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幼児クラスにおける保育者の運動場面での援助・指導の傾向-保育者へのアンケート調査の分析から-

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幼児クラスにおける保育者の運動場面での援助・指

導の傾向−保育者へのアンケート調査の分析から−

著者

清 葉子, 想厨子 伸子, 村岡 眞澄, 脇田 町子

雑誌名

教育学部紀要

11

ページ

59-68

発行年

2018-03-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1454/00002507/

(2)

59

椙山女学園大学教育学部紀要(Journal of the School of Education, Sugiyama Jogakuen University)11 : 59‒68(2018)

原著(Article)

幼児クラスにおける保育者の運動場面での

援助・指導の傾向

──保育者へのアンケート調査の分析から──

The tendency of assistance and guidance of nursery teachers to preschool

children in the exercise scene: From the analysis of the questionnaire survey

to the nursery teachers

清 葉子

*

・想厨子 伸子

**

・村岡 眞澄

**

・脇田 町子

** KIYOSHI, Yoko* SOZUSHI, Nobuko** MURAOKA, Masumi** WAKITA, Machiko**

要  旨

 保育者に対し,運動場面における保育者の援助・指導に関する質問紙調査を行っ た。保育の中で鉄棒やリレー等運動遊びに関連する保育者が印象に残った保育場面お よび保育者の援助・指導の実践事例を挙げ,自身で実践をふりかえり,良かった点や 今後の課題等を自由記述で回答を得た。質問紙で挙げられた事例 を分析した結果,保 育者の運動遊びにおける援助・指導の内容が明らかになった。また,事例を教材研 究・子ども理解・指導方法の3つの視点で分析したところ,保育者の保育経験年数・ 担当クラスの年齢・運動遊びの活動内容の違いが保育者の指導法や保育姿勢に影響を 与えることを確認できた。近年,子どもの体力や運動能力の低下が指摘されているこ とからも,園における運動遊び の機会や保育者の運動遊びに関する援助・指導が子ど もに与える影響は大きい。運動遊びには,子どもの発達に応じた指導や保育者が個別 の運動遊びの指導法を理解して固有の動きに着目して 指導する必要があることが先行 研究でも指摘されていることからも保育者が果たす役割は大きいといえる。子どもの 運動遊びを充実させていくには,系統的な運動遊びのカリキュラムの作成と保育者が 保育実践力を高めていくことが重要である。本研究で明らかになった保育者の指導傾 向を認識し,保育者が多様な指導方法を検討したり,共有化できる研修システムを構 築していくことを提案したい。 キーワード:幼児,運動遊び,保育者の援助・指導,ふりかえり,保育実践力 Key words:preschool children, physical play activities, assistance and guidance of nursery

teachers, reflection, childcare practical skills

はじめに

 子どもは,遊びを通して多様な動きを経験する中で発達に応じた体力・運動能力を 獲得していくが,文部科学省の調査1)によると,子どもの体力・運動能力は,昭和60 年(1985年)ごろから低下傾向が続いている。その要因として,子どもを取り巻く * 椙山女学園大学教育学部 ** 名古屋学芸大学

