イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツールとして利用する試み(3) : 小学校理科第4学年「もののあたたまり方」単元を事例として
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第62巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.62,No.1. 平成23年8月 August,2011. イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツール. として利用する試み(3) 一小学校理科第4学年「もののあたたまり方」単元を事例として−. 舘 英樹・相野 彰秀*・佐藤 未菜**・三宅正太郎***. 北海道教育庁留萌教育局 *北海道教育大学大学院教育学研究科高度教職実践講座 **北海道別海町立上西春別小学校 ***福山大学. ATrialApproach:ImageMappingTestastheWayof StudySupportingToolforKnowledgeAcquisition;Report3. −InCaseofElementarySchooIScience− TACHIHideshige,KAYANOAkihide*,SATOMina**andMIYAKEMasataro*** HokkaidoOfficeofEducation,Rumoi. *AdvancedTeacherProfessionalDevelopmentPrograms,GraduateSchoolofEducation,HokkaidoUniversityofEducation ** Kami−NisTlisyunbetsuTIlementaryScT100l,TJokkaido ***. FukuyamaUniversity. 概 要 従来,授業評価ツールとして多く利用されていたイメージマップを学習支援ツールとして利用できないか という問題意識から,イメージマップを小学校の理科授業において学習支援ツールとして活用する試行授業 を構想し,実践し,その結果に検討を加えた。. その結果,小学校の理科授業にイメージマップを学習支援ツールとして利用すると,中学校における理科 授業と同様に学習者の科学的知識や学習内容や振り返りに加え,学習者の学習意欲に関してもモニターでき ることが分かった。すなわち,小学校の授業においても,中学校と同様に学習者の認知面と情意面の両方を 推し量ることができるツールとして,イメージマップは理科学習の支援ツールとして位置づけられる可能性 が明らかになった。. 39.
(3) 舘 英樹・相野 彰秀・佐藤 未菜・三宅正太郎. はじめに. 本研究は,相野らの3つの先行研究(相野他: 「イメージマップを知識獲得を促進するための学. 全14時間で構成されている。授業実践の対象者は. 公立小学校第4学年1学級32人(男子20人,女子 12人)である。授業は,2010年2月に行われた。 表1には,授業の概要が示されている。. 習支援ツールとして利用する試み」,『北海道教育. 大学紀要』,Vol.60,No.2,pp.109−124,2010.,相野 他:「イメージマップを知識獲得を促進するため. 表1 授業展開の概要 時. の学習支援ツールとして利用する試み(2)」,『北海. ・イメージマップ1を作成する。. 道教育大学紀要』,Vol.61,No.1,pp.197−207,2010.,. ・金属のあたたまりかたに関する簡単な実 験を行い,金属はどのようにあたたまっ. 相野他:「イメージマップを用いた学習支援に関. ていくのかを考え,予想する。. する実践的研究」,『北海道教育大学紀要』, Vol.61,No.2.pp.229−241,2011.)の続編として位. 2∼4. 置づけられる報告である1 ̄3)。. ・水と空気のあたたまりかたを考え,予想 5. ているに過ぎない。第一に,中学校の理科授業に 6∼8. せるための学習支援ツールとして利用すると,学 習者の科学的知識や学習内容や振り返りに加え,. 学習者の認知面と情意面の両方を推し量ることが. 9,10. する。 ・水の一部分を熟して,あたたまりかたを. 調べる。 ・水はあたためられると上のほうに動いて いくかを調べる。. 11∼13 ・空気のあたたまりかたを調べる。. できるツールとして位置付けられる可能性がある こと。第二に,中学校理科授業でのわずか一単元. ・金属のあたたまりかたを調べる。 ・イメージマップ2を作って1のマップと 比較をする。. しかしこれらの報告では,次の2点が報告され. おいてイメージマップを生徒の知識獲得を促進さ. 授業展開の概要. 14. ・もののあたたまりかたをまとめる。 ・イメージマップ3を作って,1,2のマッ プと比較をする。. における有効性の検討が行われただけ。すなわち, 小学校の授業における適用可能性や有効性の検討 は未だ行われていないのである。. 表1から分かるように,教科書に基づく「もの. そこで本研究では,これまで取り組まれていな. のあたたまり方」の単元の授業にイメージマップ. い小学校における試行授業の実践により,小学校. を書かせる活動を導入し,書かせたイメージマッ. 段階でも,イメージマップが児童の知識獲得を促. プを比較させるだけである。. 進するための学習支援ツールとして位置づけられ る可能性を検討することを目的とした。. 本単元では,固体,液体,気体の温まり方の学 習が行われる。そこで,児童に比較させるイメー ジマップの鍵概念は「もののあたたまりかた」と. Ⅰ.イメージマップを用いた学習支援の概要 試行授業が行われた単元とその概要,及びイ メージマップの作成と比較方法を簡潔に述べる。 なお,イメージマップそのものに関する詳細な説. 明は,筆者らの前報を参照されたい1)。. 設定した。. 2.イメージマップの作成及び比較手続き (1)イメージマップの概略. 図1には,児童の描いたイメージマップが示さ れている。. イメージマップは,図1が示すように何重かの 1.試行授業が行われた単元とその概要. 同心円上の中心に,鍵概念に当たる語句が記され. 試行授業が行われた単元は,小学校第4学年A. ている。図1の場合は「もののあたたまりかた」. 区分「もののあたたまり方」単元である。授業は. である。学習者は,中心に配置された鍵概念から. 40.
(4) イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツールとして利用する試み(3). 連想した言葉を同心円の円周上に記入し,線で結. 書き出させる。特に授業者が授業で何を教えよう. ぶ。連想した言葉を“連想語”とい. としていたのかを考えながら書かせる。以下,イ. う。連想語は. 直線的に書いてもいいし,途中で枝分かれしても. メージマップ1と2の比較は比較1と略。. よい。. ③ イメージマップ3の作成とイメージマップ1 と2と3の比較. 単元学習の最後に,鍵概念「もののあたたまり かた方」が記されたイメージマップ3を児童に配 布し,赤色の色鉛筆を用いて5分間でマップを作 成させる。この時の口頭による指示はイメージ マップ1作成時と同じである。. 次いで,「3枚のイメージマップを比べてみよ う」と題された用紙を児童一人ひとりに配布する。. これまでの授業を思い出しながら,3枚のマップ を比べて,授業内容に関連したことで,気がつい. たことや分かったことを5分間で書き出させる。 特に授業者が授業で何を教えようとしていたのか 図1 児童の書いたイメージマップの例. を考えながら書かせる。以下,イメージマップ1. と2と3の比較は比較2と略。 (2)イメージマップの作成と比較 イメージマップの作成及び比較の手続きは次の 通りである。. ① イメージマップ1の作成 第1時の授業に入る前に,鍵概念「もののあた. Ⅰ.イメージマップを学習支援ツールとして 用いたクラスの児童の特徴 イメージマップを学習前,学習途中,学習後の. たまり方」が記されたイメージマップ1を児童に. 時期に作成させ,それらを比較させると,授業に. 配布し,鉛筆を用いて5分間でマップを作成させ. 伴って変容していくイメージマップに加え,それ. る。この時,鍵概念から連想する言葉や鍵概念に. らを比較し,自己の変容や気づいたこと,分かっ. まつわる身近な現象を理科の視点から考えてイ. たことを自己評価した記録が文章として残され. メージマップを書くように,口頭で指示を与える。. る。. ② イメージマップ2の作成とイメージマップ1. 本稿では,児童が作成したイメージマップの連. と2の比較. 想語数の増減や連想の特徴に量的検討を加えると. 第4時の授業終了前に,鍵概念「もののあたた. ともに,児童がイメージマップを比較し書いた文. まりかた」が記されたイメージマップ2を児童に. 章に質的検討も加え,イメージマップを学習支援. 配布し,青色の色鉛筆を用いて5分間でマップを. ツールとして用いたクラスの児童の特徴を抽出し. 作成させる。この時の口頭による指示はイメージ. た4)。. マップ1作成時と同じである。. 次いで,「2枚のイメージマップを比べてみよ う」と題された用紙を児童一人ひとりに配布する。. これまでの授業をふり返り,思い出しながら,2. 1.イメージマップから (り 連想語数の増減に関する検討. 児童の量的な知識獲得や概念形成状況を明らか. 枚のマップを比べて授業内容に関連したことで,. にするために,イメージマップに書き出された連. 気がついてことや分かったことを5分間で文章で. 想語数の増減に検討を加えた。なお,イメージマッ. 41.
