自立した読者を育成する説明的文章の学習指導研究 : 第6学年「人間がさばくを作った」の場合
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(2) 112. 学校教育学研究, 1999,第11巻. 1.研究の目的 1980年代に見出された説明的文章領域における主要な 実践課題の一つは,森田(1984)によって提言された, 主体的な読者,質の高い認識主体を育てることであっ た1)。すなわち,読みにおける読者主体の確立である。 説明的文章に述べられている内容,事柄は,筆者という 一人の認識主体によって産出された情報でありデータで あるとし,読者もその情報・データに主体的に対時し, 吟味,批判,評価することが必要であるとするものであ る。 従来,説明的文章の授業といえば,教科書所収のテク ストを絶対視し,テクストにある情報をどれだけ正確に 受容できるかが中心内容であり,一方で要点・要約まと めに代表される形式技能的な学習を無目的に繰り返すこ とが一般的であった.そこには,テクスト,筆者から読 者へという一方向のみのベクトルで構成される読み(学 習)しか存在しなかった。 しかし,先の森田の提言や文学的文章領域における読 者論を導入した読みの提案などの流れを受け,引き続き 多くの研究者が説明的文章の読みの指導における読者主 体の確立について言及することになった。 植山(1996)は「筆者がある種の権威として位置づけ られ,筆者と読者が上下関係のように受けとめられてき た時期は,意味はすなわち筆者の意図であった。それが, 読者主体の確立とその成熟とともに,読者の体験の想起 や,読者の疑問・意見なども広義の意味のあり方に含ま れていく過程をたどった。要するに読みにおける意味の 理解は受容から生成へと大きく広がっていった。」2)と 述べ,説明的文章の読みの指導におけるパラダイム転換 の経緯について触れた。 また,寺井(1996)は「読者を中心とした学習活動の 極が異体的な学習活動や理論として定位されることによっ て,すでに定位されていた文章を中心とした学習活動の 極をもう一方の極として-<中略>-,その両極の範囲 の中にいろいろな実践的理論的提案を位置づけていくこ とが可能となってくる。」3)と述べ,読者を文章(筆者) と同列に位置づけて実践や研究に臨むことを提案した。 こうした考えに立ち,寺井(1996)は「説明的文章の読 書指導に関わる情報読みのようなものも,文章側の情報 を構う形で行うのか,それとも読者の世界を構築させる 形で行うのかによって,指導や学習活動の在り方が異なっ てくるだろう。」4)という望まれる実践の性格について 言及している。 長崎(1997)においては, 「碓認読み」や「字面をな ぞった読み」は「教材の枠に拘束された読み」に相当す るとして批判し,それに対して「評価読み」や「納得」 の読みに相当するのが「教材を突き抜ける読み」だとし. た5)。そしてこの「教材を突き抜ける読み」は, 「教材 や筆者から学び,またある時は,教材を厳しく捉え,筆 者の意見や判断などに対して,学習者自らが真正面から 関わっていく。」6)という自立した読者主体を誕生させ るために必要な説明的文章の読みのあり方であるとした。 以上のように,説明的文章の読みの学習指導において は,文章内容や形式を絶対のものとして受容するのでは なく,読者を自立した主体,存在としてテクストに対噂 させ,批判・評価しながら自己を新たな認識主体に変容 させていくような実践のありようが求められることにな る。単に,どのように要約すればよいのか,どのように 要点を捉えさせればよいのかといった類のものとは違っ た質の実践課題として,自立した読者主体の確立を意識 しなければならないのである。 しかしながら,こうした課題を意識した説明的文章の 実践は,理論面での提案状況に比して決して多いとは言 えない7)。閉ざされ,硬直化した状態にある説明的文章 の授業から学習者を解放するためにも,自立した読者を 育成する実践(とりわけ単元の学習指導過程)のあり方 について研究がなされる必要がある。 本稿は,上述した意図にもとづき,自立した読者を育 成する説明的文章の学習指導について,稿者が行った第 6学年「人間がさばくを作った」の実践を例に考察する ものである。. 2.授業づくりについて 自立した読者を育成するために,本実践の学習指導過 程(単元レベルのものを指すことにする。以下同じ。) においては,筆者の発想や考え方を読者の立場から批判 的・評価的に読むという行為を積極的に導入した。すな わち筆者と読者の相互交流的な読みを学習指導過程に位 置づけ,情報の受信・発信の観点から論理的な思考,諺 識のあり方について検討するというものである。 具体的には,序論,本論,結論それぞれにおける筆者 の発想や考え方を「読者を納得させるための書き方の作 戦」とすることで,情報生産,発信,伝達のストラテジー としての筆者の認識・表現のあり方を検討させ,主に対 比的,因果関係的思考に培うことにした。 また読者の立場から,それぞれの「書き方の作戦」を 集約する形で最後に「書き方の作戦・まとめ集」として まとめること,さらにその「まとめ集」を今度は立場を 転換して筆者の立場から(筆者になったっもりで)読ん で検討し返事を書くこと,という二つの立場の相互交流 的な学習活動を位置づけた。これは,情報を受信する側 の立場でのみ捉える傾向にある認識内容や表現方法を, 発信者側の立場からも捉え直させることを意図したもの であり,筆者の発想や願い,認識方法等を,再認識した.
