釧路市の公立美術館の実態と課題
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(2) “北海道生涯学習研究”北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要 第2号. ReportoftheResearchandEducationCenterforLifblongLeaming−HokkaidoUniversityofEducationNo・2. 平成14年3月. March 2002. 釧路市の公立美術館の実態と課題 眞鍋幸恵1)・福井凱牌2). 1)北海道教育大学釧路校大学院美術教育専攻 2)北海道教育大学釧路校美術教育. TheActualConditionsandIssuesofPublicMuseumsinKushiroCity l)SachieMANABE・2)KachimasaFUKUI l)DepartmentofFineArtEducation,TheGraduateCourse, HokkaidoUniversityofEducation,KushiroO85−8580,Japan 2)DepartmentofFineArtEducation,HokkaidoUniversityofEducation, kushiroO85−8580,Japan. Abstract. Inthepresent,therearetwopublicmuseums,KushiroMuseumofArt,Hokkaidoand KushiroCityMuseumsofArtinKushirocity・Theyinstalledfortheculturepromotion policyandlifblonglearn1nginKushiro/Nemuroarea・Ontheotherhand,theyhavesome problems,forexample,Citizensproblems,forexample,Citizensconfusethem,because. therearetheresemblanceofname,andthelocationofashortdistanceinthecenterofthe city・This report outlines that weinvestigated concrete enterprise contents ofpublic museumsinkushirocity,anddocumentanalysisofvariousstatistics・Onthebasisoftho早e 負ndings,WeCOnSideraboutfunctionsasAdulteducationinstitution,theirproblems,and. suggesttheMuseumeducationcloselyrelatedtocommunityandthefutureprospects・ Keywords:美術館教育(Museumeducation),美術館調査(Museuminvestigation)・釧路(Kushiro). はじめに. 現在、人口約20万人の釧路市には、北海道立釧路芸術館と釧路市立美術館の二つの公立美術館 がある。(以下釧路芸術館、市立美術館に略)両者は、釧路・根室地域の文化振興政策や生涯学習 の推進として設置された経緯があった。その一方で、「美術館」と「芸術館」と名称が類似してい ることや、所在地が中心部で比較的近距離にあるため混同される課題がある。. 本稿では、釧路市内の公立美術館における具体的な事業内容を調査し、各種統計等の資料分析 を行なった。それらの調査結果をもとに、社会教育施設としての機能や課題を考察し、地域に根 ざした美術館の教育活動や今後の展望について述べたい。. −157−.
(3) 眞鍋幸恵・福井凱将. Ⅰ 美術館調査の実施 1.調査対象の概要 1)北海道立釧路芸術館. 釧路芸術館は平成10年度に開館した。北海道では既に、近代美術館(札幌)、旭川美術館、函館 美術館、帯広美術館の4館と、三岸好太郎美術館(札幌)の、合計5館が道教育委員会の所管機 関として設立・運営されていた。′釧路芸術館はこれら美術館計画終了の後、平成5年に誘致され. たため美術館としてではなく、『芸術館』という名称がつけられた。また、北海道教育委員会が財. 団法人釧路市文化振興財団に委託し、運営を行なっている。他の美術館との大きな違いは、造形 芸術だけでなく音楽や演劇などの幅広い芸術を含んでいることにある。. 2)釧路市立美術館. 釧路市立美術館は釧路市生涯学習センターの3階に位置する。この美術館は、平成4年開館さ れた『アートギャラリー』が、平成12年から博物館法に基づく美術館登録を行い、美術館へと改. 称された経緯がある。アートギャラリーは釧路地方の本格的な美術展示機能を備えた施設として、 展覧会活動を中心に行なってきた。改称後も展覧会活動を基本としながらも、市民に開かれた美 術館£という理念を掲げて教育普及事業を行なっている。. 2.調査項目. 