• 検索結果がありません。

構造変化を考慮した財政赤字の持続可能性に関する実証分析-香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "構造変化を考慮した財政赤字の持続可能性に関する実証分析-香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
23
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

一召Z−

構造変化を考慮した財政赤字の

 持続可能性に関する実証分析

       平 井 健 之

       工。はじめに  現在,わが国政府の情務残高の対GDP比率は,他の先進諸国に比ぺると突 出して高い水準にある。例えば,0ECDの一股政府ベースのデータで比較する と,G7諸国において,日本は2005年・には170%を超えて最悪の水準とな り る。 2番目に高い水準のイタリアと比較レても50%以上、の差がみられてい このような現状を考慮すると、毎年の財政赤字の累積による政府債務を今 後も長期的に維持できるかどうかは疑問であるといえる。そのため,わが国で は,財政赤宇の持続可能性が深刻な問題となっており,財政の構造改革が急務 とされている。  この財紋赤宇の持続可能性をめぐる実証分析はこれまで諸外国において多数 存在し,異時点間での政府の予算制約を現在価値で評価して,その制約が満た されるかどうかを検定レていると)そこでは,主として2つの分析方法により財

政赤字の持続可能性の検定が1行われている。その1つは,Hamihon and Flavin

(1986)をはじめ,Tlehan and Walsh (1988,1991),Wilcox(1989)等による 研究で,政府の債務残高の時系列データに関する性質に基づくものである。そ してもう1つは,Hakkio and Rush(1991)による分析方法で,政府収入と政

府支出の共和分検定に基づくものである。この一連の諸外国における研究とし て,Haug(1995),Quintos(1995),Payne(1997),Wu(1998),Maltin(2000),

1)諸外国における財政赤字の持続可能性に関する研究の勁向については,Afonso(2005)  を参照されたい。

(2)

−j招一         香川大学経済学部 研究年報 48       2008

Bravo and Silvestl・e(2002),Goya1,Khundrakpam and Ray(2004),Jha and Shalma(2004),Kalyoncu(2005)やBahalumshah and Lau (2007)等が挙げら れる。平井・野村(2004)は,Hakkio and Rush(1991)の方法を適用し,わ が国政府の一般会計を分析対象として,政府収入と政府支出の共和分検定に基 づき財政赤宇の持続可能性を検討した。その結果,政府収入と政府支出の2変 数間では共和分関係は存在しないと判断され,わが国の財政赤字は持続可能と はいえないという結論が得られている。  しかし,財政赤字の持続可能性に関する平井・・野村づ2004)の検定では,構 造変化の存在が考慮されていないという問題がある。ここで,政府収入と政府 支出との関係においては,次のような理由で,構造変化の存在を考慮に入れた

より精緻な検定力法を用いる必要がある。まず第1は,Hakkio and Rush(1991) をはじめとする共和分検定を適用した分析では,政府収入と政府支出の2変数 がともに非定常で1階の和分過程に従うと想定レていることである。ところ が,単位根検定で構造変化を考慮すると,収入と支出の各変数は構造変化を伴 うトレンド定常であるかもしれない。この場合,そのような変数について,定 常となるように1階の階差をとることは適切ではないといえよう。そして第2 は,収入と支出の変数がともに7(1)変数であるとして,2変数間で共和分関 係の存在が棄却されるとき,それには2つの可能性が考えられることである。 その1つは,2変数間で長期的な均衡関係が存在しない場合である。そしても う1つは,共和分関係において構造変化が生じた場合である。Gregoly and Hansen(1996)は,この後者の場合を検討するために,構造変化を考慮した共 和分の検定方法を提案した。例えば,Wu(1998)は,台湾における政府の財 政赤宇について,構造変化を考慮しない従来の共和分検定では持続可能性が支

持されないのに対して,Glegoly and Hansen (1996)の共和分検定を適用する と持続可能であるとの結論を導いている。さらに,財政赤字の持続可能性を分

析レている近年の諧外国の研究として,Goyal,Khundrakpam and Ray (2004), Jha and Shalma (2004),及びBaharumshah and Lau (2007)等も共和分検定に 構造変化を考慮し,Gregory and Hansen (1996)の検定を適用レているS〉  そこで,本稿の目的は,わが国政府の一殺会計を分析対象とし,検定におい

(3)

      構造変化を考慮した財政赤宇の持続可能性に関する実証分析   −j拶−

て構造変化を考慮することにより,財政赤字の持続可能性を再躾討することで ある。そのため,平井・・野村づ2004)での分析期間を延長して1955年度から 2005年・度までのデータを使用するとともに,実証分析では,構造変化を考慮

レて,Wu(1998)や,Jha and Sharma (2004)と同様に,Zivot and Andl・ews (1992) の扉位根検定とGlegoly and Hansen (1996)の共和分検定を適用する。いずれ

の検定も,構造変化の時点を未知として,構造変化時点を内生的に特定できる ような検定方法を提示している。したがって,本樅では,従来の検定方法に加 えて,構造変化を明示的に考慮した上記の検定方法を採用することにより,わ が国の財政赤字の持続可能性について,平井・・野村づ2004ドで導かれた分析結 果が変更されるかどうかを改めて検討する。

 本稿の構成は,以下の通りである。まず第H節では,Hakkio and Rush(1991) に基づき,共和分検定を適用して財政赤字の持続可能性を検定するための理論

的枠絹みを提示する。次に第Ⅲ節では,実証分析の方法と使用するデータを説

明する。ここでは,とりわけ,Zivot and Andlews (1992)とGregoly and Hansen (1996)の検定方法が示される。ぞして,第Ⅳ節では,実証分析の結果につい

て検討する。最後に,第V節で結論を述べる。

      n。分析の理論的枠組み

 本稿の実証分析では,平井・野利(2004)と同様に,財政赤字の持続可能性 について,Hakkio and Rush(1991)による分析力法を適用する。そのため, 本節において,Hakkio and Rush(1991)に基づき,財政赤字の持続可能性を 検定するためのモデルを改めて提示しよう。  いま,f時点における政府の予算制約が,次式で与使られるとする。   G十(1十〇茄ぺ=拓十拓,      (1) W 心 こで,G川ま政府の財・サービス購入と移転支払い(または,債務に対する 2)アメリカ合衆国における政府の財政赤字を分析対象としたQuintos(1995)やMaltin  (2000)はまた,持続可能性,を検討する際に構造変化を考慮することの必要性を強調し  ている。

