アジア地域
モンゴル・中央アジア・コーカサス-北海道
民間連携情報収集・確認調査
ファイナルレポート
(アゼルバイジャン版)
平成 28 年 3 月
(2016 年)
独立行政法人国際協力機構(JICA)
一般社団法人北海道総合研究調査会
株式会社国際開発センター
東中 JR 16-011目 次 1 業務実施の背景 ... 1 2 業務の目的 ... 1 3 業務実施方針 ... 2 (1)我が国の政策や多国間・二国間の取組みとの連携 ... 2 (2)アゼルバイジャンに関する国際情勢を踏まえた分析 ... 2 (3)アゼルバイジャンへの日本の支援方針を踏まえた検討 ... 3 (4)北海道の技術・知見 ... 3 (5)過去の失敗事例を踏まえた民間連携促進の検討 ... 5 4 業務実施の方法 ... 7 5 調査結果 ... 8 (1)アゼルバイジャンの特性 ... 8 (2)アゼルバイジャンの概況 ... 11 (3)日本の支援方針等 ... 17 (4)道内企業の国際展開に関する意識 ... 17 (5)現地調査の実施 ... 18 (6)今後の展開プラン ... 21 6 アゼルバイジャンへの道内企業の事業展開可能性 ... 26 (1)今後の道内企業のビジネス展開 ... 26 (2)アゼルバイジャン進出における留意点 ... 27 (3)JICA スキーム活用の検討について ... 28 7 アゼルバイジャン及び周辺国との民間連携促進における調査団の提案(まとめ) ... 30 (1)周辺複数国を対象とすることによる規模の確保 ... 30 (2)周辺国を横断的に検討する調査の実施 ... 31 (3)北海道内における情報共有、周辺国間の連携促進 ... 32
略 語 表
略語 正式名称
ACG Azeri-Chirag-Gunashli アゼル・チラグ・グネシリ
ADB Asian Development Bank, アジア開発銀行
Azpromo Azerbaijan Export and Investment Promotion Foundation アゼルバイジャン輸出投資促進基金
B&B Bed & Breakfast B&B(朝食付き簡易宿泊施設)
BOP Base of the Economic Pyramid 低所得層
B to B Business to Business 法人顧客相手のビジネス
BTC Pipeline Baku-Tbilisi-Ceyhan Pipeline バクー・トビリシ・ジェンハンパイプライン BTE Pipeline Baku–Tbilisi–Erzurum Pipeline バクー‐トビリシ・エルズルムパイプライン
CIA Central Intelligence Agency 中央情報局
CIS Commonwealth of Independent States 独立国家共同体
CSTO Collective Security Treaty Organization 集団安全保障条約機構
DFR Draft Final Report ドラフトファイナルレポート
EurAsEC(EAEC) EurAsian Economic Community ユーラシア経済共同体
EEU Eurasian Economic Union ユーラシア経済同盟
EU European Union 欧州連合
FAO Food and Agriculture Organization 国際連合食糧農業機関
FS Feasibility Study 実行可能性調査
FR Final Report ファイナルレポート
GDP Gross Domestic Product 国内総生産
GJ Giga Joule ギガ・ジュール(熱量・電力量の単位)
GPS Global Positioning System 人工衛星を利用した測位システム
GUAM GUAM(Georgia, Ukraine, Azerbaijan, Moldova)Organization for Democracy and Economic Development
民 主主義 と経 済発展 のための 機構 GUAM
HACCP Hazard Analysis Critical Control Point ハサップ
HIT Hokkaido Intellect Tank 北海道総合研究調査会
略語 正式名称
JOGMEC Japan Oil, Gas and Metals National Corporation 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 NGO Non-governmental Organizations 非政府組織
NPO Not-for-Profit Organization 非営利団体
N/A Not applicable/not available 該当なし/利用不可
ODA Official Development Assistance 政府開発援助
PPP Public Private Partnership 官民連携
SCO Shanghai Cooperation Organization 上海協力機構
SCP South Caucasus Pipeline 南コーカサスパイプライン
SOCAR State Oil Company of Azerbaijan Republic アゼルバイジャン国営石油会社
SOFAZ The State Oil Fund of Azerbaijan アゼルバイジャン国家石油基金
PR Public relations 広報
TANAP Trans Anatolian Natural Gas Pipelin 輸送用アナトリア横断パイプライン
USD US Dollar 米ドル
1 業務実施の背景
北海道は日本政府による開拓や開発、積極的な海外からの技術導入や国際機関の支援を得て、農林 水産業や鉱業を中心とした産業振興、地域整備を行った結果、明治時代の約6 万人からわずか百余年 で570 万人を有する地域へと成長した。北海道は広大な大地、豊富な天然資源、肥沃な土地や農業に 適した気候というポテンシャルがあると同時に、冬季の過酷な環境や自然災害や凶作、病害虫の被害 等から、その地域振興は容易ではなかった。また、基幹産業であった石炭産業の衰退、200 海里水域 設定による水産業低迷など大きな経済環境の大きな変化を受け、東京など大消費地との距離が遠いと いう流通面での制約も抱えている。しかし、現在では品質や価格競争力の高い農畜産物の生産が可能 となり、徐々に競争力を高めている。 このような状況下、北海道は政府開発計画や北海道及び各自治体の戦略のもと、産官学の発意や連 携によってこれらの課題解決に努めてきた。こうした官民連携による地域開発や産業振興を実践した 経験や手法は、産業の多様化を目指すアゼルバイジャンにとっても有益なものと考えられる。 一方、旧ソ連諸国は独立以降、ロシアとの関係を拡大もしくは維持する国と、ロシアとの距離を持 とうとする国の大きく2 つに分かれ、アゼルバイジャンは後者として、ジョージア、ウクライナ、モ ルドバとともに 1997 年に民主主義と経済発展のための機構「GUAM」(参加国の頭文字から命名) を形成した。 特にアゼルバイジャンは独立後、豊富なエネルギー分野への海外からの直接投資や国際市場での原 油取引で急速な経済成長を遂げてきた。しかし、資源依存度の高い経済構造ゆえ、2014 年末以来の世 界的油価下落が同国の経済全体へ強い影響を及ぼすこととなった。そのため、アゼルバイジャンでは 産業の多様化や資源開発以外の分野での外資との協力が喫緊の課題となっている。 上記を踏まえ、北海道の民間企業等が有する技術、資源や海外事業展開の動向や方針を把握したう えで、アゼルバイジャンの開発ニーズに関する情報を整理し両者のマッチング可能性の分析を行った。 また、分析結果の情報提供により民間連携の推進を図り、民間企業の事業展開に資する分野での案件 発掘や形成(技術協力、円借款、海外投融資等)に活用することを目的に本調査を実施した。2 業務の目的
