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ドイツにおけるコーポレート・ガバナンス・コードと多元的企業統治モデル

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ドイツにおけるコーポレート・ガバナンス・コード

と多元的企業統治モデル

著者

風間 信隆

雑誌名

商学論究

64

3

ページ

47-73

発行年

2017-01-10

URL

http://hdl.handle.net/10236/00025393

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 はじめに

近年、 我が国では「アベノミクス」の「日本再興戦略(成長戦略)」の第 一の柱として、資本市場の圧力による企業経営への規律付けの強化を目指す コーポレート・ガバナンス (Corporate Governance) 改革が位置づけられ、 なかでも「攻めのガバナンス」によって企業の収益力(「稼ぐ力」)を高める ことが目指されている(内閣官房 2015、 46 頁)。このため2014年には 「 責任ある機関投資家』の諸原則」(「日本版シュチュワードシップ・コー

ドイツにおけるコーポレート・

ガバナンス・コードと多元的企業統治モデル

− 47 − 要 旨 ドイツでも1990年代後半以降の外国人機関投資家の台頭とともに、「株 主価値重視経営」が大きな支持を集め、 2002年にドイツ企業統治指針 (Deutscher Corporate Governance Kodex : DCGK)が導入されてきたが、 連邦法務省内に設置された「企業統治連邦政府委員会」で毎年見直し、 改 訂が行われ、 またベルリン企業統治センターが指針の受容と適用状況に関 して実態調査(「企業統治報告書」)を行っている。本稿は、 この最新の企 業統治指針(2015年版)および企業統治報告書(2015年)を手掛かりとし てドイツの企業統治改革の進展状況を明らかにしようとするものである。

キーワード:企 業 統 治 指 針 ( corporate governance code) 、 共 同 決 定 (Mitbestimmung)、 企業の利益(Unternehmensinteresse)、 株主価値重視経営(Shareholder Management)、 多元的企業 統治モデル(stakeholder model of corporate governance)

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ド−投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために」)が策定され、 す でに2016年 7 月には210を越える内外の機関投資家が「受け入れ表明」を行っ ている(金融庁ホームページ参照)。また2015年 6 月には「攻めのガバナン ス」を実践するためのコーポレート・ガバナンス・コード(「企業統治指針」: 以下「東証コード」と略)が東証上場会社に適用され、 二名以上の独立社外 取締役の選任、 政策保有株の見直し等のコーポレート・ガバナンス改革が推 進されている。「東証コード」では「会社は株主のものだ」とする「一元的 企業観」1)に立脚して、 会社機関構成員(役員)の「株主受託者責任」が強 調され、 資本効率の改善、 とくに株主資本利益率(ROE)の改善と株主還 元の強化(配当増額と自社株買い)が目指されている。ROE の改善と株主 還元の一環として「リキャップ CB」と呼ばれる「転換社債型新株予約権付 社債」や超長期の社債等の発行による自社株買い、 資本効率改善まで行われ ようとしている。また「一定の譲渡制限付き株式(restricted stock)」によ る役員報酬制度の導入により、 業績により連動したインセンティブを経営者 に付与し、「攻めの経営」を促す必要性も強調されている。 こうして、 日本では、 現在、「株主行動主義」(Shareholder Activism)に 基づく株主圧力(「対話」、 議決権行使、 株主提案)により、「株主価値重視 経営(Shareholder Value Management)」が推進され、 その実現の手段とし て「東証コード」への期待が高まっている。こうした株主価値重視のコーポ レート・ガバナンス改革が経営の「短期主義(ショーターミズム)」をもた らし、 長期の視点での競争力構築にマイナスの影響を及ぼすことが危惧され る。 1) 但し、 東証の企業統治指針でも基本原則 2 では「会社の持続的な成長と中・長期的な 企業価値の創出は、 ・・・様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結 果あることを十分に認識し、 これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべき ある」ことが組み込まれていることも事実である(東証、 コーポレートガバナンス・ コード)第 2 章、 9−11頁)。しかし、 これらは株主価値実現の「手段」として位置づ けられているのであって、 何よりもリスク・マネーの提供者である株主の利益に機関 構成員の「責任」があると規定において「洗練された (sophisticated) 一元的企業観」 と見なすことができる。

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ドイツでも、 1990年代後半以降、 これまで産業企業に大きな影響力を保持 してきた大銀行の株式の売却と外国人機関投資家の台頭により高まる資本市 場の圧力の下で「株主価値重視経営」がドイツの大企業の経営者の間で大き な関心・支持を集め、 戦後の西ドイツ経済を支えてきた伝統的な企業統治モ デル (「ライン型資本主義」) の動揺が大きな関心と議論を集めていた(ツー ゲヘア、 2003)。この時期、 建設大手フィリップ・ホルツマン社の破綻やメ タルゲゼルシャフト社の原油先物取引の失敗などの相次ぐ企業不祥事や企業 破綻によって経営および監督の機能不全の問題が顕在化していた(正井 2003、 147頁)。またドイツの伝統的な労使共同決定(Mitbestimmung)制度、 とくに監査役会への労働者・労働組合の経営参加制度についても大きな批判 が加えられていた(風間、 2014)。同時に EU 統合の深化と拡大の中で、 ド イツ固有の制度 (会計基準、 資本市場・労働市場等) の国際的調和化の必要 性がドイツ企業の競争力強化という観点からも叫ばれ、 当時のシュレーダー 政権の下で様々な構造改革が推進されていった。こうした構造改革の一つと して、 ドイツでも企業統治改革が叫ばれ、 上場会社を対象として「コーポレー ト・ガバナンス・コード (Deutscher Corporate Governance Kodex)」(以下 では「DCGK」と略称)が制定されるところとなった。 しかし、 DCGK では、 戦後西ドイツ経済の柱となっていた「社会的市場 経済」体制の下での伝統的な労使共同決定制度や会社機関構造(「監査役会 (Aufsichtsrat)」 と 「執行役会 (Vorstand)」 から成る、 二層型トップ・マネジ メント組織) という枠組み自体は維持された。 つまり、 株式法 (Akiengesetz) や共同決定法などの法的規制を維持しながら、 これを補充する行動基準を 「遵守か説明か(“comply or explain”)!」という原則主義アプローチに基づ いて定めたものであった。このドイツの企業統治指針は連邦法務省(BMJ) が所管する「ドイツ企業統治指針連邦政府委員会(Regierungskommission Deutscher Corporate Governance Kodex、 以下では「DCGK 政府委員会」と

略称)」によって年に一度、 指針の見直し・改定が行われている2)。DCGK

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機関投資家、 学界(経済学・法学)、 個人株主、 労働組合、 公認会計士の多 元的利害代表から構成されている3)。とくに2008年の「リーマン・ショック」 や2010年の「欧州債務危機」を契機として、 資本市場志向の「株主価値重視 経営」に対する批判の高まりの中で、 ステークホルダー(stakeholders : 利 害関係者)の諸利益に配慮した多元的企業統治モデルの強化が図られている 点で日本のコーポレート・ガバナンス改革の流れとは大きく異なっている。 しかし、 こうした多元的企業統治モデルの展開においてもドイツ産業企業の 国際競争力は強化されてきた点は強調されなければならない。 本稿は、 以下において、 DCGK が2002年に策定されて以降、 資本市場の 圧力の高まりのなかでも一貫して「多元的統治モデル」に基づいていたので あり、 近年ではますますその性格を強めていることを DCGK の諸規定から 明らかにすると同時に、 こうした DCGK が現実にドイツの上場会社にどの 程度受容されているのかを、 ベルリン工科大学のアクセル・フォン・ヴェル ダー(Axel von Werder)らによる最も新しいアンケート調査結果(Prof. Dr. Axel v. Werder, Julia Turkali, Corporate Governance Report 2015)を手掛かり