(5) 舘 英樹・相野 彰秀・佐藤 未菜・三宅正太郎. プに検討を加えた児童の人数は,3枚のイメージ. 直接関連しない無効連想語が依然としてある程度. マップ1,2,3全てを書いた23名である。. 書き出される傾向は残されるが,イメージマップ. 本単元学習において学習者は,鍵概念が「もの. 1から3にかけて理科学習に関連する有効連想語. のあたたまり方」のイメージマップを3回書いた。. は増加したといえる。. これらのイメージマップに書き出された連想語を. 全て取り出し,それが理科学習に関連するか否か. (2)連想語の属するカテゴリーに関する検討. 児童の質的な知識獲得や概念形成状況を明らか. を筆者らが分類し,数え上げた。理科学習に関連 する連想語を“有効連想語’’,理科学習に直接関. にするために,イメージマップに書き出された有. 連しない連想語を“無効連想語’’と名付けた。そ. 効連想語がどのような種類のカテゴリーに分類さ. れぞれのイメージマップに書き出された有効連想. れるのか検討を加えた。その後,分類された有効. 語数及び無効連想語数が図2に示されている。. 連想語の属するカテゴリーの増減に検討を加え た。. イメージマップに書き出された全ての有効連想. イメージ マップ1. 語を分類するに当たっては,まず最初に次の観点. イメージ. に属する有効連想語を筆者らが分類し,取り出し. マップ2. た。. イメージ マップ3. 本単元では固体及び液体,気体の熟の伝わり方 0. 100. 200. 300. 400. が学習内容として取り扱われている。そこで,熟. 連想語教(話). ■有効連想語□無効連想語. 図2 イメージマップに書き糾された右‘効連想語 数及び無効連想語数. を伝える3つの媒体である「金属」,「水」,「空気」. 及び,それらの「熟の伝わり方」に関する4つの サブカテゴリーを設定した。そして,イメージマッ プ1,2,3に書き出された全ての有効連想語が. 図2より,イメージマップ1には78,イメージ. これらの4つのサブカテゴリーのうち,どのカテ. マップ2には137,イメージマップ3には187の有. ゴリーに属する連想語に相当するかを筆者らが分. 効連想語が書き出されたことが分かる。学習者一. 類した。これらの4サブカテゴリーを統合したカ. 人当たりの有効連想語の平均値はそれぞれ3.4,. テゴリー名は主カテゴリー「単元の学習内容」と. 6.0,8.1となる。イメージマップを書いた時期を. 名付けた。. 要因とする分散分析を実施すると,イメージマッ プを書いた時期に関する主効果は有意であった (ダ(2,66)=15.8,♪<.01)。そこでこれら3つ. その後,残った直接連想語はKJ法を用いて筆. 者らが分類しが)。すると,「もののあたたまり 方に対するイメージ」,「実験器具」,「熟そのも. の平均値の差について全ての組み合わせによる多. の」の3つのサブカテゴリーに分類された。これ. 重比較をBonferroniの方法によって行った。イ. らの3つのサブカテゴリーを統合したカテゴリー. メージマップ1と2,イメージマップ2と3及び. 名は,主カテゴリー「既習・未習事項」と名付け. イメージマップ1と3の間に5%水準で有意差が. た。. 認められた。. 同様に,無効連想語のそれはそれぞれ4.7,5.7, 7.3となる。分散分析を実施すると,イメージマッ. 表2には,分類された主カテゴリーと各サブカ テゴリーに含まれる主な連想語が示されている。. 学習者の理解傾向を検討するために,3枚のイ. プを書いた時期に関する主効果は有意ではなかっ. メージマップに書き出された有効連想語を数え上. た。(ダ(2,66)=1.3,〃.ざ.)。. げ,有効連想語総数に対する各サブカテゴリーに. これらのことから,学習が進んでも理科学習に. 42. 属する連想語の占める割合を3枚のイメージマ、、′.
