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水資源問題をとらえる一つの視点-香川大学学術情報リポジトリ

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水資源問題をとらえる一つの視点

新 見

治 目 次 1‖ はじめに 2.日本の水資源と水資源問題 3.水資源システムとその階層性 4.日本の水資源管理の現状 5.おわりに 1.はじめに 水の乏しい乾燥地域の国々においてはもちろんのこと,水に恵まれる湿潤な わが国においてさえも水は近年「資源.として強く認識されるようになり,水 資源問題は社会にとって解決を迫られている最も重要な課題の一つであること はいうまでもない。 水文学あるいは水循環諭の立場よりみれば,水資源の開発・利用とは自然の 水循環系のなかにいかにしてうまく人工の水循環系をデザインするかというこ とであり,水資源の適正な管理をおこなうためには自然および人工の水循環系 の実態を十分に把握する必要がある。本稿は,わか国における水資源問題を人 エの水循環系の構造の特性と水管理のル¶・・・・ルに焦点をあてとらえよう七するも のである。 2.日本の水資源と水資源問題 (1) 日本の水収支と水資源 椎根(1977)によれば,わが国の水収支はおよそ次のように推定される。平 均年降水孟は約1,800mmであり,このうち約650mmが土壌面や水面からの 蒸発と植物による蒸散によって大気中に失われる。残りの1,150mmのうち 750mmは洪水として流出し,400mmは地下水を療養したのちに序々に河川

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新 見 治 142 へ流出する。前者は直接流出とよばれ,この短期的な流出成分を利用するため には大規模な貯水施設を必要とする。これに対し後者は基底流出とよばれ,古 くからこの安定した流出成分に依存した水利用がおこなわれてきた。なお,降 水急については従来1,600mmという値が用いられてきたが,算定方法も明ら かでなく過小である。また,山地における降水が過小評価されているので平均 降水畳は2,050mm程度であるという見解(桑原,1975)もあるが,この倍は 測定の精度に問題のある河川流盈をもとに推定されたものであるため,現在の ところ年降水盈として1,800mmは安当な値と考えられる。 しかし,ここに示した値はあくまでも平均値であり,実際の値は時間的に,空 間的にかなり変化する。以下,各水文要素の変動特性を概観することにする。 菅原(1971,1980)が全国33地点の70∼80年という長期間の資料をもとに算 定した年降水魔の変動係数(標準偏差を平均値で除した催)は,日本海側で 0.10∼0.15と安定し,太平洋側では0.15∼0‖20とやや不安定である。また,西 日本は束日本に比べるとやや不安定である。さらに,各地点における年降水盈 の変動範囲は,平均をm,標準偏差を♂とするとき;最小m−2♂,最大m+3げ となることを示した。これらの結果にもとづき,わが国の年降水量の変動係 数を0.15とすれば標準偏差は270mm となり,それゆえわが国の年降水量は 1,260∼2,610mmの範囲で変動するものと推定される。 年蒸発散盈については,輪島および金沢において26年間の資料を用いペンマ ン(Penman)法により推定された結果(中川,1979,1980)によれば,その 変動係数は0.05と他の水文要素に比べかなり安定している。 年流出急については,菅原(1971,1980)は全国59地点の20∼35年間の河川 流量資料を用いその変動係数を算定し,0.15∼0.35の値を得た。その値は日本 海側で大きく,東日本より西日本で大きい傾向を示した。年流出孟の変動範囲 はm−2♂∼m+3♂であり,年降水盈の場合と同じであった。ここで変動係数 を0.25と仮定するならば,流出盈は600∼2,000mmの範囲で変動することに なる。さらに菅原はばほ基底流盈に相当するであろう渇水流盈(1年のうち 355日はこれを下回らない流量)についても変動係数を算定し,0い10∼0.57の 倍をえた。この傍は東日本で小さく,西日本で大きいが,火山地域では例外的