に提示し4)、 多元的企業統治モデルに依拠した DCGK が「株主一元的企業観」 に依拠した「東証コード」とは大きく性格が異なっていることを明らかにし ようとするものである。 2) この勧告を受けて、「透明化と開示に関して株式法と会計法の一層の改革のための法 律」(TransPuG)が2002年 7 月に成立している。詳しくは、 正井(2003)、 第11章 透明化法・開示法(354371頁)を参照せよ。 3) 設立当初は13名から構成されていた(詳しくは、 正井、 2003、 292頁)が、 2016年現 在、15名の委員から構成されている。委員長は2013年以降、 ダイムラーベンツ社(そ の後、 ダイムラー・クライスラー社)の財務・コントローリング担当執行役であった マンフレッド・ゲンツ(Manfred Gentz)が就任している(DCGK ホームページ参照)。 なお、 DCGK 政府委員会の委員の人事権は連邦法務省が握っているが、 事務関連費 用は委員長の出身企業が拠出してきた。しかし、 ゲンツが委員長に就任して以降、 ド イツ株式研究所(DAI)が資金的にも人材面でも負担している(ミュルベルト、 2013、 6 頁)。 4) ドイツのコーポレート・ガバナンス・コードの遵守状況については、 すでにベルリン 工科大学のコーポレート・ガバナンスセンターの「2014年企業統治報告書」に依拠し た研究が上田亮子(2014)によって行われている。本稿は同センターの最新のアンケー ト調査結果である2015年版の報告書に依拠している。

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 「株主価値重視経営」の台頭と DCGK の制定

1)DCGK 制定の背景 1990年代に入って、 ドイツ再統一(1990年)、 マーストリスト条約(1993 年)による EU 統合の深化と拡大、 旧東側社会主義諸国の市場経済化、 世界 的規模でのグローバル競争の激化と他方での相次ぐ企業不祥事を受けて、 と くに監査役会の監督・監視・助言機能の強化を柱とするコーポレート・ガバ ナンス改革が推し進められてきた。 そこで、 企業の不祥事を防止するための経営監督機能を強化し、 経営の透 明性を高めるコーポレート・ガバナンス改革が株式法等の改正を伴いつつ推 進される一方、 経営のグローバル化の進展に伴う一連の国内基準の国際的調 和化を目指す資本市場の規制緩和や国際会計基準(IAS)の導入等の一連の 制度改革が精力的に推進されるところとなった。 この時期、 ドイツにおいて大きな進展を見せたコーポレート・ガバナンス 改革として、 一連の株式法改正の他に、 1998年には上場会社を対象として経 営者のコントロールと経営内容の透明性の向上を目指す「企業領域における コントロールと透明性のための法律」(Gesetz zur Kontrolle und Transparenz im Unternehmensbereich :略称 KonTraG)や資本市場の活性化を目指す 「資本市場振興法」(  ) といった、 一連の法整 備がなされてきた(正井、 2003)。

すでに、 1990年代以降、 国際的には自主的に各企業に対して「企業統治原 則」を定めようとする動きも広がっていた。とりわけ、 1998年に制定された ロンドン証券取引所(LSE)の「統合コード(the Combined Code)」、 1999 年の OECD の「コーポレート・ガバナンス原則(Principles of Corporate Governance」の公表がドイツのコーポレート・ガバナンスの議論にも決定 的影響を及ぼすところとなった。

こうした国際的動向をも契機として、 ドイツでは2000年に投資家・学者・ 企業の代表者や弁護士等も参加した民間のグループが相次いで「上場会社の

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企業統治原則」(「最良の行動基準(Code of Best Practice)」)を公表すると ころとなった。それを受けて当時のシュレーダー(Gerhard)連邦 首相は、 連邦法務省(BMJ)の下にバウムス(T. Baums)フランクフルト 大学教授を委員長とする、「コーポレート・ガバナンス:企業経営・企業コ ントロール−株式法の現代化」専門家委員会を設置し、 2001年 7 月に同委員 会は企業統治に関する150項目に及ぶ勧告を含む報告書を提出した。これを 受けて、 同年 9 月にはドイツの上場企業が従うべき企業統治原則を策定する ために、 ティッセン・クルップ社監査役会会長クロンメ(G. Cromme)を委 員長とする DCGK 政府委員会が設置され、 同委員会は2002年 2 月には DCGK を公表した (Fuhrmann, Linnerz, Pohlmann, 2016, S. 4.)。

この DCGK (2002)では委員長クロンメの緒言において明らかなように、 当時の資本市場の投資家への配慮が示されている。すなわち、「本委員会は、 現行法に変更を加えることを必要とするであろうような提案と勧告を採用し なかった。それゆえ、 (民間グループで提案されてきた−引用者注)一連の 興味ある提案は顧慮されなかった。委員会の見解によれば、 このことが示し ているのは、 ドイツの金融市場(Finanzplatz Deutschlamd)を、 より一層、 国際的資本市場の要求に方向付け、 現行の諸規定の柔軟化と一層の発展によっ てより魅力的にする継続的必要性である」(DCGK, 2002, Vorwort)として 国際的資本市場の要求に配慮する必要性と継続的見直しの必要性が述べられ ている。また序文でも「本コードは会社に必要な自己資本を用立て、 企業者 的リスクを引き受ける株主の権利を明確にさせるものである」(DCGK, 2002, S.1.)として株主の権利が強調されていた。 しかし、 この文章は、 2009年の改定以降、 削除され、「本コードは、 社会 的市場経済の諸原理(die Prinzipen der sozialen Marktwirtschaft)と調和し て、 企業の存続とその持続可能な価値創造【企業の利益:Unternehmens-interesse)】に対する執行役会と監査役会の義務を明らかにする」(DCGK, S. 2.)ものであるという表現に変更されており、 ドイツの多元的企業統治モ デルへの強調が際立つものとなっている。

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DCGK は、 その制定以来、 一貫してドイツの株式会社(Aktiengesellschaft) における伝統的な企業体制を堅持している。DCGK の序文でも以下のよう に伝統的な企業体制が前提とされていることを確認することができる。すな わち、「ドイツの株式会社は二層型管理システムを法的に規定されている。 執行役会は自己の責任において企業を指揮する。執行役会メンバーは企業指 揮について共同して責任を担っている。執行役会会長は執行役会メンバーの 仕事を調整する。監査役会は執行役を任命し、 これを監視し、 これに助言し、 企業にとって根本的に重要な意思決定に関わっている。監査役会メンバーは 株主総会において株主によって選出される。国内で500名以上、 または 2 千 名以上の労働者を有する企業においては労働者も監査役会の 3 分の 1 または 半数が労働者によって選出される代表者から構成される監査役会において代 表される。 2 千名以上の企業においては、 実際に常に持分所有者代表である 監査役会会長は決定を左右する第二票権(Zweitstimmrecht)を保持してい る。株主によって選出される持分所有者代表と労働者代表は等しく企業の利 益に義務付けられている。」(DCGK, 2002, S. 1)但し、「EU 会社法」の施行 (2004年10月)に伴い、「欧州会社(die  Gesellschaft: SE)」の 設立が可能となった。すでに DCGK では2002年の制定以来、「序文」におい て「他の欧州諸国では設けられている二層制経営システム及び国際的に普及 している、 統一的な指揮機関(取締役会:Verwaltungsrat)は、 実践上は執 行役会と監査役会の徹底した相互協力のゆえにお互いに接近しており、 同じ ようにうまく機能している」(DCGK, S. 1.)とされていたが、 その後、 2007 年の GCGK の改訂により同一の個所は「欧州会社(SE)は、 統一的な指揮 の機関(取締役会)によって国際的に普及した管理システムを選択する可能 性を切り開いている。欧州会社における企業レベルの共同決定の形成は原則 的に企業指揮(Unternehmensleitung)と労働者サイドとの間の協定 (Ver-einbarung) によって決定される。EU 加盟国における労働者も含められる」 (DCGK, 2007, S. 1.)という文章に変更されている。2006年までの DCGK の 文章は管理システムの二層制と一層制が企業統治の面で等しく機能しうるも

