僻地校における経済の仕組みを考えるごっこ遊び教材その授業実践・課題と教材構成提案
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(2) 1994.3. 軋48.. 僻地校における経済の仕組みを考える“ごっこ遊び’’教材. その授業実践・課題と教材構成提案 平田 朋美 倉賀野志郎. TeachingProgramon“PlayStore’’forStructureofEconomyinRuralSchooIs TomomiHIRATA,ShiroKURAGANO. ことは,こども心にもまるで大きな商いをしている. はじめに. ような感覚に陥らせ,ある種の満足感が得られるで. 本稿は,僻地等の小人数教育を社会科・経済の教. あろう。. 育内容・教材に限定して考察したもので,複数学年. 日々の生活の中で,子どもたちはお店で貨幣を使. を巻き込んでの小人数なるが故の経済学習の教材構. い,商品を買い,消費している。しかし商品の1つ. 成の実践・課題と,教材展開の可能性を整理したも. 1つの値段は,一体何が基準になっているのだろう。. のである。. どうして100円のパンは100円という値段がついてい るのか,どうして1万円ではないのだろう,という. 限定した領域ではあるが複数学年を対象とする教 育内容・教材構成を考察するが,内容を一方のみに. 問いそのものが成立する背景を子どもは有していな. 偏らせた形で教授する場合とか,同時並行的に進め. い。スーパーでの商品棚に並べてある商品を,レジ. るという手法の在り方等を扱うわけではない。地域. を通ってバーコードで機械的に精算されてくる過程. の特性を反映した教材の考察とともに,このような. からは,原料も生産者も途中の流通もまったく見え. 手法そのものについてはそれ独自に考察されるべき. てこないのである。商品の裏にある生産の過程を見. であろう。我々は全学年を対象とする別海町立中春. 過ごすこと,それは経済を支える根本である“もの. 別小学校で,次のような経済の仕組みを考える“ごっ. がうまれる”という部分を見過ごすことになると考. こ遊び’’教材に基づく授業実践を行い,その授業の. える。. 記録と課題を扱っている。. この生産段階からみることによって,経済の本質 の理解に迫ることが可能ではないかと考え,こども. Ⅰ章 全校児童を対象とした経済教育を目的と. のころに体験した“お店やさんごっこ”のお金と商. する“お店やさんごっこ”授業案践. 品のやりとりとを合わせて,“経済の仕組みを体験 的に学習することはできないか”として試みたのが,. 1.“お店やさんごっこ”授業実践の概要. 今回の実践である。経済教育として形式的に“資本. (1)“お店やさんごっご’の位置付け. “お店やさんごっご’は誰でも1度はこどものこ. とは,流通とは‥”と述べても,かえって本質がわ. ろに体験した遊びであろう。売り手と買い手が,模. かりづらくなるだろう。今回の実践は,模擬的な世. 擬貨幣で売買し,商品は自分のもっている人形やお. 界の中ではあっても,普段の生活では見落とされが. もちゃであったり,または紙でつくった“お魚’’で. ちな,商品が生産される段階からスタートし,商品. あったりする。勿論,その商品の値段は全くのこど. ができるまで資本が必要であり,原材料を購入する. もの自由でつけられるわけで10円でもよし,100万. 過程があり,労働という作業があった上で,利益と. 円でもよし,お互いの交渉が成り立てば売買が可能. 再生産を考えて値段がつけられ,売買,また再生産. なわけで,“紙のお魚”につく値段の根拠はまるで. ‥という一連の流れから経済の仕組みを学習すると. ないと言える。1個100万円の“お魚”を売買する. いう展開になっている。各学年の役割は異なるが, 岬51−.
(3) 平田 朋美・倉賀野志郎. 3・商品の値段を決め,“お店やさ. 全学年を巻き込んでの授業実践となっており,児童 数が著しく少ない場合は難しいが,全体が掌握可能. ん”を開き, 4・お客(1∼4年生)に商品を売っ. な範囲で考えならば,小人数に最適であると考える。 (2)“お店やさんごっこ”ルールと配布資料. てもうけを競う. 今回の実践校の北海道別海町立中春別小学校は全 ゲームです。. 校生徒107人,各学年1学級で約15,6人の小∼中 規模校である。今回実践するにあたって,5,6年. いったいどの班が1番もうかるかな‥?. (山内斉・境智洋先生の両学級)を特別に合同にし て33名で授業を行った。また消費者を1∼4年生(74. お店やさんを開く日,場所. 人)に設定し学校全体を対象としている。1∼4年. 9月9日(木). 《第1回 2時間目と3時間目の間の休み時. 生を消費者としたのは,下級生がもっている一人20. 0円の貨幣がどうしたら自分たちの手元にもってく. 間》お客:1,2年生. 《第2回 昼休み〉お客:3,4年生. ることができるかという目的意識を持たせ,また購 買力が上がることによって,ゲーム全体に大変動き. 場所:図工室,特別室. がでてくる(生産→売買→再生産)のではないかと も考えての設定である。. みんなに配るもの. 1人分=200円(お客も1人200円をもってい. [実践学級]5,6年生(今回の実践の為,特別に 合同した). ます). 5年一男子6名,女子10名 6年一男 子12名,女子5名 計33名 [実践 日]授業−1993年9月8日(水)3,4,. みんながすること ◆1◆商品のセットを買う−『何のセットをい. 5校時. くつ買うのかな?』. 9日(木)3,4,5校時. 何を作るか班で話し合って,班員のお金を出. 計6時間. し合ってセットを買ってください。さらにセッ. お店やさん開店−9日 行間休み(1,. トが欲しくなったら,またお金を出して買って. 2年生),昼休み(3,4年生). ください(商売の途中でもかまいません)。. [場 所]授業一理科室,お店やさん一図工室. ◆2◆商品をっくる−『大事な商品,売れるよ. [授業者]平田朋美(北海道教育大学釧路校・教. うに作ってね!』. セットに入っている材料を使って,商品を. 育方法学研究室). 作ってください。. [授業補助]教育方法学研究室室生7名 (ものづくり等の指導に各班につき,. ◆3◆商品作りの続き,お店づくり,商品の値. 授業者の目の届かない細かなこどもの. 段を決める−『1個いくら?』. 簡単にお店を作ってください。そして自分た. 動きを観察する). 以下に,授業で実際に児童に配ったプリントを示. ちの作った商品を1ついくらでつくるのか,班 で話し合って決めてください。. しておく。(挿絵など1部省略). ◆4◆“お店やさんごっこ”をする−『めざせ, 1番店!』(行間やすみ). 1,2年生が体育館にお買い物にきます。商 品を売ってもうけてください。お客さんを引き つける,広告をだすなどの工夫は自由です。. ◆5◆作戦を練り直す−『作戦TIME!もっ と,もっともうけるぞ!』 自分たちの班の売れゆきはどうだったか,何 か変えた方がいいところがあったなど,昼休み −52−.
