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国際比較調査からみた日本の父親の子育ての現状と問題点

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(1)

子育ての現状と問題点

千 葉 聡 子 *

1. 本稿の目的 本稿は,文部省が

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3

年度および

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年 度に償却日本女子社会教育会に委嘱して,日本, 韓国,タイ,アメリカ,イギリス,スウェー デンの6カ国の親に対して行った「家庭教育 に関する国際比較調査

J

(同財団から

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5

年 3月に報告書が出ている)のデータを使用し, 子どもや子育て,家庭についての親の考え方 を考察していくものである1)特に本稿では, 父親の職業に焦点を絞り,自営業と被雇用と いう職業形態の違いにより父親の家族や子ど もに対する意識や実態は異なるのか否か,ま た6カ国の比較を通して日本の父親に特徴的 な要素を指摘できるのか,などについて分析 を試みたい. この調査は,

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9

4

年の国際家族年を踏ま え,また近年の日本の家族および家族を取り 巻く社会状況の変化や家庭の教育機能などの 変容を考慮、し,日本,韓国,タイ,アメリカ, イギリス,スウェーデンの

O

歳から

1

2

歳 の 子どもと同居している親またはそれに相当す る人2)を対象に行ったもので,日本および諸 外国の家庭・家族の変化,家庭教育の実態, 親の意識等を調査し,現代日本の家庭教育の 特色や課題を明らかにすることを目的にして いる. 調査項目それぞれの結果については詳しく 触れられないが,大きく傾向を述べれば,子 どもの現実や将来についての考え方を規定す * ち ば あ き こ 文 教 大 学 教 育 学 部 る大きな要因は,

r

子どもの年齢

J

と「国

J

であり,子どもの年齢と国の違いが,子ども の実態や子どもに対する親の意識の違いを生 む大きな要因になっていることがわかった. つまり,子どもの発達段階と国のもつ社会 的・文化的背景という枠に規定されて子育て は 行 わ れ て い る と 考 え ら れ る ( 杉 山 明 子

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-

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頁).また日本の状況につい ては,①日本は母親の就業率が韓国に次いで 低く,子育ては主として母親が引き受け,父 親の役割分担は低いこと,②また子どものし つけは6カ国中最も甘く,特に男の子に対す るしつけの甘さが見られる,③さらに子ども の成長に対する満足感を感じる親は6カ国で 最も少なく,欧米の親が子育てを楽しみ,子 どものしつけをしっかり行って子どもの成長 に満足しているのに対し,日本の親は子育て を楽しむことが相対的に少なく,家庭での子 どものしつけや教育のための意識と行動が弱 いようにみえる,と指摘されている(牧野カ ツコ

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頁). そこで本稿では以上の結果を受け,父親の 子育て参加や家族についての意識に関する項 目について,自営業と被雇用という職業の違 いの側面から,使用できるデータの範囲内で はあるが分析を進め,他の5カ国の父親の状 況との比較から日本の父親の子育てへの関わ りの低さを作り上げている要因や家族観など を探っていきたい3).分析に入る前に調査の 概要を述べておこう.

(2)

『教育学部紀要J文 教 大 学 教 育 学 部 第30集 1996年 千 葉 聡 子 表1 親の基本属性 性別構成 父親 母親 % % 日 本(N=1,067) 47.2 52.8 韓 国(N二 1,004) 48.0 52.0 タ イ(N二 1,000) 50.0 50.0 ア メ リ カ (N=1,000) 46.1 53.9 イ ギ リ ス (N=1,052) 49.2 50.8 スウェーデン (N=1,113) 53.0 47.0

2

.

調査の概要 (1 ) 調査対象者と調査方法,および主な調査 内容 調査の対象は,日本,韓国,タイ,アメリ カ,イギリス,スウェーデンの 6カ国の O歳 から 12歳の子どもと同居している親または それに相当する人で,一世帯で一人.この調 査対象者である親に対して同居する特定の子 どものことを尋ねた(同居する子どもがこ人 以上いる場合は誕生日が調査日に最も近い子 どものこと).各国とも 1,000サンプル回収 を目標とし,原則として男女を交互に抽出し た.調査期間は 1994年 1月"-'6月.各国と も調査員による個別面接調査によった. 調査の主な内容は,①家族の状況と子ども の特性,②親と子の日常生活(子どもと一緒 に過ごす時間と内容,父母の子育て役割分担 など),③子どものしつけと子どもへの期待 (何をどこで身につけるか,子どものしつけ の現状, 15歳の時の子どもへの期待など), ④子育ての悩み・問題点と子育て支援の現状 と充実して欲しい子育て環境,⑤家族の変化 と子どもをもっ意味・育てる意味,子どもの 成長についての満足度(子どもに将来してあ げたいこと,将来子どもにして欲しくない家 庭生活像,子どもの意味など),である. (2) 調査対象者の属性 今回の調査のサンプル構成の性別の状況は 表1,表3に示した通りであるが,各国とも 平均年齢 父親の職業 母親の職業 父親 母親 被雇用者 自営業者 有職 専業主婦 38.4歳 35.4歳 80.4% 19.5% 51.2 4% 7.4% 36.5 36.4 36.1 35.3 38.0 32.9 57.5 42.1 20.8 79.1 31.9 56.8 41.8 70.2 28.0 33.1 76.1 16.7 64.7 25.8 32.7 66.8 13.0 49.4 45.9 34.4 77.3 13.4 75.9 8.8 親,子ども共に男女はほぼ半数ずっとなった. ①親の基本属性 親の基本属性を表1でみると,親の年齢は, 父親はイギリスが最も低く 35.3歳,日本が 最も高く 38.4歳,母親はタイが最も低く 31.9歳,最も高いのはやはり日本で 35.4歳 であった. 次に今回の分析の中心となる父親の職業を みると,日本を除くアジアの2カ国では自営 業と被雇用がほぼ半数ずつであるが,欧米3 カ国および日本は被雇用の割合の方が高くな っている.特に日本は被雇用の割合が6カ国 中最も高い.また母親については,

I

勤め人」 と「自営業・家で仕事j を合わせた「有職」 と「仕事をしていなしユjのうち「専業主婦」 のみを表に載せた.職業を持つ母親が多いの はスウェーデン,タイ,アメリカで,スウェ ーデンとアメリカは「勤め人jが多いのに対 し,タイは「自営業・家で仕事jが他の固に 比べ多くなっている.日本とイギリスは有職 と専業主婦がほぼ半数ずつ,また韓国は専業 表2世帯の状況 人同居数 子人ど数も 世帯構成 親ひ世と帯り 2世代 3世代その他 日 本 4.7JA2.12人 66.2% 29.0% 4.9% 韓 国 4.31.93 77.1 14.9 8.0 O. タ イ 4.91.90 48.5 22.2 29.3 3. アメリカ 4.1 2.29 85.9 5.9 8.2 12. イギリス 4.0 2.28 95.5 1.7 2.8 6. スウェーデン 4.1 2.37 98.8 0.4 0.7 11.

