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澤田 世界のリチウム資源開発の動向 3 軽くて高出力で かつ充電が可能な為 1993 年に量産が 産されている 6 また 一部の用途では鉱石由来のリチウ 始まって以降 携帯電話やノートパソコンなどの携帯機器 ム精鉱がそのまま使われることもある しかし 多くの化 に使われてきた これが 冒頭で述べたよ

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Academic year: 2021

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Sea Water Science, Japan

特集「 海水総合利用技術構築を展望して

―リチウム等を例とした高度分離技術の展開―」 (解説)

世界のリチウム資源開発の動向

澤田 明

Current Situation of Lithium Resource Development in the World Akira SAWADA*

三菱商事株式会社自動車関連事業ユニット(〒 100-8086 東京都千代田区丸の内二丁目 6 番 1 号 丸の内パークビルディング(EJ-M))

Mitsubishi Corporation, EJ-M, Marunouchi Park Building, 6-1, Marunouchi 2-chome, Chiyoda-ku, Tokyo 100-8086, Japan

1.はじめに

近年の環境意識の高まりの中で,自動車の電動化が話 題となっている.例えば,トヨタ自動車が 1997 年に発売 を開始した世界初の量産型のハイブリッド車である Prius は,2010 年の年間販売台数が 315,669 台となり,1990 年 に記録したカローラの 300,008 台を 20 年ぶりに更新し, 自動車業界団体による新車販売ランキングで過去最高を更 新した1).Prius ではその電源としてニッケル水素電池が 使われているが,このような自動車の電動化で使われる電 源が今後はリチウムイオン電池に変わっていくと言われて いる.例えば,トヨタ自動車が前述の Prius をベースに開 発し,2012 年 1 月発売開始予定のプラグインハイブリッ ド車もリチウムイオン電池を搭載している2) このような動きに伴い,将来的にリチウムイオン電池需 要の増加が見込まれ,リチウムイオン電池に使われるリチ ウムの需要も増すと考えられており,現在世界ではリチウ ム資源の開発が数多く進められている.本稿では,このよ うな世界のリチウム資源開発の動向について紹介する.

2.リチウムとは

2.1 リチウムの性質 リチウムは原子番号 3,原子量 6.941 のアルカリ金属で ある.他のアルカリ金属同様,リチウムは非常に反応性が 高く,化合物の形で取り扱われることが多い為,一般的に リチウムの量はリチウムの化合物で最も一般的な炭酸リチ ウム換算で表すことが多い. また,表 1 のようにリチウムの標準電極電位は− 3.05 V (対標準水素電極,Li+e= Li という電子授受平衡の場合) と最も卑である.しかも,密度が 0.53 g/cm3と非常に小 さい為,単位重量あたりの放電容量を大きくでき,リチウ ムは電池を作るのに非常に適している3 − 4) 2.2 リチウムの用途 図 1 のように,リチウムの用途は,ガラス添加,釉薬, グリース添加など様々な分野に亘っている. 現在最も多く使われているのは電池の原料としてで,世 界の全リチウム使用量の 27%を占める5).リチウムを使っ た電池には,一次電池の金属リチウム電池と二次電池のリ チウムイオン電池がある.中でも,リチウムイオン電池は 表 1 電池負極用物質の性質 標準単極 電位(V) 密度 (g/cm3) 放電容量密度 (Ah/kg) (Ah/dm3 Li − 3.05 0.53 3,860 2,060 Na − 2.71 0.97 1,170 1,130 Al − 1.66 2.70 2,980 8,050 Zn − 0.76 7.14 820 5,860 Fe − 0.44 7.85 960 7,550 Cd − 0.40 8.65 480 4,120 Pb − 0.13 11.4 260 2,940 図 1 世界のリチウム需要(2009 年)