(3) 自立した読者を育成する説明的文章の学習指導研究. りメタ化したりすることに培おうとした8)。 単元の最終段階では,本文の情報・認識内容を読者自 身の問題としてして考察させるために, 「人間と自然」 というテーマで意見文を書かせた。これによって,授業 で学んだ認識内容と自身の生活実態,生活認識とをどう 関連させるか,また学んだ認識・表現力をどう活用する かについて思考を促し,読者としての自立に培おうとし た。. 3.実践の方法 3.1対象 兵庫教育大学学校教育学部附属小学校第6学年3組32 名(男子17名,女子15名) 3.2教材 「人間がさばくを作った」 (1996年度版東京書籍6年 教科書上「新編新しい国語」所収) 3.3実践期間 1998 (平成10)年6月1 H-6月15日 3.4目標 ○北アメリカ中央部の大草原が砂漠化する前後の生態系 のあり方を「っり合い」という観点から対比的に捉え, 読者を納得させようとしている筆者の認識・表現の方 法を読むことができる。 ○序論,本論,結論それぞれの表現方法を既知の表現方 法と比較し,評価しながら読むことができる。 (序論: 問題提示文の非設定,本論:生態系バランスの因果関 係的・対比的叙述,結論:筆者の認識内容についてま とめる文の不在など。) ○人間と自然との付き合い方,関係について自分なりの 考えを持ち,意見文に表現することができる。 3.5学習指導過程 本実践の学習指導過程は,図1に示した。説明的文章 領域における読みの基本的な学習過程を第一次∼第四次 まで順次「(既有知識との)ずれを知る-(筆者の発想・ 考え方を)探る- (筆者の発想・考え方を)っきつめる(自己の発想・考え方を)広げる」と仮説的に設定し, これに即して共通課題(指導者側から提案する読み・学 習の大まかな方向性)の系列を「(オリエンテ-ション) - 『人間がさばくを作った』ことを読者に納得させるた めの『筆者の書き方の作戦』を探ろう一筆者になって 「まとめ集」を読んだ感想を書こう- 『人間と自然』と いうことについて自分の考えをまとめよう」とした。. 113. 3.6授業の実際的展開 <第一次「(既有知識とのずれを)知る」段階> この段階は,単元全体のオリエンテーションとして位 置づけ,題名読み,通読,感想を書き交流すること,序 論一本論一結論の大まかな構成の確認等の作業を行わせ た。感想はいわゆる感想文的なものではなく, B4横置 きの用紙を上下2段に分割したワークシ-トを用意し, 上段には「書いてある内容(中身)」について,下段に は「筆者の書き方」についての欄を設け,それぞれ「読 んでみて,初めて知ったことや驚いたこと,疑問に思っ たことなどを『書いてある内容(中身)』と『筆者の書 き方』に分けて書いてみよう。」という指示のもと,一 人学習をさせる形とした。結果的に導入段階から分析的 な学習を課すことになったが,学習者たちは昨年度に行っ た同様な学習の経験を生かしながら(荏:稿者-授業者 は当該学級を5年生時から継続して担任している), 2 時間の一人調べに集中して取り組んだ。 <第二次「(筆者の発憩・考え方を)採る」段階> 第一次で書いた感想をもとに, 「『人間が砂漠を作った』 ことを読者に納得させるための『筆者の書き方の作戦』 を探ろう」という共通課題について協同学習を展開した。 序論,本論,結論に分けて,順次発見した「書き方の作 戦」を出し合い,話し合わせた。 序論部分では,間島提示文を設定せず, 「簡単には信 じられないだろう」と読者に呼びかける形式をとってい る本テクストの書き出し方が, 「書き方の作戦」として 有効であるかどうかを既習テクストの書き出し9)と対 比させて検討させた。 本論部分では, 「つり合い」という言葉によって砂漠 化前後の生態系バランスのあり方を対比的に述べている こと,さらに白人がバイソンを乱獲する叙述の前に,イ ンディアンが僅かだがバイソンを捕るようになった事実 を形式段落で1段落分だけ挿入していることの二つにつ いて,その「書き方の作戦」としての有効性を吟味させ た。 結論部分では,結論は第何段落から始まっているとす るのが妥当かについて,また筆者の最終段落のまとめの 主張がやや不十分であることから,新たにまとめの段落 を追加作成することの是非や,その内容について, 「書 き方の作戦」の有効性の観点から検討させた。 それぞれの部分の学習のまとめとしては,授業時間の 終末に「これが筆者小原氏の書き方の作戦! 」と題する 短作文を書かせた。すなわち「今日,発見した『筆者小 原氏の書き方の作戦』にタイトルをっけるとすると---」 「その『作戦』を解説すると---」というリード文に続 けて, 「作戦」名とその内容とを記させた。 さらには1時間をとって,それら各部分のまとめであ る「これが筆者小原氏の書き方の作戦! 」を集約し総ま.
(4) 学校教育学研究, 1999,第11巻. 114. とめする形で「筆者小原氏の『読者を納得させるための 書き方の作戦・まとめ集』」を書かせた。 <第三次「(筆者の発想・考え方を)つきつめる」段階> ここでは「筆者になって『書き方の作戦・まとめ集』 を読んだ感想を書こう!」という共通課題の下,前時に. 数編を学習者全員に筆者小原氏の立場で読ませ,感想を 書かせた。つまり,これまで読者の立場で進めてきた読 み(学習)を,今度は立場を筆者側に転換させて行わせ, より客観的,自覚的に「書き方の作戦」を捉えさせよう とした。. 書きまとめた「筆者小原氏の『読者を納得させるための 書き方の作戦』まとめ集」の中から指導者側で選択した. <第四次「(自己の発想・考え方を)広げる」段階> 単元の最終段階として,再度,読者側に立場を戻させ,. 学. 習. 活. 動. オリエンテーション. 既有知識とのずれを 知る. 1)題名読みをする。通読し,読んだ 感想を書く。感想を交流する 2)感想を書く(続き)。 3). ○感想を交流する。 O 「序論①一本論(9-⑫-結論⑬⑭段 落」を確認する。. 教. 師. の. 働. き か. け. 感想は,既知のこと,初めて知ったことを中心に, 書き方と内容に分けて書かせる。 感想の内容が本文のどの段落と関係があるのか確 かめながら交流させる。おおまかな構成の確認と 題名から「人間の手によって草原は砂漠化された」 という筆者の主張の骨子を確認する。 第二次の共通課題を提示する。. (3時間) ﹁人間が砂漠を作った﹂ことを読者に納得させるた めの﹁筆者の書き方の作戦﹂を探ろう. 筆者の発想・考え方を探る. ○第一次で書いた感想の中の「筆者の 書き方」をもとに「筆者の書き方の 作戦」について話し合う。 1)見つけた「作戦」を出し合い,請 し合いの観点を絞る。 2) ・序論での「作戦」 ・本論での「作戦」 3) ・結論での「作戦」 ・全体的な「作戦」 4)結論部を補足して書く。 5) 「筆者小原氏の『読者を納得させ るための書き方の作戦・まとめ集』」 を書く。. 他の読者の参考になるように,一人の読者として 「筆者小原氏の『読者を納得させるための書き方 の作戦』」をまとめて書くことを知らせておく。 序論,本論,結論の順序で話し合いを進めるが, 常に全体の関係を意識して考えるよう促す。 序論では,問題提示文の有無,読者に同調してお き逆接接続詞によって本論の「事実」に着目させ る効果について。本論では,砂漠化される前後の 生態バランスのあり方の対比を。結論では,表現 の唆昧さとまとめの文章の補足についてなどを中 心的な話題とする。 最終⑭段落に続けて,筆者の立場で⑬段落を補足 して書かせる。 話し合いの各時間のまとめを「筆者の書き方の作 戦」を解説する形式で書かせる。 各時間の話し合いや「筆者の書き方の作戦」を集 約する形で書かせる。. (5時間) 筆者になって ﹁まとめ集﹂ を読んだ感想 を書こう. 筆者の発想・ 考え方をつき つめる. 1)友達が書いた「書き方 の作戦・まとめ集」を 筆者小原氏になって, 数編読み,感想を書く。. 前時に書いたまとめ集を筆者の小原氏が読んだと したらという想定で,筆者になったっもりで友達 のまとめ集を数編読ませ,感想を書かせる。読者 から筆者へと立場を変換させることで,筆者の発 想や考え方を確認,再構成させる。. (1時間) ﹁人間と自然﹂ ということにつ いて自分の考え をまとめよう. 自己の発想・考 え方を広げる. 1 )筆者の認識内容や文章の情 報内容と,自分が知ってい る環境に対する人間の関わ り方をつないで意見文を書 く。. (1時間). 環境問題と人間の行為との関係に着目させて 表現させたい。抽象的,一般的な捉えになら ないように身近な生活に取材させることを基 本とする。課外で調べる時間を置く。本文の 対比的構造等の表現方法を可能なら使わせた い。. 図1. 「人間がさばくを作った」の学習指導過程(全10時間).
