• 検索結果がありません。

ドイツの気候変動政策(グローバル・ガバナンス学会主催,アジア・太平洋研究センター/社会科学研究科総合政策学専攻/総合政策学部共催講演会)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ドイツの気候変動政策(グローバル・ガバナンス学会主催,アジア・太平洋研究センター/社会科学研究科総合政策学専攻/総合政策学部共催講演会)"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

南山大学アジア・太平洋研究センター報 第 14 号 ―  ―52

グローバル・ガバナンス学会主催,アジア・太平洋研究セン

ター/社会科学研究科総合政策学専攻/総合政策学部共催講

演会

日 時:2019 年 1 月 12 日(土) 場 所:G 棟 2 階 G25 教室 テーマ:ドイツの気候変動政策 報告者:ミランダ・シュラーズ(ミュンヘン工科大学バイエルン公共政策研究科環 境気候政策教授)  本講演会はグローバル・ガバナンス学会が主催する国際交流事業の一環として,南 山大学を会場にアジア・太平洋研究センターなどが共催する形で,科研費「変貌する 大国間関係・グローバル市民社会の交錯とグローバル・ガバナンス」(18KT0003)の 助成を受けて行われた。講師のシュラーズ氏は,メリーランド大学教授,ベルリン自 由大学教授・環境政策研究所所長を経て,2016 年よりミュンヘン工科大学バイエル ン公共政策研究科教授として教鞭を執られている。ドイツのメルケル政権に原発廃止 を提言した「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」に委員として参加したこと でも知られており,ドイツ政府の「原子力・再生エネルギー政策諮問委員会」や「環 境問題専門家委員会(SRU)」の委員なども歴任されている。また,シュラーズ氏は 日本語も堪能であることから,今回の講演会は学生や一般の参加も想定して,ドイツ の気候変動政策の現状と課題について日本語で行われた。当日はグローバル・ガバナ ンス学会員の他,大学院生・学部生などの学生や一般の方など遠方からも多くの参加 アジア太平洋研究センター報_第14号_c.indb 52 2019/06/18 12:47:19

(2)

―  ―53 ドイツの気候変動政策(ミランダ・シュラーズ) 者があり,大変盛会となった。  講演では,初めに国連の IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による報告書や, 気候変動をめぐる国際的な取り組み,欧州連合(EU)の取り組みが概観された。そ して,ドイツの気候変動政策について,再生可能エネルギーや送電網,電気料金,さ らには脱原発を中心とする電力事情,技術革新,経済効果,地方自治体の役割など多 面的な観点から紹介がなされた。以下はその概要である。  気候変動に関する国際条約(国連気候変動枠組み条約)は 1992 年にリオデジャネ イロで開催された国連環境開発会議において署名された。この会議から 20 年後の 2002 年に開かれた国連持続可能な開発会議(リオ+20)では,持続可能な開発を実 現するための「グリーン経済」や,「地球の限界(PlanetaryBoundaries)」,すなわ ち人間が安全に活動できる境界を,気候変動などではすでに越えているという議論が なされた。その後,2015 年には気候変動問題への対策を含む「持続可能な開発目標 (SDGs)」が 2030 年までの世界目標として採択され,さらに国際的な気候変動対策を 定めたパリ協定が合意された。パリ協定では,地球の平均気温上昇を産業革命以前よ りも 2.0 ℃以下に保ち,1.5 ℃に抑える努力をすることとされている。また,各国が 自 ら 定 め た 温 室 効 果 ガ ス の 排 出 削 減 目 標 で あ る NDC(NationallyDetermined Contribution)については,目標達成状況を毎年報告し,国際的なレビューを受ける ことになっている。   2013 年の世界の CO2排出量のうち,上位 3 か国・地域の中国(29 %),アメリカ (15 %),EU(10 %)で 54 %を占めており,それにインド(7.1 %),ロシア(5.3 %), 日本(3.7 %)を加えた上位 6 か国・地域で 70.1 %を占めている。ドイツは日本に次 いで 7 位(2.2 %)である。アメリカの GDP は 19 兆 3,910 億ドルであるが,州に注 目すると,カリフォルニア州は 2 兆 7,470 億ドルでドイツ(3 兆 6,850 億ドル)に次 いで世界 5 位の規模にある。カリフォルニア州はドイツと気候変動を含めた環境対策 をめぐって競い合っている面があり,協調的な競争(cooperativecompetition)の状 況にある。   2018 年に公表された IPCC の「1.5 ℃特別報告書」や国連開発計画の「2018 年排 出量ギャップ報告書」によると,温暖化が進んでいる一方で 20 の主要経済国(G20) による対応は不十分である。G20 には国内に貧困問題を抱えた新興経済国も多いが, そもそも地球温暖化が顕著になり始めた 1955 年当時は欧米からの CO2排出量が多く を占めていた。そうした経緯から,EU は新興経済国に取り組みを促すためにも自ら が積極的に CO2を削減すべきとして,積極的に再生可能エネルギーやバイオマスの 導入拡大などの対策を行っている。  ドイツでは 2010 年に決定されたエネルギー政策が 2011 年に起きた福島第一原子力 発電所での事故を受けて変更され,2022 年までの脱原発が決定されており,すでに アジア太平洋研究センター報_第14号_c.indb 53 2019/06/18 12:47:19

