福祉まなびま専科+交流会
「介護保険・障害福祉サービス事業所職員研修会」資料 豊中市福祉指導監査室 H27.2.25(水)1 労働契約と労働法
労働契約とは
労働者が「働く」ことに対して使用者が「賃金を支払う」ことを約束する契約。労働者が「働く」ことを、 使用者が「賃金(働くことの対価)」を支払うことを合意して効力が発生。口頭でも成立。 労働契約には、使用者が労働者を指揮して命令する権利が入っている。 労働契約は、労働力を提供する労働者と労働力を利用する使用者との関係が続くため、お互いの信頼 関係(誠実配慮の関係)が重視される。
契約関係は、お互いの対等な関係が基本だが、労働者より使用者の力が強く(経済力・交渉力)、実際 には対等ではない。⇒ 労働者の保護 ⇒ 労働法
具体的には、 ★ 使用者は、賃金や労働時間などの重要な労働条件について、労働者が働き始めるときに書面を交付し て明示しなければならない【労働基準法第 15 条、同法施行規則第5条】。 ★ 使用者は、労働条件について労働者が理解を深めるようにし、また、できる限り書面で確認すること とする【労働契約法第4条】。 労働契約関係(使用従属関係) <労働者の義務> <使用者の義務> ○労働義務(誠実労働義務含む)[※]、 ○秘密保持義務、○競業避止義務、○企業 の信用・名誉を傷つけない義務、など ○賃金支払義務、○安全配慮義務、○人格 権尊重義務、○職場環境保持義務、など → ←2 様々な雇用形態と労働契約
1 正社員
一般に、契約期間に定めがなく、企業等で中核的な業務に従事している。昇給がある等待遇が安定。 入社 定年(60~65 歳)2 契約社員
有期労働契約で、正社員と同じ労働時間、労働日数で働く労働者。恒常的な業務に就き、契約期間終 了後、同じ期間の契約が繰り返し更新される場合が多く見られる。 パターンとして 入社 期間満了⇒別の会社に入社 期間満了⇒別の会社に・・ 《恒常的業務》 入社 期間満了/更新 期間満了/更新 期間満了/更新 ★ 有期労働契約から無期労働契約への転換 有期労働契約が繰り返し更新されて通算 5 年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めの ない労働契約(無期労働契約)に転換できる【労働契約法第 18 条】。3 パートタイム労働者
「1 週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者に比べて短い労働者」(パートタイ ム労働法)。有期労働契約か無期かは、事業所によって様々(契約期間の定めがない労働者もいる)。4 アルバイト
本業とは別に、収入を得るため一時的に就労する労働者(契約期間の定めがないアルバイトもいる)。 学生アルバイトが典型例。5 派遣労働者
①人材派遣会社等(派遣元)に雇用され、②派遣元と派遣される会社(派遣先)との労働者派遣契約 に基づいて派遣元から派遣先に派遣され、③派遣先の指揮命令を受けて働く労働者。 派遣先との労働契約は結ばれていない。 (働く) (働く) (働く) (働く) (働く) (働く) (働く) ☆正社員以外(契約社員、パートタイム労働者、派遣労働者、アルバイトなど) ○ 契約期間に定めがある(有期労働契約/契約期間が終了すると退職することが基本)ことが多い。 ○ 正社員に比べると待遇が低い(不安定)。<派遣労働以外> 指揮命令 賃金支払 賃金支払 労務提供 ★ 労務の提供を受ける者と賃金の支払いを受ける者が直接の対抗関係ではないため(間接雇用)、労働法 の適用関係(使用者の法的責任事項)も派遣元と派遣先との共同責任または分担される。
6 労働契約ではない働く契約(請負、委任など)
雇われて働く“労働者”とは、“使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者【労働契約法第 2 条】”、 “事業または事務所に使用される者で賃金を支払われる者【労働基準法第 9 条】”。 労働契約関係では、労働者に労働基準法、労災補償法などの労働者保護法規が適用される。 一方、労働契約関係ではない請負契約[※]【民法 632 条】や委任契約【民法第 656 条】で働く場合は、 労働者保護法規が適用されない(業務委託などと呼ばれる場合もある)。 [※]ある仕事について、発注主がその仕事の完成を他の者(請負人)に請け負わせ、その結果に対して発 注主が請負人に対して報酬を支払う契約。 