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環境や子どもの生活全体の変化が挙げられる。スポーツや外遊びに不可欠な要素とい われる3間(時間,空間,仲間)の減少とともに,サッカーやスイミングといった習 い事としてのスポーツも一般化し,運動する子どもとしない子どもの二極化の傾向が 指摘されるようになってきた。このような状況をふまえ,文部科学省は,2012年「幼 児期運動指針」2)を出した。この指針は,「幼児が運動習慣の基盤づくりを通して,幼 児期に必要な多様な動きの獲得や体力・運動能力の基礎を培うとともに,様々な活動 への意欲や社会性などを目指すもの」2)であり,幼児期における運動のポイントは「① 多様な動きが経験できるようにさまざまな遊びを取り入れること②楽しく体を動かす 時間を確保すること③発達の特性に応じた遊びを提供すること」2)としている。また, 平成29年(2017年)告示された「幼稚園教育要領」3)「保育所保育指針」4)「幼保連携型 認定こども園教育・保育要領」5)でも「幼児期 の終わりまでに育ってほしい姿」3, 4, 5)と して「健康な心と体」3, 4, 5)をあげ,保育内容健康の内容の取扱いには「多様な動きを 経験する中で,体の動きを調整するようにすること」3, 4, 5)が加えられた。幼児期には, 様々な遊びを通して楽しみがら体を動かすことが示されている。  幼児期における遊びを通して体を動かすことの重要性が言われ,幼児の運動遊びに 関する研究が行われているが,三井(2014)はこれまでの先行研究において運動遊び の指導法は「体系的な遊びの指導のあり方」を基盤にした方法となっておらず,「科 学が未開拓」な分野となっている」6)と指摘し,「運動遊びの指導法を構築する際,個 別の運動を構成している技術的特質を解明し,その技術的特質を動き全体の中で捉え 直し,遊びの指導論と関わらせながら「遊びという活動にふさわしいもの」に構成し ていく研究が求められている」6)と述べている。このほかにも,幼児の運動遊びの必 要性等に関する研究が行われている(木村ら,20097);工藤ら,20168))。  運動遊びの指導には,技術指導を伴う場合もあり保育者の中には運動に対して苦手 意識を持っていたり,保育者自身が運動遊びの経験が少ない場合もある。吉田ら (2012)は,「運動が得意でなくても子どもと一緒に動くことを楽しめたり,コツを教 えられたり,時にはお手本となって子どもの憧れの存在になったりすることが子ども の動きや遊びを誘発する」9)としている。園における運動遊びにおいては,外部運動 指導員が運動遊びを行っている園もある。  それでは,園ではどのように運動遊びが展開されているのだろうか。筆者らも,保 育実践力の育成・向上を目的とした研究を行っており,保育者の援助・指導のあり方 について追求してきた。そこで本研究では,保育者が技能獲得を伴った運動場面での 指導に難しさを感じていることが明らかになったこと(杉江,201210))を踏まえ,園 での運動場面における保育者の援助・指導について質問紙調査を行い,運動遊びの援 助・指導の内容を検討した。

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61 椙山女学園大学教育学部紀要 Vol. 11 2018年

方  法

研究対象  本研究は,平成25年 7月から10月に愛知県で行った。調査対象は,愛知県内の幼 稚園・保育園に勤務する保育者34名の回答を得た。 質問紙調査  質問紙調 査は,多くの園が運動会を控え運動遊び等体を動かす遊びをいつもより多 く行っている時期に実施し,質問項目は,①経験年数②担当クラス年齢③幼児の運動 場面(①鉄棒②跳び箱③縄跳び④マット⑤平均台⑥リレー⑦かけっこ等)である。保 育者が印象に残っている保育者の運動遊びの技術指導等や子どもへの言葉かけ等を中 心に,指導がよかった・難しかったと思う具体的事例を挙げ,自身の実践をふりかえ り保育者の援助・指導を評価し,どのような点を今後の課題にしていくかなどを自由 記述で回答を得た。

