近畿方言語法調査項目 : 概観と調査簿作成のために
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(2) 18. 近畿方言語法調査項目. 近 いよ うに見 えて も実 は全 く関 係 のな い ものか もしれな い。 この ためには,A語 形 の横 の広 が りを知 らな けれ ばな らな い し,近 畿方言 圏 に接 す る外 の地域 の語法を もと り入 れて調. べ る必 要 が あ る。. 理 由 の第 二 につ いて は,「 言 語史研究入 門」 (平 凡社)に 次 の例があ る。 のよ うに 糸 魚川 の調査 で,「 買 った」 の方言 形が,中 学生 と老人 とで は次 違 って い る。. 76%. 6%. 100,び. コー タは この土地 で は 古 い形 で , 若 い人 々には カ ッタ にな ろ う として い るので あ る。 このよ うに年令層 によ る違 いが あ る ことか ら,例 えば,20才 代 ,40才 代. ,. 60才 代 で は語法 の上 で どの よ うに違 って い るかを調 べ る為 に も,従 来 の研究 書 に加 え,補 な いつ つ その動 きを も研究す. べ きで あ る。. さ らに,上 の表 か ら,同 じ中学 2年 生 で あ りな が ら,カ ー タを使 う者 とカ ッタを使 う者 とが あ るよ うに,同 年代 によ る動 きに も注 目 しなけれ ばな らな い。 神戸市 につ いて 調査 した結果 を示 せ ば次 の通 りで あ る。神戸市 の旧市 内 の 中心部 は兵庫 区 で あ るが, 兵庫 区の地理 的中心 部 に あ る 兵庫 中学校 の 2年 生 子 48名 ,女 子 38名 , 計 86名 (外 来者 を除 く)に つ いて ,「『 い くら待. ,男. 』 の『 来 な い』 に あ た る部分 を次 の うち,ど れを使 い って もな かなか来 な ι` ます か 。 も し, この 中 になけれ ば 自分 の言 い方 を記 して下 さい」 と して調査 した と ころ次 の結果を得 た。 次 の表 の語 のな らべ 方 は意識 的 に同 じよ うな形が続 かないよ うに した。 「 ときた ま使 う」以下 は記入 しなか った者 が あ るので 合計 が あわな いので あ る。 この結果 ,「 ケ ー ヘ ン」 が神戸 の 中学 生 の場合最 も普通 の形 とい う こ とに.
(3) 鎌. 神戸方言 としては これだと思 う. 揚. %)気 が. 形. ‐ 1上1上│ 1男. 田. 良. 二. よ く使 う. つ か う. 男伏 )1女 C人 )1県. │コ. とが あ る. )1娘 )1雅 )1娘. コ. EE. ). な るが,「 コー ヘ ン」 もか な りあ る ことが わか る。 このよ うな こ とか ら,京 都 ,大 阪 ,神 戸 とい う都市 を中心 と して, これ ら 三 都市 の間 に あ る急激 に人 口増加 してい るところの ゆれて い る,動 いて い る 方 言形 を も知 りた い。 従来 の す ぐれ た研究書 の 多 い近畿方 言 も,「 いせ の海清 きな ぎさの玉 は. ,. 拾 ふ ともつ くる こ とな く,い づ みのそま しげ き宮 木 は,引 くともたゆべ か ら ず」 で , ここに あえて語法 調査を試 み るので あ る。. 2. 語法 の調 査 項 目を選ぶ に あた って ,都 竹通年雄氏 の言 われ るよ うに,1)「 文 法論上 の 問題 が音韻論 ,語 彙論上 の 問題 とまぎれ るよ うな事実 につ いて」 は 特 に注意 しな けれ ばな らな い。 また,同 じ く語法上 の事 実 で あ って も,調 査す る上 に重 要 な もの と,そ う で な い もの とが あ る。 これ につ いて は金 田一春 彦氏 が 「方言学講座第一巻」 で述 べ られて い るこ 『方言文法論 の方法』「国語学 12」. (国 語学会編 ).