(4) 1994.3. 『僻地校における経済の仕組を考える“ごっこ遊び”教材その授業実践・課題と教材構成提案』. 恥48・. の商売にそなえて作戦を練り直してください。 変えたことをみんなの前で発表してもらいま. お店やさんごっこ・商品力タログ. す。またこの時間に売上の中間報告をします。. ※さし絵等一部省略. ◆6◆“お店やさんごっこ(第2回)”をする. 《べっこうあめ》“あまくて,おいし∼ぞ∼!”. −『最後にもうひともうけ』(昼休み). ◆道具:ナベ,ガスコンロ,フィルムケース. 3,4年生がお買い物にきます。第1回の反. ◆セットに入っているもの:さとう,つまよう. 省をいかして,もうけてください。. じ,アルミケース. ◆7◆ゲームの最終売上の計算,ゲーム感想を. ◆用意するもの:水. 書く。. 《つくりかた》. ゲームがおわったら,最終売上発表してもら. 1・ナベにさとうと水をいれ,ガスコンロであ. います。また用紙にゲームの感想,意見を書い. たためる。. てください。. ※さとうと水の畳は好みなんだけど,さとう が1に対して水が3くらいがめどかな。 2・さとうみずがプクプクあわ立って,黄色に 色づいてきたら,火からおろす。. やくそく. 1・原料は必ず先生から買ってください。家か. ※色づかないうちに,はげしくあわ立ってき. らもってきたりしたもので,つくらないでく. たら少しコンロからなべを遠ざける。. ださい。. 3・アルミケースにできたあめを流す。つまよ. 2・商品の値段は商売をやっている途中で変え. うじもさす。. てもいいです。そのときはみんなにわかるよ. 4・しばらくしたら固まってくるので,つまよ. うに,はっきり言ってください。. うじを様にねかせて取り出して,できあが. 3・商売をしできた“もうけ”はゲームの途中. り!。. で班員に分けていいです。班員はその“もう け”で欲しいものを男物してきていいのです。 4・“お店やさんごっご’の商品で授業中に遊. 《プラ板キーホルダー》“かわいいアクセサ. んだり,食べたりすることば禁止です。. リーになるよ!”. ◆道具:オーブントースター,木の板,油性マ. (1∼4年生ももちろん同じです). ジック,穴あけパンチ,アルミホイル,軍手 ◆セットにはいっているもの:プラ板,たこ糸. 商品リスト. :道具代=100円(どの班も最初にはらってく. 《つくりかた》. 1・プラ板を好きな大きさ,形に切る。. ださい). ・べっこうあめセット:250円. 2・好きな絵や字をかく。はじに穴あけパンチ であなをあけておく。. ・ブーメランセット:250円. 3・アルミホイルをひいて,プラ板をオープン. ・プラ板キーホルダーセット:250円 ・吹き上げパイプセット:250円. トースターの中にいれる。. ※もっとほしくなったら,また250円はらって. 4・すぐに小さくなってくるので,小さくなっ. 買ってください。. たらトースターから取り出す。取り出したら, 木の板ではさんで平らにする。. 年 名前 お店やさんごっこの班. ※かなりトースターもプラ板も熱くなってい るので,やけどに注意!. 班. 5・穴あけパンチでできたプラ板キーホルダー に穴をあけ,たこ糸を通して,できあがり!. −53−.
(5) 平田 朋美・倉賀野志郎. 《吹き上げパイプ》“思いっきり息をすって, ぐるぐる回そう!”. ◆道具:ハサミ,千枚どうし,ボールペン,木 工用ボンド,定規 ◆セットに入っているもの:フィルムケース, 毛糸,ストロー 《みつばちブンブン》“まるで本物みたいな. 《つくりかた》. 1・ストローを図のように切る。. 音だよ!”. ◆道具:ハサミ,みつばちの絵の見本,カッ. 曲るストロー(大). ター,ホッチキス,セロテープ ◆セットに入っているもの:わりばし,発泡ス (刃. チロール球,ひら輪ゴム,毛糸画用紙. (B) (C) 細いストロー 卜 2cm勺. 《つくりかた》. 1・わりばしを割って1本にし,細いほうから. 不要(使わない). 2・千枚どうしやボールペンを使って,フィル. 15cmところで折る。 わりばしの先をえんぴつのようにけずる。. ムケースのふたに穴をあけ,ストロー(A, B)を図のようにさす。. ∈≡≡≡≡≡≡ヨ → =====≡≡∃ → トーーーー」 15cm. 戸. で. ↑. ヵッターで けずる. 2・折ったわりばしの両端に発泡スチロール球. をつける。発泡スチロール球の小さな穴の開 いているところからさすとよい。(つくえの. 3・フィルムケースの本体のそこに,穴をあけ. 上に発泡スチロール球を置いて,上からブ. てストロー(C)をはめる。. スッとやること) わりばし. 細いストロー(C)を穴にはめる. 3・みつばちの絵を画用紙にかいて,ハサミで きりとりホッチキスでとめ,発泡スチロール球 のついたわりばしにつける。わりばしに毛糸を. 4・本体にふたをはめてみる。 フタをはめてみる. 5・糸をとおしてボンドでとめる。できあがり0. − 54 −.