(3)

-140-表3 対象となった子どもの状況 性別構成 平均年齢 男の子 女の子 % % 6.5歳 日 本 52.9 47.1 韓 国 54.7 45.3 5.9 タ イ 51.4 48.6 5.3 ア メ リ カ 50.1 49.9 6.2 イ ギ リ ス 52.3 47.7 5.6 スウェーデ、ン 48.3 51. 7 6.1 L 一 一 一 主婦が他の国に比べ8割と多い. ②世帯の状況 対象者自身も含めた同居人数はタイ,日本, 韓国,アメリカ,スウェーデン,イギリスの 順で多くなっているが,いずれの国も

4

人台 の数値である.また子どもの数は,アジアと 欧米という形で比較すると欧米の方が多い (表 2参照).なお別居している子どもがいる 世帯の割合は欧米3カ国でl割となっている. 次に,親と子のみの「二世代世帯

J

,祖父 母あるいはそのいずれかを含む「三世代世 帯

J

,世帯に祖父母以外の親族や同居人を含 む「その他世帯

J

という分類で世帯構成をみ ると,欧米 3カ国では二世代世帯が圧倒的に 多いのに対し,アジアは二世代世帯以外の世 帯も比較的多くみられ,形態の上での家族の 多様性がみられる. 配偶者・パートナーのいないいわゆる「ひ とり親家族

J

は欧米3カ国で1割前後である. また表には載せなかったが,パートナーが 向性というケースがアメリカ,イギリス,タ イで僅かであるがみられた他,父親が無職で 母親が有職の「専業主夫家族」は韓国以外で みられスウェーデンで最も多く 5.9%,また 父母とも無職の家族はイギリスで最も多く 9.4%と 1割近くを占めた. ③対象となった子どもの状況 対象となった子どもの平均年齢および年齢 の分布状況は表3に示したとおりである. また,親と子どもの続柄は,アジアの3カ 年齢構成 夫婦の実子 0"-'3歳 4"-'6歳 7"-'9歳 10"-'12歳 % % % % 97.2% │ 28.1 20.2 24.0 27.6 33.7 22.5 22.9 20.9 99.5 39.7 22.4 18.6 19.3 96.7 27.5 26.0 22.7 23.8 89.0 35.0 23.5 23.9 17.7 93.9 29.0 25.8 22.8 22.4 88.6 国では「夫婦の実子jがほとんどであるのに 対し欧米3カ国では父母のうち片方の実子と いう子どもが若干いることがわかる. (3) 父親の職業について 本稿では,父親に対象を絞り,自営業と雇 用されて働く被雇用の2分類の職業状況によ る調査結果の比較を行う.調査の項目では, 自営業は「事業を経営している

J

r

家業を手 伝っている

J

r

家で仕事をしている」の3項 目が,また被雇用は「常勤」と「パート・臨 時など」の 2項目の回答項目から成る.各国 の状況については表1をみていただきたい. この他に「仕事をしていない

(

r

学生

J

r

専業 主婦・主夫

J

r

無職」から成る

)

J

という項目 があるが,今回の分析では取り上げないこと にする.父親に注目するためサンプル数は各 国とも約半数になる. また,年齢,同居家族人数,世帯収入に占 める父親の収入割合を簡単に述べておくと, アメリカを除き,自営業の父親は被雇用の父 親に対し,年齢が高く,収入割合は低く,ま た同居人数は多いという傾向がみられた.ま た子どもの年齢分布は国によっては自営業と 被雇用で違いがみられるが,日本は比較的同 じような分布を示した.

3

.

職 業 別 に み た 父 親 の 子 ど も へ の 関

わりの実態

(1 ) 子どもとの接触時間と内容

(4)

