新 大 学
へ の環
境 移
行
に 関
す
る
心
理
学
的
研 究
一
環 境 認 知
と
愛 着
感
の大学
へ の適 応
と
の関連
か ら
一
APsychological
Study
onEnvironmental
Transition
to
a
New
University
:
Effects
ofEnvironmental
Cognition
and
Attachment
on
Adjusting
to
the
University
亀
岡
聖
朗
要
約
本 研 究は
,
学生の所 属 大 学へ の 愛 着 感に焦 点 を あて,
大 学 生 活 を どう捉えてい るの か とい う認 知 次元 との関連 を, 大 学 1年 生 380 名 を対 象として調査 し た.
大 学 生 活の認 知次元 を 明 ら かにする た めに因子 分 析を実 施し た とこ ろ,
“ 実 践” 因 子, “ 自 由 度”
因子,
“
主 体 性”
因 子,
“
不安”
因 子,
“
交友”
因子の5
因子を 抽 出 し た.
さ らに,
大 学へ の愛 着 感 を独 立 変 数, 各認 知次元 を 従 属 変数と す る 重 回帰分 析 を実 施し,
愛 着 感に関連する認 知 次 元を明ら かに した とこ ろ, 有 意 な 因子 と して“
不安”
因 子 以外の4
因 子 が 選 出 さ れ た.
こ れ らの 結 果か ら,
大 学に対 する 愛 着 感は新入 生の 大 学生活に影 響を与 え,
な お かつ環境へ の適 応に も関連することが示 唆さ れ た.
キー
ワー
ド大 学環境
,
愛 着感,
環 境 移 行,
適応 はじめ
に 環境 移行 人は,
自ら意識 する し ない にか か わ らず,
周 囲を取 り巻 く環 境と影 響 しあい なが ら活 動し てい る.
こ こ で い う環境と は,
建 築 物の ような物 理 的 環 境の み な らず, 個人 を取 り巻 く他 者との 関係を含む対 人 的 環 境, 社会 を形 作る法や制度 などの杜 会 的 環 境 を も含む が,
人の 発 達 を考 えたとき, 人 生を過ご してい く上でた
びたび こ れ まで慣れ親 し んだ環 境か ら新たな環境へ と移 り変 わ る ことを経 験 する.
人 生の 出 来事や移動 によっ て こ れ らの 環 境が変わる こと,
および そこに生 じる状 態の ことを環境 移 行1・
2)とい う
,
環 境 移行は,
人の生 涯 発 達 を通じて 迎 える, 進学,
就職 結婚,
子育て,
配偶 者の死 などさま ざ まな ラ イフ・
イベ ン トで生 じ,
人は その 時々 で 新たな環 境へ と適 応 して い くこ とが求めら れ る.
積 極 的に適 応 してい くようなと きもあ れば,
環 境の 変化 に 対応 し き れ ない 場 合 に は 強い ス トレ ス に さ ら さ れ るとき もある.
こ の ような 適応上 の問題 は
,
心 理学では 臨床心 理 学的 な 立 場で 捉 えら れる こ とが多
い.
す な わ ち,
新 環境へ の適応不 全 が 引 き 起こす個人のさ まざま な不 適 応の症 例 を取 り上 げ,
その 問 題 に対してどの よう な心理的 援助が必 要である か, とい うこ と に注 目 す る の である.
一
方で, その 人の 周 囲 を 取 り 巻 く 具 体 的 な環境 と の か かわ りをも含め,
人 と環 境 とを一
つ の 系とみ な し, そこ で生 じ る 問 題 を 巨 視 的 に 捉 えよう
とす る 立 場がある,
こ の場 合,
適 応(
ない し は 不適 応)
に影 響 を与 える環 境の要因 は何であ る か,
とい う立場で 捉えるこ と にな る.
し た がっ て,
適応不全 に対 する 心 理 的援助の 方略を検 討す るこ と よ り は,
ど ち ら か とい えば,
人 が環 境をどう評 価 し環 境が 人に どの よ うな 影 響 を及ぼ す ものなの か を明ら かにするこ とに 主眼が置か れ る.
これ ら2
つ の視点 は 相対するもの では な く,
そ れ ぞ れ を補 完 する もの であるが,
本 研 究で は とくに後 者 の視 点 に重 点 を置く ものと する.
大 学 環境へ の移 行と適 応の問題 高 等 学 校な ど か ら大 学へ の進 学は,
個 人の役 割や 生活 する 地 域社 会が変 化 するこ とのある,
環 境 移 行 の一
種と して捉えるこ と ができる.
