予定取引に係るヘッジ会計の検討
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(2) 横浜国際社会科学研究 第 19 巻第 4・5 号(2015 年 1 月). 110 (390). 表 1 日本会計基準,SFAS No. 133 と IAS No. 39 との違い 項目. 原則会計処理. 予定取引に係る会計処理. 日本会計基準. 繰延ヘッジ. ベーシス・アジャストメント. SFAS No. 133. 公正価値ヘッジ. ノー・ベーシス・アジャストメント. IAS No. 39. 公正価値ヘッジ. ベーシス・アジャストメント (非金融商品) ノー・ベーシス・アジャストメント (金融商品). 商品か)の種類によって,会計処理が異なる.. トとの相違をもたらす理論的根拠を明らかにし. このような会計処理の相違は,一般に日本会. たい.. 計基準が純利益3)を,米国会計基準と国際財務. 以上の問題意識に基づき,予定取引に範囲を. 報告基準が包括利益を重視していることが背景. 限定し,繰延ヘッジ処理の二つ方法としての. にあるといえるのだが,ヘッジ会計の全域を見. ベーシ ス・ア ジャス ト メ ン ト と ノー・ベーシ. 渡す場合には,とりわけ予定取引について,こ. ス・アジャストメントに焦点を当てて,比較検. の説明は不完全といわざるをえない.. 討を行うこととする.. したがって,本論文においては,日本会計基 準におけるヘッジ会計は繰延ヘッジを原則とし ており,この繰延ヘッジとベーシス・アジャス. 2.ベーシス・アジャストメントと ノー・ベーシス・アジャストメントの相違. トメントがどのような理論で結びついているの. 予定取引に係るベーシス・アジャストメント. か,また,SFAS No. 133 におけるヘッジ会計は. とノー・ベーシス・アジャストメントについて. 公正価値ヘッジを原則としているものの,予定. 検討を行う前に,両会計処理の特徴を浮き彫り. 取引に繰延ヘッジを適用し,これがノー・ベー. にするために,それぞれの具体的な数値例を確. シス・アジャストメントとどのような理論で結. 認しておきたい.以下,予定取引と先物契約を. びついているのか,そして,ベーシス・アジャ. 締結した設例を用いて,両会計処理の相違を明. ストメントとノー・ベーシス・アジャストメン. 確にする4).. . 3)厳密に言えば,米国会計基準は稼得利益(net earnings)概念 を 用 い る.稼得利益 は「一会計期 間 の 業績 を 示 す 測定値」 (Statement of Financial Accounting Concepts No. 5, Recognition and Measurement in Financial Statements of Business Enterprises, 以下 SFAC No. 5, par. 34)であり,日本会計基準における純利益 概念との主たる相違は, 「会計原則の変更から生じる 過年度損益 へ の 累積的影響額(cumulative effect on prior years of a change in accounting principle) 」を考 慮するかしないか(純利益では考慮するが稼得利益 では考慮しない)という点にあるにすぎないとされ る(SFAC No. 5, par. 34) .かかる相違は本稿での検 討課題と直接的な関連性がなく,本稿では稼得利益 を純利益と同義の利益概念として取り扱い,日本会 計基準に合わせ,純利益という用語で統一する.. 〔設例 1〕 A 社は,X1 年 9 月 30 日に X2 年 3 月 31 日に 購入が予定されている商品の購入価格の変動リ スクをヘッジするために, デリバティブ契約(買 建先物契約)を締結した.この取引の契約価格 は 100 である.X1 年 12 月 31 日,ヘッジ手段の 先物価格は 120 へ上昇した.X2 年 3 月 31 日に ヘッジ対象の商品を現金で購入(商品価格 150) . 4)本論文 に お い て は,ベーシ ス・ア ジャス ト メントとノー・ベーシス・アジャストメントの相 違に焦点を絞るため,IAS No. 39 には言及しない..