(6) 恥48.. 『僻地校における経済の仕組を考える“ごっこ遊び”教材その授業実践・課題と教材構成提案』. 4・ひら輪ゴムをつけてできあがり。. 1994.3. 班は,作業にどの程度の人手がかかるか見当もっ かないせいか,わりとすんなりアルバイトをやと う。. 2.“お店やさんごっこ”授業案践記録. (1)実践1(9月8日(水):3時間目) 授業前に4人1組の班分けは終わっていて,班ご. (2)実践2(4時間目) 実践1に引き続き,ものづくりを続ける。わりと. とに座っている。. 5年生より6年生の方がとりかかり,作業が早い。. 教師が『お店やさんごっこ』というゲームをする. 《ものづくり1》. と提案,児童にプリントと模擬紙幣を渡してから,. 1班:吹き上げパイプ(6年). ルールの説明をする。商品の紹介のときに,手伝い. 吹き上げはこの班1つだけ。2班からのアルバ. の室生に商品の実演を子どもにしてもらう。(《 》. イターが1名。フィルムケースに穴をあけるのに. の段落を下げた部分は,子どもの活動を,他は教師. 苦労しているが,思ったよりうまくできる。. の働きかけの部分である。). フィルムケースに色をつけるなどの工夫はな. 《こどもの反応》. い。. べっこうあめなど,みたことのあるものには,. 2班:フリーアルバイクー(6年). バイト代は40円,50円(2人),500円。バイト. わりと反応するが,はじめてみるものは“自分た ちに作れるか”という観点でみているのか,興味. 代の根拠はないらしい(500円の子は半ば自分で. を示さない。. バイト代を決めたよう。40円の子は班に90円の借. 商品を見終わると,さっそく何をつくるか話し. りをつくった。)どの子も原料代は払わず,労働. 合いはじめる班がある。. 力を提供し,賃金をもらう。. 班ごとに何を作るか話し合い(3分),1つの. 3班:プラ板キーホルダー(6年). 商品に希望が多い場合はじゃんけんで決める。. 学校のJリーグのポスターを写して,きれいに 色塗りをしとてもきれいなキーホルダーができ. 《こどもの反応》. べっこうあめに5班立候補する。じゃんけんで. る。1つぐちゃぐちゃになってしまったが,「10. 5年生2班が決まる。はちプンプンなども人気が. 円で売る」と商売椴性をみせる。. ある。. 4班:プラ板キーホルダー(5年). 商品が決まった班から,何セット買うか話し合う。. 作業が遅い。隣の班をみて,カレンダーや下敷. (1セットで商品約5個分が作成可能となるように. きなどの絵を写す。2班のアルバイクー1人。よ. している。). く働く。 5班:べっこうあめ(5年). 《こどもの反応》. ここで,べっこうあめじゃんけんで負けた6年. どのくらい熱すればいいか,苦労している。わ. 生の班(後の2班)が,“べっこうあめが作れな. りばしについたあめまで売ろうとする。べっこう. いなら,どの商品もつくりたくない!’’といいだ. あめ班は商品ができるまでは早いが,作業をする. す。教師がなんとか余った商品(吹き上げパイプ). 人が少数。. をつくるようにと,話をするがその気はないらし. 6班:べっこうあめ(5年). く,だんまりしている。. 2班のアルバイタ一に借金をする。ナベを火か. 道具代100円を教師にはらい(前述の6年生の班. らはなしたまま,アルミケースに入れずにかきま. は払わない),セットも買う。(べっこうあめの6班. わしたため,ぐちゃぐちゃに。不安がよぎりなが. が3セット,他の班は2セットずつ買う)。プリン. らも,水をたして再度挑戦する。カルメ焼き状態. トや教師(各班担当一室生7名)の助言でものづく. ながらもなんとか形になる。. りをはじめる。. 7班:みつばちプンプン(5年) 絵を書く作業をみんな嫌がり,作業進行はいま いち。でも後半ペースがあがる。. 《こどもの反応》. 2班はどうやらアルバイトにいくことに決めた らしい。それぞればらばらにわかれる。やとった. 8班:みつばちブンプン(6年) −55−.
(7) 平田 朋美・倉賀野志郎 みつばちプンプン. アルバイター1人。5年生と比較すると作業は 早い。. スライム. ふきあげパイプ. 給食時間なので,1度中断する。 《ちゅうい》. お店でかった,おもちゃで授業中あそんだり,. (3)宣伝(昼休み). おかしを学校でたべるのはきんしです。. 教師と各班の代表1名の計8名が他学年のクラス. かならずまもってください。. をまわり,明日のお店やさんごっこの宣伝と商品の 紹介にまわる。各班個性を出し,“スライムベっこ うあめ”(べっこうあめが固まらないのを逆手にとっ. て)とか,遊びを実演するなどしておおむね好評で,. (4)実践3(5時間目). 中には「何年生にはうけた」など学年の反応を,帰っ. 実践2に引き続き,ものづくりを続ける。机間巡 視しながら,各班が今いくらもっているか聞いて回. てから班員にはなす子もいた。. 以下,1∼4年に配ったプリント(チラシ)で. り,黒板のグラフに金額を書き込む。1ついくらで 売るか班で話し合うよう指示し,決まった堆から,. ある。(挿絵など一一部省略). 色画用紙に宣伝と値段を書く(後に店の看板になる) 《こどもの反応》. 1∼4年生のみなさんへ. どの班も50円∼100円くらいの値段をつけるが, そこからさらに値引くことをすでに考えている。. “お店やさんごっこ”のおしらせ. まわりの教師に「材料代があるんだよ」といわれ て考えなおすが,高くて買ってもらえないほうが,. 5,6年生より. 心配でやはり安くなる(特に5年は安い)。. 9月9日(木ようび)に,5,6年生が“お. 《ある班の値段》. 店やさんごっこ”をします。1年生から4年生. 値段決定までのこどもの動き(4班:プラ板). までのみなさんに5,6年生がつくった,たの. 「1個100円にしようか」「1個60円にしようか。. しいおもちゃやおかしを売るのです。でも,お. そしたら10個売るから600円。材料費に500円か. 金はほんもののお金ではなくて,この“お店や. かったから100円のもうけで,アルバイト代に50. さんごっご’用のお金をつかいます。お金は9. 円はらうから結局50円のもうけ。」「えー,たった. 日のあさ,くぼります。. の50円か_1「少しあげれば?」「70円にしたら500. かいものをするじかんは,1,2年生は2時. 円で200円のもうけで,結局150円のもうけになる。. 間目と3時間目のあいだの休み時間です。3,. でも売れなかったら困るしな。」(かなり悩む)「50. 4年生は昼休みです。どうしても,この時間に. 円にするか。」「そしたらもうけ0円だよ。」「そう. かいものができない人は,どちらの時間でもい. か。そしたら60円。_」「でももうけ50円しかないよ。」. いです。. 「じゃ80円にしよう。」. いっしょうけんめいっくった,おもちゃやお. 先程の各班の所持金をしめしたグラフに注目させ. かしなので,みなさんぜひかいものにきてきだ. (後のグラフ参照:グラフ・a),明日の“お店や さんごっご’後また集計することを告げる。. さい。. 商品をもって図工室に移動し,大きな机に商品を ばしょ:図工室,特別室. 広げ店にする。色画用紙をはって店構えを整えて,. じかん:(1,2年生)2時間目と3時間目の. 1日冒終了。 この段階でまだ作業が残っている班は明日の朝早. あいだの休み時間. (3,4年生)昼休み. くにきて,仕上げることを約束する。(4班:5年 プラ板). うるもの:べっこうあめ プラばんキーホルダー − 56岬.
