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大腸菌の酸化ストレスセンサーSoxRSレギュロンに関する研究

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Academic year: 2021

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Title

大腸菌の酸化ストレスセンサーSoxRSレギュロンに関す

る研究( Abstract_要旨 )

Author(s)

中山, 貴之

Citation

Kyoto University (京都大学)

Issue Date

2017-03-23

URL

https://doi.org/10.14989/doctor.k20207

Right

Type

Thesis or Dissertation

Textversion

ETD

(2)

( 続紙 1 )

京都大学

博 士( 理 学 )

中山貴之

論文題目

大腸菌の酸化ストレスセンサーSoxRSレギュロンに関する研究

(論文内容の要旨)

活 性 酸 素 種 は 好 気 呼 吸 の 副 産 物 と し て 生 じ , DNAや タ ン パ ク 質 , 脂 質 な ど の 細 胞 構 成 要 素 に 損 傷 を 与 え る た め , 細 胞 や 個 体 の 老 化 の 主 要 な 要 因 と 考 え ら れ て い る 。 あ る 種 の 抗 生 物 質 や , 免 疫 系 に よ る 能 動 的 な 産 生 に よ っ て も 活 性 酸 素 種 が 生 じ る た め , バ ク テ リ ア は 様 々 な ス ト レ ス 応 答 機 構 を 備 え て い る 。 SoxRSは , 活 性 酸 素 種 の 1つ で あ る ス ー パ ー オ キ サ イ ド の セ ン サ ー で あ り , 酸 化 ス ト レ ス 防 御 に 関 与 す る 数 十 の 遺 伝 子 の 発 現 を 制 御 し て い る 。 本 研 究 は , バ ク テ リ ア の 酸 化 ス ト レ ス 防 御 へ の 理 解 を 深 め る こ と を 目 的 と し , SoxRS制御下にある遺伝子の中で,(i) 酸化ストレス誘導性の意義が不明な遺伝子(y dbK遺 伝 子 ) ; ( ii) 機 能 が 不 明 な 遺 伝 子 群 ( pqiABCオ ペ ロ ン ) に つ い て 解 析 を 行 っ た 。 第 2章で取り上げたYdbKは,ピルビン酸を基質として還元力を産生するpyruvate-flavodoxi n oxidoreductase (PFOR)と 高 い 相 同 性 を 示 す 。 既 知 の PFORは 酸 素 に よ っ て 容 易 に 失 活 す る性質を持ち,SoxRSにより誘導されることと矛盾する。YdbK過剰発現細胞からは高いP FOR活 性 が 検 出 さ れ た 。 し か し , ydbK遺 伝 子 欠 損 株 が 酸 化 ス ト レ ス に 高 感 受 性 を 示 す こ と か ら , 酸 化 ス ト レ ス 条 件 下 で も 機 能 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。 遺 伝 子 発 現 制 御 解 析 の 結 果 , ydbK遺 伝 子 の 酸 化 ス ト レ ス 誘 導 に は タ イ ム ラ グ が あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。 タ イ ム ラ グ の 原 因 と し て , ydbK遺 伝 子 プ ロ モ ー タ ー 内 の SoxS結 合 部 位 が , コ ン セ ン サ ス 配 列 と の 相 同 性 が 低 い こ と が 挙 げ ら れ る 。 以 上 よ り , YdbKは,先に発現した酵素群に守られ な が ら , 酸 化 損 傷 か ら 回 復 す る 段 階 で 働 く と い う モ デ ル を 提 唱 し た 。 第 3章で取り上げた SoxRS制 御 遺 伝 子 pqiABCは , 機 能 不 明 な 膜 タ ン パ ク 質 群 を コ ー ド し て お り , 飢 餓 条 件 下 で も 誘 導 さ れ る こ と が 報 告 さ れ て い る 。 大 腸 菌 に は ホ モ ロ グ で あ る yebSTオペロンも存在 す る が , 2つ の オ ペ ロ ン を 同 時 に 欠 損 さ せ て も , ス ト レ ス に 対 し て 感 受 性 は 検 出 で き な か っ た 。 デ ー タ ベ ー ス 解 析 の 結 果 , レ ジ オ ネ ラ 菌 に お い て , pqiBCが ABCト ラ ン ス ポ ー タ ー と オ ペ ロ ン を 形 成 し て い る こ と が 明 ら か に な り , PqiABCが膜脂質の輸送に関与する と い う 仮 説 が 立 て ら れ た 。 PqiAの ア ミ ノ 酸 配 列 に は , 既 知 の ト ラ ン ス ポ ー タ ー と 相 同 性 が 見 ら れ な い 。 し か し , 膜 ト ポ ロ ジ ー 解 析 の 結 果 , PqiAは , ト ラ ン ス ポ ー タ ー に 最 も 多 く 見 ら れ る 内 膜 6回膜貫通タンパク質であることが明らかになった。また,PqiB,PqiCタ ン パ ク 質 は , 内 膜 -外膜間を橋渡しする複合体を形成することが明らかになり,トランス ポ ー タ ー に 基 質 を 運 ぶ タ ン パ ク 質 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 さ ら に , PqiABCの過剰発現 は , Mla輸送体(リン脂質輸送体)の欠損株が示す膜ストレス感受性を相補し,pqiABC, yebSTの 欠 損 は , Mla変 異 体 の 膜 ス ト レ ス 感 受 性 を 増 大 さ せ た 。 こ れ ら の 結 果 か ら , PqiA BC, YebSTは , 膜 の 安 定 性 に 重 要 な 膜 輸 送 系 で あ る と 結 論 付 け た 。 基 質 は 特 定 で き て い