(6) イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツールとして利用する試み(3). ことが分かる。そのうち,サブカテゴリー「金属」. 表2 カテゴリーと含まれる主な連想語. に属する連想語の割合が28.5%に,「熟の伝わり. カテゴリー. 含まれる主な連想語 主. 方」に属する連想語の割合も10.2%に増加した。. サブ 金属. 金ぞく 金ぞく板. 学習前には,水に関連する身近な生活の中の現象. 金属棒 固体. から,もののあたたまり方を捉えていたが,金属. 単 水. 7亡. の. のあたたまり方の学習後に描かせたイメージマッ. 水 えき体. プ2では,学習事項である金属に関係する連想語. 学 習 内. 空気. 容. 熟の伝わり方. 空気 気体. の割合が大きく増加し,かつ,金属の熟の伝わり. 順にあたたまる 下がつめたい. 方に関する連想語の割合も増えたことがいえる。. まわりにどんどんねつがひろが. 水と空気のあたたまり方の学習後に描かせたイ. る. メージマップ3では,主カテゴリー「単元の学習. もののあたた 既. まり方に対す るイメージ. あたたかい あつい. 事項」に属する4つのサブカテゴリーに含まれる. あたたまる. 連想語数の割合がさらに全体の51.3%に増加した. 未 ロウソク サーモテープ 習 実験器具 事 アルコールランプ 項 熟そのもの 熟 火. ことが分かる。そのうち,サブカテゴリー「空気」 に属する連想語数の割合が9.1%に,「熟の伝わり 方」に属する連想語数の割合も13.7%に増加した。. イメージマップ3では,学習事項である水と空気 プごとに算出し,図に表した。図3には,イメー. に関係する連想語数の割合が増え,かつ,水と空. ジマップごとの有効連想語総数に対する各サブカ. 気の伝わり方及び熟の伝わり方に関する連想語の. テゴリーに属する連想語数の占める割合が示され. 割合も増えたことがいえる。. 児童の考えの広がりを見るために,3枚のイ. ている。. メージマップに書き出された有効連想語の属する カテゴリー数の変化を検討した。しかし,主カテ. イメージ マップ1. イメージ. ゴリー「単元の学習内容」と. 「既習・未習事項」. マップ2. の間には質的相違があるため,3枚のイメージ. イメージ マップ3 0%. 20%. 40%. 80!i. 60,i. 連想語数の占める割合(%). ■金属. ■水 口熟の伝わり方. 口空気. 図3 連想語総数に対する各サブカテゴリーに属 する連想語の占める割合. lOO≠. マップに書き出された有効連想語の属するカテゴ リーの増減を比較するだけでは,学習者の理解の. 変容は明確にならないと考えられる。そこで,学 ■もののあたたまりかたに対するイメージ口. 習者が3枚のイメージマップに書き出した有効連 想語が2つの主カテゴリーを構成するサブカテゴ リーのいくつに属するかを数え上げた。. 図3より,イメージマップ1では主カテゴリー. 一人の学習者が書き出した主カテゴリー「単元. 「単元の学習内容」に属する4つのサブカテゴリー. の学習内容」に属するサブカテゴリー数の平均値. に含まれる連想語数の割合は全体の35.9%である. は,イメージマップ1では0.9,イメージマップ. ことが分かる。そのうち,サブカテゴリー「水」. 2では1.5,イメージマップ3では2.3であった。. に含まれる連想語数の割合(28.2%)が大きいこ. イメージマップを書いた時期を要因とする分散分. とが分かる。金属のあたたまり方の学習後に描か. 析を実施すると,イメージマップを書いた時期に. せたイメージマップ2では,主カテゴリー「単元. 関する主効果は有意であった(ダ(2,66)=10.8,♪. の学習事項」に属する4つのサブカテゴリーに含. <.01)。そこでこれら3つの平均値の差について. まれる連想語数の割合が全体の46.7%に増加した. 全ての組み合わせによる多重比較を加えた。する. 43.