結果と考察

⑴ 保育者の援助・指導内容  保育者から挙げられた事例から,保育者の行った援助・指導内容を抽出した。抽出 された保育者が 行った援助・指導内容を中央教育審議会11)等で挙げられている教員に 求められる資質・能力や実践的指導力を参考に,保育者に求められる実践力として① 教材研究②子ども理解③指導方法の工夫の3つに分類した(表1)。 表1.保育者の援助・指導内容 分析の視点 保育者の援助・指導内容 教材研究 発達に応じた活動内容の設定 子ども理解 認め,共感,励まし,安心,子どもの気持ちを理解,運動面におけ る発達の把握,信頼関係 指導方法の工夫 環境の設定,目標の設定,個別指導,子どもの活動に応じた指導, イメージ化,動機づけ,モデリング,適切な技能指導,指導の効 果,具体的な言葉掛け,基本的な指導のあり方(子ども主体・保育 者主導),家庭の協力  保育者は複数の援助・指導を組み合わせて行っており,筆者らが挙げた3つの実践 力を複合して実践していた。また,これらの実践力を回答者の経験年数・担当クラス の子どもの年齢・活動内容・実践結果で分析した結果,保育者の指導に傾向がみられ た。 ⑵ 経験年数による指導の傾向  回答を得た保育者の経験年数は,2年∼30年であった。経験年数を①初任(2∼3

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年目)②中堅(4∼9年目)③ベテラン(10年以上)の3つの段階に分け分析を行 っ た(表2)。 表2.経験年数による保育者の指導の傾向 経験年数 教材研究 子ども理解 指導方法の工夫 初任(13例) 0 21 11 中堅(10例) 1 12 19 ベテラン(10例) 1 18 13  保育者の経験年数の違いからくる子どもに対する保育の姿勢については,経験の浅 い保育者ほど子どもの目線で子どもに寄り添う援助・指導を行う姿がみられた。ま た,経験年数を重ねる中での変化は,子どもの姿に応じた具体的な言葉掛けや運動遊 びの前段階となる活動で子どもの基礎的な力を育てられるようにするなど指導の工夫 を行っており,活動の系統的なプロセスを確認できた。また,保育者は保育経験を積 むことによって,集団の中にも子どもの発達を理解し,個別保育の必要性を感じる事 も多く,特に運動遊びにおいては発達の違いを理解したうえでクラス全体の取り組み をしている傾向がうかがえた。その一方で,経験年数を重ねるにつれて自らの指導法 への自信がみられ,その結果保育士主導型で保育を展開する事例もみられた。  このように経験年数により多様な運動遊びの指導法がみられた。また,保育者の子 ども理解も多様である。保育者の保育経験の違いが保育の姿勢に現れる事を認識した うえで,保育実践力を高めるためには,それぞれの援助・指導傾向を生かす研修の在 り方を検討する必要があると考える。保育者が多様な指導方法を検討したり,多様な 指導方法を得ることができる研修内容や指導方法を共有化できる研修システムを構築 していくことを提案したい。 ⑶ 担当年齢による指導の傾向  それぞれの年齢の発達の姿をとらえ,ポイントを押さえた指導が効果を得ていた (表3)。 表3.担当年齢による保育者の指導の傾向 担当年齢 教材研究 子ども理解 指導方法の工夫 3歳児(8例) 1 5 8 4歳児(12例) 6 14 17 5歳児(14例) 2 12 25  3歳児に対しては指導方法の中でも「モデリング」「動機付け」等の比重が多く, 具体的な指導を行っていた。

