる。例えば、養護性 尺度(楜澤,2012;楜澤・福本・岩立, 2009)で は、「幼い子どもに対する共感性」、「幼い子ども に対する技能の認知」、「親への準備性」、「子ども の非受容性」が下位概念として尺度化(下位尺度 化)されている。一方、次世代育成力尺度(菱沼 ら,2009)では、「誕生を肯定することができる

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という自信」、「自己成長できるという自信」、「伝 えるものをもっているという自信」、「地域社会の 力を借りることができるという自信」が下位尺度 化されている。養護性尺度には子どもへの肯定感 や子どもに関する自身の有能感が反映され、次世 代育成力尺度には新しい生命を育むことへの肯 定感や地域社会との連携といったコミュニティ 感覚も包含されている。上記の先行研究の報告は、 いずれかの尺度に頼ったものであり、次世代育成 意識を包括的に網羅した調査報告ではなかった。 そこで、本研究では、両方の尺度を用いて次世代 育成意識を包括的に調査することを試みた。本研 究の目的は、大学生の次世代育成意識と家族要因 (きょうだい地位、親との関係性)および性別の 関連について明らかにすることである。このよう な試みは、「仕事と生活の調和」を意識する将来 展望の模索、特に、「生活」の領域に関する模索 の理解と支援に資すると期待できる。

2.方法

対象: 関東および近郊の国立大学1 校と私立 大学4 校の 1~4 年生を調査対象とし、尺度項目 における欠損値のない418 名(男子 220 名、女 子196 名、不明 2 名、平均年齢 19.47(±1.38) 歳)のデータを分析対象とした。学生の専攻・専 門性における偏りを極力排除するため、多様な領 域を網羅するよう試みた(医学、看護・保健学、 生命科学、理学、工学、社会学、経営学、経済学、 商学、法律学、政治学、国際関係学、心理学、教 育学、文学、外国語学、コミュニケーション学)。 調査期間: 2013 年 6 月〜10 月に無記名式の 質問紙調査を実施した。 調査用紙: フェイスシートで年齢、学年、性 別、家族構成について質問した。次世代育成意識 の指標として、養護性尺度得点と次世代育成力尺 度得点を用いた。養護性尺度は6 段階評定の 25 項目から構成され、「幼い子どもに対する共感性」 (9 項目)、「幼い子どもに対する技能の認知」(7 項目)、「親への準備性」(4 項目)、「子どもの非 受容性」(5 項目)の 4 下位尺度から成る(以下、 順に、「共感性」、「技能」、「準備性」とし、尺度 項目の平均値を尺度得点として使用した。「非受 容性」は得点を逆転化して「受容性」とした)。 次世代育成力尺度は、5 段階評定の 20 項目から 成り、「誕生を肯定することができるという自信」、 「自己成長できるという自信」、「伝えるものをも っているという自信」、「地域社会の力を借りるこ とができるという自信」(各5 項目)の 4 下位尺 度から構成される(以下、「誕生肯定」、「自己成 長」、「継承」、「地域力」とし、尺度項目の平均値 を尺度得点とした)。親との関係性についての指 標として、母親への信頼感尺度(酒井, 2005) を使用した。この尺度は7 段階評定の 14 項目か ら成り、信頼している感(7 項目)と信頼されて いる感(7 項目)について得点化される(尺度得 点は尺度項目の合計値を使用した)。父親につい ても同様の質問を実施した。これらの尺度はいず れも、高得点ほど各概念の程度の高さを示すもの であった。 分析方法: 母親と父親への信頼感尺度得点の z 得点を用いてクラスタ分析 (Ward 法)を行い (注1)、信頼感パターンを抽出した。信頼感パター ン、性別、きょうだい地位(年下きょうだいの有 無)を独立変数、養護性尺度と次世代育成力尺度 の下位尺度得点を従属変数とする 3 要因分散分 析を試みた(分析には、IBM SPSS Statistics 22 を使用)。 倫理的配慮: 事前に本研究の内容について文 書で説明し、協力の承諾が得られた者に上記の質 問紙への記入を依頼した。質問紙への回答と提出 をもって本研究への協力の同意とみなした。本研 究に関しては、著者の所属機関の研究倫理委員会 の承認を得た。