『教育学部紀要』文教大学教育学部第30集 1996年 千 葉 聡 子 父親は子どもと実際にどの位の時間,どの ようなことをして過ごしているのだろうか. 父親の職業に注目した調査結果をみるまえに, 父親全体についての日本の特徴を明らかにし ておこう. 調査では,調査対象となった子どもと平日 どのくらい一緒に過ごしているか(睡眠時間 を除く)を質問した.表4でまず親の性別に よる接触時間をみると,父親ではタイが最も 長 く , 以 下 ア メ リ カ , イ ギ リ ス , ス ウ ェ ー デ ン,韓国,日本の順で続く.日本の父親は 表4 平 日 子 ど も と 一 緒 に 過 ご す 時 間 ( 時 間 ) 母 親 父 親 自営業 被雇用 日 本 7.44 3.32 4.19 3.11 韓 国 8.40 3.62 3.98 3.36 タ イ 8.06 6.00 6.67 5.40 I ア メ リ カ 7.57 4.88 4.15 4.77 イ ギ リ ス 7.52 4.75 4.54 3.97 スウェーテヤ 6.49 3.64 3.09 3.53 3.32時間と6カ国の父母の中で最も接触時 聞が短く,父親では接触時間が最も長いタイ と2.68時間の差がある.また母親も 7.44時 間とスウェーデンに次いで短く,さらに父母 の 時 間 差 を み る と , 韓 国 に 次 い で 日 本 は 4.12時間と差が大きい. また調査では,対象となった子どもと一緒 に過ごす時にすることを 15項目あげいくつ でもよいという形で答えてもらった.表5の 下の欄に父親と母親の平均回答項目数を載せ たが,平均回答項目,つまりどのくらい多様 な行動を通して親は子どもと接しているか, という点から 6カ国の状況をみてみよう.ま ず,どの国も母親の方が項目数が多く,接触 内容が父親に比べ豊かであること,また国別 では父親,母親ともにアメリカの親が多様な 行動を通して子どもと接触していることがわ か る . 日 本 に つ い て は , 父 親 の 項 目 数 は 6.70と接触時間とともに最も少なく,接触 時間や内容という行動からみる限り,日本の 父親の子育てへの関わりは消極的であると言 表5 父 親 の 子 ど も と の 接 触 内 容 ( 含 : 母 親 平 均 回 答 項 目 数 ) 日 本 韓 国 タ イ アメリカ イギリス スウェーテヤ 日本順位 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 食事を一緒にする 88.8%85.7% 84.7%83.O% 90.4%82.4% 94.8%91.7% 91.O%89.O % 91.%191.O% ⑤ ④ 着がえを手伝う・用意する 25.5 23.5 38.4 40.1 46.451.8 44.2 47.0 49.3 47.434.2 52.9 ⑥ ⑥ 一緒に遊ぶ 66.3 65.7 76.480.5 78.0 83.8 80.5 89.2 91.0 91.3 60.8 74.8⑤ ⑥ 話をする 85.7 71.9 76.478.0 85.6 84.5 90.9 85.8 88.1 87.6 68.4 70.2 ③ ⑤ 一緒にテレビをみる 80.6 79.5 84.7 84.1 72.2 63.7 70.1 66.465.7 69.9 70.9 71.9 ② ② 家事を教える・一緒にする 13.3 12.6 10.3 10.1 35.4 37.0 40.3 38.7 32.8 21. 7 22.8 21.1 ⑤ ⑤ 仕事を教える・一緒にする 10.2 11.1 15.3 11.2 18.2 18.3 49.4 40.5 22.4 22.3 24.1 27.2 ⑥ ⑥ 勉強を教える・勉強させる 27.6 30.6 46.3 49.8 31.6 24.3 57.1 43.3 52.2 46.8 41.8 34.4 ⑥ ⑤ スポーツを教える・する 43.9 36.8 19.7 21. 7 13.422.9 62.3 54.7 43.3 45.1 54.438.4 ③ ④ 趣味を教える・一緒にする 14.3 17.8 16.7 17.0 11.0 16.9 49.436.5 40.3 37.6 27.8 23.7⑤ ④ 幼稚園・学校等の送り迎え 22.4 8.9 10.8 4.3 22.0 20.4 42.934.5 32.8 32.9 31.6 33.6 ④ ⑤ 一緒に外出する 72.4 68.9 64.5 70.8 62.7 62.0 92.2 88.0 88.1 88.7 65.8 70.8 ③ ⑤ 同じ部屋で寝る 56.1 47.2 50.7 52.3 61.768.3 7.8 9.7 3.0 4.6 11.4 17.8② ③ 入浴させる・一緒に入る 67.3 65.9 41.9 45.8 37.8 43.0 22.1 35.3 32.8 43.1 32.9 45.6 ① ① その子が見える所にいる 39.8 32.3 28.1 39.434.9 31. 7 45.5. 43.9 32.8 35.0 34.2 43.2② ⑤ 平均回答項目数 7.14 6.59 6.65 6.88 7.02 7.11 8.58 8.13 7.66 7.64 6.76 7.20 ③ ⑥ 父親全体平均回答項目数 6.70 6.79 7.07 8.20 7.69 7.18 ⑥ 母親全体平均回答項目数 8.46 8.64 7.97 8.89 8.75 8.36 ④

(5)

わざるを得ない.なお平均回答項目数が多い 国からあげると,アメリカ,イギリス,スウ ェーデン,タイ,韓国,日本となる. しかし表4を父親の職業でみると,日本の 自営業の父親の接触時間は決して短くない. 表では職業別にみた場合の数値が大きい方に 下線を付したが,アジア3カ国とイギリスで は被雇用の父親に比べ自営業の父親の方が接 触時聞が長く,特に日本の場合は,被雇用の 父親が 6カ国中最も時間が短いのに対し,自 営業の父親は,自営業の中でタイ,イギリス に次いで3位の長きである 父親全体の平均 時間と比較しても,日本の自営業の父親につ いては接触時間が短いという指摘はできない (なお,欧米3カ国において父親の平均が被 雇用と自営業の平均よりも長くなるのは, 「仕事をしていない」に分類される父親が比 較的多いためであると考えられる). また内容についても,表 5の下の欄の平均 回答項目数をみると,日本の父親は被雇用の 父親が 6カ国の中で最も項目数が少ないのに 対し,自営業の父親はアメリカ,イギリスに 次いで自営業の中では多く,被雇用の父親と の違いが明確である.個別の内容をみても, 日本の自営業の父親は「家事以外の仕事を教 える・一緒にする

J

I

勉強を教える・勉強を させる

J

I

趣味を教える・一緒にする」の3 項目以外の 12項目で被雇用の父親に比べ行 動の割合が高い. しかし,

6

カ国で自営業の父親の方が接触 表6 父親の子育て役割遂行状況(主に自分+両方) 日 本 韓 国 タ イ 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 食事の世話 11.2%9.2 % 16.%322.% 7 29.%734.2% しつけをする 63.3 49.9 43.4 52.0 61.8 54.6 勉強を教える 39.8 29.1 30.1 38.2 37.438.7 遊び相手をする 78.5 72.3 43.8 53.5 67.4 68.3 進路の相談相手 24.5 21.2 28.1 23.1 27.2 27.2 悩みごとの相談相手 25.5 23.7 20.2 20.6 53.6 49.6 生活費の負担 90.8 93.8 92.2 92.8 60.8 62.3 内容の項目数が多いのは日本,アメリカ,イ ギリス3国のみで,接触時間,接触内容の豊 かさ共に職業別での明確な違いが見られたの は,日本とイギリスについてのみであった. 日本とイギリスは時間,内容共に自営業の父 親の方が子どもとの関わりが強いという傾向 がみられた. なお父母を合わせた全体の傾向をみると, 「食事をする

