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Ⅱ. 本改正案の内容 FINANCIAL REGULATION BULLETIN 1. 特定取引 に関する改正 (1) 取引時確認が不要となる取引現施行令及び現規則 3 は 日本銀行において振替決済される取引や 国や地方公共団体への金品の納付等の取引等を 犯罪による収益の移転に利用されるおそれがない

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森・濱田松本法律事務所 弁護士 江平 享 TEL. 03 5220 1820 akira.ehira@mhmjapan.com 弁護士 白根 央 TEL. 03 6226 8917 hiroshi.shirane@mhmjapan.com 2015 年 7 月号

改正犯罪収益移転防止法施行令案等の公表について

Ⅰ.はじめに Ⅱ.本改正案の内容 Ⅲ.おわりに

Ⅰ.はじめに

警察庁等は、平成27 年 6 月 19 日、「犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部 を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案」(当該政令案により改 正される犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令(平成20 年第 20 号)を「改正 施行令案」という)及び「犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法 律施行規則の一部を改正する命令案(仮称)」(以下「改正規則案」といい、改正施行令 案及び改正規則案を総称して「本改正案」という)を公表し、パブリックコメント手続 (平成27 年 7 月 18 日まで)を開始した。 本改正案は、平成26 年 11 月 27 日に公布された「犯罪による収益の移転防止に関す る法律の一部を改正する法律」(以下「改正犯収法」という)において委任されていた 事項に関する規定の新設に加えて、FATF(Financial Action Task Force on Money Laundering:金融活動作業部会)の第 3 次対日相互審査での指摘事項1に関する是正事 項やFATF 第 4 次勧告2への対応事項などその改正内容は多岐に亘っている。前回の犯 罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯収法」という)の改正が施行されてか ら約2 年 3 か月が経過したところではあるが、金融機関においては、再度取引時確認や 疑わしい取引の届出の手続の見直し、継続的顧客管理のための態勢整備等の検討が必要 になる。 そこで、本稿では、本改正案の主な内容につき解説を行い、改正対応に向けた準備の 参考に供したい。なお、警察庁は、本改正案の公表と同時に、「犯罪収益移転危険度調 査書(案)」についても公表しているので、本稿でも適宜言及する。 1 http://www.mof.go.jp/international_policy/convention/fatf/fatfhoudou_201030.htm 2 http://www.mof.go.jp/international_policy/convention/fatf/fatf-40_240216.htm

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Ⅱ.本改正案の内容

1.「特定取引」に関する改正

(1) 取引時確認が不要となる取引 現施行令及び現規則3は、日本銀行において振替決済される取引や、国や地方公共 団体への金品の納付等の取引等を、犯罪による収益の移転に利用されるおそれがな い取引として特定取引から除外し、取引時確認を不要としている(現施行令7 条 1 項、現規則4 条各号)。 本改正案では、犯罪収益移転危険度調査書記載の取引の危険性の程度を勘案して 「簡素な顧客管理を行うことが許容される取引」を定めることとされ、従前の取引 に加えて、犯罪収益移転危険度調査書(案)で危険度が低いとされた以下の取引が 新たに特定取引から除外され、取引時確認が不要とされている(改正施行令案7 条 1 項括弧書、改正規則案 4 条 1 項 7 号ハ、ニ)。 新たに取引時確認が不要とされた取引 a 一般電気事業者、一般ガス事業者又は水道事業者等への電気、ガス又は水道水の 料金の支払に係るもの b 小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学又は高等専門学 校に対する入学金、授業料その他これに類するものの支払に係るもの (2) 新たに取引時確認が必要となる取引 本改正案では、①疑わしい取引、②同種の取引の態様と著しく異なる態様で行わ れる取引が特定取引として追加されている(改正施行令案7 条 1 項、同 9 条 1 項、 改正規則案5 条各号)。このため、①②の取引については、改正施行令案 7 条 1 項に 列挙される取引(対象取引)でない場合であっても、取引時確認を行う必要があり、 顧客等が取引時確認済みの場合であっても、確認済みの確認により取引時確認を省 略することはできず、再度の取引時確認を行わなければならない点に注意が必要で ある(改正施行令案13 条 2 項括弧書、改正規則案 17 条)。 また、敷居値を下回る取引については、金融庁ガイドライン(平成24 年 10 月金 融庁「犯罪収益移転防止法に関する留意事項について」)において、「特定取引に当 たらない取引についても、例えば敷居値を若干下回るなどの取引は、当該取引がマ ネー・ローンダリング等に利用されるおそれがあることを踏まえ、十分に注意を払 うこと」とされていたが、改正施行令案では、同一の顧客等との間で、二以上の取 引を同時に又は連続して行う場合において、当該二以上の取引が1 回当たりの取引 の金額等を減少させるために一の取引を分割したものであることが一見して明らか なものであるときは、当該二以上の取引を一の取引とみなして、取引時確認の対象 とされており(改正施行令案7 条 3 項、同 9 条 2 項)、「一見して明らかなもの」に 3 本稿では、本日時点における、犯収法を「現犯収法」、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令 を「現施行令」、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則を「現規則」と、それぞれいう。

