生化学 (Biochemistry)
1.教育スタッフ
高沢 伸(教授)・広中安佐子(学内講師)・山内晶世(助教)・武田麻衣子(助
教)・植野洋志(非常勤講師)・Sanai Sato(非常勤講師)・土肥祥子(非常勤講
師)・亀岡正典(非常勤講師)・土田澄代(教務職員)・橋谷田真樹(非常勤講
師)・牧野 舞(非常勤講師)
2.概要
生命科学的・医学的に重要な基本物質の構造、機能、代謝、及び相互作用を理解
し、代表的な代謝関連疾患の病因や診断の基礎について生化学的理解を深める。ま
た、遺伝子からタンパク質への流れにもとづいて生命現象を学び、遺伝子工学の手
法と応用やヒトゲノムの解析を理解する
3.一般教育目標(GIO)
1) 生命科学的・医学的に重要な基本物質(1.アミノ酸と蛋白質、2.糖質、3.脂質、
4.核酸、5.無機質を含む)の構造、機能、代謝を理解し、その知識を他の医学
諸学科目の学習においても利用可能な形で身につける。
2) 遺伝子からタンパク質への流れにもとづいて生命現象を学び、遺伝子工学の手
法と応用やヒトゲノムの解析を理解する
3) 生命の生化学的基盤を把握し、具体的な生命現象とその異常に関する講演、文
献や説明を理解し、討論出来るようになる。
4) 生体物質を取り扱う生化学実験法の基礎を理解し、基本的な実験については独
力で行うことが出来る。
5) 以上を通して、疾患を含む全ての生命現象は物質の相互作用と代謝の上に成立
し、医学の全て(病理、診断、治療、予後、予防等)にこれらの理解が不可欠
であることを理解する。
4.評価方法
①定期試験期間中または授業時間中に筆記試験を実施する。
②実習は、態度・技能・レポート・試験で評価する。
③上記①、②を総合して最終評価判定を行う。
試験受験には規定以上の講義出席を必要とする。なお、講義中の教室の出入りは、
特別な事情がない限り禁止する。
5.教科書・参考書
教科書:リッピンコット イラストレイテッド 生化学 原書5版(丸善)
参考書:ハーパー イラストレイテッド 生化学(丸善)、ヴォート 生化学(東
京化学同人)、細胞の分子生物学(ニュートンプレス)、ワトソン遺伝子
の分子生物学(東京電機大出版)、ストライヤー 生化学(東京化学同
人)、ヒトの分子生物学(丸善)
イヴの七人の娘たち(B. Sykes 著:ソニーマガジンズ), アダムの呪い(B. Sykes
著:ソニーマガジンズ), それは失敗からはじまった−生命分子の合成に賭けた男
(A. Kornberg 著:羊土社), 人類進化 700 万年−書き換えられる「ヒトの起源」(三
井 誠著:講談社), 利己的な遺伝子(リチャード・ドーキンス著:紀伊国屋書
店), 生物と無生物のあいだ(福岡伸一著:講談社), 動的平衡(福岡伸一著:木楽
舎), 動的平衡2(福岡伸一著:木楽舎), 遺伝子発見伝(R. J. Dubos 著:小学館),
外科の夜明け(J. Thorwald 著:小学館), 近代外科学の開拓者(J. Thorwald 著:小
学館), 高峰譲吉の生涯−アドレナリン発見の真実(飯沼・菅野著:朝日新聞社),
DNA の謎に挑む−遺伝子探求の一世紀(渡辺政隆著:朝日新聞社), 免疫・「自
己」と「非自己」の科学(多田富雄著:日本放送出版協会), 忍び寄るバイオテロ
(山内・三瀬著:日本放送出版協会), 沈黙の臓器と語る(水戸迪朗著:日本放送
出版協会), インスリン物語(二宮陸雄著:医歯薬出版), 生化学の夜明け−醗酵の
謎を追って(丸山工作著:中央公論社), 健康・老化・寿命−人といのちの文化誌
(黒木登志夫著:中央公論社), 遺伝子・脳・言語−サイエンス・カフェの愉しみ
(堀田凱樹著:中央公論社), 胃は悩んでいる(伊藤 漸著:岩波書店), 自分の体
で実験したい−命がけの科学者列伝(L. Dendy & M. Boring 著:紀伊国屋), 手術と
からだ−神様は天の邪鬼(辻 秀男著:中央公論社), きみのからだのきたないもの
学(S. Branzei 著:講談社), まだ、タバコですか?(宮島英紀著:講談社), クッ
キングに学ぶ化学(増井・谷本著:裳華房), 一反木綿から始める生物学(武村政
春著:ソフトバンク・クリエイティブ社), ゲノムサイエンス(榊 佳之著:講談
