• 検索結果がありません。

巻頭言

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "巻頭言"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1 臨床心理学にとって研究は大きなチャレン ジであると思う。それは、臨床心理学の特殊性 に由来している。学問である以上、研究は必要 不可欠である。しかし臨床心理学の研究成果が 価値を持つためには、臨床実践の現場で、それ が役に立たなくてはならない。現場で役立たな い理論や知識は、どれだけ美しく見えても、学 問のための学問という自己完結的性質を免れな い。臨床心理学の成果は、常に現場における検 証にさらされることになる。 それでは、現場で役に立つ研究成果が生まれ るためには何が必要なのか。現場において行わ れる検証作業の厳しさは、そこに生きた人間の 心があるという事実に由来する。しかも、その 心は単体としてあるのではなく、常に他者との 関係の中で動いている。そしてその関係の在り 方は、社会、文化、歴史によって影響を受ける。 多種多様な要因によって影響を受け、さらに実 体として観察することの難しい人間の心を、な るべく「なま」に近い形で研究対象として扱う ことが、臨床心理学では要求される。 こうした厳しい条件のもとで、臨床心理学が 陥りやすい危険が三つあると思う。一つは、抽 象的な思弁の学に陥る危険である。とらえがた い心のありようは実証研究に向かないとして、 理論と称する薀蓄ばかりが述べられて終わる危 険がある。二つ目は、現実を描写するだけの記 述の学となる危険である。事例研究と称して、 理論なき現実の描写をいくら続けても、現場に 役立つ学問的成果は生まれない。第三は、科学 的心理学の名のもとに、複雑な現実の要因を捨 象する危険である。単純化された条件下で作ら れた「実証的」成果は、心の現実を無視した滑 稽ともいえる介入技法を生み出す危険がある。 幸い日本の臨床心理学は、科学的心理学の一 方的な応用としてではなく、臨床現場の経験、 いわゆる「臨床の知」が原動力となって発展し てきた経緯がある。今後、その道のりは決して 緩やかというわけにはいかない。世界的な規模 で経済発展の限界が見えてきた中、エビデンス を求める社会的要請はますます高まっていくで あろう。その一方で、臨床の知を汲み上げ、そ れを理論化し、検証するような学問的な枠組み が十分構築されたとは言い難い。このような厳 しい状況の中で、本研究誌は、臨床心理学の発 展をけん引する役割を担ってほしいと、心から 願っている。

巻頭言

川 畑 直 人

参照

関連したドキュメント

大きな要因として働いていることが見えてくるように思われるので 1はじめに 大江健三郎とテクノロジー

「心理学基礎研究の地域貢献を考える」が開かれた。フォー

等に出資を行っているか? ・株式の保有については、公開株式については5%以上、未公開株

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

特に(1)又は(3)の要件で応募する研究代表者は、応募時に必ず e-Rad に「博士の学位取得

わな等により捕獲した個体は、学術研究、展示、教育、その他公益上の必要があると認められ

社会学研究科は、社会学および社会心理学の先端的研究を推進するとともに、博士課

わな等により捕獲した個体は、学術研究、展示、教育、その他公益上の必要があると認められ