(7) 舘 英樹・相野 彰秀・佐藤 未菜・三宅正太郎. と,イメージマップ2と3及びイメージマップ1. 表3より,児童の記述は6類型に分類できるこ. と3の間に5%水準で有意差が認められた。イ. とが分かる。そのうち,類型Ⅰ∼Ⅳが単元の学習. メージマップ1と2の間には有意差は認められな. 内容に関連し,児童の知識獲得の状態に分析・検. かった。. 討を加えるうる記述である。類型Ⅴ,Ⅵは,学習. 同様に,無効連想語のそれはそれぞれ4.7,5.7,. 内容とは直接関係しない記述である。. 表3より,単元の学習内容に関連し,児童の知. 7.3となる。分散分析を実施すると,イメージマッ プを書いた時期に関する主効果は有意ではなかっ. 識獲得状態に分析・検討を加えうる4つの類型と. た。(ダ(2,66)=2.4,〃.ざ.)。. は「科学的知識」,「学習内容の振り返り」,「科学. このことから,幸カテゴリー「単元の学習事項」. 的知識」,「学習意欲」,「科学的用語・授業内容」. を構成するサブカテゴリーに属する連想語は,授. である。一方,学習内容とは直接関係しない2つ. 業の進行に伴うイメージマップ2から3を書く時. の類型とは「具体的な連想語数,イメージの増減」,. に増加するが,主カテゴリー「既習・未習事項」. 「その他」である。. を構成する連想語は,授業の進行に伴う増減は見. 表3より,単元の学習内容に関連し,児童の知 識獲得状態に分析・検討を加えうる類型Ⅰ∼Ⅳに. られないことが分かる。. これらのことから,授業が進めば主カテゴリー. は,比較1の時期にはのベ39人の児童が49の文章 を,比較2の時期にはのベ40人の児童が74の文章. 「単元の学習内容」を構成するサブカテゴリーに. 属する連想語が書き出される傾向があるといえ. を書いたことが分かる。一方,学習内容とは直接. る。. 関係しない類型Ⅴ,Ⅵには,比較1の時期にはの ベ22人の児童が28の文章を,比較2の時期にはの. 2.イメージマップを比較した記述から. ベ29人の児童が66の文章を書いた。そのうち,類 型Ⅴに分類された記述を書いた児童は,比較1に. (1)記述全体を通して. 鍵概念が「もののあたたまりかた」のイメージ. おいては,のベ16人の児童が22の文章を書き,比. マップの比較は,比較1および比較2の時期に2. 較2においては,のベ24人の児童が59の文章を書. 回行われた。比較1では,26人の児童がイメージ. きだした。. マップを比較し,自己の変容や気付いたこと,分. このことはイメージマップの比較の時期にかか. かったことを文章で77記録した。同様に,比較2. わらず,児童の関心の第一はイメージマップに書. でも26人の児童が140の文章を書いた。これらの. き出された連想語数の増減にあることがいえる。. 文章をKJ法により分類すると,相野らの前報と. このように,イメージマップの比較時期を問わず,. 同様に表3のように分類された1)。. 学習内容とは直接関係しない類型Ⅴの文章を書い. 表3 記述内容の分類とマップ比較時期,文章数および文章を書き出した人数. 文章数 書き出した人数 類型Ⅰ 類型Ⅱ 類型Ⅲ. 44. 科学的知識 学習内容の振り返り 学習意欲. 文章数 き出した人数. 20. 14. 29. 13. 11. 10. 20. 12. 3. 3. 3. 3. 類型Ⅳ. 科学的用語・授業内容. 15. 12. 22. 12. 類型Ⅴ. 具体的な連想語や連想語数, イメージの増減. 22. 16. 59. 24.
