大学生の生活科学習観に関する研究
著者
下木戸 隆司
雑誌名
鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要
巻
25
ページ
261-264
発行年
2016-02-26
URL
http://hdl.handle.net/10232/00029409
− 261 − 2016, Vol.25, 261-264 1.はじめに 「体験重視」「個性重視」「児童中心」を掲げ平 成元年に新設された生活科が,平成4 年度から全 面実施されて23 年が経過した。当時生まれた子 どもが大学卒業して教師になるだけの年月が過ぎ たことになる。この間,新学力観,ゆとり教育, PISA 型学力,脱ゆとり教育,コンピテンシーなど, 学力観や教育観の本質に関わる様々なトピックや 課題が取り上げられ,活発な議論が行われてきた。 生活科の現状課題としては「一部に画一的な教 育活動が見られたり,単に活動するだけにとど まっていて,自分と身近な社会や自然,人にかか わる知的な気付きを深めることが十分でない状況 も見られる」(文部省, 1999)や「学習が体験だけ で終わっている」「活動や体験を通して得られた 気付きを質的に高める指導が十分に行われていな い」(文部科学省, 2008)など,活動や体験が質の 高い学びへと必ずしも結びついていないことがよ く指摘されている。 生活科は他の教科に比べ,趣旨がよく理解され にくいという意見もあり,教師や子ども達に生活 科がどのように捉えられているのかを実際に調査 することは,教える側の意図と教わる側の実態と のズレを低減させ,教育活動の質を高めていく上 で重要であろう。実際,野田(2004)は愛知県下 の公立学校教師に対し,野田・永田(2005)は小 学校3 年生,6 年生,中学校 3 年生,高校 3 年生 に対して意識調査を実施し,教師と子ども達の双 方から生活科が概ね肯定的に受け止められている ことを見いだしている。 大学生を対象にした生活科に関する意識調査で は,探検活動(植田, 2005)や栽培活動(野崎 , 2011),飼育活動(鈴木 , 2006),自己の成長(根 本, 2014)など,個々の活動に限定されるものが 多く,生活科全般に関する認識についてはあまり 論じられていなかった。そこで本調査では,教員 養成学部で学ぶ大学生を対象に,生活科という教 科がどのようにイメージされているかについて吟 味する。野田・永田(2005)の結果と比較しながら, 大学生の意識が小中高生の回答と同様の傾向を示 すかどうかに関しても検討を行う。 2.調査方法 調査対象 鹿児島大学教育学部教科教育科目「生 活科教育」の受講者に調査を実施し,113 名から 回答を得た。この講義科目は,鹿児島大学教育学 部では教員免許法にある「生活科の指導法に関す る科目」に該当するものであり,小学校一種免許 状取得の必修科目となっている。 調査時期 平成26 年度前期の「生活科教育」の 9 回目の講義時間を利用して調査を実施した。 調査項目 質問項目は野田・永田(2005)から「教 科の好き嫌い」「心に残る生活科の活動」「生活科 を学ぶ学年について」の設問を選択した。「教科 の好き嫌い」については「とても好き」「やや好 き」「やや嫌い」「とても嫌い」の4 つの選択肢を 設けた。「心に残る生活科の活動」については,「学 校探検」「公園や野原での遊び」「家族調べ,手伝 い」「休日の家族の過ごし方」「町探検」「町の名 人との触れ合い」「公共施設の利用」「乗車体験」 「季節の変化への気付き」「季節や地域の行事に関 わる活動」「草木遊び」「身近なものを利用した遊 び」「昔遊び」「飼育活動」「植物栽培」「収穫祭」「で きるようになったこと」「成長の振り返り」「年少 児との触れ合い」からなる19 の選択肢を用意し, 複数回答可とした。「生活科を学ぶ学年について」
大学生の生活科学習観に関する研究
下木戸 隆 司
[鹿児島大学教育学系(教育心理学)]A study on the view of "Life Environment Studies" among college students
SHIMOKIDO Takashi