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ついては法令上の義務に格上げされている点に注意が必要である。 なお、上記1.(2)の敷居値を下回る取引のうち、施行日前に行われた取引について は、経過措置において、取引時確認の対象外とされている。 新たに取引時確認が必要となる取引 a 疑わしい取引 b 同種の取引の態様と著しく異なる態様で行われる取引 c 同一の顧客等との間で、二以上の取引を同時に又は連続して行う場合において、 当該二以上の取引が1 回当たりの取引の金額等を減少させるために一の取引を分 割したものであることが一見して明らかな取引

2.ハイリスク取引の追加

現犯収法は、取引相手がなりすましや確認事項につき偽りの疑いがある場合、イラ ン・北朝鮮に居住又は所在する場合をハイリスク取引として厳格な確認の対象として いるが、本改正案では、顧客等が、①以下の「外国政府等において重要な地位を占め る者」(PEPs)である場合、②①に掲げる者の家族(配偶者(婚姻の届出をしていな いが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)、父母、子及び兄弟姉妹、これ らの者以外の配偶者の父母及び子をいう)である場合、③①又は②に掲げる者が実質 的支配者である法人である場合の取引が、新たにハイリスク取引として追加され、厳 格な取引時確認の対象とされている(改正施行令案12 条 3 項、改正規則案 15 条)。 このように、本改正案は、FATF 勧告や対日相互審査の指摘において、PEPs の取 扱いにつき、通常よりも厳格な顧客管理が求められていたことを踏まえ、新たに海外 PEPs との取引をハイリスク取引として追加している。他方、本改正案ではいわゆる 国内PEPs についてはハイリスク取引としては追加されていないが、FATF 勧告では、 国内PEPs についても厳格な顧客管理が求められているところであるため、将来的に は、更なる改正がなされる可能性もある。 「外国政府等において重要な地位を占める者」 a 我が国における内閣総理大臣その他の国務大臣及び副大臣に相当する職 b 我が国における衆議院議長、衆議院副議長、参議院議長又は参議院副議長に相当 する職 c 我が国における最高裁判所の裁判官に相当する職 d 我が国における特命全権大使、特命全権公使、特派大使、政府代表又は全権委員 に相当する職 e 我が国における統合幕僚長、統合幕僚副長、陸上幕僚長、陸上幕僚副長、海上幕 僚長、海上幕僚副長、航空幕僚長又は航空幕僚副長に相当する職 f 中央銀行の役員 g 予算について国会の議決を経、又は承認を受けなければならない法人の役員

