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震災発生時のウェザーニューズの取り組み 東日本大震災発災時,弊社グローバルセンターのある千葉市幕張新都心の ビル最上階に設置されている弊社予報センターの SOLiVE24 生放送ブースで は,最新の予報見解を伝えていた。緊急地震速報の入電とともに内容を地震 情報に切り替えたが,最初に「最大震度 4」で入電した高度利用者向け緊急 地震速報の震度が十数秒の間に「5 弱」,「5 強」と上がっていった。そのた だならぬ内容と地震の規模や震源から津波発生の可能性を伝え始めたその時, 幕張のビルにも揺れが到達し始め,揺れはどんどん激しくなった。震度速報 で宮城県北部と宮城県中部で「最大震度 6 強」と入電した時には,カメラや 照明は揺れで倒れてしまったが,幸い地震速報システムの CG 画面とマイク は生きており,予報センターの担当者は机にしがみつきながら必死で震度速 報と津波発生の可能性を伝え続けた。それはその後 3 月 22 日の午前 6 時ま で 11 日間にわたって続く,弊社サービス利用者との震災情報共有オペレー ションの始まりであった(図 1)。 弊社の個人向けサービスは,単に気象コンテンツを一方的に提供するだけ でなく,利用者に参加してもらい,コンテンツ化してまた利用者に返してい くといういわゆる参加型コンテンツであり,『みんなでつくる天気予報』と してサービスを行っているが,その中核にあるのが約 600 万人が参加してい る携帯電話やスマートフォンから送られる『ウェザーリポート』である。

column 2

中神武志(株式会社ウェザーニューズ トランスメディアコンテンツ事業部副部長 兼 減災プロジェクトリーダー)

進化する災害情報

ウェザーニューズの取り組み

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放送メディア研究 No.11 2014 東日本大震災当日においても,全国各地より空の様子や体感情報をはじめ としたウェザーリポートが送られていたが,14 時 46 分以降その内容は一変 した。約 3 分間の空白のあと,14 時 49 分に最初の地震リポートが横浜市か ら届いたのを皮切りに,首都圏からは激しい揺れを伝えるものや交通機関の 停止などのリポートが届き,被災地からも地震の被害リポートが続々と届い た。そして,16 時 13 分には大津波が車を飲みこんでいる最初の津波被害リ ポートが宮城県多賀城市のリポーターから届くことになる(図 2)。 2011 年当時,ウェザーリポートは弊社の有料会員からしか送れない仕組 みになっており,ウェザーリポーターの登録数も約 25 万人であった。しか しながら,当時通常 1 日 4,000 ~ 5,000 通だったリポートの数倍以上のペー スで送られてくるリポートの数や,リポートから伝わってくる「自分の身近 で起きていることを皆に伝えたい」「自分の情報で人の役に立ちたい,命を 救いたい」というウェザーリポーターの気持ちを前に,ウェザーニューズと して今できることはないか?と緊急のミーティングが開催され,「ありのま まの今を把握し,災害の記憶を記録する。私たちが今できること」をテーマ 図 1 東日本大震災発生直後の SOLiVE24 生放送ブース

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進化する災害情報──ウェザーニューズの取り組み に,震災に関するリポートをより多くの方から寄せていただき,今起きてい ることを残して共有していくこと「記憶を記録する」ことをまずすべきこと だと担当役員を含め即決し,ウェザーリポートを無料開放して誰からでも送 れるように変更を行い,サイト上や弊社の放送での周知を当日の夜に開始し たのである。 また,当日 23 時には,震災による被害をはじめ,余震への注意,被災者 や復旧作業者の方へ向けた対応策などをまとめた『東日本大震災特設サイト』 を開設し毎日更新を行い,被災者への情報提供を継続して実施した。このサ イトは 2014 年 3 月現在においても復興支援を目的に引き続き毎日更新され ている(図 3)。 その後,震災リポートは最初の 2 日間で 4 万件を超え,14 日の 9 時には そのリポートを GoogleMap 上にマッシュアップした『東日本大震災 減災リ ポートマップ』を公開した。このサイトではタグ付けされたリポートを日ご とに見られるようになっており,4 月末日までには 10 万件を超える震災リ ポートが表示されることとなった。 図 2 最初の津波リポート