本調査では、北海道民間企業等が有する技術・資源及び海外事業展開の方針・動向及びアゼルバイ ジャンにおける開発ニーズの確認を通し、両者のマッチング可能性を分析することで、民間ベースで の連携可能性・JICA スキーム(民間連携事業等)による今後の支援展開について検討を行うことを 目的とした。3 業務実施方針
本調査を実施するうえで、以下の5 点を踏まえて業務を実施した。 (1)我が国の政策や多国間・二国間の取組みとの連携 本調査の推進において日本のアゼルバイジャン政府への協力方針を踏まえることで効果的な推進や 関係機関の事業との相乗効果が期待される。また他ドナー支援や他国との連携についても想定した。 (2)アゼルバイジャンに関する国際情勢を踏まえた分析 アゼルバイジャンでは資源価格変動が経済全体に与える影響をふまえる。また、ロシア、トルコ、 中国等といった近隣諸国の経済的、政治的影響にも留意しなければならない。北部国境を接するロシ アはアゼルバイジャンにとって出稼ぎ労働者の受入れ先であるとともに、生鮮野菜や果樹等の輸出市 場でもある。現在、景気低迷によってアゼルバイジャンにとって出稼ぎ労働の場が減る一方、ロシア と欧州の政治関係が悪化している中、アゼルバイジャンは生鮮品の供給地としてのロシアにとっての 重要性を高めている。また、民族的・言語的に類似しているトルコは、アゼルバイジャンをエネルギ ー戦略上重要なパートナーとしているほか、アゼルバイジャンにおける住宅建設やホテル経営、食料 品などの民間ビジネスにおいて大きな影響力を持っている。中国は中央アジアやコーカサスのエネル ギー資源への関心が高く、アゼルバイジャンとも経済交流拡大をすすめ、生活物資などの市場として 物流、商流の環境を整えている。なお、韓国も機材や建設資材など日本と類似した製品や技術の市場 としてアゼルバイジャンにアプローチし、比較的安定した品質と価格競争力から企業や一般消費者に 受け入れられている。 また、現在、アゼルバイジャンはさまざまな多国間協力や交流促進の枠組みに参加しており、これ らの施策や合意事項の影響にも留意する必要がある。 表 3-1 アゼルバイジャンを含むモンゴル・中央アジア・コーカサス諸国の国際組織加盟状況 № 国名 (2014 年,世銀、 GDP 10 億ドル) 組織名・総加盟国数 加盟組織数 CIS CSTO SCO EurAsEC EAEC/ GUAM Economic EurasianUnion 独立国家 共同体 集団安全保障 条約機構 上海協力 機構 ユーラシア 経済共同体 - ユーラシア 経済同盟 9 6 6 6 4 5 1 モンゴル 12.0 0 2 カザフスタン 212.2 ○ ○ ○ ○ ○ 5 3 キルギス 7.4 ○ ○ ○ ○ ○ 5 4 ウズベキスタン 62.6 ○ ○ ○ 3 5 タジキスタン 9.2 ○ ○ ○ ○ 4 6 トルクメニスタン 47.9 0
(3)アゼルバイジャンへの日本の支援方針を踏まえた検討 北海道の技術や知見をアゼルバイジャンに紹介し、民間連携を進めるにあたってはアゼルバイジャ ンのニーズと我が国の支援方針を踏まえることが必要である。現地ニーズについては本調査において 確認し、アゼルバイジャン政府と我が国が共有している外務省及びJICA の支援方針を踏まえた調査 を行った。 (4)北海道の技術・知見 上記(3)で整理した日本の支援方針を踏まえてアゼルバイジャンの地理的特性や気候風土に適応 する北海道の知見を想定すると表3-2 の点が考えられる。これらの技術は既に北海道からロシアや中 国東北部、東アジアなどへの技術協力や本邦研修などのテーマとなっているものである。これらの現 段階での情報を踏まえた上で、本調査においてアゼルバイジャンに適した新たなリソースや技術の発 掘に努めた。 表 3-2 アゼルバイジャンに有用と考えられる北海道の技術 分類 特徴 北海道リソース 内容 参照元 農 牧 業 ・北海道は国内耕地面 積の4 分の 1 を有 する一大農牧業地 帯。 ・115 万ヘクタールの 農地が広がり、冷涼 な気候に恵まれた 北海道は、日本の食 料基地としての役 割を担っている。 ・地域によって気候風 土が異なるという 特性から、多種多様 な農畜産物が生産 されている。 ・各地域に適した作物 や栽培技術の開発、 酪農畜産の育成や 技術の開発、食の安 全やバイオテクノ ロジーに関わる試 験研究が行われて おり、高品質な農畜 産物の生産を実現 している。 畜産糞尿利用によ る循環型農牧業 ・投棄糞尿の適正な堆肥化を行い、農牧 業利用する仕組みを確立した技術 「畜産糞尿利用による循環 型農業の確立及び環境保全 事業」(H26-H29/JICA 草の 根技術協力/モンゴル) 再生可能エネルギ ー(地中熱)省エネ 施設園芸による野 菜生産技術 ・地中熱利用型ハウスにおいて、灯油ボ イラーに依存せずに従来よりも長期に わたり、ハウス内での野菜栽培を可能 とする。 「再生可能エネルギー(地中 熱)省エネ施設園芸による野 菜 生 産 技 術 支 援 事 業 」 (H26-H28/JICA 草の根技 術協力/モンゴル) クリーン農業 ・恵まれた土地条件や自然条件を活かし て、環境にやさしく、安全・安心でお いしい農産物生産を目的に、たい肥な どの有機物を使った健全な土づくりに 努めている。 ・化学肥料や化学合成農薬の使用の削減 の取り組みを推進。 北海道事業 http://www.pref.hokkaido.l g.jp/ns/shs/clean/ 近代的酪農経営 ・欧米の酪農技術を取り込んで日本の酪 農王国へと成長。 ・時代の変遷に応じて、施設、技術とも に近代化を図りながら酪農経営を行っ ている。 北海道事業 http://www.pref.hokkaido.l g.jp/ns/tss/ 農牧業機械 ・農牧業機械の生産・流通・利活用・開 発・普及で日本の基地。 ・ICT/GPS 関連の技術を活かし、高付 加価値と安全安心を兼ね備えたMade in Japan の農牧業機械を開発。 ・中央アジアやロシアなど農牧業機械の 海外輸出の実績も豊富。 「「開発途上国の社会・経済 開発のための民間技術普及 促進事業」」(H25/JICA 民間 連携事業/キルギス・カザフ スタン) リモートセンシン グ ・早くから人工衛星を活用したリモート センシングを取り入れ、作柄評価や施 肥管理が行われている。 「農業のIT システム化技 術」(H24-26/JICA 研修事業 /アフリカ諸国) 畑地灌漑整備 ・スプリンクラーやリールマシンを整備 し、貯水池に貯えた農牧業用水を、適 時・適量を農地に散水するシステムを 構築。 ・農作物の収量アップと高品質生産が見 込める。 北海道事業 http://www.pref.hokkaido.l g.jp/ns/nts/35hatakan.htm
特徴 北海道リソース 内容 参照元 食 産 業 ・北海道は海や大地の 新鮮で豊富な素材 を生かした安心安 全で魅力ある食の 宝庫。 ・食分野における北海 道の優位性を生か し、地域産品のブラ ンド化に向けた地 域の取組を促進し ている。 ・道産品の販路拡大を 図るため、一次産業 の高度化や食品産 業の高付加価値化 等による、食の総合 産業化を目指して いる。 ・食クラスターを形成 し、生産から加工、 流通、販売に至る事 業者間の連携の強 化・拡大を図ってい る。 生野菜の冷凍保存 技術 ・カットした生野菜を特殊な糖溶液に浸 漬し、十分に脱水処理することによる 急速冷凍技術を開発。 ・冷凍保存技術の確立により、大量収穫 時における貯蔵や端境期の出荷などが 可能となった。 北海道立総合研究機構事業 http://www.hro.or.jp/list/ind ustrial/research/food/index. html 食肉加工技術 ・廃用牛肉の硬い肉質を酵素処理して軟 化させる技術を開発。 北海道立総合研究機構事業 http://www.hro.or.jp/list/ind ustrial/research/food/index. html 乳製品加工 ・酪農王国北海道で生産される生乳を使 用し、バターやチーズ、菓子類などへ の加工による多様な商品展開を行って いる。 