J

I

話をする

J

I

一緒にテレビを 見る

J

I

一緒に外出する」などの項目がどの 国も割合が高く,

I

同じ部屋で寝る」がアジ アで多いのに対し,

I

保育所・幼稚園・学校 の送り迎えをする jが欧米で多いという傾向 があった. 以上の結果から,日本の父親を全体でみる と子どもとの接触が時間についても内容につ いても他の5カ国の父親に比べ貧弱なものと なっているが,職業別により詳細に父親と子 どもとの接触をみると,この状況を作ってい るのは被雇用の父親であり,自営業の父親は 6カ国の中で比較してもかなり積極的に子ど もたちと接していることがわかる.またこう した傾向はどの国にもみられるものではなく, 職業別で明確な違いが生じるのは日本とイギ リスのみであった. (2) 子育て役割の遂行 次に,父親の子育て役割遂行の状況を表 6 からみてみよう.調査では,対象となった子 どもについて次の

7

項目のことがらをしてい るのは誰かを質問した.7項目とは「食事の アメリカ イギリス スウェーデ、ン 日本順位 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用父親全体 48.%148.7% 34.3%33.8% 34.2%37.7% ⑥ ⑥ ⑥ 85.7 85.488.1 82.0 82.2 87.9 ④ ⑥ ⑤ 54.6 41.9 50.8 44.8 36.7 32.9 ③ ⑥ ⑥ 85.7 88.0 82.1 87.9 60.8 75.2 ③ ④ ④ 61.1 41.3 40.3 36.1 43.0 35.5 ⑥ ⑥ ⑥ 63.7 57.2 49.3 48.5 65.9 64.2 ⑤ ⑤ ⑤ 93.5 91.2 94.0 87.0 92.4 95.8⑤ ② ②

(6)

-143-『教育学部紀要』文教大学教育学部第30集 1996年 千 葉 聡 子 世話をする

J

I

しつけをする

J

I

勉強を教え る

J

I

遊び相手をする

J

I

進路の相談相手にな る

J

I

悩みごとの相談相手になる

J

I

生活費を 負担する

J

で,

I

主に自分

J

I

主に配偶者/ノf -トナー

J

I

両方

J

I

していない/必要ない」 から選択してもらった.表には父親の職業別 に「主に自分」と「両方jの回答をたしたも のを載せた. 表右端の6カ国での順位から日本の父親全 体の傾向をみると,日本は「生活費を負担す るj と「遊び相手をする」以外の項目は6位 あるいは5位である.子育ての役割分担,役 割遂行からみた父親の子育てへの関わりは, 30代を中心とした比較的若い父親でも,他 の国との比較においては経済的な側面を除き 弱いことがわかる.表には載せていないが, 特に日本と韓国では子育ては専ら母親が担う という傾向が強く(財日本女子社会教育会

1

9

9

5

b

2

6

頁),この質問からも,日本の父 親の子育てへの関わりの弱さが読み取れる. さて職業別に日本の父親の状況をみると, 子どもとの接触同様,職業の違いで状況はか なり異なることがわかる.

I

生活費を負担す るj以外の項目は全て自営業の父親が数値が 高く,特に「しつけをする

J

I

勉強を教える」 の項目の差が大きい.この質問でも,日本の 父親については職業が子育て状況と大きく関 表7 父親の子育てで感じる二と(含:母親順位) 日 本 韓 国 タ イ 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 子育ては楽しい 2.51 2.41 2.71 2.67 2.69 2.62 何人いてもよい 1.94 1. 791. 72 1.65 1.69 1. 74 自分自身も成長する 2.38 2.36 2.49 2.48 2.28 2.25 やりたいことができない 1.64 1.68 1.49 1.56 1.95 1.97 子育てでイライラする 1.58 1.67 1.47 1.61 1.67 1.62 子育てで不安を感じる 1.54 "1.57 2.22 2.19 1. 78 1.84 父親子育て楽しみ度 13.70 13.54 13.22 連しており,自営業の父親は比較的子育てと いう役割を担っていることがわかる.ただし 自営業の父親でも他の国との比較では,

I

勉 強を教える

J

I

遊び相手をする

J

の2項目の みが相対的に割合が高いだけで,全体として は子育てに十分父親が参加しているとは言え ない. また同じ様に,イギリスの自営業の父親も 「遊び相手j を除いて子育てへの関わりは被 雇用の父親に比べて強く,接触時間,内容と ともに日本と同様の傾向がみられた. (3) 子育てで感じること これまでみてきたように,日本の父親全体 では,他の

5

カ国の父親と比較して子育てへ の関わりは決して強いものではないが,職業 別でみるとこの実態を作っているのは雇用さ れて働く父親であり,自営業の父親は比較的 子育てに参加していることがわかった.この 状況をふまえ,それでは父親は子育てについ てどの様に感じているのかを次にみてみよう. 調査では対象となった子どもを育てながら 普段どのようなことを感じるかを,

6

つの面 から尋ねている.6つの項目は,

I

子どもを 育てるのは楽しい

J

I

子どもは何人いてもよ い

J

I

子どもをもって自分自身も成長してい る

J

のプラスの3項目と,

I

子どもがいるの でやりたいことができない

J

I

子どものこと アメリカ イギリス スウェーデン 日本順位 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用母親全体 2.70 2.71 2.61 2.57 2.41 2.44⑤ ⑥ ⑤ 1.88 1. 96 1.82 1. 711.34 1.36① ② ② 2.87 2.80 2.66 2.66 2.75 2.77 ⑤ ⑤ ④ 1.67 1.67 1.52 1. 71 1. 72 1.92④ ④ ④ 1. 771.69 1.64 1. 77 1. 78 1.87 ⑤ ④ ① 1.57 1.60 1.55 1.57 1.35 1.47⑤ ④ ③ 14.35 13.96 13.23 ③ *表の数値は「いつも感じる」に3点, I時々感じる」に2点, I感じないjに1点を与え質問項目ごとに 出した平均点である.また「父親子育て楽しみ度

J

はマイナスの項目の点数を逆転させた上での合計点 で,点数が高いほど楽しみ度が強いことになる.