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のである点を強調するものであったのに対して、 2007年以降の DCGK では 欧州会社における労働者の経営参加問題として取り上げられ、「協定」によっ て共同決定の可能性が切り開かれていることが強調されている(欧州会社の 経営参加については、 海道、 2013に詳しい)。 2)DCGK の改訂およびその性格 DCGK は2002年 2 月の制定以来、 毎年検討がなされ、 改訂版は毎年第 2 四半期に決議され公表されているが、 DCGK のホームページのアーカイブ によれば、 2002年 2 月の制定以降、 同年11月には第 1 回目の改訂が行われ、 それ以降、 2004年、 2011年、 2016年を除いて毎年コードの改訂が行われてい る (DCGK ホームページ参照)。こうした一連の改訂は、 株式法や資本市場 法等の法改正を適時・的確に DCGK に反映させるとともに、 経済界、 政界 そして一般大衆との「対話(Dialog)」を通じて、 最新の動向を反映させな がら行われている。 改訂版は連邦法務省による審査を経て連邦官報 (Bundes-anzeiger)において公告される(ミュルベルト、 2013、 4 頁)。 DCGK の最新版である2015年版によれば、 第 2 表が示す通り、 序文と 6 章から構成され、 主として株式法に基づいて規制される上場会社の指揮 (Leitung)と監督 ( ) に関する法的規定の他に、 102個の「勧 告(Empfehlung)」と 6 個の「推奨(Anregung)」を含んでいる (2013年版 第 1 表 各年度の DCGK の勧告と推奨の数 2003年 2005年 2007年 2009年 2011年 2013年 2014年 2015年 勧告 72 82 82 80 82 90 105 102 推奨 19 19 19 23 19 16 6 6

出所:Prof. Dr. Axel v. Werder が所長を務めるベルリン・コーポレート・ガバナンス・センター (Berlin Center of Corporate Governance)の German Code Monitoring における各年次の 「コード報告書(Kodex Report)」(2010年まで)および「企業統治報告書」(2011年以降) を手掛かりとして、 その年度の報告書に記載されている「勧告」と「推奨」の数を前年 度の数として記載している。http://bccg.projects.tu-berlin.de/?page_id=289(最終参照日: 2016年 8 月16日)

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は105個の「勧告」と 6 個の「推奨」)。第 2 表から確認できるように当初、 2003年に72の「勧告」(19の「推奨」)であったものが、 2015年には「勧告」 数は拡大する一方、「推奨」数は減少している。2003年に13頁であった DCGK 規定は、 2015年版では付属資料を含めて19頁にまで増大している。 これはとくにドイツにおけるコーポレート・ガバナンスを巡る議論を反映さ せた結果であり、 こうした量的変化は、 同時にコーポレート・ガバナンスの 「多元性」・規制の強化を反映させたものと考えられる。 3)DCGK の諸規定の性格と適用対象 DCGK は、 強行法である株式法などの法的諸規定と、 こうした法規定を 越えてより良い企業経営とコントロールを実現するための「勧告」と、 さら に進んだ「最良の実践」のための補充的な「推奨」を共に含んでいる。 DCGK によれば、「コードの勧告は本文では『∼すべきである(“soll”)』と いう言葉を使用することで特徴づけられる。会社はこの勧告から乖離しうる。 しかし、 その場合には年一度これを開示し、 乖離を根拠づける義務がある (comply or explain)。これによって会社は部門特有の、 あるいは企業特有 のニーズを考慮に入れることができる。コードの勧告から十分根拠づけられ た乖離は良き業務執行のためになる。こうして、 コードはドイツ企業体制の 柔軟化と自己規制に貢献する。さらにコードは、 開示することなく乖離でき る推奨を含んでいる。これについてコードは『した方がよい(“sollte”) 5) いう概念を使用している。それ以外の用語上特徴づけられない、 コードの部 分は法的規定と注釈に関わっている。」(DCGK, 2015, S.2)DCGK 自体はソ フト・ローであり、 この「勧告」に従うかどうかは強制ではなく、 企業の 「自主性」に委ねられているものの、 株式法161条 1 項により、 上場会社の 執行役会と監査役会は年一度、 DCGK の「勧告」のうちどれが「過去にお いて遵守され、 また現在遵守されているか、 そしてどの勧告を過去に適用し 5) 「推奨」にはこれ以外に「∼することができる(kann)」という用語も使用されてい たが、 2012年以降は「した方が良い(sollte)」という用語のみになっている。

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なかったか、 もしくは現在適用していないか、 そしてなぜ遵守または適用し ないのか、 その理由を」、「状況報告書(Lagebericht)」における「遵守に関 する対応説明(     )」において説明しなければならない (ミュルベルト、 2013、 9 頁) のであって、 この点 「ハードな ソフト・ロー 」 の性格を持っている(ミュルベルト、 2013、 2021頁)。なお、「推奨」には 遵守しなくとも説明義務はない。 DCGK によれば、「コードは何よりもまず、 株式法第161条第 1 項第 2 文 の意味で、 上場会社と資本市場に接近しうる会社に向けられている。資本市 場を志向しない会社にもコードへの配慮が勧告される」(DCGK, 2015, S.2) と述べている。DCGK はドイツの証券取引所に上場している株式会社(AG)、 株式合資会社(KGaA)及び欧州会社(SE)が直接には主たる適用対象とな るが、 有限会社(GmbH)や合資会社(KG)も取引所で取引される社債の 発行を行っている場合にはコードの遵守が求められている (Fuhrmann, Linnerz, Pohlmann, 2016, S. 31.)。

 DCGK (2015) の規定内容

ドイツのコーポレート・ガバナンスに対する「透明性」は株主だけではな く、 資本市場参加者、 投資家、 顧客、 従業員、 そしてその他のステークホル ダーに向けられ、 こうした要求に応えるための DCGK の諸規定はドイツ企 業への「信頼」を高めるとの理解に立っている。フールマンらによれば 「DCGK の目標は高潔さ ( )、 責任ある者の企業の利益への集中 (Konzentration)、 企業発展の持続可能性 (Nachhaltichkeit) である」(Fuhr-mann, Linnerz, Pohlである」(Fuhr-mann, 2016, S. 20.) とされる。

DCGK (2015)は序文を除き、 6 つの章から構成されている。すなわち、 第 2 章「株主と株主総会」、 第 3 章「執行役会と監査役会の協力」、 第 4 章 「執行役会」、 第 5 章「監査役会」、 第 6 章「透明性」そして第 7 章「決算と 監査」がこれである(第 2 表を参照せよ)。こうした DCGK の諸規定によっ て、「ドイツのコーポレート・ガバナンス・システムを透明性の高い、 理解

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1.序文(Präambel)

2.株主と株主総会(Aktionir und Haupttversammlung) 2.1 株主 2.1.1 株主の権利 2.1.2 一株一議決権 2.2 株主総会 2.2.1 株主総会決議事項 2.2.2 持株発行 2.2.3 株主の株主総会参加権 2.2.4 株主総会時間 2.3 株主総会招集,書 面投票,議決権代 表 2.3.1 株主総会招集 2.3.2 代理権行使 2.3.3 現代的通信手段の利用 3.執行役会と監査役会の協力(Zusammenwirken von Vorstand und