昨今の大 学進学の実 情は,
大 部 分の学生にとっ て,
将 来の生活 設 計へ の道を拓 くパ スポー
ト を得る こ と 151 桐生短 期 大 学 紀 要,
第17号。
2006が第
一
義にあ り,
その上で多 少の教 養を身につ け,
かつ,
大 学生 活 を楽し む3〕とい う指 摘 が あ り,
明確
な 目的意識を持た ない ま ま 入学し た学生,
あ るい は 大 学生活の 中で目的 意 識を獲 得で き ない 学生の 中に は,
適 応 す ること が か な わず,
無気 力・
無関心 に 陥 るもの も現れ る.
で は大 学 環 境へ の適 応 はい か な る要因 に よっ て
影
響さ れる の で あろうか.
適応 と は個人 と環 境の 関係 を示す 概 念であ り,
個人 と環 境の調 和・一
致4 }で あ るとい えるが,
その要 因は,
進 学 前の 要 因と進 学 後 の要 因とに大 別できる と考えら れ る.
例え ば前 者につ い ては,
古 くは柳 井5)が進 学 動 機 と大 学で の適 応の関連を検 討 してい る.
それ に よれ ば,
自らの適 性を踏ま え な が ら自分の専 門を選 択し た学生 と, 親のす すめなど他 律 的 な要 因で 自分の専 門を選 択し た学生 とでは,
前 者の 学生の方が大 学へ の適 応 度が高い こと を示してい る,
また, 渕上6)は , 高 校 3年生 を対 象とし て, 大 学へ の進 学 志 望 動 機の構 造を因子分 析によ り検 討してい る.
それ に よ れば, 高 校 3年生の 大 学 進 学 志 望 動機 とし て, 専門知識 を深 め たい , 広 く教 養を身につ けたい とい う欲 求にか か わる“
大 学の 本 来 的機 能”
因子, 親 孝 行の た め , 親 の す すめなど親へ の配 慮に かか わる “ 家 族へ の 配 慮 と規範 機 能”
因子 , 人 生の 決 定 を遅 らせ よ うとする 欲 求にか か わる “ モ ラ トリア ム機 能”
因 子,
大 学で多
くの 人 と知 り合い たい,
ク ラ ブ活 動に参 加したい などの欲 求に か か わ る“
大 学の 副次的機 能”
因 子, 裕 福な 生活 を送 りたい,
一
流 企業に就 職したい な ど の 欲 求に か か わ る“
大 学の 経 済 価 値機能”
因 子, と い う5
因子 を抽 出し てい る.
さ ら に,
志 望 動 機と他 者 か らの影 響との関連 も検 討 し,
生徒が 目 的 意 識 を持 っ て進 学 し ようと意思 決定す る 際 には,
父親や 教師 の影 響 力が深 く関 与す ること を見出 して い る.
古 澤・
山 下7〕によ る女子高 校生 を 対象
とし た 進学動機 の因 子 分 析的研 究で も,
ほ ぼ 同様の因子が得ら れて い る.
佐 藤8 〕は,
音 楽 大 学に入 学 した1,2
年生 を対 象と して,
進学理 由の 因子分析 結 果と 進学後
の 適応 につ い て検 討してい る.
そ れに よれ ば,
進学理由と して,
専門 的 な知識 や技術 を身につ け たい な ど とい う“
将 来 展望”
因 子,
自分の音 楽 的才 能に気づ き そ れ を 生 か せると 思っ た という
“
能 力活 用”
因子,
音 楽が 自分の一
部であ り支えで あ る とい う“
同一
視”
因子,
家 族や先生のす す め が あっ た か ら とい う“
他 者のす すめ”
因 子,
音 楽以外に得意科 目 が ない な ど とい う“
消 極 的 動 機”
因子の5
因子を抽 出してい る.
さ らに,
前 者3
因子を積 極的動 機, 後者2
因 子 を 消 極 的 動 機 として,
適 応との か かわ りを検討 し,
積 極 的 動 機を持っ て入 学 し た学生 は そう
で ない 学 生 に 比べ て大 学へ の適 応度が高い こ とを見出 して い る.
これ らの研 究 はい ず れ も
,
明確な 進 学 理 由 や 志 望 動 機を持っ て大 学進学する学生は,
そう
で ない 学 生 に 比べ て大学 環境へ よ り よ く適応す る 傾 向が あ るこ と を示してい る。
一
方,
進学 後の 要 因に関 す る 研 究では,
例 えば飯 島らP)による 検 討がある.