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に安定している。平均400mmで安定して利用可能と考えられた基底流出成分 も,西日本では変動が大きいことが指摘される。 水需要には明らかな季節変動があるので,月を単位期間とするような水資源 の変動特性を明らかにすることが必要であるが,一・般には,月値の変動係数が 年値のそれを上回るということが指摘できる1)。 (2) 日本の水資源問題 わが国では近年水需給のアンバランスから渇水が頻発しているが2),渇水に 代表される水資源問題を論じる場合,玉城(1971)の指摘にある日本の農業用 水の特殊性を忘れることはできない。すなわち,現代の水資源問題は港漑稲作 のための農業用水として河川の安定流星が独占的に利用されているところに, 水需要の急増した都市・工業セクターがその水源を求めたことに起因している といえる。しかも水資源の利用をめぐる問題は益々複雑化かつ広域化してきた にもかかわらず,水資源開発・虚業用水の転用。流域変更・中水道・水域の汚 染などの問題として独立に,あるいは羅列的に論じられることばあっても,水 資源の管理という大きなテーマのなかに位置づけられ,有機的に関連づけられ ることは十分でなかったようである。 これら水資源問題の諸側面を相互に関連づけるためには,システム論的な考 え.を導入す−ることが有効である。しかし,システム論的といわれる多くの研究 は水資源問題を水の配分あるいは輸送問題としてとらえており,生産・消費活 動にともない発生する水需要に対していかに水を供給するか,その解を求めよ うとするものである。ここにおいて考えられる目的関数は費用最小化あるいは 水の生産性最大化などである8)。そして建設費の高騰や地域住民の反対のため にダム建設を基軸とする水資源の新規開発が困難となった今日では,水利用の 合理化や水資源の再開発がその解として求められるようになってきた。それら は農業用水の他部門への転用,流域変更,下水処理水の利用による中水道の建 設などを具体的な内容とするものである。 これに対し,水資源問題をその量的側面にのみ注目し,資源の配分・輸送問 題としてとらえることには多くの疑問が投げかけられており,環境の保全とい

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新 見 治 144 う視点から水質的側面についても考慮する試みがなされている(Biswas,1976; 末石,1978なと)。さらに,水需要そのものにメスを入れようとする試みや水 の価値・水利用の意義をとらえ直そうとする試みもなされている。 資源としての水の特徴は,水ほ自然の水循環系のなかで絶えず更新されてお り,水の多くは利用後も消費されずに残るという点にある(桂根,1977)。後 者の特徴に関連し,槌田(1978)は,社会や生物などの生きている系はその活 動にともない発生するエントロピ、−(「汚れ.)をその系外に積極的に廃棄しな ければならないが,このエントロピ・−・を輸送するものが水であると述べている。 また,菅原(1972)は同義のことをネゲントロピ・−の概念を用い,多くの水利 用ではそのネゲントロピーが消費されるのであり,水資源の意義は安価なネゲ ントロピー資源ということにあると述べている。水資源の利用および管理にあ たっては,これら資源としての水の特徴あるいは水利用の本質についての十分 な認識が不可欠と考えられる。 3.水資源システムとその階層性 一・般に,複雑なシステムは単純でない仕方で相互に関連する多数の部分から 成り立っており,その後雑性ばしばしば階層的な形態をとっている。この階層 的システムは相互に関連するいくつかの下位システムから成り立っており,そ の下位システムがまた順次,もっとも低いレベルの基本的構造をもって連なっ ている(Simon,1969;邦訳あり)。 社会における水の流れ,すなわち,水の生産と供給(貯水。取水・浄水・配 水・給水),生産・消費活動における水需要,そして環境への排水という−・連 の過程に着目するならば,水資源システムも以下に述べるような階層的システ ムとして認識される。 自然の水循環系としてほぼ閉じられた空間である河川の流域を基本的な水資 源管理単位とするならば(肥田,1976),水資源システムは第1図に示される ような4つの階層から構成される階層的システムとしてとらえられる。ここで 最下位(第1位)のシステムとは実際に水を必要とする水利用磯器・施設・用 途であり,エントロピーはこのレベルで発生する。第2位は水の利用について