(4)

−j硲− 香川大学経済学部 研究年報 48 即卵 利払いを除く政府支出),£は政府の租税収入,&は政府債務の残高,そし て£は実質利子率である。この(1)式を前向きに解くと,政府の異時点間の予 算制約式, 瓦 一 -ふ(拓士s一G+s) £Σ ;H;-1(1+6) 十nm  S→○○ £ Btn n隔(1+陥) (2) が得られる。ここで,£は目寺点の情報に基づく期待値オペレータである。 (2)式において,財政赤宇の持続可能性の条件は,無限先の将来における政府債 務残高の割引現在価値がゼロに収束すること,すなわち, 1im瓦 S → ○ ○   R6H≒(1十ら)二〇’ (3) が成立することである。このとき,(2)式は,政府の債務残高が将来にわたる基 礎的財政余剰(plimary sulplus)の割引現在価値の合計に等しいことを意昧す る。

 そこで,Hakkio and Rush(1991)は,このような財政赤字の持続可能性の 条件が満たされるかどうかを,共和分検定を適用して分析している。そのため に,利子率jバこついては,平均ドで定常過程に従うと仮定する。ここで, 瓦=G十肺づ)茄-1とすると,(1)式は,瓦を用いて次式のように示される。 瓦十(1十jl)茄-1=拓十茄 この(4試を(2)式と同様にして解くと, 召 , - ΣOO 扁-ぶ ぷ1(1+暉 十nm 瓦+, に(1十〇" (4) ⑤ が得られる。さらに.GGIを前期末債務残高に対する利払いj,&-1を・含む政府 支出とすると,(5)式は, GG 一 一 ∞ 瓦十Σ △罵−&xj jぶ1(1+げ 十lim △R+ ご(1+i)s' ㈲ に変形される。ここで.GG,=G,十ltBt-1,△は1階の階差演算子である。ま た,変数拓と瓦は非定常であるが,それらの1階の階差変数は定常である と仮定して,拓と瓦が次式で表されるとする。

(5)

構造変化を考慮した財政赤字の持続可能性に関する実証分析 拓=α1十拓.-1十ε1, 瓦=α2十瓦−1十ε2, −jJ− j     j 7     ︵ x ︶ ぐ     ぐ ここで,ε1・とε2,は誤差項であり,変数 ー・とX,はとりわけランダム・ウォ・-ク過程に従うとする。このとき,(6)式は,  GGt=a十瓦+ s l兜てや97ニト十ε”      (9) 1 ・ こ害き換えられる。ただし, α− α1−α2 - 1 ε1 ̄   O O Σ = 1 十 (ε以 ̄ε3メ) 1(1十汗 である。  もし財政赤字が持統可能であるとすれば,㈲式の右辺第3項はゼロとなり, ㈲式は,次式のような回帰式で表すことができる。 拓=α十&GG,十a I ここで,拓とGG,がともに非定常で7(1)過程に従うとすれば,(10)式に基づ いて,財政赤宇の持続可能性の検定は,政府収入瓦,と政府支出GG,が長期的 な均衡関係にあるかどうかを検定することである。そのため,もしこれら2つ の変数間で共和分関係が有在しないならば,財政赤字は持続可能とはいえな い。これに対して,もし/(1)過程に従う2変数,瓦とGGtが共和分関係にあ り,かつ&=1であるときには,Maltin(2000)に従って,強い意昧での持統 可能性づstlong sustainability)が成立するといえる。また,もし拓とGGが共 和分関係にあり,かつOく:&<Pであれば,財政赤字は弱い意昧での持続可能性

(weak sustainability)のみを有するとされている(Quintos,1995 ; Maltin, 2000)。  これより,Hakkio and Rush (1991)をはじめ,Payne(1997),Wu(1998),

Bravo and Silvestle (2002),Kalyoncu(2005)やBahalumshah and Lau (2007) 等の共和分の分析を用いた一連の実証研究では,まず第1に,7(1)過程に従

(6)

−j認− 香川大学経済学部 研究年報 48 2008 和分関係が存在する場合には,み=1であるかどうか,を検定している。        m.実証分析の方法とデータ 1.単位根検定  実証分析の第1殴階として,政府収入瓦と政府支出GGの各変数がともに 八1)変数であるかどうかを検討する。そのために,まず構造変化を考慮しな い通常の単位根検定として,Dickey and Fuller(1979,1981)によるADF (Augmented Dickey-Fuller)検定を適用し,定数項とタイムトレンドを含む場 合と定数項のみを含む場合の2つの回帰式に基づき拓とGGの各変数の単位 根検定を行う。ここで,ADF検定における回帰式の拡張項の次数ゐは,2つ

の方法により選択される。その1つは,AIC(Akaike lnf6lmation Criterion)の 基準に基づいて選択する方法である。そして,もう1つは,Ng and Pellon (1995)に従って,最犬次数た回から始めて順香に次数を1だけ減らレで,回 帰係数が有意になるところで次数ゐを選択する方法である。この場合,拡張 項の回帰係数の推定個に関する乙仙について,標準正規分布を用いて検定す る。もし1,2よ‥,た回のすべての次数で回帰係数が有意でなければ,拡張項 を除いた式を用いることにする(ゐ=O)。  しかしこのとき,政府収入拓と政府支出GGtの各系列では,分析の対象期 間において構造変化が生じているかもしれない。そごで次に,そのような構造 変化を考慮に入れ,本稿では,Zivot and Andlews (1992)の単位根検定(Zivot-Andl・ews検定)を行うことにする。この検定は,対象となる系列における構造 変化の存在を内生的に扱っている。構造変化の時点石と拡張項の次数たが与 えられたとき,Zivot-Andrews検定は,次の3つの回帰式において,が= 1(j=A,B,C)を検定する。   モデルA7 y=μ4十θADUt(匍十β勺十 ・.y1十白ぐ△yt−,十&        j=1 ヽ 幻 G

(7)