こ れ は,
大 学 新入 生 を 追 跡 調査 し,
大 学 環 境へ の適 応 過程を 進学 後のス トレ ス や不 安に対 する サ ポー
ト対 象との関連 か ら検 討し たもの である.
大 学 入 学 後の4
月を始め と して,6
月,
9月,
12 月とい う4つ の時 系 列で比較 検 討してい る が,
女 子は男 子よりサ ポー
ト対 象を利 用して不 安の低 減 を図っ てい るこ と,
大 学へ の適応 が進むにつ れてサ ポー
ト対 象は入 学 前の同性や異 性の友 人か ら現 在の 同性や異 性の友 人, 先 輩, 先生 へ と 移って い くこ と,
新 環 境に順 化 し て安 定 期を迎える12 月の 時 点では サ ポー
ト対 象が家 族へ と 回帰し てい くこ と,
とい う3点 を明ら かに してい る.
ま た,
大 久 保・
青 柳ω は,
環 境における文 脈か らの要 請と調 和 した形で自己の欲 求を充 足で きる場を 「居 場 所 」と定 義し,
大 学 環 境 に居 場 所を求め られ るか否か を適 応の一
側 面と位 置 づけて,
大 学生個 別の イン タビュー
による質 的 調査 を行っ てい る,
それ に よ れ ば, 大 学におい て 自ら が 抱い て い る欲 求を充足で きてい る と感じ てい る学生 の ほ うが , そうで ない 学生 に比べ て よ り適 応 的な状 態にある こ と を 明 ら か に し てい る.
また, 川 野 らIT) は,
短 大 生 を対 象と して,
短 大 入 学 時の環 境 移 行の 過 程 につ い て検討 してい る.
これ は有 機 体発 達論 的 シ ス テム論 的ア プロー
チJ2・
J3 )に基づ く もの で , 短 大 入 学 時の 環 境移 行につ い て, ゴー
ルデ ン ウィー
ク 明 け か らほ ぼ1週 間 お きに7
回にわたっ て 時 系 列 的に気 分 を 調査 し,
同時に,
その 気分 が何によっ て もたら さ れるの か という
原 因帰 属を記 述 し, それらを手が か りとして移 行過程の モデル化 を試みて い る.
こ の 検 討は,
ある ひ とつ の 短大の在学 生 を対象と した少 数事
例の 質的 分 析であるため,
どの程 度の 蓋 然 性 を もつ か は 疑 問であ る もの の , 短 大へ の 移行 過 程 を, 混 乱 期(
気分 は良く な く移 行に際 して 混乱 が続 き新 規な環 境に 焦 点 化で き ない 時 期)
, 移 行 作 業 期(
新環 境に働 きか け るこ とで 惰 緒 的な安 定 を図る時期 ),
課 題期(
学生 全て に 共 通 す る 重 要 な 課 題 に 取 り組 むこ とが求め ら れ,
そ れ が結 果と して短 大へ の 焦 点 化を 桐生短 期 大 学 紀 要,
第17号,
2006 152一
促 す 時 期
)
の 順に移 り変わ る とい うモ デ ル を 提 示 し てい る点で興味 深い.
こ れ ら の研 究は, 進学 後の 要 因に焦点 をあて て い る が , 適 応を どの ような観 点か ら捉 える の か につ い て は多 様な ア プロ
ー
チ がある こ とを示唆してい る,
こ れ まで見て きた と お り, 環 境 移 行に伴 う適 応の 要 因は, 移行前に して も移 行 後に し ても, さ まざ ま な要 因が 取 り上 げら れて きて い る が
,
その多
くは 個 々人の 動 機や 対 人 的 環境に注目するもの で ある と い える.
そ れに比べ て,
移行した具 体 的な環 境 自体 をどう捉 えてい るの か とい う観 点 か らの検 討は少な い.
亀 岡14・
15 〕は,
大 学 環 境の 評 価を 目的と して,
大 学生 が 大 学 生 活 を どの ように 認 知 してい る か につ い て検 討 して き た が,
本 研 究で は そ れ らの検 討の延長 と して,
と くに大学とい う物 理 的環 境へ の愛 着の 度 合い に注 目 して,
環 境へ の適 応 の問 題を考 察す る.
物理 的 な環 境へ の愛 着は,
と くに場所へ の愛 着16)と 呼ば れ る.