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節4佗 流 域 第さ位 水利用セクター 第2位 水利用主体 第1位 水利用施設 第1図 水資源利用システムの階層性 の忠志決定単位である水利用主体で,農家・一・般家庭・事業所・工場などがこ れにあたる。第3位は農業・都市・エ菜などのセクタ1−で,各水利用主体に水 を供給し,その排水を処理する農業水利団体・水道事業・エ業用水道事業。下 水道事業などを示している。そして最上位(第4位)はこれら低位のサブシス テムを統轄・管理する水資源管理機構である。この階層的システム内部のサブ システムの間には様々なフイ・−・ドバック機構があり,これらは上位と下位のサ ブシステム間,同位のサブシステム間相互の2つのタイプである。以下,流域 を単位とする水資源システムの現状を各レベルごとにみる。 第2図は,流域における第3位の水利用セクタ・−の配置または連結体系を水 のフロ・−・に着日し,模式的に表したものである。取水された河川水や地下水は, 農業・都市・エ菜セクターで利用されたのち還流(Ⅰ・etu‡n貝ow)として再び自 然の水循環系に戻り,再び他のセクターによって取水・利用される。これをく り返すことによって流域における水利用はなされて−いる。あるサブシステムの インプットは上流に位置する他のサブシステムのアウトプットに水星的に,水 質的に強く影響されるため,それぞれの水利用セクターは他のセクタ・−の水利 用のありかたに重大な関心を持たぎるを得ない。このように個々のセクターは 量的にも,質的にも独立ではありえないので,流域の水資源の適正な管理のた めにはセクター間での水の配分と排水の水質についてのルールを確立すること が重要である。わが国では農業用水を中心とした水利秩序が形成されてきたが, 近年の都市化・工業化の進展にともなって旧来の水利秩序は動揺し,再編成が なされているのが現状である。

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新 見 治 146 ◆ L

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−..可.ノ \ \ \ 凍 下 地 W G 衝 第2図 流域における水資源の利用 次に,第3位の水利用セクターにおける第2位の水利用主体の連結体系をみ れば,第3図のように表わせる。すなわち,農業用水の場合は流域における 水のフロ・−(第2図)と同じく,水利用主体である個々の戯家は独立ではない0 これに対し,都市・工業用水では水利用主体は並列に配置されており,水量的 には独立していないものの,水質的には他の排水の影響は受けず独立である0 このため他の水利用主体の排水はもちろんのこと,自らの排水の水質について も関心はきわめて薄い。−・般市民は汚染のすすんだ水域をみて清浄な水域をと り戻したいとは思うものの,自らが水域の汚染の加尊者の一・見であるという認 識はなかなか生まれない。琵琶湖の汚染の進行を防止しようとしてすすめられ た合成洗剤の追放運動は,住民自らが水の汚染を防止しようと努力している数 少ない例の一つである4)。しかし,自然水を個別に利用している場合には住民

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(A) 藤 堂 用 水 (Bl 都市ユ真相水 ユ 土地改良区水利組合 第3図 各セクターにおける水資源の利用 は水の汚染の防止に努めるのが普通である。例えば,用水路が市街地のなかを 流れている岐阜県郡上八幡・萩・津和野などの城下町では,これらの用水を生 活にうまくとり入れるとともに水の管理にも十分な配慮がなされてきた。しか し,上水道の普及・用水路の暗渠化・市街地の拡大とともに従来の水利用のあ りかたが大きく変化し,水管理の機構も崩壊しつつある(「都市住宅」7703, 特集水縁空間の構造,19門)。 最後に,第2一位の水利用主体における第1位の水利用施設・設備・用途の連 結体系を享? ターのそれと同じパ久1−ンを示し,それぞれの固場は鼠的・質的に関係し独立 ではない。一方,家庭・事業所。エ場においては,個々の水利用機器・施設は 並列に配置されることが多く,水塁的には相互に関係するが,水質的には独立 のことが多い。しかし水供給に量的な制約を受けたり,硫極的に水需要を減少 させようとする場合にほ,・一・部の用途で水の再利用をおこなっている。例え.ば, 家庭における風呂の残り湯の洗濯や散水への利用,事業所における空調用水の 循環利用や下水処理水の再利用などであり巨工場でも空調・洗浄用水などの再 利用が進んでいる。なかでも石油化学工業・鉄鋼業では回収水の利用が進み,