(3)

南山大学アジア・太平洋研究センター報 第 14 号 ―  ―54 8 基以上が停止され,送電網からも外されている。ドイツの温室効果ガス排出量は 1990 年以降減少傾向にあるが,このところは横ばいとなっている。再生可能エネル ギーの導入は順調に進展し,2017 年には発電量の 30 %,2018 年には 40 %を占めて いる。また,家庭での省エネも世界的にみて最も進んでいる。  ドイツでの現在の課題は,石炭の利用削減,自動車など運輸部門での対策や建物の 省エネなどである。これらの課題について市レベルでの取り組みが紹介され,例えば ミ ュ ン ヘ ン 市 で は 住 民 投 票 の 結 果, 褐 炭 を 利 用 し て い る 北 部 の プ ラ ン ト, HeizkraftwerkNord が 2022 年までに閉鎖されることとなった。  また,政策に対する批判よりも,再生可能エネルギーの導入による雇用拡大,イノ ベーションや経済成長の促進など,前向きな側面に注目することも重要である。それ と関連した取り組みとして,省エネルギーや再生可能エネルギーの導入拡大に取り組 むヨーロッパの地方自治体を対象とした「欧州エネルギー賞(EuropeanEnergy Award)」が挙げられる。ドイツでは 277 の市などがこの取り組みに参加しており, 2,300 万人が環境保護に積極的なコミュニティーで暮らしている。さらに,デジタル 化,自動化,ビッグデータによる影響も注目される。  最後に,近年の世界的なポピュリズムによる影響についても話が及んだ。アメリカ を始め,トルコ,ハンガリー,ポーランド,イギリス,フランス,ブラジルなどでポ ピュリスト政権の誕生や政党の勢力拡大がみられており,ドイツも例外ではない。ポ ピュリスト政党は気候変動に懐疑的であることが多く,民主主義を弱体化させるおそ れがあるポピュリズムの台頭は気候変動対策にとっても大きな課題であることが指摘 された。 (文責:小尾 美千代) アジア太平洋研究センター報_第14号_c.indb 54 2019/06/18 12:47:19

参照

関連したドキュメント

国連海洋法条約に規定される排他的経済水域(以降、EEZ

【 大学共 同研究 】 【個人特 別研究 】 【受託 研究】 【学 外共同 研究】 【寄 付研究 】.

社会学文献講読・文献研究(英) A・B 社会心理学文献講義/研究(英) A・B 文化人類学・民俗学文献講義/研究(英)

向井 康夫 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 牧野 渡 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 占部 城太郎 :

山階鳥類研究所 研究員 山崎 剛史 立教大学 教授 上田 恵介 東京大学総合研究博物館 助教 松原 始 動物研究部脊椎動物研究グループ 研究主幹 篠原

2011 年の主たる動向は、欧州連合 (EU) の海洋政策に新たな枠組みが追加されたことであ る。漁業分野を除いた

社会学研究科は、社会学および社会心理学の先端的研究を推進するとともに、博士課

回  テーマ  内  容 . 第 1 回