愛 着 (attachment)
と は,
人の発 達 初 期に 乳 幼 児か ら母 親へ 向 けら れる情 愛の こ とで ある17).
養 育 者との愛 着の形 成が後のその子の社 会 性 発達の 基 礎を なすと考え ら れてお り,
発 達における適応 に 影 響 する と考え ら れてい る.
場 所へ の愛 着 (place attachment )と は,
こ の愛 着の対 象を対 人では な く対 場 所へ と置き換えた概 念であ り , 人 間と場 所 との 問 の感 情 的なつ なが りとい う定 義で多 くの研 究に用い ら れ る よ うに なっ て きて い る1s),
本 研 究に おける愛 着 もその 意 味で使 用 するが,
場 所へ の愛 着の研 究は,
自ら が住 まい 暮らす 住 区や地 域 社 会を中 心に行われ て きてお り,
この 観 点か ら大 学 環 境を捉え た研 究は み ら れ ない.
そこで, 本 研究で はま ず学 生 生活の場 として の 大 学へ の 認知 次元 を捉 え, その 上で,
認 知 次元 と愛 着との 関 連 を検討する こ とを目 的 とし, 適 応の 問 題 を考 察 する こ と を試み る.
方 法
調査 対 象 者 東京 都 区 内 にある4
年制大 学に 通学 する 大 学1
年生380
名.
対 象 者の 平 均年
齢は18.
53
歳,SD
は0.
67
で あ っ た.
内 訳 は 男 子学生353
名,
女子学生27 名 であっ た,
調査方 法東京 都 近郊の大 学の 複 数学 部 におい て 集 団で質 問 紙調査 により実 施し た
.
調査 用紙の構 成は,
大 学生活の 認 知に関 する65
項目,
大 学 校 舎 概 観の 印 象に関 す る13 項目,
所 属 大学学 部へ の愛 着に 関 す る20
項 目,
日ご ろの 学生 生活の 実 態に関 する10
項 目,
そ してプ ロ フィー
ル項 目によっ て構成 し た.
この う ち,
認 知 に 関 する65項 目は大 学生 に対 し て学生 生 活 をどう思 うか とい う 自 由記 述の 内 容を参 考に し て項 目 化 した.
大 学 校 舎 外 観の 印象
につ い て は POE(
Post−
occupancy Evaluation:占有 後 環 境 評 価 )に役 立てる た めの 評価項 目 と して含めた
.
愛 着に 関する項 目は近 隣i地 域へ の 愛 着 感 評 定尺度IP)に基づい て,
内 容 を大学 環境へ の愛 着 を示す もの へ 改 訂して用い た.
これ らの 項目へ の 評 定は, すべ て 「非 常にあて は ま る」か ら 「まっ た くあて はまら ない」 まで の7段 階評 定と した.
な お本 研 究で は,
200工年
6 月か ら7 月に か けて調 査 したデー
タ か ら認 知 に 関する項 目 と愛 着に 関する項目の 関 連 につ い て言 及した.
結 果 の 処 理結 果の 処 理 は
,
大 学 生活の 認知 次元の 検 討,
認 知次 元 と愛着 感との関連, とい う2
点 を 明 ら かにす る円 的で行っ た.
まず,
大 学生活の認 知に関する全65
項目 につ い て, 「非 常にあて はま る 」 を7,
「まっ たくあて は まら ない 」 を1
とい うよう
に順 に得点化し,
対象者 か ら得ら れ た 評 定 値を元に項目分析を行っ た.
項目分 析は,1)
各 項目に対 する評 定 平 均 値 と標 準 偏差 を算出 し,
平均 値±標 準 偏 差の 値が評 定 段 階を超える ような 天井 効 果,
フ ロ ア効 果を示す項目 を確 認す る,2)
そ れ らの 効 果が認め ら れ な かっ た項 目を対 象と して反 復主 因 子 法に よ る因子分析を行 う,
とい う手順で実 施し た.
因 子 分 析で は,
各 項 目の 共 通 性の値が低い もの (0.
16 未 満)や 因子 負 荷量 (0.
40
未満の項目,
複 数の 因 子に高い負 荷量 を示 す 項 目は削 除 対 象と して検 討 する)を参 考に し て,
因 子ごとに独立性を保つ よう に項 目を取 捨 選 択し,
不 良 項 目を 整 理 した.