(5) 自立した読者を育成する説明的文章の学習指導研究. 「人間と自然」ということについて自分の考えをまとめ よう」という共通課題の下,意見文を書かせた。本テク ストで学んだ環境問題と人間の行為という認識の観点で, 自己の考え方を整理させ表現させようとした。抽象的な チ-マ把握にならないよう,身近な生活に積極的に取材 することを奨励した。. 4.学習指導過程における読みの様相・特徴 ならびに考察 説明的文章の読みの指導における自立した読者主体の 育成を図るには,学習者がテクストの筆者と対等に向き 合い10)筆者の認識方法,認識内容を吟味し,批判・評 価する場を保障すること,さらにはそうしたスタンスの 読みを積極的に推進していくことが重要である。 そこで以下では,二つの観点から実践を検討し,自立 した読者主体を育成する説明的文章の学習指導のありよ うについて考察を加えたい。すなわち,一つめは,設定 した学習指導過程における学習者の読みの交流の様相か らの検討である。二つめは,学習指導過程において上述 したような自立した読みを展開していった学習者のうち, U ・ E子の読みに着目し,この子の読みの実態を分析す ることによる検討である。 4. 1授業中の読みの交流における自立的・主体的な 読者の姿 表1は,第二次3時において結論部分の「筆者の書き 方の作戦」を検討した授業の逐語記録の一部である。本 項では,この逐語記録をもとに,授業中の読みの交流に おける自立的・主体的な読者の姿を考察してみたい。 授業では,結論部分は全14段落のうち⑫⑬⑭段落のど こから始まるとするのが妥当かについて話し合った。 ⑫ ⑬⑭の三つの段落の叙述は次のようである。 ⑫こうして,豊かな大草原はしだいにあれ果てて,さ ぱくになっていった。北アメリカ中央部のさばく は,大部分,人間が作ったともいえるのである。 ⑬アメリカの大草原には,数多くの種類の動物がい て,もっと複雑に関係し合っていた。さぱくにな る過程も,もっと複雑なものであったが,大まか に言えば,このとおりだったのである。 ⑭アメリカだけではない。いろいろ調べてみると,我々 人間は,世界の各地でさばくを拡大したり,さば. 115. 着目し,砂漠化前の生態系について述べた前半のまとめ が⑦段落にあったことから,同様に後半にもまとめがあ るべきだとして, ⑫が後半のまとめで,全体のまとめと 区別して⑬段落からが結論だと主張した。 T6後のみゆ きも⑬段落からという意見だが,本論の内容を問題にし, 北アメリカのことが書かれてあるか否かを判断の根拠と した。 T8後の陽介の場合は,みゆきが本論の内容での つながりに着目したことに対応して,結論部分としての つながりに着目し, ⑬⑭段落を結論とした。これらの意 見に対して, T5後の森太郎, T7後のすみれは積極的 に反対の意志表示をし,自己の理由を述べた。 指導者は,こうした学習者の意見に対して, T2, T 3で「筆者の書き方の作戦」という言葉を繰り返し持ち 出し,読みのスタンスへの意識化を図ろうとした。また T6では「こんなに迷わすってことは,小原さん,失敗 かね,ここは。」というように揺さぶりをかけ,筆者は 絶対ではないという情報を強化した。形式的に文章構成 を調べる学習ではなく,どの学習者も自己の明確な主張 をもって相互学習を展開していることがうかがえる。 T3後の理紗,理恵, T6後のみゆき, T8後の陽介 らが述べているように,稿者は⑫段落までが本論で, ⑬ ⑭段落が結論であると考えるが,授業では⑬⑭段落が正 解であることを知らせることは敢えてしなかった。その 理由は,一つには,先行実践における教材研究11)にお いても⑫⑬⑭段落を結論部分とするものがあったりして, 解釈のしようによっては一つに決定しにくい面もあり, 全員を納得させることは困難だと考えたことである。二 つには,正解を決めることより,なぜそこからが結論部 分だと言えるのか,その理由付けを自分としての筋道を 明確にして語れることの方が,意欲的,主体的にテクス トにかかわるという点,論理的思考力に培うという点で 意義があると考えたことである。 逐語記録に見られた,各々の学習者が各々なりに理由 を見出し「--・つていうのに反対なんやけど」 「両方に 反対意見なんですけど」 「ぼくは, ⑬⑭が結論の方なん だけど」と言いながら,自己の読み,意見をはっきりと 他者に伝え説得しようとする,そういう姿に,読者主体 としての自立した姿を見出すことができる。そこには, 筆者の意図を探り,盲目的に受容しようという消極的な 読者の姿は見られない。これも学習指導過程において, 「読者を納得させるための『筆者の書き方の作戦』」を探 るという学習を中心とした,読者本位の学習活動を設定 したことが有効に作用したからだと思われる。. くとなる原因を作ったりしたらしい。. T lの後の純愛は,序論との関係で⑫段落からだとし, T2後の哲也は,部分と全体との関係から⑭段落のみと した。 T3後の理紗と理恵は,本論部分の対比的構造に. 4.2 ∪ ・ E子の読みに見られる自立的・主体的読者の姿 表2は,第二次「『人間が砂漠を作った』ことを読者 に納得させるための『筆者の書き方の作戦』を探ろう」 の学習において,序論,本論,結論各部分の「筆者の書.