. 結果

3.1 各尺度得点について 養護性尺度、次世代育成力尺度、親への信頼

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感尺度の各下位尺度得点間の相関関係について、 「父親への被信頼感」と「受容性」(r=.09,p=.07) で正の有意傾向が認められたが、その他の組み 合わせは全て有意であった(r=.12〜.83,p<.05, p<.01, p<.001)。各尺度の信頼性係数(α係数) と性別平均得点(SD)を表1 に示した。いずれ の尺度においてもα係数は.80 以上と十分に高 く、内的一貫性が確保されていた。各尺度得点 の性差について検討(t検定)した結果、有意 差は「母親への被信頼感」(p<.05)、「母親への 信頼感」(p<.001)、「共感性」(p<.001)、「準備 性」(p<.05)、「誕生肯定」(p<.001)、「自己成 長」(p<.001)において見られた。いずれも、 女子が有意に高得点であった。 3.2 年下きょうだいの有無と信頼感パターン 年下きょうだいを有する対象者は235 名(全 体の56.49%)であり、男女別の集計結果(クロ ス表)を表2 に示した。χ2検定において有意性 は認められず(χ2(1)=2.69, n.s.)、各セルの人数 に偏りはなかった。 母親および父親への信頼感尺度得点のz得点を 用いてクラスタ分析をおこなった結果、解釈可能 な4 つのクラスタが得られた(図 1)。各クラスタ を独立変数、親への信頼感尺度の各得点を従属変 数とする一元配置分散分析の結果を表3 に示した。 すべての信頼感尺度得点で有意性が確認され、多 重比較(Tukey 法)の結果、クラスタ 1 から 4 の 順に得点が低下する傾向が認められた。更に、図 1 における第 3 クラスタと第 4 クラスタは、父被 信頼感・信頼感得点の高低によって特徴付けられ ていた。そこで、第1 クラスタ(n=162、男子 68 名、女子93 名、不明 1 名)を高信頼群、第 2 ク ラスタ(n=91、男子 53 名、女子 38 名)を中信 頼群、第3 クラスタ(n=130、男子 80 名、女子 50 名)を低信頼群、第 4 クラスタ(n=35、男子 19 名、女子 15 名、不明 1 名)を父低信頼群と命 名した。各クラスタを親への信頼感パターンとし た。

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3.3 3 要因分散分析結果 性別、年下きょうだいの有無、信頼感パターン を独立変数とする3 要因分散分析の結果を表 4 に 示した。2 次の交互作用は認められなかったが、 1 次の交互作用(性別×年下きょうだいの有無) は「誕生肯定」(F(1,400)=8.42, p<.01),「継承」 (F(1,400)=7.95, p<.01)、「地域力」(F(1,400)=4.74, p<.05)で見られた。単純主効果の検定の結果を 図2 に示した。男子では、年下きょうだい有群が 有意に高い値を示した。「誕生肯定」と「継承」 では、年下きょうだい無群で女子が有意に高得点 であった。また、性別と信頼感パターンに関する 1 次の交互作用は「準備性」(F(3,400)=3.27, p<.05) と「誕生肯定」(F(3,400)=3.18, p<.05)において認 められた(表 4)。単純主効果の検定の結果、お よ び 、 信 頼 感 パ タ ー ン に 関 す る 多 重 比 較