社), 新進化論が変わる(中原英臣・佐川 峻著:講談社), タンパク質の一生(永
田和宏著:岩波書店), 迷惑な進化(モアレム・プリンス著:NHK 出版), 解剖医
ジョン・ハンターの数奇な生涯(ウェンディ・ムーア著:河出書房新社), 細胞発
見物語(山科正平著:講談社), 加速する肥満(ディードリ・バレット著:NTT 出
版), センディピティと近代医学(モートン・マイヤーズ著:中央公論社), 不死細
胞ヒーラ(レベッカ・スクルート著:講談社), ミトコンドリアの新常識(NHK サ
イエンス ZERO), 細胞「私」をつくる 60 兆個の力(NHK サイエンス ZERO), ノ
ーベル賞はこうして決まる:選考者が語る自然科学三賞の真実(アーリング・ノル
ビ著:創元社), ゲノムが語る生命像(本庶 佑著:講談社), 国循の美味しい!か
るしおレシピ(国立循環器病センター著:セブン&アイ出版). 医学の古典をインタ
ーネットで読もう(諏訪邦夫著・中外医学社), Molecular Biology of the Islets of
Langerhans(H. Okamoto 編:Cambridge University Press)
6. 授業計画
授業資料は予め(原則的には講義のある週の前週末までに)生化学講座のホームページ上 ( http://www.naramed-u.ac.jp/~bioch/kougi.html )にパスワードで保護した形式でアップロ ードするので、各自でダウンロードした上、講義に出席すること。 <コアカリキュラム> C-1 生命現象の科学 C-1-(1) 生命現象の物質的基礎:生体内の有機化合物の構造、性質および反応について学ぶ。 生体内の低分子物質 生体高分子の構造と機能 反応速度論・酵素反応速度論 C-1-(2) 生命現象の最小単位-細胞:細胞の構造とそのさまざまなはたらきを学ぶ。 細胞の構造と機能 細胞内の代謝と細胞呼吸 細胞周期 減数分裂 遺伝子と染色体 DNA と蛋白質 C-1-(3) 生物の進化と多様性:生物の進化と多様性を知り、比較生物学的な見地から動物の 体のつくりとはたらきを学ぶ。 生物の進化 C-2 個体の構成と機能 C-2-(1) 細胞の構成と機能: 細胞の微細構造と機能を理解する。 細胞膜、細胞骨格と細胞運動、細胞の増殖 C-2-(3) 個体の調節とホメオスタシス: 生体の恒常性を維持するための情報伝達と生体防御 の機序を理解する。 情報伝達の機序 ホメオスタシス C-2-(5) 生体物質の代謝: 生体物質の代謝の動態を理解する。 C-2-(6) 遺伝と遺伝子: 遺伝子から蛋白質への流れに基づいて生命現象を学び、遺伝子工学 の手法と応用やヒトゲノムの解析を理解する。 C-4 病因と病態 C-4-(1) 遺伝子異常と疾患・発生発達異常: 遺伝子・染色体異常と発生発達異常や疾患の発 生との関連を理解する C-4-(2) 細胞傷害・変性と細胞死: 細胞傷害・変性と細胞死の病因と細胞・組織の形態的変 化を理解する。 C-4-(3) 代謝障害: 糖質、蛋白質、脂質等の代謝異常によって生じる多様な疾患について理 解する。 【ユニット1:生体物質の代謝】生体物質の代謝の動態を理解する 年 月 時 項 目 授業内容(□) 担当 13 4/8 4 5 6 はじめに 生体の基本物質 概観 細胞の構造と機 能 □ 生化学の講義のはじめにあたり、細胞の基本構造と生 体を構成する基本物質について説明し、その代謝全体 を概説する 高沢13 4/10 4 5 6 蛋白質の構造 球状タンパク質 □ アミノ酸、ポリペプチドの一般構造と特性 □ 蛋白質の一次構造,高次構造を説明できる □ 蛋白質分離分析、精製法を列挙しそれぞれの原理につ いて説明できる □ 蛋白質の高次構造がその機構にどのように重要である かを、ミオグロビンとヘモグロビンを例にとって説明 できる 山内 4/11 4 5 6 糖質、脂質 酵素学 □ 生理的に重要な糖質の構造と機能を説明できる(単糖 類、多糖類、プロテオグリカン、糖脂質) □ 生理的に重要な脂質の構造と機能を説明できる(脂肪 酸、トリアシルグリセロール、リン脂質、スフィンゴ 糖脂質、コレステロール) □ 酵素学 