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被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(1)-香川大学学術情報リポジトリ

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  被疑者取調べにおける

精神障害者等の供述の自由(1)

 y1 尽

工。はじめに n。AA制度の沿革,∼1981年王泣委員会報告書を中心に m。AA制度の概要及び目的 【参考貴利】実務規範C付則E「精神障害者及びその他の精神的に傷つきやす い者に関する規定の要約」(以上。本号) IV。精神障害者等の判定をめぐる問題 V。運用上の諸問題に対するイギリスの取組み VL,おわりに I はじめに 1.問題の所在        (1)  刑事手続における精神障害者や知的障害者(以下,精神障害者等とい引        (2) の供述の任意性・信用性については,たとえば,いわゆる島田事作や野田   (3) 事件などを通じて,その心理的特性(被暗示性や迎合性の強さ)に配慮し        (4) た事実認定のあり方が問題とされてきた。しかし,ぞの一方で,これまで の刑事罰法においては,冤罪事件として顕在化する数が必ずしも多くない こともあり,そのような精神的な問題を抱えた人々の供述の自由の保障の あり方,あるいはそのような人々に対する実質的・実効的な弁護権保障の 51 − 28−2−314(香法2008) 一 k ○ 六

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- ← ○五 披疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(1)(京)        ㈲あり方を問題にする機会は,比較的少なかったように思われる。  もっとも,近時では,障害者の特性を理解した弁置活動の重貫性が,刑        ㈲事司法においてもようやく正,面から問題とされるようになってきている。 その背景には,たとえば2005年づ平・成17年・)3月10日宇都官地裁で知        (り的障害者の被告人に無罪判決が言い渡されるなど,依然として知的障害者 に対する冤罪事件が絶えないこと,他方で,近時の日本においても刑事龍       ㈲ 設における精神障害者等の現状が注目され,受刑者の知能指数の実態から  (9)は,捜査ツ公判において,「知的障害の診断がなされないまま,何の支援 も配慮もなく,刑事手続きに乗せられ,受刑者となった人が相当いるので はないか」,その意昧で,上記のように顕在化した冤罪事魯も実は「氷山 の一角」と言えるのではないかが問題とされるようになったことが挙げら    帥れよう。さらに国際レベルでは,2006年・12月国連で障害者権利条約が採       ㈲ 択されるなど,障害者(精神・知的障害者等を含む)の権利への関心が高 まりを見せ,それに伴い司法手続における援助のあり方も問題とされるよ        叫 うになってきたことも見逃せない。  もちろん,国内的にも精神障害者等の司法的取扱いが改革課題とレて取 り上げられてこなかったわけではない。とりわけ,裁判員制度が創設され るうえでも大きな契機となった「司法制度改革審議会意見書」(2001年・〔平       隔 成13年〕6月12日付)においても,公的弁護制度との関連で「障害者や 少年など特に助力を必要とする者に対し格別の配慮を払うべきである」と 明記されるに至ったこと(L第コ。の2)は注目に値する。そのことは, 精神障害者等や少年など,いわゆる傷つきやすい(vulnerable)とされる 披疑者への実質的な援助(特に身体拘束された場合)の問題が,ようやく 改革諜題として正面から取り上げられるに至ったことを意昧しているから である。ただし,それをどのように解決すべきかについては,いまだ十分 な検討がなされてはいない。        ㈲  これに対し,イギリスでは,少年及び精神障害その他の精神的に傷つき やすい(mentally vulnelable)者が逮抽・留置された場合には,弁護権保 28−2−313(香法2008) 52

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障はもちろんのこと,ぞれに加えてさらに,それらの者を福祉珀・心理的 に援肋する第三者が必要的に手続に関与する制度ドすなわち「適切な大人 (Appropliate Adult : 以下,AAという)」制度が設けられている。この制

度を検討することは,弁護権の実質的保障づ刑訴法37条の4参照)を含 めた,精神障害者等の供述の自由を保障するための手がかりを与・えてくれ るだけでなく,ひいては,精神的な問題を抱える被疑者に対する実質的か        叫 つ実効的な援助を通じて,手・続の公正を担保し,冤罪を防止するうえでも       ㈲ 有益であろう。  すでに筆者は,この制度を少年事典との関係で紹介・検討したことがあ   卵 るが,本稿はその統編としてAA制度の総合的な比較法研究を目指すもの であると同時に,理論的には,これまで筆者が研究してきた少年の主体性 論を精神障害者等にも発展・拡大させ,いわゆる傷つきやすい被疑者の統 一的な主,体性論を展望しようとするものである。 2.検討の対象  本稿は,被疑者が精神障害者等である場合に焦点を当てるが,先の拙稿 と同様,披疑者の遣捕後AAが警察屠に到着するまでの手続と,その後の 取調べにおけるAAの役割を中心に,この制度の洽革,制度の概要・及び趣 旨について検討する。そして,精神障害者等に固有の運用上の諸問題につ いで検討したうえで,日本法への示唆を探る。  なお,AAが少年及び精神的な問題を抱える被疑者の両者を統一・的にカ バーする制度である以上。後者に焦点を当てるとはいえ,制度の沿革・概 要・目的を検討するに当たっては,必要に応して前者にも言及しながら論 を進めざるを得ない。したがって本稿の論述では,先の拙稿とも重複する 場合があることも予めご丁承いただきたい。 - 53 − 28−2−312(香法2008) 一〇四

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︸○三 被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(1)(京)

Ⅱ.AA制度の沿革∼1981年王立委員会報告書を中心に

1.AAの法源∼PACEの法体系下にあるAA  ここでは,AAが設けられた目的を明らかにするために,その沿革を辿 ることから始める。それにあたってはまず,AAの法律上の位遺づけにつ いて言及しておく必要・があろう。

 AAは,「1984年警察・刑事罷拠法(The Policeand CliminaI Evidence Act        圈

1984)」(,以下,PACEと略す)の法体系下で創設された制度である。法体 系下とはすなわち,PACEそれ自体に規定されているのではなく,PACE

第60条第1項㈲,第60条のA第1項,および第66条第1項によって設け られた「実務規範(COde OfIPlaCtiCe)」,とくにその中でも「警察宮による人 の留肌取扱い及び質問に関する実務規範」(Code C : Detention, Tleatment

and Questioning of Persons by P§4iceOfficers。 以下,これを単に実務規範

       −  −  ■  − − _・■■●・ ・・-・.●.● j. w● l ゝ.J といい,Code C として引用する)に主たる法的根拠を有レているからで ある。  そこで,AAの洽革を辿るには,ぞもぞもPACEそれ自体の洽革を辿る 必要があるわけであるが,そのPACEの洽革を辿るには,1981年に「刑 事手続に関する王立委員会」(以下,王立委員会という)が公表した『報   叫 告書』(以下,1981年暮告害という)を検討しなければならない。もとも とPACEは,この報告書において王立委員会によりなされた数々の勧告       聯 を基礎にして制定されたものであり,同様にAAについて規定する実務規       聯 範もまた,そこでの勧告に基礎を置くものだからである。以下ではその経 緯を,精神障害者等の場合に焦点を当てながら辿ることにしよう。 2.王立委員会設立に至るまでの経緯  (1)コンフェイト事件(1972年)とその影響  王立委員会が設立,されたのは1977年であったが,その設立,に大きな影 響を及ぼしたのは,コンフェイト(COnflait)事件と呼ばれる,青少年の冤 28−2−311(香法2008) 一 54