調査項目、「1.美術館の運営」、「2.事業について」、「3.釧路市民と公共文化施設との関わ り」の3点に大別される詳細は以下の通りである。. 表1 調査項目 各調査内容のねらい. 項 目. 1)美術館の概要(設立方針、研究目的など) 美術館全体の事業に関わる、設立方針や研究目的など、理念に関する点についての把握。 2)職員の構成. 職員数や構成の規模、所轄機関の明確化建物や展示室などだけでは、美術館の規模を 図ることができないと考えた。. 3)施設. 所在地や施設の規模や機能について. 展示室の規模だけでなく、市民の交通手段としても重要な駐車場の有無、立地条件も明 確化。 1)展覧会(展覧会の企画・計画、展示会場) 美術館の事業の中でも展覧会事業は核となるが。その事業内容や規模の具体化を図 り、二つの美術館の類似性やまた他の美術館との比較から、特徴を知ることをねらいと している。. ・展覧会や作品収集方針などの具体的な内容. 2. ・広報活動などの取り組みについて 2)教育普及活動 ・具体的な事業内容と実績,学校教育との連携の取り組み (ねらいと具体的な内容、展覧会との関連性) ・釧路芸術館に関しては、構想段階の教育普及事業との内容の比較を図る目的があった。. 1)利用者の層(年齢、性別、職業)と年間利用 ・利用者の層 者数. 来館者の層を把握することは博物館運営でも重視され、特に地域を知る上でも重要で. ある考えられる。実際にヨーロッパや本州の美術館では実施している所もある。美術 館が来館者調査を行ない、市民層の把握を行なっているのか、また、その来館者調査に 関する見解や、印象としての利用者の層について質問した。 3. ・年間利用者 年間入場者数の傾向と推移から、市民の展覧会に対する動向を把握するため。 2)市民によるボランティア・支援団体の活動 実際に導入している芸術館のボランティアの位置付けと活動内容、そして、市立美術. 館のアートギャラリー協力会の活動と実態を明確にする。これらの美術館に付属する 市民団体と美術館の関係性から、市民とのつながりや課題を明らかにしたいと考えた。. −158−.
(4) 『釧路市の公立美術館の実態と課題』. 3.調査方法. 2で挙げた調査項目を北海道立釧路芸術館、釧路市立美術館に送付した。後日、面談方式で調 査項目に関する説明を得た。. ○面談実施日 北海道立釧路芸術館 平成13年11月14日(回答者 事務局1名 学芸課1名) 釧路市立美術館. 平成13年11月20日(回答者 事務局1名 学芸課1名). また、各機関で発行している資料、新聞記事等の資料の収集を行った1)。 Ⅱ調査の結果 面談調査の結果と収集した資料によって得られた結果を以下に整理・分類した。 表2 調査結果1. 1)美術館の概要(設立. 美術に関する市民の知識及び教養の向上を図り、芸術 方針、研究目的など) 優れた芸術作品や芸術活動を紹介し、北国の個性的な 文化形成をめざす活動を展開する。 文化の発展に寄与するため。 ①設立方針 ②事業内容の方針 ①写真などの映像作品・自然をテーマにした作品、釧 ①所蔵作品の収集・保管・展示 路・根室に関連するコレクションの収集・保存 ②美術に関する展覧会、講演会、講座等の開催と奨励 ②時代や国などを問わない様々な領域を対象とした展 ③美術に関する調査研究 ④刊行物の発行. 覧会. ⑤他の美術館、公共機関との連携. ③教育普及事業やライブラリ機能 2)職員の構成. ①所轄機関 ②職員数. 北海道教育委員会(所轄機関)財団法人釧路市文化振 釧路市教育委員会 興財団(委託運営) 財団理事長1名. 館長1名(生涯学習センター長兼任). 館長1名(非常勤). 事務局3名. 副館長1名. 学芸員が2名(改称後1名増員). 管理局3各 学芸諌3名 委託職員6名. 3)■施設. ①所在地 ②建物面積 ③展示室 ④その他施設. 合計14名(6名は委託). 合計6名. 北海道釧路市幸町4−1−5. 釧路市幣舞町4番28号 釧路市生涯学習センター3階. 2,500Ⅰポ(道立美術館一律)独立した施設. 666,13Ⅰポ(展示室の合計) 生涯学習センター内の施設. 展示室(常設展示室なし). ギャラリーAとBの二つの展示室。. 740Ⅰポ(壁面の高さ3m∼10mレンガタイルの壁). ギャラリーA:517二5Ⅰポ(扇型、曲面の壁面) ギャラリーB:143.8m2(展示ケースを含む). ①フリーアートルーム ②美術ワークショップ. 事務室 ①生涯学習センター2階の事務室の中にある。. ③アートホール(209席). ②生涯学習センター. ④音楽ワークショップ ⑤ミュージアムショップ. ター、多目的ホールなどの様々な施設を持った複合施. ⑥喫茶店 ⑦閲覧コーナー. ③バス. 美術館の他に大ホールや和室、ハイビジョンシア 設である。連動して利用されている。 生涯学習センターのバスを利用することができる。. ⑧事務室. @駐車場. その他に収蔵庫などがある 8台心身障害者用(一般駐車場はない。錦町立体駐場、 生涯学習センター駐車場(無料) 1時間無料のサービスを行なっている。). 公共交通機関の利用を促している。. −159−.