構造変化を考慮した財政赤字の持続可能性に関する実証分析 −j盾− モデルB:       1   .y・゜μ″十7り:)7j(λ)+βり+ y,-1十Σ,ザ△,y,-j+g。      叫        j-1 モデルC:       1   タ・゜μc十ecDUt(利+7q)71(λ)十β9+αり,-1+Σぐ4y,-j+gE,叫       j'1 ここで,△は1階の階差演算子であり,1はタイムトレンド る。Tをサンプルサイズ,石を構造変化時点(ブレーク点) &は誤差項であ の候袖として, λ=石/Tである。ダミ・一変数Dひ(λ)については,もLバ£召であれば DUt(λ)=0,L>召であればDUt(λ)=1となる。そして,変数p乃(λ)につい ては,乙£nであれば1)7,(λ)=0,ド>nであればDTt(λ)=ト召である。 時点石で.DUtは定数項の構造変化を.DT,は傾きの構造変化を表してい る。3つの各モデルは。メI=2/7からメI=(T-1)/7までを範囲とするλ=T 「T について通常最小自乗法(OLS)により推定される。  また,仰,聯,叫式では,拡張項の次数ゐと真,のブレーク点は未知である ため,この両者を推定する必要がある。まず,拡張項の次数ゐについては, 上記のADF検定の場合と同様に,Ng and Pen・on (1995)に従って,最大次数 た回から始めて順番に次数を1だけ減らして,回帰係数ど(jl=乖耽C)が翁 意になるところで次数たを選択する方法を採用する。次に,ブレーク点の候 補石は,回帰係数の制約が=1(jl=A,B,C)のい院計量を最小化するよう に選択される。これより,もしこの昂院計量がZivot and Andl・ews(1992,pp,256-257)の臨界値よりも小さければ,非定常の帰無仮説は棄却されることになる。

2.共和分検定

 単位根検定において,政府収入拓と政府支出GGtがともに7(1)変数であ ると判断されると,次に,これら2変数間で共和分関係が存在するかどうかの 検定を行う。そのため,まず,Payne(1997)と同様に,共和分検定において Engle and Grangel(1987)の検定方法(Engle-Grangel・検定)を採用する。拓

(8)

一7河− 拓=α十bGGt十z, 香川大学経済学部 研究年報 48 即認 ㈲ ここで,αと&はOLS推定量であり,zぺま残差である。 Engle-Granger検定は 次のADF回帰, △& -一      1 pz,−1+Σ∂j△z,-j十s。      JI’1 I におけるρについてADF検定を行う。ここで。包tは誤差項であり,次数ゐに

ついては,上で述ぺたADF検定と同様に,AICの基準とNg and Pelron (1995) に従って拡張項の回帰係数∂の推定値に関する0直による2つの方法で選択

される。上記の㈲式において,帰無仮脱はρ=Oであること,対立仮。説は ρ<Oになることである。これより,もし帰無仮説を棄却できれば,残差zぺま

単位根をもたないと判断でき,拓とGGは共和分関係にあるといえる。  またさらに,本稿では,共和分検定のもう1つの方法として,Wu(1998),

Bravo and Silvestre(2002),Kalyoncu(2005)やBahalumshah and Lau (2007) と同様に。lohansen(1988,1991)の検定方法(,lohansen検定)も用いること にする。この検定では,共和分ベクトルの数7・を決定するために,最大固有値 検定とトレース検定の2つの検定が行われる。こごで,検定におけるVARの ラグ数たは,AICの基準に基づいて選択されるふ)  ところで,これらの検定では,共和分ベクトルは分析の対象期間において不 変であることを仮定している。そごで次に,共和分ベクトルにおける構造変化

を明示的に考慮した共和分検定を実行する。そのために,Gregoly and Hansen (1996)による検定方法(Gregory-Hansen検定)を適用する。 Gregory-Hansen 検定では,次の3つのモデルを考える。 3)Zhou(2001)は,デ・-タ数とサンプル期間の効果を考慮レて,ADF検定と,lohansen  の検定を含む3つの検定方法を,モンテ・・カルロ実験で検出力やサイズを比較レてい  る.Zhou(2001)の結果によれば,年次データ等でデータ数が少ない場合には,Engle- GlangerのADF検定の方が,lohansenの検定よりも良いということが示されている。

(9)

構造変化を考慮した財政赤字の持続可能性に関する実証分析 モデル1:レベル・シフト(C)   ,ylz °μ1+μ2g,r+α7,y2・十召。 Z =1 μ モデル2:トレンドを伴うレベル・シフト(C/T) .y1・゜μ1十μ2妬r十βf十α7,y2・十& r=1 モデル3:レジーム・jシフト(C/S)   .y1・ ゜μ1+μ21’・r+α7.y2・十αJ,y2・Rr+!?・, 1=1 −j邱− I 侭 ㈲ 斧 I ここで,仰と,勁は,本稿の分析ではそれぞれ瓦とGGドである。また,削ま タイムトレンド,&は誤差項,である。ダミー・変数らについては,r・∈(0,1)を・ 構造変化時点を表す未知のパラメータとして,もしに[gトであればら=0, L>[g]であればら=1となる。ただし,[・]は整数部分を示している。(16), ㈲,圈式の各モデルについて,レペル・シフトは構造変化時点での定数項の変 化を意昧しており,レジーム・シフトは定数項と傾きが構造変化時点で変化す ることを意味している。  この検定では,rのそれぞれの俑lについて,上記のモデルをOLSで推定 し,得られる残差ごとに単位根検定を実行する。そのため,瑠位根検定とレて ADF検定を適用し,実際の検定においてはGregoly and Hansen(1996)に従い, r・∈(0,15,a,85)として,([015g],(0,85削)の範囲で各ブレーク点について検 定統計量を計斜する。なお,このとき,ADF検定における拡張項の次数は, 既述のように,Ng and PeHon (1995)に従って拡張項の回帰係数の推定値に関 する削釧こ基づいて選択される。そこで,このような単位根検定の結果から, 構造変化時点の候袖は,単位根の検定統計量を最小化するように選択される。 これにより,構造変化時点の候補が決定されると,検定統計量がGlegoly and Hansen(1996,p,109)の臨界値よりも小さければ,共和分関係は存在しない という帰無仮説が棄却されることになる。

(10)

−j必− 香川大学経済学部 研究年報 48 即認 3.データ  本稿の実証分析では,構造変化を考慮して財政赤宇の持続可能性の検定を行 うために,分析の対象期間を延長して,平井・野村(2004)と同じデータを使 用する。使用される政府収人拓と政府支出GGtのデータは,それぞれ各年度 における政府(国)の一殺会計の歳人および歳出の決算額である。まず,Hakkio and Rush (1991)やPayne(1997)のように,瓦とGGtをそれぞれ次のように