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罪事葬であった。そして,この事・件は,AA制度創設への大きな要・因と なったともいえる。すなわち,この事件では,1972年・に3人の青少年,(そ の内のニ人が114歳と15歳の少年/で,もう一人は知的障害のある18歳の 青年)がノマクスウェル・コンフェイトの殺人や放火等の訴因により一審 で有罪判決を受けたが,最終的にそれらが控訴院によって破棄され(1975       叫 年),冤罪であることが明らかとなったのである。ぞして,この冤罪事件 を契機として警察の捜査のあり方,とくに少年及び精神的ハンディキヤッ プのある披疑者の取扱いが深刻に問題とされることとなり,このことが上。        叫 記王立委員会においても特別な検封の対象とされたのである。  (2)少年の場合の第三者立会いの規定  少年の場合には,AAが創設される以前から,1964年に内務省通達

(Home Office Circulal)の中で裁判官準則(,ludges’ Rules)に付属して発

せられた内務省訓今(Administl・ative Directions to the POlice)において,少 年が警察の取調ぺを受ける場合には,親その他警察以外の第三,者がこれに 立,ち会うぺきものとする明文の規定(それが法的拘束力を有するかどうか        勁 は別問題である)が存在していた。そしてそこでは,次のように規定され ていた。  「4.児童および少年の尋問(lntellogation of children and young     persons)  児童の取調ぺ(interview)は(犯罪の嫌疑を受けているか否かにか かわらず),可能な限り,親または後見人,これらの者が不在のとき は,警察官を除く,当該児童と同性の者の立会いの下でのみ行われな ければならない。児童または少年は,やむを得ない場合を除き,学校 で違捕されてはならない。取調ぺについても同様である。…」 一 55 − 28−2−310(香法2008) 一〇二

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- 1 ○ J ● 被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(1)(京)       叫  ここでは,条文上は「児童(children)」(14歳未満の者を指す)のみが 立,会いの対象とされているが,その後1968年5月31日何の内務省通達 (cilculal)により,その対象は少年・ドすなわち17歳未満の全ての者を含        匈むべきものとする公定解釈が示された。したがって,コンフェイト事件の 被疑者とされた14歳と15歳のニ人の少年・にも,この立会い規定は妥当し ていたことになる。しかし,コンフェイト事作では,この規定が遵守され        叫ることなく取調べが行われていたのである。  (3)精神障害者等の場合∼第三者立会いと手続の公正さとの関係  これに対し,精神障害者等の場合には,少なくともコンフェイト事作が 発生士た当時は,そのような第三者の立,会いを求める規定は存在していな    叫 かった。したがって,この事件においても,18歳の知的障害のある青年       叫 については,少年づ17歳未満の者)には該当しない以上,,法的には親等 の第三。者を立,ち会わせる必要は必ずしもなかったのである。とはいえ,コ ンフェイト事件の背景について内務大臣からの委託に基づいて作成・提出       叫 されたいわゆる「フィッシャー・リポート」によれば,この青年について は,その精神年齢が14歳であると判断していたにも拘らず,少年の場合 に準じて親等の第三者を立,ち会わせていなかったことが,取調べを公正,に 行い,不公正,もしくは抑圧,的な取調べ方法を避けるぺき義務に違反してい       図 ると指摘されている点が注目される。  この点に関し,少年,の場合に関するかかる第三者立会いの規定が,手続 の公正,さに法的根拠を持つものであるかどうかについては,上記・1964        叫 年の通達からは明文上必ずしも明らかでない。しかし,その後に発行され た上記・1968年の内務省通達では,通達の前文(パラグラフ2の末尾)に おいて次のように明記されている。「取調官は,裁判官準則を遵守するだ けでなく,取調べの相手方に対しては常に公正/でなければならず,また, 不公正,もしくは抑圧的と評価される可能性のある方法は慎重,に避けなけれ      叫 ばならない」。この文言は,まさに上記・フィッシャー・リポートが指摘 28−2−309(香法2008) - 56 −

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するとおり,裁判宮準則に付属する内務省訓令の規定(第三者座会いを含 む)が,手続の公正,さに淵源を有することを示唆するものといえる。上。       ㈲ 記・1964年通達中にも,その点を示唆する規定もないわけではない。  さらに,より実質的に考えてみても,まさにコンフェイト事葬が示すと おり,第三者の立。会いがないまま取調ぺを行うことは,取調ぺへの耐性の 弱い,すなわち傷つきやすい被疑者に対して虚偽自白を迫るものとなり易 く,そのことが冤罪という重犬な不正義をもたらす犬きな要因となる可能 性が高い。そうだとすれば,まさに傷つきやすい被疑者の取調べに第三。者 が立,ち会うことの実質的な意義は,虚偽自白による冤罪を防止するという 観点から,そのような被疑者の供述の信用性を確保し,もって手続の公正 さを実現しようとするものと考えることができるであろう。  (4)コンフェイト事件におけるその他の準則違反  他方で,上記の立,会い規定の存否に関わらず,そもそもコンフェイト事 件での青少年3名の被疑者の取誹べは,既存の実務準則上の規定との関係 でも大いに問題を孕むものであった。すなわち,これら3名の取調べで は,いずれも上記訓令7(b)に反してソリシターの助言等に関する権利告知 が行われていなかったほか,青年4こついては,取調官から不必要な質問や       叫 肋言がなされるなど,裁判官準則第4条(d)に反する取調ぺが行われていた。 それどころか,上記・少年の場合の立会い規定も含め,そもそもこれらの 規定は警察官や弁護人に知られていないことが多く,また,誤って理解さ          ㈲れてもいたのである。  (5)コンフェイト事件への反省と規定の整備  ①1976年の通達(circulal)  この事件に対する反省からであろう。その後1976年には内務省により, 精神的ハンデイキャナプのある者(mentally handicapped persons)の取調 ぺにも,原則として親ぞの他の第三,者を立ち会わせるべき旨の通達が発ぜ

- 57

28−2−308(香法20㈲

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九九 被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(い(京)       叫 られた。その文面は,以下のようなものであった(下線は引用者)。  「・‥内務大臣は,精神的ハンディキャップのある者の尋問にも特別 な配慮が払われるべきであると考えている。本通達は,王座部主席裁 判官(Lord Chief・,lustice)に諮問のうえ,その同意のもとに発せられ たものである。 2.内務大臣,とレても,取調べの相手方に精神的ハンディキャナプが あるかどうかを判断することが警察には難しいものであることは 承知している。しかしながら,取調べの相手方(それが証人とし てであるか被疑者とレてであるかに関わらず)に精神的なハン デイキャップがあり,そのため質問を理解できるかどうかに疑問 がある場合,またはそのことがその者の彼暗示性をとくに強めて いると考えられる場合には,警察官は発問及びそれに対する回答       -の信用性には特別な配慮を払うのが重,要であると,内務大臣は考   えている。 3.【第三。者の立,会い】精神的にハンディキャップのある子・どもに関   しては,裁判官準則に付属する内務省訓令4という規定がすでに 用意されている。内務大臣の考えでは,警察が精神的ハンディ キャップがあると認めた者についても(それが証人としてである か被疑者としてであるかに関わらず),可能な限り,親その他そ の者のケア,監護若しくは監督にあたる者,または警察宮以外の 者(たとえばソーシャル・・ワーカー)の立会いの下で取賜べが行 われなければならない。 4.【供述書面】その年齢に関わらず,精神的ハンディキヤップがあ   る者の取調べにより作成された書面に対しては,当該供述をした   本人だけでなく,親その他の取調べに立,ち会った者にも署名を求 28−2−307(香法2008) 58 -−