(5) 眞鍋幸恵・福井凱将. 表3 調査結果2. ①映像芸術 釧路ゆかりの作家の顕彰にふさわしい作品をはじめ優 (展覧会の企画・計画、 日本の現代写真を中心に、国内外のすぐれた写真作 れた美術作品。ジャンルにこだわらず収集。. 1)展覧会. 展示会場). 品や映像作品を収集。. (D作品収集基本方針. 自然の外観、事物、要素などをテーマとした作品を 主として収集。自然とかかわりをとらえるコレク ションの形成。 ③地域と芸術 釧路・根室ゆかりの代表的作家の作品をはじめ、地域 と関連するすぐれた作品の収集 (参展覧会の趣旨. さまざまなテーマで国内外の優れた美術作品等を紹介 ①教育配慮に基づいた展覧会 する企画展、所蔵作品展。 優れた美術作品をただ展示するだけでなく、わかり やすく、楽しく美術鑑賞ができるように工夫(参加・ 体験型)をした展覧会を開催する。 ②釧路の作家の展覧会 釧路出身、あるいは釧路で活動しているなど釧路に ゆかりのある作家を1回に1∼2人紹介する展覧会。 作品の制作の背景と地域とのかかわりをさぐる。 ③所蔵作品による展覧会 所蔵作品の整理をすすめるとともに、所蔵作品を中 心に構成する展覧会(常設展とは別)を開催。その 他. ③展覧会数 特別展 年4回. 特別展 年3回. 所蔵作品展年1∼2回. 所蔵作品展 年数回. 約20点. 約7紺ノ点(図録が今回の調査段階では作成されていな. (杏所蔵作品点数 かった). (参広報活動. ・新聞やNHKの報道機関。 ・新聞やNHKの報道機関。 ・市町村、近隣公共施設施設、教育委員会へのボス ・特別展において、市内の小中学校の児童・生徒→人 ター・チラシ配布。. ひとりにチラシを配布 ・高校や大学にもポスターを配布。その他の公共施設. やホテルなどの観光施設や、周辺市町村、他の美術 館などにも発送している。ポスターは1000校、チラ シは5万枚作成 2)教育普及活動. 一般の来館者が美術に親しむ機会を提供することにあ ①美術を生活の一部として身近に気軽に感じられる市. (D 教育普及事業のねら り、造形美術を始吟とする様々な芸術分野を含んでい 民層の拡充。 い. ②美術への興味関心を深める場として、主体的、効果. る。. 的に利用できる市民層 ③生涯学習センターの持つ機能を生かした、制作活動 等と鑑賞を一体として活用できる市民層。. (彰具体的な内容、展覧 会との関連性. 【年間プログラム】. 【平成13年度事業内容】. 年間プログラムとして計画されている。講演会:展覧 展覧会に付随した形式で開催されている。特別展チ 会のテーマや展示作品等と関連した講演会. ラシに掲載されている事業をまとめた。 釧路市立美術館開館1周年記念. ①芸術セミナー. 「細江英公の写真1950−2000」. 創作体験や作家と触れ合う機会を通じて、芸術鑑賞 平成13年4月21日(土)∼5月27日(日) と創造への視点を広げるセミナー。. ◆予告講演会 ◆オープニングイベント. ②ジュニア・アートスクール. 対談『写真の極北を語る』. 子どもを対象とした創作と鑑賞の体験プログラム夏 舞踏『細江英公氏におくる舞踏』 休みに開催されている。講師は作家によって行なわ ◆ワークショップ『湿原で舞踏を撮る』 れる。年に1回. 「北海道立函館美術館所蔵作品による−ためして、文 字展」. −160−.