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澤田:世界のリチウム資源開発の動向 3 軽くて高出力で,かつ充電が可能な為,1993 年に量産が 始まって以降,携帯電話やノートパソコンなどの携帯機器 に使われてきた.これが,冒頭で述べたように自動車の電 動化の為に使われ始めており,来年 1 月トヨタ自動車が発 売を予定しているプラグインハイブリッド車で使われる だけでなく,既に三菱自動車工業の i-MiEV や日産自動車 の LEAV などのリチウムイオン電池を搭載した電気自動車 が量産化されている.自動車の電動化では,従来用途の携 帯機器と比べ,格段に大きな容量の電池を必要とする.リ チウムメーカーである独国 Chemetall GmbH(Chmetall) を傘下に持つ米国 Rockwood Holdings,Inc.(Rockwood) の資料に拠れば,携帯電話 1 基に必要なリチウムの量が炭 酸リチウム換算で約 3 g なのに対し,電気自動車 1 台に必 要なリチウムの量は炭酸リチウム換算で約 23 kg である6) その為,自動車の電動化が進むのに伴い,電池用途でのリ チウム需要が急速に伸びることが予測されている(表 2). また,リチウムはその用途に合わせ,様々な化合物が生 産されている6).また,一部の用途では鉱石由来のリチウ ム精鉱がそのまま使われることもある.しかし,多くの化 合物の出発原料となるのが炭酸リチウムである為(その他, 塩化リチウムが出発原料となる場合も有る),本稿では炭 酸リチウムの生産に焦点を当てて論を進める(表 3). 2.3 リチウムの需給について 2009 年の世界のリチウムの生産量は炭酸リチウム換算 で 125,000 トンだった.このうち,チリ Sociedad Química y Minera de Chile S.A.(SQM) が 26 % を,Chmetall が 17%を,米国 FMC Corporation(FMC)が 14%を生産し ている.また,15%はオーストラリアで生産されたものだ が,この殆どが Talison Lithium Limited(Talison)による もので,リチウムの供給は,これら 4 社が約 7 割のシェア を持つ寡占市場となっている5) 図 2 はリチウムの最大手メーカーである SQM によるリ チウム需要の予測である.SQM は,自動車の電動化に関し, ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車・電気自動車 を合わせた電動車のうちリチウムイオン電池を使用したも のの生産台数が,2015 年には 1.2 ∼ 1.4 百万台,2020 年に は 5.0 ∼ 7.5 百万台(2020 年の世界の自動車生産の 10%) と予測している.それを元に SQM は,現在の炭酸リチウ ム換算で年間 10 万トン前後のリチウム需要が,2020 年に は 24 ∼ 27 万トン(炭酸リチウム換算),2030 年には 45 ∼ 50 万トン(炭酸リチウム換算)に急拡大すると予測し ている5).一方,現在のリチウムの生産能力は,炭酸リチ ウム換算で年間 15 万トン程度と言われており,このよう 表 2  Lithium Carbonate usage depends on the type of battery6)

(和訳後,単位を SI 単位系に変換) 用途 リチウム含有量 (炭酸リチウム換算) 携帯電話 3 g ノート PC 30 g パワーツール 30 ∼ 40 g プラグインハイブリッド車(16kWh) 約 9 kg 電気自動車(25kWh) 約 23 kg 表 3 リチウムの化合物およびその用途6)

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な需要の急増に対応するには,リチウム生産能力を増すこ とが必要だと言える.特に日本は世界で有数の自動車産業 を持つ国であり,自動車の電動化では先駆的な存在である こと,リチウムイオン電池を世界で始めて量産化した国で あり,リチウムイオン電池やその材料の生産の多くが日本 で行われていること,を考えると,日本にとってリチウム の安定的な供給は重要だと言える(図 3). 2.4 炭酸リチウムの製造方法 リチウムを生産するには,かん水(塩湖にある塩分が多 い地下水)からの生産と,鉱石からの生産の 2 通りがある. 寡 占 し て い る 4 社 の う ち,SQM,Chemetall,FMC の 3 社は塩湖のかん水から,Talison は鉱石から生産しており, リチウムの 7 割程度が塩湖かん水から生産されていると見 られている5) 塩湖のかん水からリチウムを作る場合,まず塩湖の地下 からかん水を汲み上げる.これを大きなプールに貯め,太 陽熱や風を利用し,水分を蒸発・乾燥させ,塩や塩化カリ ウムなどを析出させることでリチウムの濃縮を進める.塩 湖のかん水中に含まれるリチウムは濃くても 0.05 ∼ 0.2% 程度と言われているが,このような濃縮によりリチウムの 濃度を 4 ∼ 6%まで高めることができる.こうして濃縮さ れたかん水に炭酸ナトリウム(ソーダ灰)を加えることで, 炭酸リチウムを沈殿させ,これを濾別,乾燥し製品として いる.