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めるべきである。それでもなお,精神的ハンディキャップがある 者のした供述(admission)の信用性には問題が生じうることか         ー ら,当然のことながら,供述した事実を確かめるとともに,可能 であれば補強証拠を得ておくことにも留意が必要である。」  ここで注目されるのは,少年の場合と同様,親等が立,ち会うこと(上荒3) の趣旨として,精神的ハンディキャップがある者は,そのような精神的な問 題のため,自分に対しで発せられた質問を理解できるかどうか疑問が生じ る場合がある一方,ぞのような精神的な問題により被暗示性にも富むため, その供述の信用性,には問題が生ごやすいという点が指摘されていることで あろう(上記2)。後述するように,このような心理的特性に対する認識 は,王立委員会の勧告やAA制度自体にも引き継がれているからである。  他方で,警察官にとって取調ぺの相手方に精神的ハンディキャップがあ るかどうかを判断することが難しいという運用上の問題点がごすでに指摘 されていることにも留意すべきであろう(上。記2)。この問題点は,現在も なお運用上の鏝大の問題点として認識されているとともに,制度設計に際 してその点にどのように対処していくかが,第三渚の立合いおよび援肋を より実効的なものにレていくためのキーポイントとなっていくからである。  いずれにせよ,この通達の文言はその後,少年の場合も含めてあらため て発行された1978年の内務省訓令に取り込まれ,以下のようなかたちで       叫 規定し直された(下線は引用者)。 - 59 28−2−306(香法2008) 九八

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九七 被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(1)(京) ②1978年の通達  「4A。精神的ハンディキャップのある者の取調ベ ㈱警察言は,取調べの相手方(証人であると披疑者であるとを問わな い)に精神的ハンディキャップがあるため,自己に対して発せられた 質問を理解しているかどうかについて疑問があると思料されるとき又 はとくに披暗示性に富むと思料されるときは,発問をし,ぞの返答の 信用性を確かめるにあたっては,とくに慎重に配慮しなければならな 一 い。この場合においては,可能な限り,栽若しくはその他当該相手方 のケア,監護,監督にあたる者の立,会い,又は警察官以外の第三者       帥 (たとえば,ソーシャル・ワーカづの立,会いの下でのみ,取調ぺが 行われなければならない。 (b)精神的ハンディキャップのある児童及び少年については,警察によ る取調ぺ及び逮拙は,上記・訓令4(少年の場合の立,会いの規定2訳 者注)の定めるところによる。 ㈲その年齢に関わらず,精神的ハンディキャップのある者の取調ぺの 結果を記載した書面に署名を求めるに際しては,供述をした本人だけ でなく,取調べに立,ち会った親その他の者にも,これを求めなければ ならない。それでもなお,精神的ハンディキャップのある者による供 述の信用性には疑問が生恚うるので,その者が認めた事実について   一 は,これを慎重に検尉し,可能であれば袖強証拠を得ておくことが必 要である。」  ここでも,親等の立。会いの趣旨が,精神的ハンデイキャデプがある者の 供述の信用性を確かめるためのものである点を,あらためて確認しておく ぺきであろう(下線部参照)。ぞして,この規定を素材として,王立倭員 28−2−305(香法2008) 60 −

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会は精神的ハンデイキャデプがある者の供述の信用性を確保するための方 策を検討し,その提言がAA創設へとつながっていったのである。 3.王立委員会の勧告  (1)判定の困難さとそれを改善するためのガイドライン作りに向けた取    組み  第三者の立会いを定めた上記4Aの規定について,王立委員会はまず, それが法的助言を受ける権利など披疑者が通常持っている権利に加えて保       圓 障されたものであることを確認した上で,その権利保障の前提問題とし て,精神的ハンデイキヤップの有無の判定が現場の捜査官には非常に困難 なものであることを,以下のように指摘した。 「Pal・a。4.106  我々が早意に対策を講じるべきであると考えているのは,精神的ハ ンディキャップがある者の問題である。内務省訓令4Aは,取調官に 対し,相手方に精神的ハンディキャップがあるかどうか判断する貴任 を課レている。このことが,取調官の立賜を非常に困難なものにして いる可能性がある。精神的ハンディキャップとは,専・門家が診察室に おいて診察する分には容易に判定しうる精神状況(aconditionドであ るかもしれないが,その場合ですら,その診断にはなお議論の余地が ありうるところである。まして        ー 通常は素人的な感覚と経験しかない    ー しかも拘禁という圧力が生じている状況下でそのような診 九 六 断をすることは より一層困難な作業となる。」(下線は引用者)  委員会としては,かかる判定が今後も取調官の裁量に依存せざるをえな いことを認めたうえで,公聴会での意見聴取を踏まえ,かかる判定に関す る研修を改善し,ひいてはその判定のためのガイドライン導入を目指すと いう観点から,警察官がもっと容易にそのような精神状況を探知し,必要 一 61 28−2−304(香法2008)

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九五 被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(1)(京) に応じて専門家の指示を求めることができるようにするための取組みがな        鴎 されるよう勧告したのである。  (2)その他の勧告  それに続けてさらに,委員会は大きく分けて次の2点についても勧告し た。まず第一点として,精神的ハンディキャダプという問題を超えて,取 調官がその相手方に対して少しでも「精神病」の疑いを持った場合には, その有無を判定するまでもなく,直ちに医師が呼ばれなければならないと       ㈲ いうことである。第ニ,点として,少年の場合にも同様の問題があったが, 第三者の立合いを制限レうる「可能な限り(asね1・ as PI・acticable)」という 文言の内容を詳細に検討すぺきであり,少年の場合同様,立,会いなしに取 調ぺが行われるのは(第三。者の生命の危険がある等)緊急事巷につきやむ を得ない場合に限られるぺきであること,また,このような例外的な取扱 いがなされる場合の意思決定およびその記録の義務化についても,少年の 場合同様に規定されるべきだということである。 4.第三者立会いの目的についての王立委員会の理解  これらの勧告からは,第三者の立合いを積極的に推進しようとする王立 委員会の意図を看取七うる。その背景には,コンフェイト事作等の冤罪事 件への反省があることは明らかであろう。そのような反省は,第三庸が立l ち会うことの目的についても反映されているように思われる。そして,か かる目的について王立委員会は,ソーシャル・ワー・カーとの関係で次のよ 引こ述べている。 「ソ・-・シャル・ワー・カ・−の役割 Para。4.108  取調べ(interview)には、様々な立、場のソ・-シャル・ワー・カーが立 ち会う場合もある(自治体のソーシャル・・ワーカーノプロベーショ 28−2−303(香法2008) 一 62 −

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オフィサー,当該精神的ハンディキャップを持つ者に特別な責任

を負う者)。それらの者の役割,貴任及び義務の本質は,特に少年の 取調べに立,ち会う場合には,より一層明らかとなろう。その場合,当 該少年をケアしているかどうかに関わらず,そしてまた,専,門的には 「親の代わりに(in loco Par・ents)」立,ち会っているかどうかに関わら