(4) 近畿方言語法調査項 目. 2θ. とを ま とめ ると文法上重要 な ものは次 のよ うにな る。 ①. 日常頻繁 に用 い られ る語 法 指定助動 詞. ダ. ジャ. ヤな ど。. これ に対 して,「 風 コ ソ吹 ケ,波 はな い」 の よ うな係結 は この意味 で あま り重要 で はな い。 ②. 由来 の違 うものの対立. 命令を あ らわす ,見 口,起 キ ロに対 して,見 ヨ,起 キ ヨな ど。 これ に対 して,見 テ (連 用形 +て )が ,見 チ とな るな どは重視 しな い。 対応す る形 の有無 千 葉 ・神奈川 0静 岡 0山 梨 ・長野 で , 見 ル ダ, 書 クダが あ るが, 東京 で. ③. は,見 ル ノダ,書 ク ノダがあ る。 しか し,東 京 の見 ル ダ ロー対見 ル ノダ ロー にあた るものが千葉 ・神奈川 …… にはないので はないか。 ④. 活用形 の一 つ を特立 しな い場合. 大 阪方言等 にお け る命令が「見 一」 「起 キー」 とな って 活用形 としての命 令形 を特立 せ ず連用形命令法 を用 い る こ と。 同 じよ うに,志 向形 を もた ぬ方言 が東 日本 に多 い。 ベ 見 ヨー,書 コーな どと一動 詞 の活用 形 と して あ らわれ る ものが,見 ー, 書 クベ ー とな って助動詞「 ベ ー」 で あ らわす D さ らに, この 「 ベ ー」 も. ,. ①. 推 量 ・意志 とも「書 クベ ー」 とな る (大 部分). 〇. 推 量だ け「書 クベ ー」 とな る (北 奥). ⑤. 意志 だ け に「書 クベ ー」 を使 う (西 関東 ・ 山梨 ・静 岡). また,見 タ ロー,書 イタ ローのよ うな完 了態 の表現 を,見 タヤ ロー,書 イ 0東 山), 書 イ ツ ロ タベ ーの よ うに二語で あ らわす方言 と,書 イ ツ ラ (東 海 ー (九 州 ・高 知)の よ うに一語 で あ らわす方言 とがあ る。 ⑤. 文 体論 に 関係を もつ もの. 京都 ・大阪 で は ダ体 と デ ス・マ ス体 と を もつ が, 東京 で はダ体 だけで あ る。.
(5) 鎌. ⑥. 田. 良. 21. 二. 東西 に明 らかな対立をなす もの. 東 日本 の「見 ナイ, 書 カナイ」. │こ. 対 して. ,. 西 日本 の 「 見 ン ・ 書 カ ン」 や. 「見 一ヘ ン・書 カヘ ン」 (京 都),「 書 カヒン」 (奈 良 ),「 書 ケ ヘ ン」 (大 阪 ), 「書 ケセン」 (名 古屋)な ど。 ⑦. 助詞 の融合. 鹿児島県で,柿 は一カキ ャ 柿を一 カキ ョ 柿 に 一 カ キ とな るな ど。 近畿 の代表 的な文法現象 と して楳 垣 実氏 は次 のよ うに述 べ て お られ る。. 2). 近畿 中心部 で は オ トイタ (落 した),ホ イ タ (干 した)な どのサ行 イ音便 は,サ イタ (差 した)を 除 いて は失 われた し,オ ル (居 )も イル に変 って. ,. オ ル は多少見下 げた気持 に しか使 われな くな りつつ あ る。 しか し,シ モー タ (仕 舞 った)ウ トー テ (歌 って)ヨ ー (良 く)ナ ゴー (長 く)な どの動詞 ,形 容詞 の ウ音便 , ン (な い)と い う打消 の助動詞 ,ヤ (だ )と い う指定助動詞 ,ツ ケ ー (付 け よ)ミ ー (見 よ)の 命令 形 ,「 は,が. ,. を ,と 」 な どの助詞抜 きの表現 はす べ て近 畿 の代表 的 な文法現象 で あ る。 近畿で も山間 とか不便 な土地 へ 行 くと指定助動詞 はダ の と ころが多 く,と くにダ ロー を い う形 は但 馬 ・丹後 ・淡路 ・南近畿 に もあ る。. ここで ,近 畿全般 の特徴 的な語法 を知 って ,そ れが ど こに,ど の よ うに あ るか ,例 えば,和 歌 山県 の この語形 が呆 して和歌 山県 だ けの もので あ るのか ど うか ,近 畿 に あ る形 を ,ま た ,そ れが ど こ まで続 いて い るかを調 べ るので あ るが ,そ の為 には一応 ,各 地 の代表的 な語法 "先 に記 した意味 で の重要 な 語法を あげなけれ ばな らな い。 先ず ,楳 垣 実氏 の 区画を記 し,3)そ れ に奥村 三 雄氏 の語 法. 4)を. あわせ ると. おおよそ次 の よ うにな る。. 2)『 近畿 のことば』「 日本文化風土記 五」 (河 出書房刊 ) 3) 「全国方言資料 四」 (日 本放送協会編 )に 金 田一春彦氏 による紹介 がある。 4)『 近畿方言 の区画』「 日本 の方言区画」 (日 本方言研究会編 )ほ かにも本稿 は奥 村三雄氏 のご論文 によるところが大 きい。.