Aufsichtsrat) 3.1 執行役会と監査役会との緊密な協力 3.2 企業戦略の決定と具体化 3.3 監査役会による同意留保事項 3.4 監査役会への情報提供 3.5 執行役会と監査役会のオープンな議論 3.6 株主代表と労働者代表による別個の監査役会の会議 3.7 買収議案 3.8 役員賠償責任 3.9 役員等への信用供与 3.10 コーポレート・ガバナンス報告書 4.執行役会(Vorstand) 4.1 任務と管轄事項 4.1.1 執行役会の任務 4.1.2 執行役会の戦略的方向 付け 4.1.3 コンプライアンス 4.1.4 リスク・マネジメント 4.1.5 多様性の配慮 4.2 構成と報酬 4.2.1 執行役会と会長 4.2.2 執行役の報酬 4.2.3 執行役報酬内訳 4.2.4 執行役の固定報酬と実 動報酬 4.2.5 報酬報告 4.3 利益相反 4.3.1 執行役会の「企業の利 益」への拘束 4.3.2 執行役会の利益供与禁 止 4.3.3 利益相反の開示 4.3.4 執行役会メンバーの副 業 5.監査役会(Aufsichtsrat) 5.1 任務と管轄事項 5.1.1 監査役会の任務(助言・ 監視・同意権) 5.1.2 監査役の任免権 5.1.3 業務規程の決定 5.2 監査役会会長の任務と管轄事項 5.3 各種役員会の設置 5.3.1 委員会の設置と委員長の 任命 5.3.2 監査委員会の設置 5.3.3 持分所有者の代表による 指名委員会の設置 5.4 構成と報酬 5.4.1 監査役の構成 5.4.2 独立監査役の選任 5.4.3 監査役の選出 5.4.4 執行役の監査役兼任制限 5.4.5 監査役の兼任制限 5.4.6 監査役の報酬 5.4.7 監査役会出席率 5.5 利益相反 5.5.1 監査役会の企業の利益へ の義務付け 5.5.2 監査役による利益相反の 開示 5.5.3 利益相反と対応策の開示 5.5.4 助言契約等の監査役会に よる同意 5.6 効率性テスト 6.透明性(Transparenz) 6.1 株主平等 6.2 役員の株式操作の開示 6.3 開示作業 7.決算及び監査( und   ) 7.1 決算 7.1.1 コンツェルン決算及びコ ンツェルン決算報告書 7.1.2 コンツェルン決算書 7.1.3 コーポレート・ガバナン ス報告書 7.1.4 株主との関係 7.2 決算監査 7.2.1 会計監査人の確立権 7.2.2 会計監査人の決定 7.2.3 監査役会と会計監査人の 取り決め 7.2.4 会計監査人による報告 第 2 表 DCGK (2015) の各項目と内容 出所:DCGK (2015) の項目を訳出した。細項目(例えば、 4.1.1)は内容から判断して筆者が まとめた。

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第 3 表 DCGK(2015)の各項目と「勧告(E)」と「推奨(A)」

1.序文 「勧告」 (=E) 「推奨」 (=A)(2015年) 5.監査役会(Aufsichtrat) 2.株主と株主総会 5.1 任務と管轄事項 5.1.1 2.1 株主 2.1.1 5.1.2 E 43. 44. 45. A 6. E 46. 47 2.1.2 5.1.3 E 48 2.2 株主総会 2.2.1 A 1 5.2 監査役会会長の任務と管轄事 項 E 49. 50. 51 2.2.2 5.3 各種委員会の設置 5.3.1 E 52 2.2.3 5.3.2 E 53. 54. 55. 56. 57 2.2.4 5.3.3 E 58 2.3 株主総会招集、 書面 投票、 議決権代表 2.3.1 5.4 構成と報酬 5.4.1 E 59. 60. 61. 62. 63. 64. 65. 66. 67. 68. 69 2.3.2 E 1. 2. 3. A 2 5.4.2 E 70. 71. 72 2.3.3 A 3 5.4.3 E 73. 74. 75 3.執行役会と監査役会の協力 5.4.4 E 76 3.1 執行役会と監査役会との緊密 な協力 5.4.5 E 77. 78 3.2 企業戦略の決定と具体化 5.4.6 E 79. 80. 81. 82. 83 3.3 監査役会による同意留保事項 5.4.7 E 84 3.4 監査役会への情報提供 E 4 5.5 利益相反 5.5.1 3.5 執行役会と監査役会のオープ ンな議論 E 5 5.5.2 E 86 3.6 株主代表と労働者代表による 別個の監査役会の会議 5.5.3 E 86. 87 3.7 買収提案 A 4 5.5.4 3.8 役員賠償責任 E 6 5.6 効率性テスト E 88 3.9 役員等への信用供与 6.透明性 3.10 コーポレート・ガバナンス 報告書 E 7. A 5. E 8 6.1 株主平等 E 89 (6.2 E 90削除) 4.執行役会 6.2 役員の株式保有の開 示 E 91. 92 4.1 任務と管轄事項 4.1.1 6.3 開示作業 E 93 4.1.2 7.決算及び監査 4.1.3 7.1 決算 7.1.1 4.1.4 7.1.2 E 94. 95. 96 4.1.5 E 9. 10 7.1.3 E 97 (7.1.4 E 98, E 99 は削除) 4.2 構成と報酬 4.2.1 E 11. 12. 13 7.1.4 (7.1.5) E 100 4.2.2 E 14. 15. 16. 17 7.2 決算監査 7.2.1 E 101. 102. 103 4.2.3 E 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29 7.2.2 4.2.4 7.2.3 E 104. 105 4.2.5 E 30. 31. 32. 33. 34. 35. 36. 37. 38. 39 7.2.4 4.3 利益相反 4.3.1 4.3.2 4.3.3 E 40. 41. 42 4.3.4 出所:DCGK(2015) の各項目と DCGK(2014)の勧告と推奨を示している。括弧は2015年版 で削除されている「勧告」を示している。

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できるものにするという目標を持っている。コードは内外の投資家、 顧客、 協働者そして公衆の、 ドイツ上場会社の指揮と監視への信頼を高める」 (DCGK, S. 1.)ことが意図されている。 第 3 表は2014年版と2015年版の DCGKの「勧告」(105項目:102項目)と 「推奨」( 6 項目)がどの項目に配置されているのかを示している。ここか ら分かるように、「勧告」は執行役会の役員報酬の内訳(4.2.3)と役員報酬 報告(4.2.5)、 監査役会による執行役の任免権(5.1.2)および構成(5.2.1)、 監査役の報酬(5.4.6)に集中している。これは特にこの間のドイツにおけ るコーポレート・ガバナンスをめぐる議論、 監査役会の独立性強化、 役員報 酬の高額化に対する規制(執行役報酬の透明性、 比較可能性とその上限規制)、 女性比率を含む機関構成員の多様性(Diversity)、 役員の年齢制限等に関わっ ている。

 上場会社の DCGK の受容 (Akzeptanz) と適用

(Anwendung) の実態

アクセル・フォン・ヴェルダーが所長を務めるベルリン・コーポレート・ ガバナンス・センター(Berlin Center of Corporate Governance)は、 毎年 DCGK のドイツ企業における遵守状況におけるアンケート調査を行い、 そ の結果を「コーポレート・ガバナンス報告書」として公表している6)。以下 では、 最新の2015年の報告書からドイツ企業における DCGK の遵守状況を 確認することとする。 本調査の対象はドイツ上場企業(524社)を対象とするアンケート調査 (2014年10月16日実施)である。回答企業は115社であり、 フランクフルト 証券取引所上場企業109社およびそれ以外のドイツ国内取引所上場企業 6 社 であった。調査は、 DCGK(2014)の「勧告」(105項目)と「推奨」( 6 項 6) アクセル・フォン・ヴェルダーが所長を務めるベルリン・コーポレート・ガバナンス・ センターのホームページ内にこれまでの調査結果は全てダウンロードすることができ る。参照 URL: http://bccg.projects.tu-berlin.de/?page_id=289