3.顔写真のない本人確認書類を用いた本人確認方法の厳格化

現規則でも、印鑑登録証明書や住民票の写しなど、一定の本人確認書類については、

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提示を受けるのみでは証明力が不足しているため、本人確認書類に記載されている住 居に宛てて取引関係文書を転送不要郵便物等として送付することが義務付けられて いるが、本改正案では、健康保険証や年金手帳等、他の顔写真のない本人確認書類(改 正規則案7 条第 1 号ハに掲げる書類)の提示を受けることにより顧客等の本人特定事 項を確認する場合についても、追加的な補完措置をとることとされている。他方、当 該補完措置については、取引関係文書を転送不要郵便物等として送付する方法だけで はなく、以下のいずれかの方法によることが認められている(改正規則案6 条 1 項)。 各金融機関においては、自然人に関する本人確認書類の取扱いについて、本改正案 を踏まえた事務マニュアル等の改訂が必要になろう。 追加的な確認措置 a 顧客等の住居に宛てて、取引関係文書を転送不要郵便物等として送付すること b 他の本人確認書類又は顧客等の現在の住居の記載がある納税証明書や公共料金 の領収証書等(以下「補完書類」という)の提示を受けること c 当該本人確認書類以外の本人確認書類若しくは補完書類又はそれらの写しの送 付を受けて、確認記録に添付すること

4.実質的支配者に関する改正

(1) 実質的支配者の範囲の変更 法人との間で特定取引を行うに際して確認を要する法人の実質的支配者について、 その範囲が変更されている(改正規則案11 条 2 項)。現規則は、株式会社等の資本 多数決法人の実質的支配者については、当該多数決法人の議決権を直接保有する者 が対象とされ、議決権の25%超を保有する者が法人である場合には、当該法人の本 人特定事項を確認すれば足りるが、改正規則案では、以下の分類に応じて、原則と して自然人まで遡って確認をすることが義務付けられている。 但し、国や地方公共団体、上場会社など「国等」(現犯収法4 条 5 項)に当たる法 人及びその子会社は、自然人とみなし(改正規則案11 条 4 項)、国等やその子会社 が議決権の25%超を保有する場合には当該国等を確認することとされている。 我が国において、法人が自身の実質的支配者を把握するための制度がないことか ら、実質的支配者について自然人まで遡った確認を行うことを義務付けるに当たっ ては、法人の実質的支配者を明らかにする仕組みを作るとともに、その仕組みを事 業者が利用可能にすることが必要になることが指摘されていたところではあるが4、 本改正案では、その点について特段の手当はされていない。ハイリスク取引以外の 場合の実質的支配者の確認方法は、現規則同様顧客等の代表者等からの申告を受け る方法とされているが(改正規則案11 条 1 項)、顧客等である法人において、申告 に当たって実質的支配者をどのように確認すべきかについては、今後のパブリック コメント等の動向を注視する必要がある。 4 マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会「マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会報告 書」(平成26 年 7 月 17 日)3(2)ウ・8 頁