(6) 学校教育学研究, 1999,第11巻. ne. 表1.第二次3時:結論部分の「筆者の書き方の作戦」を検討する授業の逐語記鍾(一部) T l : ⑫ 段 落 まで が 本 論 だ つて い う人 か ら意 見 を 聞 こ う0 純 愛 ‥ 「人 間 が さ ば くを作 った, と言 って も簡 単 に は 信 じ られ な いだ ろ う0」 つ て序 論 で言 っ て あ っ て , ⑫ 段 落 で 「人. 最後 に 大 きな ま とめ で⑭ で 結 論 だ と思 う0 だ か ら違 う と恩 う0 T 6 ‥こん な に迷 わ す つて こ と は, 小 原 さん. 失欺か れ. ここ. 間 が さ ば くを作 つ た と も言 え る の で あ る0 」 つ て , 亘 箪. は0 本 論 か ら結 論 に流 れ る と こ ろ は失 敗 か ね‥‥‥0. の疑 問 を こ の⑬ 段 落 で解 決 して い る文 が 書 か れ て あ る か. み ゆ き ‥本論 の 中 で は, 北 ア メ リカ の こ とが 書 か れ て あ る や ん. ら, ⑫ か らは結 論 に入 る と思 い ま す0. か0 だ か ら, この最 後 ⑫ 段 落 の 「北 ア メ リカ 中 央 部 の さ. T 2 : 筆 者 は作 戦 を 考 えて い るわ け だ か ら, こ こで 出 した ? 杏. ぱ く」 つて言 って る か ら, 本論 の 中 の 最 後 の小 さ な ま と. ⑫ で 解 決 して い る0 つ なが りが あ る0 だ か ら, こ こまで0. め で, ⑬ 段 落 か ら 「ア メ リカ だ けで は な い」 つて 言 って. そ う い う こ とだ ね0 次 の少 数 意 見 0 はい。⑱ だ けが残 るつ. る か ら, こ こか ら大 きな ま とめ に な って い る の で は な い. て い う意 見 や ね。. か な と恩 い ま した0. 哲 也 ‥⑬ の終 わ りま で は, ア メ リカ の こ とを書 いて い る け ど⑱. T 7 :筆 者 と して は, ち ゃん と作戦 を 立 て て い る, と0 小 さ な. か らア メ リカ だ け じゃ な い つて書 い て あ るか ら, 世 界 全. ま と め で く くつ て, 小 さな ま とめ で くく つて , そ して 最. 体 を見 て 書 か れ て あ る か ら, こ こが結 論 じ やな い か , と. 後 に大 き な ま と め で く くろ う と して い る, 非 常 に す つ き りと した作 戦 だ つて い うん や な 0. 思 う0 T 3 ‥こ こ まで は, ア メ リカ の こ と だ っ た け ど も, こ こか ら は. す み れ ‥⑫ か ら結 論 つて い うの と, ⑬ か ら結 論 つて い う の と 両. 世 界 全 体 の こ とが 書 いて あ るか ら, そ うい う意 味 で 切 れ. 方 に反 対 意 見 なん です け ど, も し⑫ か ら結 論 に 入 って い. るん じゃ な いか つて い う意 見 です 0 筆 者 の 作 戦 と して 読. た と した ら, ⑫ の最 初 の文 は 「こ う して 」 で 始 ま っ て い. 者 と して 納 得 で き るか つて い う こ と が あ る しね0 じゃあ,. 1. 大 多数 の ⑫ まで が 本 論 だ と い う人 ?. て いて , ⑫ か ら結 論 に入 って い く と, 後半 の ま と め が な. 理 紗 ‥(参段 落 で 一 国 ま とめ が あ つ たや ろ0 つ り合 い が 保 た れ と. ⑦ も本 論 の 前 半 の ま と め で 「こ う して 」 つ て 始 ま つ. い の はお か しい し, あ と⑬ か ら始 ま った と して も, ⑬ は. る と きの ま とめ が あ るよ う に, ⑫ 段 落 も⑧ ⑨ ⑲ ⑪ の ま と. まだ ア メ リカの こ と に な って い る か ら, お か し い0. 旦 至L そ れ は 何 で か つて い つ た ら, 「こ う して 」 と か 砂. T 8 : さ あ, ど う し ます ? (9 段 落 で , 「こ う して 」 と い うふ う. 漠 の こ と中 心 の ま とめ や ん か , だ か らそ れ は, 普 通 の と. に小 原 さん は書 いて る0 ⑫ 段 落 で も 「こ う して 」 と い う. きの ま とめ で もな い か ら, そ こ は⑫ 段 落 と か の ま と め で. ふ う に始 め て書 いて い る0 じゃ あ, これ の方 が す っき り,. あ って , ⑬ 段 落 か らが 全 体 の ま と め だ と思 い ま す0. す み れ さん ? これ は, これで す っ き り して い る よ う に恩. 理 恵 : と にか く(彰まで が 前 半 の ま と めで , そ こま で は ち ゃ ん と. うん や け ど0. で きて て , そ の 後⑧ か ら⑪ まで で お話 を して お い て , 壁. 