ず,当該ソーシャル・ワー・カーは,当該少年の親と同じ機能,つまり 援助し助言するという役割を果たさなければならないし,当該少年と 秘密に話す機会を保障されなければならない。一般的に言って,ソー シャル・ワーカ・−が取調ぺに立。ち会うのは,その相手方(それが少年 にせよ精神的ハンディキャップを持つ者にせよ)が,自己に対レて発 せられている質問を理解できるようにするためである。ソーシャル ワー・カーは法的助言者として行動しようとしてはならない。我々が提 案しているのは,通常の勤務時間外にもソーシャル・ワ・−カー・を常に 派遣できるような態勢作りについて,自治体に何らかの義務を課すこ とが必要なのではないかということなのである。」(下線は引用者)  従来から指摘されているように,少年や精神的ハンディキャップを持つ 者は,彼暗示性や迎合性が強いという心理的特性の故に,自己に対して発 せられている賀問の意昧をよく理解しないまま,迎合的な供述をしてし まったり,そうでなくとも自己の主張や意見を正士く伝えられない場合がI 多い。まして,拘禁されている状況ではなおさらであろう。王座委員会が, 上記のように第三者立,会いの目的を,拘禁された少年または精神的ハン ディキャデプを持つ者が質問の意昧を理解できるようにするためと指摘 し,そのための援助の必要盤を説いたのも,それらの者の心理的特性が虚 偽自白をもたらしやすく,他方でまた,傷つきやすい被疑者は自己長現力 に乏しい(端的に言えば,防御力が弱い)ことへの,深刻な反省の現れで あると言うこともできるであろう。 一 63 28−2−302(香法2008) 九四

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九三 被疑者取調べにおける精神障害者等の倶述の自由(1)(京) 5.小括  本章では,少年・及び精神的ハンディキャップを持つ青年の冤罪事件(コ ンフェイト事作)への反省が大きな契機となって,精神的ハンディキャッ プを持つ者の取調べにも,少年,の場合と同様の第三者立,会いの規定が創設 されるに至,ったこと,そこでは精神的ハンディキャデプを持つ者の供述の 信用t生の担保が立,会いの趣旨・目的とされており,そのことがひいては手 続の公正さの実現とも通底しうること,さらに他方で,特に精神的ハン ディキャップを持つ者との関係では,王立委員会が設立,される以前から, 警察官による精神的ハンディキャップの有無の判定が困難であるという実 務上の問題点が認識されてきたことを,AAが創設されるに至るまでの歴 史的経緯を辿りつつ薙認した。  そこで次章では,かかる経緯を踏まえた上で,実際に創設されたAA制 度の概要・を実務規範の条文をもとに検尉したうえで,あらためてAAが少 年,及び精神的ハンディキャップを持つ者の取調べに立,ち会うことの趣旨を 確認していくことにしたい。 Ⅲ.AA制度の概要及び目的 1.AA制度の対象  前章においては,AAがPACE法体系下において制度化されるまでの経 緯について,従来の法規定とそれらに関する王立倭員会の勧告を中心に概 観したら本稿ではその後の議会での立,法状況等についてまで詳細に検討す る余裕はないが,従来の立合いの制度と立,法化されたAA制度との間で看 取できる明確な違いとして,1点だけはじめに指摘レておきたい。それ は,従来の制度では第三者立会いによる援助の対象(つまり取調ぺの相手 方)は必ずしも被疑者に限定されておらず,したがってぞの者が身体拘束 されているかどうかを問わなかったのに対し,AAでは文言上明確に「逮 捕・留置された被疑者」に対象が限定されていることである。 28−2−301(香法2008) 一 64 一

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 そのような違いが生ずるに至った理由とレては,PACEの制定を通じて 従来の判例法や個々の法規範が体系化されたことに伴い,AAのような援        ㈲ 助制度も,その対象を身体拘束された被疑者に限定したうえで,少なくと もそれらの者に関する限りはAAの必要的な立,会いを制度化したものと理        ㈲ 解できるのではないだろうか。その背景には,やはり過去の冤罪の主たる 原因であった虚偽自白が,逮捕・・留置された被疑者に対する取調べの中で もたらされたものであったこと,しかも,身体拘束されること自体が,一 般的・類型的に傷つきやすいとされる披疑者への援助の必要盤をより一層 高めるからとの認識を指摘できるであろう。       ㈲  これらの点を踏まえ,以下ではAAが逮捕・・留置された披疑者に対して 適用される制度であることを前提に,その具体的な内容について紹介・検 討する。なお,実務規範Cには付則Eとして「精神障害者及びその他の 精神的に傷つきやすい者に関する規定の要約」も付されている。この付則 は,精神障害者等に対するAA制度の概要・を知るうえできわめて有用であ るが,本稿では,かかる要・約は本章床尾に参考貢料としてその邦訳を掲載 することとし,本文中で実務規範の条文を参照するに際しては,要約中の 番号ではなく実務規範本則での条文番号を参照することとする。 2.精神障害者等の定義  被疑者が這捕され警察署に引致された場合(警察署に任意に出頭した後        肘 で逮捕された場合を含む。以下,同じ),留置管理官(custody officer)は, 「被留置者が(その年指に関わらず)精神障害者若しくはその他の精神的

に傷つきやすい者(mentallydisoldeled or othelwise mentally vulnerable)で あること又は自己に対する賀摺若しくは自己の回答の意義を精神的に理,解 することができない者であるとの疑いをもったとき,又は善意でその旨知 らされたとき」は,当該被留置者を精神障害者又はその他の精神的に傷つ きやすい者として扱わなければならない(COP C 1.4)。  そこで,問題となるのは,いかなる者がそのような精神障害者又はその 一 65 − 28−2−300(香法2008) 九二

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九一

被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(1)(京)

他の精神的に傷つきやすい者に該当するかである。この点について,実務 規範Cの指導注記(Notes for Guidance)1Gは,次のように規定している。

「『精神的に傷つきやすい(mentally vulnerable)』とは,その心神の状 態又は能力のゆえに,自分に対レて言われていること,自分への質問

又は自分の返答の意義を理解しないおそれがある被留置者をいう。『精

神障害(mental disolder)』とは,1983年精神衛生。法1条2項におい

て,『精神梢(mental illness),精神の発達遅滞(alrested or incomplete

development of mind),精神病質(psychopathic disorder),その他の精 神の障害又は無能力(any Other diS01deI OI・diSabilityOfl mind)』として       ㈲ 定義されているものをいう。留置管理官が被留置者の心神の状態又は その能力について疑いを持ったときは,当該被留置者は精神的に傷つ きやすい者とレて扱われ,AAが呼・ばれなければならない。」  まず「精神障害(mental disoldel)」から見ていくと,ここでは精神障害 のカテゴリが示されているだけで,たとえば「精神病(mental illness)」 ひとつとっても,それが具体的にどのような症状を意昧しているかは必ず         ㈲ しも明らかでない。もっとも,精神病の典型例としては統合失調症 (Schizophlenia)を挙げることができるほか,「精神障害(mental disorder)」 全体との関係で掴えば,不安状態(Anxiety States),うつ(DePlession)。       図 人格障害(Personality Disorders)なども挙げることができるであろう。  他方で,上記1Gで最も示唆的なのは,「精神的に傷つきやすい (mentally vulnerable)」という概念について定義されでいる点であろう。そ こで,どのような場合に「その心神の状態又は能力のゆえに,自分に対し て言われていること,自分への質問又は自分の返答の意義を理解しないお それがある」と言えるかどうかが重要である。この点について示唆を得る 28−2−299(香法2008) - 66 −