(8) イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツールとして利用する試み(3). た人数及び文章数は少なくはない。 加えて,児童の記述した文章を読むと,不適切 または未熟な考えを表した文章も見られるが,「分. たことが分かる文章である。表4中の児童q軋吐乳. 錮,錮の記述も同様である。 児童(3)「空気と水はぐるぐる回りながら温まる. からない」などの否定的な文章は見あたらなかっ. ことが分かった。」の記述からは,空気と水の温. た。連想語数の増減だけに着目した文章でさえも. まり方に関する知識および理解が児童に獲得され. 「1枚目に書いた時に,あまり書けてなかったけ. ど,多く書けるようになった。」,「1より2,2 より3の方が多く書けていてびっくりしました。」 など前向きな感想が述べられた文章が多かった。. たことが分かる。表の中の,児童(1),㈱,㈹,㈹ も同様である。. 児童㈹は「温めたところから順に温まるものは 金属,ぐるぐる回って温まるのが水と空気。」と 書いた。これは,単元の学習内容全てが善かれて. (2)科学的知識を記述した児童の文章記述の特徴 児童が自ら作成したイメージマップを比較し,. 自己の変容や気づいたこと,分かったことを自己. おり,金属,水,空気のあたたまり方が理解され たことが分かる記述である。. 類型Ⅰに分類されるタイプの文章を書いた児童. 評価した文章記録のうち,科学的知識が記述され. は,比較1の時期において14人,比較2の時期に. た文章が本試行授業で最も期待される文章であ. おいて13人である。イメージマップの比較による. る。. 学習の振り返りは,本クラスの児童にとって初め. 表3より,比較1においては,のベ14人の児童. ての体験であったが,どちらの時期においても,. が20の文章を書き,比較2の時期においてはのベ. イメージマップを比較する際に学習内容である科. 13人の児童が29の文章を書き出したことが分か. 学的知識を記述した文章を書いた人数がクラスの. る。これらの文章を詳細に検討するために,表4. 半分以上を占めている。. に,類型Ⅰに分類された児童の文章記述例を示し た。. (3)学習内容の振り返りを記述した児童の文章記. 表4の中の児童(4)の「金属はあたためたところ. から順に温められていくことが分かった。」の記. 述の特徴. 表3から比較1においては,のベ10人の児童が. 述は,金属の温まり方の学習で身に付けさせたい. 11の文章を書き,比較2においては,のベ12人の. 内容であり,この児童が金属の温まり方を理解し. 児童が20の文章を書きだしたことが分かる。これ. 表4 類型Ⅰの科学的知識を記述した児童徒の文章記述例. 45.
(9) 舘 英樹・相野 彰秀・佐藤 未菜・三宅正太郎. らの文章を詳細に検討するために,表5には,類. た。」と記述した。この振り返りの文章が一番期. 型Ⅲに分類された児童の文章記述例が示されてい. 待される記述である。学習を振り返ることによっ. る。. て,単元学習の最初では何が分からなかったが,. 単元の学習後には何が分かったかが明確に善かれ. 表5中の児童(5)「前より,少しよくなった。」,. 児童(9)「1回目のときより,うまく書けたと思. ている文章である。. しかし,児童錮を除く記述からは何がどのよう. う。」,児童㈹「1より,2のイメージマップの方 が,理科に関係あることがいっぱい書けている。」,. にわかったのか,あるいは分からなかったのかは. 児童¢勿「これまで書いてないことが書けた。」の. 不明である。. 記述は,授業の進行とイメージマップの変容を重 ね合わせて学習内容の振り返りが書き出された例. (4)学習意欲を記述した児童の文章記述の曹寺徴. 表3から,比較1においても比較2においても,. である。. のベ3人の児童が3つの文章を書きだしたことが. 児童㈹「イメージマップを書くのが得意になっ た。」の記述からは,イメージマップを学習支援. 分かる。これらの文章を詳細に検討するために,. ツールとして用いた授業を受けて自信をつけた児. 表6には,類型Ⅲに分類された児童の文章記述例. 童の様子が分かる。児童(2)「比較1は実験に関係. が示されている。. ないことだけど比較2は実験に関係あることが書. 表6中の児童(8)「これからもイメージマップを. けた。」の記述からは,単元学習を自ら行った実. 書いてみたい。」,児童飢「今度また書くときは,. 験の面から振り返ったことが分かる。児童錮「最. もっとたくさん書きたい。」の記述は,イメージ. 初は,金属,水,空気の温まり方が分からなかっ. マップ作成の意欲が直接的に記述された例であ. たけど,今は金属,水,空気の温まり方が分かっ. る。. 表5 類型Ⅱの学習内容の振り返りを記述した児童の文章記述例. 表6 類型Ⅲの学習意欲を記述した生徒の文章記述例 文章記述. 文. 時期. 章. 比較1 これからもイメージマップを書いてみたい。 今度また書くときは,もっとたくさん書きたい。 気体や液体はどうやって温まっていくのだろうか。. 46. 記. 述.