陽 介 ‥ぼ くは, ⑬ ⑭ が 結 論 の 方 なん だ け ど, ⑬ ⑭ は , ⑭ の 初 め. は後 半 の 分 の ま とめ で , そ れ で ⑬ ⑩ は全 体 を 見 た と きの. に, 「ア メ リカだ けで は な い 」 つ て い う⑬ に つ な が る よ. ま とめ 0.. う に言 って い る と こ ろ が あ る か ら, ⑬ と⑱ はつ な が りが. T 4 :以 前, だ れ か が 小 ま とめ つて 書 いて た け ど, こ こで 小 さ い ま とめ を して お い て , この 二 つ は大 きな ま と め に な る ん だ , と い う こ とで す か 0. あ るか ら, 結論 だ と思 う0 T 10 ‥これ は, つ なが りが あ る よ うに小 原 さん, 書 い て い る ん じゃ な いか , つて 言 うん や ね0. T 5 ‥一 番, 多 い人 の 意 見 で 納 得 で き ます か0 森 太郎 : ⑬⑭ が 結論 つて い うの に 反 対 な ん や け ど, ⑫ ⑬ まで が, ⑬ もま だ ア メ リカの 大 草 原 の こ と を書 い て い る わ け だ か 互 し ま だ⑧ か ら⑪ ま で の結 論 は⑫ ⑬ まで 続 いて い て. 衰2.第二次1-3時に書いたU ・ E子の「これか筆者小原氏のr書き方の作戦j」の解説文 段. 階. 第二次 1時 序論. 第二次 2時 序論 本論. 「 筆 者 の 書 き方 の 作 戦 」 解説 文 の内 容. (下 線 は引 用 者 に よ る). 廿読 者 を あ っと思 わ せ て 納 得 させ よ う」 作 戦 ー 読 者 を あ っ と思 わ せ て 納 得 させ よ うと い うの は, 序 論 で 割 と問 題 を た くさ ん書 き, 本論 か ら読 む 人 を あ っ と 思 わ せ て納 得 さ せ る こ とな ん だ け ど, 納 得 させ る ため には, か な り人 間が 砂 漠 を作 つた とい う理 由を 書 か な け れ ば わ か らな い0 だ け ど小 原 さ ん は読 者 を あ っ と恩 わ せ, 納 得 させ る理 由 を た くさん 書 い て い るの で よ い0 打合 い言 葉 , 『つ りあ い』 ま とめ 」 作 戦 】 ま ず私 は(参段 落 の 「つ り合 い」 と い う言 葉 は, ⑥ 段 落 の 「え ものが ふ え れ ば .‥…O」 と い う と こ ろ と セ ッ トで 書 いて あ るか ら白人 た ち が 来 る前 まで は よか った ん だ と い う区 切 りが は っ き りと わ か り, そ う した と こ ろで , 次 の イ ンデ イア ンの と ころ に書 きつ な いで い くそ の ま とめ方 が うま い と恩 つ た か ら, 合 い言 葉 『つ り合 い』 ま と め作 戦 と い う こと だ と思 う0 -「ち ょ っと わか らな くな って きて , ゴ チ ヤ ゴチ ヤに な って しま った ち ょ っぴ り失 敗 」 作戦 l 第二次. 私 は最 初 , 結 論 は⑫ 段 落 だ と思 って い た のだ け ど, み ん な の を い ろ い ろ と意 見 を 聞 い て み て ご ち ゃ ご ち ゃに な つ. 3時. て しま っ た0 た だ一 つ 思 う こ と は, ⑭ 段 落 の最後 の小 原 さん の 終 わ り方 が 「ら しい」 だ か ら, そ れ は小原 さん の 意. 結論. 見 も少 し混 じっ て い る と と考 え る と, ⑫ ⑬ 段 落 な の で は と思 う0 これ だ け悩 ま せ るの は, あ ま り い い作 戦 と は言 え な い だ ろ う0.
(7) 自立した読者を育成する説明的文章の学習指導研究. 117. き方の作戦」を検討したまとめとして,各授業時間の終. 落はいらないと思う。 (I・T男). 末段階でU ・ E子が書いた「これが筆者小原氏の書き方. ・私は, ⑮段落はいらないと思う.第一に,筆者はあえ. の作戦」の解説文である。 1時の「小原さんは読者をあっ. て⑭段落で終わっているわけだし,結論の決定づけ. と思わせ,納得させる理由をたくさん書いているのでよ. のことは,本論で言ってると思う。 /それに,本論で. い。」や, 2時の「次のインディアンのところに書きつ. じゅうぶん読者は納得できる。砂漠になっていく様子. ないでいくそのまとめ方がうまいと思った」などに,筆. 順を迫って書いていってるから,読者もこれで納. 者の書きぶりに対するこの子の評価の姿勢が見受けられ. 得すると思う。 /結論がそんなにだらだらと長かった. る。また1時の「読者をあっと思わせて納得させようと. ら読みづらいし,それまででも読者が納得しているわ. いうのは,序論で割と問題をたくさん書き,本論から読. けだから,別になくてもいいと思う(S・H子). む人をあっと思わせて納得させることなんだけど」に見. 第⑮段落を新たに創作し書き足した子は,筆者の書い. ・られるように,序論や本論のあり方についての展開構造. た文章をじゅうぶんであるとするのではなく,自分とし. に関するスキーマを機能させた読みを行っていることも. てはこういう内容が書かれるべきだという意志表示をし,. うかがえる。. 表現を試みたということである。また第⑮段落を不要だ. こうしたU ・ E子の読みの姿勢は,さらに3時の結論 は第何段落から始まるのが妥当だと考えられるかを話し. とした子は,一人の書き手としての筆者を,これもまた 一人の読者としての自分の考えで評価したということで. 合う授業のまとめにおける「これだけ悩ませるのは,あ. ある。いずれの立場にせよ,読者としてどうテクストに. まりいい作戦とは言えないだろう。」という,筆者を批. 向かい,その書きぶりや内容を判断するかを,各自が考. 判する記述につながった。 (3時の授業の実際について. える契機になった。. は表1に示し, 4.1の項で取り上げた。). 表3は,第二次5時に書いたU ・ E子の「筆者小原氏. 続く第二次4時は, 「アメリカだけではない。いろい. の『読者を納得させるための書き方の作戦・まとめ集』」. ろ調べてみると,我々人間は,世界の各地でさばくを拡. である。 1時∼3時までの「書き方の作戦」の解説文を. 大したり,さばくとなる原因を作ったりしたらしい。」. 集約する形で書かせたものであるが,これまでと違って. という,やや唆味な表現で締めくくっている最終第⑭段. 