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ためには,「精神的に傷つきやすい(mentally vulnelable)」という文 いられるようになった経緯について見ておく必要がIある。 言が用  そもそもこの「精神的に傷つきやすい」という文言は,実務規範の制定 当初から用いられていたわけではない。その制定当初に用いられていたの は,「精神的なハンデイキヤップのある者(mentally handicapped)」という 文言である。それがPACE以前の内務省訓令の規定を踏襲したものであ ることは明らかであろう(その詳細については前章参照)。それが改正,さ        糾 れたのは,2003年・のことである。その背景としては,たとえば学習障害       聯 (1eaming disabilities)のように,1983年瀬神衛生法所定の精神障害に該当 するとは必ずしも診断できない,その意味で新たに承認された障害ないし は傷つきやすさ(vulnerabilities)に対応するためであることを示唆する文     叫 献がある。そのことは,敷行して言えば,心理学ないしは精神医学の進展 に対して刑事司法もある程度柔軟に対応できるようにするための改正,で       糾 あったと評価することもできるであろう。 3.AAへの通知及び出頭要請  もともと逮抽・留置された被疑者には,自分が逮捕されたことを「亥2 人,親族,知人,その者の福利に関心があると思われる者」に通知させる        紬 権利が保障されている(PACE 56, COP C 5)。これに加えて,違抽・留置 された者が精神障害者等に該当する(又はその疑いがある)と留置管理官          糾 が判断した場合には,少年,の場合同様,留置管理官は,遅滞なく当該留置 の理由及び被留置者の所在をAAに対して通知するとともに,AAに警察 署へ出頭要請するものとされている。それについて,実務規範C3.15は 以下のように規定している。 「被留價者がI,少年。精神障害者又はその他の精神的に傷つきやすい 67 − 28−2−298(香法20㈲ 九〇

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八九 被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の白由(1)(京) 者であるとき,留置管理官は,遅滞なく: ・AA…に対し,以下のことを通知しなければならない。  》・当該留置の理由  》・被留置者の所在 ・当該AAに対し,被留置者と面会させるため警察署への出頭を要・請 しなければならない。」  そこで は,つま ゛’り 次に問題になるのが,そのような出頭要請をなすぺきAAと AAの担い手厄はどのような人物を指すのかという点である。 4.AAの担い手  これについて規定するのが,実務規範C 1.7及びその運用注記1Dであ る。そこでは,次のように規定されている。 「AAとは,。以下の者を童味する (a)少年の場合:  (i)栽,後見人,又は,少年が自治体若しくはポランティア機関   (voluntary organization)の保護下にあるとき若しくは1989年児   童法に基づく養護下にあるときは,当肢自治体若しくは当該機関   の者。  (ii)白治体の社会福祉局のソーシャル・・ワー・カ・-・  旧 そのいずれをも欠。くときは,警察官又は警察に雇用されている   者を除く18歳以上の責任ある大人(responsible adult)。 (b)精神障害者又はその他の精神的に傷つきやすい者の場合: 28−2−297(香法2008) 68

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(i)親族,後見人,その他その者のケア若しくは監護に責任を負う  者。 (ii)精神障害者又は精神的に傷つきやすい人々の扱いに習熟  (expelienced)している者。ただし,警察官又は警察に雇用され  ている者を除く。 山 i)ぞのいずれをも欠くときは,警察官又は警察に雇用されている 者を除く18歳以上の責任ある犬人GesPonsible adult)。」  文言上は,(O親族等が優先的に規定されてはいるが,運用注記1Dによ れば,原則として(ii)所定の者を優先すべきものとされる。そこではに次の ように規定されている。 「精神障害者又は精神的に傷つきやすい人々の事案において,AA は,そのような人々のケアヘの習熟や訓練を欠く親族よりも,そのよ うな習熟や訓練について資格を有する者である力が望ましい。ただ し,当該被留置者が,資格のある第三者よりも親族を望むとき,又は 特定の人物がAAとなるのに反対の意思を示したときは,ぞの実現が 可能であるときは,その意思を尊重しなければならない。」  なお,少年の場合(a)とは異なり,精神障害者等の場合には,AAとして 誰を呼ぶかについて披留置者の選択権が文澗上明記されている点が特徴的 である。 5.被疑者取調べに立ち会うまでのAAの主な役割  AAには,彼疑者取調べへの立.会い以外にも数多くの役割が期待されて    劾 いるが,こごでは被疑者取調べを検討する前提として,AA出頭後の権利 一 69 28−2−296(香法2008) 八八

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八七 被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(1)(京) 告知への立,会いについて概観しておく。  被違抽者が警察署に引致された場合,一般に被疑者には,まず以下の諸 権利が告知される(COP C 3.1)。 ・逮捕されたことを誰かに伝える権利 ・・ソリシタ・-と内密に相談する権利及び無料で法的助言が受けられる  ということ ・実務規範を参照する権利  この権利告知は,AAがすでに警察署に到着している場合にはその立,会 いの下で,まだ警察署に到着していない間に告知された場合には,AAが 到着次第,もう一度ぞの立会いの下で行われなければならない(COP C 3.17)。これらの権利等について記載した書面を被留置者に交甜し,それ に署名を求める場合も同様である(COP C 3.2-3.5,3.17)。  また,被留置者には,AAの義務には自己への助言と援助が含まれてい ること,そレでAAとはいつでも内密に相談することができる旨が助言さ れなければならない(COP C 3.18)。そのー・方で,AA自身は,被留置者 本人が求めていない場合でも,本人の利益のために,法的助言を得るため ソリシターを求,めることができる(COP C 3.19)。法的助君が求められた 場合には,原則として取調ぺを行うことはできず又は継続中の取調べは中 断されなければならないがづCOP C 6.6),さらにその場合には,被留置 者本人が望むのであればいつでも,AAのいないところでソリシターと内 密に相談できる機会が与えられる(COP C Note 1E)。

 これらの立,会いの意義について総括して言えば,AAの役割とは,(傷 つきやすい)被留置者に助言や権利行使を肋ける等の援助をすることに

よって,そこで自分になにが起こっているのか,なぜ起こっているのかを

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       紬 理解させることにあると言えるであろう。その最も重要な場面の一つが彼 疑者取調べであるということができる。 6.被疑者取調べにおけるAAの立会いとその役割及び目的  (1)被疑者取調べにおけるAAの立会いに関する規定  被疑者取調べへのAAの立,会いについて,実務規範cn.15は次のよう に規定している。 「少年又は精神障害者若しくはその他の精神的に傷つきやすい者は, AAのいないところで刑法犯その他の犯罪への関与若しくはその嫌疑 について取調べを受け,又は警告の下に作成された供述書面若しくは 取調ぺ記録への署名やその提出を求められてはならない。但恚,パラ       糾 グラフn.1及び11。18から11.20が適用されるときはこの限りでな い。指導注記11Cを・参照。」  なお,披疑者取調べに先立,って黙秘権告知が行われる場合,つまり「あ なたは何も言う必要がありません。しかし,質問されたが何も答えなかっ た事柄に依拠レて後に裁判所で弁論した場合には,それによって不利に扱 われることがあります」という警告がなされる際にも(COP C 11. 1A,10.1, 10.5),やはりAAの立,会いが必要であり,その警告がAAのいないとこ ろでなされていた場合には,AAの立,会いの下で改めて警告し直さなけれ ばならない(COP C 10.12)。  (2)被疑者取調べにおけるAAの役割  では,被疑者取調べにおいてAAに期待される役割とはなにか。この点 について実務規範C 11.17は以下のように規定している。 - 71 − 28−2−294(香法2008) 八 六