分類する。   拓,=政府収入   R2t=政府収入の対GDP,比率   柘,=1人当たりの政府収入   GGu=政府支出   GG2t=政府支出の対GDP比率   GG3,=1人当たりの政府支出  政府収人と政府支出のデータ(名目値)は,『財政統計,』(財務省主計濁調査 課)の各年度版から得られる。ここで,政府収入は歳人総額から公債金を除い たもの,政府支出は歳出総額から国情償還費繰入を除いたものである。とりわ け後者について,政府支出GGは,前節で示されたように,政府の財・サー ビス購入と移転支払いG,と,利払い費わ茄-1の合計額である。Gは歳出総額 から国債費を除いたものであるが,科払い費1高-1については,土居(2000) に従って,一般会計の国債費から国情償還費繰入を差し引いたものとした。国 債費全体には現金償還に当てる経費が含まれるため,これを除去レている。国 債償還費繰入については,『国債統計年報』(財務省理財局)の各年度版から求 められる。  さらに,上記のすべての変数は実質値で表示されている。 GDPの実質値 (1990暦年基準)のデータは,『国民経済計算年報』(内閣府経済社会総合研究 所)から得られる。一方,政府収入と政府支出のデータについては,それぞれ GDPデフレーターで実質化する。 GDPデフレーター(1990暦年ヽ基準)も『I国 民経済計算年帳』から求められる吉)なお,1人当たりの各変数で使用される人

(11)

構造変化を考慮した財政赤字の持続可能性に関する実証分析 −157− □のデ・−タは,『人□推計月報』(総務省統針局)から取られる。本稿で使用さ れるデ・一タは/すべてのデー・夕が利用可能となる1955年度から2005年後まで の年度データである。ここで,図1,図2及び図3には,上記のように分類さ れた政府収入と政府支出の却み合わせ.R1,とGG1。拓,とGG2t及び拓,と Gらの動向が,平井・野村づ2004)と同様にそれぞれ示されている。 円白 JQ Zj 70 60 50 40 30 20 0   0 1 政府収入と政府支出(実質値) 。。、ク'゛゛

八二

バ 匹ぐ

/ノ

ノア

/'``゛

_/‘

。 4 i = 1 = ● ゛ ゛ '  ̄         l l 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 9 1 1 1 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005年復 4)国民経済計斜における実質GDPとGDPデフレーターの各データは,1955年度から  2000年度までの期間については68SNAより入手することができる。2001年度以降のデ  ータは93 SNA より利用可能であるが,遡及して1980年凌までしか公表されていない。  そこで本稿の分析では,長期にわたるデータを確保できるように,2001年度以降のデ・−  タについては93SNAを利用することとし,68SNAにおける2000年・度のデータを・93  SNAの当該元-タの仲び率により延長して推計することとした。

(12)

−j認一         香川大学経済学部 研究年報 48       即卵 %20 18 ︱  ︱ ( \ 4     0 −     ︱ 8 図2 政府収入の対GDP比率と政府支出の対GDP比率(実質値)

八  。

/ 犬へい

へΛ ズ☆y長‥

ぺ坤ソ几ダ  )V

為-・ 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005年度 -●一政府収入の対GDP比率j?2 -政府支出の対GDP比率Ga        ・‥--図3 1人当たりの政府収入と1人当たりの政府支出(実質値) 千円 700 6 0 0 5 0 0 0  0 40  30 2 0 0 1 0 0 0 7-●-“`tt』rs

。ダ

バづソ

//

/プ

-/

,41=μ゛’’     11   111111・|1・111111・lllllllll・1・|111111 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005年度 -●-1人当たりの政府収入jl3 -●-1人当たりの政府支出GG3

(13)

構造変化を考慮した財政赤宇の持続可能性に関する実証分析 −j痩−        Ⅳ。実証分析の結果 1.単位根検定の結果  実証分析ではまず,政府収人拓と政府支出GGぺこついて,それぞれ前節で 分類された実賀仙。実賀俑lの対実質GDP,比率及び1人当たりの実質仙lの3変 数に関する単位根検定を行う。そこで,表1には,ADF検定の結果が示され ている。本稿で使用するデータは年度データであるためデ・-・タ数が少ないこと を考慮し,拡張項の最大次数をた回=4として,次数ゐはAICの基準とNg and Pelron(1995)に従って拡張項の回帰係数の推定値に関するり直に基づく 2つの方法で選択されている。 ADF検定の結果から,政府収入拓と政府支出 GGについてドすべての変数は八1)変数であることがわかる。  しかし,上記の検定では構造変化が生恚た場合,その検出力が低くなるとい う問題がある。そのため,構造変化を考慮した単位根検定を行うことにする。 表2は,Zivot-Andlewsの単位根検定の結果を示レている。この表には,3つ の各モデル(A,B,C)における回帰係数(貼7,a)の推定値とり院計量, さらに,回帰係数の制約α=1のり売計量を最小化するように選択されたブレ ーク点の候袖石が示されている。α=1のい院計量によれば,まず,政府収 入については,モデルCにおいてのみ,拓,と拓ぺこ関する単位根の帰無仮説 がそれぞれ5%の有意水準で棄却されることがわかる。検定において,構造変 化時点はともに1986年度である。したがって,これらの2変数は,構造変化 を伴うトレンド定常である可能性をもっている。この場合,lslam(2001)で も指摘されているように,孔と島の各変数について,定常となるように1 階の階差をとることは適切ではないかもしれない。一方,変数瓦バこついて は,すべてのモデルで単位根の帰無仮説を棄却できず,当該変数はバ1)変数 であると判断される。  次に,政府支出については,GG1。GG2,及びGG3,のいずれの変数も,3つ の各モデルにおいて単位根の帰無仮説を棄却できないことがわかる。したがっ て,GG,GG2・及びGG3,の各変数は7(1)変数であると判断できる。そこで, もし変数拓,と応がそれぞれ構造変化を伴うトレンド定常であるとすれば,

(14)