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(Bonferroni の調整)の結果を図 3 に示した。 男子の「準備性」では高信頼群と中信頼群が、低 信頼群や父低信頼群よりも有意に高得点であっ た(p<.05)。なお、高信頼群と中信頼群の間、お よび、低信頼群と父低信頼群の間には有意差は見 られなかった。男子の「誕生肯定」においても概 ね同様の傾向が見られたが、中信頼群と父低信頼 群の間には有意差は認められなかった。女子はど ちらも高信頼群が全ての群より有意に高い傾向 を示した(p<.05)。男女差は、「準備性」の低信 頼群、および、「誕生肯定」の高信頼群、低信頼 群、父低信頼群において認められ、いずれも女子 が有意に高得点であった。性別の主効果は「共感 性」、「誕生肯定」、「自己成長」において見られ、 女子が有意に高得点であった(表 4)。年下きょ うだいの有無の主効果は「共感性」と「技能」に おいて認められ、有群が有意に高かった(表4)。 また、信頼感パターンの主効果は全ての下位尺度 において見られ、高信頼群や中信頼群が他の群よ り高い傾向が見られた(表4)。

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. 考察

本研究の目的は、大学生の次世代育成意識と家 族要因、および、性別の関連を明らかにすること であった。次世代育成意識の指標として養護性尺 度と次世代育成力尺度を用い、家族要因として年 下きょうだいの有無と親への信頼感パターンを 扱った。各下位尺度得点間で有意および有意傾向 の正の相関関係が認められ、本研究で扱う変数間 の関連性が示された。複数の変数(要因)間の関 連性は、3 要因分散分析によって明らかにされた。 よって、この詳細について考察を試みた。 4.1 次世代育成意識と性別の関連性 「共感性」、「準備性」、「誕生肯定」、「自己成長」 において女子の有意な高得点が認められたが(表 1)、他の要因を投入した 3 要因分散分析の結果か らは、上記4 領域のうち「準備性」を除く 3 領域 において性別の主効果(女子の高得点)が認めら れた(表4)。「共感性」は子どもに対する共感や 関心に関連し(項目例:幼い子どもが泣いている と何とかしてあげたいと思う)、「誕生肯定」は 子どもの誕生に対する肯定的な態度に関する(項 目例:私は、子どもの誕生を考えただけで幸せな 気分になる)。また、「自己成長」は子どもの養 育過程における自身の成長への期待や養育に意 義を見出す態度が関連する(項目例:私は、子ど もとの関係を作ることを通して人間的に成長す るだろう)。このような領域で女子が高得点を示 した本研究の結果は、先行研究(楜澤,2012)で の報告と合致するものであった。女子の高得点の 要因のひとつに社会的な性役割の影響が考えら れた。すなわち、日本社会に存在する「母性神話」 (大日向,1991)と称される出産や子育ての責任 や役割が女性に過度に期待される風潮が、女子大 学生の次世代育成意識(特に、子どもへの共感・ 関心、新しい生命を生み出すことへの肯定的態度、 子育てにおける自身の成長期待という領域)を高 めていると推測された。また、青年期にある女子 大学生は、自身のライフサイクルにおける出産や 子育てを近い将来の出来事として現実的に捉え ている可能性も考えられ、この点もこれらの領域 に関する次世代育成意識を活性化させる要因と して考えられた。 しかしながら、それ以外の領域では有意な性差 が認められないという注目すべき結果が得られ た。この結果は、男子大学生においても女子と同 程度の次世代育成意識を有していることを示唆 していた。「仕事と生活の調和」を推進すべく流 布している「イクメン」と称されるような、育児 に対する積極的態度を有する男性が高く評価さ れる昨今の風潮が影響を及ぼしている可能性が