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63 椙山女学園大学教育学部紀要 Vol. 11 2018年 事例1.発達の姿に応じた指導の工夫1 3歳児への保育者の指導の工夫 保育者のふりかえり ・ 3歳児は,なりきることで子どもが楽し んで活動することができる。興味を持っ て参加できるよう,ペープサートを使っ て競技を知らせたり,お面をつけたり, ○○になりきってできるようにした。 ・ 3歳児は,一人ずつやるため,待ち時間 ができてしまい,やりたい気持ちになっ ていたのに待ち時間に他の事へ気が向い てしまうことがあり残念だった。  4歳児では「個に応じた指導」や「子ども理解」に基づいた指導の比重が多くなっ ており,5歳児になると指導方法の種類も増え,適切な技能指導や時には保育者主導 の指導がよい結果へ繋がる事例も増えていた。 事例2.発達の姿に応じた指導の工夫2 4歳児への保育者の指導の工夫 保育者のふりかえり ・ 活動自体が楽しいものという印象になる ように配慮し,4歳児の「できないからや らない」とならないように活動を進めた。 ・ 苦手意識を作らず,楽しい活動であるこ とがわかり,親しみを持たせることが大 切である。  また4∼5歳児になると,子ども同士の関わりが出てくることから,子ども同士の 「モデリング」や仲間同士で励ましや教え合う姿も見られ「仲間の支え」など,子ど も同士の影響が効果を表しており,保育者はクラスの仲間の関わりを有効的に生かし ていることもわかった。  5歳児になると「指導方法」の種類も増えた。「適切な技能指導」や「保育者主導」 として指導することで子どもが技術を獲得することができた事例も増えていた。この ことから,5歳児になると保育カリキュラム上,子どもが取り組む運動面の課題や達 成させたい内容が明確で子ども自らも課題に取り組もうとする姿勢がでてくることが 予想される。また,運動技能の獲得に向けてそれぞれの運動の動きのポイントやコツ など,保育者の指導すべき内容が増してくることがうかがえる。  また活動へ取り組む子どもの姿勢については,4∼5歳児になると子どもたちが自 由遊びの時に自発的に運動遊びに取り組む姿も見られ,できるようになった喜びや充 実感・満足感を感じ,子どもが自ら挑戦したり継続して課題に取り組む姿も見られ た。このように運動遊びを楽しんで行うには,さまざまな運動の獲得にむけて系統的 な課題を設定したチャレンジカードのようなものを作成し,「縄跳びの両足とびが〇 回できた」「鉄棒の逆上がりができた」など運動ごとに段階を経て課題を達成したら シールを貼るといった取り組みも効果的だろう。 ⑷ 活動内容による指導の傾向  活動内容別では,鉄棒とりわけ逆上がりの指導例が14例と最も多かった(表4)。

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表4.活動内容による保育者の指導の傾向 活動内容 教材研究 子ども理解 指導方法の工夫 鉄棒(14例) 2 9 16 かけっこ(4例) 2 7 7 跳び箱(3例) 1 2 6  保育者の指導・援助では,いずれの活動も教材研究面での工夫は少なく,指導方法 の工夫を図るなどの援助・指導が多かった。指導方法では,保育者主導の事例が多く みられた。鉄棒や跳び箱は,場合によってはけがや事故につながる危険性もあり,保 育者主導で基礎的な技能指導をしたり補助具を使っての技能指導が多くなると考えら れる。 事例3.鉄棒の指導 指導の工夫 保育者のふりかえり ・ 「まだ腕を伸ばさないよ」「おへそを鉄棒 にくっつけるんだよ」など具体的な言葉 がけをすることで,子どもが意識して行 うことができ,習得しやすかった。ま た,その後の活動でも子ども同士で教え 合う姿につながった。 ・ 縄跳びやタオルを鉄棒に巻くなどして, 補助をつけ,コツをつかめるように工夫 した。 ・ 保育者の言葉をまねして子ども同士で教 え合ったり,自分の経験を言葉にして教 え合うことで,苦手としている子どもも できるようになりたいという意欲につな がっていった。 ・ 個人差が大きく,十分な取り組み時間を 確保するためには,余裕を持った活動の 取り組みが必要であった。  かけっこでは,4例の事例に7件と子ども理解が多くなっていた。これは,こども が速く走れないことを苦にしたり,リレーが嫌で泣いて抵抗を示す子ども達の気持ち を受け止めたり・励ましたりするという一人ひとりの気持ちに応じた援助が多くなる 傾向があった。  運動遊びの指導法に関して三井(2013)は,「保育者が個別の運動遊びの指導法を 理解して固有の動きに着目して指導することが大切である。そのことで,子どもに対 することばかけの質も変わってくるであろう」6)と述べていることからも保育者は, 運動遊びにおける指導法等ある一定の専門的知識も必要である。 ⑸ 実践結果による指 導の傾向  保育者が挙げた実践が,よい事例だったか難しい事例だったかについては,どちら の事例も保育者の指導方法の工夫が最も多い結果となった。よかった事例では保育者 の指導の工夫が子どもの発達に合致した指導方法であった事例が多く,難しかった事 例では保育者の子ども理解の不十分さや保育者の指導力不足が反省点としてあげられ た(表5)。