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八五 被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(1)(京) 「AAが取調ぺに立.ち会っている場合,AAには以下のことが告知され るものとする: ・AAには,単に傍観者として行勤することが期待されているのでは  ないということ; ・AAがI立ち会う目的とは:  y 取調べを受ける者に助言をし  ≫取調べが適切かつ公正.に行われているかを観察し  y 取調べを受けている者とのコミュニケーションを促進すること    である.」  条文上は「目的(pulpose)」と表現されているが,機能的にはそれは取 調べにおけるAAの「役割」とレて理解すべきであろう。助言にせよ観察 にせよコミュニ,ケーションの促進にせよ,そもそもそれらが何のために必 要かと問われれば,やはり(次に述べるように)傷つきやすい被疑者の供 述の信用性を確保するためと考えられるからである。以下,順次検討す る。  まず,傷つきやすい被疑者に「助言」をするのは,AAの重要な義務の 一つである(COP C 3. 18)。そのために,傷つきやすい被疑者とAAとは いつでも内密に相談することができるし(同条項),必要がIあれば取調ベ        帥 の中断を求めることもできる。  次に,AAが,取調べが道現ト公正に行われていないと感じた場合,例 えば警察が,傷つきやすい被疑者を混乱させるような,反復的なもしくは 抑圧的なやり方で発問した場合には,AA自身がそれに介入できるのはも ちろん,ソリシターによる法的助言を得るため,取調べの中断を求めるこ      糾ともできる。取調ぺが長時間に及んだり,被疑者が困惑(distressed)を感        糾じ又は気分が悪くなった場合も同様である。なお,このような取調べの公 28−2-293(香法2008)      −72 −

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正。さの担,保としてのAAの役割については,次の「目的」の項でも触れる。  最後に,「取調べを受けている者とのコミュニケーション」とは,AA と被留置者とのコミュニ,ケーションではなく,捜査官と傷つきやすい被疑        糾 者とのコミュニ,ケー・ションを意昧する。ただし,ここでいうコミュニ,ケー ションとは,我が国の捜査実務でしばしば示唆される,自白の獲得を目的 とし,密室での被疑者との信頼関係の構築を前提とした取調べのあり方と は全く異なる。そこでは,傷つきやすい被疑者が自己の置かれた状況や自 己への発問並びに白己の供述の意昧を理解できるよう,徹底して警察から は独立,した第三者からの援肋,監視,そレて介入が問題とされているから    糾 である。  (3)被疑者取調べにAAが立ち会う目的  では,そもそもこのようなAAの立,会いや役割はなぜ必要とされている のか。この点は,実務規範の文言にも示唆されている。規範C指導注記 ncは次のように規定している。 「少年又は精神障害者その他の精神的に傷つきやすい人々は,しばし ば信用性のある証拠を提供することもできるが,一定の状況下では, その意昧を知らず又はそうすることを望まないのに,信用性がなく, 誤解を招きやすく,又は白己負罪的な情報を提供する傾向が顕著であ る。ぞのような人物に質問する場合には,常に特別な配慮が払われる べきであり,相手方の年齢,精神状態もしくは能力に疑義がある場合 には,AAが関与すぺきである。信用性を欠く証拠を提供する危険が あるため,可能な限り,承認を得た事実に関する袖強証拠を得ること も重晏である。」 73 28−2−292(香法2008) 八四

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八三 被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(1)(京)  このように,AAが立,会い,援助・助言することの目的は,直接的に は,傷つきやすい被疑者の供述の信用性を確保する点にあることを確認で きる。もっとも,前章でも指摘したとおり(H.2.〔3D,AAが創設され るに至る経緯からは,傷つきやすい披疑者の取調ぺに第三者が立,ち会うこ との究極的な目的は,虚偽自白による冤罪を防止するという観点から,そ のような被疑者の供述の信用性を確保し,もって手・続の公正。さを実現しよ うとするものと考えることができる。そのことは,前農でも見たとおり, AAには取調べの公正,さの担保という役割も期待されていることからも窺 い知ることができるであろう。そして,AA制度の究極的な目的が,その ような手続の公正さという点に通底しうることは,次に見るように,AA の立合いがなかった場合の効果を知ることで,より一層明らかとなるであ ろう。  (4)立会いがなかった場合の効果∼自白の証拠排除との関係  上記・・実務規範C 11.15に違反しでAAの立,会いなしに取調ぺが行われ た場合又は立。会い自体はあったが有効な援助がなされなかった場合には, そこで得られた傷つきやすい被疑者の供述は,PACE78条(不公正に得        紬      紬 られた証拠の裁量的排除)又はPACE 76 条(自白法則)に基づいて証拠       劫 から排除される場合がある。いずれの条文が適荊されるかは事・案次第であ るが,事・案の集積が見られるのは柏者(裁量的排除)のほうであるように     紬 思われる。もっとも,立,会いがなかった場合や有効な援肋がなかった場 合,そこで得られた供述を証拠排除するかどうかについて,致判所の態度       紳 は必ずしも定まっていない。その点については,むしろ消極的な評価も存      帥 在している。  しかし,AAの立会いの有無を含む実務規範の不遵守が裁量的証拠排除 の対象になりうるという事奥は,AAの立,会いもまた手続の公正さの担保 と密接に関連レていることが,司法的にも確認されたことを示唆するもの である。また,前章でも見たように(H.2〔3D,取調べが不公正なもの 28−2−291(香法20㈲ 一 74 −

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であってはならないことは,AAが創設される以前からイギ刀スでも承認 された法原則であり,それがPACE法体系の下では否定されたと考える べき理由は存在しない。むしろ,実務規範C所定の個々の準則が,その       如 原則を具体化していると見るべきであろう。したがって,AA制度の究極 的な目的もまた,手続の公正,さと通底レているものと考えられるのであ  叫 る。  なお,PACEには,精神的ハンディキャップのある者(mentally handicapped persons)の自白の信肝匪に関して,その自白が第三者の立冶いなくして 得られた場合には,その自白を信用して被告人を有罪とするには特に慎重       ㈲を要する旨を陪審に警告すべき旨の規定もある(PACE 77)。ただし,AA の立,会いとの関係では,上記のように主にPACE 78 ・76 条の問題とし て,すなわち証拠排除(日本的に言えば証拠能力)の問題として扱われる       ㈲ため,77粂が問題となる事・案はほとんどないとされる。 7.小括  本章では,前章(AA創設に至る経緯)を・踏まえたうえで,精神障害者 等の遣抽・引致後,AAが警察署に出頭し,取調べに立,ち会うまでの手続 を中心としてAA制度を概観するとともに,被疑者取賠べにおけるAAの 役割を検討した上/で,AAが被疑者取調ぺに立ち会う目的は,直l接的には 精神障害者等の供述の信用性を担保するためであるが,究極的には,虚偽 自白による冤罪を防止するという観点から,ぞのような被疑者の供述の信 用性を確保し,もって手・続の公正,さを担保しようとするものであること, そのことはまた,AAの立会いがなかった場合等に関する自白の証拠排除 論からも推知しうることを明らかにした。  AAに関する裁判例の詳細な検討(とくに裁量的証拠排除論との関係) は今後の課題であるが,これらを踏まえて以下では,精神障害者等の判定 をめぐる問題(Ⅳ章う,そレて運用上の諸問題に対するイギリスの取組み (V章:)について検討を加えていくことにしたい。 一 75 28−2−290(香法20㈲ 八二