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新 見 拾 148 淡水水源に占める割合は80%∼90%にも達している(通産省「昭和52年工業 統計表.,1979)。 以上みてきたような階層的構造をもった水資源システムの設計 ・管理とは, 下位のサブシステムをいかに配置・連結し,上位と下位のシステムの間にいか なるフィー・ドバノク機構をつくりあげるかということといいかえることができ る。第4図は,nレベルと(n−1)レベルのシステムについてフロ−タイプとそ の特徴を示したものである。基本的なフロータイプには直列型と並列型があり, 直列型とはあるサブシステムのアウトプットが他の同位のサブシステムのイ ンプットとなるもので,並列型とはあるサブシステムのアウトプットが他のイ ンプットとはならないものである。すでにみてきたように,現実のシステムは 直列型と並列型の混合した■7ロ・一夕イブを示すことが多い。直列塑の水利用は カスケー・ド(cascade)式の水利用ということもでき,水を再利用するため必要 な水の虫は少なぐて済むが,水質についての制約があるため水管理に要する労 力は並列型の水利用に比べ大である。しかし,サブシステムの配置・連結体系 を十分に考慮すれば,アウトプットである排水を処理することなく他のイン プットとして直ちに利用することも可能である。これに対して並列型の場合は 並 列 型 蔽 列 塾 (カスケード) (カスケード) (リサイクル1 7ロータイ ブ 第 n 位 「−−− 第(n・−1)位 水 市 野 小 水 管 理 複雑 節4図・7ロ・一夕イブと水需要および水管理の関係

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再利用がないため水質面での管理を必要としないが,水需要が多量となる欠点 をもっている。このため実際には並列型システムの一一・部にカスケ・−ドやリサイ クルをとり入れることによって,水需要を減少させることがおこなわれている0 なおリサイクルとはあるサブシステムのアウトプットを再びそのインプバ、と して利用するものであり,このためには水質を人工的に高める必要があるので カスケー・ドに比べ多大の労力を必要とする。槌田(1978)のいう水の資源とし ての「物理価値.を完全に利用するためにも,このカスケード式の再利用が有 効である。 システムにおけるフロー・タイプと水需要および水の管理に要する労力との関 係は前述のとうりであり,水需要を抑制。減少させるためには水管理の強化と ともにフロ・一夕イブそのものの変更が必要となってくる。一・方,水は人間活動 によって発生する物質や熱といった汚れを系外に輸送する手段の一つであると いった認識にたてば,水需要よりむしろこの汚れを発生する人間の生産。消費 活動そのものについての再検討が必要とされるが,ここでは立ち入らずに人工 の水循環系の変化について次の3つの特徴を指摘するにとどめる0 1)水資源システムの多層化 これは水資源システムの複雑化。広域化の過程でもある。かつて水需要 者は自ら直接水供給に携わるか,間接的な形で関与していた。しかし叔近 では水供給者と水需要者は分離することが多く,水需要者は単なる水供給 事業の受益者へと化していった。この過程は水と人間との分離の過程とい うこともでき,人々は水利用を自然の水循環系の一部としセとらえること ができなくなり,水に対する関心を急速に失っていった。 2)水資源システムの画一・化 水資源システムの多層化とともに,フロータイプは従来の並列型と直列 型の混合型から次宴酎こ並列型を主体とするものに変化してきた。また水源 は水供給事業に一・元化され自然水の個別的利用が少なくなるとともに,水 利用の多様性が失われつつある。フロータイプの並列型への移行は水需要 の著しい増大を招き,並列型システムの一・部に前述したカスケードやリサ イクルをとり入れる試みもなされるようになってきた。しかしどのレベル