そ して,
残っ た項 目に よ り大 学 生 活の認 知 次 元を抽 出 するた め に反 復 主 因 子 法に よ る因子 分 析を行っ た.
次に
,
大 学へ の愛 着 感尺度 を 構 成 する全 20 項 目(
表
1)
につ い て, 反 転 項 目の 得点をそ ろえた のちク ロ ン バ ッ クの α 係 数を算 出し,
尺 度の内 的一
貫 性を 確認 し た,
さ ら に, 愛 着 感を独立 変 数, 因子分 析に よっ て得られ た認 知 次元 を従属変 数とするフ ォワー
ドセ レクシ ョ ン式の ス テ ップワイズ重回帰分析 を行 い,
愛 着 感に影 響 する認 知 次元 を選 出した.
最
後
に, 愛 着 感尺度の 各項 目の 合計 得 点 を算 出し, 合 計 得 点の 高い 方か ら 上位 25%の 対 象 者を 上位 群, 低い 方 か ら下位25
%の 対象
者を 下位 群,
その 間 に該 当する対 象者 を中位群 とし,
因子分 析 に よっ て得 ら れ た 認 知次元 ご との 因 子得 点平均 値 と標 準 偏 差 を算 出,
重回帰分 析で 選 択 さ れた認 知次元 を対象
と し て, 愛着 感の 程度によ る差 異を検討 する た め に,
因 子 得 153 桐生短 期 大 学 紀 要,
第17号.
2006点 平 均 値を独立変 数, 愛 着 感を従 属 変 数とする1要 因 3水 準の 分散分析を行っ た
.
表1 愛 着 感 尺 度の項 目 1新 聞やテレビに自分の通う学 部が出ても気にならない・
※ 2自分 の通う学部を悪くいう人ば許せない 3この 学 部 に 通って い る 人 が 退 学 して 去って い くの は残 念だ 4自 分 の 通 う学 部 を 描いた 絵 や 写 真 が あれ ば 取って お く 5時 代とともに学部の周辺の町 並みも変わって当 た り前だ ※ 6私の生活で重要なのは、
学部よりも家庭の雰 囲気だ※ 7同 じ学部に 通っていても、
知 らない人 は よそ者同然だ ※ 8「同 じ学 部のよしみ で 」といわ れ ると断 れ ない 9卒 業して しまえば、
再 びこ の学部に来 たいとは 思わない ※ 1D この 学 部 は 私 の 本 拠 地 とはいえない※ 11こ の学 部 は 生 きがいだ 12こ の学部は私の体の一
部の ような ものだ 13 学 部 全 体 について考 える 機 会 は あ ま りない・
※ 14「私 たち」というと、
自 分 とこの学 部の人々が 頭 に 浮 か んでくる 15学 部の対 抗 行 事で、
こ の学 部 が 負 けても 気にな らない※ 16同じ学部でも用のない場所に は興味がない ※ 17 学 部 内 に 有 名 人が いて も自 分 とは 関 係 ない※ t8「あな たの学部」といわれても ピンとこない※ 19学 部 内の景 観の急激 な変化には耐え られ ない 20 学 部の仲間 よ りアルバ イトの仲間のほうが共感できる人が多い ※ 因 子分析の結 果結
果
※は反転項 目 大 学生 活 に 対 す る 認 知 を 測 る65
項目 を項目 分 析 し,
最 終 的に23
項目 を分 析に用い た.
これ らの項目に対 して因子分 析(
反 復 主 因子法,
バ リマ ック ス 回 転)
を行い,
因 子 寄 与 率,
項目の ま と まりな ど を検 討し た結 果,5
因子解 を最 適解と 判 断 し た(
表2).
第
1
因子は,
「授 業は高 等で実 践 的だ と感じ る」,
な どの項 目へ の負 荷量 が高 く,
“
実 践”
因子と命 名し た.
第2 因 子は,
「自由に行 動で き る時 間が多い 」な どの 項 目へ の 負 荷量 が高 く,
“
自 由 度”
因 子と命 名 し た.
第3 因 子は,「
大 学で は 全てを決め るのは自分であ り,
自主性が尊 重さ れ る」な どの項目へ の負 荷 量が高 く,
“
主体 性”
因子 と命 名し た.
第4 因子 は 「授 業の内 容 が濃 くて,
つ い てい くの がつ らい と感じ る」な どの 項目へ の負 荷量が高 く,“
不安”
因子と命 名し た.
第5
因子は,
「大 学で は気の合 う友 達がで きて 楽しい 」 などの項目へ の負 荷 量が高 く ,“
交 友”
因子と命 名し た.