(3) 予定取引に係るヘッジ会計の検討(李焱). (391) 111. し,商品購入と同時にヘッジ手段の先物価格が. 日に先物資産の公正価値5)評価を行わなければ. 150 へ上昇,ヘッジ手段の先物契約を現金で決. な ら な い.先物契約 の 価値 は,純額 で 20(現. 済した.X3 年 4 月 30 日に商品を 190 で売却し,. 在の先物価格 120 -約定時の先物価格 100)で. 現金を受領した.特に記述がない限りヘッジの. あり,値洗基準・純額法を前提とすると,当該. 有効性が高いため,最後までヘッジ会計の要件. 価値の増加分 20 が先物資産として計上される.. を満たすものとする.会計期間は 1 月 1 日から. つぎに,第 2 期商品購入日の会計処理である. 12 月 31 日までの 1 年間である.単位は千円.. が,先物価格の上昇に伴う先物資産の公正価値. ①ベーシス・アジャストメント. 関しては,決算日と同じ事象が起こっているた. 評価およびそれに伴う繰延ヘッジ損益の計上に 〔仕訳〕 (単位:千円). め,決算日と同様となる.他方,ヘッジ対象に. 第1期. ついては,条件の通り商品の購入がなされ, ヘッ. 9 月 30 日 先物契約日. ジ手段については,先物契約の現金決済がなさ. 仕訳なし. れる.商品の評価に関しては,商品の購入に係. 12 月 31 日 決算日. る 150 の キャッシュ・ア ウ ト フ ローに 対 し て,. (借)先物契約 20. 先物契約に係る 50 のキャッシュ・インフローが. (貸)繰延ヘッジ損益 20. 存在するため,予定通り商品(100)を購入する. (その他の包括利益). ことが可能となり,結果としてこのヘッジは成 功したといえる.よって,そのヘッジの成功を. 第2期. 商品の簿価に反映し,ヘッジ対象の帳簿価額の. 3 月 31 日 購入日. 修正仕訳を行う.具体的には,商品の貸借対照. (借)商品 150. 表価額を 150 から 100 へ修正する仕訳を行う.. (貸)現金 150. 最後に,第 3 期売却日の会計処理であるが,. (借)先物契約 30. ヘッジ対象に関しては,商品の売上高と売上原. (貸)繰延ヘッジ損益 30. 価の計上がなされる.このとき,売却日に繰り. (その他の包括利益). 越されている商品の貸借対照表価額が 100 であ. (借)繰延ヘッジ損益 50. るため,売上原価も 100 となる.ヘッジ手段に. (その他の包括利益). 関しては,すでに先物契約の決済が終わってい. (貸)商品 50. るため,特に仕訳は行われない.. (借)現金 50 (貸)先物契約 50. ②ノー・ベーシス・アジャストメント 〔仕訳〕(単位:千円). 第3期. 第1期. 4 月 30 日 売却日. 9 月 30 日 先物契約日. (借)現金 190. 仕訳なし. (貸)売上 190 (借)売上原価 100 (貸)商品 100 第 1 期先物契約日では,先物契約を締結した だけであるため,仕訳は行われない.期末決算. . 5)金融商品に関する会計処理の枠内であるヘッ ジ会計を研究する領域で,日本会計基準における 時価概念 と 米国会計基準 お よ び 国際財務報告基準 における公正価値概念に関して,差異がないと考 えられるため,本論文では公正価値という用語を 統一して用いる..
(4) 112 (392). 横浜国際社会科学研究 第 19 巻第 4・5 号(2015 年 1 月). 12 月 31 日 決算日. 50 が純利益に振り替えられる.この方法によ. (借)先物契約 20. れば,商品の取得原価は実際の支出額 150 のま. (貸)繰延ヘッジ損益 20. ま据え置かれることになる.. (その他の包括利益). 3.資産負債評価の観点からの検討. 第2期. 周知の通り,利益概念と資産負債評価は表裏. 3 月 31 日 購入日. 一体の関係にある.このような密接な関係を持. (借)商品 150. つゆえに,利益概念の観点から検討する前に,. (貸)現金 150. まず予定取引に関する資産負債評価の問題を検. (借)先物契約 30. 討する.. (貸)繰延ヘッジ損益 30. 米国版概念フレームワークでも,資産が「将. (その他の包括利益). 来 の 経済的便益」と 定義 さ れ(Statement of. (借)現金 50. Financial Accounting Concepts No. 6, Elements of. (貸)先物契約 50. ,負 Financial Statements, 以下 SFAC No. 6, par. 25) 債が「経済的便益の犠牲」と定義される(SFAC. 第3期. No. 6, par. 28) .資産負債の評価は,それらの価. 4 月 30 日 売却日. 値をどう捉えるのかというだけではなく,捉え. (借)現金 190. た価値の変動を利益概念とどのように整合させ. (貸)売上 190. るのかという問題でもある.そこで,取得原価. (借)売上原価 150. 評価と公正価値評価による利益測定の特徴が浮. (貸)商品 150. き彫りになるため,ベーシス・アジャストメン. (借)繰延ヘッジ損益 50. トとノー・ベーシス・アジャストメントにおけ. (その他の包括利益). る資産負債の評価の特徴を明らかにする必要が. (貸)ヘッジ利益 50. あると思われる. 設例に基づくと,各会計処理の貸借対照表は. ノー・ベーシス・アジャストメントにおける. 表 2 に示す通りである.. 第 1 期の仕訳はベーシス・アジャストメントに おける第 1 期の仕訳と同様である.. ⑴ 取得原価評価. 第 2 期 に お い て,先物契約 の 価値 は 純額 で. 一般に資産を取得原価で評価する手法におい. 30(現在 の 先物価格 150 -前期末 の 先物価格. ては,次の三つの形式的な特徴が見出せると思. 120)であり,その他の包括利益に計上される.. われる(森田[1994] ,95, 96 頁) .第一に,固定. その他の包括利益の累計額は第 1 期に計上され. 資産を取得原価で評価するという点である.第. た先物契約の価値 20 を加えて,50 になる.ま. 二に,取得原価はある財貨・サービスを取得す. た当該価値の増加分 30 が先物資産として計上. るために支払った金額を費用として計上するこ. され,資産先物契約合計 50 が現金で決済され. とを意味する6).第三に,取得原価で評価された. る.商品の評価に関しては,商品の購入に係る 150 のキャッシュ・アウトフローをそのまま仕 入として計上する. 第 3 期において,2 期間にわたってその他の 包括利益 に 計上 さ れ た 先物契約評価益合計額. . 6)例えば,100 円で買った商品を 150 円で売っ たときには,その商品に対する支出額である 100 円を費用に計上する.そうすると,計算された利 益をすべて配分しても,はじめに投資した 100 円 という貨幣量が残る..