「ロシア語による北海道情 報発信事業(緊急雇用創出推 進事業)」(H22/北海道事業) 機能性食品 ・健康をキーワードとした高付加価値化 により、道産食材に含まれる機能性成 分を使った機能性食品への加工・製造 を有す。 ・北海道独自の機能性食品認定制度を確 立しており、国内外の市場獲得を目指 した取組を行っている。 北海道事業 http://www.pref.hokkaido.l g.jp/kz/sss/ks/hyouziseido.h tm ブランド化 ・豊富な農水産物を地域の特性を活かし た商品開発により、付加価値を向上し、 販路拡大や地域の認知度向上につなげ ている。 「ロシア語による北海道情 報発信事業(緊急雇用創出推 進事業)」(H22/北海道事業) 食中毒細菌の簡易 検出法の開発 ・熟練者でなくても黄色ブドウ球菌の判 別が容易にできる検出システムを開 発。 北海道立総合研究機構事業 http://www.hro.or.jp/list/ind ustrial/research/food/index. html 観 光 ・広大な面積を有する 北海道は、地域ごと に気候や地形、景観 が大きく異なり、年 間を通じて都市型 観光からアウトド ア体験まで、幅広く 楽しめるエリア。 ・多様な地域資源を生 かした魅力ある観 光地づくりや満足 度の高いサービス の提供により、滞在 型の観光地づくり を促進している。 ・特に冬は世界有数の スキーリゾート地 として国内外から の認知度が高い。 エコツーリズム・グ リーンツーリズム ・地域が一体となって、自然環境や歴史 文化など地域固有の魅力を観光客に伝 えることにより、その価値や大切さの 理解促進を図り、環境保全につなげて いる。 ・農山漁村地域において自然、文化、人々 との交流を楽しむ滞在型観光の推進。 ・農家民宿や農家レストランなどの整備 状況が全国でもトップレベル。 「ロシア語による北海道情 報発信事業(緊急雇用創出推 進事業)」(H22/北海道事業) 広域景観整備 ・広大な大地を活用したガーデン整備に よる花観光の推進。 ・都市と都市を結ぶ沿道景観整備による シーニックバイウェイ認定などの景観 整備により、観光の魅力度向上を図っ ている。 北海道事業 http://www.pref.hokkaido.l g.jp/kn/tki/mdr/syusakeika n.htm
特徴 北海道リソース 内容 参照元 低 人 口 密 度 ・北海道の人口は550 万6,419 人(2010 年国勢調査)で、日 本 の 総 人 口 の 約 4.3 % を 占 め て い る。 ・人口密度は 70 人/ ㎢と、全国(343 人/㎢)の約 5 分の 1 で、都道府県別で は最も低く、広域分 散型社会である。 ・都市間の距離間隔が 長い低人口密度地 域ならではの医療 サービスの確保必 要。 遠隔医療 ・医師と患者が直接対面しなくても、診 療を可能とするインターネットなどの 通信技術を用いた診療行為を実践して いる。 ・地方の医師不足解消の方策としても期 待されている。 旭川医科大学病院事業 http://www.asahikawa-med .ac.jp/index_h.php?f=hospit al+patient+tyuou_enkaku 救 急 搬 送 の 高 速 化・安定化 ・医師の都市偏在や低密な交通機関、冬 期における交通環境悪化など、他地域 とは大きく異なる厳しい環境下での広 域医療サービスを実施するため、道路 整備やドクターヘリの活用等により救 急搬送体制を構築。 北海道開発局事業 http://www.hkd.mlit.go.jp/t opics/gijyutu/giken/h26gike n/h26notice.html そ の 他 ・農林水産業者が農林 水産物の生産から 加工や流通・販売、 サービスの提供と いった 6 次産業化 の取組が盛んであ り、雇用確保や生産 者の所得向上によ る地域の活性化に つながっている。 ・豊富な自然環境をも とに省エネ・新エネ 技術による多様な 再生可能エネルギ ー利用・開発が進ん でいる。 6 次産業化 ・農林水産業者による直売やファームレ ストラン、ファームインの経営や生産 物加工の商品開発によるブランド化の 取組が日本で最も盛んな地域である。 「観光と融合した農業六次 産業化による地域開発」コー ス(ジョージア)(H27/JICA 研修事業) バイオマスエネル ギー ・圃場や森林からの残渣利用やエネルギ ー作物の栽培など多様な技術開発によ る、化石燃料の削減を目的とした再生 可能エネルギー利用による地域の仕組 みづくりが進められている。 ・冬季に降り積もった雪や、冷たい外気 によって凍結した氷などを、冷熱源と して夏季まで保存しておき、その冷気 を、農産物などの冷蔵や、部屋などの 冷房に使用。 ・木材加工の際に出るオガコや端材を木 質バイオマスボイラーの燃料として利 用。廃棄物をできるだけ出すことなく、 森林資源の有効活用により森の保全に つながっている。 キルギス共和国バイオガス 技 術 普 及 支 援 計 画 (H19-H23/JICA 草の根技 術協力) (5)過去の失敗事例を踏まえた民間連携促進の検討 本調査はアゼルバイジャンの開発課題に対応可能と考えられる技術や経験を有する北海道内企業が、 それらの解決に寄与する民間連携を推進することが目的である。ただし、過去の道内の海外事業失敗 事例を踏まえ、以下の点に留意する必要がある。 ①アゼルバイジャンのニーズを十分踏まえていること、供給側からの押し売りに陥らない 企業海外進出において自社技術力に自信がある余り、相手のニーズを確認せずに展開し、相手のニ ーズや価格レベル、技術レベルにマッチせず、継続できない失敗事例が多い。 ②わが国とアゼルバイジャンの環境の違いを理解する 日本と比べアゼルバイジャンは、石油等の鉱物資源が豊富で燃料費が安価なケースがあるため、ア ゼルバイジャン企業にとっては日本の技術導入によりコストカットや生産効率向上等、大幅な経営面 での効果がないと導入されない(例えば、アゼルバイジャン企業が光熱費を割安にできる機械を入れ ても、そもそもの光熱費が安いために機械の初期投資・メンテナンスコストの方が高くつくケースも 考えられる)。
③継続的にビジネスが可能になるための諸条件を把握する 商品や部品の物流手段及びコスト、アゼルバイジャンの技術規則、メンテナンス体制及びその人材 育成などを踏まえておらず、継続的な供給体制が取れない。 ④国内に十分な実施体制が整え、長期計画を持つ 北海道の場合、中小零細規模の企業が多く、事業の途中で人材、資金力が不足し、事業継続不可能 になる場合があるので、十分な実施体制を整え、長期計画を持つことが重要である。(例えば、以前、 日本国内の建設土木市場の縮小によって海外進出を図った企業が、現在は公共事業増加により国内市 場が好調であるため、海外における事業の縮小、撤退をする日本企業の事例が見られる。)
4 業務実施の方法