山内 4/15 4 5 6 ヌクレオチド プリン,ピリミジ ン代謝 核酸の構造と機 能 □ ヌクレオシド、ヌクレオチドの基本構造を説明できる □ プリン、ピリミジンの合成、及び、分解の概要を説明 できる □ 痛風、Lesch-Nyhan 症候群、ADA 欠損による免疫不全 の病因について概説できる □ DNA 分子を構成する 2 本の DNA 鎖の方向性、相補 性、結合力と安定性について説明できる □ 2 本鎖 DNA の熱やアルカリによる変性、アニ−リン グ、ハイブリダイゼイションについて説明できる □ DNA 二重らせんモデルを理解する 広中 4/17 4 5 6 生体エネルギー 学と酸化的リン 酸化 □ 発エルゴン反応、吸エルゴン反応と自由エネルギーを 説明できる □ 高エネルギーリン酸化合物と加水分解の標準自由エネ ルギー変化を説明できる □ 酸化還元電位差と自由エネルギー獲得の関係について 説明できる □ 電子伝達系と共役した酸化的リン酸化による ATP の産 生過程を説明できる。(呼吸鎖、化学浸透圧説など) □ フリーラジカルの発生とその作用を説明できる 山内 4/18 4 5 6 酵素: 作用機構 酵素: 反応速度論 酵素: 活性調節 □ 酵素の命名法、一般的な働きと特性 □ 酵素の物質的基盤、生体内の存在様式の概略 □ 診断に利用されるアイソザイムや逸脱酵素、また酵素 療法、薬物の作用機序などにおける酵素の役割を説明 できる □ 酵素の初歩的な反応速度論を説明できる □ 酵素の性質を規定する下記の用語について説明できる □ 酵素活性調節の代表的機構を説明できる □ 酵素活性におよぼす体温や pH の調節の重要性を説明 できる □ 体内での代謝過程に果たす律速酵素の役割について述 べることができる 植野 5/1 4 5 6 解糖系 クエン酸回路 糖 新 生 と 血 糖 調 節 □ 解糖系とピルビン酸酸化の経路と生理的意義を概説で きる □ クエン酸回路について図を見て説明できる □ 糖新生の経路、調節機構、生理的意義を概説できる □ 血糖のホルモンによる調節と糖代謝経路の関連を概説 できる 広中
13 5/2 4 5 6 グ リ コ ー ゲ ン 代 謝 糖代謝側副路 グ リ コ サ ミ ノ グ リ カ ン と 糖 蛋 白 質 生体異物の 代謝 □ グリコーゲン代謝の経路、ホルモンによる調節機構、 生理的意義を概説できる □ ペントースリン酸経路、ウロン酸経路の生理的意義を 概説できる □ 糖蛋白質について、糖と蛋白質との結合様式、分子機 能の例について概説できる □ 生体異物の代謝機構とその医学的意義を説明できる 広中 5/16 4 5 6 脂 肪 酸 と ト リ ア シ ル グ リ セ ロ ー ルの代謝 ケトン体生成 □ 脂肪酸の生合成経路とその調節機構を概説できる □ 脂肪酸酸化経路の概略を説明できる □ アシルグリセロールの代謝経路を概説できる □ ケトン体生成経路を概説できる 広中 5/20 4 5 6 複 合 脂 質 の 代 謝 と エ イ コ サ ノ イ ド コ レ ス テ ロ ー ル 合成 脂質の輸送 ステロイド代謝 □ リン脂質、糖脂質の代謝経路を概説できる □ 不飽和脂肪酸からエイコサノイドへの生合成経路とそ の生理的意義を概説できる □ 生理活性脂質による情報伝達系を概説できる □ コレステロール代謝とその生理的意義を概説できる □ コレステロール由来の化合物を列挙できる □ リポ蛋白質の代謝経路と臓器間輸送とその生理的意義 を概説できる 広中 5/22 4 5 6 アミノ酸の合成 と分解 □ アミノ酸代謝過程全体について簡単にスキームを書く ことができる。 □ アミノ酸の異化と尿素合成の経路を概説できる □ 糖原性及びケト原性のアミノ酸は炭素骨格の代謝過程 でどのような物質を生ずるか説明できる 山内 6/27 1 2 3 アミノ酸: 特殊生成物 □ アミノ酸より合成される特殊生成物について、(a) 何 から合成されるか (b) 生理機能 (c) 構造(d)疾患 との関連について説明できる 山内 アミノ酸代謝異 常 □ フェニルケトン尿症,アルカプトン尿症,メープルシ ロップ尿症ではどのような代謝過程が障害されるか説 明できる ポルフィリン代 謝 □ ポルフィリンの構造と合成過程について説明できる。 □ ビリルビンの代謝と黄疸について説明できる 7/4 1 2 3 ビタミンの構造 と機能 細胞内蛋白質の 輸送と選別 細胞外マトリッ クス □ ビタミンの生理的意義・代謝過程・生体内での分子機 能を説明できる □ ビタミンの欠乏症と過剰症について説明できる □ 細胞内蛋白質輸送の経路について説明できる □ 粗面小胞体経路とシグナル仮説について説明できる □ 細胞内小器官への選別輸送と局在化シグナルについて 説明できる □ 細胞外マトリックスに含まれる主な生体分子群の機能 と医学的意義について理解できる 広中
【ユニット2:遺伝と遺伝子】遺伝子からタンパク質への流れにもとづいて生命現象を学び、 遺伝子工学の手法と応用やヒトゲノムの解析を理解する。 年 月 時 項 目 授業内容(□) 担当 13 4/22 4 5 6 DNA 分子模型 □ DNA 二重らせんモデルを作成し、実際のモデルに即 して遺伝子の構造について説明できる 高沢 4/24 4 5 6 遺伝子の構成 □ クロマチンの構造について説明できる(ヒストン 8 量体、ヌクレオソームなど) □ 遺伝子とクロモソームの概念を簡単に説明できる □ 遺伝子の基本構造を図示し説明できる 高沢 遺伝子の複製 と修復 □ 細胞周期:G1,S,G2,M 期について説明できる □ DNA 複製について概説できる □ DNA 修復機構と修復欠損症について概説できる 4/25 4 5 6 RNA 合成 □ 遺伝子の活性化機構について概説できる □ RNA 合成機構を概説できる □ 成熟 mRNA はどのような構造上の特徴をもっている か説明できる □ tRNA のコドンの認識及びアミノ酸の結合に関与する 部位について説明できる 高沢 蛋白質合成 □ タンパク質合成機構説明できる □ 遺伝子中の一塩基の変化が何故様々な表現型を示す 突然変異となって表現され得るのかを説明できる 遺伝子発現制 御 □ 真核細胞の最も一般的な発現調節機構を概説できる □ 原核細胞におけるラクトースオペロンの調節機構つ いて、図を見て説明できる 遺伝子の変化 □ 遺伝子に変化がおこるケースについて説明できる □ 遺伝子の組換え □ 細胞の老化や癌化と telomere について説明できる □ gene family, gene cluster と gene duplication、遺伝子
進化について説明できる 分子遺伝学、 組換え DNA、 ゲノム工学 □ カルタヘナ法の基本理念が説明できる □ ベクターの基本的要件をいえる □ DNA 組換えに必要な物質とその役割を説明できる □ PCR 法など基本的解析法について概説できる
【ユニット3:生化学特論】基本的物質に関する一般的あるいは総括的な生化学的知識(コ アカリキュラムの内容)をもとに、さらに複雑な生命現象について生化学的理解を深める 年 月 時 項 目 授業内容(□) 担当 13 5/8 4 5 6 生体膜 □ 生体膜の基本的な構造とその特徴を理解する □ 生体膜の主な構成成分を列挙し、その構造を流動モザ イク膜モデルにもとづき説明できる 高沢 内分泌系 □ 内分泌系の基本的な構成について説明できる □ 受容体とホルモンとの結合の特徴をシグナル変換など のも含めて理解できる □ 主要なホルモンの構造、産生組織、産生機構、標的、 生理作用、及び調節機構、異常症を概説できる □ インスリンと糖尿病の関係を説明できる ホルモン作 用とシグナ ル伝達 □ 細胞膜受容体を含むシグナル伝達経路を挙げ、その特 徴を概説できる □ 細胞内情報伝達経路についてそのシグナル伝達の機構 を概説できる 5/9 4 5 6 特別講義: 蛋白質化学 「神経系のタンパク質の研究から味覚への道のり: 分子レベルで味覚の相乗効果にせまる」 植野 5/14 4 5 6 特別講義 「HIV/AIDS の分子生物学」 亀岡 5/29 4 5 6 特別講義 「個人差の生化学:DNA からみた個人差」 橋谷田 6/6 4 5 6 特別講義 「糖尿病と合併症の生化学」 Sato 6/13 4 5 6 特別講義 「研究・臨床における常識と非常識―再生医療研究の経験 から見た方法論」 大串