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考えられた。社会の風潮が男女双方の次世代育成 意識に作用していることが示唆された。 4.2 次世代育成意識と家族要因(年下きょうだ いの有無)の関連性 年下きょうだいを有する群は、日常的に年少の 子どもの世話をした経験を有する群と捉えられ た。この群が有意に高得点を示す傾向は、「共感 性」と「技能」で認められた(表 4)。「共感性」 は上記のとおり、子どもへの共感・関心に関連し、 「技能」は子どもに対するスキルの自信に関する (項目例:幼い子どもがぐずっている時、うまく なだめることができる)。年下きょうだいとの年 齢差によって、世話の内容や程度は異なるであろ うが、自分よりも幼い子どもへの対応や配慮を日 常的に体験したという点に着目すれば、このよう な経験を有することで、子どもへの共感・関心や 子どもに対する技能の自信が促進されると考え られた。また、年下きょうだいの世話をすること への周囲の期待と、それに対する責任感等の役割 意識もこれらの傾向に関与している可能性が考 えられた。 性別との交互作用は「誕生肯定」、「継承」、 「地域力」で見られた(表4)。「誕生肯定」は 上記のとおり、子どもの誕生に対する肯定的な態 度に関連する。「継承」は、上の世代から受け継 ぎ次の世代に伝えるべき大切な事物への認識に 関連し(項目例:私は、子どもに愛情を伝える方 法を上の世代から教わった)、「地域力」は自身 の生活圏(コミュニティ)を子どものために改善 することへの関心や、子育てにおけるコミュニテ ィでの助け合いに対する積極的な態度に関連す る(項目例:私は、子どもが病気になったとき、 近所の人に助けを求めるだろう)。図2 に示され たとおり、女子においては年下きょうだいの有無 は得点に影響を与えていないが、男子では顕著な 影響を与えていた。すなわち、年少の子どもの世 話の経験や、先に述べたような、これに付随する 責任感等の役割意識は、男子の次世代育成意識の うち、誕生への肯定的態度、継承の意識、コミュ ニティ感覚という領域を活性化すると考えられ、 男子における養育体験の効果が示唆された。 4.3 次世代育成意識と家族要因(親への信頼感) の関連性 親への信頼感パターンの主効果は全ての下位 尺度において認められ(表 4)、高い信頼感と高 い次世代育成意識との関連を示していた。他の要 因とは異なり、この要因では「受容性」について も、その有意性が確認された。「受容性」は子ど もに対する肯定的感情が関連する。元の尺度では 「非受容性」(子どもに対する否定的感情が関連 し、「小さい子どもを見ても別にかわいいと感じ ない」といった項目を含む)として扱われるが、 本研究では項目得点を反転させて「受容性」とし て処理した。本研究で扱った他の要因と異なり、 親への信頼感パターンは、次世代育成意識の全て の領域に影響を及ぼしていた。この傾向は、あら ゆる領域において、親への信頼感の低さが次世代 育成意識の低さと関連することを示しており、親 子の関係性における正と負の世代間連鎖を示唆 するものであった。 性別との交互作用は「準備性」と「誕生肯定」 で見られた(表4)。「準備性」は将来親になって 子どもを育てようとする構えが関連するが(項目 例:自分は将来我が子に慕われる親になれそうな 気がする)、親になる準備性や子どもの誕生に対 する肯定的態度という領域においては、男女とも 高い信頼感パターンの者が低い信頼感パターン の者より高い得点を示す傾向が認められた(図3)。 また、女子の有意な高得点は「準備性」の低信頼 群、および、「誕生肯定」の中信頼群以外の群に おいて認められた(図 3)。その中でも、低い信 頼感パターンにおいて女子が男子より有意に高 得点を示す傾向は、女子の示すレジリエンス(不 利な状況においても耐性を発揮する性質)を示唆 するものであった。