(3)

ない が , 発 現 の ス ト レ ス 誘 導 性 を 考 慮 す る と , 基 質 と な る 物 質 が 細 胞 損 傷 の 予 防 や 治 療 に 利 用できる可能性が期待される。

(論文審査の結果の要旨)

酸素分子は,呼吸鎖における電子の受容体として,好気性生物の生存に必須のもの である。通常,酸素分子は4つの電子を受け取り水分子に還元されるまで酵素複合体中 に保持されるが,部分的な還元が生じた場合,活性酸素種として知られる反応性が高い 化合物が発生する。この様な副産物としての活性酸素種の発生が不可避であることに加 え,免疫細胞やある種の抗生物質の殺菌作用にも活性酸素種が関与するため,バクテリ アの酸化ストレス応答を研究することは,基礎研究の枠を越え医学・薬学の分野にも重 要である。 近年では,スクリーニング技術の発達により,ストレス条件下で誘導される遺伝子群 の同定は容易となった。しかし,大腸菌の遺伝子の約半数はまだ機能不明であり,ま た,機能がわかっていても,ストレス条件下での役割が不明な場合も多い。スクリーニ ングから得られたデータを最大限に活用するには,個々の遺伝子の機能を遺伝学的な手 法で解析することが必要となる。そこで,本研究で, 申請者は大腸菌の酸化ストレスセン サーの1つであるSoxRSレギュロンについて取り上げ,その制御下にある遺伝子群に関す る解析を行った。 申請論文の2章で取り上げたYdbKタンパク質はSoxSによって誘導されるにもかかわら ず,酸素によって容易に失活するPFOR (ピルビン酸フラボドキシン酸化還元酵素) 活性 を持つ。また,2012年に他のグループが発表した論文では,ydbK遺伝子の上流にはSoxS 結合サイトが見当たらないと論じられていた。申請論文では,細胞抽出液中の酵素活性 測定から,YdbKが確かにPFOR活性を有することと,ydbK遺伝子欠損株の酸化剤高感受 性から,酸化ストレス抵抗性に寄与することがわかった。lacZレポーター遺伝子を用いた 発現制御解析から,SoxSによるYdbKの誘導にはタイムラグが存在することが明らかにな り,これによって,活性酸素による失活を回避していると考えられる。申請者の研究か ら, 精製SoxSタンパク質を用いたin vitroでの解析から,SoxSタンパク質はydbK遺伝子の 上流配列に結合することが明らかになった。このSoxS結合部位はコンセンサス配列との 相同性が低く,これが上記のタイムラグの原因になっていると申請者は推測している。 以上の結果で示されたように,申請者は, Ydbkの酸素高感受性とSoxS結合配列が見付か らないという2つの矛盾を解決した。 本研究の3章で取り上げた膜タンパク質群PqiABCは,SoxSによって発現が制御される ことが1995年に報告されたが,タンパク質の機能は不明なままであった。これらの機能 を解析することで,新しい酸化ストレス防御機構が明らかになることが期待される。 データベース解析の結果,ヒトの病原菌であるレジオネラ菌において,PqiB, PqiCがABC

(4)

トランスポーターと共に働くことが予測されたが,PqiAのアミノ酸配列からは,既知の トランスポーターとの相同性を見いだすことは出来なかった。しかし,申請者は, PqiAの 構造を解析した結果,ABCトランスポーターに最も多く見られる内膜6回膜貫通構造であ ることを明らかにした。また,PqiB, PqiCが,内膜・外膜の間を橋渡しする複合体を形成 していることを証明したが,これは膜輸送に適した構造といえる。申請者は, 欠損株が膜 ストレスに高感受性を示すことに加え,PqiABCの過剰発現がMla輸送系の変異体が示す 膜ストレス感受性を相補することを明らかにしている。さらに,pqiABCのパラログであ るyebSTオペロンの膜ストレス誘導性を示した。以上の申請者の研究から,これまで機能 不明であったPqiABCは膜輸送系を形成しており,膜ストレス抵抗性に寄与する物質の輸 送を行っていることが明らかになった。 申請者の研究は, 酸化ストレス防御因子の機能解明に大きく貢献するものであり, 学術 的に非常に価値のあるものである。よって, 本論文は博士(理学)の学位論文として価値 あるものと認める。また, 平成29年1月18日, 論文内容とそれに関連した事項について試 問を行った結果, 合格と認めた。なお, 本論文は, 全文公表となる。

要旨公表可能日: 年 月 日以降

参照

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