本調査は以下の図で示すように、アゼルバイジャンのニーズや課題を踏まえた上で、北海道側のリ ソースの有用性の整理や道内企業への裨益を意識した分析を行い、双方にとって有益な事業提案を行 った。 図 4-1 業務実施のフローチャート ※1 表 4-1 第 1 回現地調査実施概要 日 程 2015 年 12 月 10 日~14 日 対象エリア アゼルバイジャン・バクー市内 調査内容 インセプション・レポートの説明協議/現地情報の収集 訪問先 行政機関、現地企業・団体 ※2 表 4-2 第 2 回現地調査実施概要 日 程 2016 年 1 月 28 日~2 月 6 日 対象エリア アゼルバイジャン・バクー市内、シェキ地区及び近隣地 調査内容 有望分野の確認、日本企業・行政機関等追加調査 訪問先 行政機関、現地企業・団体、地方自治体、NPO、農家等 (1)業務実施計画の検討(IC/R) 北海道企業の海外展開関心等 JICA 既存事業に基づく整理 (2)①北海道企業向けヒアリング (2)②現地調査事前セミナーの実施 官公庁の戦略、関心の把握 北海道企業の技術、関心の把握 アゼルバイジャンの概要 各国の民間投資・産業動向 アゼルバイジャンの情報 類似地域のJICA 事業例 (3)①インセプション・レポートの説明協議 (3)②現地情報の収集 アゼルバイジャンの課題、 関心の把握 現地情報の補完、更新 現地情報のフィードバック 北海道リソース情報の提供 現地の反応確認 (5)調査結果分析 (6)DFR作成 (7)北海道企業向けセミナーの実施 (8)FRの作成 アゼルバイジャン関連 北海道関連 現地情報、現地ニーズなど 道内企業のフィードバック JICA スキームの活用可能性 現地情報、現地ニーズを踏まえた 連携可能性の検討 本邦戦略、国際合意等合意、周辺国状況 アゼルバイジャンへの フィードバック 第一回現地調査 ※1 第二回現地調査 ※2 (4)①政府機関、経済団体へのヒアリング (4)②日本以外の海外進出企業からのヒアリング (4)③日系商工会、日系企業からのヒアリング5 調査結果
(1)アゼルバイジャンの特性 ①地理的特性 北海道の約1.1 倍の面積を有するアゼルバイジャンは、カスピ海地域、大コーカサス山脈地帯、中 央平原の3 つに区分されるが、その複雑な地形から世界に存在する 12 の気候帯の内 9 つの気候帯を 一国内に有している。アゼルバイジャンはカスピ海西岸に位置し、残る三方が険しい山岳地帯であり、 河川がカスピ海にそそぎ、多様な渓谷を形成している。ジョージア、アルメニアのコーカサス地域だ けでなく、北をロシア、南をイランと国境を接するため、カスピ海の貿易港を通じてこれらの国への 物流拠点となるポテンシャルを有している。なお、南西部にはアルメニアをまたいでアゼルバイジャ ン領のナヒチェヴァン自治共和国がある。 出所:外務省 図 5-1 アゼルバイジャンの位置 ②気候的特性 上記①でも述べたようにアゼルバイジャンはその地形から9 つの気候帯を有しているが、北海道が 属している亜寒帯はアゼルバイジャンでは山岳部でも高緯度地域に限られ、気温や降水量・降雪量か ら考えると、北海道と気候的な共通点は少ないと考えられる。ただし、陸路での物流を考える場合、http://www.grida.no/graphicslib/detail/climate-zones-of-the-caucasus-ecoregion_851d#
③行政区分 アゼルバイジャンは北海道の約1.1 倍の国土面積に 59 行政区、11 の市(日本の政令都市と類似し た格付け)、1 つの自治共和国という行政区分を有している。アゼルバイジャンの総人口は 950 万人で あり、そのうち215 万人が首都バクー市内に居住し、バクーの通勤圏では 4 百万人程度の人口を有す る1。北海道の場合、自治体数は178 市町村で、全人口 540 万人のうち札幌に 191 万人が集中してい ることから、都市部への人口集中という点でアゼルバイジャンと北海道は共通の特徴と課題を有する と考えられる。
出所:Central Election Commission of the Republic of Azerbaijan
(2)アゼルバイジャンの概況 ①GDP 2010 年以降の名目 GDP の推移をみると、2010 年 529 億米ドル、2014 年 752 億米ドルである。 直近の2010 年から 2014 年までの GDP の平均伸び率をみると年平均 3%の伸びを示している。2015 年の速報値2をみると638 億米ドル と前年に比べて 15%以上減少している。これは、アゼルバイジャ ンの主要輸出品である石油製品の国際市場価格が下落した影響とみられている。 出所:世界銀行 図 5-4 近年のGDPの推移 ②産業特性 アゼルバイジャンのGDP 構成比は、一次産業が 6.0%、二次産業が 58.0%、三次産業が 36.1%で あり、一次産業の比率が低く、二次産業の比率が高いことが特徴である3。特に二次産業では、石油精 製、重化学、繊維、食品産業が盛んである。 首都バクー周辺のカスピ海は世界的な油田地帯であり、石油と天然ガスが産出される。欧米資本の 資本参入により設備の近代化とパイプライン敷設が行われたことにより、石油生産量が大幅に増加し 同国の経済発展に大きく貢献した。原油については2006 年に開通した BTC パイプラインが重要な輸 送手段となっている。このパイプラインはバクーからジョージアを経由してトルコ共和国ジェイハン までの1,768 ㎞の総延長を有し、日量 120 万バレルの通油能力を持っている。BTC パイプラインと 並行して敷設されているSCP(南コーカサスパイプライン)【別名:BTE(バクー‐トビリシ・エル ズルム)パイプライン(総延長692 ㎞、輸送能力 250 億㎥/年)】は天然ガスをトルコ国内に供給して いる。さらに2015 年には SCP とつないでアゼルバイジャン産天然ガスを欧州に送る輸送用アナトリ ア横断パイプライン(TANAP)の建設も始まっている。 2 World Bank、2016 年 3 CIA world FACTBOOK
British Petroleum 資料から抜粋
図 5-5 BTC及びSCP(BTE)パイプライン
WWW.TANAP.com
図 5-6 バクーから欧州に向けた輸送用アナトリア横断パイプライン(TANAP)のルート
油開発、発電、鉄道などの国営企業、公営企業の国債格付け機関の信用格付けが引き下げられた。さ らに政府の税収も減少している中、原油が1 バレル 50 ドルという前提で編成されていた 2016 年度政 府予算の見直しに迫られ、1 バレル 25 ドルに修正された国家修正予算案が大統領に提出された。 このような状況の中、アゼルバイジャン政府は産業多様化のため農業セクターの育成を目指してい る。農業従事者は労働力人口の40%を占めるが、農業が GDP に占める割合は 5~8%と低い。一方で 灌漑水路が発達しており、小麦、綿、果樹、茶等が栽培され、山岳地帯では牧畜が盛んである。国土 面積は北海道とほぼ同じでありながら、アゼルバイジャンには9 つの気候帯が存在し、気温の高い地 域から低い地域まで様々な作物が栽培されている。また現在、先進国の農業技術を積極的に取り入れ て生産の効率化が図られている。なお、コーカサス全域が、多くのハーブや北方系果実の原産地とし て知られている。 今後の経済戦略としてアゼルバイジャン政府は、近年のエネルギー価格が低迷する中、非エネルギ ー産業の育成を目標とし、2015 年 12 月 31 日の年末年始祝賀挨拶においてアリエフ大統領は農業、 観光、サービス業などの非石油産業を中心にとした経済成長を目指すとしている。 ③貿易 近年の貿易収支をみると、恒常的に黒字(輸出超過)である。主な輸出品は石油・石油関連、天然 ガス、フェラスメタル(鉄を含む金属)、化学、機械、小麦、毛糸、石炭である。また、主な輸出相手 国は、中国, ロシア、ドイツ、フランス、イタリア、ギリシャ、ルーマニアである。一方、主な輸入 品は、機械設備、金属製品、食物であり、主な輸入相手国は、ロシア、中国、ドイツである。 出所:世界銀行 図 5-7 近年の貿易額の推移 ④外国直接投資 1990 年代半ばよりバクー周辺のカスピ海油田開発に対して主に欧米資本からの石油開発投資が行 われ、2007 年からは豊富な天然ガス生産も本格的に開始された。また、非石油産業への投資では、政 府機関が発注するプロジェクトをはじめ建設関連を中核として流通、メディア等に海外の民間資本が 多く参入している。投資元を国別にみると、最も多くの投資を行っているのがトルコで、次いでイギ リス、そしてアメリカが続く。 近年、アゼルバイジャンの外国直接投資をみると、2013 年に前年比で半分以下に落ち込みが見られ る。アゼルバイジャンの外国直接投資は約8 割が原油・ガス等の資源関連によるものであるが、2013 年はそれまで上昇基調にあった原油相場がピークアウトする時期に差し掛かっており、大幅な下落相 場となる2014年の前年にあたるため、外資からの直接投資は最盛期を過ぎていたものと考えられる。