(6) 22. 近畿方言語法調査項 目. A. 内近畿. 1. 東 0内 近畿―― 山城 0東 丹波 (以 上京 都府 )近 江大部 (滋 賀県)伊 賀 (三 重県). 2. 西 ・内近 畿―― 摂津東部 0河 内 ・和泉 (以 上大阪府 ・一 部兵庫県) 北大和 (奈 良県). B. 中近畿. 3 4 5. 東 ・北 ・ 中近畿―― 丹波 ・丹後東南 (以 上京 都府 ) 西 ・中近畿―一 播磨 ・淡路 ・西丹波 (以 上兵 庫県) 南 ・ 中近畿―― 伊勢南部 ・志摩. (以 上二重県 ),. 紀伊北 部 (和 歌 山. 県). C. 外近畿. 6 7. 南 ・外近畿―一 西大和 (奈 良県)紀 伊大部 (和 歌 山県 ・二 重県) ・ 北 ・外近畿 ― ― 丹後大部 (京 都府 )但 馬 (兵 庫県). 東 0内 近畿 の京都方言 の勢力範 囲を広 くとれ ば京都府 ・滋賀県 ・福井県。 西 0内 近畿 の大阪方言 の勢力範 囲を広 くとれ ば,大 阪府 ・兵庫県 ・奈良県 ・ 和歌 山県 で ,二 重県 は,東 また は南 に属す るが ,大 阪の影響 が大 きい とい われ る。 以下 ,各 地 の代表 的語法を あげれ ば次 のよ うにな る。. A-1 近江 の北 部 <条 件法 行 ク トサ イガ,間 投詞 ナー シ,指 小辞 犬 メ > 伊賀 <敬 語法 書 カ ッシ ャル ・サ ル ・書 カハ ル ,存 在法 オ ル イル 動 作法. 書 イ トル ,書 イテル ,丁 寧法. クニ (行 かな いで ), コ レハ ッチ ャ. (こ. ダス. ゴ ヮス,特 殊助詞. 行 カン ド. れ しか)>. A-2 摂津 <ミ テ ッチ ャ (見 て い な さる)カ キヤル (お 書 きな さる)> 河 内 <カ ッコル (書 きよ る)> 北大和 <書 カル ・書 イテ ラル (親 愛 )> B-3 丹波 ・丹後 <ゴ ザ ス (ご ざ い ます)書 イテヤ (書 いて いな さる) =西 中近畿 と共通 , ンダ (し なか った)=内 近畿 はナ ンダ >.
(7) 田. 鎌. B-4 -般. <オ ル. (い. 良. る)動 作法. 二. シ ヨル,結 果法. 書 イテヤ=書 か ハ ル はな い,否 定. 敬語法. 2θ. B-5. ,. 書 カ ヘ ン (神 戸 か ら播磨 一 帯 =. 京都 はない)=書 ケ ヘ ンー大阪的 ,サ 行 イ音便 あ り> ン 使役. シ トル の 区別 あ り. 西播 <否 定. 起キラ. 見 ラ ン ー 段活用 の五段化 ,動 作法. 降 リヨ. 起 キ ラス > 和歌 山地 区 <否 定. ル・ 降 リヤ ル ,結 果法. 降 ッ トル 0降 ッタルの 区別 あ り=兵 庫県下 の よ うに. 明瞭 で はない,敬 語法. 丁寧法 の助動詞少 く,言 葉荒 い,断 定法. ダ ロー, 終止形 は ジ ャ, ヤ, 主格助詞 の変形 が)特 殊終助詞. き,度 会郡西南部 を含 む)<可 能法 法. ,. ア ミャ・ ア メ ァ (雨 は ・雨. 行 クガ レ・行 コ ラ,コ ガイナ系 の指示詞 >. 飲一 ダ,過 去否定法. ・ マ行長音便. ダ ッタ. 行 カザ ッタ >. 伊勢南部 <バ. 牟委地 区 (西 牟委 を除. 書 キ エル・書 ケ レル・見 エ レル ,敬 語. 書 カ ンス >. C-6. 南大 和 <ガ 行攪音便. 過去推量法 る)> 結果法. 書 イ ツ ロー, 音便. 研 (イ )ン ダ,バ ・マ行長音便 カー タ (書 いた). 