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新 見 治 150 においてカスケードやリサイクルをとり入れるかが問題であり,技術は単 純なものほど良いという視点からはより水需要者に近いレベルでの導入が 望ましく,人エの水循環をより複雑にしないよう努める必要がある。 3)発生するエントロピ・−・(汚れ)の除去 人間活動にともなって発生するエントロピー(汚れ)の除去は,これま で自然(土壌)に依存してきたが,次第に下水処窪施設による人工的浄イヒ へと移行している。しかし発生する汚れを人工的に除去するためには膨大 なエネルギーと労力を必要とし,水利用の意義に鑑みれば望ましいもので はない。それゆえ自然(土壌)による汚水の浄イヒを積極的に導入すること は重要であり(新見 正,1977),これは人エの水循環系に疑自然をとり 入れようとするものである。 都市化・エ業化の進展のなかで自然の水循環系とは性格を異にする人工の水 循環系がつくられていったが,これらはやはり自然の水循環系の一部であるこ とに変わりはなく,自然の水循環系から独立して存在することばありえない。 それゆえ,人工の水循環系のなかにいかにして自然の水循環に疑したシステム を導入し,いわば凝自然の水循環系をつくりあげるかが,今後の課題となるで あろう。 4.日本の水資源管理の現状 わが国の水行政は建設省・農林水産省・通産省・厚生省・環境庁。国土庁を はじめとする多くの行政庁にまたがり分断されており,総合的な水法はなく, 水資源の管理にとって極めて不都合な状態にあることは周知のとおりである。 本章では流域を単位とする水資源管理の現状を水のフロ・−とそのフローを水盛 的・水質的に制御するルールについて整理してみたい。 第5図は流域を単位とする水資源管理の現状を,第2位以上について整理し たものである。図中のLは法令による水のフロ㌧−の制御,LPは法令と価格政 策との併用による制御を意味している。また第1表には関係する法令を掲げ た。この図・表の作成にあたっては「昭和52年度版河川六法.(建設省河川局, 1977)などを資料として用いた。以下,地表水の取水,地下水の取水,水の転

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水のフローの制御 ◇法令尊 重>法令価格 ① 農 家 ⑧ 家 庭 ⑥ 事業所 (D 工 場 第5囲 わが国の水管理の現状 第1表 わが国の主な水資源利用に関する法令 河川法(1964),河川法施行令(1965) エ業用水法(1956),建築物用地下水の採取の規制に関する 法律(1962),民法(1896) 河川法,段薬用水の転用に関する取I)扱いについて(1972) 土地改良法(1972改正) 水道法(1957),工業用水道事業法(1958) 下水道法(1958),下水道法施行令(1959). 河川法施行令(1965),水質汚濁防止法(1970),排水基準 を定める総理府令(1971),水質汚濁に係る環境逓準に ついて(1971),公害対策基本法(1973),廃凛物の処理及 び清掃に関する法律施行令(1970) 地表水の取水 地下水の取水 水 の 艇 用 水 の 供 給 排 水

用,水供給主体から水利用主体への水の配分,排水の順に概観する。個々の法

令の詳細な内容とその解釈および意義については,「水法.(金沢,1960),「水

法論」(金沢・三本木,1979)を参考にされたい○

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新 見 治 152 (1)地表水(河川水・湖沼水)の取水 わが国においてほ湖沼は法的には河川の一周ほみなされており,「湖沼法. なるものは存在しない。1896年に施行された旧「河川法.においても,1964年 に改められた新「河川法.においても河川水は公水とみなされる。旧「河川 法.では府県知事が河川管理にあたるとされていたが,新「河川法.では重要 な河川を一・級河川・二級河川とし,一級河川の管理は建設大臣,ニ級河川では 知事がおこなうものとした(第4・5条)。公水である河川水の取水にあたって は河川管理者の許可を必要とし(第23条),その権利の譲渡にあたっても河川管 管理者の承認を必要とする(第34粂)。知事は取水に関連して「流水占用料. を徴収できるが(第32粂),現在その対象となっているのは民間企業による発 電・工業用水であり,国営。公営事業では免除または軽減の措置がとられてい るようである。 水利権は慣行水利権と許可水利権に大別される。慣行水利権とは旧河川法施 行前から取水していたものに認められた既得の水利権であり(第87・88粂), 近年許可水利権への変更が進められ1972年における農業水利権の約36%が許可 水利権となっている(千賀・川又,1977)。許可水利権には安定水利権・豊水水 利権・暫定水利枠・曹定豊水水利権がある。安定水利権とは10年に1度起きる ような渇水においても安定的な取水をなしうるような水利権であり,二豊水水利 権とは豊水時に限って取水が認められ渇水時には取水が不可能となることがあ るものである。暫定水利権とは安定した水源は確保されていないが取水の必要 性が社会的に大であると認められる場合,豊水条項や許可期間を限って与えら れる水利権で一・般には暫定豊水水利権とよばれる。国土庁の「長期水需給計画」 (1978)によれば,この暫定豊水水利権はわが国の都 ̄耐・工業用水で約33倍m3 /年に達し,河川水を水源とするもののうち都市用水で約25%,工業用水で約 10%を占めている。これらの多くは閑束臨海・近放臨海・瀬戸内にあり,これ らの地域の都市はその水源の不安定さもあってしばしば渇水にみまわれている。 渇水時の水利調整は当事者間でなされることが多いが,河川管理者は必要に 応じてあっせん・調停をおこなうことができ(第53粂),利根川・木曽川・淀 川をはじめとする全国19の流域には常設の渇水協議会が設けられてい る(1979