なお、2013 年はカザフスタンのような他の資源依存国についても、同様に外国直接投資は減少してい る4。 出所:世界銀行 図 5-8 近年の直接投資の推移 ⑤主な海外投資政策 アゼルバイジャン政府は、非石油部門への投資を促進させようとしている。その一環として、2003 年、産業経済省によってAzpromo (Azerbaijan Export and Investment Promotion Foundation)が設 立された。Azpromo の役割は、非石油部門への海外からの投資を促進し、非石油部門の輸出を促進す ることにより、アゼルバイジャン経済的発展に貢献することであり、カントリープロモーションや国 際会議の企画・運営、ビジネスマッチング等を行っている。
海外からの投資に関する法律としては、1992 年に制定され 2007 年に改訂された海外投資保護法 (Law on the Protection of Foreign Investments)がある。この法律によると、海外からの投資家は アゼルバイジャン国内の投資家と同じ権利を所有し、税制面での優遇策が与えられる。税制面での優 遇策としては、工業団地やテクノロジーパークの入居社に対して、7 年間の所得税・付加価値税・固 定資産税等免除等がある。 ⑥日本・アゼルバイジャン間の経済連携状況 日本からのアゼルバイジャンへの輸出額は、123.3 億円であり、輸出品目は機械類及び輸送機器、 鉄鋼が多い。一方、アゼルバイジャンから日本への輸出額は、1.3 億円程度に留まっている。輸出品 目の多くは、石油及び石油製品である5。 カスピ海のACG(アゼル・チラグ・グネシリ)油田開発には伊藤忠商事(権益 4.30%)及び国際 石油開発帝石(INPEX)(同10.96%)が参加しており、採掘される原油は BTC(バクー・トビリシ・ ジェンハン)パイプライン6を通じて地中海に送油され、石油タンカーにより各国に輸出されている。 また、同パイプラインには、日本からは伊藤忠商事(権益3.4%)、INPEX(同 2.5%)が参加してい
いる。 ⑦日本以外の周辺国との経済連携状況 大きな石油資源を持たないトルコにとってアゼルバイジャンはエネルギー戦略上の重要なパート ナーである。また、トルコは1991 年にアゼルバイジャンの独立を最初に承認した国であり、前アゼ ルバイジャン大統領が「二つに分かれた一つの国」と発言するほどトルコとの結びつきは強い。この ような事情もあり、旧ソ連に属していたアゼルバイジャンではかつてはロシア製品多かったが、近年 はトルコ製品のシェアが上昇している。
表 5-1 アゼルバイジャンの概況 一般概況 面積 人口 ※1 首都 公用語 86,600 平方キロ 9.5 百万人 (2014) バクー アゼルバイジャン語 民族 言語 宗教 — アゼルバイジャン系 (90.6%) アゼルバイジャン語 イスラム教シーア派 地理的特性 カスピ海の西岸に位置し、北はロシア、南はイランに挟まれている。 経済指標 GDP/人 ※1 経済成長率※2 輸入金額 ※1 輸出金額 ※1 7,884 米ドル (2014) -13.7% (2015・推定値) 197 億ドル (2014) 326 億ドル (2014) 通貨単位 対ドル為替レート — — マナト (AZN) 1 ドル=1.56 マナト (2016.12.31) 名目 GDP ※1 (十億米ドル) 2010 2011 2012 2013 2014 52.9 66.0 68.7 73.6 75.2 主な輸出品 ※3 原油、石油製品 主要輸出相手国 ※3 イタリア、インドネシア、タイ、ドイツ、イスラエル 主な輸入品 ※3 設備・機械類、食料類、車両・スペアパーツ類 主要輸入相手国 ※3 ロシア、トルコ、英国、ドイツ、ウクライナ 対日関係 日本への輸出額 ※3 主な対日輸出品 日本からの輸入額※3 主な輸入品 1.3 億円 (2014) 石油及び同製品 123.3 億円 (2014) 機械類及び輸送用機 器、鉄鋼 主要条約・協定 2006 年 3 月 10 日・アゼルバイジャン技術協力協定署名 本邦企業数 ※4 現地日系企業数 9 社(2014) 投資政策 優先投資分野 石油、化学、鉱物資源、農業・牧畜(羊) 主要官庁 経済発展省 投資法の概要 外国人による不動産所有不可等の制限あり 外国投資優遇(税) 工業団地、テクノロジーパークに入居すれば優遇税制あり その他 主要物流ルート 日本→(海送…地中海・エーゲ海・黒海)→ジョージア→(鉄道)→ アゼルバイジャン 出所: ※1:World Bank (2015)
※2:IMF World Economic Outlook(2015. 10) ※3:アゼルバイジャン国家統計委員会(2013)
(3)日本の支援方針等 アゼルバイジャンに対する日本政府及びJICA の支援方針や重点施策は以下のとおりである。アゼ ルバイジャンでは石油天然ガスプロジェクトに日本企業が参画しており、独立行政法人石油天然ガ ス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が石油開発事業の債務保証などの支援を行うなど、エネルギー セクターでの協力が際立っていたが、近年の油価下落による同国の経済低迷に伴い、農業や観光、中 小企業育成など非エネルギーセクターでの協力にアゼルバイジャン側は関心を示している。 また、アゼルバイジャンが加盟している民主主義と経済発展のための機構‐GUAM と我が国は 2007 年に対話と協力の枠組みとして「GUAM+日本」会合を立ち上げた。主たるテーマはエネルギ ー、観光振興、投資促進であり、2015 年 7 月に第 6 回会合では水管理、エネルギー安全保障、観光、 国際場裡における協力について協議された。 表 5-2 日本の支援方針等 外務省国別 国別援助方針 大目標(抜粋) ・農業、観光、運輸分野等の振興策 ・電力、道路等のインフラ整備 国別援助方針 中目標(抜粋) ・インフラ整備(エネルギー分野、運輸分野、上下水道) ・社会サービス(保健・医療、教育、環境対策) ・人材育成支援(民間セクター) JICA 目標・重点施策 ・経済成長の維持に不可欠な経済・社会インフラの更新及び産業発展を支える人 材育成(首都バクー近郊での発電所建設、地方都市での上下水道整備の支援や、 公共サービス改善に関する研修) (4)道内企業の国際展開に関する意識 海外展開している北海道企業の進出先の 61%が 中国と東南アジアに集中している。主な進出目的は、 製造業における安価な労働力や原材料等を求めた生 産拠点の分散化や委託生産である。また日本食ブー ムの高まりから、北海道の強みである「食」のフラ ンチャイズ店舗展開や農水産品等の食品輸出も挙げ られる。しかし、国内外の多くの企業も中国・東南 アジア市場をターゲットとしており競争が激化して いる。 そのため、道内企業としては北海道の特徴(表5-3) を生かせる新たな市場開拓が必要とされている。北 海道ではこれまでに善隣関係構築という地域戦略を踏まえて、産業特性や気候風土面で類似性の高い ロシア極東地域や北東アジア諸国と、農牧業インフラや寒冷地技術を中心に技術協力や民間同士のビ ジネス交流経験の蓄積がある。こうした経験を生かし、北海道が今後の見据えるべきターゲットとし て同様の類似性を有するアゼルバイジャンへの展開が有望であると考えられる。 図 5-9 道内企業の海外進出先の割合 出所:JETRO 北海道「2014 年度海外事業展開実 態調査」概要版(2015 年 7 月公表)をもと に作成
