九州地方の火山活動と広域火山災害-
-特に桜島大規模噴火を想定して
京都大学防災研究所
火山活動研究センター・井口正人
防災研究所公開講座
2018/10/2桜島
雲仙岳 阿蘇山 太平洋 日本海 32N 30N 130E 132E 薩摩硫黄島 諏訪瀬之島 ロシア 韓国 霧島 開聞岳 口永良部島 中之島 口之島 池田・山川 住吉・米丸池 若尊 福江火山群 九重山 由布岳 鶴見・伽藍岳世界に約1200活火山
日本に110活火山
九州に17活火山
阿蘇 加久藤 姶良 阿多 鬼界 噴火警戒レベル3 (入山規制) 噴火警戒レベル2 (火口周辺規制) 噴火警戒レベル2 (火口周辺規制) 2014年8月3日噴火 2015年5月29日噴火 噴火警戒レベル3 (入山規制)九州の活火山
噴火警戒レベルとは
警報
レベル
火山の状況
住民
登山者
噴火
警報
(特別警
報)
レベル5
避難
重大な被害を
及ぼす噴火発
生
危険な居住地域か
らの避難
レベル4
避難準備
重大な被害を
及ぼす噴火発
生
警戒すべき居住地
域からの避難準備,
災害時要援護者の
避難
火口周
辺警報
レベル3
注意
火口から2km以
内に影響
通常の生活
登山規制
レベル2
火口周辺注
意
火口から1km以
内に影響
火口周辺
立入規制
噴火
予報
レベル1
活火山であ
ることに留意
特になし
噴火警戒レベルに連動して防災対応がなされる 噴火活動の指標や予知情報ではない 火山と活動によ り異なる2007年12月から気象庁が発表
最近の我が国の噴火活動
•
2014年8月 口永良部島噴火(レベル3)
•
2014年9月 御岳山噴火(レベル3)
死者・行方不明者63名・・・戦後最悪の火山災害
•
2014年11月 阿蘇山マグマ噴火(レベル3)
•
2015年4月 箱根山で地震活動,地盤変動レベル2→3
•
2015年5月 口永良部島噴火(レベル5)
•
2015年6月 箱根山噴火
•
2015年8月 桜島で地震活動,地盤変動(レベル4)
•
2015年9月 阿蘇山で噴火(レベル3)
•
2016年10月 阿蘇山で噴火(レベル3)
•
2018年3月 霧島新燃岳噴火(レベル2➡3)
•
2018年8月 口永良部島で地震活動,地盤変動(レベル4)
全国初 全国初新燃岳の噴火活動
噴火発生2日後の火口内の様子(気 象庁資料)1716~1717 享保の噴火,準プリ
ニー式噴火(1717年9月19日 ): 火
砕流発生
1771~ 1772 明和の噴火,水蒸気
マグマ爆発で始まり,準プリニー式
噴火に至る。
準プリニー式噴火 溶岩ドーム形成 2008年8月22日水蒸気噴火 2011年1月26日マグマ噴火 写真提供:鹿児島国際航空写真下宇宿氏2018年3月新燃岳噴火
ブルカノ式噴火
硫黄山(えびの高原)
熱異常域の拡大,火山ガスの増加 気象庁火山噴火予知連絡会資料
2018年4月噴火,250年ぶり
阿蘇山の噴火活動
熱供給増加 熱供給増加 湯だまり状態 火口底が干上がる マグマ性噴火へ マグマ性噴火へ ストロンボリ式噴火 (夜は噴石の飛散がよく見える) 水蒸気噴火山頂付近での火山災害
• 頻繁にあるタイプの火山災害
阿蘇,浅間,霧島など
• 観光客と火山の近さ
• 御嶽山の前に阿蘇山噴火に
学ぶべき
1979年9月6日噴火,死者3名
1958年6月24日噴火,死者12名
日中の噴火であれば
千人規模の犠牲者
日中の噴火であれば
千人規模の犠牲者
阿蘇山の火山活動
1989年~噴火 気象庁火山解説資料 2016年10月8日爆発 2015年9月14日火砕流 2014年11月マグマ噴火 水蒸気噴火 20年ぶりの活動期へ火口周辺の被災(登山者) 山麓の居住地域(集落)
火山爆発の大きさー火山爆発強度指標
(Volcanic Explosivity Index)
VEI
火砕物量
0
<10
4m
31
>10
4m
32
>10
6m
33
>10
7m
34
>10
8m
35
>10
9m
36
>10
10m
37
>10
11m
38
>10
12m
3(Newhall and Self, 1982)
霧島新燃岳の準プリニー式噴火 2011/1/26 通常の桜島昭和火口噴火 2013/8/18爆発(5000m),南岳 姶良カルデラ噴火 大正噴火 薩摩テフラ 御嶽山噴火 大規模噴火 巨大噴火
巨大カルデラ噴火-日本を覆う火山灰と火砕流
火砕流発生・・・阿蘇4では100㎞を超える
鬼界カルデラ噴火・・・我が国で最新の巨大噴火
7300年前
口永良部島の噴火の歴史
• 約1000年前 溶岩流出
(不明)
• 1841年 新岳噴火,死者多数
• 1914年1月 鳴動,噴煙
• 1931年4月,5月,6月 新岳噴火
• 1933年12月~34年1月 新岳噴火繰り
返される.12月24日爆発により七釜で
死傷者34名
• 1945年11月 新岳東外壁にて噴火
• 1966年11月 新岳火口噴火
• 1980年9月 新岳東外壁にて噴火
• 2014年8月 新岳噴火
• 2015年5月 新岳噴火
1~20年程度の間隔で噴火
80~90年おきに大きな噴火
本村
新岳
古岳
向江浜
七釜
元村
2014年噴火に先行する長期的な前駆地震活動と
地盤変動