(6) 『釧路市の公立美術館の実態と課題』. 表4 調査結果3 平成13年7月7日(土)∼8月26日(日). ③ミュージアム・コンサート 様々な音楽ジャンルを鑑賞する演奏会. ◆議演会『美術館と書』. ④パフオーミング・シアター. ◆実技講座『親子で書!手づくりアート大会』. 身体表現や人形芝居を鑑賞する公演. ◆アート・レクチャー『筆 文字を楽しむ』 ◆実技講座『陶芸でお皿をつく−る』. ⑤アートシネマ館. ◆実技講座『ろうけつ染め文字アートTシャツ』. (映像フェステイ/ヾル2回). 作品として質の高い作品を上映する。. ◆ワークショップ『大きく書こう』. ※平成13年度上映作品. ◆展示『プチ文字展』. 『馬鹿が戦車でやってくる』. 第26回釧路市民文化展 「アンリ・ルソーと素朴派一世田谷美術館所蔵名品展」. 『吹けば飛ぶよな男だが』 『男はつらいよ』. 平成13年9月15日(土)∼10月21日(日). 『まらそん侍』. ◆講演会『世田谷美術館と素朴派コレクション』. 『ニッポン無責任時代』. ◆作品解説2回 ◆ミュージアムコンサート. 『男はつらいよフーテンの寅』. ◆音楽の日 ◆ワークショップ『イロイロ石に描いてみよう』 ◆体験コ」ナー『イロイワ石に描いてみよう』. (卦 学校数育との連携. a.特別な教育プログラム. や実技講座などを交えた教育プログラムの協同開発を 目指している。」. b.学校の利用状況. ・クラス単位や学校単位の団体利用. ・市内小中学校や児童館の団体鑑賞、. (遠足や行事と.しての利用が多く、通常授業としての ・pTAや老人ホームの利用 利用はあまりない。). ・学校の利用回数は年に数件. ・別海などの遠方の地域、pTA関連。 ・年間二桁前半の利用、「あまり多くない」という職員 の印象。 C.対応. 学芸員の芸術館の施設や展示会についての見所説明の 事前打ち合わせ、教師中心の指導鑑賞前に展示室での 振舞い方の指導を教師が行なっている。. 後、自由閲覧という形式。. d.学校数育との連携に対 する学芸員の見解. が指導をするべき。現在の職員では子どもの対応や噛 みたい。同時に、現場が混乱しないような体制を保ち み砕いた説明ができないd」「学校は郊外授業の困難で. あり、移動費、引率の難しさなどがあって、学校の利用 は難しい。」 「構想段階の指導者育成機関はドリームプランであっ た。」 釧路市民ど公薬事 文化施設どの㈲わリ 1)利用者の層と年間利 現在のところ行なっていない。市民層(年齢、性別、 現在のところ行なっていない。市民層(年齢、性別、 用者数. 職業)の明確な把握をしていない。. 職業)の明確な把握をしていない。. ①利用者の把握 a.来館者調査の実施 b.職員の市民層の印象. 員によると開館時間が午前10時から午後5時までの勤 務時間であるということと、大都市にくらべ青年層が 相対的に少ない。」. C.来館者調査についての 見解. 「将来的にコンビニのよう来館者調査を導入する必要 「アンケートを行なってい挙が、市民層把握のための対 はあるかもしれない。アンケートを行なっているが、 象にならない。一人ひとり出口調査するわけにもいか 正確なデータとして利用できない。」. ない。職業や年齢まで細かく把握するのは難しい。」. ー161−.