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八 −¥ 被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(1)(京) 【参考資斜】 実務規範C付則E「精神障害者及びその他の精神的に傷つきやすい者に 関する規定の要約」 1.「留置管理官は,被留置者が(その年齢に関わらず)精神障害者若し   くはその他の精神的に傷つきやすい者であること又は自己に対する質   問若しくは白己の回答の意義を精神的に理解することができない者で   あるとの疑いをもったとき,又は善意でその旨知らされたときは,当   該彼留置者は,本規範においては精神障害者又は精神的に傷つきやす   い者として扱われる。パラグラフ1.4参照。」 2.「被留置者が精神障害者又はその他の精神的に傷つきやすい者である   ときは,『AA』とは,以下の者をいうX    (i)親戚,後見人。その他その者のケア若しくは監護に責任を負う者。    (ii)精神障害者又は精神的に傷つきやすい人々の扱いに習熟     (experienced)している者。ただし,警察官又は警察に雇用され     ている者を除く。    田そのいずれをも欠くときは,警察官又は警察に雇用されている者     を除く18歳以上の責任ある大人GesPonsible adult)。        叫   パラグラフ1.7(b)及びノート1D参照。」 3.「留置管理官が,精神的に傷つきやすい者又は精神病に罹患しでいる   と思判される者の留置を許可したときは,当該留置管理官は,実行可   能な限り速やかに,AAに対し,当該留置の理由及び被留置者の所在   を通知し,警察署に出頭して被留置者と面会するよう求めなければな   らない。 もしAAカ柁  ・すでに警察眉に出頭しているとき,パラグラフ3.1から3.5所定の権   利告知(弁預権等2訳者注)は,その立合いの下で行われなければな   らない。  ・まだ警察署に出頭ルていないときは,パラグラフ3.1から3.5所定の   権利告知は,AAが到着次第,もう一度その立,会いの下で行われなけ 28−2−289(香法2008) - 76

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4 5 6 7 ればならない。」 パラグラフ3.15から3ユ7参照。 「法的助言の権利を告知されたあとで,AAが法的助言が必要である と思料するときは,当該精神障害者又は精神的に傷つきやすい者が法 的助言を求めたものと見なして,セクション6の規定を遮用する。パ ラグラフ3.19及びノートE1参照。」 「被留置者が精神病に罹患していると思料されるとき,留置管理官 は,合理的に実行可能な限りで速やかに当該被留置者が適切な診療が 受けられるよう手配し,緊急の場合には直ちに直近の専門医又は款急 車,を呼ばなければならない。ただし,これらの措置は,1983年・精神 衛生法136条が適用可能な場合に,同条項に基づく被留置者の安全な 場所への移送を遅らせるものであってはならない。同法に基づく判定 (assessment)が警察署で行われるとき,留置管理官は,被留置者に対 する最初の医療チェックを行うために専門医を呼ぶべきかどうかを検 討しなければならない。パラグラフ9.5及び9.6参照。」 「1983年精神衛生法136条に基づいて精神障害者又はその他の精神的 に傷つきやすい者が留置されたときは,遅滞なく判定(assess)が府 われなければならない。当該判定が警察署で行われるときは,公認の

ソー・シャル・ワー・カー(an apProved social workel)及び登録医師

(legistered medicaI Practitioner)が遅滞なく警察署に呼ばれ,被留置者 と面接及び診断をするものとする。被留置者と面接及び診断のうえ, その処遇又はケアが道切に手・配されたときは,被留置者は同法に基づ いて留置されてはならない。登録専門医が診断して,当該被留置者は 同法が対象とする精神障害者ではないと判定したときは,被留置者は 直ちに駅放されなければならない。パラグラフ3.16参照。」 「精神障害者又はその他の精神的に傷つきやすい者が,AAの立,会い のないところで取調ぺ前の警告を告知されたときは,当該警告はAA の立合いのもとで繰り返されなければならない。パラグラフ10.12参 77 − 28−2−288(香法2008) 八〇

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七九 被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(1)(京)   照。」 8.「精神障害者又はその他の精神的に傷つきやすい者は,パラグラフ   11.1又は1L18から11.20が適用される場合を除き,AAの立,会いが   ないところで取調ぺを受け又は供述書に署名を求められてはならな   い。パラグラフ11.1又はn。18から11.20が適用される場合の取調   べも,危険を回避するのに十分な情報が得られたときは,以後AAの   立,会いがないまま続けられてはならない。パラグラフn。1又はn.18   から11.20に基づいて取調べが行われるときは,ぞの理由を記録に残   さなければならない。パラグラフ11.1,11。15又は1L18から11.20   参照。」 9.「AAが取調べに立ち会っているとき,AAには,単に傍観者として立   ち会っているのではないこと,その立,会いの目的は以下の点にあるこ   とを告げなければならない。  ・取調べを受けている者に助言すること  ・取調ぺが適切かつ公正。に行われているかを観察すること  ・取調ぺを受けている者とのコミュニ,ケーションを促進すること   パラグラフ11.17参照。」 10.「精神障害者又はその他の精神的に傷つきやすい者の留置が,留置管   理宮又は警視により審査されるとき,AAには,ぞのとき可能であれ   ば,留置継続の必要性について審査官に対レてプレゼンテーションす   る機会が与えられなければならない。パラグラフ15.3参照。」 11.「留置管理官が,精神障害者又はその他の精神的に傷つきやすい者を   犯罪で正式告発するとき,又は訴追するための十分な証拠が存在して   いる場合の他の適切な措置をとるときは,AAの立合いのもとでこれ   を行わなければならない。訴追の内容を明らかにする書面は,AAに   対して渡さなければならない。パラグラフ16.1参照。」 12。「精神障害者又はその他の精神的に傷つきやすい者に対する身体の秘   部への捜索又は着衣を脱がレての捜崇は,同性のAAの立,会いの下で 28−2−287(香法2008) 一 78 −

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  のみ行うことができる。ただし,当該被留置者が特定の異性の立,会い   を求めたときは,この限りでない。着衣を脱がしての捜素は,当該被   留置者又は他者に対する深刻な危害の危険が存在する緊急の場合に限   り,AAの立,会いがなくとも行うことができる。付則A,パラグラフ   5及び11(c)参照。」 13.「留置酉にいる精神障害者又はその他の精神的に傷つきやすい者に対   レて拘束器具を課すかどうかを決定するに際レては,慎重,な考慮を払   わなければならない。パラグラフ8。2参照。」