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4.4 まとめ 本研究の目的は大学生の次世代育成意識と家 族要因および性別の関連について明らかにする ことであり、昨今の風潮である「仕事と生活の調 和」の「生活」の領域に関する将来の模索の理解 と支援に資する知見を見出すことを目指してい た。本研究から得られた知見をまとめると以下の とおりであった。 まず、一言で次世代育成意識といっても、多様 な領域を含んでおり、性別、家族要因、またはそ の両方の影響を受ける領域もあれば、一要因のみ に影響を受ける領域もあり、領域によって異なる 様相が見られた。しかし、いずれの領域にも影響 を及ぼしていたのは親への信頼感パターンであ り、親への信頼感、すなわち、親との関係性が次 世代育成意識に与える影響力を示唆するもので あった。「準備性」と「誕生肯定」においては、 信頼感パターンと性別の交互作用が見られ、男女 で異なる様相が見出されたが、それ以外の領域で は性別を問わない影響が認められた。広範囲の領 域へのインパクトを重視すれば、性別やきょうだ い地位を上回る要因であるとも捉えられた。また、 次世代への意識を育む作業は、前の世代との関係 性のあり様を見直し、捉え直す作業が強く関連す ると考えられた。 次に、次世代育成意識における性差の影響につ いては、以下のような知見が得られた。性別によ る差異は限定的に認められ、女子の方が高くなる 領域もあれば、男女で同水準を示す領域もあった。 ここで注目すべきは、性差が見られる領域ではな く、性差が見られない領域が存在することであり、 領域によっては、男子も女子に劣らない水準の次 世代育成意識を有しているという点であった。例 えば、「技能」と「受容性」は、性別による主効 果も、性別と他の要因との交互作用も認められな かった領域であった。このような知見は、次世代 育成意識の活性化のための支援方略を検討する 際に有意義な示唆を与えると考えられた。特に、 男子に対する支援方略として、既に実現できてい る良好な部分や強み(ストレングス)に注目し、 その部分を強化していくというストレングス視 点(strengths perspective)に基づくはたらきか けの焦点を示唆するものであった。 更に、きょうだい地位に関しては、年下きょう だいの有無が影響を与えていない領域もあれば (「準備性」、「受容性」、「自己成長」)、性別との 交互作用が見られる領域もあり(「誕生肯定」、「継 承」、「地域力」)、性別に関わらず、年下きょうだ いを有する方が高い意識を示す領域(「共感性」 と「技能」)も認められた。年下きょうだいを有 する者、すなわち、年下の子どもの養育体験を有 する者が高い意識を示す領域が見出されたこと は、支援方略として養育体験や保育体験を活用す ることの有効性を示唆するものであった。 また、女子における特異な傾向も見出された。 例えば、全体的には、親への信頼感が高い方が次 世代育成意識も高い傾向が示されたが、女子にお いては、信頼感が低い場合でも男子より高得点を 示す傾向が確認された領域もあった(「準備性」 と「誕生肯定」)。同様に、女子においては、年下 きょうだいがいない場合でも男子より高い意識 を示し、年下きょうだいがいる場合と同水準を維 持する傾向が見られた領域もあった(「誕生肯定」 と「継承」)。これらのことは、限定的な領域にお いてではあるが、女子の有するレジリエンス、す なわち、男子においてはマイナスに作用する条件 にも作用されない性質を示唆すると考えられた。 このレジリエンスは、生む性としての女性の特性 に由来するものか、それとも、「母性神話」のよ うな社会の風潮の中で、女性の性役割への期待に 適応する過程で形成されたものなのか、あるいは その両者なのか、本研究で扱うには限界があった が、この点も女子のストレングスとして活用する ことの可能性を示唆するものであった。 最後に今後の課題についてであるが、本研究で は大学生の次世代育成意識に関連する要因とし て性別と家族要因のみに焦点化したが、その他の 要因として、次世代への意識との関連が推測され

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る将来展望に関する意識(時間的展望)の検討も 必要と考えられた。更に、次世代育成意識が低い 場合、具体的にどのような方法で支援することが 可能なのか、その支援方法についての検討も今後 の課題として残った。これらの点については、稿 を改め検討する予定である。 付記: 本研究はJSPS 科研費 24590814 の助成 を受けた。 (注 1) クラスタ分析において、全ての変数が結果に 平等に寄与する方がよいと考えられる場合には、 標準化されたデータを用いることが勧められて いる(足立,2006)。本研究もこの方針に従った。 引用文献 足立浩平:2006, 『多変量データ解析法』, ナカニシ ヤ出版, 京都. 蘆田智絵 : 2010, 「nurturance(養護性)の概念に関す る理論的考察」, 『学習開発学研究』, 第 3 巻, 83-90 頁.

Erikson, E. H. : 1950, Childhood and society, Norton & Company, New York. (仁科弥生 (訳) : 1977, 『幼 児期と社会Ⅰ』, みすず書房, 東京).