(7) 眞鍋幸恵・福井凱照. 表5 調査結果4 ② 年間入場者数 平成11年度. 25961人. 平成12年度. 30360人(+4399). 平成4年度. 38668. 平成5年度. 35250. 平成6年度. 26610. 平成7年度. 3256fi. 平成8年度. 26986. 最小入場者数展覧1090人平成13年2. 平成9年度. 21199. 会『釧路芸術館所 月9日∼3月31日. 平成10年度. 15184. 蔵作品展』. 平成11年度. 21589. 平成12年度. 14901. 最大入場者数展覧18534人平成12年 会『藤子・F・不二度7月20日∼8月 雄の世界展』. 20日. 【二年間の年間入場者と最大最小入場者数】. 【平成4年∼平成12年の年間入場者数の推移】 平成7年から5000人単位で減少している。 2)市民によるボラン 『SOA(ソア Stationofart)』ボランティア団体 『アートギャラリー協力会』 ティア・支援団体の活 対象 大学生以上の成人(中高年の婦人層や高齢者層 支援団体・友の会 動 ① 名称と対象. 対象 大学生以上の成人・法人. が多い). 会員数160名(平成13年). (中高年の婦人層や高齢者層が多い). ※芸術館の管理運営組織という位置付けではなく、支 会員数208名(平成13年) 援組織として位置付けられている。構想段階から、導 入が予定されていた。. 310名(平成6年) 年会費法人10000円 一般3000円 学生500円(平成6年に値下げ) 特典常設展無料、特別展1回の入場無料、展覧会グッ ズの割引き、会報。. (参 事業内容. ①売店活動:ミュージアムショップのグッズや書籍の ①美術館見学 ②美術館講演会. 販売(1F). ②喫茶活動:喫茶店として紅茶やコーヒーの販売(2 ③実技講座 ④アートギャラリーコンサート. F). ③資料・収集整理活動:文献資料、新聞からの美術関 ⑤名作映画会 ⑥機関紙「協力会ニュース」. 係記事の収集・整理(1F). ④広報碍動:ポスター、チラシ発送、掲示協九 内部 ⑦釧路市立美術館企画作品の図録作成。絵はがき、額 広報紙の定期的発行. 絵などの作成配布および販売。. ⑤芸術に関する研修として、学芸員講座聴講と作品鑑 ⑧釧路市美術館で開設する展覧会の共催、後援。⑨展 覧会監視業務などのボランティア活動。. 賞。 ⑥美術館のボランティアとの交流。. ⑲道立芸術館の展覧会及び関連事業への協力。⑪その 他協力会にふさわしい事業。. ③ 市民活動¢課題や美 [ボランティアの声] 術館への要望. [課題]. ①会員の減少. 喫茶部(1名). 「開館後半年たってから所属しました。継続して行な 平成6年では310■人、平成13年度現在208人に減少して うことが大変です。みなさん、途中で止められる方が いる。 多いです。土日もいつもいます。」. ②自主的運営. 資料部(2名). の移行実質的な運営ではなく、市立美術館の事務局に. 「地道な作業ですが、ボケ防止にもなります。今はIT よって運営・管理されている。美術館見学旅行も行な 化をしているのに、手書きでカードを作るのは手間で われているが、学芸員同伴の旅行である。現在は、実 すし、管理するのも大変だと思うんです。予算がない 質的自主的運営及びボランティア活動に向けて検討さ からパソコンを入れられないと思うんですよ。入れた れているが、設立当初からの体制を変えることは難し 方がいいのに。」「公立大生で、就職活動に有利だからと い。地域人材を生かした事業展開を図りたいと考えて いうわけで、ボランティアに来た子もいるんですが、 いる。③会員から美術館への要望 卒業したらやめちゃうんですよ。」. ・美術館の所在地が市民及び市外から訪れる人に解り づらい、交通表示板などで掲示して欲しい。. 販売部(2名). 「一番売れるのは、作品図録ですよ。」. ・駐車場の確保. −162−.