筆者に呼びかける形式をとったため, U・E子はさらに. 落を取り上げ,第⑮段落を付け加えるかどうか,また付. 筆者と対等な立場で読みを再構成し,記述した。. け加えるのであればどういう内容がふさわしいかを考え させる授業であった。 第⑩段落に限らず,本テクストは教科書教材というこ. 例えば,はじめに「いい作戦と思えるところとちょっ と分かりにくかったかなと思う作戦もありました。」と 全体的な評価を述べ,まずは「こんなふうに始まってい. とで分量的制限を受ける性格上,やむを得ず表現を切り. る説明文は,初めてで,小原さんなりの作戦だと思い,. つめていると見受けられるところが多いのだが,そうし. とてもいいと思います。」と,よい点として序論の書き. たいわば空所に当たる部分を,学習者なりに補充させよ. 方をあげた。次によくない点の指摘として,結論の不明. うとする意図であった。しかし,最終的には, 30名中,. 確さをあげ, 「結局はっきりしないまま終わってしまっ. 付け加えた方がよいとする者は7名,付け加えずこのま. たのですが,それではいい作戦とは思えません。私は⑫. までよいとする者が23名であった。 U・E子は,第⑮段. 段落からだと恩いましたが, ⑬⑭段落だと思う人もいた. 落を付け加えた方がよい側で,次のように書いた。. し, ⑭だけだと言い張る人もいて, ⑮も作ったほどでし た。」と記した。 「それではいい作戦とは思えません。」. そして,あと一つ,今でも私たちは砂漠を拡大し. と言い切っているところに, U・E子の自己の読み,さ. つつある。これを心において,これから私たちはど. らには仲間の読みに対する自負のようなものが感じられ. うしていき,この人問が砂漠を作ったという事実を. る。さらには「他の説明文で最後の結論がどこからだっ. どう解決していくのか考えてみてほしいと思う。. たのかわからなかったことなどありませんでした。ここ は,やっぱり⑮段落をっけるべきだったのではと私は思. このようにU ・ E子は,第⑮段落で読者に判断を委ね. います。結論をもう少しくわしくわかりやすくすればもっ. る締めくくりになっていたのを,不十分ながらも筆者の. とよかったのではと思いました。」に至っては,筆者へ. 要望・主張として前面に出す内容として書いた。 一万,第⑮段落は不要であり,このままでよしとする. の改善要求を提出しており,テクストを絶対視して受容. 意見には次のようなものがあった。 (下線は稿者). 見ることができる。. ・いくら⑭段落で「らしい」という終わり方でも,これ はこれでよいと思う。それは⑭段落は,アメリカも含 めて世界に目をちゃんと向けて書いているので, ⑮段. するのではなく,積極的に評価していこうとする姿勢を 表4は,第三次に書いたU ・ E子の「筆者小原氏になっ て『書き方の作戦・まとめ集』を読んだ感想」である。 学習指導過程において読者から筆者へと読みの立場を.
(8) 学校教育学研究, 1999,第11巻. 118. 表3.第二次5時に書いた∪ I E子の「筆者小原氏の『読者を納得させるための書き方の作戦・まとめ集J」 小 原 さん , 私 (ぼ く) た ち は, こ れ ま で ず つと あ な た の 「 書 き方 の 作 戦 」 を扱 って き ま した0 み ん な で 話 し合 っ た 小 原 さ ん の 「書 き方 の 作 戦 」 を ま と めて み る と … ‥. い ろ い ろ あ る の で す が, い い作 戦 と思 え る と ころ とち ょ っ と分 か り に くか っ た か な と恩 う作 戦 もあ りま した 0 まず 私 が い い な と思 った作 戦 は, 最 初 の書 き出 しで す0 他 の説 明 文 と は違 い, 「 次 の よ う な事 実 が あ る」 と い うよ うに書 き出 して い る と ころ か ら, 私 は ど ん な事 実 な の か と不 思議 に恩 い ま した0 こん なふ うに始 ま っ て い る説 明 文 は , 初 めて で, 小 原 さん な りの 作 戦 だ と思 い, とて もい い と思 い ま す0 あ と, ⑦ 段落 か ら白人 が 出 て きて, い ろ い ろ と こ こ も話 し合 つ て, 「 つ り合 い」 とい う言 葉 は⑥ 段 落 の最 後 の方 の 「え ものが 増 え れ ば 食 う方 も.… ‥。」 と い う文 と セ ッ トに ま と め る とす ご く い い と思 い ま した0 そ して , ⑥ 段 落 の そ こが あ る か ら, ⑦ 段 落 の 「つ り合 い」 と い う言 葉 が 出 て き た の だ と患 い ま す 0 そ こで 次 に も って い く とい う も って い き方 につ い て も, す ご くい い作 戦 だ と思 う し, うま い と思 い ま した0 / そ して , 今 度 は反 対 に, ち よっ とわ か りに くか つた と思 う作 戦 を書 きま す が, まず 最 後 の結 論 で す 0 こ こ は, み ん な も ど こか ら結 論 に して い い の か と迷 い ま し た0 結 局 は っ き り しな い ま ま終 わ って しま っ た ので す が , それ で はい い 作戦 と は思 え ませ ん 0 私 は⑫ 段 落 か らだ と思 い ま した が , ⑬⑭ 段 落 だ と患 う人 もい た し, ⑭ だ け だ と言 い張 る人 も い て, ⑬ も作 った ほ ど で した0 比 べ る の は あ ま りよ くな い と思 う けれ ど, 他 の説 明文 で最 後 の 結論 が ど こか らだ った の か わか らなか った こ とな どあ りませ ん で した。 