−j硲− 変 数 表1 香川犬学経済学部 研究年報 48 ADF単位根検定,1955−2005年度       レベル変数 ラグた 工 モデルA(定数項とタイムトレンドあり) 政府収入  実質値島 実賀偵の対実質GDP比率拓, 1人当たりの実賀仙ゐ 政府支出  実質値GG  実賀値の刻実質GDP比率GG  1人当たりの実賀仙GG 検定統計量 AIC(1) 削1) AIC(1) け1) AIC(1) z(1) AIC(O) 削2) Alcm 削1) AIC(O) z(O) n。モデルB(定数項あり,タイムトレンドなし) 政府収入  実貿値島  実質値の対実質GDP比率応  1人当たりの実貿佃拓, 政府支出  実質仙GG  実質仙の対実質GDP比率GG  1人当たりの実貿仙GG AIC(1) 削1) AIC① 削1) AIC② £(1) AIC(0) 印)) AIC(1) 削1) AIC(O) 削O) −2,11949 −2。641176 −2,11332 −1。075317 −1。45325 −1。24・705 −0。62002 −0,ノア7550 −2。56300 −1.04103 −0。97538 −0.43757 −1。38682 −0,85642 ラグた AIC(1) けO) AIC(O) けO) AIC(1) 削O) AIC(O) けO) AIC(O) けO) AIC㈲ 削O) AIC(O) けO) AIC(O) けO) AIC(O) 削O) AIC(O) けO) AIC(O) 削O) AIC(O) けO) 2008 階差変数   検定統計量 −4,64097*** −4,856Z6*** −5。61356*** −4。75409゛゛゛ −4。92983゛1゛ −5。64766*** −5,44227*** −5,76796*** −4。91693*** −5。6Z35∠t*** −4。97735*** −5,68595*** −5,43631*** −5,172137*** 注:ADF検定は,次の回帰式を用いて行われる。    ・モデルA:△,ZI|=11+β1+al,-1+Σφ,△X,-,+・。    モデルB:△Z,=μ+SI-I+Σφ,△,9,-,+s。  ここで,△は1階の階差演諒子であり,1はタイム}レンド,Sjは誤差項である。モデルAは定数項とタイム  トレンドを含む回帰式,モデルBは定数項のみを含む回帰式である。回帰式における拡張項の次数1は,AIC  と拡張項の回帰係数の推定値に関するf統針量の2つの基準に基づいて選択される。AIC(1)は,最大次数  1−=4としてAICの基準に基づいて選択された次数1を示している。また,μゐ)は,1−=4として,Ng and  Pelyon(1995)に従い,標準正規分廂(漸近正擾分廂)の両側検定の10%右宣水準を用いて拡張項の回帰係数  の推定値に関するf統計量に基づき選択された次数ゐを表している。サンプルサイズを7とすると,Fuller  (1996)より,モデルAによるADF検定にっいての1%,596及ぴ10%の臨界値は,7=50に対して,それ  ぞれ−4。16,−3,50,−3.18である。一・方,モデルBによるADF検定に・っいての1%,5%及ぴ10%の臨界値  は,7=50に対して,それぞれ−3,59,−2 93,−2,60である。  ・・・は1%水準で有意であることを示す。

(15)

変数 モデル 絞府収入 私, 拓 , 拓 z 政府支出 GG GG2t G G 3 , A B C A B C A B C A B C A B C A B C 構造変化を考慮した財政赤字の持続可能性に関する実証分析 表2 Zivot-Andrewsの単位根検定, 構造変化時点     ∂ 1997(λ=0。84) 1990(λ=Oご71) 1986(λ=0。63) 1979(λ=0。49) 1989(j=a,69) 1982り=0。55) 1997(λ=0。84) 1990(.l=0。71) 1986(λ=0。63) 1976(・l=0,j3) 1982(λ=O。55) 1976(j=0。43) 1976(λ=0,43) 1979(λ=0。49) 1975(λ=0,41) 1976(λ=0。43) 1981(λ=0。53) 1976(λ=0,43)  −4。41779 (−2。76831)  7。68518  (3。75〔〕30)  1。17385  (2,39791)   一  1。28409  (251385) −40。5873 (一2。92634) 64。7662 (4。02054) 4。71358 (3。82897)  − 3。70964 (3,19912) 1。26079 (2。61883) 0,99550 (2。40197) 34,1987 (3,15927)  − 32,3203 (3,49006) 1955−2005年度  y α   − −0。47096 (−2。73969) −0。81104 (−4,61559)   − −0。07656 (−1。99831) −a,064517 (−2,19903)   − −4,77062 (−3,10966) −17。56845 (−5。00386)   − −0,35527 (−3,56705) −0。18361 (−3。33750)   − −0。08732 (−3.68255) −0,06456 (−2613172) −3。49264 ド3,898174)  −2。14729 ト4。66856) −7司−  0,72637 (−3,52844)  0。71091 (−3 53478)  0。49740 ト5。13016)¨  0。63880 (−3。66505)  0。69612 (−3 35587)  0。59161 (−3。95713)  0。69112 (−3 68041)  0。64711 (−3。86388)  0。43663 ト5,54306)**  0。65910 (一400648)  0。78276 (−2。87250)  0。73906 (−359293)  0。69512 (−3。23067)  0,82274 (−3。05427)  0。73696 (−3。39045)  0,70678 (−3,25534)  0。・73642 (−3。20227)  0。69133 (−4。17287) 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 4 O り/` 0 1 2 4 0 注:回帰式における拡張項の次数たは,Ng and PeHon (1995)に従い,標準正,規分布(漸近正規分布)  の両側検定の10%有意水準を用いて,最犬次数尨回=4として拡張項の回帰係数の推定値に関する  j統計量に基づき選択される。∂と7の欄には,それぞれダミ・一変数7)ひとDT,の回帰係数の推定  値ガ示されており,括弧内の数値は1統計量である。また,αの欄には,回帰係数αの推定値が示  されており,括弧内の数値はα=1を検定するためのり売計量である。この分布の臨界値は,Zivot  and Andlews (1992,pp 256-257)より求められる。ゐは,選択された拡張項の次数を示している。  **は5%水準で有意であることを示す。

(16)