(8) 『僻地校における経済の仕組を考える■ごっこ遊び”教材その授業実践・課題と教材構成提案』. 仙48・. (5)第1回お店やさんごっこ(9月9日(木):. 1994.3. 《ものづくり2》. 作業スピードはどんどんあがる。第1回で作業. 行間休み). この休間休みは1,2年生を対象に売買する。消. が遅かった班も頑張りだす。. 費者のレベルが第1回から第2回であがることが予. 1班:前は担当の教師がついていなければ作れ. 想されたし,図工室の広さも考えて−・応区別をした。. なかったが,もう手順を覚えてどんどん作業して. だがこの時間にも3,4年が釆て,「昼休みのため. いた。フィルムケースに穴をあけるときに,手に. に見たい」といって店の商品などをみてまわってい. 千枚どうしをさしてしまった子がいたが,たいし. た。. たことばなかった。「 ̄もっと道具が欲しい」とい. 5,6年生が大声をだして,1,2年生に呼びこ. う意見があったが,いっの間にか立ち消えになる。. みをするが,値切られると意外とあっさり値切って. 2班:あいかわらずのフリーター生活。各班で. しまう。まわりの班の売れ行きは気になっているよ. あぶれることなくよく働く。財布が個人になって. うだ。. いる班はこの班だけ(他の班はみんなのお金を1. 全体的に品薄状態な上,どの商品も値段が安いの. つの財布にいれている)。. で,1,2年生で買うのが早い子は2,3個手に入. 3班:Jリーグ専門で一心不乱に作っている。. れるが,迷っている子はその間に商品がなくなって. 「次は3,4年でもっとJリーグに興味がありそ. しまっていた。売れ行きがとても早くてはじまって. うだし,また売れるんじゃない?」というと,エ. 10分ほどで完売,売り手は満足そうで,さっそく. コニコしていた。. 売上を計算していた。完売するや否や「すぐ次の商. 4班:1番作業が遅れがちな班だが,作業に慣. 品をつくるから,材料を売ってくれ」と教師に顧む. れどうやら時間内に2セット分っくれそうであ. 子どももいる。. る。絵柄もスヌーピーやミッキーマウスなど,3 班とはまた逢ったキャラクターで勝負するよう. (6)実践4・5(3,4時間目). だった。1回目何を書くかに苦労したので,今度. 全部の班が完売であったことを確認し,各班の売. はカット集を教頭先生から10円でレンタルしてく. 上を発表させる(グラフ・b)。1班(吹き上げパ. る。アルバイトの子がバイト料を50円→100円に. イプ)がトップ。ここで作戦TIMEをとる。値段,. してくれ,と頼むがOKをもらえず,結局2回. 商品など第1回で反省する点,第2回に向けて改良. 目の結果がでてからで(バイト料交渉は)いいと. する点を話し合う。増えたお金であと何セット買い. いう。. たすのか相談して買わせる。今回から新しいきまり. 5班:−一応失敗なくつくれていた。3つのセッ. (教師に借金ができる)をっくる。. トを買ったが,うち1セットだけを使って,水で 薄くのばして量を多くしようと試みる。きれいに. 《こどもの反応》. 値段が安くてもうけが少なかったので値引きの. 丸ができて見た目はとてもよかったが,逆に固ま らずに気にしていた。. 限界をつくる。3、4年の消費者を意識したもの づくり(男向け,女向け等)を考える。. 《こどもの戦略》第2回になると,各班オリジナ リティーをだしてくる。. セットはべっこうあめ(5,6班)だけ3セッ. 7班:みつばちプンプン(5年)1枚絵だけが. ト(この2班はお互いに対抗意識を燃やし,一方 が借金をして3つ屠ったので,もう…一方も借金し. 余ったときに,「絵だけでも売ろう!」というこ. て3つ買う),あとは2セット買う。. とになり,画用紙に絵をどんどんかく。. 材料がもっと欲しいという声が多かったので,. 8班:みつばちプンプン(6年). 借金制度をつくったのだが,べっこうあめ以外の. 《その1》第1回にあっと言う間にどの店も商. 他の班は借金にはとても抵抗があり,「借金して. 品がなくなったので,他の班の商品がなくなるま. セットを買っても,次も絶対売れると思わない?」. で自分の班は半分ぐらいしか店に商品を並べない. といっても,「売れるとは思うけど,借金したら. →他の班の商品がなくなったところで一気にお客. もうけても先生にお金とられちゃう。」といって. を集めて,何も買い物をしていない人やまだたく. 借りない。. さんもっている人に高くうりつける。 −− 57−.
(9) 平田 朋美・倉賀野志郎. 順位はグラフ参照。各班の順位と金額を発表し,拍. 《その2》おまけの絵をっける。つけかえ用の 絵をつけることで値上げ(絵つきは50円増し)を. 手する。. する。. お店やさんごっこ売上表. 7班もおまけの絵をっくっていたことに気づ. (単位:円). き,情報どろばうだと憤慨。教師に取り締まるよ うにいうが,そんなことは自由競争なんだからで きないというと,さらに激怒。7班へのライバル 意識が爆発寸前になる。 《その3》 7班のはちブンプンをはじまったら すぐに買い占めて,自分たちの班でそれも高く売 る。 《こどもの反応》. 値段はどの班も第1回が50円∼100円ぐらいで, ひどいときは20円というときもあったが,第2回 は100∼150円が相場で値引きも50円の原価をわら ないようにしよう,ということになった。 ・800円が元手だったので,6班の780円は元手を (7)第2回お店やさんごっこ(昼休み). 切ったこと,・逆に1位の7班は800円を2日で2. 給食を食べるとすぐに図工室にきて,お客を待つ. 倍以上の1710円にしたこと,・商品をつくるために. 班がいくつかある。開店の時間と同時に,お客対象. は,1個に50円という“原料代’’がかかり,利益を. の3,4年(行間やすみに買えなかった1,2年も. 生むためには50円以上で売らなくてはならないこと. きていた)が,図工室に向かって,廊下を走り殺到. ‥等々を話す。 感想カードに授業の感想を記入してもらう。こど. する。4年生が担任の先生に「ぎりぎりまで値切 れ!」といわれたようで,かなりしぶとくねばる。. もが感想を書いている間に,2班が何も原材料を. しかし前回の反省があるので,なかなか5,6年生. 払っていないこと,バイト代が異常に高い子がいた. も値切らない。. ことなどを話すと,やとっていた班のこどもが「げぇ. “ごっこ”後わかったことだが,給食当番であっ. ∼、Jと声をあげる。. たり迷っていたりして1個も商品が買えない子が全. 次にはなんの商品をっくりたいかと質問すると,. 校で若干いたようだ(涙ぐむ子もいたようだ)。1. 最初のべっこうあめ人気はなくなり,わりと意見が. ∼4年の子どものなかに,余った紙幣を見ながら,. わかれた。ある程度商品の1つ1つを理解し,自分. 「これ終わっちゃったらただの紙なんだよね」といっ. の好きなものというのがわかったようだ。. ている子がいた。また15分ほどで完売,最後の吹き. [お店やさんごっこ・感想カード・集計]. 上げパイプ1個などはセリ状態で売れた。8班の《戦. 《商品をつくるとき,困ったことや工夫したところ. 略1・売り惜しみ〉,《戦略3・買い占め》は,ごっ. はありますか》. こが開始しても,予想を大きくはずしてなかなか商. ・ひもがまわらなかった(吹き上げ 6年)/・道. 品が売れなくてあせり,ついには第1回にもしな. 具が1つずっしかなかったので少し不便でした。毛. かった値切りもしてしまい,戦略どころではないと. 糸のひもも少し少なかった。(吹き上げ 6年)/・. いう感じで,どちらも実行しなかった。. 固まらなくて困った。(べっこうあめ 5年)/・絵 を何にするか。(プラ板 5年)/・ゴムでとめると. (8)実践6(5時間目). き。(ブンブン 5年)/・ホッチキスがちゃんと下. 第2回も全部の班が完売だったことを確認し,売. までとおらなかった。絵の大きさ。(プラ板 5年). 上を発表させる。借金をしていた5,6班は教師に. 《値段のつけかたはどうでしたか》. お金を返す。分散していた2班ももとにもどっても. ・上げたり下げたり(吹き上げ 6年他1名)/・. らって,“バイト代’’を合計する(グラフ・C)。. 高い値段から下げていった(吹き上げ 6年)/・ ー 58 仙.