(5) 予定取引に係るヘッジ会計の検討(李焱). (393) 113. 表 2 各会計処理の貸借対照表項目 会計処理 ヘッジ会計不適用 ベーシス・ アジャストメント ノー・ベーシス・ アジャストメント. 項目 商品 先物 商品 先物 商品 先物. 第1期 - 20 - 20 - 20. 第2期 150 - 100 - 150 -. (単位:千円) 第3期 - - - - - -. 資産は貨幣の価値変動を無視する7).このような. た金額を資産の取得原価とする支払対価の一部. 取得原価評価の特徴から,取得原価評価による. になる.これは,市場価格が上がる恐れがある. 期間損益計算を見ると,日々行われる取引(事象). ので,安価で商品を仕入しようとしている経営. に基づいて原初価額を認識し,実現した収益と. 者の意思決定を明確に反映し,ヘッジしたという. その対応する費用の差額に基づいて期間利益計. 意思決定およびヘッジの効果が直接に取得原価. 算するという構造が成立する.. で反映される.ヘッジ手段から生じる利益をヘッ. 繰り延べたはずのヘッジ手段に係る損益(50). ジ対象の取得原価の節約として捉まえている点. は実際に支出した金額を資産の取得原価とする. に着眼すると,ベーシス・アジャストメントは,. 支払対価の一部と考えられ,第 3 期に計上され. 取得原価主義会計の枠内で,原価節約という概. ることとなる商品(100)はこの繰延ヘッジ損. 念に基づく会計処理であるともいえよう.. 益(50)だけ商品(棚卸資産)の取得原価を修 正した結果であり,そして商品(100)は,以. ⑵ 公正価値評価. 後の損益計算にあたり売上高が生じた際に収益. 一般に公正価値の意義は,次のように解釈さ. (190)と費用(100)という形で対応させられ,. れている(斎藤[2010],372 頁).第一に,公. 差額が純利益(90 = 190-100)で計上するこ. 正価値は主観価値(使用価値)と客観価値(交. ととなるため,取得原価評価の特徴を忠実に反. 換価値)の二つの側面を有している.第二に,. 映し,したがって,ベーシス・アジャストメン. 公正価値の本質は「将来キャッシュ・フローの. トは取得原価主義会計と軌を一にするものとい. 現在価値」として使用価値にあり,完全・完備. える.. した市場においてのみ「使用価値=交換価値(市. また,ベーシス・アジャストメントにおいて,. 場価格)」となる.第三に,活発な市場が存在. 先物契約が契約時から決済時までに保有される. しない場合,オプション評価モデルや類似商品. ことにより生じる利得は予定取引を実行する際. の市場価格等の市場価値の推定方法を採用し,. に認識され,商品を低額で仕入れることが可能. 公正価値を見積もる必要がある.. となる.繰り延べたはずのヘッジ手段に係る損. ノー・ベーシス・アジャストメントにおいて,. 益(50)は,商品売却時に商品販売益に含めて. 第 2 期における仕入時に商品は市場価格(150). 売上総利益にまとめて表示され,実際に支出し. で評価される.そして,商品を売却したときに は,商品(150) (第 3 期期首純資産)と現金(190). . 7)資産の価値に変動があっても,それを会計 計算上考慮しないということである.インフレが 生じて貨幣価値が相対的に下落しても,名目額 100 円はあくまで 100 円と見るということである.. (第 3 期期末純資産)の差額により包括利益が計 算される.それとともに,ヘッジ手段である先 物契約も毎期公正価値で評価され,変動額がそ の他の包括利益を通じて,各期の包括利益にお.