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年3月現在;建設省河川局,1979)。筆者はその−・例として瀬戸内地方小瀬川 管理協議会における渇水時の水利調整について,その概要を報告した(新見, 1977)。これらの組織は渇水時の水資源配分のルー・ルを確立した点では評価さ れるものの,流域の長期的な水資源管理を目的とする機構に発展していくには まだまだ不十・分である。 (2)地下水の取水 地下水の利用と保全に関連して総合的な地下水法の制定の必要性が十分に認 められながらも(「ジュ.リスト.Noり582,1975),わが国では地下水法は成立す るに至っていない。わずか,「工業用水法.(1956年)において政令で定める指 定地域において揚水機の吐出口の断面墳が6cm2をこえるような井戸により地 下水を採取す−る場合都道府県知事の許可を必要とすると定め(第2・3条), 「建築物用地下水の採取の規制に関する法律.(1962年)で同様な許可条件をつ けているにすぎない(第2・3・4粂)。一L方,条例により地下水利用の規制を おこなっているのは東京都をはじめとする19都道府県,36苗■町村に及んでいる が(1975年1月現在;「ジコ.リスト.No..582,1975),水源転換をおこなうため の代替水源の確保が新たな問題となっている。水資源の新規開発が困難な折か ら,束京などでは ̄F’水処理水を利用した公営工業用水道事業も実施されている。 地下水は水循環の過程で地表水ときわめて密接な関係にあるため,地下水そ のものの管理だけでなく地表水との−=体化した管理が必要とされる。しかも, 地表水と地 ̄F−水の水資源としての曳的・質的特徴巷考慮した地表水と地下■水の 総合的運用(conjunctiveuse)が水資源の有効的利用のために検討されている 現在,地下水利用に係る法令の整備は必須である。しかし,「民法」(第206・ 207粂)により,土地所有者はその土地の地下水を自由に採取し利用すること ができると一・般に解釈されているので,地下水を河川水と同じく公水とみなし 地下水法を制定することには既存の水利用者の強い反発がある。 (3)水利用セクター間での水の転用 前述のとおり「河川法.第34条には水利権の譲渡には河川管理者の承認を必