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65 椙山女学園大学教育学部紀要 Vol. 11 2018年 表5.実践結果による保育者の指導の傾向 実践結果 教材研究 子ども理解 指導方法の工夫 よかった(20例) 1 14 35 難しかった(14例) 1 11 25 事例4.よかった事例 よかったと感じた要素 保育者のふりかえり ・ 友達の誘いがきっかけとなって鉄棒に挑 戦する機会となったり,頑張る姿を認め 合う姿が見られた。 ・ 保護者の認めにより,意欲的に取り組ん だり,自信へもつながり,プラスの循環 になっていた。 ・ 友達の応援によって,頑張ってみよう, 挑戦してみようという気持ちが生まれて いたようだった。 ・ 時には,保護者と一緒に鉄棒に取り組ん でもらうなど家庭との連携も必要である と感じた。 事例5.難しかった事例 難しかったと感じた要素 保育者のふりかえり ・ 運動会に向けて,鉄棒に取り組んだ。で きないという苦手意識のある子に対し, 自由遊びの時間に練習しようと誘っても 嫌がりなかなかやろうとしなかった。1 日1回は鉄棒で練習するようにした。友 達がだんだんできていく姿を見てますま すやる気をなくしていったが,少しでも 足があがれば褒めるなど良いところを見 つけて励ました。 ・ 保護者にも様子を伝えたところ,家庭で も鉄棒の練習をして少しずつ上達して いった。少し手伝えばできるところまで くると表情も明るくなっていった。しか し運動会が近づいても自力では成功しな いことで再び意欲をうしなってきた。 ・ 繰り返し足の蹴り上げ方などコツを伝えて いったところ前日にできるようになった。 ・ 運動会前日に成功したが,活動に対して 意欲のない子どもに対してその気にさせ ていくのは難しかった。 ・ 逆上がりができるようになるための技術 的な裏付けがしっかりないので,そうい う点を勉強して子どもの援助に活かして いきたい。 ・ 家庭でも鉄棒に取り組むことで,上達し ていったことはよかった。  よかった事例には,指導方法が子どもの発達に合致していただけではなく,仲間の 支え3件,仲間の認め・励まし1件があった。良い結果をもたらす要因として,子ど も同士の影響も大きいことがうかがわれる。子どもが自分の経験やコツを仲間に伝え たり,教え合うことや応援や励ましやなど仲間の影響や仲間の支えも効果的であっ た。また,家庭との連携もあげられ,子どもの様子を家庭に伝えるなど園だけではな く上記の事例のように,鉄棒の取り組みの様子を家庭に伝え,登降園時や休日に公園 で鉄棒を一緒に行うなどで子どものやる気へとつながった。このように運動遊びに取 り組む子どもの姿勢は家庭との連携も影響することがあるという結果が得られた。  また,保育者がどのようなスタンスで指導をしたかについては,よかった事例では

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個に応じた指導や段階的な指導方法といった子どもに寄り添う指導方法が効果をあ げ,難しかった事例には保育者主導の指導が子どもの取り組む姿に合致しなかったと いう傾向がみられた。保育者がなぜ難しかったのか?を考え,ふりかえり,改善する ことが次の指導へのステップアップとなっていた。難しい事例から,新たな指導方法 を考えるきっかけとなっていることが示唆された。  今回の分析の中で,保育者と子どもという関係だけではなく,保育者同士の連携を 挙げ保育者同士の連携や園全体での取り組みがよい指導へ結びつく大切な要因となっ ていた事例もあった。園全体で各年齢で今どのような取り組みをしているのか情報を 共有するとともに,様々な運動遊びを系統的に展開していくためにも園全体で運動遊 びのカリキュラムの検討を行うことも必要であろう。ひとつ一つの運動遊びの積み重 ねが子どもの多様な動きの獲得を促し,基礎的な運動技能を身に付けていくことにつ ながる。このような面からも園全体での連携のあり方は大切な視点である。