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現規則 改正規則案 a 資本多数決 法人 ①議決権の総数の 50%超の議 決権を有している者 ①議決権の総数の50%を超える 議決権を直接又は間接に有し ていると認められる自然人 ②①がいない場合、議決権の総 数の 25%超の議決権を有し ている者 ②①がいない場合、議決権の総 数の25%を超える議決権を直 接又は間接に有していると認 められる自然人 ③①②がいない場合、出資、融 資、取引その他の関係を通じ て当該法人の事業活動に支配 的な影響力を有すると認めら れる自然人 b 資本多数決 法 人 以外 の 法人 ③法人を代表する権限を有して いる者 ④当該法人の事業から生ずる収 益若しくは当該事業に係る財 産の総額の4 分の 1 を超える 収益の配当若しくは財産の分 配を受ける権利を有している と 認 め ら れ る 自 然 人 又 は 出 資、融資、取引その他の関係 を通じて当該法人の事業活動 に支配的な影響力を有してい ると認められる自然人 c 上記 a、b に 挙 げ る自 然 人 が いな い 法人 ⑤当該法人を代表し、その業務 を執行する自然人 (2) ハイリスク取引に際して行う実質的支配者の確認方法の変更 現規則では、法人との間でハイリスク取引を行う場合、実質的支配者の有無につ いて株主名簿や有価証券報告書等の書類による確認が義務付けられているのに加え て、実質的支配者がいる場合その者の本人特定事項についても本人確認書類により 確認を行うことが義務付けられている(現規則13 条 3 項)。これに対し、改正規則 案では、①資本多数決法人については株主名簿や有価証券報告書等の議決権の保有 状況を示す書類を、資本多数決法人以外の法人については登記事項証明書等代表権 を示す書類を確認し、かつ、②顧客等の代表者等から申告を受ける方法で足りるこ ととされ、実質的支配者の本人確認書類による確認は不要とされている(改正規則 案14 条 3 項)。 株主名簿や有価証券報告書等の書類のみでは自然人まで遡った実質的支配者の確 認は困難な場合も予想され、そのような場合には、ハイリスク取引以外の取引の場 合と同様、顧客等の代表者等からの申告に依存することになる。 (3) 経過措置 施行日前に取引時確認を行っている法人との間で、施行日以後に初めて行う特定 取引(以下「施行日以後特定取引」という)に際しては、いわゆる確認済みの確認

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(改正犯収法4 条 3 項)を行うだけでは不十分であり、原則として、実質的支配者 の本人特定事項の確認を行わなければならないこととされている。このため、既存 の顧客等についても、実質的支配者の確認が必要となる点には注意が必要である5 但し、①施行日以後特定取引が、施行日前の取引に関連する取引(施行日前の取 引が契約の締結である場合における当該契約に基づくものをいう)である場合にお ける当該特定取引、及び、②特定事業者が施行日以後にハイリスク取引に際して厳 格な取引時確認を行っている顧客等との間で行う特定取引については、確認済みの 確認で足りることとされている。 また、ハイリスク取引以外の取引において、改正規則案により実質的支配者に該 当する者が、現規則に規定する実質的支配者に該当し、かつ、施行日前に本人特定 事項の確認を行っている場合についても、確認済みの確認で足りることとされてい る。

5.代表者等の確認に関する改正

自然人である顧客の代理人や法人の取引担当者など、特定取引等の任に当たってい る代表者等(現犯収法4 条 6 項)については、顧客等のために特定取引等の任に当た っていると認められる理由を確認することが必要である(現規則11 条 4 項)。 改正規則案では、法人の代表者等について現規則が認めている理由のうち、代表者 等が顧客等の発行した身分証明書等(社員証など)を有していることが削除され(現 規則11 条 4 項 2 号ロ)、また、当該代表者等が当該顧客等の役員として登記されてい ることについては、当該法人を代表する権限を有する役員として登記されている場合 に限定することとされている(改正規則案12 条)。 社員証等により確認することが認められなくなったのは、社員証等を所持している ことは単にその会社等に属していることを証明するものに過ぎず、代理権などの権限 を与えられていることの確認方法としては不適当であるとのFATF の指摘に対応する ものであるが6、かかる趣旨に鑑みると、改正規則案においても現規則同様に認めら れている電話等により確認を行う場合(現規則11 条 4 項 2 号ニ)、単に顧客等の従業 員であることを確認するのみでは確認方法として不十分とされる可能性があろう。こ のため、現規則と同様の方法により取引担当者の代理権限を確認する場合であっても、 具体的にどのような内容を確認するかを見直すことも検討が必要であろう。 現規則 改正規則案 a 代表者等が委任状等の特定取引等の任に当たっていること を証する書面を有していること 現規則と同じ 5 なお、改正規則案 13 条 1 項各号に掲げる方法(銀行又はクレジットカード事業者が行っている確認を 利用する形での確認方法等)により取引時確認を行う場合についても、特定事業者が改正犯収法4 条 1 項各号に掲げる事項の全ての確認を既に行っているときを除き、実質的支配者の本人特定事項等、追加 的に必要な事項の確認を行わなければならないこととされている。 6 マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会「マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会報告 書」3(2)イ・7 頁