(8) 『釧路市の公立美術館の実態と課題』. 表6 調査結果5 [ボランティアによるアンケート】. [ボランティア導入に関する美術館の考え]. 「ボランティアSOA」(川尻隆夫会長)が、 約150人の会員を対象に実施したアンケート. ボランティアは導入していないが、今後以下. 調査。(平成11年10月13日の釧路新聞の釧路. のような活動を検討している。. 版). 「展覧会などの催しがPR不足」. ①ワークショップヘの協力。. 「とにかく人が来なければ何も始まらないの. ②美術に関する資料収集・整理. で、たくさんの方が足を運ぶきっかけを作っ. ③美術に関する研修会の企画. ていくべき」. ④美術館事業に関する広報活動 ⑤展覧会における解説ボランティアなど. 「芸術館を知らないという人がいる」 「館の所在地が明らかでないという言う人が 多い」. Ⅳ結果の考察. 以上の調査結果を踏まえて、教育普及活動の特性、美術館における市民活動、各美術館の共通 課題と今後の展望の3点ついて考察した。また、[]は調査結果の項目を示した。 1.教育普及活動の特性. 釧路芸術館の教育普及事業では、コンサート、映画上映、講演会等が中心になっている。それ に対して、市立美術館では、展覧会に付随した作品解説、子ども向けのワークショップ等を行 なっている。 1)所轄機関との関連性. 両者の、教育普及事業内容の違いには、各々の所轄機関に拠るところがある[1−2)−①]。市立美. 術館は生涯学習センター内にあり、釧路市教育委員会に所轄されている。また、設立方針の「美 術に関する市民の知識及び教養の向上」には、生涯学習の視点が見られ、美術館が市民の文化理 解や美的体験を促すことを目的としている[1−1)−①]。また、展覧会の基本方針には、「教育配 慮に基づいた展覧会」として、体験的・参加的要素を持たせ. 次に、釧路芸術館は、北海道教育委員会の所轄機関であるが、運営は財団法人釧路市文化振興 財団に委託されているこ この文化振興財団は昭和54年の釧路市民文化会館の設立ととも. れ、主に文化施設の管理や演劇やコンサート等の自主文化事業を実施している。ゆえに、釧路芸 術館の教育普及活動は、文化事業としての鑑賞を主とした普及活動に重きを置いていることが理 解される。. 両者には、道と市の教育委員会における所轄の違いがある。釧路市では、教育行政における社 会教育と学校教育との連携が行なわれているため、市の教育委員会に所轄されている市立美術館 は、市内の学校との密接な関係作りが比較的行ないやすい。 2)事業内容の比較 (彰活動内容の形態. 釧路芸術館では、コンサートや映画上映等の鑑賞事業中心であり、市立美術館では展示室にお ける作品解説や他の施設での実技講座等に重きを置いている。内容の形態を比較すると、一つ目 には、子どもを対象とした教育普及の違いがある。子どもを対象としたワークショップや講座の. −163−.
(9) 眞鍋幸恵・福井凱将. 実施回数は、市立美術館は各特別展に付随した形式で、平成13年の特別展におけるワークショッ プは実技講座も含めると6回実施している[2−2卜②]。一方、釧路芸術館の年間プログラムに あるジュニア・アートスクールは1回開催である。二つ目に、講師別に見ると、釧路芸術館では. 作家がワークショップを担当しているが、市立美術館では、作家の他にも学芸員が講師として陶 芸や絵画などの実技を指導している。 ②施設との関連性. 両者の事業内容の差異には、施設面との関連もある。釧路芸術館ではアートホール、ワーク ショップ室整備されている。よって、音響や照明設備の整ったアートホールを利用した鑑賞事業 が行いやすい。市立美術館では、生涯学習センターにある慧芸室や多目的ホールなどの施設機能、. バスを利用できる利点がある[1−3)−④]。実際に、書や陶芸の制作活動や『イロイロ石に描い てみよう』等の郊外におけるワークショップを行なっている[2−2卜②]。. 3)学校教育との連携について 釧路市内の学校における公立美術館の利用数は、市立美術館は2∼3件あるいは釧路芸術館は. 十数件である。[2−2)−③−b]あまり、市内の学校では美術館があまり利用されていない状況 である。学校の美術館利用が少ない理由について、釧路芸術館では、学校の引率の難しさを指摘 している。その一方で、「現在の職員では子どもの対応や噛み砕いた説明ができない。」という問. 題を挙げていた[2−2−③−d]。一方、市立美術館では、「学校教育と社会教育の連携につい て前向きに取り組みたい。同時に、現場が混乱しないような体制を保ちたい。」と回答している. [2−2)−③−d]。実際に、同館は平成14年度からの新教育課程を考慮した事業展開を目指して いる。現在は計画準備段階であるが、特別展に付随した体験活動を開催し、展示室にワーク. ショップコーナーを設置している。これらの参加型の事業は、子どもの美術館体験を促すことに よって、将来の美術愛好家を育成する長期的な展望にもとづくものである。. 