− 262 − 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 第25巻(2016) は,「生活科はない方がよい」「今のように小学校1・ 2 年だけでよい」「生活科のような教科は○○年ま で学習できるようにするとよい」の3 つの選択肢 を設定し,さらに最後のものについては「○○年」 のところに,具体的に何年生までか記入を求めた。 3.結果と考察 教科の好き嫌い 「生活科という教科について小 学校1,2 年生のとき,どのように感じていまし たか」という設問に対し,各々の回答の割合は,「と ても好き」が31.9%,「やや好き」が 65.5%,「や や嫌い」が2.7%,「とても嫌い」が0.0%であった。 「とても好き」「やや好き」をあわせて9 割を超え ており,大部分の学生にとって生活科が好きな教 科であったことが示されている。実際,自由記述 の欄でも「楽しい活動ばかりで,学校が楽しかっ た」「普段の生活のなかではできないことがやれ てよかった」「楽しい授業というイメージ」など といった肯定的な意見が多かった。この傾向は野 田・永田(2005)とも一致する。 心に残る生活科の活動 「生活科の学習の中で心 に残っている活動は何でしたか」という問いに対 し,各選択肢の回答数は以下のとおりであった。 「公園や野原での遊び」87 名,「植物栽培」87 名,「町 探検」72 名,「学校探検」67 名,「草木遊び」62 名, 「昔遊び」61 名,「身近なものを利用した遊び」51 名, 「飼育活動」50 名,「季節の変化への気付き」45 名, 「町の名人との触れ合い」39 名,「家族調べ,手伝い」 38 名,「収穫祭」38 名,「公共施設の利用」33 名, 「成長の振り返り」25 名,「季節や地域の行事に関 わる活動」18 名,「できるようになったこと」18 名, 「乗車体験」17 名,「年少児との触れ合い」13 名,「休 日の家族の過ごし方」7 名であった。 回答の多かった活動5 つを取り上げると,「公 園や野原での遊び」「植物栽培」「町探検」「学校 2 -を あ わ せ て9 割を超えており,大部分の学生に と っ て 生 活 科 が 好 き な 教 科 で あ っ た こ と が 示 さ れ て い る 。 実 際 , 自 由 記 述 の 欄 で も 「 楽 し い 活 動 ば か り で , 学 校 が 楽 し か っ た 」「 普 段 の 生 活 の な か で は で き な い こ と が や れ て よ か っ た 」「 楽 し い 授 業 と い う イ メ ー ジ 」 な ど と い っ た 肯 定 的 な 意 見 が 多 か っ た 。 こ の 傾 向 は 野 田 ・ 永 田 (2005)とも一致する。 心 に 残 る 生 活 科 の 活 動 「 生 活 科 の 学 習 の 中 で 心 に 残 っ て い る 活 動 は 何 で し た か 」 と い う 問 い に 対 し , 各 選 択 肢 の 回 答 数 は 以 下 の と お り で あ 図1 生活科の好き嫌い っ た 。「 公 園 や 野 原 で の 遊 び 」87 名 ,「 植 物 栽 培 」87 名,「町探検」72 名,「学校探検」67 名, 「 草 木 遊 び 」62 名 ,「昔遊び」61 名,「身近な も の を 利 用 し た 遊 び 」51 名,「飼育活動」50 名, 「 季 節 の 変 化 へ の 気 付 き 」45 名,「町の名人と の 触 れ 合 い」39 名,「家族調べ,手伝い」38 名, 「 収 穫 祭 」38 名,「公共施設の利用」33 名,「成 長 の 振 り 返 り 」25 名,「季節や地域の行事に関 わ る 活 動 」18 名,「できるようになったこと」18 名 ,「 乗 車 体 験」17 名,「 年 少 児 と の 触 れ 合 い 」13 名 ,「 休 日 の 家 族 の 過 ご し 方 」7 名 で あ っ た 。 回 答 の 多 か っ た 活 動5 つを取り上げると,「 公 園 や 野 原 で の 遊 び 」「 植 物 栽 培 」「 町 探 検 」「 学 校 探 検 」「 草 木 遊 び」で あ っ た 。