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b 代表者等が、顧客等が発行した身分証明書等の書面を有し ていること (削除) c 代表者等が顧客等の役員として登記されていること 代表権を有する役 員に限る d 本店等への電話等の方法により代表者等が顧客等のために 特定取引等の任に当たっていることが確認できること 現規則と同じ e 顧客等と代表者等との関係を認識している等、代表者等が 当該顧客等のために当該特定取引等の任に当たっているこ とが明らかであること 現規則と同じ

6.疑わしい取引の届出に関する改正

改正犯収法は、特定事業者が疑わしい取引に当たるかどうかの判断を行うに当たっ ての確認項目及び疑わしい点があるかどうかを確認する方法について、主務省令で定 めることとしている(改正犯収法8 条 2 項)。改正規則案では、これらについて以下 のとおり規定されている(改正規則案26 条、27 条)。 現犯収法では、疑わしい取引の判断方法について具体的な基準は定められていない ため、金融機関においでは、金融庁が公表している「疑わしい取引の参考事例」7等 を参考にしつつ、各々疑わしい取引の抽出を行うための基準や仕組みを構築していた ところである。このため、改正規則案で掲げられている基準に、現在の基準や仕組み が適合しているといえるかの検証が必要になる。 なお、本改正規則案による改正に伴い、疑わしい取引の届出様式も改正されている (別紙様式第1 号~第 5 号)。 疑わしい取引該当性判断における確認項目 a 特定事業者が他の顧客等との間で通常行う特定業務に係る取引の態様との比較 b 特定事業者が当該顧客等との間で行った他の特定業務に係る取引の態様との比 較 c 取引の態様、取引時確認の結果その他特定事業者が取引時確認の結果に関して有 する情報との整合性 取引に疑わしい点があるかどうかを確認する方法 a 下記 b 及び c 以外の取引 上記の「疑わしい取引該当性判断における確認項 目」の項目に従って当該取引に疑わしい点があるか どうかを確認する方法 b 既存顧客との間の取引(下 記c の取引を除く) 当該顧客等の確認記録、当該顧客等に係る取引記録 等の情報を精査し、かつ、上記の「疑わしい取引該 当性判断における確認項目」の項目に従って当該取 引に疑わしい点があるかどうかを確認する方法 c ①ハイリスク取引、②疑わ しい取引、③同種の取引の 態様と著しく異なる態様で 行われる取引、④①~③以 外のもので犯罪収益移転危 険度調査書の内容を勘案し a の方法(既存顧客との間で行った取引にあっては b の方法)及び顧客等又は代表者等に対する質問そ の他の必要な調査を行った上で、統括管理者(改正 犯収法11 条 3 号)又はこれに相当する者に当該取 引に疑わしい点があるかどうかを確認させる方法 7 http://www.fsa.go.jp/str/jirei/

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てマネー・ローンダリング の危険性の程度が高いと認 められるもの