紀伊大部 <二 段活用著 しい , 生物存在 降 ッタル ・降 ッチ ャル ,サ 行 イ音便. 飲一 ダ. ,. アカ ーな る (赤 くな. ア ル , 動作法. 降 リヤ ル. 出 イ セ ・落 イ セ (出. ,. して 0落. して)>. C-7 -般 <断 定法 ダは稀 の地 があ る,意 志法. ダ ・ ダ ッタ・ ダ ロー =ダ ッタ ・ ダ ロー はあ るが 起 キ ョー ・起 キ ュー,敬 語法. ,. 書 キナル ,否 定. 起 キ ラヘ ン,起 キ レヘ ン,サ 行 イ音便 あ り,行 カー (行 こ う)=坊 主 バ ア ズのよ うな音化傾 向,ワ 行促音 便 払 ッタ,使 役法 書 カ セル ,敬 語法. 法. 書 キ ンサル ,場 所格助詞. カ ラ (山 で),順 接助詞 (理 由)サ カイか ら来 た. サ ケ ・ スケ >. 3. 内 ・中 ・外近畿各 地点 の特徴 によ り近畿 内部 のおおよ その形 がわか った と ころで 近畿語法 を と りま く地域 との関係を み るとともに調査項 目につ いて 考.
(8) 2ζ. えたい。 以下各 品詞別 に記すが,互 いに関連す る形 は対 比 しつつ 調 べ る方 が便 利 だ し,融 合化 の傾 向 の あ る助詞 ・助動 詞 はその語 とと もに記す方 が 自然 で あ る ので その都度記 した。 なお,語 法調査 はす べ て 実 際 の 文 の形 にな った ものを その場面 とともに と らえなけれ ばな らな い。特 に敬語法 な どは,誰 か ら誰 に対 して 言 ったかな ど が大切で あ る。 しか し,語 法 の比較 とい う立場 を とる場合 ,や は り,い くつ かの照応 関係 に まとめ るべ きで,そ うしな い ときには,作 業 が非 常 に困難 な もの とな る。 調査法 に関す る問題 で あ る。 動詞 (1)動. 作法 ・結果法. 将然「 あ っ,危 い,落 チ ヨル」 「 金魚が アプアプ して,死 ニ ヨー デ」 な ど と,将 然 は瞬間動詞 に ヨル が つ いた形。進行 は書 キ ヨル と書 イ トル とが あ る が ,「 学校を 出て 家 に帰 りつつ あ る時,帰 リヨル」「家 に到着 して しま って い る時 ,帰 ッ トル」 とい うか,雪 が 降 りつつ あ る時 ,降 リヨル と降 ッ トル と を使 うが,空 が晴れて いて 積 って い る時 は,「 今 日は雪が 降 ッ トル か ら長靴 を はいて い くJな どとい うか 。 また,「 こん な所 に (落 書 )書 キ ヨル ・書 イ トル」 (い つ書 いたかわか らな い)な どの使 い方 が あ るか,さ らに,尊 敬 と 結 びつ いて「 先生 が書 キ ヨ ッテヤ」 「書 イ トッテヤ」 とい うか。 ヨル が ヨー とな った り, トル が トー とか,チ ョル にな った りす るか。 降 リヨル が 降 ッ リョー ル のよ うにな るか。 また,島 根県 出雲市 のよ うに降 リヨ ッタと過去形 だ けが あ り,降 リヨル の 現在形 はない とい うよ うな こ とがあ るか。 これ らは要 す るに「一― お る」 と「―― て お る」 との違 いに な るか ら,イ ル (居 )と い う地 よ りもオ ル とい う地 に あ るだ ろ うが,ア ル との関係か と思 われ る,書 キヤ ル (近 江 の一 部)で 尊敬を表 わす地域 もあ る。 中国地方 の 岡 山県 には.