(10) Nn48.. 『僻地校における経済の仕組を考える}ごっこ遊びけ教材その授業実践・課題と教材構成提案』. 100円で少し高いかなと思ったけど,売れたからよ. た主体的意志選択行為は,5年及び6年とは差があ. かった。(吹き上げ 6年)/・1回目は安すぎた。. るが(2学年を分けて班作りをしたのは,その差を. 2回目はよかった。(べっこうあめ 5年)/・50円. みるため)展開することができた。とりわけ高学年. より安くした。(プラ板 5年). に関してはこちらの予想をはるかに越えた“戦略”. 《商品を売っているとき,どんな様子でしたか。売. 1994.3. が構想され,小学校高学年段階における経済感覚に は驚かされた。. れ行きはどうでしたか》. ・まあまあよかった(吹き上げ 6年他1名)/・. 具体例1「フリーアルバイクー」. 大声でみんなで呼びかけた。2回目はあとの方から. 教師側が用意した4商品(吹き上げパイプ,プラ. 客が集まった。(吹き上げ 6年)/・せめたてられ. 板キーホルダー,べっこうあめ,はちブンプン)の. て大変でした。(べっこうあめ 5年)/・1回目は. 中で,好きな商品(べっこうあめ)を作れなく,製. 少し下げすぎたけど,売り切れた。2回目は高くし. 作意欲をなくす。最初は授業に全く不参加の姿勢を. て,すぐ売り切れた。(べっこうあめ 5年). とっていたが,途中から親しい友達のいる班に身を. 《1回目と2回目の間の作戦TIMEはどんなこと. 寄せる。. を,班で話しましたか》. アルバイト代は,3人は雇う班の人に決めても らっていたが,1人は自分で決めていた(それもか. ・セットを買う数(吹き上げ 6年)/・値段を変 えていくこと。2回目に売り切れが少なくなるよう. なり高額)。普通の班はそれぞれの所持金200円を,. に3セット買った。(吹き上げ 6年)/・どうして. 共同出資の形でだして,原料を買い,商品生産をす. 赤字になったのか。(べっこうあめ 5年)/・商品. るのだが,フリーターは結局200円に手をつけない. に名前をっける(べっこうあめ 5年)/・あめの. でゲームに参加することになる。. 形をわける。(べっこうあめ 5年)/・150円と書. 具体例2「柏手をたたきつぶす‘‘戦略”」. いておいて,120円に書き直したようにして,安く. 1つの商品を2班がつくることになるので,対抗. 見せかけたこと。(プラ板 6年)/・絵も売ること。. 意識が生まれ,・ライバル班の商品を買い占め,自. (プラ板 5年). 分の班の商品と一一緒に高く売る,・ライバル班には. 《全体を通しての感想》. ない,オリジナルのアイデアを商品に取り入れ勝負. ・もっと材料がはしかった。(吹き上げ 6年)/・. しようとする。また市場に商品がなくなったところ. もっとお金がはしかった,もっといろんな物がつく. で,商品を売り出し高く売る,などの行為が考え出. りたかった。(吹き上げ 6年)/・“お店やさんごっ. された。. こ”と聞いて,ぼくは笑ったけど,実際やってみる. 予想をはるかに越え,すさまじい利益追求行為が. とおもしろかったです。(べっこうあめ 5年)/・. かいまみられた。「市場に商品がなくなったところ. 次はプラ板をっくりたい。(吹き上げ 6年)//・あ. で,商品を売り出し高く売る」などは,このゲーム. のお金が本物だったらよかったのになぁ。(プラ板. の矛盾点をっいている行為ともなっている。. 5年)/・買わないで,見てそのまま通りすぎた. 具体例3「値段のつけ方」. 人がむかついた。(ブンプン 6年)/. 1∼4年用,5,6年用,先生用に分けて値段を つけたところもある。. 3.“お店やさんごっこ”実践の評価. [1∼4年用]小さいから値段を高くしてもあま り考えないで買っていくだろう。. あえて商品をできあがったもの(バザー形式)で はなく,ものづくりから出発したのは,自分たちの. 【→一番高くした。. 商品が“労働生産物であり,それが使用に耐え得る. [5,6年用]“お店屋さんごっこ”をしていて,. という現実性を備えたもの”というところにこだ. 自分たちも含めてお金がないだろ. わったためである。これは経済に限定してのごっこ. う。. 遊びの基本的視角であると考えるが,それに加えて,. →一番安い。. 今回の実践では意志選択行為と利潤追求のゲーム性. [先 生 用]1∼4年生と一緒の扱いなのだが,. 2本買うと1∼4年生が2本員う. が評価しうるところである。 経済行為の一面である“ごっこ遊び”の中で現れ. ときよりなぜか安くなってしま }59−.