7.コルレス先との契約締結の際の確認義務

改正犯収法は、外国所在為替取引業者(外国に所在して業として為替取引を行う者 をいい、以下「コルレス先」という)との間で、為替取引を継続的に又は反復して行 うことを内容とする契約(以下「コルレス契約」という)を締結するに際しては、① コルレス先が取引時確認、確認記録の作成、取引記録の作成、疑わしい取引の届出及 び外国為替取引に係る通知に相当する措置(以下「取引時確認等相当措置」)を的確 に行うために必要な体制を整備していること、②コルレス先が業として為替取引を行 う者であって監督を受けている状態にないものとの間でコルレス契約を締結してい ないことを確認することを義務付け、具体的方法については主務省令で定めることと している(改正犯収法9 条)。改正規則案では、①②を確認する方法と、①の取引時 確認等相当措置を的確に行うために必要な基準について以下のとおり規定されてい る(改正規則案28 条、29 条)。 改正犯収法9 条は、コルレス契約締結に当たっての態勢整備について強制力のある 法令に明記すべきというFATF の指摘を踏まえ、現在、現規則 25 条において努力義 務として規定され、監督指針において具体的内容が示されている事項8の一部を法令 上の義務として格上げしたものであるが、本改正案においては、より具体的な確認方 法やその基準について更に規定されている。 コルレス先との契約締結に際して行う確認の方法 a コルレス先から申告を受ける方法 b コルレス先又は改正犯収法 22 条 1 項及び 2 項に規定する行政庁に相当する外国 の機関によりインターネットを利用して公衆の閲覧に供されている当該コルレ ス先に係る情報を閲覧して確認する方法 取引時確認等相当措置を的確に行うために必要な基準 a コルレス先が、取引時確認等相当措置を的確に行うために必要な営業所その他の 施設及び取引時確認等相当措置の実施を統括管理する者を当該コルレス先の所 在する国に置き、かつ、取引時確認等相当措置の実施に関し、改正犯収法 15 条 から18 条までに規定する行政庁の職務に相当する職務を行う当該国の機関の適 切な監督を受けている状態にあること。 b コルレス先が、当該施設及び当該統括管理する者を当該国以外の外国に置き、か つ、取引時確認等相当措置の実施に関し、改正犯収法15 条から 18 条までに規定 する行政庁の職務に相当する職務を行う当該外国の機関の適切な監督を受けて いる状態にあること。 8 主要行等向けの総合的な監督指針 III-3-1-3-1-2(1)②、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針 II-3-1-3-1-2(1)②、事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)14.資金移動業者関係 I-2-1-2-1(1)②等

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8.継続的顧客管理のための態勢整備義務

改正犯収法は、継続的顧客管理を行う方法として、現行犯収法で例示されている① 使用人に対する教育訓練の実施に加えて、新たに、②取引時確認等の措置の実施に関 する規程の作成、③業務統括管理者の選任、④主務省令で定める措置を追加している (改正犯収法11 条各号)。改正規則案では、「犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘 案して講ずべき措置」として、特定事業者の営む事業に応じて、以下の措置が掲げら れている(改正規則案32 条)。 改正犯収法11 条は、継続的顧客管理を行う方法の態勢整備について強制力のある 法令に明記すべきというFATF の指摘を受け、現在監督指針において示されている基 準9と同様の内容を、業態を問わない法令上の努力義務として規定したものであるが、 本改正案においては、犯罪収益移転危険度調査書(案)の内容を踏まえ、更に態勢整 備についての具体的基準が定められている点に注意が必要である。現在の監督指針と 同じ内容も含まれるものの、各社の現在の管理態勢が改正案の基準を満たすか確認が 必要となる。 弁護士又は弁護士法人以外の特定事業者が講ずべき措置 a 自らが行う取引(新たな技術を活用して行う取引等を含む。)について調査し、 及び分析し、並びに当該取引によるマネー・ローンダリングの危険性の程度その 他の調査及び分析の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(以下「特 定事業者作成書面等」という)を作成し、必要に応じて、見直しを行い、必要な 変更を加えること。 b 特定事業者作成書面等の内容を勘案し、取引時確認等の措置を行うに際して必要 な情報を収集するとともに、当該情報を整理し、及び分析すること。 c 特定事業者作成書面等の内容を勘案し、確認記録及び取引記録等を継続的に精査 すること。 d ①ハイリスク取引、②疑わしい取引、③同種の取引の態様と著しく異なる態様で 行われる取引、④①~③以外のもので犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案し てマネー・ローンダリングの危険性の程度が高いと認められる取引を行うに際し て、当該取引の任に当たっている職員に当該取引を行うことについて統括管理者 の承認を受けさせること。 e 上記 d の取引について、情報の収集、整理及び分析を行ったときは、その結果を 記載し、又は記録した書面又は電磁的記録を作成し、確認記録又は取引記録等と 共に保存すること。 f 取引時確認等の措置の的確な実施のために必要な能力を有する者を特定業務に従 事する職員として採用するために必要な措置を講ずること。 g 取引時確認等の措置の的確な実施のために必要な監査を実施すること。 国内に事業所等を有し金融業務を営む特定事業者10が講ずべき措置 a 外国会社及び外国所在営業所における犯罪による収益の移転防止に必要な注意 を払うとともに、当該外国の法令に違反しない限りにおいて、外国会社及び外国 所在営業所による取引時確認等の措置に準じた措置の実施を確保すること。 9 主要行等向けの総合的な監督指針 III-3-1-3-1-2(1)、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針 II-3-1-3-1-2(1)等 10 改正犯収法 2 条 2 項 1 号から 38 号までに掲げる特定事業者(国内に本店又は主たる営業所若しくは 事業所を有するものに限る。)