(6) 114 (394). 横浜国際社会科学研究 第 19 巻第 4・5 号(2015 年 1 月). 表 3 第 2 期の両会計処理における貸借対照表 ベーシス・アジャストメント. (単位:千円) B/S. 資産. 負債. 商品 100 (商品 150 △繰延ヘッジ損益 50) 純資産 ノー・ベーシス・アジャストメント (単位:千円) B/S 資産. 負債. 商品 150 繰延ヘッジ損益 △ 50. 純資産 繰延ヘッジ損益 50. いて計上される.以上のことから,ノー・ベー. において予定取引が実行される時点で,純資産. シス・アジャストメントは公正価値評価を貫こ. のその他の項目に該当する繰延ヘッジ損益は,. うとしていることがみてとれる.. 資産の部における商品項目と結びつき,商品の 取得原価に加減させることから,評価勘定の意. ⑶ 評価勘定. 味を持つ.ただし,ベーシス・アジャストメン. ノー・ベーシ ス・ア ジャス ト メ ン ト に お い. トの場合,繰延ヘッジ損益勘定は商品勘定と合. て,ベーシス・アジャストメントにおける資産. 一的に観察されて,相殺して実際に支出した純. の評価基準 と 異 なることによって,測定値が. 額で商品の取得原価として計上される.繰延. 違ってくるのは当然であるが,評価勘定の観点. ヘッジ損益が取得原価の一部になり,独立して. から,両会計処理が資産評価について本質的に. 存在する項目ではなく,純資産のその他の項目. 同様であるかについて検討を行う.. に計上されることもなくなる.. 評価勘定とは,その対象となるべき主たる勘. 一方,ノー・ベーシス・アジャストメントの. 定の存在を前提として設けられる勘定であっ. 場合,繰延ヘッジ損益勘定は商品勘定の従属勘. て,主たる勘定に対する価値修正の役割を果た. 定であることについて,ベーシス・アジャスト. 8). すものである(倉田[2007] ,1153 頁) .つま. メントと同様である.すなわち,繰延ヘッジ損. り,評価勘定は,減価償却資産に対する減価償. 益が商品の取得原価に対する価値修正の役割を. 却累計額のように,元来,ある特定の一つの主. 果たすという意味で,ノー・ベーシス・アジャ. 勘定に従属する価額の修正のための勘定である. ストメントにおいても,繰延ヘッジ損益勘定は. と思われる(齋藤[2008] ,86 頁) .. 評価勘定の意味を持つ.ただし,ベーシス・ア. ベーシス・アジャストメントの場合,第 2 期. ジャス ト メ ン ト と 異 な る の は,ノー・ベーシ. 9). ス・アジャストメントにおいて,商品を公正価 . 8)一般的 に 評価勘定 と い う 場合 は 相殺的評価 勘定のみを指す(倉田[2007],1153 頁). 9)価値修正勘定とも呼ばれている(齋藤[2008], 86 頁).. 値で評価することを強調するので,繰延ヘッジ 損益と商品の評価額の相殺した純額で表示する ことがない. 両者の相違をまとめると表 3 の通りである..
(7) 予定取引に係るヘッジ会計の検討(李焱). 表 4 ヘッジ会計不適用. (395) 115. (単位:千円). 項目. 第1期. 第2期. 第3期. 売上総利益. 0. 0. 40. 営業利益. 0. 0. 40. 営業外利益. 20. 30. 0. 純利益. 20. 30. 40. その他の包括利益. 0. 0. 0. 包括利益. 20. 30. 40. 表 5 ベーシス・アジャストメント. (単位:千円). 項目. 第1期. 第2期. 第3期. 売上総利益. 0. 0. 90. 営業利益. 0. 0. 90. 営業外利益. 0. 0. 0. 純利益. 0. 0. 90. その他の包括利益. 20. △ 20. 0. 包括利益. 20. △ 20. 90 設例の「組替調整」. 本来の組替調整. 表 6 ノー・ベーシス・アジャストメント. (単位:千円). 項目. 第1期. 第2期. 第3期. 売上総利益. 0. 0. 40. 営業利益. 0. 0. 40. 営業外利益. 0. 0. 50. 純利益. 0. 0. 90. その他の包括利益. 20. 30. △ 50. 包括利益. 20. 30. 40 設例の「組替調整」. 4.利益概念の観点からの両会計処理の比較検討. が,ベーシス・アジャストメントとノー・ベー シス・アジャストメントにおける純利益の額は. 第 1 期に先物契約を 100 で締結し,第 2 期の. 一致しているものの,包括利益の額が異なって. 商品仕入時までに 150 に上昇した.そして,商. いる.さらに,ノー・ベーシス・アジャストメ. 品を 150 で仕入れ,第 3 期に 190 で売上げた.. ントにおける包括利益の計算はヘッジ会計不. 以上の設例に基づくと,各会計処理の損益計算. 適用の場合と同様であることが見てとれる.以. 書は表 4〜6 に示す通りである.. 上を踏まえ,ベーシス・アジャストメントと. 会計基準のコンバージェンスにより,各会計. ノー・ベーシス・アジャストメントに関する問. 基準において包括利益概念が導入されている. 題意識について,利益概念の観点から検討を行.