表 5-3 北海道における産業別の特徴 (5)現地調査の実施 ①現地ニーズを踏まえた調査テーマの検討 「3(4)北海道の技術、 知見」を踏まえ、本章(1)、(2)で整理したアゼルバイジャンの特性 と概況及び(3)日本の支援方針等、(4)道内企業の意識について行った調査では、住宅やエネルギ ー分野での展開可能性は少ない。アゼルバイジャンのような大規模な石油・天然ガス分野の経験は北 海道にはなく、アゼルバイジャンの気候では住宅についても北海道の優位性を示すことが困難だと考 えられる。一方、アゼルバイジャン政府が非エネルギーセクターとして育成を目指している農業分野・ 観光分野に関しては、北海道企業の展開が期待できる。農業分野に関して、北海道の農業は生産性の 向上を図るとともに品質の高い農産物の供給を実現している。さらに、農業にリンクした食品加工業 では、食の北海道ブランド化による付加価値向上を図るだけでなく、国際的な健康への関心の高まり に対応して安全で安心な食品や機能性の高い食品などの開発を行っている。また観光分野について、 北海道はアジアを中心に様々な国からの観光客数が急増し、多様な観光ニーズへの対応を行っている。 第一次現地調査では省庁、関係団体、企業でのヒアリングを行った結果、特に地方の農業、食品加 工、観光分野を発展させることで都市との経済格差を是正する必要性が確認された。北海道には札幌 だけでなく地方都市で農業、食品加工、観光の成功事例を持つ企業や団体が存在するため、その経験 や技術はアゼルバイジャンでも有効であると想定し、農業・食品加工と観光をテーマに第二次現地調 査を行った。 産業分野 特徴 農業・食 ・農業セクターの産業比率が高く(全国平均の4 倍)、生産物の加工業も多い 建設・インフラ ・建設・インフラセクターの産業比率が高い(北海道10.4%、日本全体 5.9%) 住環境・エネルギー ・年平均気温が全国最低かつ家庭の一人当たりエネルギー消費量が全国トップ(24,500GJ/人) ※GJ:ギガ・ジュール(熱量・電力量の単位) IT ・人口密度が全国で最も低く(約70 人/㎢)、特に冬季には遠隔管理(防災・医療など)が重要 ・耕作面積が広い(23.4ha/戸、他地域の 14.6 倍)など IT を農業分野などで利活用 機能性食品 ・ヘルシーDO(北海道食品機能性表示制度)が全国初の取り組みとして 2013 年 4 月に開始 観光・ツーリズム ・宿泊者数延べ2,418 万人と東京に次いで多く、多様な観光客向けのツーリズムが発達
②アゼルバイジャンにおける開発課題・ニーズの整理 1)農業・食品加工分野 大統領令アゼルバイジャン国家戦略「アゼルバイジャン-2020 未来への展望」において農業は産業 多様化推進のための重点セクターとして位置づけられ、地方都市における近代的倉庫を建設、農産物 の価格変動の調整、生産・保存段階でのロスの減少、自給率の改善、輸出能力の向上を政府が克服す べき課題としている。さらに、アゼルバイジャン政府は2015 年を農業の年と位置付け、農業分野の 発展による地域経済の成長、主要作物の自給率改善を目指した。その結果、2016 年 1 月の閣僚会議 での報告によれば、2015 年の社会経済情勢では農業分野の GDP は前年度比 6.6%増を達成した。た だし自給率100%を目指したジャガイモでは 90%にとどまる等、今後も食糧安全保障のために農業振 興が必要であるとアゼルバイジャン政府公式サイト7で報じられている。 また政府は農産物の輸出拡大を目指している。ロシアが政治的問題を背景に西側諸国やウクライナ などからの農産物調達が困難になる中、果物、野菜などのモスクワ等主要都市へのアゼルバイジャン からの輸出可能性は広がっている。同様にカザフスタンもロシア経由の農産物の調達が困難になって おり、アゼルバイジャンからの輸出拡大が見込まれる。さらにアゼルバイジャンでは旧ソ連の他、ト ルコ、中東や中国も重要な市場として位置づけ、物流環境の整備を進めている。 ただし、他の中央アジア、コーカサスの国も同様な市場を目指している中、中長期的な輸出市場を 確保するためには、アゼルバイジャンの農産品の価格や品質の向上、ブランド化、安定した供給体制、 価格競争力の確保が不可欠である。 2)観光分野 アゼルバイジャンの観光産業は表5-4 のとおり、近年著しい成長を見せている。バクーを中心に近 代的ホテルの数が増加し観光サービス部門の収益も拡大している。 表 5-4 アゼルバイジャンの観光セクターの成長 年 2010 2011 2012 2013 2014 ホテル数 (軒) 499 508 514 530 535 観光セクター収益 (百万 USD) 766.6 1203.9 1479.0 1600.2 1633.4 *Doing business in Azerbaijan 2015(Azpromo 発行)
Doing business in Azerbaijan 2015(Azpromo 発行)によると同国を訪れる観光客数が 2009 年か ら2014 年の 6 年間に 597 千人から 2,159 千人へと約 4 倍に増加し、今後も成長が期待されている。 アゼルバイジャン政府はヨーロッパの主要都市における観光イベントへの参加を行う他、ビザ取得手 続きの簡素化、国際会議やイベントなどの誘致を積極的に行ってきた結果といえる。さらに2016 年 2 月から日本、韓国、シンガポール等 12 か国に対し、空港でのビザ発給制度も始まり、さらに海外か らの集客拡大を目指している。特に近年、近隣の観光地であるトルコ、エジプトなど近隣観光地の治 安悪化とアゼルバイジャンの通貨マナトの切り下げにより海外からの観光客を誘致する絶好の機会で 7同国政府WEB サイト(http://azerbaijan.az/portal/index_e.html?lang=en2016.0116)
あると観光関係者は本調査のインタビューに答えている。 また、観光振興のテーマの一つとしてエコ・グリーンツ ーリズムがある。これは都会の雑踏から離れて地方の民家 に宿泊し、地方の自然、文化、生活を楽しむというもので ある。文化観光省は、エコ・グリーンツーリズム振興の為、 観光客が直接宿泊場所を予約できるインターネットのペー ジを設計中である。現在は各地方のコーディネーター経由 で予約に限られているため、海外から個人旅行が困難であ る。このエコ・グリーンツーリズムは観光産業振興という 面と共に、バクー地域以外の地方での雇用・収入源の確保 という面もある。 アゼルバイジャン観光の課題としては、道路インフラや 宿泊施設の未整備により地方の観光資源へのアクセスが困 難であること、さらに周辺のアルメニアやジョージアと比 較すると宿、食事、移動などの観光関係者におけるホスピ タリティやビジネスマインドが低いこと、そして他国から の交通アクセスが限られる点が挙げられる。 写真 5-2 バクー郊外への未整備の道路及び民宿周辺の様子 このような中、アゼルバイジャン観光関係団体や教育機関からは日本のホスピタリティの教育や近 代的顧客管理システムを含めた日本からの観光分野への投資や企業進出、観光会社同士の連携などが 期待されている。 写真 5-1 エコツーリズムの チラシファイル
(6)今後の展開プラン 北海道企業の強みや関心テーマを踏まえて、アゼルバイジャンとの民間連携を考えると、農業、食品 加工が主たるテーマとなる。アゼルバイジャンの課題である農業生産性向上や品質の安定、ブランド 化に北海道の経験や技術は有効である。また地域経済の成長を促し、安定的な雇用の場を生む食品加 工業はアゼルバイジャンの地方開発という課題に対応できるテーマである。 一方、資源開発や石油化学工業などの分野に対してもアゼルバイジャンでは日本からの投資に対す る期待はあるものの、これらの分野での投資経験の少ない北海道側のリソースでは対応することがで きない。 なお、第一次現地調査において、アゼルバイジャン側から観光分野での北海道との交流についての 関心が確認できたため、北海道との民間連携の実現性は低いものの、同国との交流促進の一環として 今後の展開プランとして一部記載する。 ①農業機械のケース アゼルバイジャンでは農業セクターを非石油産業振興のテーマの一つとしており、政府も農業の近 代化や農産物の国内海外への供給体制の整備を推進することとしている。特に小麦、トウモロコシ、 ジャガイモなど主たる畑作作物の自給率をあげることを目指している。またアゼルバイジャンでは酪 農も盛んであり、遊牧民族時代からの伝統的な羊の飼育の他、乳牛、肉牛、鶏肉等の生産も行ってい る。 