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b 当該外国において、取引時確認等の措置に準じた措置を講ずることが当該外国の 法令により禁止されているため当該措置を講ずることができないときにあって は、その旨を行政庁に通知すること。 特定金融機関11がコルレス先とコルレス契約を締結する場合に講ずべき措置 a コルレス先におけるマネー・ローンダリング防止態勢に係る態勢整備の状況、コ ルレス先の営業の実態及び外国の機関がコルレス先に対して行う監督の実態に ついて情報を収集すること。 b 上記 a により収集した情報に基づき、当該コルレス先のマネー・ローンダリング 防止態勢を評価すること。 c 統括管理者又は統括管理者が指定する者の承認その他の契約の締結に係る審査 の手順を定めた規程を作成すること。 d 特定金融機関が行う取引時確認等の措置及びコルレス先が行う取引時確認等相 当措置の実施に係る責任に関する事項を文書その他の方法により明確にするこ と。

9.マイナンバー法等の施行に伴う改正

いわゆるマイナンバー法12の整備法13の施行に伴い、公的個人認証法14が改正され、 署名用電子証明書の利用範囲が拡大されることから、犯収法上の本人特定事項の確認 方法としても、新たに署名用電子証明書を用いる方法が追加されている(改正規則案 6 条 1 項 1 号チ)。 また、マイナンバー法の施行に伴い、住民基本台帳カードが廃止され、新たに個人 番号カードが作成されることから(マイナンバー法17 条)、改正規則案では、犯収法 上の本人確認書類について、住民基本台帳カードが削除される15一方で、新たに個人 番号カードが規定されている(改正規則案7 条 1 号イ)。

10.施行予定日

本改正案の施行日は平成28 年 10 月 1 日とされている。 但し、マイナンバー法の施行に伴う所要の改正については、マイナンバー法の施行 日(平成28 年 1 月 1 日)が施行日とされている。

Ⅲ.おわりに

本改正案については、平成27 年 7 月 18 日にパブリックコメント期間が終了し、 11 改正犯収法 2 条 2 項 1 号から 15 号、30 号に掲げる特定事業者 12 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成 25 年法律第 27 号) 13 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整 備等に関する法律(平成25 年法律第 28 号) 14 電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律。なお、マイナンバー法の整備法施行後は、電 子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律となる。 15 なお、経過措置により、住民基本台帳カードについては、その有効期限内又は個人番号カードの交付 を受ける時のいずれか早い時までの間は、個人番号カードとみなすこととされているため、本人確認書 類としても利用可能である。

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その後、パブリックコメントの結果として、最終的な改正施行令及び改正施行規則が 公表されることとなる。改正令及び改正規則の施行日は一部を除き平成28 年 10 月 1 日とされていることを踏まえると、改正対応のために残された時間は多くはなく、社 内規程の見直し等の準備を進めておくのが望ましいだろう。 また、施行を平成28 年 1 月 1 日に控えたマイナンバー法においても、個人番号の 取得等に際して本人確認手続が必要になることから、両方の手続を兼ねる形で顧客の 確認を行う場面も生じると思われる。この際には、各法令の手続について遺漏がない よう法令毎に求められる手続の差異等も踏まえ、確認手続を整備することが肝要と思 われる。