(8) 116 (396). 横浜国際社会科学研究 第 19 巻第 4・5 号(2015 年 1 月). ベーシス・アジャストメントは,単純に営業. う必要性がある.. 活動以外の活動(財務活動)に該当するヘッジ ⑴ 純利益の観点から. 手段に係る取引,つまりデリバティブ取引を営. ベーシス・アジャストメントを行う場合に. 業活動として扱い,繰延ヘッジ損益を営業利益. は,先物契約 の 評価損益 を そ の 他 の 包括利益. で計上するのではない.ここで重要なのは,ヘッ. (20)として予定取引を実行するまで繰り延べ. ジ手段に係る取引そのものに独立した意味をも. ることにより,先物契約の評価損益と予定取引. たせないことである.本業たる商品売買取引の. に係る損益を純利益ベースで損益認識のタイ. 一部として,当然のことながら,商品売買取引. ミングを一致させることが可能となる.ノー・. と同じく営業活動に位置づけられる.. ベーシス・アジャストメントを行う場合には,. 一方,ノー・ベーシス・アジャストメントは,. 予定取引に係る損益が初めて純利益に影響を与. ヘッジ手段に係る取引を原則的処理の場合と同. えるまで,先物契約の評価損益をその他の包括. 様に営業外活動として維持したうえで,商品売. 利益(40 + 50)として繰り延べることにより,. 買取引ともども独立している取引と捉える.両. 純利益ベースでの損益認識のタイミングを一致. 取引から生じる損益はリンクされて相殺される. させる.つまり,ベーシス・アジャストメント. 関係にあるが,決して同じ性質をもつ損益では. とノー・ベーシス・アジャストメントともに,. ないので,営業利益と営業外利益で区別して計. ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益. 上されると考えられる.. の認識時点のズレを純利益ベースで達成するこ とを意図していることが明らかとなる.. ⑶ 包括利益の観点から. このように,純利益の観点からは, ベーシス・. 米国会計基準では,期間的な包括利益を歪め. アジャストメントとノー・ベーシス・アジャス. る(distorted reported periodic comprehensive. トメントとの間に優劣は生じない.. income)ことからベーシス・アジャストメント を禁止している(SFAS No. 133, par. 375) .し. ⑵ 営業利益と営業外利益. かし,ベーシス・アジャストメントは,当初認. 純利益の観点からは,ベーシス・アジャスト. 識された公正価値とは別に,資産および負債を. メントとノー・ベーシス・アジャストメントと. 体系的に測定することになるため,ベーシス・. の間に優劣は生じないものの,純利益の内訳と. アジャストメントは,包括利益概念11)により直. し て 営業利益 と 営業外利益. に お い て,ベー. ちに否定されるものではない.それにもかかわ. シス・アジャストメントとノー・ベーシス・ア. らず,繰延ヘッジ損益(その他の包括利益)を. ジャストメントの相違が示されている.第 3 期. 資産の帳簿価額の修正として報告する処理方法. において,ベーシス・アジャストメントの場合. が,包括利益に影響を与えるべきではない取引. 10). は,営業利益 90 と営業外利益 0 に対して, ノー・ ベーシ ス・ア ジャス ト メ ン ト の 場合 は,営業 利益 40 と営業外利益 50 になっている.これは ヘッジ手段から生じる損益(50)に対する取扱 いの違いに起因するものであると考えられる. . 10)ここで,営業外利益は損益計算書における 表示項目をさしているのではなく,営業利益との 対比において用いられた用語である.. . 11)包括利益とは,出資者による投資および出 資者への分配から生じる持分(純資産)の変動を 除いた,取引その他の事象および環境要因からも たらされる一会計期間の企業の持分について認識 される全ての変動である(SFAC No. 5, par. 39) . ま た,IAS 1 Presentation of Financial Statements (以下 IAS No. 1)で は,包括利益 は,株主 の 立場 としての株主による拠出及び株主に対する分配以 外の取引または事象による企業の持分の当期の変 動であると定義されている(IAS No. 1, par. 38) ..
(9) 予定取引に係るヘッジ会計の検討(李焱). (397) 117. による期間的な包括利益の減少を招くことに. 影響を与える期間に,繰り延べたヘッジ手段に. なるため,期間的な包括利益を歪める点が色. 係る損益をその他の包括利益から純利益に振り. 濃く意識されている(SFAS No. 133, pars. 376,. 替える組替調整をしなければならない.. 377) .. ノー・ベーシス・アジャストメントの場合に. このように,ノー・ベーシス・アジャストメ. は,第 1,2 期にその他の包括利益に計上した先. ントは,ヘッジ会計を適用しない場合の包括利. 物契約に係る損益 50 が,第 3 期において当期純. 益に影響を及ぼさない限りにおいて,純利益に. 利益に振り替えられる.そのため,組替調整を. おける先物契約の評価損益と予定取引に係る損. 行い,純利益の二重計上を避けることができる.. 