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目)の受容と適用状況に関して行われている。 その全般的遵守状況は、 第 5 表にまとめられている。これに基づいて、 フォ ン・ヴェルダーらは以下のように調査結果を要約している。すなわち、 ①全体の遵守率(82.6%)は前年の78.9%に比べ若干上昇し、 その際、 勧告 の遵守率(83.6%:前年、 79.8%)の方が推奨の遵守率(65.1%:前年、 63.9%)より高い。 ②市場区分別にみると遵守率と企業規模ないし取引所区分との間に傾向的関 連が確認できる。DAX 企業(95.2%)の方が General 企業(67.5%)よりも 遵守率は高い。DAX 企業は「勧告」遵守率が80%を下回るのは、 後述の E 39 と E 81 のみであり、 80%台の遵守率の項目数は 9 項目、 90%台は18項 第 4 表 DCGK アンケート対象企業と回答企業 フランクフルト証券取引所 フランクフル ト外の取引所 (48社) (回収率: 12.5%) DAX 構成企業 (回収率: 76.7%) 主要大型30社 TecDAX 構成 企業 (回収率: 30.0%) 「ニュー・エコ ノミー」 30社 MDAX 構成 企業 (回収率: 54.0%) 中型株50社 SDAX 構成 企業 (回収率: 30.0%) 小型株50社 その他プライ ム基準企業 (回収率: 14.6%) ジェネラル基 準企業 (回収率: 12.9%) 国内基準 23社 9社 27社 15社 19社 16社 6社

出所:Axel v. Werder und J. Turkall, 2015, S.1358 に依拠して筆者作成。

第 5 表 DCGK 諸規定の平均した遵守数と割合

DAX TecDAX MDAX SDAX その他の

プライム ジェネラ ル その以外 勧告 遵守項目数 101 89.4 94.6 83.3 77.7 71.8 87.8 割合 96.2 85.2 90.1 79.4 74 68.4 83.6 推奨 遵守項目数 4.7 3.9 4 3.6 3.6 3.2 3.9 割合 78.3 64.8 66.7 60 60.5 53.3 65.1 全体 遵守項目数 105.7 93.3 98.6 86.9 81.4 74.9 91.7 遵守率 95.2 84.1 88.8 78.3 73.3 67.5 82.6

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目、 残り全て100%の遵守率であった。 ③個別企業の DCGK 遵守率は大きな分散を示している。遵守率の最低は 40.5%である一方、 最高は100%である。最高の遵守率 5 社と最低の遵守率 5 社を見ると、 最低46.1%(DAX 企業88.1%、 ジェネラル基準企業48.8%) と最高99.1%(DAX 企業98.7%、 ジェネラル基準企業86.3%)という乖離が 確認できる。 ④フランクフルト以外の取引所で上場している企業はフランクフルト取引所 に上場している企業のそれよりコードの遵守率は低い(66.6%:74.3%)。 ⑤105の勧告と 6 の推奨のうち、 55の勧告と 1 つの推奨は「一般に受容され ている」。44の勧告と 5 つの推奨は5090%の遵守率であり、 うち18の勧告と 2 つの推奨は5075%の遵守水準であった(以上、 Axel v. Werder und J. Turkall, 2015, S. 1359, S. 1364.und S. 1367.)。 さらに、 フォン・ヴェルダーらは DCGK の個別項目ごとに結果を示して いるが、 以下では「全体(Gesamt)」の遵守率が70%未満の項目について挙 げることとする7)。なお、「透明性」と「決算と会計監査」については70%未 満の遵守率の項目はなく、 DAX 30社に限れば、 勧告 E 91(91.3%)、 E 92 (81.8%)8)以外は全項目が100%遵守されている。また DAX 30社に限定す れば、 すべて項目での70%以下の遵守率の項目はない。 ① 株主と株主総会(第 2 章)と執行役会と監査役会の協力(第 3 章)とに 関わる全体の遵守率70%未満の項目 【E は「勧告」、 A は「推奨」を示し、 番号は「勧告」105個、「推奨」 6 個のうちの番号 7) フォン・ヴェルダーらは90%以上の企業で遵守されている規定を「一般に受け容れら れた規定」、「75%以上で90%未満」は「議論の少ない(schwach neuralgisch)規制」、 「50%以上で75%未満」は「議論の多い(stark neuralgisch)規制」そして「50%未 満」は「過半数によって拒否されている規定」と分類している。Axel v. Werder, Julia Turkali, 2015, S.1359.

8) 勧告 E 91 と E 92 とは「6.3 該当期間の開示作業の枠内で、 主要な定期的刊行物(例 えば、 営業報告書、 中間財務報告書)の発行日及び株主総会の開催日、 財務カレンダー における決算発表やアナリスト会議の期日は、十分に時間的余裕をもって会社のイン ターネットサイトで公表されるべきである。」(DCGK, 2015, S. 14)

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である(第 3 表を参照せよ)。括弧内の%は全体の遵守率であり、 右に DAX 30社の遵守 率を記載した。その下に DCGK の規定内容を訳出した。】 .A 3:2.3.3 現代的通信手段の利用 (株主総会の中継)(30.8%) (DAX:78.3 %) 「2.3.3 会社は現代的通信手段(例えば、 インターネット)を通じて株主 総会の内容を株主が把握できるようにした方が良い。」(DCGK, S. 4.) .A 4:3.7 買収提案(62.9%)(DAX:77.3%) 「執行役会は、 買収提案がなされた場合、 株主が買収提案を審議し、 会社法 上の措置を決議する、 臨時株主総会を招集した方が良い。」(DCGK, S. 4.) .E 6:3.8(67.6%)(DAX:95.7%) 「監査役会に対する役員賠償保険(D&O Versicherung)においてそれに対 応した自己負担額 (Selbstbehalt) が取り決められるべきである。」 .A 5:3.10(49.5%)(DAX:73.9%) 「3.10 コーポレート・ガバナンスについて、 執行役会と監査役会は年一度 報告しなければならない(コーポレート・ガバナンス報告書)し、 企業管理 の説明と関連してこの報告書を開示しなければならない。その際,コードの 提案に態度を表明した方が良い。会社はコードの過去 5 年間の対応説明を自 社のインターネットサイトで入手可能とさせておくべきである。」(DCGK, S. 5.) ② 執行役会規程の70%未満の遵守率の項目 .E 24:4.2.3 Hs.1(67.8%)(DAX:86.4%) 「執行役に年金を約束する場合には、 監査役会は、 その時々に目指される年 金水準を執行役会の仕事を務めた期間に基づいても決定し,それから導き出 される、 企業にとっての、 一年のコストと長期的コストを考慮すべきである。」 (DCGK, S. 7.)

.E 33:4.2.5 Abs.Satz Spiegelstrich 1(58.5%)(DAX:82.6%)