おわ りに

 白金(2017)は,幼児に行った体力・運動能力テストの分析から,いくつかの項目 で「自由遊びの中での子どもの基本動作との種類や回数が多いほど,体力・運動能力 が高いことを示唆する結果」12)を発表している。そのほかにも,保育中の運動遊びと 幼児の運動量や体力には関連がみられるとの調査結果が報告されている。(鈴木, 200613)・200714); 高 原,200815); 岡 澤,201316); 細 川,201417); 高 原 ら,201418) 201519);吉田,201520))園での運動遊びの経験は幼児の体力・運動能力に影響を及ぼ すことが明らかである。  園での運動遊びにおける保育者の指導内容や指導理念に関する研究から,柳田 (2008)は,保育者は「必ずしも運動の発育・発達段階やステージを考慮した指導を 行っていない傾向」21)を示唆している。吉田(2014)は,運動遊びの「子どもの取り 組み方,指導の仕方は幼児期の運動指導において重要な問題である」22)と問題提起し ている。また,その一方で杉原ら(2010)が行った特別な運動指導を行っている園と そうでない園との比較調査23)から,特別な指導を行っていない園のほうが運動能力が 高かったという結果が得られた。そしてその原因を一斉指導のため,説明や待ち時間 が多く,実際にひとり一人が行う運動時間が短いことや特定の運動指導のくり返しが 中心となり多様な経験ができず,運動能力の向上に貢献しなかったとし,指導方法に 問題があると考察している。居崎ら(2008)は,運動好きな子どもに育てるための保 育者の資質を「やる気を起こす声かけの仕方,保育者自身がモデルになる,能力に応 じた運動体験をさせること,運動の持つ楽しさを伝える工夫をすること」24)を挙げて いる。  近年,子どもの体力や運動能力の低下が指摘されていることからも,園における運 動遊びの機会や保育者の運動遊びに関する援助・指導が子どもに与える影響は大き

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67 椙山女学園大学教育学部紀要 Vol. 11 2018年 く,先行研究からも園での運動遊びのカリキュラムのあり方や保育者の実践的指導力 が重要であることがうかがえる。  本研究の分析の結果から,保育者の保育経験・担当年齢・活動内容の違いが保育の 姿勢に影響を与えることを確認できた。運動遊びにおける園や保育者の果たす役割が 大きいことからも,園全体の系統的な運動遊びのカリキュラムの作成と保育者一人ひ とりの保育実践力を高めていくことが求められる。保育者が保育実践力を高め,子ど もの運動遊びを充実させていくには,本研究で明らかになった保育者の指導傾向を認 識し,保育者が多様な指導方法を検討したり,共有化できる研修 システムを構築して いくことを提案したい。