(11) 平田 朋美・倉賀野志郎. う。 買う側を意識した一つの“戦略”といえよう。そ. 換していくことによって,ゲーム的要素は自動的に 授業の中に組み込まれていく。つまり,社会科って. れにしても値段の根拠が子ども独特で大変おもしろ. 何なのだろうかという確認さえあれば,“学習をゲー. い。. ム化しよう”などと力む必要など,最初からなかっ “ものづくり”の方に気が向いているこどもが多. た」ことになる。ここで要請されてくる「“仮説の. い中,この後,子どもが‘‘ものづくり”から,経営. 設定と吟味”という意志決定の際に不可欠なステッ. に目が向いてくるようになると,さらにおもしろい. プを学習の中に組み込む」とともに「いかに説得的. 展開が期待される。. な事実や論理を示すか,いかに他者の提案の弱さを. また,べっこうあめの班にはわりばしにこびりつ いてしまったあめまで売る,プラ板班ではうまく. 指摘するか,緊張の連続。これはまさにゲームであ る。」2)。. キーホルダー状にならないくずれたものまで「10円. 対象そのものが,ゲーム性を内包しているならば,. でもいいから売る」というように利潤への意欲はす. そのゲーム性を反映していない教材展開は教育内容. ごかった。. からみても不備があるということになろう。. グラフにして順位づけをはっきりさせたことで,. とりわけ経済の仕組みに着目して山根栄次氏は. 子どもの対抗意識が芽生え,そのため子どもたちの 工夫や戦略がでてくることとなった。ゲームのおも. 「経済についての理解は,社会生活の理解の中のき わめて中核的な位置を占めている_」にもかかわらず,. しろさが授業に反映されたといえよう。. 第1回“お店やさんごっご’から,第2回“お店. 「今日の社会科教育においては,社会生活の地理的 理解や歴史的理解が中心を占めており,社会生活に. やさんごっこ”まで2桓】続けることによって,子ど. ついての不十分な理解しか児童・生徒に育成してい. もの変化を期待して教材を組んだわけだが,結果は. ない」3)点を指摘している。その上で経済教育の問. はっきりと出ている。特に“値下げ過ぎ’の意識,. 題点として「生産労働に対する認識を得た」として. 商品の改良,オリジナル性,商品の生産性の向上な. も「生産労働の科学的認識や社会的分業の認識を目. どは顕著であった。. 標として位置づけてはいても経済思考力を獲得した ことにはならない」ことをあげている。 暗記・羅列教材は論外としても,経済における“行. Ⅱ章 “ものづくり”に経済を組み込む教材の 理論的背景と新たな教材案の提示 1.“ものづくり’’に経済を組み込む教材の理論的. 為’’そのものを反映していないような経済教育の問. 題点の指摘は妥当だと考える。「いかにして生活を 豊かにし,いかにして生産を効率的なものにできる. 背景. かを考えるための経済思考力を育成することは考え. (1)対象そのものも動的構造性を反映しての教材. られていなかった」のである3)。 経済教育は,経済に関する知識に還元されるもの. のゲーム性. 対象の構造そのものが動的なゲーム性を有してい. ではなく,今,我々が生きている社会における経済. ないにもかかわらず,教材そのものにゲームを持た. 行為の動的状態についての把握と,意志決定という. せても,興味等を持たせ方は異なった意味となろう。. 行為・選択行為は重要な教育要素であろう。この点,. 経済学の教育そのものはゲーム的性格を有している. 従前の教材構成は,科学的認識の認識内容の静態的. と考える。. 形態にのみいきがちではなかっただろうか。経済は,. 社会科・地理に限定してのことではあるが,山口. まさに経済行為を組み込んでのものであろう。. 幸男氏は「現実世界を取り上げることが第一義的に. かって自らからの行為を組み込んだ科学の教育の. 重要であると考えたい」として「現実世界に全く根. 必要性を提起したことがあるが,経済教育もその性. をもたないものは対象外」1)としゲーム教材を考察. 格を有するものであると考える。. している。この山口氏の「社会科本来の目標をふま. 山根氏は「経済的な意志決定能力の育成にその目. えたゲーム」1)の必要性を受けて,′ト西正雄氏は,. 的が置かれている」として「経済思考力の育成をよ. 次のように提起している。「覚える社会科」やl ̄調. り重視しなければならない」としている。「認識自. べ追求する社会科」から,「提案する社会科へと変. 体を自己目的化」せずに,「何のための科学的な杜 60 −−−.
(12) 恥48.. 『僻地校における経済の仕椒を考える“ごっこ遊びけ教材その授業実践・課題と教材構成提案』. 会認識なのか」を明らかにするためには,「経済シ. にもかかわらず,“ものづくり’’からの接近は,. ステムの中で,現在・将来において様々な経済行為. 生産関係にどのように認識を深めていくのかという. や経済的役割を合理的に成し遂げていくことができ. 課題を持つこととなっている。その生産力から生産. るように」3)構想する社会科では,ゲーム性を教材. 関係への飛躍を課題としての教材構成が試みられて. に付与するというものではなく,その対象そのもの. いる実践もないわけではないが,少ないようである。. がゲーム性を有する領域の一肌一つとして位置づけてい. 何故に,生産力の“ものづくり’’等の実体的・体験. くことができるであろう。. イメージから,生産関係に接近する課題が難しく. 1994.3. なっているのだろうか。. ものをっくらない教材も問題があろうが,生産力. (2)“ものづくり’’を経済に組み込む. 体験・ものづくりに着目しての社会科・授業/教. から生産関係へと飛躍していくためには,ものをつ. 材諭が今,提起されつつある。j一▲知識・理解」より. くるだけでもうまくはいかないだろう。生産力に対. も「関心・意欲・態度」を重視するという「新学力」. 応するいわゆる『労働過程』に着目をしながらも,. 論に呼応しての動きではないが,従前の「知識・理. 生産関係に対応する『価値増殖過程』に組み込まれ. 解」をさらに深めた授業・教材が要求されつつある. ている局面にも着目する必要があると考えるからで. ことは確かである。. ある。 ここでは,生産関係概念が前節で述べたように静. “ものづくり’’を『社会科の授業をっくる会』で. は生産力サイドから社会総体,とりわけ生産関係に. 態的にしか把握されていないとともに,関係概念に. 接近する手法として考察しており,これはただ単な. 組み込んだ上での“ものづくり”が位置づけられて. る経験主義とは一線を画している。思いっきとして,. いないからと考える。. とにもかくにも体験するというようなものづくりと. 経済学において,貨幣/商品の関係は,資本/労. は異なっていて,白井春男,久津見宣子の両氏の授. 働力という対関係の,現実社会においては抽象的表. 業構想,実践は多数紹介されている4)。川上泉氏は,. 現となっている。理論的展開過程に基づいて,. 『社会科の授業をつくる会』の実践について,あえ. 値形態論』等の貨幣の論理に着目しての教材は,約. で ̄単純に図式化」して次のように表現している5)。. 束事の範囲を脱却しにくい。剰余価値を生み出す関 係においてのみ,貨幣/商品関係は現れてくる。同 様に,資本/労働力関係も,動的な再生産構造の抽 象的表現とみることも可能であろう。 利潤,地代,銀行等の発展された姿から入ること ば現実の総体をそのまま把挺するとして困難である としても,理論的な範囲ではあるが,動的な構造に まずは着目するという教材の展開方法はありうると 考える。“ものづくり’’は,その剰余価値を生み出 す再生産構造に組み込んでの考察を,あえて行って こなかっところに,生産関係への飛躍を難しくして いると考える。 再生産構造を分析するための,資本の流通過程に おいては,貨幣資本の循環,生産資本の循環,商品 資本の循環が,資本の諸変態を位相をずらした形で. 歴史が暗記物とされている現状において,政治・. 考察する場合に現れる。この考察は,経済そのもの. 出来事年表よりも,まずは事象の歴史的必然性を,. の分析に基づくものであるが,ここで,個々の循環. 生産力に考察する視点から接近するという考えは正. への着目を,経済教育に転用させていけると考えて. しいと考える。実体的イメージ,体験等をもち得な. いる。. い歴史認識は,ひからびた知識・理解しか提起しえ. 最初は子どもにとって貨幣資本サイクルへの着目 においては,最も直接的に商売による“もうげ’と. ない。 −61−. 『価.