「さらに2013年12月31日以降に始まる事業年度の報酬報告は以下の項目につ いて執行役会メンバーごとに表示されるべきである。

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報告年度に与えられる手当(フリンジベネフィットを含む)。変動報酬部分 においてはその報酬の上限と下限額 (Maximal- und  ) が追 加されること。 それぞれの参照年度ごとに区分して表示された、 固定報酬、 短期的変動報 酬そして長期的変動報酬からなる報告年度のフローの報酬額。 報告年度内における、 またはその事業年度に対する年金給付並びにその他 の給付費用。」(DCGK, S. 8.) .E 39:4.2.5(51.9%)(DAX:72.7%) 「こうした情報に対して,本コードに添付されている表のテンプレートが使 用されるべきである。」(DCGK, S. 8.) ③ 監査役会規程の70%以下の遵守率の項目 .E 58:5.3.3(68.9%)(DAX:100%) 「監査役会は,持分所有者の代表のみで構成される指名委員会を設置し,こ の指名委員会が,監査役会メンバーを選出するために開催される株主総会に 提案するに相応しい候補者を指名すべきである。」(DCGK, S. 10.) .監査役会構成についての「勧告」には一つの文章に多くの「勧告」が含 まれており、 部分的には70%を越えているが、 5.4.1 第 2 段落の項目を挙げ ることとする。 E 59 5.4.1第 2 段落 第 1 文 1 監査役会の構成の具体的目標(71.3%)(DAX:95.7%) E 60 5.4.1第 2 段落 第 1 文 2 利益相反の潜在的可能性(74.1%)(DAX:95.7%) E 61 5.4.1第 2 段落 第 1 文 3 5.4.2の意味での独立監査役員数(72.6%)(DAX:95.7 %) E 62 5.4.1第 2 段落 第 1 文 4 監査役の年齢制限(63.9%)(DAX:82.6%) E 63 5.4.1第 2 段落 第 1 文 5 多様性(69.7%)(DAX:95.7%) E 64 5.4.1第 2 段落 第 2 文 女性の適切な参加 (66.1%)(DAX:95.7%) E 65 5.4.1第 3 段落 第 1 文 所管の選出機関への監査役会の提案 (69.8%)(DAX:95.7 %) E 66 5.4.1第 3 段落 第 2 文 コーポレート・ガバナンス報告書での開示 (63.9%) (DAX: 91.3%) 「監査役会は、 企業の特殊性を考慮しつつ、 企業の国際的な事業活動,利益

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相反の可能性,5.4.2で意味するところの独立監査役会メンバー数,監査役 会メンバーの年齢制限の決定,監査役会メンバーとしての任用期間の決定, 並びに多様性を考慮した具体的目標を定めておくべきである。共同決定法, モンタン共同決定ないし共同決定補充法が適用される上場会社の場合には, その監査役会は最低限女性30%,最低限男性30%から構成される。その他の、 均等法適用対象会社については、 監査役会は女性の割合について目標値を定 めるものとする。 所管とする選挙委員会に監査役会が提案する際には、 こうした目標が考慮 されるべきである。監査役会の構成とその目標具体化の状態はコーポレート・ ガバナンス報告書において開示されるべきである。」(DCGK, S. 10f.) なお、 上記5.4.1の「監査役会の女性の適切な参加」について DCGK の注 記では「監査役会の女性と男性のそれぞれ30%の最低限の割合は、 2016年 1 月 1 日以降必要となる新たな選出と派遣において一人もしくは複数の監査役 会ポストを任命する上で顧慮されねばならない(2015年 4 月24日の「私経済 並びに公務における管理職への女性と男性の同権的参加のための法律」に依 拠した株式法導入法第25条第 2 項、 連邦法律官報 I, S. 642、 656)。また「目 標値の決定は遅くとも2015年 9 月30日までに行われねばならない。目標値達 成の期限は2017年 6 月30日を超えてはならないことが期待されている」(同) と述べられている(DCGK, S. 11.)。 .E 81:5.4.6(59.8%)(DAX:75.0%) 「監査役会メンバーは、 その任務と会社の事業状況に見合った報酬を受け取 る。もし監査役会メンバーに業績志向的報酬が認められているのであれば, こ の 報 酬 は , 企 業 の 持 続 的 発 展 に 方 向 づ け ら れ て い る べ き で あ る 。 」 (DCGK, S. 12.) さらにフォン・ヴェルダーらは、 ガバナンス構造とガバナンス・プロセス そしてガバナンスの透明性について以下のような調査結果を示している。 ① ガバナンス構造 .上級管理職集団(Oberer   ):執行役の報酬の妥当性評価の

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ためのいわゆる「垂直比較」において、 監査役会はとりわけ上級管理職集団 の報酬と執行役報酬との比率が考慮されるべきである(E 14)とされる。そ の際、 垂直比較の対象となる管理職集団の指定を監視機関(    )に委ねている。89.4%の企業(n=66)は、 勧告を遵守しているが、 約 4 分の 3 の会社は執行役会の下の一つの管理職レベルの報酬を比較対象と している(54.5%)か、 二つの管理職集団を比較対象としている(22.7%)。 それ以外の企業は第 4 番目ないし第 5 番目のレベルを比較対象として含めて いる。顧慮される管理職レベルの階層数は企業規模ととともに増加する。ま た SDAX 企業 (75.0%), TecDAX 企業 (83.3%), プライム基準企業(80.0%) そしてジェネラル基準企業(75.0%)においては第一管理職集団レベルのみ を比較の対象としているのに対して、 DAX 企業において第一レベルの管理 職集団を比較対象としている企業は23.5%であり(MDAX 企業:37.5%)、 それ以外は 2 つもしくは 3 つの管理職集団を比較対象としている。(Axel v. Werder und J. Turkall, 2015, S. 1364f.)。

.監査役会における独立性(    ):監査役会のメンバーの独 立性に関するコードの規制は著しい解釈・判断余地を残しており、 会社はさ しあたり労働者代表の(従業員代表か、 労組代表か、 等の)一般的分類につ いての情報が要請されている9)。ドイツの多くの企業(83.0%:n=53) は、 個人的な利害関係か取引上の関係がある場合を除いて「独立的」と分類して いる。DCGK の勧告(E61)によれば、 監査役会は独立役員数についての具 9) DCGK によれば,「5.4.2 監査役会には、 自らの評価に基づいて妥当な数の独立した メンバーを含めるべきである。本コードの勧告の意味では、 会社、 その機関、 支配的 株主、 またその株主と結びついた企業と個人的もしくは取引上の関係にあり、 重要な、 一時的ではない利益相反が根拠づけられる場合には、 こうした監査役会メンバーは独 立的とはみなされえない」(DCGK, 2015, S.11)と規定されている。フールマンらに よれば,「労働者代表は企業との雇用関係に基づき、 コードの意味での取引関係を持っ ているのかどうかは議論の余地がある。雇用関係は労働者代表の独立性を阻害するも のではなく、 それゆえ原則的に独立的と見なされるという見解が導かれうる」し、 こ れはまた EU 委員会の勧告とも一致しているものと見なされている。(Fuhrmann, Linnerz, Pohlmann, 2016, S.493.)労働者代表を「独立」役員と見なせるかどうかは議 論のあるところでもある。

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体的目標を掲げておくべきであるとされる。フォン・ヴェルダーらの調査に よれば、 持分所有者について目標設定は25%から100%とばらつきがあった (前年は16.7%−100%)。企業の40.5%(n=37)は株主代表の半分を独立 監査役にしようとする目標を持ち、 24.3%の企業は半分以下の目標で、 35.2 %の企業は50%以上という目標を持っていた)のであり、「監査役会全体と 比較して、 監査および指名委員会については独立性の一層の強化が明らかと なる。 3 分の 1 以上の会社ではこうした委員会の全ての持分所有者代表は独 立的である。」(Axel v. Werder und J. Turkall, 2015, S. 1365.)