謝  辞

 本研究は,日本保育学会第67回大会においてポスター発表した「保育実践力の育 成・向上に関する研究⑹─運動場面での言葉掛け─」に加筆・修正したものである。 研究をまとめるにあたり,保育実践研究会のメンバーの皆様にご助言・ご指導をいた だきました。ここに感謝申し上げます。また,アンケートにご協力いただきました皆 様にもお礼を申し上げます。 ■引用文献 1) 中央教育審議会(2002)中央教育審議会(第24回)資料5‒2 子どもの体力向上のための総合的 な方策について(答申案). 2) 幼児期運動指針策定委員会(2012)幼児期運動指針ガイドブック,文部科学省. 3) 文部科学省(2017)幼稚園教育要領平成29年告示. 4) 厚生労働省(2017)保育所 保育指針平成29年度告示. 5) 内閣府・文部科学省・厚生労働省(2017)幼保連携型認定こども園教育・保育要領平成29年告 示. 6) 三井登(2013)幼児期の運動遊びにおける指導法の課題.帯広大谷短期大学紀要,50:127‒ 136. 7) 木村美知代・村岡真澄(2009)運動遊びを楽しむ幼児を育てる.愛知教育大学教育実践総合セ ンター紀要,12:237‒242. 8) 工藤ゆかり・江刺家由子(2016)幼児期の運動遊びの必要性─毎日,楽しく体を動かすために は─.帯広大谷短期大学紀要,53:27‒36. 9) 吉田伊津美・岩崎洋子(2012)幼稚園における運動指導の実態と教員の運動指導に対する意識 ─国公立幼稚園と私立幼稚園との比較─.東京学芸大学紀要(総合教育科学系),63(1):107‒ 113. 10) 杉江栄子・鈴木文代・村岡眞澄(2012)保育実践力の育成・向上に関する研究―5歳児の鉄棒 の場面での指導・援助―.愛知教育大学幼児教育研究,16:25‒32. 11) 中央教育審議会(2015)中央教育審議会(第104回)資料4‒1 教員に求められる資質能力等に ついて(近 年の提言等より抜粋). 12) 白金俊二(2017)S幼稚園年長児の自由遊び中の基本動作と体力・運動能力の関係.松本短期 大学研 究紀要,26:3‒11. 13) 鈴木康弘(2006)運動遊びプログラムが幼児の生活時間と運動遊びへの積極性に及ぼす影響の

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研究.発育発達研究,Supplement:54. 14) 鈴木康弘(2007)園での運動遊びプログラムが子どもの運動遊びへの関心に及ぼす影響につい て.発育発達研究,Supplement:59. 15) 高原和子・ 角南良幸・蒲池知佳子(2008)保育所における取り組みと幼児の運動能力について. 発育発達研究,Supplement:72. 16) 岡澤哲子(2013)幼稚園における運動遊び環境が幼児の運動有能感の発達に与える影響.帝 山大学現代生活学部紀要,9:43‒52. 17) 細川賢司(2014)保育中の運動遊びにおける保育者の関わりと幼児の運動量の関係─5歳児の サッカーゲームに着目した事例的研究─.教育学論究,6:209‒220. 18) 高原和子・角南良幸・瀧信子(2014)身体活動を取り入れた遊びが幼児の体力・運動能力に及 ぼす影響について.福岡女学院大学紀要(人間関係学部編),15:63‒71. 19) 高原和子・角南良幸・瀧信子(2015)幼児の身体表現としての運動遊びと体力・運動能力との 関係.福岡女学院大学紀要(人間関係学部編),16:87‒97. 20) 吉田伊津美・森司朗・筒井清次郎・鈴木康弘・中本浩揮(2015)保育者によって観察された基 礎的運動パターンと幼児の運動能力との関係.発育発達研究,68:1‒9. 21) 柳田信也(2008)幼稚園教師の運動遊びに関する指導理念の調査研究.国際学院埼玉短期大学 研究紀要,29:21‒26. 22) 吉田伊津美・岩崎洋子(2014)園での運動遊び指導と運動遊び指導に対する幼稚園教諭の認識 ─園での運動遊び指導に対する満足度と技術指導志向からの検討─.発育発達研究,64:18‒24. 23) 杉原隆・吉田伊津美・森司朗・筒井清次郎・鈴木康弘・中本浩揮・近藤充夫(2010)幼児の運 動能力と運動指導ならびに性格との関係.体育の科学,60:314‒374. 24) 居崎時江・稲嶋修一郎・藤井勝紀・穐丸武臣(2008)幼児の体力,運動指導に関する保育者の 意識調査.発育発達研究,Supplement:90.

参照

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