アゼルバイジャンの農業分野の課題としては、生産段階では農薬、肥料、農機などの安定供給や高 品質な種子、種牛の供給による生産性向上、流通段階では保管や物流段階での品質劣化の防止、国際 市場でのブランド化が上げられる。 北海道は農家1 戸あたりの耕地面積が 23.4ha で他の都府県対比 14.6 倍の広さがあり、機械化も進 んでいる(2014 年、北海道農政部)。特に北海道の持つ技術として小型の収穫機があり、特徴として、 大型機より低価格で操作とメンテナンスが容易である点、北海道の広大かつ多様な土地条件にある顧 客対応から生まれた高い耐久性と技術サポートが挙げられる。アゼルバイジャンの対象作物にも牧草、 じゃがいも、小麦などと北海道で共通しているものがある。特に農家あたりの耕地面積が5 ヘクター ルから 25 ヘクタールといった家族経営の中小規模の農家にとってはベラルーシや欧州などの大型機 械よりも傾斜地にも対応し、小回りの利く北海道の農業機械の方が耕作に適していると考えられる。 日本企業が進出を検討する際の課題及び解決策として、まずアゼルバイジャンの農家に求められる 具体的な農機の仕様特定と許容可能な価格条件に関する情報収集が課題である。さらに、機械の故障 や修理発生時のためのスペアパーツ供給やメンテナンスサービスが必要となる。併せて、肥料・農薬 の投入や営農技術指導など関連技術の組み合わせによる総合的な農業生産性向上も望まれる。また、 アゼルバイジャンでは公開型株式会社「アグロリーシング」や「アグロクレジット」が政府の農業振 興を支えており、これらの組織と連携することも考えられる。 技術導入により期待される効果として、小型機の導入により農家は重労働から解放され、また収穫 時期に合わせた短期間での作業が可能となるため農作物の廃棄ロスの減少につながるものと想定され る。さらに機械化推進により、畑の面積拡大や栽培する作物の品種拡大が望まれる。
図 5-10 今後の展開プラン 農業機械のケース 牧草梱包用 中型カッティングロールベーラ 株式会社 IHI スター 農薬散布機 東洋農機株式会社 小型ジャガイモ収穫機 サイエイ工業株式会社 写真 5-3 アゼルバイジャンでの導入可能性のある北海道の農業機械例 【期待される効果】 ・重労働から解放/・適期収穫、作業・生産効率・品質向上/・農作物の廃棄ロスの減少 ・自給率の向上と輸出余力の確保、農家の安定収入、非エネルギーセクターの発展 【課題と解決策】 ・現地農家単独による農機の購入が困難/現地で必要な収穫機の仕様と価格条件の特定 ・アゼルバイジャンの多様な気候や農業体系をふまえた各地域での導入実証 ・現地農業支援組織との連携による中小農家の組織化や販売ルートの確保 技術移転 人材育成 管理システム ・耕地面積が狭く小規模農家が多い ・牧草やじゃがいもの供給が不安定 ・中小規模農家の機械化が遅れている ・収穫作業は機械と手作業の組み合わせ のため重労働で非効率 ・適期作業及び品質に重視した収穫を可能 とする耐久性の高い中・小農業機械 ・寒冷地における牧草生産の効率化 ・品質に厳しいユーザー顧客の要求を反映 して改良した高品質で使いやすい設計と アフターケアの充実(メンテナンス) ・集約農牧や営農の技術・知見・経験が豊 富 アゼルバイジャンのニーズ マッチング 北海道の技術
②食品加工分野のケース 農業分野と同時にアゼルバイジャンでは食品加工分野の振興も国家戦略「アゼルバイジャン2020、 未来への展望」「大統領令」のテーマに挙げられている。この国家戦略では輸入品と競合できる国内食 品の生産と輸出品目の拡大及び付加価値向上を目指している。 現在、アゼルバイジャンから輸出される加工品としては乳製品、お茶、野菜、果物の缶詰などであ るが、加工技術がトルコや他のCIS 諸国よりも遅れているためロシア等周辺国での市場でのニーズは 限られ、今後はHACCAP8も含めた品質管理やブランド化などを含めた競争力向上が課題となる。 一方、アゼルバイジャンは多様な気候を有するため多様な果樹やハーブが自生しているが、それら が十分に商品化されていない。我が国ではこれらを原料とした機能性食品のニーズは高く、北海道で も原料生産や商品開発の動きがある(ボックス 5-1 参照)ゆえ、アゼルバイジャンからの原料や一次加 工品の調達は想定できる。すでに中央アジアなどで甘草栽培事業を行っている企業がアゼルバイジャ ンでも事業準備を進めている。 双方の課題やニーズを踏まえ、アゼルバイジャンに北海道の技術や知見を導入することによって両 国の食品産業の発展に寄与するプロジェクトが考えられる。 表 5-5 アゼルバイジャンに自生する主な果樹類及びその健康価値 品目/産地 効能等 1.ザクロ Goychay、Absheron 果皮を乾燥させたものは石榴果皮(せきりゅうかひ)と言う。成分としてアルカロ イド、イソペレチェリン、タンニン等を含む。煎じて飲むと下痢止めや有鉤條虫駆 除薬の虫下しとして利用される。ザクロジュースは貧血症に効果があるとされる。 2.カキ Zagatala、Gedebey、Aghstafa、 Tovuz、Khanlar、Gazakh ビタミンC、K や B 類、といったミネラル分フラボノイドなどを多く含み、血管を 強化する作用や止血作用を持つとされるため、飲用するなどで民間療法に古くから 用いられてきた。また近年では花粉症予防に有効とされ、葉を茶として利用するだ けではなく、その成分をサプリメント等に加工され商品化されたものも流通してい る。 3.マルメロ
Goychay 、 Ordubad 、 Babek 、 Nakhchivan、Aghdam、Jabrayil カリウム、カルシウム、マグネシウム、燐、鉄、ビタミンA などを含み、薬能は胃 病、新血管疾患に効果があるとされる。 4.フェイジョア 全域 ヨードが豊富であり甲状腺病と動脈硬化症に効果があるとされる。それ以外、ビタ ミンC 欠乏症、胃腸疾患、胃炎などのときも有益である。フェイジョア揮発油は、 対炎症剤として皮膚医師科が処方している。 5.シーバクソン Sheki、Zagatala ビタミン B1、B2、B3、B6、C、E、K、鉄、カリウム、カルシウム、マグネシウ ム、亜鉛、ホウ素等人体な成分を含む。アゼルバイジャンでとれるシーバクソン(ロ シア系)は同種のサジー(中国系)に比べ果実が一回り大きくオレイン酸、リノー ル酸、リノレン酸等不飽和脂肪酸を多く含む。 そのオイルはビタミンE が多量に含まれている(大豆オイルの 20 倍)、ビタミン C はキウイフルーツの3~6 倍、サポニンは朝鮮人参の 4 倍を含む。 6.サンシュユ
Khachmaz 、 Guba 、 Sheki 、 Zagatala、Ismayilli 果実(正確には偽果)は、山茱萸(さんしゅゆ)という生薬。強精薬、止血、解熱 作用があるとされる。また、漢方方剤にも使われており、糖尿病、腰痛、動脈硬化、 前立腺肥大などに有効とされる。 *北海道大学農学部・鈴木卓教授資料及び現地ヒアリングに基づき調査団が作成。 8 HACCAP:国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会 による食品衛生管理の国際基準。食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生するおそれのある微生物汚染等の危害を 分析し、その結果に基づいて製造工程の各段階でどのような対策を講じればよいかという重要管理点を定め、これを連 続的に監視することにより製品の安全を確保する衛生管理手法である。