な お,
各 因子の クロ ン バ ッ クの α係 数は,
0.
78,
0.
77, 0.
73, 0.
68, 0.
75であっ た,
第 4 因子がや や小さ めであるが,
概ね各 因子の 内 的一
貫 性は保た れてい ると判 断さ れた,
桐生短 期 大 学 紀要.
第17号.
2006 154 表2 因子分 析の結 果 項 目 内容 説明分散 h ※ 因 子負荷 量040 未 満の瓸は 省略 抽 出 因 子 と愛着 感と の 関 連〜
重 回帰分 析 の 結 果愛 着 感尺度の クロ ンバ ッ クの α 係数は
O.
82
を示 し,
尺 度の 内 的一
貫性 は 保 た れてい る と 判 断 さ れ た.
そ こで,
愛 着 感尺度に影 響 する認知 次元を検 討 する た め に,
愛着感 を 独 立 変数,
抽 出 さ れ た5
因 子 を 従 属 変 数とするス テ ップワイ ズ 重回 帰分析を行っ た と ころ,
有 意 水 準1
%で第1
因 子 の“
実 践”
因子,
第5
因 子の“
交 友”
因子,
第2因子の“
自由度”
因子,
さ ら に有 意傾向を 示 す 因 子 と して第3
因 子の“
主 体 性”
因 子 を 選出 し た(
表3).
表3 重回帰 分 析の結 果 Ste 変 数 1“
実 践”
因 子 2“
交 友”
因 子 3“
自 由 度”
因 子4
“ 主体 性” 因 子 回帰 係数 説明率 0.
260.
230.
100.
07
0.
110.
080.
020.
01
厂 47.
フ5 * * 36.
20 ** 6.
99 **3,
40
+ +p〈,
10 *pく,
05 ** ρ く.
01 選出 因 子と愛 着 感との関連〜
分 散 分析の結 果重回 帰 分 析により選出 し た
各
因子の因 子 得 点と大 学へ の愛 着 感との関 連を細か く検 討 するた めに,
各 認 知 次元 を独立変 数, 愛 着 感 3群 (上位群98 名,
中位 群 180 名,
下位 群93
名 )を従 属 変 数とする分 散 分 析を 行っ た.
そ の 結果 , 第 1 因 子の“
実 践”
因 子(
F (2,
368
)=27.
37,
pく.
01
),
第2
因子の“
自 由 度” 因 子 (F (2,368 )=
4.
08, pく.
05 ),
第 3 因 子の“
主体 性”
因 子 (F (2,
368 )=6.
36,
p〈.
01 ),
第 5 因子の“
交 友”
因 子 (F (2,368 )ニ
17.
54,
p〈.
01 )に おい て群 間で有 意 差が認め ら れ た.
こ れ らの有 意 差が認め られた因子につ い てTukey 法 に よ る多重 比較 (α=
.
05 )を行っ た とこ ろ, 第 1 因子 で は 上 位 群と下位 群,
中 位 群と下位 群の間で有 意 差 が認め ら れ た (図1).
第 2 因子で は 上位 群と 下位群の 問で の み有 意 差が認め られ た (図2 ).
第3
因子で上位 群と 下位 群, 中位 群と 下位 群の問で有 意 差が認め ら一
れた (図3 )
.
第 5 因子で は, 上位群 と 下 位 群,
上位 群 と中位 群,
中位 群と下位 群の 全て の群問で有 意 差が 認め られ た (図4 ).
1−一一一
一
5 0 5 00
一
因 子 得 点 の 平 均 値鑾
”
蘇 鑞壷
龜
一
1− 一
一
一
一
・
一
一
一
一
一
一
一一
一
.
.
一
.
一
一
一
一
一
一
一
下 位 群 中 位 群 上 位 群 愛着感 得 点 図1‘
s 実 践”
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… 下 位 群 中 位 群 上位 群 愛 着 感 得 点 図2“
自由 度”
因子の愛 着 感 得 点に よ る比 較翠
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下 位 群 中 位 群 上 位 群 愛 着 感 得 点 図3“
主体 性”
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下 位 群 中 位 群 上 位 群 愛 着 感 得 点 図4“
交 友”
因 子 の 愛 着 感得点 に よ る比較考
察
因 子分 析に よる検 討因子 分 析の結 果
,
“
実践”
因子,“
自 由 度”
因子,‘
‘
主体 性”
因 子,“
不安”
因 子,
“
交 友”
因 子の5
因 子 を抽出し た.