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放送メディア研究 No.11 2014 しかし,そこで問題となったのが,被災事象を区分する被害種別の “ タグ 付け ” であった。 従来のウェザーリポートには,天気や体感に関するリポート種別はあった が,東日本大震災時に発生した,津波や液状化・ライフラインの停止・復旧 などの種別はなく,寄せられたリポートの本文コメントに記載のある内容を 1 つひとつ読み取り,タグ付けをしていくしかなかったのである。そこで社 員有志を募り,1 週間にわたって 1 日当たり 20 人体制ですべてのリポート のコメントや画像を確認し,リポートごとに被害種別のタグ付けを行い,確 認されたものからサイトにアップしていった。 その後は,投稿する際に被害種別を「津波/室内被害/建物損壊・エレベー ター被害/火災/液状化/道路ひび割れ/交通の状況/ライフライン停止/ ライフライン復旧/ガソリンスタンド・スーパー・コンビニの品薄/電話・ メール・携帯電話の不通,輻ふくそう輳/帰宅困難」と被害種別を設定し,リポーター が選択できるようにリポートフォームを改良,社員の手作業を経ずして,ほ ぼリアルタイムにリポートが反映できるようになった。 図 3 東日本大震災特設サイト

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進化する災害情報──ウェザーニューズの取り組み こうして東日本大震災減災リポートマップは,日々その数が増え,東日本 大震災の被害の状況をはじめ,液状化の分布や帰宅困難者の発生状況,日ご とのライフラインの復旧状況などが手に取るように分かる “ 集合知 ” のマッ プとなった。 そして,3 月 23 日には,3 月 11 日から 16 日までに寄せられ,タグ付けさ れた約 4 万件を東日本大震災特設サイトにて公表し,自治体をはじめとす る各防災機関の復旧活動への活用,研究機関での利用をはじめ,被災者や ボランティアの皆さんの自助・共助活動へ利用していただくことを目的に, KML ファイルでの無償ダウンロードを開始した(図 4)。 このデータは,実際に多くの自治体や大学などで利用され,2012 年に開 催された「東日本大震災ビッグデータプロジェクト─ Project311」においても, 首都大学東京の渡邉英徳准教授,NHK 放送文化研究所の村上圭子氏,NHK 放送技術研究所山田一郎氏らによって,『マスメディア・カバレッジ・マッ プ─ NHK 報道空白域の可視化マップ』のコンテンツとしても使用されるな ど,多くの皆さんにご利用いただいた。 図 4 東日本大震災減災リポートマップ

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放送メディア研究 No.11 2014 その他,震災時の弊社での取り組みとして,KDDI 株式会社とともに,被 災した避難所の方々や復旧復興に従事する方々に向けた詳細な気象情報を提 供するため,被災地へ独自の気象観測設備の設置を行ったほか,全国 8 万 8,000 人の津波・地震時の行動などを分析した「東日本大震災調査」や,津 波被害において,無事に避難をされた方と亡くなった方との間にどのような 行動・判断の違いが存在するのかを調べ,今後の減災・避難活動における対 策・対処の一助とすることを目的とした「津波調査」を実施し,自社 HP で の公開を始め,自治体や研究機関への提供を行った。

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震災後のサービス・コンテンツ 弊社では,震災の約 1 か月前,2 月 2 日に千葉市と協定を締結し「ちば減 災プロジェクト」を全国で初めて開始していた。これは,個人や地域のコミュ ニティでの減災意識を高め,気象・地象災害による被害を少しでも軽減する ために,市民の自助・共助活動を支援する目的で立ち上がったものである。 このプロジェクトでは市内で観測された情報や,市民から送られてくる被害 リポートを専用の携帯サイト,インターネットサイトにリアルタイムで反映 し,市民自らが自分に必要な減災情報をいつでも入手できるようにしている。 千葉市民向けに特化した減災情報共有サイトと言ってもよいであろう。この 取り組みにより,これまで千葉市が行ってきた減災への活動に加え,参加型 に強い弊社がコラボレーションした新しい減災の取り組みとなり,そこで市 民自らが参加し情報を共有し合うことによって,これまで把握することが難 しかった大雨や暴風などのシビアな気象時に自宅にどのような影響があるか や,通勤通学の際に使用する身近な道路への影響など,局所的な個人の生活 レベルでの被害状況の把握が可能になり,きめ細かい情報を市民と共有する ことが可能となった。ちなみに震災当日,千葉市のサポーターから寄せられ たリポートは 193 件あり,そのうち 67 件が「広く液状化現象がみられた」「歩