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新 見 治 154 要とするとあり,同様の規定は旧「河川法.第21粂にもみられる。しかし,従 来農業用水の他のセクターへの転用は河川管理者が関与するこ.となく当事者間 で数多く実施されてきた。ニケ領用水・愛知用水・束西用水などがその例であ り,水の転用にあたっては対価が虚業セクタ・一に支払われている。転用の過程 については,玉城(ユ968),華山・布施(1977),秋山(1980)などに詳しい。 1972年農林省は「農業用水合理化対策事業実施要綱.を定め,既存の農業用 水の余剰水を都市・工業用水に転用する方針を示した。こうした動きに対し, 河川管理に係る建設省ほ同年「農業用水の転用に関する取り扱いについて.と いう河川局長通達を出し,公水としての河川水の配分は河川管理者が決定する という見解を明示しながらも巨農業用水の都市・工業セクタ・−への転用を積極 的に進めることとした。これに呼応し農林省は「土地改良法.の一・部を改正し, 土地改良事業による施設の他用途への使用を認めることにした(第94条の4の 2)。このように河川管理者が街極的に関与する農業用水の転用は,中川流域・ 芦田川流域などにおいて実施されており,今後ともその数ほ増えるものと予想 される。 (4)水供給主体から水利用主体への水の配分 水供給主体から水利用主体への水の配分は,法令などと価格政策5)を組み合 わせておこなわれている。農業用水においては,水利組合や土地改良区は水利 慣行により水を農家に配分しそれに見合った水利費を徴収しているが,新規の 用水事業では農家は契約により水の供給を受け対価を支払っている場合もある。 都市用水・エ業用水においては,水道事業やエ兼用水道事業は豊富・低廉な水 を水利用主体に供給することを義務づけられており(「水道法.第1・15条, 1957;「工業用水道事業法.第1・16条,1958),その水虫に見合った料金を徴 収している。 料金体系には計盈制にもとづくものと非計塁制のものがあるが,わが国の水 道事業では計量制が導入され,その殆んどが均一料金体系や段階別逓増料金体 系である(日本水道協会,1979)。これに対し,アメリカ合衆国やイギリスな どでは非計畳制が多く,計孟制の導入が進められている。また計量制の地域で

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も段階別逓減料金体系のところが多く,水需要の抑制のため逓増料金体系への 移行や季節価格の導入などからなる価格政策の重要性がさけばれている。わが 国においても水価格政策の必要性が唱えられているが,高い価格弾力性をもつ 屋外用水の需要がアメリカ合衆国に比べて少なく家庭用水の価格弾力性がきわ めて小さいこと8),すでに計量制の価格体系であることを考えれば,水価格政 策による水需要の抑制は余り有効な方法とほいえない。もちろん現在の低い価 格水準が極めて高い水準に変化したり,水利用の内容に大きな変化があったり したときは有効な策となりうるであろう。むしろ水需要を抑制するためには, 渇水時における特定の水利用の禁止などを含む制度を確立することが必要であ ろう(HoltzandSebastian,1978)。 従来,水の価格は水の生産と輸送に関する費用に見合うものと考えられてき たが,水の利用の意義が人間活動により発生する汚れを系外に輸送するという 点にあることを認めるならば,水の価格に下水処理に要する費用をも含めるの が適切であろう。 (5)排 水 水利用主体からの排水は,直接水域に放出される場合と排水(処理)事業と して集められたのちに水域に放出される場合がある。虚業の場合は,排水路を 経由して自然の水循環系に還流してゆく。都市・工業用水の場合は,農業用水 路や水域に放出されるか, ̄下水道を経由して自然の水循環系に戻る。都市化の 著しい 地域を流れる農業用水路は都市の下水路として利用することが認められ ており(「土地改良法.第56灸,1949),実際「下水処理組合.として存続して いるような水利組合もある。 「下水道法.(1958)においては,特定事業場からの下水を排除することにつ いて制限を設けているが(第12粂の2),下水処理水を再利用する場合はもち ろんのこと,下水処理によるスラノジを肥料として利用する場合などにおいて も,工場廃水が都市下水に混入することば好ましいものではない。 水域へ放出される排水を規制する法令についてみれば,「河川法施行令. (1965)では50m3/日以上の汚水を河川に放出する場合は河川管理者への届出

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新 見 冶 156 義務があること(第16条の5),異常な渇水時においては河川管理者が排水に ついて規制しうること(第16粂の6)を認めている。公共下水道からの放流水 の水質基準は「下水道法施行令.(1959)第6条に定められて−いるが,エ場及び 事業所からの排水についての制限を定めているのが「水質汚濁防止法.(1970) である。この法令に関連し定められた排水基準は50m3/日以上の工場・事業所 に適用され,例え.ばBOD(生物化学的酸素要求孟)で160ppmを許容限度と してし、る。この値は「水質汚濁に係る環境基準について.(環境庁告示,1971) に定められた河川についての基準値10ppm以下に比べ極めて大きな億である。 このようにわが国では目標とする環境基準値をはかるに上回る汚れた排水の水 域への放流を認めて−いるのが現状であり,閉鎖性の水域においてはとくに汚染 が進んでいる。また,わが国では人間活動の生みだす廃棄物の処理については, ただ「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令.(1970)が存在す−るだけで, 排水規制に関する法令とあわせての整備が必要とされよう。 5.おわりに