益の認識時期を一致させることを達成しようと. しかし,ベーシス・アジャストメントの場合. いう意図がある.. には,商品の取得時に,その他の包括利益から. ここまでの検討によれば,純利益の観点から. 消された過去の先物契約評価益は,資産の取得. はベーシス・アジャストメントとノー・ベーシ. 原価に含められ12),純利益計算には反映されな. ス・アジャストメントのいずれにも優位性は見. い.この金額は,翌会計期間に商品が販売され. 出 せ ず,包括利益 の 観点 か ら は ノー・ベーシ. た時点で,純利益に含められる.この手続は,. ス・アジャストメントに長所があるということ. 実質的にその他の包括利益の純利益への振替え. になる.予定取引においては,日本会計基準が. に他ならないのであるが,その方法は本来の組. 純利益を重視し,米国会計基準が包括利益を重. 替調整と異なり,会計期間を跨いで行われる.. 視するという単純な理解はここでは成立しない. この目的については,ヘッジ取引そのものの目. のである.そのため,純利益と包括利益からベー. 的に由来するので後述するが,ここで明らかと. シス・アジャストメントとノー・ベーシス・ア. なるのは,一度商品の取得原価に含められて期. ジャストメントについての検討は,組替調整の. を跨いだ実質的組替調整が,米国会計基準が忌. 概念,さらに,ヘッジ取引そのものの目的を結. み嫌う包括利益への影響を及ぼしているという. びつけ,もう一歩踏み込んだ検討が必要であろ. 事実である.. う.. ここで,前述の設例を 2 期間にまとめて検討 し て み る.す な わ ち,第 2 期 に,先物契約 を. ⑷ 組替調整の観点から. 100 で締結し,同じ会計期間の商品仕入時まで. 先物契約に係る損益について,ベーシス・ア. に 150 に上昇したとし,そして,商品を 150 で. ジャストメントは売上原価に含めて繰り延べる. 仕入れ,翌会計期間に 190 で売上げたとする.. のに対して,ノー・ベーシス・アジャストメン. 2 期間の設例に基づくと,各会計処理の損益計. トはその他の包括利益において繰り延べるとい. 算書は表 7〜9 に示す通りである.. う相違は,包括利益と純利益との関係における. この設例から明らかなように,ベーシス・ア. 重要な論点である組替調整において決定的な相. ジャストメントの場合,純利益の計算上繰り延. 違をもたらす.一般に,組替調整は包括利益の. べた先物契約評価益は,商品の取得原価を修正. 表示を前提として純利益の表示を行う場合に,. するため,その他の包括利益からも消え,その. 純利益の二重計上を避ける目的で行われるもの. 結果包括利益にも表示されないため,純利益と. である.つまり,過去に包括利益のみに表示さ れた損益は,実現(リスクからの解放)を契機 として,その他の包括利益から消去され,純利 益計算に含められるという趣旨に基づくもので ある.したがって,本来は予定取引が純利益に. . 12)かりに,資産の取得原価を調整する必要性が, 取得原価主義によりあるとしても,組替調整を複数 期間に跨って資産の取得価額を経由して行うこと を正当化する理由にはならないように思われる..
(10) 118 (398). 横浜国際社会科学研究 第 19 巻第 4・5 号(2015 年 1 月). 表 7 ヘッジ会計不適用. (単位:千円). 項目. 第2期. 第3期. 商品取得原価. 150. -. 純利益. 50. 40. その他の包括利益. 0. 0. 包括利益. 50. 40. 表 8 ベーシス・アジャストメント. (単位:千円). 項目. 第2期. 第3期. 商品取得原価. 100. -. 純利益. 0. 90. その他の包括利益. 0. 0. 包括利益. 0. 90. 表 9 ノー・ベーシス・アジャストメント. (単位:千円). 項目. 第2期. 第3期. 商品取得原価. 150. -. 純利益. 0. 90. その他の包括利益. 50. △ 50. 包括利益. 50. 40. 包括利益は同じ金額となる.したがって,この 2 期の設例から,ベーシス・アジャストメント においては13),包括利益を表示する積極的な意 味はないことになる.. 5.両会計処理におけるヘッジとヘッジ会計の 相違からの検討 これまで利益概念の観点からの検討を行って きたが,ノー・ベーシス・アジャストメントの 目的は包括利益に影響を与えない範囲で純利益 における予定取引に係る損益とヘッジ取引に係 る損益の認識時期を一致させることが目的であ. . 13)償却資産の予定取引をデリバティブでヘッ ジした場合には,純利益が変わってくる.ノー・ベー シス・アジャストメントの場合,償却資産の予定取 引に係るキャッシュ・アウトフローの変動部分は, 取引を実行した後の減価償却費に反映される.そ こで,もしデリバティブの評価損益が純利益とし て認識されると,償却資産の予定取引に係るキャッ シュ・アウトフローの変動を固定するというヘッジ の成果は,純利益に適切に反映されない.. ることが明らかになっているものの,ベーシ ス・アジャストメントの目的が純利益における 損益認識時期の一致以外に,包括利益を歪め, さらには組替調整の基本的な手順を逸脱してま でベーシス・アジャストメントに固執する理由 についてはまだ十分に解明されていない.以下 両会計処理におけるヘッジとヘッジ会計の相違 の観点から検討する..