(9) 鎌 進行動詞. 25. 田 良 二. 存続動詞. 未来動詞. (書 )カ キ ョー ル. カ ェー トル. カ エー トク. (読 )ヨ ミョー ル. ヨ ン ドル. ヨ ン ドク. (起 )オ キ ュール. オ キ トル. オ キ トク. (受 )ウ キ ョー ル. ウ ケ トル. ウ ケ トク. な どがあ る。 さ らに,四 国 の高 知県 で は「―一 て あ る」 が チ ャール (未 然 ・命令 な し) 「 言 うて あ る」 が 「言 ウチ ャール」,「 言 うて な い」 が「 言 ウチ ャーサイ. │. 、 Lな る。 て い る」 は. 「― ユー. (ヨ. ル)一一 しつつ あ る. チ ューーー (チ ョル)一一完 了 終止形 ・連体形 に用 い,他 の活用形 には「 ヨル」 「 チ ョル」 の 四段 に活用 した ものを用 い る。 行 キ ヨル ー→ 行 キユ ー 来 チ ョル ー→ キチ ュー (2)動. 詞活用形. ④意志形 「行 く」. イカー系 (但 馬),イ コー系 (近 畿一般)の どち らか。. O否 定形 否定形 と不可能表現 とを対比 しつつ 調 べ るのが便 利 で あ るが,そ の 間 にア ク セ ン トの違 いによる場合 もあ るか ら注意。 神戸 否. 定. 不可能. 但馬 ・南淡路. 行 カヘ ン. 行 ケヘ ン. 行 ケー ヘ ン. 行 ケ レヘ ン. 行 カ レヘ ン 金 田一春彦氏 は「 日本民俗学大系 10」. (平 凡社)で. ,. 地 方 の言葉 には,ま た,文 法 的 なナ マ リのた めに,論 理 的 には矛盾 して い.
(10) 近畿方言語法調査項 目. 2δ. るよ うないい方 も生 まれ てい る, た とえば, 飛 弾か ら富 山 にか けて 「 見 る な」 とい う制止法 を「見 ンナ」 とい って 打消 しの回数が一 つ よ け いで あ る。 と述 べ てお られ るが,こ れ は,「 見 ル ナ」 の「 る」 が「 ン」 にな った ので あ ろ う。 地 方 で, この例 の「 ル」 の脱 落 は多 い。「取 るな」「す るな」 の制 止法 は「 トンナ」「 ス ンナ」 で あ る。「見 ない」 の意 の制止法 は「 見 ン」 と言 い得 て も,「 す る」 の制止法 は「 ス ン」 とはな らない,だ か ら,こ の「 ン」 は「 な い」 の意 で はない と思 う。 この よ うに, どの部分 が何を あ らわ して い るか に 注意 しな けれ ばな らな い。. O連 用形 「 買 うて」 の形 が,カ ー テ (但 馬)と な る地 が あ るが,こ れ は他 の語 の a. u連 母音 との関係 は どうか,な どと対 比 しつつ 調 べ る こと。 連用形敬語法 京都 で オ書 キ タとい う軽 い敬語法 が年配 の人 に用 い られ てい るが,愛 媛県 のオ書 キ ル とともにその分布 と使用年令層 を調 べ る。 連用形 命令法 京都 で ,書 キイ,オ 書 キ,書 キ ヨシ,書 キナが あ るが,大 阪 で,ハ ヨ書 キ ハ ヨ掃除 シ イの形 で 命令 にな る。 ○音便形 西部 の方言 と して 「買 った」 が 「買 うた」 とな る こ とを あげ るが,先 の糸 魚川 の例 のよ うに若 い人 々の 間 に動 きがあ るか どうかが問題 だ ろ う。 しか し,但 馬 に あ るカー タの形 は,カ ーテ と同称 ,. au連 母音 の 関係 か この地方 で は「行 っただ ろ う」 も,行 ッタラー とな る,な ど,他 の語 と合 せ ,. 考 え る必 要 があ る。 形容詞 の場合 も,赤 くな る一⇒ アカーな る (但 馬)で ,播 磨 は「 ア コーな る」,南 伊勢 ,紀 州 で は「 ア コな る」 で あ る。 「方言 学講座第 三巻」 で 楳 垣 実氏 は. ,. 形容詞 の連 用形 も西部 で はア コーな る,ア コな るだが,出 雲 ・ 因幡 ・但 馬.