−j認一         香川大学経済学部 研究年報 48       勿認 実質値の変数拓,とGG1。1人当たり実質値の変数ゐとGG3,の組み合わせ については,第n節の理論的枠胡みにおいて収人と支出の2変数がともに バ1)変数であるとする条件を満たしていない可能性があるといえる。この場 合,これら2変数間では,もともと財政赤字は持続可能であるといえないかも しれない。これに対して,対GDP比率の変数拓,とGG2,の組み合わせについ ては,収人と支出の2変数はともに7(1)変数であるR)  なお,ここで,モデルAとBでは,政府収入と政府支出のいずれの変数に おいても単位根の帰無仮説は棄却されない。そごで以下では,政府収人瓦,と 柘バま構造変化を伴うトレンド定常である可能性を考慮しつつ,これらの検定 結果とADF検定の結果に基づき,政府収入拓と政府支出GGの各変数につ いて,実質値,実賀値の対実賀GDP比率及び1人当たり実賀値lのいずれの変 数もバ1)変数であるとして分析を進めることにする。 2.共和分検定の結果  単位根検定により,釧1)過程に従うと判断された政府収人瓦と政府支出 GGぺこついては,まずEngle-GI・angelの共和分検定を遮用し,これら2変数間 に共和分関係が存在するかどうかを検討する。そこで,Engle-Grangel検定の 結果は表3に示されている。ここで,ADF検定における拡張項の次数ゐにつ いては,既述のように,AICの基準と拡張項の回帰係数の推定値に関するリ直 により選択された場合の他に,先行研究を参考に先見的に次数を2と4に選択 した場合での検定結果も報告されている。表3のADF検定の結果からは,10% の有意水準を用いて判断しても,すべでの結果において統針的に有意な共和分 関係は見いだせない。すなわち,政府収入拓と政府支出GGtの2変数間で は,実賀値,実質値の対実質GDP比率及び1人当たり実質値のいずれの場合 においても,共和分関係は存在しないという帰無仮説を棄却できない。 5)政府収入と政府支出の2変数について,対GDP比率で表示された変数は,BI・avo and

 Silvestl・e(2002),Goyal,KI!undrakpam and Ray (2004)やBahalumshah and Lau(2007)  等,諸外国における財政赤字の持続可能性に関するいくつかの実証分析においても使用

(17)

構造変化を考慮した財政赤字の持続可能性に関する実証分析      表3 1      変 実質値IJ1。GGlz Engle-Grangerの共和分検定,1955−2005年度 数 n / ` 4 ラグた       AIC(3),1(3) 実賀値の対実質GDP比率IJ2。GG2,  2       4       AIC(1),1(1) 1人当たりの実質値:ゐ,GG3, り乙4 AIC(3),1(3) ADF統計量  −1。98027  −2.75822  −2。84834  −2。41122  −2。05202  −2。86979  −2。024081  −2。75505  −2。84757 −j昭− 注: ー,を被説明変数,GG,を脱明変数として,共和分回帰は次式で示される。    ji!,=α+ゐGG,+z,  ここで,aと&はOLS推定量であり,zfは残差である。Enge1-Glangex検定  は,次のADF回帰。    △z,=pzl-1+Σ∂j△z,-j十・。  におけるρについてADF検定を行う。ラグの次数1について,AIC(1)は,  最大次数ゐー=4としてAICの基準に基づいて選択された次数1を示してい  る。また,1(1)は,1−=4として,Ng and P。。n(1995)に従い,標準正  規分布(漸近正規分布)の両側検定の10%有意水準を用いて拡張項の回帰係  数の推定値に関するf統計量に基づき選択された次数1を表している。サン  プルサイズを7とすると,Engle and Yoo(1987)より,7=50に対して,5%  及ぴ10%の臨界値は,それぞれ−3。67,−3。28である。  そのため,上記の結果を確認するために,次に,Johansenの共和分検定を実 行する。表4には。Johansen検定の結果が示されている。ここで,検定におけ るVARのラグ数たは,ゐ=2,3,4のなかから,AICの基準で選択されている。 表4より,いずれの結果においても,共和分ペクトルの数y・がOであるという 帰無仮説は,10%の有意水準で,最大固有値農定,またはトレース検定におい て棄却されないことがわかる。すなわち,実質値,実質値,の対実質GDP比率 及び1人当たり実質値のすべての場合において,政府収入拓と政府支出GG の2変数間では共和分関係は存在しないと判断される。また。lohansen検定の 結果は選択するVARのラグ数ゐにも依存するが,他のラグ数を選択しても2 変数が共和分関係にあるとする確定的な結果を得ることはできなかった。した

(18)

−j碍−     変   数 実價伯ごJI。GGI, 表4 香川大学経済学部 研究年報 48 Johansenの共和分検定,1955−2005年度       トレース検定 実質値の対実質GDP,比率:       ゐ,GG2, 1人当たりの実賀値:       拓。GG9, 勿硲 最大固有値検定 た 帰無仮説検定統計量.90%臨界値 4 2 4 y l = y '  ̄ yφダ r= y'= 0 1 010 1 12。04055  1。18467 14。46294*  2。80919* 13。20102 2。17873 1 3   2 1 3   2 1 3   2 33 69 33 69 33 69 検定統計量90%臨界値 10。85588  1。18467 11。65375  2。80919* n。02229 2。17873 1 2 ,   2 , 1 2 ,   2 , 1 2 , 2 , 0 7 6 9 0 7 6 9 0 7 6 9 注X検定におけるVARのラグ数1は,1=2,3,4より,AICの基準に基づいて選択される。  yは,共和分ベクトルの数を示している。90%の臨界値は,0steiwald-Lenum(1992)より  求められ。る。  ’は10%水準で有意であることを示す。        表5    変  数 実質値:ゐ,GGI, Gre9ory-Hansenの共和分検定,1955−2005年度         モデル 構造変化時点  ADr統計量 実貿値の対実賀GDP比率:&,GG2f 1人当たりの実賀値:拓。GG3・ c回いc011一いc已い 1977 1997 1985 1997 1982 1989 1982 1995 1985 −3。04078 −3。18311 −4。55744 −3。19751 −4。79731゛ −3。31397 −3.04239 −3.56255 −4。50077 た Qり1 1 1 1 1 CQ H 1 注:3つのモデルについて,Cはレベル・・シフト,C/ITはトレンドを伴うレベル・・シフト,  C/Sはレジーム・・シフトである。ADF’統計量は,    ADF*= inf ADF(r)        re(01S 085)  として表される。ADF検定における拡張項の次数1は,Ng and Pelron(1995)に従い,  標準正規分布(漸近正,規分布)の両側検定の10%有意水準を用いて,最大次数1−=4と  して拡張項の回帰係数の推定値に関する1統計量に基づき選択される。1は,選択された

 拡張項の次数を示している。ADF’統計量の分右の臨界値は,Gregoly alld Hansen (1996,p,  109)より求められる。

(19)