(10) イメージマップを知識獲得を促進するための学習支援ツールとして利用する試み(3). 児童㈹「気体や液体はどうやって温まっていく のだろうか。」,児童㈹「なんで,金属の上を伝わ るのだろう。」の記述は,本単元の学習を通して,. 児童は,次のような全体的傾向を持つことがいえ る。. 第一に,イメージマップに書き出された有効連. 児童自ら見出した課題が記述された例である。金. 想語数の増減から,学習の進行に伴い,適切な時. 属の温まり方の学習を通して,児童が知的好奇心. 期に理科学習に関連した連想語が数多く書き出さ. を高めている様子が分かる。. れていく。. 第二に,イメージマップに書き出された有効連 (5)科学用語・授業内容を記述した児童の文章記. 想語の属するカテゴリーの増減から,授業の進行. 述の特徴. に伴い,適切な時期に単元の学習内容に関連する. 表3から比較1においては,のベ12人の児童が. カテゴリーに含まれる連想語が数多く書き出され. 15の文章を書き,比較2においては,のベ12人の. るとともに,単元の学習内容に直接関連しないカ. 児童が22の文章を書きだしたことが分かる。これ. テゴリーに含まれる連想語は,おおむね減少する。. らの文章を詳細に検討するために,表7に,類型 Ⅳに分類された児童の文章記述例を示した。 表7中の児童(4)「水,空気,金属すべて書いた。」, 児童(5)「金属の温まり方を勉強したから金属と書. 第三に,イメージマップを比較した文章の検討 から,学習の進行に伴い適切な時期に単元学習に 関連する科学的知識に関する記述と学習の振り返 りを記した比較の記述が書き出される。. いた。」,児童㈹「金属で分かったことがたくさん あった。」,児童圧力「2と3は,勉強したこと,つ おわりに まり,「金属」固体,「水」液体,「空気」固体の ことが書けた。」の記述は,本単元の授業に関連. イメージマップを知識獲得を促進するための学. した科学用語が記述された例であり,授業で学習. 習支援ツールとして利用した一連の小学校理科の. した内容を書けたと自己評価している様子が分か. 授業実践を終え,児童が書いたイメージマップの. る。児童(4)「実験道具の使い方を覚えた。」の記. 検討及び児童が作成したイメージマップを比較し. 述は,授業で実験技能を身に付けたと自己評価し. た記録に検討を加えた。. その結果,イメージマップを理科授業中に学習. ている例である。. 支援ツールとして利用した小学校の児童は次のよ うな特徴を持つことが分かった。. 3.児童の全体的傾向. これまでのことから,イメージマップを学習支 援ツールとして小学校理科授業に用いたクラスの. 第一に,授業の進行に伴い適切な時期に単元の 学習内容に関連する連想語が数多く書き出される. 表7 類型Ⅳの科学的用語・授業内容を記述した生徒の文章記述例. 47.