(13) 平田 朋美・倉賀野志郎. して現象しているように見えてくる。商売によって,. ているが,準備段階での意志行為は,その背景のも. 利潤をつけ加えることによって富を得るというイ. つ意味に迫る教育活動となると思われる。. メージが多い。資本に着目するならば,まず最初に. 今回の“お店やさんごっご’では,前後のカリキュ ラム上の位置づけも欠いた段階で,構想したもので. “ものづくり”等の生産過程に焦点をあてるという 方法もあろうが,あえて,意欲・関心を引き出す導. あるにもかかわらず全体として6時間もの貴重な時. 入方法としては,貨幣に着目した方がよいと考える。. 間を費やすこと,準備に手間とお金がかかり(特に. この貨幣サイクルを前提として,そこで“もうけ’’. 商品セット),教師の負担が大きすぎるという問題. るため,ものをっくらざるを得ないという側面から,. があげられる。しかし,これは授業そのものの実現. いわゆる“ものづくり’’を導入する形となる。つく. 性としては,学校教育への適用の可能性はありうる. られたものは商品として現出するわけである。この. と考えている。. 場合,“ものづくり”の題材としてパンづくり等を. 今回は授業実践にあたって,①クラスの子どもに. 扱うことが可能であろうが,『社会科の授業をっく. ある程度のものづくりの経験がないこと,②子ども. る会』等の実践とは位置づけが異なってくることと. に商品を決めさせて,授業の趣旨に合うような商品. なる6)。. 選びができそうにないこと,③っくる材料の調達ま. この過程を踏まえた上での“ごっこ遊び”を行い,. でやらせる時間のゆとりがないこと,などが要因に. 再び再生産過程を行うとするならば,という展開か. なり前述の授業形式にした。教材と現実社会との対. ら,もうけを資本として活用することを提起する展. 応をいかに考えたらよいか,という問題もあり,確. 開が可能となろう。この場合,貨幣資本を活用して. かに“お店やさんごっご’を通して,生産→売買→. 生産・商品を作成,それが再び貨幣資本として活用. 再生産の基礎的な原理段階を体験できるが,もっと. するという再生産構造の一端を考察するという展開. 現実社会との対応がなければ,子どもにとっては結. で終わる形となる。. 局実生活と掛け離れた世界,俗に“ごっご’といわ. ここでの位置づけは,いわゆる‘‘人間の歴史’’に. れる世界にいきついてしまうと危惧される。その現. おける生産力に着目してのものづくりを動的な経済. 実対応性を考えていくと,今回の“ごっこ遊び’’は. 行為という局面での現れとして把握する視点から教. さらに展開しうる可能性がある。 例えば“パンづくり’’はものづくりでもポピュラー. 材を展開する形となっているわけである7)。. なもので,多くの実践が報告されているが,それを 2.新たな教材実の提示. 経済的視点から出発して組み直すと,パンの製造過. 今回の授業実践においては,授業時間の設定枠そ. 程だけではない,経済全体に広がるより本質的な教. のものの制約から,‘‘ごっこ遊び”の前段部分と,. 材となり得ると考えている。原料(小麦粉,バター,. 後続部分とを十分に展開することはできなかった。. イースト菌等々)を手に入れる段階から,パンづく. 後続部分は,再生産構造に組み込んで,再び“ごっ. り,販売,再生産という流れを通して経済をみるな. こ”を続けるとするならば,準備のための資材を含. どは,現場の授業として可能であり,そういった身. めて,どのような点を考慮しなければならないのか. 近な産業を取り上げることで,現実の社会とのつな. という内容を含んでいる。. がりもスムーズになるだろう。このような経済的側. 実践の前段部分で,資材,商品量との対応を意識. 面からの接近は,また一般に“ものづくり’’とよば. しての模擬貨幣量の決定及び値段設定等の“ごっこ. れている教材の幅を広げて行くものとも考えられ. 遊び”の条件を,こちらで準備した上で始めざるを. る。. 得なかった。“ごっこ遊び’’のゲームには,決定意. このような位置付けに基づく‘‘お店やさんごっご’. 志選択行為という重要な内容を有しており,“ごっ. 教材構成の案としての次のような展開となろう。. こ遊び”を準備するという準備行為そのものを教材. [改訂:お店やさんごっこ構成案]. として設定していく必要があると考えている。“ごっ. ①全校の学校祭バザーなどの企画として,とりわけ. こ遊び”は,ゲーム用として設定された範囲内で教. 高学年に関しては経済分析の対象として“お店や. 育活動の一環として組まれたものであり,ごっこ行. さんごっこ”考える. 為そのものが,設定された範囲内での行動とはなっ. (診高学年を中心に“商品”を選定し,案を作成する − 62−.