こ こは, や っ ぱ り⑮ 段 落 を つ け る ベ きだ つた の で は と私 は思 い ます 0 結 論 を も う少 し くわ し くわ か りや す くす れ ば もつ とよ か った の で は と恩 い ま した 0 (荏 : ゴ チ ック部分 は, 指 導 者 が 与 え た リー ド文 で あ る0 下 線 は引 用 者 に よ る0). 衷4.第三次で∪ ・ E子か書いた「筆者小原氏になって『書き方の作戦・まとめ集』を読んだ感想」 みな さん が 書 い て くれ た r筆 者 の 書 き方 の 作 戦 . ま とめ 集 』 を 読 ま せ て も ら いま した0 読 ん だ 感 想 を 書 き た い と思 い ま すO まず , 私 は特 に小 ま と め や 大 ま とめ を 途 中 に付 け る こ と に気 を つ か って み ま した が, 見 事 に そ の よ うに 伝 わ っ て い る と い う こ とが分 か り, うれ し く恩 い ま し た0 あ と, 最 初 の書 き 出 しに も普 通 の説 明 文 と は ち ょ っ と違 う タ イ プで 書 い て み た つ も りだ った の で す が, ま ず ま ず とい った 感 じみ た い で したが , 特 に気 に し ませ ん0 / あ と, も う一 つ は, み な さ ん も あ ま り分 か らな くて と ま ど つて しま った 「結 論 」 部 分 で す が , 実 を い う と, 私 は あそ こが一 番 悩 ん だ と ころ だ った の で す 0 ⑬ 段 落 を つ け よ う と も思 い ま した が, み な さ ん が書 い て い た よ う に, 分 か り に くい とか , 書 か な くて も分 か るよ うな 気 が して , 結 局 書 か な か った の で す が ダ メだ った み た い で す ね 0 今 度 か ら書 くと き に は, 結 論 部 分 を も つ と し っか り ま とめ て 書 こ う と恩 い ま した。 / あ と, 最 後 に 白 人 とイ ンデ ィア ンを 出 した と こ ろ は, み ん な い い作 戦 だ つ た と認 め て くれ たみ た いで, とて も うれ しか つた で す0 ( 注 ‥ゴチ ッ ク部分 は, 指 導 者 が 与 え た リー ド文 で あ る0 下 線 は 引 用 者 に よ る0 ). 表5.最終第四次で∪ ・ E子が書いた「人間と自然」というテーマによる意見文 「身 近 な 自然 破 壊 」 ニ ュ ー スや 新 聞 で よ く聞 く自然 破壊 に つ い て の 問題 0 身 近 に な さ そ うで 意 外 に あ る よ うな気 が す る0 なぜ な ら, こ う い う場 が あ っ たか らだ 0 / い ま ま で に私 は, 東 京 , 奈 良, 京 都 , 兵 庫県 と転 々 と して きた0 住 ん で い るそ の 土 地 に よ っ て , あ らゆ る点 が 見 られ る0 今 , 住 ん で い る兵 庫 県 は, とて も 自然 の豊 か な 所 だ0 私 が 一 番 好 きな の は, 家 か ら見 え る夕 日0 あ の き れ い さ は, 毎 日毎 日変 わ り, 見 と れ る ほ ど貴 重 な もの だ0 カ メ ラや写 真 で写 そ うと した つて, そ の ス ク リー ンが あ ま り に も大 き い た め 収 ま ら な い0 そ れ ほ ど遠 くまで き れ い な の だ0 奈良 も, どち らか とい え ば兵 庫 県 と似 て い る0 家 の前 は竹 や ぶ で , 時 に は鹿 ま で や っ て きた0 そ ん な 中 を 走 り回 って遊 ん で い た の を よ く覚 え て い る0 ホ タル も一 歩 踏 み 出 れ ば み る こ とが で き, とて もい い と ころであ っ た と恩 う0 / 変 わ っ て京 都 と東 京 0 どち ら も とて も便 利 で あ った0 す ぐに デパ ー トや ビル が あ った し, 電 車 や飛 行 機 な ど , あ ら ゆ る便 利 な 物 が そ ろ って い た0 外 国 の い ろ い ろ な物 もあ った し, どの コー ナ ー に も品物 が い っぱ い あ っ た0 そ れ もそ れ で , そ の 時 は便 利 だ った 0 が , 周 りに立 ち並 ぶ の は ビル ば か りで, で も, まだ い ろ Ll ろ と ビル を つ く る計 画 が 立 て られ て い るよ うだ った 0 / あ な たな らど ち らの方 が い い と考 え るで し ょ うか0 きれ い な夕 日や ホ タル 0 あ らゆ る草 花 と 自然 0 と て も便 利 な 町 O 周 り に あ るの は ビル ば か り0 私 は ど ち らが い い の か考 え て み た0 で も, は っき り と は言 え な か った0 だ れ だ つ て そ う で あ ろ う0 け ど ビ ル ぽ っか りふ え て しま う とい う こ と は決 して な らな い と思 った0 や は り, ど ち ら も同 じ ぐ らい で バ ラ ンス の と れ て い る もの で な け れ ば な らな な い の だ0 私 は そ う患 う。 / と こ ろが だ0 今, ニ ユI スや 新 聞 で は, そ の バ ラ ン スが くず れ て い る み た い だ 0. この ま. ま で い いの だ ろ うか 0 私 は, い ま見 られ て い る夕 日な どが , や が て消 え て しま うの で は な い か と心 配 して い る 0 これ か らど う し た らよ いの か 0 こ のバ ラ ン スを ど う取 り戻 す の か が 問 題 だ0. ( 下線 は引用 者 に よ る).