上 位5 つの内 3 つ は 身 近 な 自 然 を 扱 っ た 活 動 で あ り , 幼 少 期 の 自 然 と の 触 れ 合 い の 経 験 が 少 な く , と く に 印 象 に 残 り や す か っ た の か も し れ な い 。 逆 に 回 答 の 少 な か っ た 活 動5 つについては「休日の家族の 過 ご し 方 」「 年 少 児 と の 触 れ 合 い 」「 乗 車 体 験 」 「 で き る よ う に な っ た こ と 」「 季 節 や 地 域 の 行 事 に 関 わ る 活 動 」 で あ っ た 。 成 長 の 振 り 返 り や 図2 心に残る生活科の活動 2 -を あ わ せ て9 割を超えており,大部分の学生に と っ て 生 活 科 が 好 き な 教 科 で あ っ た こ と が 示 さ れ て い る 。 実 際 , 自 由 記 述 の 欄 で も 「 楽 し い 活 動 ば か り で , 学 校 が 楽 し か っ た 」「 普 段 の 生 活 の な か で は で き な い こ と が や れ て よ か っ た 」「 楽 し い 授 業 と い う イ メ ー ジ 」 な ど と い っ た 肯 定 的 な 意 見 が 多 か っ た 。 こ の 傾 向 は 野 田 ・ 永 田 (2005)とも一致する。 心 に 残 る 生 活 科 の 活 動 「 生 活 科 の 学 習 の 中 で 心 に 残 っ て い る 活 動 は 何 で し た か 」 と い う 問 い に 対 し , 各 選 択 肢 の 回 答 数 は 以 下 の と お り で あ 図1 生活科の好き嫌い っ た 。「 公 園 や 野 原 で の 遊 び 」87 名 ,「 植 物 栽 培 」87 名,「町探検」72 名,「学校探検」67 名, 「 草 木 遊 び 」62 名 ,「昔遊び」61 名,「身近な も の を 利 用 し た 遊 び 」51 名,「飼育活動」50 名, 「 季 節 の 変 化 へ の 気 付 き 」45 名,「町の名人と の 触 れ 合 い」39 名,「家族調べ,手伝い」38 名, 「 収 穫 祭 」38 名,「公共施設の利用」33 名,「成 長 の 振 り 返 り 」25 名,「季節や地域の行事に関 わ る 活 動 」18 名,「できるようになったこと」18 名 ,「 乗 車 体 験」17 名,「 年 少 児 と の 触 れ 合 い 」13 名 ,「 休 日 の 家 族 の 過 ご し 方 」7 名 で あ っ た 。 回 答 の 多 か っ た 活 動5 つを取り上げると,「 公 園 や 野 原 で の 遊 び 」「 植 物 栽 培 」「 町 探 検 」「 学 校 探 検 」「 草 木 遊 び」で あ っ た 。上 位5 つの内 3 つ は 身 近 な 自 然 を 扱 っ た 活 動 で あ り , 幼 少 期 の 自 然 と の 触 れ 合 い の 経 験 が 少 な く , と く に 印 象 に 残 り や す か っ た の か も し れ な い 。 逆 に 回 答 の 少 な か っ た 活 動5 つについては「休日の家族の 過 ご し 方 」「 年 少 児 と の 触 れ 合 い 」「 乗 車 体 験 」 「 で き る よ う に な っ た こ と 」「 季 節 や 地 域 の 行 事 に 関 わ る 活 動 」 で あ っ た 。 成 長 の 振 り 返 り や 図2 心に残る生活科の活動
− 263 − 探検」「草木遊び」であった。上位5 つの内 3 つ は身近な自然を扱った活動であり,幼少期の自然 との触れ合いの経験が少なく,とくに印象に残り やすかったのかもしれない。逆に回答の少なかっ た活動5 つについては「休日の家族の過ごし方」「年 少児との触れ合い」「乗車体験」「できるようになっ たこと」「季節や地域の行事に関わる活動」であっ た。成長の振り返りや身近な人々との触れ合いに 関する活動の印象は希薄なようである。 こうした傾向は野田・永田(2005)のものと概 ね一致しており,自然との触れ合い体験の強さ, 鮮烈さを改めて裏付けるものとなった。