契約の目的 契約当事者 指 揮 命 令・時間 的拘束 報酬の性格 労働基準法 等の適用 労 働 保 険 (労災・雇 用)の適用 労働契約 労務の提供 使用者 ⇔ 労働者 あ り 労務の対価(賃金) あ り あ り 請負契約 仕事の完成 発注主 ⇔ 請負人 な し 結果に対する報酬 な し な し *労働組合法における労働者は、「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者【労働組合法第 3 条】」と定められ、使用従属性や賃金の支払を要件としない。 労働者派遣契約 派 遣 元 派 遣 先 労 働 者 指揮命令 雇用関係 (労働契約関係) 労務提供 使用者 労働者 ☆ 正社員、契約社員、パートタイム労働者、アルバイト、派遣労働者、嘱託など、どのような働き 方でも、雇われて働いていれば、労働契約が結ばれている。 ☆ 労働者保護法規が適用される労働者のポイントは、「○相手方の指揮・監督に従って労務を提供し ているという使用従属関係があり、かつ、○労務の対価としての賃金が支払われている」者かどうか.。3 労働条件が決まるしくみ
1 労働契約(労働者と使用者との個別の契約)で労働条件が決まる場合
労働契約の締結に際し、使用者は労働条件を労働者に明示しなければならない。特に、重要な労働条 件は書面を交付して明示しなければならない【労働基準法第 15 条、労働基準法施行規則第 5 条】。 パートタイム労働者には、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」も書面の交付等により明示 しなければならない【パートタイム労働法第 6 条】。 有期労働契約では、“更新の有無”と“更新する場合・しない場合の判断基準”について書面を交付し て明示しなければならない【労働基準法第 15 条、労働基準法施行規則第 5 条】。 派遣労働者には、派遣元がその就業条件を書面の交付等により明示しなければならない【労働者派遣 法第 34 条】。 使用者は、労働者が労働条件の理解を深めるようにし、また、労働者と使用者は、労働契約の内容に ついて、できる限り書面により確認することとされている【労働契約法第 4 条】。2 就業規則で労働条件が決まる場合
多くの労働者が働く企業・事業所における統一的な労働条件と労働者が守るべき服務規律等を定めた ルール.ブックが就業規則。 特に、労働組合との労働協約がない職場では、合理的な内容からなる就業規則が労働者の労働契約の 内容となり、使用者、労働者ともに拘束される。 事業所で常時 10 人以上の労働者を使用する使用者は、その事業所における就業規則を作成し、労働基 準監督署に届け出て、労働者に内容を周知しなければならない[※](規則の内容を変更する場合も同じ) 【労働基準法第 89 条・第 90 条・第 106 条】。 賃金規程、旅費規程、育児休業規程、慶弔見舞金規程なども就業規則に含まれる。 [※] ①常時見やすい場所に掲示・備付、②書面で交付、③磁気ディスク等への記録と常時確認できる機器の設置、 のいずれかが義務付けられている。 正社員だけではなく、契約社員、パートタイム労働者、アルバイト、出向社員などの雇用形態が異な る労働者についても、それぞれに適用される就業規則が必要。 労働契約を締結するとき、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させ ていた場合には、労働契約の内容は、それに定める労働条件による。ただし、労働契約において、そ の内容と異なる労働条件を合意していた部分についてはこの限りではない【労働契約法第 7 条】。 就業規則に定める労働条件は、労働契約よりも優先する【労働基準法第 93 条、労働契約法第 12 条】。3 労働協約で労働条件が決まる場合
労働協約は、労働組合と使用者が団体交渉の中で組合員の労働条件等について合意した事項を文書化 し、双方の代表者が署名または記名押印したもの【労働組合法第 14 条】。 労働協約の内容は、個々の労働契約や就業規則よりも優先する【労働基準法第 92 条】。4 最低の労働条件は法律で決まっている
労働条件の最低基準は法律で決まっている。法律の内容を下回るものは、労使の合意であっても無効。 期間に定めがあることによる不合理な労働条件の相違は禁止。【労働契約法第 20 条】 賃金や労働時間等の狭義の労働条件だけでなく、災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生 など、労働者の待遇一切が含まれる。 特に、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて相違させることは、特段の理由がない限り、合 理的とは認められないと解されている。5 労働条件の変更について