(11) 包括利益. 50. 40. 予定取引に係るヘッジ会計の検討(李焱). (399) 119. 〔図 1〕〔ヘッジとヘッジ会計の相違〕. ヘッジの範囲. 先物契約 ヘッジ手段 ベーシス・. 仕入 OCI 繰延. に係る損益. 価格変動. 商品販売 費用繰延. 売上原価 売上. アジャストメント ヘッジ会計の範囲. ノー・ベーシス・ アジャストメント. ヘッジ手段. OCI 繰延. ヘッジ対象 に係る損益. に係る損益 ヘッジ会計の範囲. 図 1 ヘッジとヘッジ会計の相違. 〔表 10〕〔2つの会計処理の比較〕. ⑴ ヘッジの目的とヘッジ会計の目的 ベーシス・. 一致させ,ヘッジを行っている企業の財務諸表 ノー・ベーシス・. の目的は予定取引に係るキャッシュ・フローの 両要素の取引の関係 一体. ることにある.ベーシス・アジャストメントと 従属. 項 目 ヘッジ対象である予定取引において,ヘッジ アジャストメント. 変動リスクを回避することである.図 1 に示す ヘッジ目的の反映. 忠実に反映. 包括利益. 考慮しない. 純利益. 考慮. 資産評価. 取得原価(原価節約). がこのヘッジの効果を確実に反映するようにす アジャストメント ノー・ベーシス・アジャストメントはヘッジの 反映しない. ように,購入が予定されている商品の価格上昇. 目的に対する捉え方が同様であるものの,ヘッ. というリスクを買建先物契約によって,購入時. ジ会計の目的を達成する際に,異なる考え方が. 点で回避され,これによりヘッジの目的が達成. 生じている.. される.つまり,第 1 期に 100 の商品が第 2 期. ベーシス・アジャストメントは,商品購入の. に 150 まで値上がりして生じた 50 の損失は,. 価格変動のリスクに対しヘッジがかけられ,そ. 先物契約の決済によって生じた利益 50 によっ. れを忠実に財務諸表に反映するという思考に基 3. て解消されたことになり,この時点でヘッジの. 考慮. 考慮. 公正価値. づくと考えられる.このような考え方によれば,. 目的,ヘッジの効果は十分に達成されるのであ. 先物契約から生ずる損益は,購入契約が成立し. る.したがって,先物契約に係る損益をそのま. た時点において繰り延べられ,商品の取得原価. まの形で商品の売却まで繰り延べる理由は,包. へ振替えられることとなる.先物契約に係る. 括利益に影響を及ぼさないという以外にない.. 損益は資産の取得原価の一部として計上するの. な お,ヘッジ 取引時点 に お い て は ヘッジ 対象. で,安価で仕入れたという経済事象が商品の取. がまだ存在していないので,ヘッジ対象に係る. 得原価に反映される.そして,資産の取得ある. 損益を認識測定する余地がないため,SFAS No.. いは負債の発生があった時点でヘッジ対象の取. 133 と IAS No. 39 において公正価値ヘッジが適. 得原価が修正されることにより,商品が売却さ. 用されることはない.. れる際に,先物契約に係る損益は売上原価と売. ここで留意すべきは,ヘッジの目的とヘッジ. 上が対応した利益の中に内包される形になる.. 会計の目的は異なるという点である.ヘッジ会. 一方,ノー・ベーシス・アジャストメントは,. 計の目的は,ヘッジ対象とヘッジ手段の間に,. 本来購入が予定されている商品の購入価格の変. 認識測定上のズレが存在するので,このズレを. 動リスクをヘッジするにもかかわらず,先物契.
(12) 120 (400). 横浜国際社会科学研究 第 19 巻第 4・5 号(2015 年 1 月). 表 10 2 つの会計処理の比較 項目. ベーシス・ アジャストメント. ノー・ベーシス・ アジャストメント. 両要素の取引の関係. 一体. 従属. ヘッジ目的の反映. 忠実に反映. 反映しない. 包括利益. 考慮しない. 考慮. 純利益. 考慮. 考慮. 資産評価. 取得原価(原価節約). 公正価値. 約に係る損益が商品を売却するまでその他の包. 約に係る取引と予定取引との関係の相違である. 括利益を通じて, 繰り延べられることによって,. ことも考えられる.. 将来商品の売却によるキャッシュ・フローの変. ベーシス・アジャストメントにおいて,先物. 動に対するリスクをヘッジすることに変質した. 契約の決済による損益 50 は売上原価として売上. と考えられる.具体的には,商品の購入ではな. 総利益に含まれる.この方法は,先物契約に係. く,商品の売却により生じる損益と先物契約に. る損益が商品に含まれるものと考えていること. 係る損益を同じ会計期間に計上するために,先. を意味し,ヘッジ対象とヘッジ手段を一体とし. 物契約の決済によって生じた利益を,商品の売. てみなし,すなわち,先物契約の取引は商品売. 却により損益の実現まで繰り延べられなければ. 買の取引を一つの取引としていることになる.. ならない.ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段. 一方,ノー・ベーシス・アジャストメントは,. に係る損益が別々の時期に生じるため,ヘッジ. 商品の売却による損益 40 を売上総利益に計上. 手段に係る損益はヘッジ対象に係る損益が実現. し,先物契約の決済による損益 50 を営業外利益. するまで繰り延べられる.しかし,商品を購入. に計上することから,ヘッジ手段である先物契. した時点で,先物契約は終了したものの,その. 約から生じる繰延ヘッジ損益とヘッジ対象であ. 損益が商品を売却するまで顕在化されないこと. る予定取引から生じる損益は,異なる性質を持. は疑問である. したがって, 予定取引に係るヘッ. つ損益だと考えられるだろう.すなわち,ヘッ. ジがあくまでも実行される際の商品の購入に係. ジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益が. るキャッシュ・アウトフローの変動リスクを対. 別々の時期に生じ,ヘッジ手段に係る取引は単. 象としていることは明白であるので,商品の売. 独で固有の存在意義を有するものの,ヘッジ会. 却によるキャッシュ・フローの変動リスクに対. 計の目的を果たすため,ヘッジ手段に係る取引. するヘッジを意図するノー・ベーシス・アジャ. をヘッジ対象に係る取引に結びつけ,ヘッジ手. スト メ ン ト は,本来予定取引に対するキャッ. 段をヘッジ対象に従属するものとして捉えるこ. シュ・フロー・ヘッジの思考とは矛盾する会計. とに他ならないだろう.. 処理であることを指摘しておきたい. ⑵ ヘッジ対象とヘッジ手段との関係. 6.結 論 本論文では,予定取引について繰延ヘッジを. 先物契約に係る損益が,商品の購入時あるい. 適用した場合のベーシス・アジャストメントおよ. は商品の売却時まで繰り延べられる根拠は,前. びノー・ベーシス・アジャストメントを題材に,. 節に既述したヘッジの目的とヘッジ会計の目的. 三つの観点から検討し,それぞれの処理方法が. に対する考え方の違いに基づく以外に,先物契. いかなる根拠で行われるのか,明らかにした..