自由記述 では「植物を育てたり,ウサギの世話をしたりし たことはよく印象に残っている」「生き物に対す る愛情が自然と感じられたと思う」「自然と触れ 合う楽しさを学べた」といったものが見られ,身 近な自然との関わりのなかで生き物への親しみ, 命の大切さや美しさに気付いたことに言及した者 が多かった。情意的な学びを尊重する生活科の特 色がよく反映されていると考えられる。 生活科を学ぶ学年 「生活科のような教科がどの くらいまであった方がよいと思いますか」とい う設問に対する回答率は,「生活科はない方がよ い」0.9%,「今のように小学校 1・2 年だけでよ い」85.7%,「生活科のような教科は○○年まで学 習できるようにするとよい」13.4%であった。最 後の選択肢の内訳は「3 年生まで学習できるとよ い」3.6%,「4 年生まで学習できるとよい」7.1%, 「6 年生まで学習できるとよい」2.7%であった。 野田・永田(2005)の調査では,生活科は小学 校低学年だけでなく,上学年まで学べた方がよい という回答が半数以上を占めていたが,本調査で は1 割程度にとどまっていた。この背景には,本 調査の回答者が教員養成学部の学生であり,教科 学習の系統性の観点から理科・社会科への接続を 重視している者が多かったことを示していると考 えられる。いみじくも自由記述のなかにあった「社 会や理科の基礎を楽しく学べた」「生活科で学習 したおかげで3 年生からの理科,社会の学習にス ムーズに入っていけたと思う」という意見に代表 されるように,生活科は理科や社会科の基礎を学 ぶものであり,あくまで橋渡し的な前座としての 認識である。また「ほとんど印象になく,本当に 意味があったのか疑問」「何を学ぶ教科かよくわ からなかった」という意見もあり,生活科の特色 である,合科的・総合的な学びの意義については さほど注目されていないように窺える。大学生の このような認識は生活科だけに限定されるのか, それとも中学年以降の総合的学習の時間に対して も該当するものなのかについては,本調査では判 断材料に乏しく不明である。 4.おわりに 本調査では,教員養成学部の学生を対象に,小 学校低学年の当時持っていた生活科という教科に 対するイメージを吟味した。これらの結果の解釈 に際しては些か注意が必要である。 本調査は,学生に過去(小学校低学年当時)を 想起させて回答を求めるものであったため,記憶 の欠落や想起の歪みなどによって信頼性が低下し ている点は否定できない。実際,自由記述のなか には「記憶がほとんどない」「どんなことをした かほとんど覚えていない」などといった意見が散 見された。自らにとって不快な事象は意識されや すいが,それ以外の事象は意識されにくいという 「ネガティビティ・バイアス」がもし働いている のであれば,この結果は生活科で不快な事象をさ ほど経験しなかったことを反映しているものと考 えられる。 具体的な記憶が不鮮明であっても「正直よく覚 えていないが,自分なりに楽しく学習していたと 思う」「どんな活動をしたか思い出せないが,今 の自身の生活習慣に反映されていると思う」と いったような,大まかな部分で生活科の意義を評 価する声も複数認められた。こうした記述は学生 の生活科に対する肯定的な認識を改めて裏付ける 3 -身 近 な 人 々 と の 触 れ 合 い に 関 す る 活 動 の 印 象 は 希 薄 な よ う で あ る 。 こ う し た 傾 向 は 野 田 ・ 永 田 (2005)のものと 概 ね 一 致 し て お り , 自 然 と の 触 れ 合 い 体 験 の 強 さ , 鮮 烈 さ を 改 め て 裏 付 け る も の と な っ た 。 自 由 記 述 で は 「 植 物 を 育 て た り , ウ サ ギ の 世 話 を し た り し た こ と は よ く 印 象 に 残 っ て い る 」「 生 き 物 に 対 す る 愛 情 が 自 然 と 感 じ ら れ た と 思 う 」 「 自 然 と 触 れ 合 う 楽 し さ を 学 べ た 」 と い っ た も の が 見 ら れ , 身 近 な 自 然 と の 関 わ り の な か で 生 き 物 へ の 親 し み , 命 の 大 切 さ や 美 し さ に 気 付 い た こ と に 言 及 し た 者 が 多 か っ た 。 