文献情報

 論文 「大口信用供与等規制の見直しに関する銀行法施行令、銀行法施行 規則等の改正の概要」 掲載誌 金融法務事情 2016 号 2015 年 4 月 25 日号 著者 矢田 悠 (共著)  本 『続Q&A そこが知りたい これからの金融モニタリング』 2015 年4 月 30 日刊 出版社 株式会社きんざい 著者 江平 享 (編著)、石川 貴教、池田 和世 (著)  論文 「実務相談 銀行法[第 41 回]銀行の業務範囲(17)付随業務⑦」 掲載誌 金融法務事情 2017 号 2015 年 5 月 10 日号 著者 小田 大輔 (共著)  本 『金融商品取引法 資本市場と開示編 〔第 3 版〕』2015 年 7 月刊 出版社 株式会社商事法務 著者 中村 聡、鈴木 克昌、峯岸 健太郎、根本 敏光、齋藤 尚雄 (共著)  論文 「実務相談 銀行法[第 42 回]銀行の機関等(1)銀行の組織・機関、 取締役等の兼職制限など」 掲載誌 金融法務事情 2021 号 2015 年 7 月 10 日号 著者 小田 大輔 (共著)

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 Chambers Asia-Pacific Awards 2015 にて受賞しました

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事務所はJapan National Law Firm of the Year を受賞しました。

 The Sixth Edition of Best Lawyers in Japan にて高い評価を得ました

Best Lawyers(ベスト・ロイヤー)による、The Sixth Edition of Best Lawyers in Japan に当事務所の弁護士57 名が選ばれました。

Financial Institution Regulatory Law 分野においては、松井 秀樹弁護士及び小田 大 輔弁護士が受賞しました。

 ALB Japan Law Awards 2015 にて受賞しました

トムソン・ロイターグループの、国際的法律雑誌であるALB (Asian Legal Business) によるALB Japan Law Awards 2015 において、当事務所は Japanese Deal Firm of the Year と、Regulatory and Compliance Law Firm of the Year を含む、8 カテゴリ ーで受賞しました。

 Financial Times 紙による、Asia-Pacific Innovative Lawyers Report の FT Law 25 Asia-Pacific Headquartered Law Firms にて 3 位に選ばれ、Corporate & Commercial 分野及びFinance 分野にて高い評価を得ました  名古屋オフィス開設のご挨拶 4 月 27 日に発表しましたように、森・濱田松本法律事務所は、名古屋オフィスの 開設を決定いたしました。 名古屋オフィスには、M&A、会社法関連業務、アジア業務、税務等において豊富な 経験を有する小島 義博弁護士に加え、園田 観希央及び村井 智顕弁護士が所属し、 案件に応じて東京オフィス等の弁護士とも共同して、M&A、会社法関連業務、独禁 法、危機対応、アジア業務、知財、ファイナンス、税務等の幅広い分野のリーガル・ ニーズにお応えしてまいります。さらに、クロスボーダーのM&A やアジア業務等 につきましては、国内拠点のみならず、北京、上海、シンガポール、バンコク、ヤ ンゴンを含めた海外の各拠点と連携をとりながら、東海地区のクライアントの皆様 に充実した最先端のリーガル・サービスを提供してまいります。 名古屋オフィスの開設については、2015 年 9 月のスタートを目指しております。 開設日・オフィスの所在地等の詳細が決まりましたら、改めてお知らせいたします。 ※ 名古屋オフィスは、弁護士法人森・濱田松本法律事務所の従事務所として開設 する予定です。 (当事務所に関するお問い合せ) 森・濱田松本法律事務所 広報担当 mhm_info@mhmjapan.com 03-6212-8330

参照

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