(11) 舘 英樹・相野 彰秀・佐藤 未菜・三宅正太郎. とともに,単元の学習内容に直接関連しない連想 付 記. 語がおおむね減少する。. 第二に,学習の進行に伴い適切な時期に単元学 習に関連する科学的知識に関する記述と学習の振 り返りを記した比較の記述が書き出される。. これらのことから,イメージマップを小学校の. 本研究の一部は,平成22年度科学研究費補助金 (基盤研究(C),課題番号22530939,研究代表者. 相野彰秀)の資金援助によって行われている。な お,本研究における役割分担は次の通りである。. 理科授業中に学習支援ツールとして利用すると,. 研究及び授業の構想(相野彰秀),授業実践(舘. 学習者の科学的知識や学習内容や振り返りに加え. 英樹,佐藤未莱),授業実践結果分析(イメージマッ. 学習者の学習意欲に関してもモニターできること. プの構造分析;相野彰秀,感想文の質的分析;舘. が分かった。この傾向は,相野らの前報における. 英樹),授業実践及びイメージマップの構造分析. 中学校の生徒の特徴と合致する3)。すなわち,学. 監修(三宅正太郎),統計処理に基づく文章を除. 習者の認知面と情意面の両方を推し量ることがで. く論文執筆(舘英樹),統計処理に基づく文章及. きるツールとして,イメージマップは小学校にお. び論文校閲(相野彰秀). ける理科学習の支援ツールとして位置づけられる 可能性が確認されたといえる。. 註. 今回の授業実践では,イメージマップの書かせ 方,及び比較のさせ方の手続きは,相野らの前報 によって確立された方法を用いた。しかし,本研 究では授業対象者が小学校第4学年となるため,. 口頭による指示は授業担当教師と協議を行って小. 1)相野彰秀,森健一郎:「イメージマップを知識獲得. を促進するための学習支援ツールとして利用する試み 一中学校理科「水溶液」単元を事例として−」,『北海 道教育大学紀要』,Vol.60,No.2.pp.109−124,2010. 2)相野彰秀,森健一郎:「イメージマップを知識獲得. 学生向けに指示が変更されている。この点の変更. を促進するための学習支援ツールとして利用する試み. も,上述した児童の特徴から安当であると考えら. (2)一中学校理科「水溶液」単元を事例として−」,『北. れ,小学校におけるイメージマップの書かせ方,. 及び比較のさせ方の手続きもほぼ確立されたと考 えられる。. この点に関連して,授業を行った2人の教師に 加え授業観察を行った3人の教師から,小学生に. 海道教育大学紀要』,Vol.61,No.1.pp.197−207,2010. 3)相野彰秀,森健一郎:「イメージマップを用いた学. 習支援に関する実践的研究一中学校理科「天気の変化」 単元を事例として−」,『北海道教育大学紀要』,Vol.61, No.2.pp.229−241,2011. 4)イメージマップの分析の視点は,三宅正太郎:「学. 習者の知識獲得状況を把捉する一方法としてのイメー. 対して授業を振り返えらせる手立てとしてのイ. ジマッピング・テストについて」,『日本科学教育学会20. メージマップの活用の有効性が指摘された。/ト学. 周年記念論文集』,pp.685−693,1996.及び,前掲書2). 生にとっては,何の手立てのないところで自ら学. に基づく。. 習を振り返るのは困難であるとの考えからである。 今後,小学校における授業実践においても,実. 5)川喜田二郎:『発想法』,1967,中央公論社.. 6)分析には,統計パッケージPASWStatistics18を使 用した。以後の分析も同様である。. 験群と統制群を設け,その結果に量的,質的な検. 討を加え,イメージマップが知識獲得のための促 進ツールとして小学校の授業においても有効であ ることを明らかにしたい。. (舘 英樹 北海道教育庁 留萌教育局指導主事). (相野 彰秀 大学院教育学研究科教授). (佐藤 未菜 北海道別海町立 上西春別小学校教諭) (三宅正太郎 福山大学教授). 48.
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