(11) 鎌. 田 良 二. 27. で は 「 アカーな る ・アカな る」 で 東部 的。 西部 の特徴 とされ る 「買 うた」 「借 った」 も出雲で は「 カー タ」 「 カ リタ」 で 東部的。 と述 べ てお られ るが,こ れ も,. au連 母音 との関係 とみ るべ きか。. ウ音便 志摩 な どに,飲 ― ダ,飛 ― ダが あ る。 これ は九州 ・ 山口 ・南 四国 に多 い形 で あ る。 略音便 京阪神 とも 「行 った」 が, イタのよ うにな る。 食 って一― クテ, 持 って 一. ― モ テ とな るが,「 縫 って,買 って,酔 って」 な どはな らな い。 サ行 イ音便 近 畿全域 に あ るよ うだが中心部 にな るほ ど うす く,京 都 にはない。 京都 で も「 傘 サ イテ行 く」 はあ るので,先 ず,「 サ イテ」 を調 べ て,他 の. イ音便 に な る語 ,な らな い語 を 調 べ る。 また,サ エ テ,セ エ テな どとな る地 方 もあ る。愛媛県 で はサ ヒタとな るところ もあ る。 近 江 の湖東 で は,話 イサ とな る。 ①仮定形 「降れば」 は大 部分 で,「 降 ッタ ラ」 で あ るが,「 降 リャー」 を専用す る 地域 は外近畿 に 多 いよ うだ。 また,年 令層 によ る違 いが あ るか。 高 知市 で は,老 人 は (行 )イ キ ャー,(来 )ク リャーで 「行 けば」 の形 で あ ったが. ,. 最近 ,京 阪形 の「 イ ッタ ラ」 が入 って若 い人 は「 イタ ラ」 にな った との こと で あ る。 同 じよ うな こ とが外近畿 には な いか。. O命 令形 「 見 ろ」 を 「 ミヨ」,「 起 きろ」 を 「 オキ ョ」 とい うのは西 日本 の特徴 に な って いた が,京 阪 で は,連 用形命令法 を使 い, この 「 ミヨ」 の形 がない。 外近畿 に「 ヨ」 が あ るよ うだが どの範 囲かを知 りた い。 (3活 用種類 の混用 近 江坂 田郡で,「 蹴」 を 「 ケます」 とな ることは,下 一段 活用化 で あ る。 東部方言 で は,最 近 ,サ 変終止形 を「 シル」 といい,力 変未然形 を「 キな.
(12) 28. 近畿方言語法調査項 目. い」 と言 った りす るとい うこ とで あ る。 京都 ・滋賀 ・福 井 の各 地 には,一 段活用 の ラ行五段化傾 向,力 変 ,サ 変 の 上一 段化傾 向が あ る。 鳥取 で は,借 レル (下 一)と. ,借. リル (上 一 )と が あ る。. 愛媛 県 で も,「 飽 きる・借 りる 。 しみ る・足 りる ・ 伸 び る」 が五段化。 「 こ し らえ る, こたえ る (強 く感 じる),立 て る」 が 「 で きる」 が下 一 段化。 五 段化 しつつ あ るとい う ことで あ る。 (4)二. 段活用. 和歌 山県下 に多 いが,「 下 ルル ・過 グル ・転 クル ・な ズル. 0行 カルル ・起. キ ラルル・書 カスル ・勉強 サ スル」 な どにつ いて調 べ る。 (励. ナ行変格活用. 丹波 ・若狭西部 な ど一般 に外 近畿 にあ るよ う だ。 「 死 ヌル 時 , 死 ヌル ま で」 な ど。 (6)特. 殊動詞. 京都 の オス (有 ります)=否 定. オ ヘ ン,連 用. オ シタ,終 止. オス。. これ は山城 ・丹波南部 ・近 江 ・若狭 まで に あ る。 大阪 のオ マ スは 山城 中央部 ・近江南 部 に あ るが , 終止形 は 使 わず, オ マ ヘ ンの否定 だ けを使 うとか, オスを補助動詞 と して使 うな どの 地域を 調 べ る。 形容詞 イ)未 然形 (推 量) (赤 )ア カカ ロー ・ (新 )ア タ ラシカ ロー を使 うか。. べ 「 高 カ ロが,低 カ ロが」 のよ うにな ら て 言 う時 だけに使 う,な ど。 島根県 益 田市 で は (高 )タ カー ローのよ うな形 もあ る。 便形 ")音. コ 京都 で ,「 (高 )タ コー テ」 と 「 タカー テ」 とが あ るが普通 は タ ーテ. ,. (美 )ウ ツ クシ ュー テ, で あ る。. 新 しい形 として タカー テ,タ カーナイ,美 シーテ,美 シー ナイ,タ カイナ.