こうした社外独立役員の選任は共同決定法で労働者代表と持分所有者代表 以外の第三の「利害代表」を監査役会に組み込む点でドイツのコーポレー ト・ガバナンスの多元性を一層鮮明にする点で極めて重要であると考えられ る。 ② ガバナンス・プロセス .役員会議(executive sessions)の実施:DCGK の規定によれば、 監査 役会は、 必要に応じて執行役会抜きの会議を開くべきであるとされる。フォ ン・ヴェルダーらの調査によれば、「20.2%の企業(DAX 企業:5.3%)の監 視機関は、 完全に、 または部分的にも執行役会抜きで会議を開いたことはな かった。一方、 24.7%の企業(DAX 企業:31.6%)では執行役会抜きでの全 体会議も個々の議題の審議も行っていた。また残りの企業では、 執行役会抜 きでの会議(7.9%;DAX 企業:5.3%)か、 個々の議題の審議(47.2% (DAX 企業:57.9%)かのいずれかを行っていた。調査結果は、 これによ り「E5 の具体的実践における著しい多様性(Varianz)を示している。同時 にともかく 5 社に 1 社は対応説明を行っているものの、 (完全か部分的に) 執行役会抜きの会議を放棄している。こうして、 この規制の実効性は限定的 であることが判明した。」(Axel v. Werder und J. Turkall, 2015, S. 1365.)。 .外部報酬コンサルタント(   )の利用:監査役会が執行 役報酬の妥当性評価 (Beurteilung der Angemessenheit) のために外部の報 酬コンサルタントの助言を得る限りで、 そのコンサルタントの執行役会もし

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くは企業からの独立性に配慮するべきであるとされている(DCGK 4.2.2 の 第 3 段落)。調査の結果、 回答企業(86社)の22.1%の会社は妥当性評価に おいて外部の助言を放棄する一方、 76.7%の企業では報酬決定プロセスにお いて、 こうした外部報酬コンサルタントの利用が標準となっている。こうし た処置は、 DAX 企業(90.5%)だけではなくその他の企業でも普及してい る(但し、「その他プライム基準」企業では41.7%)。報酬問題における「執 行役の報酬の適切性に関する法律」(VorstAG)によって厳格化された監査 役会の懲罰リスク(株式法116条第 3 文)を含む執行役報酬を巡る集中的議 論を反映しているものとフォン・ヴェルダーらは見なしている。(Axel v. Werder und J. Turkall, 2015, S. 1365f.)。

.監査役会に対する要件プロフィール(Anforderunsprofil)の作成:前述 したように DCGK(5.4.1 第 2 段落:E 5964)によれば、 監査役会はその構 成について具体的目標を掲げ、 その所管とする選出機関に候補者を提案する にあたってこの目標を考量すべきであるとされる。回答企業の45.2%は監査 役会全体についても個々のメンバーについても体系的に要件プロフィールを 作成しているのに対して、 19.3%の企業はこの作成を完全に放棄している。 それ以外の企業は、 監査役会全体についてのみか、 そのメンバーについての みプロフィールを使用している。71.0%の会社は全体プロフィールの作成に よって監査役会の仕事の比較的高度な専門職化(Professionalisierung)を表 す処置を選択している。(Axel v. Werder und J. Turkall, 2015, S. 1366.) ③ コーポレート・ガバナンスの透明性 .公表手段の調整:現在のガバナンス報告書の増大する規制の中核問題は、 例えば、 対応説明、 企業経営の説明、 ガバナンス関連の付属明細書並びにコー ポレート・ガバナンス報告書といった多数の異なる公表手段から生じている。 DGCK は、 こうした公刊物の調和について定めておらず、 コーポレート・ ガバナンス報告書を企業経営の説明と関連して公表することを求める勧告の みを行っている。回答企業(100社)の66.0%はコーポレート・ガバナンス 報告書を企業経営の説明と同一の統合報告書で公表している。残りの企業

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(34.0%)においては、 報告書と説明を別々の文書で公表している。インデッ クス企業は、「その他プライム基準」企業や「ジェネラル基準」企業よりも 明らかに統合報告書で公開している。(Axel v. Werder und J. Turkall, 2015, S. 1366.) .垂直的報酬関係:執行役報酬の妥当性評価にあたって、 執行役報酬の、 上級管理職集団並びに従業員全体の報酬との比率はかなり重要視される。こ れに対応して、 DCGK は執行役の報酬決定にあたってこうした報酬比率を 考慮することを勧告しているが、 この関係を公表することを求めていない。 こうした垂直的報酬関係の公開は現時点では多くの企業によって拒否されて いる。その際、 管理職の報酬と執行役の報酬の比較の公表の拒否(92.5%) は執行役の報酬と従業員全体の報酬との比較の公表の拒否(96.4%)より若 干低い。前年(84.8%;85.7%)と比較して垂直的報酬関係の公表を拒否す る企業は増加している。それゆえ、 垂直的報酬関係の公表はおそらく今後も 例外に止まるであろう。 .独立監査役の公表:監査役会にとって「独立性」目標の達成は会社から 独立的であると格付けされる監視機関のメンバーの名前が知られることによっ て初めて外部の視点から根拠づけられるものとして確認できる。調査におい て「財務専門家の名前を挙げることは、 すでに回答企業(93社)の73.1%が この情報を自発的に開示しており、 この点で「ベストプラクティス」として 確立している。その他の独立監査役については52.2%の企業と開示度は低い が、 2013年45.8%、 2014年46.1%に比べると上昇している。「目立っている のはその他の独立機関メンバーの名前を挙げる、 DAX 企業における意欲は、 依然としてその他のインデックス企業やセグメント企業の意欲よりも低いま まである。」(Axel v. Werder und J. Turkall, 2015, S. 1366f.)

 DCGK と「企業の利益」(多元的企業統治モデル)

すでに1918年にラーテナウ (Walther Rathenau) が大企業を 「私的存在」 と して捉えるのではなく、 国民経済全体の 「共同経済的 (gemeinwirtschaftlich)」

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要素、 したがって「社会的存在」として捉える主張を行い、 こうした企業観 が戦後ドイツの企業社会に浸透していった。一方、 19世紀半ば以降の労働 運動の「共同決定」(経営参加)要求は「共同決定法」の整備により実現さ れ、 ドイツの企業社会に定着するところとなっていた。この点で私有財産制 度と「契約の自由」を柱とする「会社法」の限界が指摘され、 広くステーク ホルダーの諸利害をも考慮した「企業法」の要求がすでに1950年代から法学 の議論においても大きな関心と議論を集めてきた(正井、 1989及び海道、 2013)。 こうしたドイツの伝統的企業観は DCGK においても反映されており、 会 社機関構成員の義務として「企業の利益」が強調されている。先に述べた DCGK 序文での「本コードは、 社会的市場経済の諸原理と調和して、 企業 の存続とその持続可能な価値創造(企業の利益)に対する執行役会と監査役 会の義務を明らかにするものである。」(DCGK, 2015, S. 1.)それ以外にも DCGK では様々な箇所で「企業の利益」・「企業の繁栄」という用語が機関 構成員の義務として規定されている。例えば、「3.1 執行役会と監査役会は 企業の繁栄(Wohle des Unternehmens)のために緊密に協力する」(DCGK, 2015, S. 4.)、 あるいは「4.執行役会、 4.1 任務と管轄事項、 4.1.1 執行役 会は企業の利益のために、 それゆえ株主、 その労働者、 およびその他の企業 とつながりのある集団(ステークホルダー)の諸利害を考慮しながら持続的 価 値 創 出 と い う 目 標 を も っ て 、 自 己 の 責 任 に お い て 企 業 を 指 揮 す る 」 (DCGK, 2015, S. 6.)と規定されている10) 10) フールマンらによれば,「企業の利益」は、 株式法上規定されているわけではなく、 「法律を越えた秩序原理(Ordnungsprinzip)」と見なされている。株式法76条か93条 もしくは株式法116条(監査役会)の規定からすれば、 会社機関は、 以下の点に義務 付けられている。すなわち、 持続的な、 企業の収益性に配慮すること、 定款に適合し、 また実際の、 会社の事業を積極的に推進すること、 企業の損失を回避すること、 事業 の持続的な発展に配慮すること、 利害の対立を調整すること、 逃れることのできない、 あらゆる法的規定の順守に配慮し、 これに自分自身も注意を払うこと、 その他、 あら ゆる重要なステークホルダーの諸利害を顧慮すること、 以上である(Fuhrmann, Linnerz, Pohlmann, 2016, S.21.)。