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進化する災害情報──ウェザーニューズの取り組み 道に大きな穴が開いている」など,被災場所と被災現象をリポートしたもの であった。また翌 12 日のリポートは 380 件あり,その半数近い 182 件が被 害リポートであり,震災 2 日目のまだまだ身近な情報が不足しがちな被災直 後に,この被災リポートが市民の減災行動の一助になっていたのではないだ ろうか(図 5)。 この千葉市における震災時の事例を踏まえて,その後,名古屋市,神奈川 県,大阪府,京都市,習志野市,香川県でも「減災プロジェクト」が開始さ れ,それぞれの地域において減災への課題に向き合うための工夫や,オープ ンデータ施策によって自治体から提供されたハザードマップなどとのマッ シュアップなどを行っている。また,市民からのリポートだけでなく,自治 体の職員によるオフィシャルなリポートを取り入れる事例や,ICT 街づくり 推進事業「センサーネットワークによる減災情報提供事業」(塩尻市)との 連携,自治体制作の防災アプリとの連携の予定などもあり,まさに公助と自 助・共助が一体となった情報共有の試みなども開始されている。 そして,震災から 2 年を経過した 2013 年 3 月には,地震や津波などによ る被害を少しでも軽減するため,地震や津波の発生時などサイトへのアクセ 図 5 ちば減災プロジェクト

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放送メディア研究 No.11 2014 スが集中する際でも,最新の地震や津波情報へ “ 必ず迅速につながる ” こと ができ,会員の方と一緒に定期的に減災訓練を実施する新しい情報コミュニ ティ『地震津波の会』を開始したほか,過去の災害情報や地域の人から寄せ られた身近な災害情報をデータベース化して公開し,大きな災害から身近な 場所の冠水の情報まで,全国各地のあらゆる災害情報をきめ細かく共有する ことができる,利用者参加型の減災コンテンツ『減災 Ch.』をスマートフォ ンアプリ「ウェザーニュースタッチ」内でリリースを行った。

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減災情報の Join & Share に向けて

紹介した取り組みは,これまで弊社の利用者に限定されていた「ウェザー リポート」や「減災リポート」を一民間企業の枠を超え,自治体やさまざま な団体とのコラボレーションにより,さらに多くの方々に “ 情報による自助 共助減災 ” を実感していただき,モチベーションを維持しながらそれが日常 的な所作となるレベルまでに高めて行きたい,という弊社の想いに共感いた だいた利用者の皆様や各自治体との共創の賜物である。

減災情報は,Give & Take でなく,Join & Share(皆で参加して共有する) ことが基本であり,ここで重要なことは,いざという時だけでなく日頃から 空の様子や身近な天気変化,体感などを発信・共有することを楽しみ,親し んでおくことである。平常時にできないことは有事にもできないことが多く, いかに普段から無理なく日常生活の中に減災情報を取り入れることができる かがいちばんの課題であり,気持ちの中に自然と減災に寄与する “ 志 ” を持っ ていただくことができるか,そのためのさまざまな工夫が重要となっている。 また,より多くの方にご参加いただくための施策も重要であり,自治体の 連携にとどまらずソーシャルメディアや企業サイト,スマートフォンアプリ との連携することにより,それぞれの強みを生かした形で創られる,いわば 「減災プラットフォーム」の実現が必要と考えている。

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進化する災害情報──ウェザーニューズの取り組み 弊社では,2013 年 12 月に海外のスマートフォンユーザー向けに多言語対 応をしたグローバル天気アプリ「Sunnycomb(サニーコム)」を全世界一斉 にリリースした(図 6)。 ウェザーリポート・減災リポートを日本だけでなく世界の人々にもご参加 いただき共有して,世界中の天気予報の情報精度を上げ,減災に繋げたいと の想いからである。 2013 年 11 月にフィリピンなどを襲った台風 30 号の被害は甚大であった。 被害が拡大した要因はさまざまであるが,現地における気象情報・避難情報 が不十分だったことにより,台風による高潮が発生することを周知すること ができなかったことが大きな要因だったのではないだろうか。 世界中の国々で「Sunnycomb」を活用したウェザーリポートや減災リポー トが多く寄せられ,Join & Share 型の減災情報により,一人でも多くの人命 が救われることを目指し,弊社では今後も取り組んでいく所存である。

図 6 Sunnycomb

参照

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