(7)

-144-でイライラする

J

r

どのように育てたらよい か不安を感じる」のマイナスの3項目で,そ れぞれに「いつも感じる

J

r

時々感じる

J

r

感 じない」という形で答えてもらった.表

7

は 「いつも感じる」に3点,

r

時々感じる」に2 点,

r

感じないj に 1点を与え質問項目ごと に平均点を出したものである.数値が大きい ほど質問内容を強く感じていることになる. 日本の父親について職業別に結果をみると, 子育てについてのプラス感想を示す上部3項 目については自営業の値が大きく,マイナス の感想である下部の3項目はどれも被雇用の 父親の値が大きいことがわかる.この結果は, 自営業の父親は被雇用の父親に比べ,子育て でプラスの感想を持つ傾向がかなり明確にみ られることを示している.同様の傾向はイギ リスと韓国でもみられ,ここでも日本とイギ リスの父親の共通した傾向をみることができ る.また表の一番下にある「子育て楽しみ 度

J

の数値をみると,アメリカ,イギリス, 日本,韓国,スウェーデン,タイの順で楽し み度が高く,父親全体でみた場合はアメリカ の父親が最も強く子育てにプラスの感想、をも っていることがわかる. 以上の結果と先にみた子どもとの接触の結 果を合わせて考えると,日本とイギリスの父 親については自営業の父親の方が子育ての関 わりが強くより子育てに対してもプラスの感 想をもっており,子育て参加と子育てへの感 想との聞に関連があることが予想される.た だしこの結果は一般化できることではなく, 日本およびイギリスについての傾向と考える 必要があろう.この点は母親に注目すればよ り明確で、,子育てに専ら関わっている母親に 大きな育児不安があるということが報告され て い る ( 落 合 恵 美 子 1994,180-186頁). 当然のことながら子育てや子どもに対する感 情はより複雑なものであり,一つの要因など で説明できるものではない.ただ,少なくと も子育てへの関わりが相対的に少ない日本の 父親については,職業別でみた際に現れた子 育てへの関わりと子育てで感じることとの関 係を重視し,今後の父親の子育て参加を考え ていくべきではないだろうか.

4

.

父親の子どもや家族に対する意識 (1 ) 子どもに将来してあげたいこと さてこれまで,父親の職業に注目し,職業 形態の違いにより子どもへの関わり方,また 子育ての意識がどのように異なるのかをみて きた.その結果,特に日本の父親の場合,自 営業と被雇用という職業形態の違いによって 子どもへの関わり方が他の5カ国にはみられ ないほど明確に異なっており,自営業の父親 は子育てにプラスの形でよりコミットしてい る様子がわかった. それでは,もう少し別の視点から父親の状 況をみてみよう. 表8は対象となった子どもに対して将来し てあげたいことをいくつでもよいということ で答えてもらった結果である.質問では9項 目をあげたが,表の下に示した父親,母親別 の平均回答項目数をみると,日本の父母の項 目数は6カ国で最も少なく,子どもに将来し てあげたいことが少ないことがわかる.表に は載せていないが父母を合わせた平均回答項 目数をみると,スウェーデンが最も多く,以 下タイ,イギリス,アメリカ,韓国,日本と 続く.また父母を合わせた日本の傾向をみる と,

r

義 務 教 育 後 の 教 育 費 を 負 担 す る

J

が 89.1%と最も多く,

r

孫の面倒をみる

J

42.8 %で2位,

r

結婚費用を出す

J

が42.4%で3 位と続く.他の5カ国も「義務教育後の教育 費 を 負 担

J

は 韓 国 (93.9%),タイ (88.9 %),アメリカ (87.7%)で1イ立,イギリス (69.2%),スウェーデン (78.6%)で2位 に,

r

結婚費用を出す

J

が韓国 (66.5%)で 2位,アメリカ (59.5%),イギリス (62.5 %)で3位と比較的上位にきており,他に 「遺産を残すj もイギリス (70.2%)で1位

(8)

『教育学部紀要J文 教 大 学 教 育 学 部 第30集 1996年 千 葉 聡 子 表8 父親の子どもに将来してあげたいこと(含:母親平均回答項目数) 日 本 韓 国 自営業被雇用 自営業被雇用 義務教育後の教育費を負担 87.8%88.9% 95.1%92.8% 結婚費用を出す 44.9 45.7 69.0 65.7 家の購入・建築費を負担 22.4 13.1 30.0 37.9 就職先を探す 12.2 8.1 16.3 15.2 結婚相手を探す 7.1 3.0 17.7 16.2 就職後の身の回りの世話 3.1 2.5 31.5 34.7 結婚後の生活費の援助 5.1 5.2 9.4 7.9 孫の面倒をみる 49.0 39.0 34.0 31.0 遺産を残す 21.4 19.3 25.1 22.7 平均回答項目数 2.53 2.25 3.28 3.24 父親全体平均回答項目数 2.30 3.26 母親全体平均回答項目数 2.19 3.26 の他,タイ (61.1%),アメリカ (69.3%) など上位にきている国が多い.なおスウェー デンの1位は「孫の面倒をみる」で93.0

%

である. では次に表8の父親の職業別に注目しよう. まず平均回答項目数をみると,いずれの国も 被雇用に比べ自営業の父親の方が回答項目が 多く,この点は6カ国に共通している.韓国, タイは9項目中 7項目,日本,アメリカでは 6項目が被雇用よりも自営業の方が割合が高 くなっている.また項目の内容では,