(13) 鎌 田 良 二. 29. イ (高 い こ とないの省 略か) 鳥取市 で はタカテ, タカーテで あ る。 形容動詞 指定助動詞「 ダ ・ ジ ャ・ ヤ」 とともに,「 静 カダ」の形 と,各 活用形 の状態。 感動「―一 ナ ァ」 のついた 時 な どにつ いて 調 べ る。 静 カデ ワナイー→ 静 カジ ャナ イー→ 静 カヤナイの 関係 は,高 知市 で, ソ ン ナ ニ キ レイヤナイジ ャナ イカな どとともに考 え られ るだ ろ う。 その 間 の様子 を知 りた い。 年令層 の差 もあ るだ ろ う。 助動詞 (1)指. 定助動詞. 「 ダ」 「 ジ ャ」 「 ヤ」 が近畿 に あ るので,そ の境界 も大切 だが,二 つ を並 用す る地 域。 どれ とどれ とを並 用す るか ,な どにつ いて。 また,活 用形 によ って は使 うとい う場合 ,例 えば,ダ ローは使 うが,ダ は 使 わな い とい うよ うな地域。 「 ナ ンジ ャ, カ ンジ ャ文句 バ ッカ リ言 ウ」 のよ うに 特殊 な場合 だ け「 ジ ャ」 を使 うとい う地域。 能登 に あ る「 デ ァ」 の形 な ど,そ れ に近 い形 が あるか。 そ して,年 令層 によ る違 い も知 りた い。 内近畿 はヤ, その外倶1に ジ ャ, さ らにその 外側 の外近畿 にダ が あ るよ う だ 。並用地域 は どれ とどれ とを並 用す るか。 (21否 定助動詞. 京都 で は,普 通 の否定 には「 ン」, 強 い否定 には「 ヘ ン」 で あ ったのが. ,. 最近 は「 ヘ ン」 が普通 にな ったよ うだ。 「 ヘ ン」 は終止形 に,「 ン」 は他 の活用形 に使 うとも言 え る。 神戸 で も「行 カ ンな ら行 カ ンで もええけど」 のよ うに,「 ン」 は特殊 な場 合 に用 い,普 通 は「 ヘ ン」 で あ る。 「 ヘ ン」 の ほか に,セ ン (近 江 ・若狭 ・丹後)シ ン (近 江―蒲生 0高 島).
(14) θ θ. 近畿方言語法調査項 目. があ る。 赤穂市 で,起 キ ヒン・落 チ ヒンな どと,語 幹が イ列音 で終 る ものは ヒンと な る傾 向があ る。 書 カ ンーー書 カ ンで も一一書 カイで も一― 書 カナあかん とな る「 イ」 が あ る。 「 行 カイでわか るか」 な ど。. 13)打. 消意志助動詞. 「 マ イ」 は少 ないよ うだが,丹 後 0若 狭 ・越前 の方 にな るにつ れて 多 くな る。 未然形 につ くか,終 止形 につ くか,そ の 間 に意 味 の違 いが あ るか。打 消意 志 と打 消推 量の違 いな ど。 14)丁 寧指定法. 「 で す」 の ドス は京 都,ダ ス は大 阪 で,そ の境界 は山城 と摂 津 とい うが. ,. 福 知 山 ・敦賀 に もダ スがあ る。終 止形 は大 体 中年以上 の人 だ けが使 い。終止 形以外 は若 い人 も使 う。 ドス← ― デオ ス. ダ ス←― デヤ ス とい うが,和 泉南部 は ジ ャス ・ ヤ スが あ. る。 (5)敬 語法 (イ. )「 ハ ル」. 京都 は「書 カハ ル」,大 阪 は │「 書 キハ ル」 とい うが, 京 都 で も連用形 か ら 「書 キナハ ル」 「書 キヤハ ル」 もあ る し, これ は かな り入 りま じってい るよ うで あ る。近江 の湖北 で 親愛 的 に,書 カア ル ・起 キヤアル が あ るとい う。越 前 の一 部 で は書 カル ・起 キ ラル・起 キヤル が あ る。 越前 で書 キ ンサ ル,越 前南部 で書 キナシタ. (く. 書 キナサ ッタ), 近 江西 ――. 南 ・若狭 の一 部 で 書 カ ッシ ャル・書 カ ッサ ル が あ る。 「 ンサル」 は 中国地方 に も通 じる。 福井市 で キ ャハ ッタ (来 られた),加 賀大聖寺 で はキナ ッタで あ る。 (口. )「. テヤ」.