情 意 的 な 学 び を 尊 重 す る 生 活 科 の 特 色 が よ く 反 映 さ れ て い る と 考 え ら れ る 。 生 活 科 を 学 ぶ 学 年 「 生 活 科 の よ う な 教 科 が ど の く ら い ま で あ っ た 方 が よ い と 思 い ま す か 」 と い う 設 問 に 対 す る 回 答 率 は ,「 生 活 科 は な い 方 が よ い 」0.9 %,「今のように小学校 1・2 年だ け で よ い 」85.7 % ,「 生 活科 の よ う な教 科 は ○ ○ 年 ま で 学 習 で き る よ う に す る と よ い 」13.4 % で あ っ た 。 最 後 の 選 択 肢 の 内 訳 は 「3 年生まで 学 習 で き る と よ い 」3.6 %,「4 年生まで学習で き る と よ い 」7.1 %,「6 年生まで学習できると よ い 」2.7 %であった。 野 田 ・ 永 田 (2005) の調査では,生活科は小 学 校 低 学 年 だ け で な く , 上 学 年 ま で 学 べ た 方 が よ い と い う 回 答 が 半 数 以 上 を 占 め て い た が , 本 調 査 で は1 割程度にとどまっていた。この背景 に は , 本 調 査 の 回 答 者 が 教 員 養 成 学 部 の 学 生 で あ り , 教 科 学 習 の 系 統 性 の 観 点 か ら 理 科 ・ 社 会 科 へ の 接 続 を 重 視 し て い る 者 が 多 か っ た こ と を 示 し て い る と 考 え ら れ る 。 い み じ く も 自 由 記 述 図3 生活科を学ぶ学年 の な か に あ っ た 「 社 会 や 理 科 の 基 礎 を 楽 し く 学 べ た 」「 生 活 科 で 学 習 し た お か げ で 3 年生から の 理 科 , 社 会 の 学 習 に ス ム ー ズ に 入 っ て い け た と 思 う 」 と い う 意 見 に 代 表 さ れ る よ う に , 生 活 科 は 理 科 や 社 会 科 の 基 礎 を 学 ぶ も の で あ り , あ く ま で 橋 渡 し 的 な 前 座 と し て の 認 識 で あ る 。 ま た 「 ほ と ん ど 印 象 に な く , 本 当 に 意 味 が あ っ た の か 疑 問 」「 何 を 学 ぶ 教 科 か よ く わ か ら な か っ た 」 と い う 意 見 も あ り , 生 活 科 の 特 色 で あ る , 合 科 的 ・ 総 合 的 な 学 び の 意 義 に つ い て は さ ほ ど 注 目 さ れ て い な い よ う に 窺 え る 。 大 学 生 の こ の よ う な 認 識 は 生 活 科 だ け に 限 定 さ れ る の か , そ れ と も 中 学 年 以 降 の 総 合 的 学 習 の 時 間 に 対 し て も 該 当 す る も の な の か に つ い て は , 本 調 査 で は 判 断 材 料 に 乏 し く 不 明 で あ る 。 4.お わ りに 本 調 査 で は , 教 員 養 成 学 部 の 学 生 を 対 象 に , 小 学 校 低 学 年 の 当 時 持 っ て い た 生 活 科 と い う 教 科 に 対 す る イ メ ー ジ を 吟 味 し た 。 こ れ ら の 結 果 の 解 釈 に 際 し て は 些 か 注 意 が 必 要 で あ る 。 本 調 査 は , 学 生 に 過 去 ( 小 学 校 低 学 年 当 時 ) を 想 起 さ せ て 回 答 を 求 め る も の で あ っ た た め , 記 憶 の 欠 落 や 想 起 の 歪 み な ど に よ っ て 信 頼 性 が 低 下 し て い る 点 は 否 定 で き な い 。 実 際 , 自 由 記 述 の な か に は 「 記 憶 が ほ と ん ど な い 」「 ど ん な こ と を し た か ほ と ん ど 覚 え て い な い 」 な ど と い っ た 意 見 が 散 見 さ れ た 。 