図 2 Lithium Value Chain6)

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澤田:世界のリチウム資源開発の動向 5 これに対し,鉱石から生産する場合は,硫酸法と石灰法 の 2 通りの方法があるが,通常は硫酸法が採用されている. 硫酸法では,まずリチウム精鉱を硫酸化焙焼または硫酸化 溶解し,硫酸リチウムとする.その硫酸リチウムを水で抽 出し,中和した後に,その溶液に炭酸ナトリウムを加える ことで炭酸リチウムを得る7)(図 4). 塩湖かん水からの生産と,鉱石からの生産を比較する と,プロセスが既に確立されていることや初期投資が小さ いことという観点から,鉱石からの生産の方が塩湖かん水 からの生産よりも生産開始や生産能力拡張が容易だと言わ れている.一方で,太陽熱や風という自然のエネルギーを 最大限活用できる事から,塩湖からの生産の方が鉱石から の生産よりも操業コストが安く,有利だと言われている8) 需要家はコスト競争力のあるリチウムを求めていることか ら,リチウムの生産では今後も塩湖かん水からの生産が主 流だと思われる. しかし,塩湖かん水からリチウムを生産する場合,かん 水の組成により濃縮の進み方が異なり,必要となる薬剤の 種類・量等に差が出る為,どのようなプロセスでリチウム を回収するかにより操業コストに大きな差が生じる.その 為,今後十分な生産能力を確保する為に新しい塩湖の開発 を進めるに当たっては,十分なコスト競争力を持つリチウ ムの回収技術の開発が重要である.

3.リチウム資源開発の現状

3.1 リチウムの資源量と埋蔵量 2011 年にアメリカ地質調査所はリチウムの埋蔵量を炭 酸リチウム換算で約 7,000 万トンと発表した9).この埋蔵 量は,現在のリチウム需要が炭酸リチウム換算で年間 10 万トン前後,そして将来的には年間 50 万トン(炭酸リチ ウム換算)程度になるとしても,需要を賄うのに十分な量 である.しかも,海水やボリビアのウユニ塩湖かん水など に含まれるリチウムは,まだ適切な回収法が開発されてお らず,埋蔵量としては計算されていない.今後の回収法の 開発により,これらも埋蔵量とみなせるようになる可能性 があり,リチウム資源の枯渇を心配する必要は無いと思わ れる. 3.2 主要なリチウム資源開発案件 図 5 は現在リチウム生産の操業地および知名度の高い開 発計画をまとめたものである.これを見ると塩湖かん水資 源開発案件が南米と中国内陸部(青海省や西蔵自治区)に 集中していることがわかる.このうち南米の方は,チリ, アルゼンチン,ボリビアに跨る,標高 4,000 m 前後の高地 で,Puna Plateau と呼ばれる. このように偏在しているリチウム資源(特に塩湖資源) に対し,今後のリチウム需要の急増に対応する為,日本を 始め,各国がリチウム資源の確保や開発の支援に乗り出し ている.中でも,世界のリチウムイオン電池生産の大半を 占める日本や韓国の政府・企業は積極的にリチウム資源案 件への関与を始めている. 3.3 日本企業によるリチウム資源確保・開発の動向 表 4 は,報道等の情報を元に,日本企業によるリチウム 資源の確保・開発の状況を纏めたものである.日本企業と は言っても,ユーザーではなく,直接的には商社が中心に 図 4 炭酸リチウムの製造方法 塩湖から かん水汲上 鉱石の採掘 物理選鉱 硫酸化焙焼 ・溶解 抽出・中和 ・ろ過 ソーダ灰 添加 かん水濃縮 不純物除去 ソーダ灰添加

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なって,リチウム資源の確保や開発に取り組んでいる.こ のように多くのリチウム資源開発案件があり,日本企業も 政府の支援を受けながら取り組んでいるが,需要を満たす のに十分な生産能力が整備されるかは,今後も各案件の進 捗を注視していく必要がある.そして特に,リチウム資源 開発の場合は,十分なコスト競争力を持ったリチウムを回 収する技術を確立できるかが,十分な生産能力が確保され るか見極めるうえでの鍵になると思われる.