Notes for guidance

E1.「パラグラフ3.19の目的は,精神障害者又はその他の精神的に傷つ   きやすい被留置者の権利を守ることにある。それらの者は,自己に対   して言われていることの重,要性を理解しないからである。それらの被   留置者が法的助言の権利の行使を望むときは,しかるべき措置がとら   れなければならず,AAが到着するまで遅延されてはならない。精神  。障害者又はその他の精神的に傷つきやすい被留置者が望むときは,   AAが警察署に呼ばれている場合であっても,AAのいないところで   ソリシター・から内密に助言を受ける機会が常に与えられなければなら   ない。」 E2.「精神障害者又はその他の精神的に傷つきやすい人々は,しばしば信   用性のある証拠を提供することもできるが,一定の状況下では,その   意昧を知らず又はそうすることを望まないのに,信用性がなく,誤解   を招きやすく,又は自己負罪的な情報を提供する傾向が顕音である。   そのような人物に質問する場合には,常に特別な配慮が払われるべき   であり,相手方の精神の状態又は能力に疑義がある場合には,AAが   関与すぺきである。信用性を欠く証拠を提供する危険があるため,可   能な限り,承認を得た事実に関する補強証拠を得ることも重要であ   る。」 E3.「上,記六−トE2のような危険(「信用性を欠。く証拠を提供する危 一 79 − 28−2−286(香法2008) 七八

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七七 被疑者取調べにおける精神障害者等の供述の自由(1)(京) 険」:訳者注)があるため ち会うことの目的であるが 28−2−285(香法2008) その危険を最小限にするのがAAが立 警視以上の階級の警察官が,重,大 80 − な緊急の危害を避けるのに必要となる例外的な場合にのみ,その裁量 により,AAを立,ち会わせないで取調ぺを開始する権限を行使しなけ ればならない。」 (1)用語として医学上。及ぴ福祉政策上必ずしも正確とは言えないが,本稿では,精神  障害者に知的障害者も含めて「精神障害者等」という(精神保健及ぴ精神障害者福  祉に関する法律5条参照)。なお,近年裁判例でしばしば問題となっている発達障害  なども,これに含めて考支。るべきであろう。 (2)静岡地判平レ・1 ・・31 判時1316号21頁,判タ700号114頁,LEX/DB : 27921119  (確定した再・審無罪判決)。被告人は「軽度の粕神薄弱者」であったとされる。 (3)これは知的障害者が犯人とされ有罪判決が確定した事件であるが,関係者によっ  て冤罪であることが強く訴え続けられている。たとえぱ,浜田寿美男『ほんとうは  僕殺したんじやねえ。もの:野田事件・・育山正。の真実』(筑摩書房,1991年),同『取  調室の心理学』(平凡社新書,2004年・)133頁以下ほか参照。 (4)精神発達遅渫と判定された被告人の自白の任意性・信用性が問題とな・った最近の  事例として,たとま。ば,仙台高秋田支判平9・・12・・2刑弁・16号(1998年)126頁ほ  か参照。なお,知的障害者等の心理的特性については,たとえ。ば共犯者供述の信用  性に関する指摘ではあるが,司法研修所編『共犯者供述の信用性.j(法曹会,1996年・)  51頁以下参照。また,最判昭43 ・10 ・・25刑集22巻11号961頁(いわゆるハ海事件  第3次上告審判決)も,一般論としてではあるが,「供述証拠は,物的証拠と異な  り,まずその信用性について,供述者の属性(事件と無関係で供述者に本来的なも  の,例えば能力,性格)及ぴ供述者の立場・‥‥・の全般にわたり充分な検討を加ま。,も  つて信用性の存否を判断した上。その供述の採否を決しなければならない」と指技  する(977頁)。 (5)浜田・・前掲注(3)『取調室の心理学』136頁は,「わが国の法曹界は知的障害の問題  を,ほとんどといっていいほど理解していない」と指捕する。なお,聴覚障害者の  問題については,松本昌行ほか『聴覚障害者と刑事手続1(ぎょうせい,1992年)が  刊行されている。 (6)その好例として,大阪弁護士会(編)1知的障害者刑事弁塵マニュアル』(Sプラン  ニング,2006年)がある。なお,民事事件については,(旧)名古屋弁塵士会「知的  障害者民事弁護実務マニュアル」(2002年)があり,これについては愛知県弁護士会  のホー・ムー4-・ジ内で参照可能である(http://www.aibenjp/page/fiombaj・s/katudou/k-09 一

(31)

 aiz/titeki/titekj-top.htm1)。 (ア)宇都言地判平17 ・・ 3 ・・20 LEX/DB 28105419 (公訴事実の一部〔,強盗事莽〕につい  て真犯人が瑕れたため,無罪論告のうえ無罪判決が言い渡され,確定した事件)。こ  の事件の内容については,山本譲司『累犯障害者』(新潮社,2006年,)61貝以下が  詳しい。なお,この事件については,後に被告人側から県と国などに対レて本件・誤  認逮捕‥起訴をめぐって国賠訴訟が提起され,平成20年・2月28日,宇都宮地裁は  県,と国に対して慰謝料100刀円を命じる判決を出したとされる(たとえば,翌,29日  付の朝日新聞参照。本稿は,同新聞のデ・-タベ・-ス「聞蔵nビジュアル」で参照し  た)。 ㈲ たとえば,山本譲司『獄窓記』(ポプラ社,2003年)173頁以下及び同・前注『累  犯障害者』のほか,研究者の論考として,浜井恪一『刑務所の風景』(日本評論  社,2006年,)第1章,第4章ほか参照。 (9)第108矯正,統計年報I(平成18年,)168貝,及び170頁によれば,平成18年中の新  受刑者(総数33,032人)のうち,知的障害,精神病賀,神経症。その他の精神病賀  の診断を受けた者は計1,773人で5。4%にとどまるものの,知能指数(IQ)の観点か  ら見ると,知的障害の一つの目安とされるIQ 70 未満の者は22。9%(7,563人)おり,  これにテスト不能者・1,765人を加えれば,28。2%(9,328人)にも及ぶ。したがって,  テスト不能者も含めて考・えてよいとすれぱ,新受刑者の3割弱が知的障害者として  認定されるレベルの者ということになる(『累犯障害者』・拍掲注(7)13貢も参照)。  なお,知的障害の定義および知能指数に基づく分類等については,たとえば,鴨下  守孝ほか編『矯正,用語辞典』(束京法令出版,2006年)235頁ほか参照。 帥『知的障害者刑事弁護マニュアル』‥拍掲注㈲8貢。 ㈲ 同条約1条2項参照。なお,同条約の条文(政府仮訳版)については,下記の外  務省のホームベージで参照することが可能である。   http://www.mofa.go.jp/mo伺/gaiko/tlleaty/shomeiJ2 htm1 聯 たとえば,日本弁護士達合会人権擁護委員会編『障害のある人の人権と差別禁止,  法』(明石書店,2002年),とくに298貝以下参照。 叫 たとえば,以下のURLでも参照が可能である。   http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/repolt/ikensyo/indexhtm1 ㈲ 本稿では,イングランド及びウェー・ル。ズを拾す。以下,同じ。 ㈲ 上述の「意見沓」でも,「刑事司法の公正さの確保という点からは,被疑者‥披告  人の権利を適切に保護することが肝要である」とする(n。第ニ,の2(1)ア)。 ㈲ この制度は,心理学の鎖域からも注目されている。たとえば,村山満明「『傷つき  やすい人々』の供述とその被暗示性」法と心理孝会・・目撃ガイドライン作成委員会  =編『目撃供述・・識別手続に関するガイドライン』(現代人文社,2005年・)234頁以  下参照。 一 81 − 28−2−284(香法20㈲ 七 六

参照

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