r

遺産 を残す」はすべての国で,また「就職先を探 す

J

r

結婚相手を探すjの2項目も 5カ国で 自営業の方が割合が高い.ここでこの内容と 平均回答項目数の多さを,自営業の父親は家 族の継続をより強く意識していると少し強引 に解釈すれば,自営業という職業の性格が家 族についての意識を作るー要因となっている と考えることができる.日本の家族の構造と 機能についての別の調査においても,自営家 族とサラリーマン家族の家族像の違いは,自 営家族における「稼業の継承」という点に負 うところが大きい,という指摘がされている (総合研究開発機構 1987, 80-87頁). この点についてもう少し考察すれば,産業 構造の変化により親の職業も変化し,また子 タ イ アメリカ イギリス スウェーデン 日本順位 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 92.3%91.9% 81.8%89.7% 70.1%70.8% 87.3%80.0% ③ 52.2 40.1 54.5 61.8 70.1 63.9 53.2 46.7 ⑥ ⑤ 40.2 35.6 45.5 37.3 58.2 51.2 65.8 66.4 ⑥ ⑥ 52.657.7 27.3 19.7 34.3 31.2 72.2 58.3 ⑥ ⑥ 19.1 14.8 5.2 4.3 7.5 3.5 3.8 6.1 ④ ⑥ 51.2 48.9 22.1 18.5 43.3 51.2 16.5 25.4 ⑥ ⑥ 31.6 32.0 22.1 14.2 26.9 28.3 41.8 42.5 ⑥ ⑥ 54.1 50.0 40.3 40.5 56.7 59.2 91.1 92.8 ④ ⑤ 66.0 57.0 72.7 72.1 77.6 75.465.8 60.7 ⑥ ⑥ 4.59 4.28 3.71 3.58 4.45 4.35 4.98 4.79 ⑥ ⑥ 4.42 3.61 4.21 4.83 ⑥ 4.67 3.38 4.13 4.31 ⑥ どもの数が減ったことで,子どもは,親に対 して将来経済的価値を含んだ特定の価値を生 み出す「生産材jとしての存在から,将来特 別の価値を生み出すわけではなく,育てるこ とあるいは育っていくこと自体に価値を見出 していく「消費財」としての存在に変化した と考えられる(落合恵美子 1994,58-59頁). これは子どもの意味の変化といえるが,自 営業にとっての子どもには,消費財というよ りも家族を次代につなげていくための生産材 としての意味がまだ比較的強く残っているこ とをこの調査結果は意味している.また,産 業構造の変化による自営業者の減少,被雇用 者の増加という傾向は今回の調査対象国に共 通してみられる現象であり4),この状況によ り,自営業という職業に就く者に保守的意識 が生じているとも考えられる.ただし,日本 は自営業,被雇用のいずれも平均回答項目数 が6カ国中最も少なく,日本の父親は他の国 の父親に比べ子どもを「消費財

J

としてみて いる傾向が強いといえるかもしれない.この 生産材,消費材についての議論は別の観点か らも考察する必要があると思われる.

(

2

)

将来子どもにして欲しくない家庭生活像 さらに調査では13の生活タイプを示し, その中で対象となった子どもに将来してほし

(9)

-146-表9 父親の将来子どもにして欲しくない家庭生活像 日 本 韓 国 自営業被雇用 自営業被雇用 一生独身でいる 80.6%72.6% 98.5%93.5% 結婚届をせずに同棲する 61.2 51.9 95.1 94.6 仕事の関係で夫婦が別居 50.0 44.4 71.9 75;8 子どもを持たない 65.3 54.6 91.6 89.2 子どもが女の子だけ 19.4 11.4 20.7 24.9 子どもが男の子だけ 18.4 9.9 13.3 16.6 血縁関係のない子を育てる 26.5 21.0 57.1 58.8 同性愛カップルで生活する 86.7 78.3 96.6 96.8 自分との同居 15.3 8.9 35.0 31.4 配偶者の親との同居 17.3 9.6 26.6 30.0 子どもがいて離婚する 72.4 64.9 95.1 94.9 子どもを連れて再婚する 29.6 23.2 77.3 80.9 未婚で子どもを持つ 65.3 60.5 97.0 94.6 平均回答項目数 6.08 5.11 8.76 8.82 父親全体平均回答項目数 5.30 8.78 くない生活をいくつでもよいということで答 えてもらった.この項目は,現在考えられる 多様な家族形態への抵抗感を尋ねたもので, 「いくつあげたか

J

という点から多様な家族 形態への抵抗の強さ,またどの項目が多くあ げられたかということから抵抗の内容を知る ことカまできる. まずこの質問について,

6

カ国の状況をま とめておこう.表9で 6カ国の平均回答項目 数をみると,韓国,アメリカ,スウェーデン, 日本,タイ,イギリスの順で多く,日本の親 の多様な家族形態への抵抗感は6カ国の中で は中位に位置する.またどの国でも抵抗が強 いのは「同性愛カップルで共同生活をする」 と「一生独身でいる

J

.

アジア3カ 国 で は 「養子など血縁関係のない子どもを育てる」 「子どもを連れて再婚する

J

I

婚姻屈をせずに 同棲する

J

が,また欧米3カ国は「自分と ーさん夫婦が一緒に暮らす

J

I

一ーさんが配 偶者の親と一緒に暮らす

J

という三世代同居 が相対的に抵抗が強い項目であった. さて次に父親の職業別にみてみよう.まず 平均回答項目数をみると,日本と欧米 3国で 自営業の項目数の方が多く,多様な家族形態 タ イ アメリカ イギリス スウェーデン 日本順位 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 自営業被雇用 53.6%53.5% 62.3%65.2% 55.2%46.5% 91.1 % % 91. 7 ③ ③ │ 49.8 43.7 45.5 50.1 23.9 13.9 17.7 12.1 ② 17.2 27.8 57.1 53.8 32.8 35.3 36.7 41.0 ③ 35.9 36.3 55.8 51.6 35.8 30.9 73.475.0 ③ ③ 13.4 14.1 19.5 22.5 9.0 6.421.5 21. 7 ④ ⑤ 12.4 13.4 18.2 20.2 9.0 6.1 22.8 21.1 ② ⑤ 29.2 27.8 11.7 8.3 7.5 2.9 10.1 6.4 ③ ③ 80.9 76.1 75.3 80.3 65.7 64.7 75.9 73.2 ② ③ 1.9 7.466.2 52.4 43.3 40.2 64.6 70.2 ⑤ ⑤ 6.2 8.8 57.1 53.3 32.8 32.4 60.8 65.1 ⑤ ⑤ 30.6 38.455.8 52.7 44.8 52.0 65.8 64.0 ② ② 22.0 31. 7 29.9 22.2 23.9 20.5 27.8 20.2 ③ ③ 52.2 52.5 61.0 64.7 29.9 36.7 41.8 29.2 ② ③ 4.05 4.31 6.16 5.97 4.l3 3.88 6.10 5.91 ④ ④ 4.23 5.96 3.79 5.94 ④ への抵抗がこの4カ国では自営業の方が強い ことがわかる.特に日本は自営業と被雇用の 項目数差が最も大きしまたすべての項目で 自営業が被雇用よりも数値が大きいという結 果であった.この質問についても日本は職業 別で明確な違いが生じ,またイギリスも日本 ほど顕著ではないが被雇用の父親の割合が高 い項目は13項目中 3項目だけで,この 2国 については自営業の保守性の側面があらわれ たといえる. 内容をみると,自営業の父親に共通してい るのは「養子など血縁関係のない子どもを育 てる