92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 0 50 100 150 200 250 300 350 400噴火
月別地震回数 (m) 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 -0.3 -0.2 -0.1 0.0 0.1 0.2 0.3 南北 東西 上下 火口周辺の地盤変動量 (GPSによる火口西部の変位) 1999年以降,地震活動活発化,地盤膨張が継続的に続く 臨時火山情報 レベル2 レベル2 レベル2 レベル32015年噴火の前駆現象
レベル5(避難)は噴火発生後
J a n F e b M a r A p r M a y J u n J u l A u g S e p O c t N o v D e c J a n F e b M a r A p r M a y J u n 0 2 0 4 0 6 0 2 8 0 3 0 0 2 8 8 J a n F e b M a r A p r M a y J u n J u l A u g S e p O c t N o v D e c J a n F e b M a r A p r M a y J u n 0 1 0 0 0 2 0 0 0 3 0 0 0 4 0 0 0 5 0 0 0 ︵ t o n / d a y︶ 2 0 1 4 2 0 1 5 S O 2 d i s c h a r g e r a t e -0.02 -0.01 0.00 0.01 So lp e di st an ce ( m ) 噴火8/3 噴火5/29 有感地震 有感地震Seismic station changed
火映 2015年3月24日 距離 20,132m 距離の短縮(火山の膨張) 二酸化硫黄放出率 警戒レベル 1 3 5 口永良部島 屋久島 2014年11月末以降,火山活動活発化 (地震活動,山体膨張,火山ガス増加) そして,5月23日に有感地震(過去の噴火では地震発生後,噴火発生)
2015年5月29日口永良部島噴火
噴煙高度10㎞.火砕流は向江浜に到達 噴火後,警戒レベル5に. 全島避難(137名) 気象庁監視カメラ 8倍速 2014年噴火時の反省(それまでの訓練は 役に立たなかった) 2014年噴火で避難の実戦を経験 自ら避難計画を考えた. 2014年噴火では避難そのもののオペレー ションは成功した. 産経新聞 2015年5月29日付2018年の火山活動
2014 2015 2016 2017 2018 0 20 40 60 80 2015噴火 日別地震回数 288 ほとんどの地震が噴火直後 2014噴火 2014 2015 2016 2017 2018 0 1000 2000 3000 4000 二酸化硫黄放出量 (ト ン/ 日) 地震発生 レベル4 火山ガス増加桜島の生い立ち
ー姶良カルデラの南縁に新火山誕生
姶良カルデラ
霧島
桜島
開聞岳
米丸・住吉池 若尊 阿多カルデラ 20 15 10 5 0 火山灰・ 軽石の 噴 出量積算値 0 10 20 30 25 15 5 年代(千年前) 北岳の活動 南岳 km3 姶良カ ル デ ラ の 巨大噴火 桜島薩摩 桜島地質図(2013)より 文明 安永 大正噴火桜島の活動は26,000年前に始
まる・・・北岳の活動
5,000年前から南岳の活動
1955年以降の桜島の噴火活動の推移
1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 0 1000 2000 3000 1977年以前は測定なし 火山灰量(万トン) 年間爆発回数 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 0 200 400 600 800 1000 南岳爆発回数 昭和火口爆発回数 1km超火砕流 南岳活動期 昭和火口噴火 活動再開姶良カルデラのマグマ溜りのマグマ蓄積
Dec 2007 - Dec 1996 Observation 10km 桜島 姶良カルデラ N 5cm ONEG 深さ= 11km 体積増加=+8×107m3 固定桜島の主マグマ溜まりは
姶良カルデラの中央部にある
-2600 -800 +300 (2474) -1550 -2200 -1900 -300 -183 -158 -149 -58 (2465) (2460) -894 -770 -658 -527 H I G O H Y U G A O S U M I Kagoshima Sakurajima Kajiki Kokubu Miyakonojo -50 -500 -100 -300 10 20 30 S c a l e Km -446 -1500 -776 -703 -608 (2475) (2480) (2485) (2500) (2495) (2490) (2505) (2512) -526 -690 -681 -577 -684 -536 -560 -500 (2797) (2795) (2790) (2785) (2780) -407 -302 -291 -291 -259 -225 -250 -185 -181 -165 -126 -150 -171 (2455) -685-616 -485 -369 -427 -348 -301 -306 -338 -260 -206 -244 -433 -426 -453 -356 -344 -363 -401 -468 -379 -314 -242 -207 -174 -175 -151 -144 -147 - 11 2 - 111 - 11 7 -155 -143 - 115 -89-72 -63-43 -42 -31 -26-25 -35 -31 Ijuin Hanaoka KAGOSHIMA BAY Sashiki Sendai -121 -120 -105 -82 -94 -88 -103 -105 -96 -84 (2445) (2450) -87 -96 -96 - 119 -129 - 11 4 - 111 -128 -81 -110 -78 -79 -76 -110 (2440) (2435) (2430) (2425) (2420) (2415) -110 -119-140 -86 -83 -86 -281 -98-106 -98 -66 -67 -68-131 -86 -93 -79-76 -112 -79 -84 -75 -69 -82 -80 -82 (2410) (2405) -128 -30 -30 -22 -24 -33 -36 -50 -27 -19 -11 -83 -19-12 -16-17 (2775) (2770) (2765) S A T S U M A大正噴火後の地盤沈下
GPS観測による現在の地盤の膨張 5㎝ 10㎝ 30㎝ 50㎝進む姶良カルデラのマグマ蓄積
1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 相対高 (c m) 西暦 (年) 1914年 溶岩流 1.34km3 1946年 溶岩流 0.18km3 南岳噴火活動 昭和火口 (最新データ:2017年11月) BM.2469を基準としたBM.2474の比高の経年変化 大正噴火噴出量:20億m3 マグマ供給率:0.1億m3 /年 20億m3 ÷0.1億m3 /年=200年 大正噴火 昭和噴火 安永噴火 135年桜島で群発地震発生(2015年 8月15日)
11h-12h
噴火警戒レベル4→77名が避難
BL
想定されるマグマの貫入 北岳 南岳 姶良カルデラ マグマ溜まりA 深さ10km 昭和火口 姶良カルデラ 南岳 10km 垂水市 福山 牛根 A 主マグマ溜り1993年以降蓄積進行 K 東からみた桜島の断面図 南岳 中央火道 M‘ K ( す で に ) 閉 塞 北岳中央火道 M マグマ溜まり 深さ5-6km
A
マグマ溜まり 深さ4km 8月15日 新しいマグマの上昇 鹿児島市 W E 0 1 2 3 4 0 -1 1 (km) 0 1 2 3 4 昭和火口桜島大正噴火とは
•
1914年1月12日開始
•
13億㎥の溶岩と5億㎥の火
山灰を放出したわが国の20
世紀最大の噴火
• 桜島は陸続きに
• 噴火開始後マグニチュード
7.1の地震発生
• 死者
23名,行方不明者35
名
•
2万2千人が島外へ避難(20
世紀以降わが国最大)
噴火開始30分後
大正噴火活動の推移
噴火のピークは1月13日未明 1月14日の午後は 1000~2000m程度 と低い 溶岩流出へ移行 噴火開始 10:05 火山灰放出 噴煙高度 プリニー式噴火 (巨大噴煙)噴煙高度最大18,000m(推定)
1914/01/12 1914/01/13 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000噴煙高度
(m)
大地震 M7.1 よくいわれる8000mは この時点で計測 火砕流 巨大噴煙柱があがる時期を以下に凌ぐかが最も重要火山灰の降下範囲 (Omori, 1916)
大正噴火後,大隅半島
において土石流頻発
火山灰の堆積
火山灰で覆われた民家(垂水) 大隅半島側 溶岩流地震を誘発,津波の発生も
深さ 8km 姶良カルデラ P波の伝搬速度 遅い 軟らかい 速い 硬い マグマ溜まり新島
鹿児島湾 海底噴火 1779・80年都市災害・広域火山災害の視点
http://www.qsr.mlit.go.jp/osumi/sabo/jigyou/img/bousai_map.pdf20㎞圏で50㎝以上
20㎞圏で50㎝以上
AD79年ベスビオ火山噴火 軽石 火 砕 流火山灰の広域拡散
(Omori, 1916)噴煙は20km上空へ
成層圏に突入,遠くまで拡散
安永噴火
大正噴火
津久井(2012) (単位:mm) 桜島火山灰の航空機への危険性
• ガルングン火山(西ジャワ・インド
ネシア)1982年噴火,英国航空
B747・・・
エンジン全停止
• リダウト火山(アラスカ・米国)
1989年,KLMオランダ航空
B747・・・
エンジン全停止
• ピナツボ火山(フィリピン)
1991年
噴火 日本航空はエンジン交換
(約60億円)
• 三宅島
2000年噴火 ノースウェス
ト航空など エンジン交換
• エイヤフィヤトル・ヨークトル(アイ
スランド)2010年噴火 ヨーロッパ
の航空網閉鎖 経済への大打撃
火山灰により損傷したジェットエンジン火山から200km離れた ジョグジャカルタの空港