(9) 自立した読者を育成する説明的文章の学習指導研究. 転換させることによって,筆者の発想や願い,認識方法. 119. を再認識,メタ化することに有効であることは実践的に. 指導のありようについて,第6学年「人間がさばくを作っ た」の実践を例に考察を行った。その中で,読者である. 手ごたえを得ているが12)ここでも同様な結果が得られ. 子どもたちをテクストや筆者に従属する位置から解放し,. た。本テクストの書き出しについては授業の中では評価. 自己の問題意識で主体的にテクストにかかわらせていく ためには,学習指導過程において筆者と対等に向き合え. が分かれたが,そのことについては「特に気にしません」 と言い放ち,筆者の言葉を借りる形で,テクストの書き. る場や状況を設定することが必要であることが確認でき. 出しのあり方についての自己の考えを貫こうとしている ことがうかがえる。また結論部分については「今度から. た。テクストも筆者も絶対視すべき存在ではなく,批判 し,評価し,そのうえで受容すべきは受容することが望. 書くときには,結論部分をもっとしっかりまとめて書こ. ましい。そういうことを実感できる学習活動を構成する. うと恩いました。」と記した。これは実際の筆者本人の. ことが,指導者としての重要な仕事となる。本実践の場. 意見ではないわけだが,こうしたテクストの不備を筆者. 合, 「読者を納得させる筆者の書き方の作戦」を探ると. の言葉を借りて指摘させることは,テクストや筆者を無. いう学習活動が,そうした性格を有する学習活動として. 条件に受容し,読者の主体性や自立性を喪失するという. 有効であった。また読者の立場と筆者の立場を相互交流. 事態を回避することには有効であると思われる。. させる学習活動を位置づけることも,読者の主体として. 最後に表5であるが,これは最終第四次でU ・ E子が. の意識を持たせることに機能することが確認された。. 書いた「人間と自然」というテーマによる意見文である。. 学校五日制の完全実施に向けて,時間数の削減による. 第三次まではテクストに対していかに自立した読者主体. 授業のスリム化が叫ばれているが,説明的文章の学習指. であり得るかが問題となったが,ここは「(自己の発想・. 導でいえば,要点,要旨まとめに代表されるような形式. 考え方を)広げる」段階であるから,学習してきたこと. 技能的学習を繰り返し徹底することだけでよしとしてし. を生かして,いかに一人の認識主体として自立するかを. まうと,本稿で提案したような読者主体の育成は困難で. 問う段階であった。. あると思われる。また複雑化,多様化が進展する21世紀. U・ E子の場合,自己の転居経験をもとに,身近な自. 社会を生きる子どもたちには,言語による鋭敏なものの. 然破壊について記述した。特徴的なのは,兵庫・奈良と. 見方や感じ方,考え方などを有した主体であることがま. をセットにし,東京・京都のセットと対比的な構造で述. すます要求されることになろう。その意味でも,自立し. べようとしていることである。これは,授業で扱ったテ. た読者主体を育成することを意図した実践のバリエーショ. クスト「人間がさばくを作った」における対比構造を生. ンを,発達段階に応じたものとして用意することが今後. かしたものと推察される。また「あなたならどちらの方. の課題である。. がいいと考えるでしょうか。」という問題提示文を置い たところも,説明的表現を意識してのものと考えられる。. 注および文献. そして,主張点としては「バランス」をキーワードと. 1)森田信義, (1984) ; 『認識主体を育てる説明的文章の指導』. した。これは「人間がさばくを作った」におけるキーコ ンセプトが「つり合い」という言葉で表現された生態系. 広島,洪水社p.2 2)植山俊宏, (1996) ; 「意味理解と読者主体の変容」 『戦後国. のバランスの大切さであったことに影響されたものだと. 語教育研究の到達点と改革課題』教育科学国語教育臨時増. 思われる。 「私はどちらがいいのか考えてみた。でも, はっきりとは言えなかった。だれだってそうであろう。」. 刊No.528, pp.101-102 3)寺井正憲, (1996) ; 「問題状況と読み手の極の定位」 『戦後. と述べ,最後を「このバランスをどう取り戻すのかが問. 国語教育研究の到達点と改革課題』教育科学国語教育臨時. 題だ。」で締めくくっているところに,無理をせず,身 近なところから取り組んでいくことが大切であり,テー. 増刊No.528, pp.99-100 4) 3)に同じ. マに対して実質的にアプローチしようと考えるこの子の. 5)長崎伸仁, (1997) ; 『新しく拓く説明的文章の授業』東京,. 意識と,考え方の手堅さのようなものが認められる。す. 明治図書p.15. なわち,一人の読者主体として自立的な読みを展開して. 6)5)に同じ. いったことが,一人の認識主体としての望ましい姿を6. 7)吉川芳則, (1998) ; 「説明的文章の学習指導過程の実態分. 年生なりに表出させることにつながったと考えられる。. 析にもとづく授業改善の構想」学校教育学研究,第10巻, pp.8-13,において,実践112事例を調査した結果,要点, 要約指導などに代表される文章論的読解活動を中心とした. 5.まとめと今後の課題 本稿では,自立した読者を育成する説明的文章の学習. 学習指導過程が全体の69%を占める実態であることを報告 している。 8)こうした立場の転換については,はじめはとまどいを見せ.
(10) 学校教育学研究, 1999,第11巻. 120. る学習者も見られるが,適切な説明と同様な学習活動の繰 り返しによって,筆者の発想や認識方法等を再認識,メタ 化することに有効に機能することの手応えを,稿者による. れは生活や文化にどのように役立てられてきたのだろうか。」 を提示した。 10)ここでいう「筆者と対等に向き合う」というのは,筆者と. 実践において得ている。詳しくは,吉川芳則(1998) 「説. 同等の(同レベルの)知識や認識方法,認識内容等を有し. 明的文章の学習指導研究-読者の立場での読みと筆者の立. ているということを意味してはいない。テクストを読んだ. 場での読みを相互交流させる学習活動を組織化した場合-」. ときに,当該学年(本実践では第6学年)の読者として,. 言語表現研究,第14号pp.30-38を参照されたい。また,. つまり説明対象物や内容についての専門的な知識がない読. こうした立場の転換を導入した読み(学習活動)は,どの. 者として読んだときに,わかりやすい文章であるか否かを. 説明的文章テクスト,どの学習指導過程においても採用さ. 自分なりに吟味し,評価できることをもって, 「筆者と対. れるというものではない。テクストの特性や授業(単元) の目標や内容によって決定されるものである。 9)当該クラスが5年生時に学習した「竹とともに生きる」. 等に向き合う」という概念を用いている。 ll)小田迫夫・渡辺邦彦・伊崎一夫編著『二十一世紀に生きる 説明文学習一情報を読み,活かす力を育む-』東京書籍,. (上田弘一郎,大阪書籍5年上)の序論部分「日本には,. 1996所収の「人間がさばくを作った」の実践報告では,. いたるところに竹やぶがある。 /日本人は,その竹のいろ. 「まとめ」として⑫⑬⑭段落を位置づけている。. いろな特性をよく知っていて,竹とともに生き,竹を生活 や文化に役立ててきた。では,竹にどんな特性があり,そ. 12) 8)に掲げた文献に同じ。.
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