同窓会推薦講演
小児における気道炎症の定量化への試み
呼気中一酸化窒素(eNO)測定を中心に
東海大学医学部専門臨床学系小児科学 望 月 博 之
喘息でみられる気道閉塞は, 好酸球や肥満細胞を主体
とする気道炎症により引き起こされると えられてい
る. このため, 喘息の鑑別診断や治療効果の判定には, 気
道炎症の存在とその程度を評価する方法が求められる.
現在 用されている喘息の評価法として, 肺機能検査や
気道過敏性試験などがあるが, これらは気道炎症を直接
に示すものではない. 気道炎症を評価する方法として,
気道粘膜生検や気管支肺胞洗浄 (BAL), 誘発喀痰や呼気
凝集液による検討があるが, 生検や BAL は侵襲性が強
く, 誘発喀痰や呼気凝集液はサンプリング法に問題が残
り, 小児科の日常診療には適さない.
近年, 気道炎症の非侵襲的な評価法として, 呼気中一
酸化窒素 (exhaled nitric oxide: eNO)の測定が注目され
ている. この eNOは, 気道炎症の存在により増加するが,
測定が簡 であるという利点がある. 我々は病態制御内
科学の石塚全先生のご指導のもと, 国内の他施設に先ん
じて, 幼児でも可能な eNOの測定法を開発し, 喘息など
気道疾患における気道炎症の評価を行ってきた. これま
でに, 乳幼児喘鳴性疾患や慢性咳嗽と比較して喘息では
eNO値が有意に高値を示すことや, eNO値は ICS 非
用喘息群では高値であるが, ICS 用喘息群では同年齢
のコントロールと差が認められず, 治療の効果判定にも
有意義であることを報告している.
さらに, 小児の喘息の eNO値とアストグラフ法によ
る気道過敏性のパラメーターやインパルス・オッシレー
ション法による中枢気道と末梢気道の呼吸抵抗の測定結
果と比較した検討も行っているが, このような検討は喘
息の気道炎症を多角的に える上で意義深いと思われ
る. 一昨年から我々は, 常者を含む小学生, 中学生の
eNO値についての大規模調査を行い, eNO値と年齢, 身
長, 性別との関連や, 喘息やアレルギー性鼻炎の児と
常児での eNO値の比較検討を行っているが, これらに
ついての最新の結果も報告する予定である.
嗅覚障害へのアプローチ
群馬大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 鎌 田 英 男
2004年のノーベル医学生理学賞は「匂いの受容体を
コードする遺伝子発見」が評価され, Richard Axelと
Linda Buck に贈られた. この報告以後, 世界中で研究が
進み, 10年足らずで遺伝子により発現する匂い受容体タ
ンパクが実際に匂い 子と結合し嗅細胞内で脱 極がお
こり, シグナルとして中枢側へ信号が伝達される仕組み
が解明された. 嗅覚の基礎研究は上記のようにあっとい
う間に頂上まで登りつめた感がある.
一方, 嗅覚障害の臨床ではその進歩・歩みは緩やかで
ある. 嗅覚障害の診断に 用される検査は, 静脈性嗅覚
検査と約 30年前に, 群馬大学の故高木貞敬教授と金沢
大学の故豊田文一学長が中心的役割を果たして完成した
「T & T 基準嗅力検査」 (T & T の T は両博士の頭文字
を冠している) が現在でも臨床の主役である. T & T 基
準嗅力検査はいまだに労災や自賠責の後遺症診断の際に
は 用され診断の根拠となる. しかし, 本検査は室内の
匂い物質による汚染や悪臭などの欠点があり, 一般的に
は普及しておらず, 用頻度はあまり高くないのが現状
であるが, 群馬大学では専用の嗅覚検査室を備えて実施
している. 実際の臨床では上記検査で認知できない嗅覚
脱失例では, 嗅覚の機能が残存しているかどうかは判定
できない. 嗅覚が改善するかどうかの判定 に 際 し て,
我々は n-プロピルメルカプタンによる認知検査を T&T
基準嗅力検査と同時に施行し, 治療効果の推定に用いて
いるので, その結果について報告する.
嗅覚障害には質的障害と量的障害ある. 前者の代表的
なものは,「匂いが従来と違った匂いに感じる」などと訴
える異嗅症であるがその実際を述べる. また, 嗅覚障害
の 3大原因は, 感冒, 外傷, 副鼻腔炎などによる混合性で
ある. このうち感冒後嗅覚障害例には, 神経変性疾患の
314 第 56回北関東医学会 会抄録