(15) 鎌 田 良 二. θヱ. 丹後 ・丹波 ・若狭 に あ り,神 戸 か ら西 に あ る。 書 イテヤ. (「. お書 き にな る」 の意 だが, 尊敬 の程度 は軽 い。 テヤのヤは指. 定 助動詞 だか ら,ジ ャ地域 で は,テ ジ ャとな る) 「 ハ ル」地域 の外側 にあ る こ とは福井が ハ ル で石川県 が テヤで あ る し,大 阪が ハ ルで ,神 戸 が テヤで あ ることに通 じる。 ナハ ル はナサ ル の変 で あ るとみ ると,こ の テ とは由来 の違 うもので あ るか ら,ハ ル を使 うか,テ ヤを使 うか の違 いは重 要 で あ る。 これを大阪 ・神戸 の 違 い とみて もよ い程 だ。 │1県 で はテヤ ッタか ら変 った「 聞 イタ ッタ」 があ る。 石り │ヽ. ご 「 ′Jス 」. 山城 ・南丹波 ・近 江 に 「 オ書 キヤ ス,」. が あ る。 ヤ スはハ ル よ りも 勢 力弱. く,中 年以上 の人 が使 う。. 助詞 (1)省. 略形. 一般 に格助詞 の省 略は多 いが,ど の語 を よ く省 略す るか につ いて 調 べ る。 省 略 の比 較的多 いのは,目 的格「 ヲ」,引 用格「 卜」で,そ れ に続 いて方 向 の「 へ」 で あ る。 省 略 の少 ないのは,無 生物主格 「火 ガ燃 え る」 な どの 「 ガ」 で あ る。 このよ うな こ とにつ いて地 域性 とともに調 べ たい。 (2融 合形 石川県 で ,柿 が一 一 カ ッキ ャ 酒が一一 サ キ ャー,鍵 が一一 カ ンギ ァ,行 くのが一一 イ クガ ー,大 が一― イ ンナ,大 を一一 イ ンノ 中国地方 で,「 を」 が iで 終 る名詞 につ くとき,銭 を一一 ゼ ニ ュー,火 を 一. 一ヒ ュー とな り, ヒで終 る名詞 につ くとき,酒 を一― サ キ ョー とな る。 (3格 助詞 場 所を示す助詞「 で」 は,但 馬 ,因 幡 ・東伯 で は「 か ら」 とな る。 山 で遊. んだ一一 山 カ ラ遊 んだ。.
(16) ・ 32. 近畿方言語法調査項 目. 島根県浜 田市 で は「 に」 が e母 音 につ くとき,酒 工酔 う,燕 工餌 や る, と な り,そ の他 の とき,学 校 イ行 く,弟 イや る,の よ うに「 イ」 とな る。 出雲市 で は,鳥 ンな る,学 者 ンな る,の よ うに「 ン」 とな る。 四接続助詞 確定順接 に「 サ カイ ・サ ケ ・ハ カイ ・ハ ケ」 が あ る。 内近畿的 だが その範 と語形 とを知 りた い。. :囲. 京都 で は「 シ」 が あ ってサ カイよ り順接 的接続機能 は弱 い,お とな しい感 じ,サ カイ対 シ はカ ラ対 ノデ に近 い。 丹後 ・奥丹後 ・越前 。若狭 は,「 デ」 と「サ カイ」 とが並 存。 山城 ・ 口丹波 は「 サ カイ」 と「 シ」 とが並存 。近江 は「 シ」 と「デ」 とが 並 存 との こ とで あ る。 (5)終 助詞. に)疑 問 石川県 で, ソーケ (そ うか)は 目上 に, ソーカは 目下 か対等 に使 う。 このよ うに「 ケ」 の方 が丁寧 , 目上 に対 して使 い,「 力」 は 目下 に とい う こ とは北 関東 に もあ る。 丹波 ・近江で は「 ケ」 は女性 の普通語 (男 性 が用 い るとやや丁寧 ),そ の ほか に「 コ」 が あ って,こ れ は男 性 が同輩以 下 に用 い る。 伸)禁 止 「 ナ」 を「 起 キナ」 「 投ゲ ナ」 「来 ナ」 「 ス ナ (す るな)」. の形 で, 兵庫. 県 西部 に多 い。「 る」 の脱落で あ る。 京都 に書 キナ (禁 止)と 書 キナ (命 令)と が あ る。 (6)係. 結. 「親 ナ ラ コサ レ」 の形 は丹 波 ・近 江 ・若狭 ・播磨 と外近畿 に あ るよ うだ。. 以上 ,近 畿方言語法 につ いての 問題点 を あげたが ,こ れ らの項 目に よ り先 の 内 ・中 ・外近畿 にお ける分布 と語形 の移 りかわ りの状態 につ いて 調 べ たい。.
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