水資源問題は基本的には水の配分の問題であるが,これを合理的におこなう

ためにはどうすればいいかという疑問を水に関心をもちはじめてからずっと持 ち続けてきた。機会あるごとに識者に尋ねてみたが,それらの答から合法的と いうことはわかっても合理的ということは十分に理解できないままであった。 それとともに,農業用水・都市用水・工業用水と分類されているがどこがどう 違うのか,水汚染や地盤沈 ̄F■等の水文環境の破壊をどうとらえるか,いったい 人は何のために水を利用するのかといった数多くの素朴な疑問が湧いてきた。 こうした多くの疑問をもち不十分ながらも水利用の意義を自分なりに整理し, わが国の現状を概観したのがこの小論である。なおこの小論をとりまとめるに あたり,多くの研究の成果を参考にさせていただいた。記して謝意を表する。 注 1)例えば,高松における1942∼1965年の降水故についてみれば,年降水盈の変動係数 は017であるのに対して,月ごとの変動係数は033(4月)∼0。72(10月)である

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(気象庁,1970)。また広島県芦田川の府中観測所の1962′・・■1975年の洗足についてみれ ば,年債の変動係数は032であるが,月値の変動係数は034(12月)∼094(5月) である(新見,1980b)。 2)故近の渇水のうち渇水評価指数で1000%・日を上回るものは,1964年束京,1973年 高松・松江・福山。小瀬川・広島1977年小瀬川,1978年福岡・北九州・徳山・長 崎・川崎などであり,地域的には西日本に多い。これは前節において指摘した西日本 における降水盈や河川流盈(とくに渇水流盈)の不安定さと関係している。なお渇水 評価指数〔%・日〕はg節水率〔%〕×給水制限日数〔日」で表わされる。 3)ここでいう費用とは水の生産・輸送などに要する給費用を持すが,水文環境の保全 という視点から社会的費用を含むこともある。また水の生産性とは経済活動の規模を 水利用盈あるいはその費用で除したものを意味する。 4)これに関連し,滋賀児では「滋賀県充電湖の富栄養化の防止に関する条例」を1979 年10月17日に公布し1980年7月1日に施行した。制定の経過およびその内容について は「ジユリスト No708.(1980)などに詳しい。 5)ここでいう価格政策とは価格によって水詔要を制御しようとするもので,現に有効 に機能しているか否かば問題としない。また水に対して対価が支払われているものも 含んでいる。 6)わが国の家庭用水の需要の価格弾力性(短期)はゼロに近い値であると推定され (新見1980a),これはアメリカ合衆国における備に比べればかなり小さい。また都 市活動用水・工業用水についても,その価格弾力性は小さな侶と推定される。 文 献・資 料 秋山道雄(1980):高梁川水系における水利問題と水利秩序の変乱 地理学評論,53 (11),679∼698, 金沢良雄(1960):水法い 法律学全集No、15所収,有斐儲,162p‖ 金沢良雄・三本木健治(1979):水法論け 共立出版,265p. 棚板 勇(1977):水を知り,自然を知る1日本の科学と技術’77/資源,16∼20. 気象庁(1970):気象要素の度数分布‖ 気象庁観測技術資料,No33,158p.. 桑原英夫(1975):日本の平均年降水虫について.水利科学,No101,61−78.. 建設省河川局(1977):52年版河川六法大成出版社,1184p 建設省河川局(1979):水利権実務一・問一・答.大成出版社,272p. 国土庁(1978):長期水需給封画け 48p 新見 治(19L77):小潮川流域における水利用システムの再編成過程.ハイドロロジ・−, Noい8/9,1L7∼23 新見 治(1980a):芦田川流域における家庭用水需要の分軋 地理学評論,53(6), 375∼388. 新見 治(1980b):芦田ノIl流域の水収支と水質漁 ハイドロロジ・−,No.10,11∼17、

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参照

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