労働契約の内容である労働条件は、契約当事者である労働者と使用者との合意がなければ変更できな いことが法の原則【労働契約法第 8 条】。 就業規則による労働条件の変更については、合意を原則として例外規定が定められている。 【労働契約法第 9 条・第 10 条】
労働協約による労働条件の変更については、原則として、その規範的効力により可能である。4 法律で定められている最低の労働条件とは
たとえば、 ★ 最低賃金【労働基準法第 28 条、最低賃金法】 ○「大阪府最低賃金(地域別最低賃金):時間額 838 円(H26.10.5 より)」。 ○「特定最低賃金(産業別最低賃金)」もある。但し、減額特例、適用除外(産業別最低賃金)あり。 ★ 賃金支払の原則【労働基準法第 24 条】 賃金支払の 5 原則 ○ 通貨払いの原則=現金で支払わなければならない(例外あり)。 ○ 直接払いの原則=働いた本人に直接支払わなければならない。 ○ 全額払いの原則=賃金はその全額を支払わなければならない。 ○ 毎月払いの原則=毎月1回以上支払わなければならない。 ○ 一定期日払いの原則=決められた日に支払わなければならない。 ★ 労働時間、休日・休暇 ○ 労働時間は、「1 日 8 時間・1 週 40 時間」が原則【労働基準法第 32 条】。 変形労働時間制・みなし労働時間制・裁量労働制などの例外や【労働基準法第 32 条の 2~5、第 38 条 2~4】、管理監督者・監視断続労働などの適用除外【労働基準法第 41 条】がある。 ○ 「1 日 8 時間・1 週 40 時間」を超えて労働させる場合は、労働者の過半数を組織する労働組合 または労働者の過半数代表と協定(三六協定)を結び、労働基準監督署に届け出ることが必要【労 働基準法第 36 条】。 ○ 「1 日 8 時間・1 週 40 時間」を超えた労働に対して割増賃金(残業代)を支払わなければなら ない【労働基準法第 37 条】。変形労働時間制の場合は、週 40(44)時間を超えた場合。 ☆ 労働条件決定の規範の序列 =法令(強行法規)>労働協約>就業規則>労働契約(個別の合意内容)ればならない【労働基準法第 34 条】。 ○ 休日は、少なくとも週 1 日、もしくは 4 週間を通じて 4 日以上与えなければならない【労働基準 法第 35 条】。(法定)休日労働に対しても割増賃金を支払わなければならない【労働基準法第 37 条】。 ○ 働き始めてから 6 ヵ月以上勤務し、その間の所定労働日数の 80%以上出勤した労働者には、“年 次有給休暇(給料が保障される休暇)”が法律で与えられる【労働基準法第 39 条】。 ★ 制裁規定の制限【労働基準法第 91 条】 就業規則で労働者に減給の制裁を定める場合、その減給は、1 回の額が平均賃金の 1 日分の半額を超 え、総額が一賃金支払期における賃金総額の 10 分の 1 を超えてはならない。 ★ 休業補償【労働基準法第 26 条】 使用者の責めに帰すべき事由(使用者側の都合)により労働者を休業させたときは、当該所定労働日 について、平均賃金の 6 割以上の手当(休業手当)を支払わなければならない。使用者の責めに帰すべ き事由とは、使用者の故意、過失または信義則上これと同視すべきものよりも広く、経営上の障害も天災 事変などの不可抗力に該当しないかぎりは含まれる。 ★ 賠償予定の禁止【労働基準法第 16 条】 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならな い。 ≪働く女性の労働基準≫ ★ 産前産後休業【労働基準法第 65 条】 6 週間(多胎妊娠の場合は 14 週間)以内に出産予定の女性が休業を請求した場合、就業させてはな らない。また、妊娠中の女性が請求した場合は、他の軽易な業務に転換させなければならない。産後 8 週間を経過しない女性を就業させてはならない(産後 6 週間を経た女性については例外あり)。 ★ 妊産婦の労働時間【労働基準法第 66 条】 変形労働時間制がとられていても、妊産婦が請求した場合は法定労働時間を超えて労働させることはで きない。また、妊産婦が請求した場合、時間外・休日労働・深夜労働をさせてはならない。 ★ 育児時間【労働基準法第 67 条】 生後満 1 年に達しない生児を育てる女性から請求があった場合には、休憩時間のほかに、1 日 2 回そ れぞれ少なくても 30 分の生児を育てる時間を与えなければならない。