“ 実 践” 因 子は, 大 学で学ぶ ことは これ までの教 育 課 程で学ん で きた こ と より高度 な 知 識 や 技 術 を身 につ ける ことが で きる, とい う大 学教育とく に授業 に対 する期 待にかかわ る因 子であ ると考 えら れ る
.
白石2°)に よ れば , 大 学 新入生は初めて 出会 う大学の 授 業に よっ て , 大 学の授 業に 対 す る第一
印 象が 形 成 さ れる とし てい る.
また,
大 学の 授 業の 評価に対 し て は,
白らの 持つ 主 観 的 な期 待 水 準に 照 ら し合わ せ て 評 価 し,
その 評価 は比較 的 早 期に決まる傾 向にあ る こ とを報 告してい る.
その期 待は 過剰な もの であ る可 能 性 はある もの の,
こ の 因 子が大 学生活の重要 な一
側 面 を 担 う もの であ るこ と は推 察でき る.
“
自 由 度”
因子は,
項目の内 容を見る限 りは,
自 由やゆ と りもし く は 開 放 的 な雰 囲 気を表 す 因子であ る よう
に 捉えら れ る.
し か し な が ら,
所 属 大 学・
学 部 が 人 文 社 会系
か 理工系かに よ りそ の 自由度の認 知 は 変 わ る と考 えら れ る.
経 験 的に,
人 文 社 会 系 学 部 よ り理工系 学 部の ほうが課 題や レポー
トが多 く課さ れ 時 間 的 な 自 由 さ は あ ま り感じ ら れ ない とい う声 も 聞く.
こ の 因 子に ま と まっ た項 目の評 定 平 均 値を人 文 社 会系 学 部と 理 工系 学 部 とに分 けて表 4に記した,
各 系 列 学 部の対 象 者 数が大 幅に異なる の で,
単 純 比 較 はで き ない もの の, 理 工系 学 部 在 籍 者(
N=324 ) よりも人文 社 会 系 学 部 在 籍 者 (N=56
)の ほ うが大 学 生活に 自 由 を感じ てい る こ とが うか がえる,
この 因 子の意味を解 釈 する際に は,
大 学 進 学が必 ずしも 自 由が増えるとい うこ と をあらわす もの で は ない , む しろ入 学 前に予 想し た以上 に束 縛さ れるか らこ そ自 出や ゆ とりに 言 及する, とい う側 面 が あ るの で は な い か とい うこ と を考 慮 する必要 があろ う.
“
主 体 性”
因子は,
自らの 行 動 を 主 体 的 に 選 択 し その 選 択 に責 任 を負
うこ とを求め ら れる,
とい うこ と を意 味 する.
入学 後の行動の 自由 度 が 増 す に せ よ 減 じ る に せ よ, 大 学 生になる とい うこ と は,
年 齢 的 にも成人に近づ くこ とに な り,
社 会 的 な 責 任 もこれ まで よ りも増 大 す る.
“
主体性”
因子が抽出 さ れ た と い うこ とは,
自分の行動 に対 する自覚の 芽 生えに伴 う環境へ の積 極 的 関与を表す ものと考え ら れ る.
“ 不安
”
因 子に まとまっ た項目 は,
主に講義に対 する不安を 示 す もの で あ る.
他の 因子 と比べ る と そ の まとま り や 内 的一
貫 性は弱い が,
こ の 因 子は進 学 後の 大 学生 が 感 じ る 実 感の一
側 面 を 捉 え る ものと考 えら れ る.
155 桐 生 短 期 大 学 紀 要.
第17号.
2006“ 交 友” 因 子は
,
大 学における対 人 関係,
とりわ け友 人関係にか か わる因 子である.
古川 らZ’}は , 入 学 後 1ヶ 月 すな わ ち5 月 中旬とい う時 期まで に新た な 環 境に お ける友 人関係 を形 成 する こ とが移 行に伴 う危
機を 回避 する た め に重要である こ と を指 摘し てい る.
友 人関係は大 学の副 次 的 な機 能であるが,
学 生 が大学 環境に馴染む た め に は きわ め て重要 な 要 因と なりうる ことが示 唆さ れる.
表4“
自由 度”
因 子にま とまった 項 目の評 定 平 均 値の学 部 間 比 較 内 人 文 社 会 系 理工系 差窪
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4.
24 3.
48 0.