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「企業の利益」概念について、「この概念はすでに従前から(とくに法学の) 議論において導入されたものであり、 DCGK でも機関の行動の最高の格率 (die oberste Maxime des Organhandelns)を示すために使用されている。」 (Beck, C.H. et.al., 2014, S. 130.)また「企業の利益」概念はフールマンらに よれば「多様なステークホルダーの個別利害の上位に位置づけられ、 多様な 特定利害を事実に基づいて(sachgerecht)調整する、 上位の企業目標から 出発する。この場合、 リスク資本を提供する持分所有者の目標は、 企業の利 益を見出す上で特別な注意を受けるにしても、 株主重視アプローチのような 排他的優位性を持たない。それどころか、 その他のステークホルダーの利害 は、 ・・・『適切に』配慮される。こうしたステークホルダーの利害の著し い包摂は、 そのことが企業価値を持続的に高める限りで妥当なものと見なさ れるであろう。その際、 企業価値は、 さまざまなステークホルダーの諸要求 を持続的に満足させ、 企業の存続に必要な、 こうしたステークホルダーの支 持を長期的に保証する企業能力の程度に基づいて測定される。」(Fuhrmann, Linnerz, Pohlmann, 2016, S. 20f.) こうして、 DCGK で規定される「企業の利益」は「社会的市場経済の諸 原理と調和して、 企業の存続とその持続的な価値創造に配慮し、 そこでは株 主、 その労働者およびそれ以外の、 企業と結びついた集団(ステークホルダー) の利害を顧慮するという一般的格率を表すもの」(Beck, C.H. et.al.,2014, S. 130.)である。この点で、 「企業の利益」 は 「社会の繁栄」・「社会の利益」 を前提とする概念であり、 DCGK は機関構成員の責任として「社会受託者 責任(corporate social stewardship)」としての義務付けを示しているものと 解される。 こうして、 ドイツのコーポレート・ガバナンスでは何よりも「企業の利益」・ 「事業の繁栄」を機関構成員の義務と位置付けることで株主だけではなく、 従業員、 債権者、 地域社会等の広範な利害を企業家的意思決定において考慮 するととともに、 これを労働者代表と持ち分所有者代表とが監査役会を通し て監視・コントロ−ルする仕組みを構築している。しかし、 企業家的意思決

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定の判断業務は高度の専門性を有することから、 会計専門職等の「独立社外 監査役」を選任することで対応しようとしているものと考えられる。この場 合には「独立社外監査役」に期待されているのは労働者代表利害でもなく、 株主代表利害でもなく、 まさに「公益」代表としての性格が強いものと言え ると思われる。すでにでこうした「労働」と「資本」と「社会(中立)」代 表から構成される共同決定は従業員 1 千名以上の石炭・鉄鋼産業企業に適用 される、 1951年の「モンタン共同決定法」で構想されていたものであり、 こ の構想こそ「多元的利害代表」に基づく多元的コーポレート・ガバナンスで あった(風間、 2012)。この「モンタン共同決定法」で構想されている多元 的コーポレート・ガバナンス構想が DCGK においても引き継がれているも のと捉えることができる。

 おわりに

以上、 本稿はとくにドイツのコーポレート・ガバナンス・コード(DCGK) の制定の背景と DCGK の内容そして遵守状況を概観してきた。この結果、 以下の点を明らかにしてきた。すなわち、 1.DCGK は2002年の制定以来、 ドイツ経済・社会の動向を踏まえつつ、 連邦法務省の下に設置される常設機関である DCGK 政府委員会で年一度改 訂がなされている。独立監査役の選任、 機関構成員への女性登用、 執行役報 酬の透明性、 垂直比較、 その上限規制などが「勧告」として盛り込まれてい る。 2.DCGK は「遵守か、 説明か」という点では「ソフト・ロー」の側面を 有しているもの、 株式法第161条の規定によりそれを強行法で説明義務を課 している点で「ハードな『ソフト・ロー 」の性格を有している。 3.DCGK は当初、 機関投資家、 資本市場の圧力が意識されていたものの、 二層型と労使共同決定という、 ドイツ固有の企業体制を堅持し、 この基盤の 上で透明性の強化と企業経営の「最良の実践」を目指すコーポレート・ガバ ナンス改革が DCGK 規定に盛り込まれている。

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4.DCGK は機関構成員の義務として「企業の利益」概念を設定すること で、 「会社は株主のものだ」とする一元的企業観に基づく「株主受託者責任」 を越えて、 より広範なステークホルダーの利益を企業家的意思決定に「事実 に基づく調整」により包摂することを目指している点で DCGK では機関構 成員の責任は「社会受託者責任」として捉えることができる。 しかし、 DCGK の受容と適用のアンケート調査(2015)によれば、 報酬 の垂直比較について個々の会社は考慮すれどもその実態を公表する必要はな いこと、 監査役の「独立性」の規定が「独立的ではない」ことは規定されて いるものの、「独立性」自体の規定がないこと、 労働者代表が「独立的」で 見なされていることの妥当性も問われている。またダイバーシティ、 とくに 女性の登用についても、 依然として十分な水準に達しているわけではないと いった問題も浮き彫りにされている(Axel v. Werder und J. Turkall, 2015, S. 1367.)。 また DCGK における「企業の利益」の実現は、 本来的には「社会の利益」・ 「社会の繁栄」との相即的発展を意味しているものであるにせよ、 VW の排 ガス不正に象徴されるように、 ときに「内向き志向」・「閉鎖的体質」をもた らし、 ステークホルダーの諸利害を顧みない「会社中心主義」に陥る危険を 孕むことも事実であり、 これを防止するためにはコーポレート・ガバナンス 強化だけではなく、 風通しの良い企業風土・企業倫理(Business Ethik)の 確立こそ求められている。 (筆者は明治大学商学部教授) 引用文献

Axel v. Werder, Julia Turkali (2015), Corporate Governance Report 2015 : Kodexakzeptanz und Kodexanwendung, Der Betrieb, Nr. 24, 12.06.2015, S.13571367.

Beck, C. H., H. M., Ringleb, T. Kremer, M. Lutter, Axel v. Werder (2014), Kommentar zum Deutschen Corporate Goverance Kodex, 5. Auflage, C. H. Beck.

Fuhrmann, L., Linnerz, M., Pohlmann, A. (Hrsg.) (2016), Frankfurter Kommentar Deutscher Corporate Governance Kodex, dfv Mediengruppe, Frankfurt am Main.

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Kapitalmarkt und Mitbestimmung, Leske+Budrich, Opladen ( ライン型資本主義の将来』 風間信隆監訳、 文眞堂、 2008). 上田亮子(2014)「英国・フランス・ドイツにおけるコーポレート・ガバナンス・コード の実施状況に関する調査研究」株式会社日本統治環境研究所、 http://www.jpx.co.jp/ equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/JIRIS.pdf :最終アクセス日:2016年 8 月12日) 海道ノブチカ(2005) ドイツの企業体制−ドイツのコーポレート・ガバナンス』森山書 店. 海道ノブチカ(2013) ドイツのコーポレート・ガバナンス』中央経済社. 風間信隆(2012)「グローバル化の進展とドイツ的企業統治システムの進化」 リーマン・ ショック後の企業経営と経営学』経営学論集82集、 3951頁. 関孝哉(2006) コーポレート・ガバナンスとアカウンタビリティー』商事法務. 東京証券取引所(2015) コーポレートガバナンス・コード−会社の持続的な成長と中・ 長期的な企業価値の向上のために』東京証券取引所. 内 閣 官 房 ( 2015 ) 「 日 本 再 興 戦 略 」 改 訂 2015 − 未 来 へ の 投 資 ・ 生 産 性 革 命 − 』 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/dai1jp.pdf :最終アクセス日:2016年 8 月 12日) ペーター・オー・ミュルベルト(2013)「ドイツ株式法における『遵守せよ、 さまなけれ ば説明せよ』の準則と EU の背景」(神作裕之仮訳)『金融商事法ワーキングペーパー・ シリーズ 、 125頁. 正井正筰(1989) 西ドイツ企業法の基本問題』成文堂. 正井正筰(2003) ドイツのコーポレート・ガバナンス』成文堂.

参照

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