5 労働契約が終わるしくみ
1 辞職(契約期間中に労働者から一方的に辞めること)
憲法で定められた職業選択の自由【憲法第 22 条】から、労働者には退職の自由が保障されている。 契約期間に定めがない場合、原則として、「退職する」と申し出てから 2 週間で退職が成立する【民法 第 627 条第 1 項】。2 週間以内でも使用者が合意すれば退職することができる。 有期労働契約の場合、期間の途中でもやむを得ない事由があればただちに退職することができる。や むを得ない事由なく一方的に辞めた場合は、使用者が受けた損害について賠償責任を負う可能性があ る【民法第 628 条】。期間の途中でも使用者が合意すれば退職することができる。 契約期間の有無にかかわらず、入社する前に約束された労働条件と実際の労働条件が違っていた場合 には、いつでも退職することができる【労働基準法第 15 条第 2 項】。
2 解雇(契約期間中に使用者から一方的に辞めさせること)
仕事でのケガ・病気による休業期間、産前産後の休業期間など、一定の状況での解雇が法律で禁止さ れている【労働基準法、労働組合法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法など】。 解雇するには、客観的に合理的で社会通念上相当であると認められる理由が必要(→認められない解 雇は無効)【労働契約法第 16 条】。 有期労働契約期間中の解雇は、やむを得ない事由がなければできない【労働契約法第 17 条】。それが 使用者の過失であれは、労働者が被る損害を賠償する責任が生じる【民法第 628 条】。 解雇する場合、少なくとも 30 日以上前に予告するか、しない場合は 30 日分以上の平均賃金を解雇予 告手当として支払わなければならない(適用除外あり)【労働基準法第 20 条・第 21 条】。 試用期間中でも、14 日を超えて引き続き使用している労働者を解雇する場合は、解雇予告または解雇 予告手当が必要【労働基準法第 20 条・第 21 条】。また、試用期間中の解雇は、試用期間後よりも広い 範囲で解雇の自由が認められているが、客観的で合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められな い場合には、無効【労働契約法第 16 条】。3 期間満了、雇止め
有期労働契約の場合、当該期間が満了すれば労働契約が終了することが原則(「期間満了」)。 有期労働契約の更新が繰り返され、一定期間にわたり雇用が継続されたにもかかわらず、契約期間の満 了に伴い、使用者が労働者に労働契約の更新を拒絶することがある(「雇止め」)。 「雇止め」の場合、★恒常的な業務内容に従事し、形式的な手続きのみで繰り返し契約が更新され、 有期労働契約が無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、または、★契約期間終 了後の雇用の継続について合理的な期待が認められる場合、当該雇止めに客観的に合理的な理由がな く社会通念上相当であると認められないときは、当該契約が更新(締結)されたものとみなされる【労 働契約法第 19 条】。 あらかじめ当該有期労働契約を更新しない旨が明示されておらず 1 年を超えて継続して雇用してい る労働者、契約を 3 回以上更新している労働者、1 年を超える期間を契約している労働者を「雇止め」 する場合には、少なくとも当該契約の期間が満了する 30 日前までに予告をしなければならない【有 期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準】。4 合意解約(労働者と使用者とが辞めることに合意すること)
労働者が「辞めさせてください」とお願いし、使用者が「わかりました」と合意する。 使用者が「辞めてくれ」とお願いし(退職を勧めて)、労働者が「わかりました」と合意する。 使用者からの「辞めて欲しい」「辞めてくれ」は、退職勧奨。 合意するかどうかは労働者の自由。受け入れなければなら★ 退職勧奨の手段・方法が社会通念上の相当性を欠く場合は、行為そのものが不法行為(違法な退職強要)と して、損害賠償請求の対象となり得る。 ★ 希望退職の募集も基本的には、退職勧奨。