(14) Na48.. 1994.3. 『僻地校における経済の仕椒を考える“ごっこ遊び”教材その授業実践・課題と教材構成提案』. ③学校全員から負担金(例えば1人100円)を集め,. いにしてきた商品相互の価値基準による構の比較が. 資材購入の資本とする. 可能になる。. ④班で商品の原料調達,生産,値段をっける等,今. そして学校祭終了後に,それまでに子ども連が活. 回のごっこ遊び部分を踏襲する. 動した流れをもとに総括するのだが,活動の最初に. ⑤その金額に対応させて,ごっこ遊び用の貨幣がど. 負担金(資本)があり,原料調達があり‥と,現実. のくらい必要なのかを考え,作成する。. の商品経済と対応しているので,現実社会とのつな. ⑥実際学校祭で販売し,増益で負担金の穴埋めをす. がりはスムーズになるだろう。また図表等を用いて 再生産構造の大枠をとらえることによって,自分た. る. ⑦学校祭後,経済的視点から総括をする. ちの行為の意味を整理して考え,経済的視点を身に. ・再生産するとしたら,何が必要なのか(資金,. つけることが可能になるだろう。. 原料,労働力等). 経済ついて小学校の発達段階で理解,把握させる. ・原料代を把捉したうえで,再生産を意識すると,. ことを対象とした実践は少ない。しかし今回の実践. 値段のつけ方はどうするべきか. を通して,ともすれば我々大人をはるかに越える,. ・商売して得た利益を何にあてるのか(再生産の. 豊かな発想や経済的視点を子どもたちがもっている. 原料,個人消費). のだということを思い知らされた。そして,これは. ・再生産構造を図表等でまとめ,現実社会の貨幣. また僻地等の小人数教育においては特に実現の可能. と商品の流通を把握させる. 性が高まると考えられるし,さらに本質的な教育内. ・現実社会での1産業を再生産構造的視点から見. 容をもつ教材の開発が,僻地教育において求められ るであろう。. 直す. 普通は学校祭バザーというとPTAが中心になる ものだが,ここでは高学年が自ら原料を調達し,自 [注]. 分たちで商品をっくり,バザーで売り,もうける, という流れをつくる。全校を巻き込み,また父母の. (1)山口幸男 他,『シミュレーション教材の開発. 理解,協力を得ることによって,子どもとお金,経. と実践』,古今書院,1993年 山口氏は『教育科. 済についての学習の幅が−【一一層広がるであろう。しか. 学 社会科教育』(1990年4月号∼1991年3月号:. し,“ごっこ遊び’’として,子ども自らがバザー用. 明治図書)に†■hシュミレーション教材,こう作る. 品として“もの’’を集め,もうけを考えての商売を. ・こう使う」を連載している。. 行う学校祭等での企画はあるが,これでは経済教育. (2)小西正雄,「学習のゲーム化と社会科教育:社. という意味は有していないと考える。. 会科の学習ゲーム≠このままでいいのか」,『教育. 負担金を集め,現実社会の貨幣を扱うことによっ. 科学 社会科教育』,明治図書,1990年11月号. て“ものをっくる”と,貨幣と対応するごっこ(バ. (3)山根栄次,『“経済の仕組み”がわかる社会科授. ザー)用模擬貨幣の価値がはっきりとしてくる。ま. 業:経済思考力を子どもに育てる』,明治図書,1. た商品の値段のつけかたなども,今回の実践よりも. 990年. 更にリアルになるだろう。そして生産する商品総量. (4)社会科の授業を創る会,『授業を創る』,授業を. がわかると,つくらなくてはならない貨幣総量(模. 創る杜,1巻1号(1980年)∼2巻10号(1986年)/. 擬貨幣)について,商品総量と貨幣総量の対応を教. 白井春男/久津見宣子,『ものをつくることと授. 材に組むことができるだろう。. 業』,日本書籍,1985年等が出版されている。. 改訂版では負担金をもとに,子どもたち自らが原. (5)川上 泉「ものをつくる授業:10年間の軌跡と. 料調達をすることで,教師の負担が軽減されるとい. 課題」『授業を創る:理論篇ものをつくることと. うことばかりでなく,今回の実践ではできなかった. 社会認識』,授業をつくる社,1983年4月,p57. 原料調達の段階の経済的活動が可能になる。つまり. (6)1993年度合同教育全道集会で,遠藤孝一氏は,. 意志選択を準備段階の行為においても発現させるの. “体験しながら取り組む授業”において,パンを. である。原料調達をさせることで,商品の原価につ. 焼こう・ヨーグルトをつくろう・みそをつくろう. いての意識がより一層はっきりとし,今まであいま. に加えて発光バクテリアを育てようという実践を −63−.
(15) 平田 朋美・倉賀野志郎. 報告している。酵母菌,無酸素呼吸と,酸素呼吸 との対比において題材が扱われており,ものづく りも位置づけかた次第で異なる事例といえよう。 (7)かつて,自然科学関係の教材にかかわっての考 察であるが,授業書「バネと力」において,静的 な釣り合い考察から,あえて動的な時間的な変動 過程に着目することによって,その静的な一断面 として抽象化されて釣り合いを位置つけるべきで. あることを提起したことがある。 従前の力の原 理・弾性は,現象に対しては本質的であり,積極 的な役割を果して来た。しかし,認識/わかり方 を深化させた上で,納得の構造を生み出すために は,それらの従前の法則そのものを“現象’’とす る視点を設定する必要があると考える。 ここでの設定視点=動的/微分的/時間的は次. のようなものである。①動的な相互作用を前提と して,その動的平衡構造の静的な現象形態として, 作用・反作用の原理を把握すべきである。(動的 →静的). ②弾性の原子論的イメージ化を徹底するために. は,時間的過程に着目して,安定までの時間的な 過程を意識的に拡大させて把握する。(微分法則 →積分法則,とりわけて時間的な緩和過程を重視 する)この時間的過程を教材において前面に出す。 「力の伝わる時間的・動的過程」をもとにし. て,「物体が止まっている状態・釣り合っている 状態」を考えれば,もっとイメージしやすくなる はずと考える。物を持っている状態で静止してい る場合,物は絶えず落ちっっ,絶えず引っ張り続 けている状態の中で均衡を保っている。また,あ らゆる物体についての抗力を理解させることが可. 能であり,固体だけでなく,液体,気体について も拡大していく余地がある。針金や机のような固 体だけではなく,液体や気体についても同じよう に抗力がある。液体についても同様につぶれつつ,. 押し返し続けてている。これは圧力一般の教材化 への道を開く。. ここでは,この動的視点から静的形態を,そ の一断面として把握する視点の一般性を,社会科 学にも援用したことになろう。. ー64−.
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