77 大学生 活 の 認 知次元 と 愛着感 と の 関 連 重回 帰 分 析の 結 果,
大 学へ の愛 着 感は“
実 践”
因 子,
“
交 友”
因子,
“
自 由度”
因子,
“
主体 性”
因子と い う認 知 次 元との関 連が認め ら れ た.
回 帰 係 数は そ れ ぞ れ,0.
26 ,0.
23
, 0.
10,0 .
07
で,
符 号はい ずれ も+ であっ た.
これ は,
大 学へ の愛 着を喚 起 する に は, 実 践的教 育 環 境,
大 学における交友
関 係,
活 動 の 自由 度,
さ らには,
環 境に対 する積 極 的 関 与を考 慮 すべ きであるとい うこ と を示し たこ とになる.
つ まり,
これ ら を高める ほ ど大 学に対 する愛 着が高ま るとい うこ とになる.
ま た,
分 散 分 析で は, 選 出さ れ た4 因子はい ずれ も,
愛 着 感 得 点が高い 上位 群の方 が 下位 群の因 子 得 点 平 均 値を有 意に上回っ た.
これ は, い ずれ の 因 子に おい ても, 大 学へ の愛 着が高い 群の ほ うが低い 群よ り も各 因子の内 容を強 く認 知 し て い る こ とを 示 し, 重 回 帰 分 析の考
察を 裏 付 けるも の で ある.
で は, 大 学 環境へ の
愛
着が高ま るこ とが 移 行後
の 適 応 状 態に影 響 を与 えるもの なの で あろ うか.
対 象 へ の 愛着
と適 応と の 関 連 を 論 じ た文 献は多
い が, 例 えば 丹 羽22〕は,
高 校か ら大 学へ の 移 行 期にある青 年 の 親へ の 愛 着が,
移行
に 伴う新環境へ の 適応過 程 に 及ぼす 影 響につ い て検 討して い る.
そこで は親へ の愛
着を 強 く感 じ てい る 群 が そうで ない群 よ り もス ト レ ス状 況 に お ける孤独 感や対人関係 不安
を感じ ない 傾向を 明 ら か に し,
適応へ の 影 響に 言 及 して い る.
これ は場 所へ の愛 着で は ない が,
一
般 的 に愛 着の対象
と な るもの が身近 にある と感 じ ら れ ること が新環 境へ の適応に影響 を及ぼす もの と考 えら れ る.一
方 で,
場 所へ の 愛 着と適応との 関 連につ い て は,
園田IS ) が場 所へ の愛 着の基本的 な効 果と して心 地 よ さ や安 心感が育ま れる こ と を指 摘してい る程 度で,
直 接に その関連を扱っ た文 献は見 当た ら ない.
加 藤ら!3)は,
個 人が 自己を よい適応の状 態にある と意 識してお り,
生活に おける安 心 感, 充 実 感, 生 きがい 感を感じて い る こ とを適 応 感と呼ん で お り, その 定 義に よ れば, 場 所へ の愛 着はその環 境へ の適 応に影 響を及ぼす も の である こ とが予 測 さ れ る.
ただ, 本研究 も大 学 環 境へ の 愛 着と適 応との関係を直接 扱っ た もの ではな い ため, 上 述の 予 測 を検 討 する には, さ ら に デー
タ を蓄積 し,
適 応にか かわ る尺度な どとの 関連 性を検 討 す る 必要が あ る.各
学年の縦 断 的変 化を 比較 する 必 要 もあろ う.
こ れ らは,
今 後の課 題 と したい.
引
用
文
献
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2006A
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Study
on
Environmental
[bransition
to
a
New
University
:
Effects
ofEnvironmental
Cognition
and
Attachment
on
Adjusting
to
the
University
Seiro
Kameoka
Abstract
Tliepresentstudy examined relationships between environmental cognition of student'suniversity
life
andtheir
attachmenttotheuniversity.
An
environmental cognition scale on student universitylife
and an attachment scale were administrated to380
new-comer students. A factoranalysis,principal
factorextraction with orthogonal rotation was performed on thedate
ofthe cognitive scale and the factorsextracted were then analyzed by a multiple regression analysis. Resultsof the
factor
analysis extracted
five
factors
as thecognitive dimensions of the student university life:(1)''practice",
(2)"freedom"',
(3)'Tsubjectivity'',
(4)'`anxiety'',
and(5)''friendship''
factors.Inaddition, results of the multiple regression analysis showedsignificant relationships between student's attachment to the university