4.ま と め

以上のように,自動車の電動化の影響でリチウムの需要 は急増することが予想されている.日本は世界有数の自動 車産業を持ち,また自動車の電動化に使われるリチウムイ オン電池でも世界をリードしており,リチウム資源を確保 することは日本にとって意味のあることだと思われる. 一般に資源に関しては,その枯渇が心配されることが多 いが,自動車の電動化等でリチウム需要が増したとしても, リチウムの埋蔵量は十分にあり,短・中期的に見てリチウ ム資源が枯渇する心配はない.しかし,現在のリチウムの 生産能力は限られており,今後の需要の急増に併せて,十 分な生産能力が整備されることは必要である.その為,日 本の商社なども,政府の支援を受けながら,リチウム資源 開発に取組み,需要に見合ったリチウムの確保を目指して いる. 図 5 世界の主要リチウム資源 表 4 主要な日本企業によるリチウム資源開発・確保事例 企業名 パートナー 案件名 タイプ 生産開始 (予定) 生産能力 (想定) 取組内容 伊藤忠商事 Simbol Materials※ Salton Sea

(アメリカ)

地熱発電所

かん水 2013 年 16,000 トン / 年 出資 豊田通商 Orocobre※ Salar de Olaroz

(アルゼンチン) 塩湖かん水 2012 年 16,400 トン / 年

共同 F/S J/V 組成予定 三井物産 Canada Lithium Val d’Or

(カナダ) 鉱石 2012 年 20,000 トン / 年 製品引取権 住友商事

三菱商事 ボリビア鉱山公社

Salar de Uyuni 塩湖かん水 未定 未定 技術協力

三菱商事

Lithium Americas Salar de Cauchari

(アルゼンチン) 塩湖かん水 2014 年 20,000 トン / 年 出資 Galaxy Resources Mt. Cattlin

(オーストラリア) 鉱石 2012 年 17,000 トン / 年 製品引取権 ※石油天然ガス・金属鉱物資源機構の支援を受けている案件 (生産能力は炭酸リチウム換算)

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澤田:世界のリチウム資源開発の動向 7 また,リチウム資源の整備に当たっては,ユーザーのコ スト要求に応える為にも,コスト競争力がある塩湖かん水 資源の開発が必要だと思われる.塩湖かん水資源の場合, 個々の塩湖かん水組成に合わせたリチウム回収法の確立が 重要である.そして,その際には㈶塩事業センターの電気 透析・加熱晶析技術など,日本の持つ海水資源に対する技 術・知見が応用できる可能性があり,日本のリチウム資源 確保に繋がる事が期待されている.

引用文献

1) “10 年新車販売,プリウス首位 31 万台,カローラ超え過 去最高”,日本経済新聞(2011 年 1 月 11 日付夕刊)(2011) 2) “1 リットル 60 キロも プラグイン HV,12 年から続々 ト ヨタ,三菱自,ホンダが相次ぎ発売”,日本経済新聞(2011 年 11 月 10 日付電子版)(2011) 3) 国 立 天 文 台, 理 科 年 表( 平 成 21 年 ),pp.364-371,395, 496-497,丸善株式会社(2008) 4) 西美緒,“リチウムイオン二次電池の話”,pp.19-23,裳華 房(1997)

5) Sociedad Química y Minera de Chile S.A., “Corporate Pre-sentation”, pp.12-13, URL of homepage: http://www.sqm. cl/pdf/Investors/Presentations/en/SQM_Corporate_Prese ntation_May_2011_ing.pdf (2011)

6) Rockwood Holdings, Inc., “CEO Seifi Ghasemi, at Goldman Sachs Basic Materials Conference 2011, NYC”, p.37, p.40, p.82, URL of homepage: http://www.rockwoodspecialties. com/rock_english/media/ppt_fi les/ROC_GoldmanSachs_C onference_052411.ppt (2011)

7) 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構,レアメ タルハンドブック,pp.316-317,佐伯印刷株式会社(2010) 8) 阿倍幸紀,片山弘行,村上尚義,“3rd Lithium Supply & Markets Conference 2011 参加報告”,JOGMEC カレント トピックス (11-08),pp.7-8 (2011)

9) U.S. Geological Sur vey, “Lithium”, Mineral Commodity Summaries, pp.94-95 (2011)

平 成 23 年 11 月 25 日 受 付 Received November 25, 2011

図 3 SQM による需給予測

参照

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