自 ら に と っ て 不 快 な 事 象 は 意 識 さ れ や す い が , そ れ 以 外 の 事 象 は 意 識 さ れ に く い と い う「 ネ ガ テ ィ ビ テ ィ ・ バ イ ア ス 」 が も し 働 い て い る の で あ れ ば , こ の 結 果 は 生 活 科 で 不 快 な 事 象 を さ ほ ど 経 験 し な か っ た こ と を 反 映 し て い る も の と 考 え ら れ る 。 具 体 的 な 記 憶 が 不 鮮 明 で あ っ て も 「 正 直 よ く 覚 え て い な い が , 自 分 な り に 楽 し く 学 習 し て い た と 思 う 」「 ど ん な 活 動 を し た か 思 い 出 せ な い が , 今 の 自 身 の 生 活 習 慣 に 反 映 さ れ て い る と 思 う 」 と い っ た よ う な , 大 ま か な 部 分 で 生 活 科 の 意 義 を 評 価 す る 声 も 複 数 認 め ら れ た 。 こ う し た 記 述 は 学 生 の 生 活 科 に 対 す る 肯 定 的 な 認 識 を 改 め て 裏 付 け る も の と い え よ う 。
− 264 − 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 第25巻(2016) ものといえよう。 しかし一方で少し気がかりな点もある。生活科 の諸活動のなかで,成長の振り返りや身近な人々 との触れ合い活動の印象があまり残っていなかっ たことである。人は周りの人々から大切にされ, 愛されているという実感を持つことで,自らに自 信を持ち,自己を肯定的に捉えられるようになる。 近年日本の子ども達における自己肯定感の低さが 随所で指摘されていることを考慮すると(例えば, 古庄, 2009),身近な人々からのあたたかな眼差し を自覚し,こうした人達に支えられて自分が生き ていることに気付かせる活動は今日とくに重要に なってきていると考えられる。自らが周囲に受け 入れられたという実感が,自己の有用性や可能性 についての認識を深め,自己肯定感を高めるから である。今後は自己理解や自己の成長をはかるも のとして,より多くの人達の記憶に残るよう,心 が動かされ,揺さぶられるような活動や体験を一 層充実させていくことが必要かもしれない。 最後に,本調査では教員養成学部で学ぶ学生を 対象に生活科のイメージについて調べた。結果は これまでの野田・永田(2005)の報告と概ね一致 するものであった。時代や時勢の変化に伴い,教 科自体の目標や内容,評価規準が定期的に見直さ れることを考慮すると,今後も継続して意識調査 を行い,過去の結果と比較検討していくことが有 用であろう。 5.引用文献 古庄純一 (2009). 日本の子どもの自尊感情はな ぜ低いのか 光文社新書 文部省 (1999). 小学校学習指導要領解説 生活編 日本文教出版 文部科学省 (2008). 小学校学習指導要領解説 生 活編 日本文教出版 根本芳枝 (2014). イメージマップ表出言語を中 心とした生活科教育法受講生の学びの分析と考 察 千葉大学教育学部授業実践開発研究室 授業 実践開発研究, 7, 81-90. 野田敦敬 (2004). 生活科学習の改善に向けての 調査研究−愛知県内における生活科学習への教 師の意識調査を基にして− 愛知教育大学研究 報告 教育科学編 , 53, 1-8. 野田敦敬・永田真吾 (2005). 子どもの生活科学 習への思いについての調査研究−附属岡崎小学 校第3 学年・第 6 学年及びその卒業生への調査 を基にして− 愛知教育大学研究報告 教育科学 編, 54, 11-18. 野崎健太郎 (2011). 植物の成長観察を用いた大 学生の科学的素養(科学リテラシー)教育の実 践−保育者および小学校教員養成課程における 教科生活科での事例研究− 椙山女学園大学研 究論集 自然科学篇 , 42, 27-33. 鈴木隆司 (2006). 生活科教育における飼育活動 の授業研究 千葉大学教育学部研究紀要, 54, 93-98. 植田和也 (2005). 生活科研究における学生の意 識と教員の支援について 香川大学教育実践総 合研究, 11, 117-124.