Erikson, E. H., & Erikson, J. M. : 1997, The life cycle completed. Expanded ed., Norton & Company, New York. (村瀬孝雄・近藤邦夫 (訳) : 2001, 『ラ イフサイクルその完結 増補版』. みすず書房, 東 京).

Fogel, A. D., Melson, G. F., & Mistry, J. : 1986, “Conceptualizing the determinants of Nurtur-ance: A reassessment of sex differences”, Fogel, A. & Melson, G. F. (eds.), Origins of nurturance, Lawrence Erlbaum Associates, Hillsdale NJ, pp. 55-67.

Fogel, A. D., & Melson, G. F. (著) マカルピン美鈴 (訳) : 1989, 「子どもの養護性の発達」, 小嶋秀夫 (編), 『乳幼児の社会的世界』, 有斐閣, 東京, 170-186 頁. 原ひろ子・舘かおる (編) : 1991, 『母性から次世代育 成力へ:産み育てる社会のために』,新曜社, 東京. 菱沼純子・落合幸子・池田幸恭・高木有子 : 2009, 「青 年期の次世代育成力尺度の開発とその検討」, 『母 性衛生』, 第 50 巻, 132-140 頁. 菱沼純子・落合幸子・池田幸恭・高木有子 : 2010, 「青 年期の次世代育成力と親からの存在肯定メッセー ジとの関連」, 『母性衛生』, 第 50 巻, 552-559 頁. 伊藤葉子 : 2003, 「中・高校生の親性準備性の発達」, 『日本家政学会誌』, 第 54 巻, 801-812 頁. 小嶋秀夫 : 1989, 「養護性の発達とその意味」, 小嶋 秀夫 (編), 『乳幼児の社会的世界』,有斐閣, 東京, 187-204 頁. 楜澤令子 : 2012, 『青年期・成人期における養護性の 発達と形成要因』, 風間書房, 東京. 楜澤令子・福本 俊・岩立志津夫 : 2009, 「大学生に おける被養護・養護体験が養護性(nurturance)に 及ぼす影響」, 『教育心理学研究』, 第 57 巻, 168-179 頁. 岡本祐子・古賀真紀子 : 2004, 「青年の「親準備性」 概念の再検討とその発達に関連する要因の分析」, 『広島大学心理学研究』, 第 4 巻, 159-172 頁. 大日向雅美 : 1991, 「「母性/父性」から「育児性」へ」, 原ひろ子・舘かおる (編), 『母性から次世代育成力 へ:産 み育てる社会の ために』, 新曜社, 東京, 205-229 頁. 酒井 厚 : 2005, 『対人信頼感の発達: 児童期から青 年期へ』, 川島書店, 東京.

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NIHONBASHI GAKKAN UNIVERSITY Bulletin No.14

Factors related to the attitude towards nurturing the

next generation in university students

Taeko TERAMOTO

*1

Yoshiyuki SHIBAHARA

*2

Factors related to the attitude towards nurturing the next generation in university students were investigated. Students (N = 418) participated in this study. An analysis of variance was con-ducted with scores on the Nurturance Scale and Capability to Nurture the Next Generation Scale as dependent variables and gender and family factors; including the birth order (having younger siblings or not) and mutual trust in parent-child relationships as independent variables. Results indicated higher scores in certain subscales for female students, as well as for male stu-dents with younger siblings. These findings suggest the effects of social and cultural demands related to nurturance in women and women’s’ life cycle, as well as the effect of male students’ experiences of caring for younger siblings on attitudes towards nurturing the next generation. Moreover, scores of students with better relationships with their own parents were higher in all subscales, suggesting that such relationships were also closely related to attitudes towards nur-turing the next generation. Female students with fewer relationships with their own parents, however, showed higher scores than male students in certain subscales, which is suggestive of the resilience in female students.

Synopsis

……… Key words ……… attitude towards nurturing the next generation, nurturance, university students, family factors, gender

*1 Faculty of Liberal Arts Nihonbashi Gakkan University *2 Faculty of Liberal Arts Nihonbashi Gakkan University

参照

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