学校教育との連携では、釧路芸術館の平成5年の構想段階における基本的機能に、指導者育成 を中心とした美術、音楽等について鑑賞、発表を含めた教育普及機能£が含まれていた。だが、現. 在の教育普及事業には指導者育成の視点は含まれていない。それに対して、釧路芸術館は「構想. 段階の指導者育成機関はドリームプランであった」と回答している[2−2)−③−d]。だが、教 育普及事業は、運営者と利用者という単純な構造ではなく、利用者によって永続されるという信 念によって確立すべきである。よって、学芸員自らが、児童生徒、教師に対して、作品解説や講. 座などの直接的な働きかけが求められるだろう。 2.美術館における市民活動 1)釧路芸術館の「SOA」と市立美術館の「アートギャラリー協力会」. 美術館にボランティア団体や友の会の導入が増え、市民が積極的に美術館の事業を支援する取 り組みが注目されている。釧路芸術館では、「SOA(ソアstationofart)」という市民ボランティア が導入されている。市立美術館も前身の「アートギャラリー」から友の会、支援団体として「アー. トギャラリー協力会」がある[3−2)−①]。両者の違いは、ボランティアと友の会の差であり、 「SOA」の運営は市民によって行なわれ、「アートギャラリー協力会」は美術館の職員が事務局を 担当している。また、事業内容を比較すると、「SOA」はミュージアムショップ、喫茶や広報活動. −164−.
(10) 『釧路市の公立美術館の実態と課題』. などの常時交替制で運営をしている。それに対し、「アートギャラリー協力会」は監視や受付等の ボランティアよりも、学芸員同伴の旅行、入場パスなどの特典が主となっている[3−2ト②]。 2)市民活動の課題. まず、今回の調査で行なった「SOA」に対するインタビューでは、組織や活動における課題が 見られた。[3−2ト③]一つには、喫茶や資料整理等の地道な仕事が多く、継続して行なうこと. が難しいことがある。二つめには、就職対策のために一定期間だけ所属する大学生への懸念が あった。三つめには、資料整理において、コンピュータの導入、作業の効率化を図りたい半面、 予算配分の少なさが課題となっていた。次に「アートギャラリー協力会」の課題について、一つ には会員の減少がある。平成6年では310人の会員がいたが、平成13年度では208人に減少してい. る[3−2ト③]。二つめは、実質的な運営を美術館に依存している点があった0市立美術館では、. 美術館主導型の事業から協力会の実質的運営やボランティア活動の推進を図ろうとしている。だ が、会員の意識改革や組織作りがあり、体制の転換には時間がかかるだろう。. 公立美術館のボランティア導入は、人手不足解消や制度的な理由ではなく、市民の生涯学習の 場としての位置付けが望ましい。また、学生の参加を促すためには、長期的なボランティア活動 よりも、インターンシップ制度としての短期的な研修機会を行なうことが有効である。 3.両美術館の共通課題と展望 1)年間入場者数の不振と市民の認知度の低さ. 美術館の入場者数不振は全国的な問題であるが、釧路市内の公立美術館でも深刻な課題の一つ. である。市立美術館の年間入場者数は、平成4年の開館当初における入場者数の半分以下に減少 した[3−1−②]。また、平成11年度の釧路芸術館の年間入場者数は、人口17万人の帯広市に設置 されている帯広美術館の約半分であり、道立美術館の中でも最も低いのが実態である。(北海道 教育委員会、『第52年報』によると、同年の釧路芸術館の入場者数は、25,961人、帯広美術館は 55,120人). 両者の年間入場者数の不振要因に、「SOA」や「アートギャラリー協力会」が指摘したように、. 所在地の不明確さや、駐車場設備の課題がある[3−2)−③]。その背景には、釧路市の中心部に は駐車場があまりなく、人口の郊外への流失に伴う都市部の空洞化があるだろう。したがって、 市民の主な移動手段は自家用車であるため、駐車場や標識案内の整備改善が求められるだろう。 また、両館の課題には、名称の類似性や所在地の近い等の類似性があることを本稿の冒頭で述べ たが、所蔵作品と展覧会で扱う美術作品の不明瞭さが挙げられる。他の自治体に複数設置された 美術館では、主として彫刻と絵画等や時代等によって、差異化を図っている。だが、釧路芸術館 では写真を所蔵する特性があるが、それ以外では、北海道ゆかりの作家による所蔵作品展、国内 外の美術館名品展があり、多様な領域を扱う点で共通している[2−1−①,②]。よって、施設面 や両者で扱う美術の領域における不明瞭さが、市民の認知度の低さを招き、入場者数の伸び悩に つながっていると推測される。. 2)地域における美術館の社会的必要性. 両者は、所蔵作品や展覧会等で類似性が見られたが、釧路芸術館は文化普及サービス、市立美. −165−.