J

I

婚姻届をせずに同棲する

J

I

自分と さん夫婦が一緒に暮らす」の項目に抵抗が 強い.また逆に比較的被雇用の父親に抵抗が 強かった項目は,

I

仕事の関係で夫婦が別居 する

J

と「子どもが女の子だけ

J

であった. 以上,平均回答項目数から日本の父親全体 の多様な家族形態への抵抗度合をみると,日 本は6カ国の中では中間的な位置にある.職 業別に回答率をみると,日本の場合どの項目 についても自営業の方が高く,また自営業と 被雇用の平均回答項目数の差は6カ国の中で 最も大きく,職業による意識の違いが明確に

(10)

『教育学部紀要』文教大学教育学部第30集 1996年 千 葉 聡 子 なった. 5. 日本の父親にみられる特徴と問題点 以上これまでみてきた調査結果から,家族 や子どもに対する日本の父親の特徴をまとめ ておこう. 第一は,職業で父親をわけでデータをみる と,日本は職業別での回答の違いが他の国に 比べ明確であった.この点、から日本の父親の 特徴のーっとして,職業形態の違いにより家 族や子どもに対する意識や実態が異なる傾向 が強いといえるだろう.第二点は,日本の父 親は子どもとの接触や子育て役割の遂行状況 からみると,子育てへの関わりが6カ国の中 で最も弱いといえる.しかし職業別でみると, 日本の自営業の父親は他の国と比べ接触時 間・内容の点では子育てへの関わりは決して 弱くない.さらに,子育てにより積極的に関 わっている自営業の父親は被雇用の父親に比 べ子育てに対してプラスの感想をより強く抱 いていることがわかった.またこの職業別の 違いは日本とイギリス以外ではみられなかっ た.このことから,特に被雇用の父親が子育 てに対し消極的であることが日本の特徴とし てあげられる.第三に子どもと家族に関して の意識については,日本の父親は子どもに将 来してあげたいことが6カ国中最も少なし この点が特徴的である.職業別に見ると,

6

カ国とも自営業の父親の方がしてあげたい項 目が多く,自営業という職業の特徴として指 摘できる.また,将来子どもにして欲しくな い生活から多様な家族に対する抵抗をみると, 日本の父親は中位に位置しているが,職業別 では,自営業の父親は被雇用の父親に比べ抵 抗感が強く,この二者の差は6カ国の中で最 も大きかった.これらの意識についての結果 は,自営業という職業がもたらす意識の保守 性を示している側面があると考えられる. さてこれらの結果をもとに,少し日本の子 育ての状況について考察を進めたい.日本の 子育ての状況については,父親の子育て参加 の少なさと母親の持つ育児不安が問題のーっ とされ,さらに父親が子育てに対してもつ責 任の意識が母親の子育て不安と関連をもって い る こ と が 指 摘 さ れ て い る ( 荻 野 美 穂 1995).この状況を変化させていくためには, 父親の子育てへの関わりを強めることができ る環境を作ること,具体的にいえば,父親の 勤務時間や通勤時間といった職業に付帯する 労働条件を変えていくことと,育児は女性の 役割であるとする性別役割分業にみられる男 女の役割規範を変化させていくことが求めら れている.こうした問題点の指摘に対し,今 回の父親の職業別でみた調査結果から何が言 えるのであろうか.今回使用できるデータに は限界があるため,まとまった結論を出せな いことが残念であるが,データの範囲内で予 想される点を述べておこう. まず第一は,父親の子育て参加と母親の育 児不安の関係である.日本の自営業の父親は 被雇用の父親と比べると子育てに積極的に参 加し,子育ての感想もより積極的なものであ った.それでは,自営業の夫をもっ妻は夫の 子育て参加を得て育児不安が少ないのであろ うか.調査のデータをみると,はっきりとは 期待した結果は出てこないことがわかる.子 育てで感じることのうち 3つの項目について 「いつも感じるjの割合を自営業の妻,被雇 用の妻の順で示すと,

r

子どもを育てるのは 楽しいj はそれぞれ38.0%と 48.0%,

r

子 どものことでイライラする」は10.9%と 9.9%,

r

どのように育てたらよいのか不安 を感じる j は9.8%と10.3%であり,二者 の聞に大きな違いは見られない.この結果は 予想される結果と異なるもので,父親の子育 て参加と母親の子育て不安の関係はそれ程単 純ではないことがわかる.日本の親の子育て の状況をよりよいものに変えていくためには, より多方向からのアプローチが必要であると 考えられる.

(11)

-148-第二に問題としたいことは,自営業の父親 の子育てへの積極的参加状況である.この状 況については,父親の生活環境と意識の両面 から考えていく必要があるが,職業別の労働 環境についてのデータがないため意識面を考 察しよう.調査結果から,自営業の父親は被 雇用の父親に比べ家族の多様化についての抵 抗感が強く,この点については自営業が生み 出す意識の保守性との関連を指摘した.この 保守性が,

r

育児,子育ては母親の仕事j と いう従来の考え方を否定していく方向性への 抵抗を生み出すことは十分予想、できるι仮に そうであるとするならば,自営業の父親の子 育てへの積極的状況は,これまであった性別 役割分業観を打ち破った意識によって生まれ たものとは考えにくい.このように考えると, この自営業の状況は,従来からあった日本の 家族観,つまり自営業にみられる「稼業の継 承j という意識がもたらした結果,あるいは, 父親の生活環境という物理的な側面によるも のであると予想できるのではないだろうか. 第三は,日本の雇用されて働く父親の状況 である.日本の被雇用の父親は,子育てへの 関わりが6カ国の中で最も消極的である.ま た子どもに将来してあげたいこと,将来子ど もにして欲しくない生活の二つの意識に関す る質問の回答状況は,自営業の父親に比べる と消極的であった.この被雇用の父親の意識 の状況は,子どもの自立を求め,その結果子 どものより自由な生活を認めていきたいとい う考えの反映ととることもできる.しかし子 育てへの関わりの弱さから,子どもに余り接 触することもなく,子どもにしてあげたいこ とも少なし子どもにして欲しくないことも 少ない,という子どもとの関係を弱さ,ある いは家族規範の弱さを示していると考える方 が適当ではないだろうか.渡遺秀樹は,本調 査の将来子どもにして欲しくない家庭生活像 の結果を分析し,将来して欲しくない生活が 少ないことは,多様で柔軟な家庭生活への期 待として読み取れるとともに,確固とした期 待がない家族規範の弛緩状態ともみて取れる 可能性を提示している(渡遺秀樹