構造変化を考慮した財政赤字の持続可能性に関する実証分析 −j邱− がって。Johansen検定の結果は。表3におけるEngle-Glanger検定の結果を支 持しているといえる。      g  このように,政府収入瓦と政府支出GGtの2変数が共和分関係にあること が棄却されると,ここで2つの可能性がある。1つは,2変数間で長期的な均 衡関係が存在しないということである。そしてもう1つは,共和分ベクトルに 構造変化が存在する場介である。そこで,表5は,構造変化を考慮に入れた Glegoly-Hansenの共和分検定の結果を示している。この表には,実質仙。実賀 値の対実賀GDP比率及び1人当たり実賀値で表示された2変数について,レ ベル・シフト,トレンドを伴うレベル・シフト,レジーム・シフトの各モデル での共和分検定の結果がI報告されている。検定結果から,有意水準を10%と すれば,対GDP比率の2変数,島とGGについては,トレンドを伴うレベ ル・シフトのモデルでのみ帰無仮説を棄却することができる。しかし,5%の 有意水準で判断すると,実質値,実質値の対実賀GDP,比率及び1人当たり実 賀値のすべての場合について,政府収入拓と政府支出GGの2変数間で共和 分関係がIないという帰無仮説は棄却されないことがわかる。そのため,構造変 化の存在を考慮しても,やはり共和分関係が存在すると判断することはできな い。

 以上の検定結巣より,Hakkio and Rush (1991),Haug(1995)やPayne(1997) 等で分析された財政赤字の持続可能性に関する条件は,検定において構造変化 の存在を考慮しても満たされていない。 Quintos(1995)やMaltin(2000ドで 定義された強い意昧での持続可能性(stlong sustainability)も成立恚ていない

といえる。それゆえ,本稿の実証分析の結果は,Hakkio and Rush(1991)の

分析方法に基づき,わが国の財政赤字が持続可能とはいえないとする平井・野 村(2004)での結論が構造変化を考慮しても変更されないことを示している。        V.む す び

 本稿では,Hakkio and Rush(1991)の分析方法に基づき共和分検定を適用

し,わが国政府の一般会計を分析対象として,財政赤字の持続可能性を実証的

(20)

−j必一        香川大学経済学部研究年報48      J認 分析方法を用いて,わが国政府のー・般会計における財政赤宇が持続可能とはい えないと,の分析結果を得ている。しかしそごでは,単位根や共和分の検定にお いて構造変化を考慮していないという問題点が指摘される。本稿の実証分析で は,平井・野村(2004)の分析期間を延長して1955年度から2005年復までの データを使用するとともに,構造変化を考慮に入れてZivot-Andl・ewsの単位根 検定とGlegoly-Hansenの共和分検定を行った。  構造変化を考慮しない従来の単位根検定と共和分検定では,実賀,値,実質値 の対実質'GDP比率及び1人当たり実賀佃lの3つに分類された各変数のすべて の場合について,政府収入,と政府支出の2変数はともに7(1)変数であり,こ れら2変数間では共和分関係が存在しないという結果が改めて示された。そこ で,構造変化を考慮して,まずZivot-Andlewsの単位根検定を行うと,政府収 入については,実質値,と1人当たりの実質値の各変数は構造変化を伴うトレン ド定常である可能性をもつという結果が示された。一方,対GDP比率で表示 した政府収入,さらに政府支出の3つの各変数については,いずれも単位根の 帰無仮説を棄却できなかった。これより,実質値及び1人当たり実質個ンで表示 された政府収入と政府支出の2変数間では,もともと財政赤字は持続可能であ るといえないかもしれない。  そして次に,従来の単位根検定(ADF検定)による結果等に基づき政府収 入と政府支出の2変数がともに7(1)変数であるとして,Gregoly-Hansenの共 和分検定を行った。構造変化を考慮した共和分検定では,従来の共和分検定 (Engle-Glanger検定と,lohansen検定)の結果と同様に,3つに分類された各変 数のいずれの場合においても,2変数間での共和分関係を支持する結果は得ら れなかった。とりわけ,Zivot-Andlewsの単位根検定より,対GDP比率で表示 された収入と支出の2変数はともに7(1)過程に従うと判断されたが,これら 2変数間で構造変化を考慮レても共和分関係が存在しないという帰無仮説を棄 却できなかった。したがって,このような結果から,構造変化を考慮レても, わが国政府の財政赤字は持続可能とはいえないと結論づけることができる。そ のため,財政赤字の持続可能性の問題は,わが国にとって依然,深刻であり憂 慮すぺき問題であるといえよう。

(21)

構造変化を考慮した財政赤宇の持続可能性に関する実証分析 一瓦アー

       参考文献

Afbnso,A,(2005),“FiscaI SustainabiHty : The unpleasant Eul・opean Case", jj。a,sz,ajヽj,vol  61,pp. 19-44

Bahalumshall,AZ,ajld E。Lau,(2007),“Regime Changes ad the Sustainability of Fiseal  lmbalance in East Asian Countl・ies",1α),g・iM∂&11j,zg,vol 24, pp・,878-894。

BI・avo,A。B。S,ajld A,L Silvestle,(2002),“lnteltempola1 SustainabiUty ofI FiscaI POlicies :  Some Tests fbl European Countries", &j,卯ga。ゐzj,・αj9/乃)ljljazl&sa,l∂!y,vol,18,pp.517- 528

Dickey,D,A。,and W A Fuller,(1979),“Distlibution of the Estimatols fbr AutollegllessiveTime  Selies with a unit Root", ゐzjyzl 「がigj謂gyj,]・a月&aZjsZjc㎡jssQ£jalj㎝,vol,74,pp.427-431 Dickey,D,A。,and W,A FuUel, (1981),“Likelihood Ratio Statisticsfbr Autorellessive Time  Selies with a unit Root", jc・onz)mgtril・2,vol。49,pp。1057-1072。

土居丈朗,(2000),「我が国における国債の持続可能性と財政運営」,「財政赤字の経済分  析:中長期的視点からの考察」,経済企画庁経済研究所編,9-35頁。

Engle,RF。and C W‥IGiangell,(1987),“Co-lntegration and En・ol Conection : Replesentation,  Estimation,and Testing", &;a・∂剤gかja2,vol 55, pp。251-276

Engle,RF,and B S。Yoo,(1987),“Foiecasting and Testing in Co-lnteglated Systems", ゐzj,z,aj  q/瓦aasgかic・s,voL 35, pp 143-159.

FuUer,WA。(1996),j。1,りゐd∂。la Srαljslj乙・ 「71。,g&9,jgs(secondedition),New Yolk: ,lohn  Wiley&Sons

Goya1,R。IKKhundlakpam, and P。Ray,(2004),“ls lndia's Public Finance unsustainable ?  011,AIle the Claims Exaggerated ?I',。ゐua21¥狗徊yM ・a昭,vol26,pp.401-420.