(11) 眞鍋幸恵・福井凱脾. 術館は教育サービスに力を入れて、教育普及事業の差異化を図っている。しかし、両者が有機的 な機能を果たすためには、現在の展覧会に付随した形式や単発の事業では、来館者の市民層の拡 充、子どもの美術館体験の助長は期待できない。また、道東地域では、学校教員の図工・美術科 の研修機会が少ないことや、児童・生徒の鑑賞機会が限られている。また、市民向けの公開講座 や大学生の研修・研究活動としても美術館利用が期待されている。したがって、釧路市内の公立. 美術館は、過疎地域における鑑賞教育の社会的必要性を把握し、継続的かつ双方向性のある教育 活動を行なうことが望ましい。また、人的交流や協同研究を通して、美術館と地域、学校の三者 がお互いに補完し合う関係性を構築することが有効であると考えられる。. −166−.
(12) 『釧路市の公立美術館の実態と課題』. 註. 1)収集した資料について以下に記す 北海道立釧路芸術館に関する資料は以下の通りである ・要覧. ・平成10∼13年行事予定表 ・平成13年アートシネマ館案内パンフレット ・平成13年度のご案内. ・道立釧路芸術館ボランティアの会SOAの目的とその活動 ・平成12年度事業実施報告. ・「ボランティアSOAによるアンケート調査」、釧路新聞、平成11年10月13日付. ・北海道教育委員会「資料編(芸術・文化)」『北海道教育委員会第52年報』平成11年度、p128 −131. ・『北海道立釧路芸術館(仮称)設置基本設計費』および、『北海道立釧路芸術館(仮称)設置 基本構想(案)』、平成6年3月 釧路市立美術館に関する資料は以下の通りである ・釧路市美術館条例(平成12年3月22日釧路市条例第38号) ・釧路市立美術館アートギャラリー協力会規約. ・生涯学習の手引き−釧路市生涯学習年報・生涯学習センター事業、釧路市公式サイト URLhttp://www.city.kushiro.hokkaido・jp/sg−Sinkou/nenpou/nenpouO9・html ・平成13年度のご案内 ・各種展覧会案内. ・アートギャラリーおよび市立美術館展覧会実績(平成4年から平成12年). ・「入場不振の市アートギャラリー」北海道新聞の夕刊、平成6年4月5日付 ・「新しい展覧会の楽しみ方」釧路新聞、平成13年10月8日付. 参考文献. 1)新井義史・佐々木宰『図工・美術教員の研修の現状(1)(2)一釧路管内の教員を対象とし. たアンケート調査から−』北海道教育大学紀要、2号、1995年、p251−266、p143−154. 2)ピエール・ブルデュー他著、山下雅之訳『美術愛好』木鐸社、1998年 3)嶋崎吉信、清水直子『がんばれ美術館ボランティア』淡交社、2001年. 付記. 本研究では、調査結果と分析に関しては眞鍋幸恵が行い、全体のまとめを眞鍋幸恵と福井凱将 の両者が行なった。. また、本研究の調査に当たり、北海道立釧路芸術館、釧路市立美術館にはご多忙の折にも関わ らず、ご協力・資料の提供を頂いた。記して、心から謝意を申し上げたい。. −167−.
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