(13) 予定取引に係るヘッジ会計の検討(李焱). 以上の検討により,まず,ベーシス・アジャ ス ト メ ン ト は 商品 の 価格変動 リ ス ク に 対 す る ヘッジ を 忠実 に 反映 し た 会計処理 と い え, ノー・ベーシス・アジャストメントは商品の価 格変動リスクに対するヘッジをしておきなが ら,実質的に,商品に係る将来のキャッシュ・ フロー・リスクに対するヘッジ会計が行われた 結果になる.ここでヘッジが重視されるべきか どうかというより,異なる会計処理により異な る情報が生まれてくるという点に注意すべきで ある. 利益概念 に 関連 し て,米国会計基準 に お け る 包括利益概念 の 本質 の 一端 と し て,ヘッジ 会計を無視した利益概念であることが導かれ た.ノー・ベーシス・アジャストメントが適用 された場合の包括利益とヘッジ会計が適用され ていない場合の包括利益は同じになるためであ る.ただし,単純に上述の包括利益との整合性 のみに焦点を当てるのであるならば,必ずしも ノー・ベーシス・アジャストメントが適用され る必要はない.それにも関わらず,ノー・ベー シス・アジャストメントが肯定されるのは,純 利益概念が重視されていることに起因する.こ のことはまた,米国会計基準において純利益が 重視されている証左といえよう.よって, ノー・ ベーシス・アジャストメントが,包括利益概念 に影響しない範囲で,純利益概念にも配慮した 処理方法であることが確認された. 一方,支払対価に基づく取得原価評価を基軸 とした投下資本の回収余剰計算が,純利益概念 を念頭に置いた考え方として理解されてきた点 を踏まえるならば,同様の評価がなされるベー シス・アジャストメントは,純利益概念のみを 念頭においた処理方法として位置づけられた. また,そのヘッジ手段に係る損益は,実際に支 出した金額を資産の取得原価とする支払対価の 一部としての捉え方は原価節約に基づく思考と もいえよう.. (401) 121. 参考文献 Bierman, Jr. H., L. T. Joheson and D. S. Peterson [1991] , FASB Research Report, Hedge Accounting: An Exploratory study of the Underlying Issues.(白 鳥 庄 之 助,大 塚 宗 春,富 山 正 次, 石垣重男,篠原光伸,山田辰巳,小宮山賢訳 [1997] 『ヘッジ 会計 : 基本問題 の 探求(増補 版) 』中央経済社. ) FASB[1984] , Statements of Financial Accounting Concepts No. 5, Recognition and Measurement in Financial Statements of Business Enterprises. FASB[1985] , Statements of Financial Accounting Concepts No. 6, Elements of Financial Statements. FASB[1997] , Statement of Financial Accounting Standards No. 130, Reporting Comprehensive Income. FASB[1998] , Statement of Financial Accounting Standards No. 133, Accounting for Derivative Instruments and Hedging Activities. FASB[2000] , Statement of Financial Accounting Standards No. 138, Accounting for Certain Derivative Instruments and Certain Hedging Activities. FASB[2006] , Statement of Financial Accounting Standards No. 157, Fair Value Measurements. IASB [2008a] , Discussion Paper, Reducing Complexity in Reporting Financial Instruments, March. IASB[2008b] , Discussion Paper, Preliminary Views on Financial Statement Presentation, October. IASB [2009a] , Exposure Draft, Fair Value Measurement, May. IASB[2009b] , Exposure Draft, Financial Instruments: Classification and Measurement, September. IASB[2009c] , Exposure Draft, A Replacement of IAS 39 Financial Instruments: Recognition and Measurement, October. IASB[2010a] , Conceptual Framework for Financial Reporting. IASB[2010b], Exposure Draft, Presentation of Items of Other Comprehensive Income, May. IASB[2010c] , Exposure Draft, Hedge Accounting, June IASB[2013] , Amendments to IAS 39, Financial Instruments: Recognition and Measurement and Measurement. IASB[2014], International Financial Reporting Standards No. 9, Financial Instruments IASC[2006],Exposure Draft, Proposed Amendments to IAS 1‒A Revised Presentation, March.(企 業 会 計基準委員会訳[2006] 『国際会計基準書第 1.
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図
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