Gregoty,A。W。and B,E.Hansen,(1996),“Residual-Based Tests fbl Cointegration in Models  with Regime Shifts"。勿・,記zl¥&;Q。Q・ ーかjc:s,vo1,70,pp99-126,

Hakkio,C。S,and M。Rush,(1991),“ls the Budget Deficit‘Too Lallge?'",lcQ,gsjc 7,1gzφy,  vol。29,pp.429-445,

Hamilton。l。D,and M,A,Flavin,(1986),“On the Limitations ofI Govemment Bo11・owing : A  Frainework fbt・Empilical ITeStingl',j'7i∂iα72&=・Q,2∂・ij?gvjla。V01,76,pp・。808-819。

Haug,A A・, (1995),“Has Fedelal Budget Deficit POlicy Changed in Recent Yeals ?",瓦∂,g・i・  −卯匈,vol。33,pp・。 104-118,

(22)

−j硲− 香川犬学経済学部 研究年報 48 2008

 叢』,第77巻第3号,29-46頁。

lslam,M。Q。(2001)/‘Stluctulal Bleak,Unit Root,and the Causality between Govemment  Expenditures and Revenues”, 冶,ρljlI惑dECaaO甫iCS letterS.vol,8,pp 565−567。

.lha,R。,and A。Shaima,(2004),“Stiuctulal Breaks,Unit Roots,and Cointegiation : A Fulthei  Test oflthe Sustainability oflthe lndian Fiscal Deficit”, ?uゐ&乃・scg j?gvjgw, vol,32,pp. 169- 219。

.lohansen,S。,(1988),“Statistical Analysis of Cointegration vectors”,ゐz4.ajが五c∂,IQ。jl,2  Z?一・2sたsα 「Csかal,vo1 12, pp,231-254,

.lohansen,S。,(1991),“Estimation and Hypothesis Testing ofI Cointegl・ation vectors in Gaussian  vectol・ Autol・egllessive Models’≒£c∂。∂。61,jca,vol。59,pp 1551−1580

Kalyoncu,H。(2〔〕05),“Fiscal Policy Sustainabmty : lest ofl lnteztempolaI BOIlowing  COnStlaintS”,j畑ρljgjic∂。。i。s£ggg,:s,vol。12,pp 957-962。

Maztin,G,M。(2000),“US Deficit Sustajnability : A New Approach Based on Multiple  Endogenous Breaks”。勿zj,slがjjili 氈窒イ∂,2c)。召かjlどs,vol,15,pp。83−105。

Ng,S。,and P Pelron, (1995),“Unit Root Tests in ARMA Models with Data-Dependent Methods  fbl・ the SeleCtiOn Ofl the TnmCatiOn Lag”, 。7∂ZjraZI(が一Sj謂g,jCaZI&aljIsliICaj jSS∂daljlOn,万V01,  90,pp・。 268-281

0stelwald-Lenum,M。(1992)/‘A Note with Quantiles ofl the Asymptotic Disセlibution ofl the  Maximum L,ikelihood Cointegfation Rank Test Statistics”,Q.φ夕jj 「lgzj・¥£α別∂携jc:sα71j  SI,21jsljc・s,Vol。54,pp,461-472。

Payne,.I。E。,(1997),“lntemationaI Evidence on the Sustainability of Budget Deficits”, jな¥71igj  ZECIo縦)肌icsl,91Zg,:S,V014,pp,775-779。

Quintos,C E, (1995),“Sustainabmty ofl the Deficit Process with Stiuctuxal Shins”, ゐss/が  &,Sj,詔SS a, 「』EC㎝Q謂jC SZ,2ZjSZjl,;,S,V01,13,pp,409-417

Tlehan,B。,and C。E Walsh, (1988),“Common Trends,the Govemment’s Budget Constl・aint,  and RevenueSmoothing’I。ゐ紺一 「q/瓦∂jlQ訓jc・Jp戸,2剤jcs a 「QMか 「,vol。12,pp 425-444。 Tlehan,B。,and CE。Walsh,(1991)/‘Testing lnteitemporal Budget Constlajnts : Theory and  Applications to U S Fedel・al Budget and Cunent Account Deficits”。ゐzj,・alがj凶別卯,Cyg一z,  aタ,djα,1剋I,lg,V01。23,pp.206-223‥

Wilcox,D。W。(1989),“lhe Sustainability of Govemment Dencits : lmpljcations of the Present- va1Ue BOtllOWing COnStllai 「’,。ノ㎞ZSIがj1必那y,alg・1,α㎡jadjllg,V01。21,pp‥291-306

(23)

構造変化を考慮した財政赤字の持続可能性に関する実証分析 一却,9−

 jsjα,2&;a,l∂sics,vo19,pp。519-528,

Zhou,S。,(2001),“The Power of Cointegration Tests vei・sus Data Frequency and Time Spans’≒  &z・・gyj2&aa虚。ゐlrsj,vol。67,pp。906-921。

Zivot,E。and D.W,KAndrews,(1992)/‘Fulthel Evidence on the Gleat Crash, the Ojl-Price  Shock,and the unit-Root Hypothesis”。ゐwzl 「がjlsjlgssalj j乙・Q・∂澗丿乙・StdllsZi・s,vol,10,  pp.251-270。

参照

関連したドキュメント

ü  modeling strategies and solution methods for optimization problems that are defined by uncertain inputs.. ü  proposed by Ben-Tal & Nemirovski

耐震性及び津波対策 作業性を確保するうえで必要な耐震機能を有するとともに,津波の遡上高さを

笹川平和財団・海洋政策研究所では、持続可能な社会の実現に向けて必要な海洋政策に関する研究と して、2019 年度より

以上の各テーマ、取組は相互に関連しており独立したものではない。東京 2020 大会の持続可能性に配慮し

FSIS が実施する HACCP の検証には、基本的検証と HACCP 運用に関する検証から構 成されている。基本的検証では、危害分析などの

4 アパレル 中国 NGO及び 労働組合 労働時間の長さ、賃金、作業場の環境に関して指摘あり 是正措置に合意. 5 鉄鋼 カナダ 労働組合

環境への影響を最小にし、持続可能な発展に貢

 工学の目的は社会における課題の解決で す。現代社会の課題は複雑化し、柔軟、再構