1

9

9

5

2

0

-21頁).この後者の視点に立てば,自営業 は職業の性格がもたらす保守性により家族規 範を保持しているが,被雇用の父親は家族規 範の喪失状況にある可能性が指摘できる. 以上,これまで日本の父親にみられる子育 てや家族に関する意識と実態の特徴と問題を あげてきたが,日本の父親の子育て参加の低 さはやはり最も特徴的な点といえ,この状況 がさらに日本の家族全体に大きな影響を与え ていると考えられる.この状況を変化させて いくためには,雇用されて働く父親の子育て を可能にする条件を確保していくことが重要 であると考えられるわけであるが,同時に日 本の父親の大半を占める被雇用の父親にみら れた家族規範の弱さの可能性を取り上げ,こ の規範の弱さを作っている状況の構造を明確 にしていく乙とが必要であると考える. 注 1)この調査の調査研究委員会は,牧野カツ コ(お茶の水女子大学)を主査とし,清 水弘司(埼玉大学),杉山明子(東京女 子大学),原ひろ子(お茶の水女子大 学),渡遺秀樹(慶応義塾大学)による 調査研究委員と,財日本女子社会教育会 の事務局で構成されている.筆者は事務 局メンバーとして調査に参加した.本調 査の全体や本論文で取り上げない調査結 果等については例日本女子社会教育会よ り発行されている『家庭教育に関する国 際比較調査報告書j,

r

家庭教育に関する 国際比較調査報告書-資料編-j,

r

図説 世界の家族と子ども』を参照していただ きたい.また本稿で使用するデータの大 部分は報告書には掲載されておらず事務 局から許可を得て使用しているものであ り,データ使用については例日本女子社

(12)

-149-『教育学部紀要』文教大学教育学部第30集 1996年 千 葉 聡 子 会教育会に感謝したい. 2)調査はあくまでも親の役割を果たしてい る人をサンプルとしており,法的な結婚 の有無や性別も限定していない. 3)父親の職業についての分析は上記注の1 で示した報告書には掲載されていないデ ータを使用しているが,例えば通勤時間 や労働時間のように調査では質問してい るが父親の職業別には数値が算出されて いないものなどがあり,現状で使用でき るデータの範囲内での分析になってい る. 4)総務庁統計局編『国際統計要覧』および 『世界の統計』より, 1950年代から5年 ごとに数値を追うと,男女を合わせた経 済 活 動 人 口 に 占 め る 自 営 業 者 の 比 率

(

1

業主jと「家族従業者」をたして自営 業者とした)は,日本の場合, 1959年 の52.7%から 1994年には18.1%に減 少している.また今回の調査の対象国に ついて,該当数値がない期間のあるイギ リスを除いて同様の資料からみると,ス ウェーデンを除いた国が減少傾向を示し ている.またスウェーデンも, 5年ごと の数値でみると 1980年代前半までは自 営業者の比率は減少しており,自営業者 の減少,被雇用者増加は調査対象国に共 通の傾向といえる(日本はこの中でも自 営業者減少のスピードは速いといえる). 最新版の資料から各国の自営業者の比率 をみると,韓国38.0% (1993年),タ イ69.5% (1990年),アメリカ 8.4% (1993年),イギリス 11.8% (1993年), スウェーデン9.9%(1993年)であっ た. 参考・引用文献 荻野美穂 1995,

1

母親を追いつめるものは 何か一広まる育児不安」井上輝子・江原由 美子編『女性のデータブック 第

2

版』有 斐閣, 28頁. 落合恵美子 1994, r21世紀家族へ一家族の 戦後体制の見かた・超えかたー』有斐閣. 働日本女子社会教育会編 1995a, r平成5 年度・ 6年度文部省委嘱事業家庭教育に 関する国際比較調査報告書一子どもと家庭 生活についての調査』例日本女子社会教育 」ふ -;r:;:: . 例日本女子社会教育会編 1995 b, r図説世 界の家族と子ども』領事日本女子社会教育会. 杉山明子 1995,

1

家庭教育観の要因分析

J

働日本女子社会教育会編『平成5年度・6 年度文部省委嘱事業家庭教育に関する国 際比較調査報告書一子どもと家庭生活につ いての調査』鯛日本女子社会教育会, 187 202

頁.

総合研究開発機構 1987,r都市家族の構造 と機能の変貌』全国官報販売協同組合. 総 務 庁 統 計 局 編 『 国 際 統 計 要 覧j(1955, 1960.1965.1970.1975.1980.1985.1990 年版)大蔵省印刷局. 総務庁統計局編『世界の統計j(1996年版) 大蔵省印刷局. 牧野カツコ 1995,

1

日本」例日本女子社会 教育会編『平成5年度・6年度文部省委嘱 事業家庭教育に関する国際比較調査報告 書一子どもと家庭生活についての調査』働 日本女子社会教育会, 203-207頁. 渡漫秀樹 1995,

1

家族の変容と多様性

J

日 本労働研究機構 nILリサーチ jNo. 23, 18-21頁.

表 3 対象となった子どもの状況 性別構成 平均年齢 男の子 女の子 %  %  6 . 5  歳 日 本 5 2 . 9  4 7 . 1  韓 国 5 4 . 7  4 5
表 9 父親の将来子どもにして欲しくない家庭生活像 日 本 韓 国 自営業被雇用 自営業被雇用 一生独身でいる 8 0 . 6 % 7 2 . 6 %   9 8 . 5 % 9 3

参照

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