ボックス 5-1 北海道における機能性食品分野の展開 ・冷涼な気候で未利用の山地がある北海道は国内で最も薬用植物の栽培・生産に適した地域であり、現在北海道内各 地域で企業の取り組みが活発化している。道内機能性食品のビジネスを振興する一般社団法人北海道バイオビジネ ス工業会も国際展開を目指す研究会を実施している。 ・アゼルバイジャンでは甘草だけでなく、山間地に自生するシーバクソンや各種ハーブが自生しており、これらの機 能性食品の原料として両国のビジネス振興に寄与するものと考えられる。 北方系果樹薬用植物に関する取組事例(北海道) 企業名 地域名 概要 株式会社夕張ツムラ 夕張市 1999 年設立。北海道を国内の生薬栽培拠点と位置付け、現在加工施設 の拡張工事に着手。栽培面積も20 年までに 3 倍強の 1 千万㎡に拡大予 定。15 年から生薬原料となる薬木を 4,200 本植樹開始。 王子ホールディングス 株式会社 下川町 2013 年に下川町と薬用植物研究に係る連携協定を締結し、薬用植物の 育苗・栽培を実施。大量栽培によるコストダウン実現のため大規模農地 があり機械化に適した北海道で高付加価値の及び商品化や研究開発を 行う。 株式会社遠藤組 鵡川町 国産シーバクソンの栽培と加工を 手掛けている。特にジャムや化粧品 の商品開発、地域特産品開発を行っ ている。 http://www.endou-gumi.co.jp/berry/to p.html *報道発表資料などを基にHIT 作成 【課題と解決策】 ・生産・加工・マーケティング・販売まで一気通貫したシステムの構築 ・老朽化している工場・機械・設備の更新による生産性向上 ・付加価値づけのための品質管理、パッケージング技術 ・設備投資資金・運転資金の需要に対応するための円滑な資金供給 ・専門性ある人材の確保・育成 技術移転 人材育成 管理システム ・地域で採取される独自の植物(ハーブ、甘 草、シーバクソン、はちみつなど)加工・製 品化(機能性食品) ・EU や EEU 市場(ロシア、カザフスタン等) 輸出のための認証取得 ・観光との融合6次産業化による経済効果 拡大 ・豊富な天然資源を活かした特産品開発 (加工食品)・販路開拓・ブランド化のノウ ハウ ・ヘルシーDo など機能性食品に係る認証 制度・システムの構築 ・6 次産業化による国際マーケットでの認知 アゼルバイジャンのニーズ マッチング 北海道の技術 ブレッドペースト フルーツソース
ボックス 5-2 6 次産業化による観光振興における農業協力の可能性 本調査においてアゼルバイジャンの行政、教育機関、NPO から、観光分野での北海道での人材育成に関するニーズ が確認された。現在、アゼルバイジャンではバクー市内を中心に欧米の大型ホテルチェーンの進出が続き、国際会議や スポーツイベントの誘致による観光客誘致に成功している。一方、地方にでると道路や宿泊施設などの観光インフラの 整備が遅れている。 ただし、地方での観光産業の育成は必ずしもバクーと同様な大規模投資を伴うものである必要はない。特にアゼルバ イジャン政府が戦略的テーマとする農業や食品加工業と観光を融合することで地域全般の雇用拡大が見込まれる。 日本政府は農業、加工業、観光・サービス業の連携を進める6 次産業化9※を推進する法律を制定し、地域振興に努 めている。北海道は日本で最も多くこの制度を活用した取組を行っている。具体的な事例は以下の通りであり、アゼル バイジャン・バクー郊外の観光地の魅力向上に向けて、これらの例のような酪農地帯や北方果樹栽培地域で同様な事業 の展開が期待できる。 事例① 株式会社高橋農場の施設及び加工品 事例② 有限会社ベリーファームで生産する ブルーベリー及び加工品 *HIT 作成 9 6 次産業化とは、第 1 次産業である農林水産業が、農林水産物の生産だけにとどまらず、それを原材料とした加工食 品の製造・販売や観光農園のような地域資源を生かしたサービスなど、第二次産業や第三次産業にまで踏み込むことで 新たな付加価値の創出を目指すものである。
6 アゼルバイジャンへの道内企業の事業展開可能性
(1)今後の道内企業のビジネス展開 本調査の結果を踏まえて、道内企業が今後、対象国でのビジネス展開を検討する際のステップを整 理する。 第一段階として、今回の調査内容を踏まえた上で、具体的な対象地域と製品や技術を絞り込み、そ の分野に関する情報を十分に収集する。特にアゼルバイジャン企業等からの情報だけでは可能性は確 認できても課題が把握できないことも多く、国内もしくはロシアやトルコ等第三国での情報も合わせ て確認し、事業性を十分に見極める。 次の段階として、事業を具体的にイメージし、事業展開の仮説を組み立てた上で、その妥当性を確 認する。自社の技術や製品が現地の環境や制度にマッチするのかという技術的側面だけでなく、物流 や通関のコストを具体的に把握するとともに、流通面での課題を明確にする。その際、現地で信頼の おける協力者が必要になるが、その協力者が将来的なビジネスパートナーとなる可能性があるため、 その選択には資金力や対象ビジネス分野での知見だけではなく、国内外で評価も確認する。 以上の調査や検証の結果、ビジネスの可能性が確認された場合、具体的な販売先や製品を想定した ビジネス展開計画を作ることになる。その際、決済、労務、資金繰りなどにおけるリスクを軽減する とともに、日本やアゼルバイジャン政府のビジネス促進支援スキームに関する情報も把握する。 表 6-1 道内企業の海外ビジネス展開に向けた活動事例 段階 具体的な活動例 調査段階 ・本調査報告の情報を踏まえ、追加情報の不明点の確認 ・自社の製品、技術の対象国展開可能性の検討 ・JICA や JETRO、現地事務所のある商社など国内外関係機関への相談 FS・実証段階 ・対象国の協力先確保(行政機関、現地企業、団体等) ・現地デモンストレーション検討、見本市等へ参加 ・資材・機材などの輸送方法・期間・コストの確認 ・現地の法規制・許認可・商慣習・トラブル事例などの確認 ・ 事業化準備段階 ・税務・労務・会計面への対応方法の確認 ・投資インセンティブ・優遇政策の適用方法検討 ・資金調達(運転資金・設備資金)環境・方法の確認 ・契約締結に向けた準備(販売契約、代理店契約、共同研究契約など)(2)アゼルバイジャン進出における留意点 世界銀行が2015 年に発表した「Doing Business 2016」におけるビジネスのしやすさランキングで、 アゼルバイジャンは189 カ国中、63 位 であり、この順位は前年度から変化していない。電力調達や 資金調達、破産処理において日本と比べて評価が低い。特に電力調達におけるコスト負担が大きいこ とが総合順位を下げる要因となっている。一方、政府が外資系企業の誘致を積極的におこなっている ため、起業や納税、資産登記の環境は日本よりも高い評価を得ている。ただし、2015 年 12 月以降通 貨の切り下げや国営企業の信用程度の格付け引き下げが続き、次年度以降の評価低下が予想される。 表 6-2 アゼルバイジャンと日本のビジネスのしやすさの比較 (数字は順位) 総 合 起 業 建設 認可 電力 調達 資産 登記 資金 調達 投資家 保護 納 税 貿 易 契約 履行 破産 処理 アゼルバイジャン 63 7 114 110 22 109 36 34 94 40 84 日本 34 81 68 14 48 79 36 121 52 51 2 出所:世界銀行 「Doing Business 2016」(2015 年 10 月 27 日公表)をもとに作成 一方、道内企業の国際ビジネス全般における留意点については表 6-3 のとおりである。これは国 際ビジネス経験の少ないことや中小企業が中心で取引規模が小さいという北海道の特徴に起因するも のであり、アゼルバイジャン進出を検討する際に限ったものではない。また物流や渡航、言語に関す る課題は北海道企業に限らず日本国内での全ての企業に共通するものである。 表 6-3 道内企業の国際ビジネス全般における留意点 ⅰ.北海道全般として国際ビジネス経験が不足しており、事前準備が必要。ビジネスで必要な語学 や商取引の知識がある組織や団体との連携が不可欠。 ⅱ.情報収集、相談、活動準備のための窓口が現地にない。ビジネス規模が小さい故、大手商社等 の協力を得られないことも考えられる。 ⅲ.日本全体の課題でもあるが、対象国との物流ルートや渡航ルートが少ない。言語対応が困難。 ⅳ.貿易の場合、通関コスト高いことや通関時間が長いこと、また貿易インバランスによる輸入超 過のため片荷問題や出荷ロットがまとまらず物流コストが割高となる。