• 検索結果がありません。

北海道立地質研究所報告第80号

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "北海道立地質研究所報告第80号"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

北海道立地質研究所報告,第80号,39-49,2009 39

冷水性炭酸塩堆積物を含む新生代中頓別層の形成過程:

北海道天然記念物中頓別鍾乳洞とその周辺地域の地質から

Development of middle to late Miocene Nakatonbetsu Formation and cool-water carbonate:

sedimentology of Nakatonbetsu Cave(Hokkaido natural monument)

Hokkaido,

northern Japan

髙清水 康博

Yasuhiro Takashimizu

Abstract

Sedimentology of Nakatonbetsu Formaion cropping out around the Nakatonbetsu cave is reported. Nakatonbetsu Formation, over 60 meters thick, gently (several to ten something degrees) dips to the west except in the east close to unconformity, however, it is steeply dipping at approximately twenty degree. This Formation comprises conglomerate, fine- and medium-grained sandstones, limestone and silty sandstone in ascending order. Geologic age estimated from shell assemblages indicates it to be middle to late Miocene. The limestone of Nakatonbetsu cave almost wholly consists of cirripedia fragments and is interpreted to be “cool-water carbonates”. Based on facies analysis, the following depositional facies are recognized: offshore, shoreface, beach, lagoon, and transgressive lags. Furthermore, one transgression / regression cycle and continuing minor transgression are recognized.

キーワード:中頓別鍾乳洞,中頓別層,堆積相,冷水性炭酸塩岩,浅海成堆積物

Key words : Nakatonbetsu cave, Nakatonbetsu Formation, Depositional facies, Cool-water carbonate, Shallow marine sediments

中頓別鍾乳洞は,昭和32年(1957年)1月29日付の北 海道教育委員会公報(第1535号)によって,北海道天然 記念物に指定された.この鍾乳洞周辺には,中頓別層 (鈴木,1935)が分布する.鍾乳洞自体は,中頓別層の 石灰岩及び石灰質砂岩中に形成されている.鍾乳洞の 形成は,地下水面の3段階の移動によるものであり, 石灰岩に発達した割れ目方向(E-W)と主洞の方向が一 致し,石灰岩の走向(N-S)と支洞の方向が類似してい ることが分かっている(田近,1989). 今回,中頓別鍾乳洞の周辺の地質調査を行った結果, 中頓別層は,下位より基底礫岩,細粒砂岩,中粒砂岩, 石灰岩,およびシルト質砂岩からなり,ほぼ水平に分 布することがわかった.また,堆積学的解析から古環 境を復元した結果,これらの地層は浅海環境で形成さ れたことがわかった.産出した化石から,この岩石海 岸にはフジツボ類やホタテガイなどの動物群集が生息 していたことが推定され,これらの遺骸が地層となっ て残り,中頓別鍾乳洞を形成する石灰岩となったこと がわかった.これらの化石群集を検討した結果,この 地層は新第三紀中新世中期後半∼後期(約14. 8-5. 4Ma) の地層であることが推定された.以下に,この詳細を 報告する. なお,この報告は,中頓別町からの受託研究の成果 (髙清水・田近,2002)を基にしている. 本層は,鈴木(1935)によってモウツナイ層上部と中 頓別層として記載された.その後,今西(1953)によっ て中頓別層群として再定義された.さらに小山内ほか (1963)によって詳細な調査がなされ,中頓別層として 報告されている. Ⅱ.1 地質と層序 中頓別鍾乳洞付近の中頓別層は,岩相の違いから5 つに区分された(第1図).すなわち,下位から基底礫 岩, 細粒砂岩, 中粒砂岩, 石灰岩・石灰質砂岩, およびシ ルト質砂岩である.この地域の中頓別層の最大層厚は 60∼70m程度である.中頓別層は,平賀内川の下流を 中心とした地域に分布している.調査地域(中頓別鍾 乳洞公園周辺)の地質構造は,ほぼN-S∼N30°Wの走 向と数度∼20°Wの傾斜を示している.中頓別層は, 上部蝦 え 夷 ぞ 層群と日高累層群の上に累重し,それぞれに 基底礫岩が発達している(第2,3図).平賀内川とその 北側を流れる沢では,河岸段丘堆積物に不整合でおお われる. Ⅱ.1.1 基底礫岩 平賀内川のルートの下流部分と上流の基盤との境界 部分に分布.基盤の不整合面上に形成されたもので, 中礫∼大礫サイズの礫岩からなる(第4図a).厚さは数

Ⅰ はじめに

Ⅱ 調査地域の中頓別層

(2)

第1図 調査地域の層序 Fig. 1 Stratigraphy of the study area.

第2図 調査地域の地質図

A-A', B-B', C-C', D-D', E-E'は第3図で示す断面図の位置. Fig. 2 Geologic map of study area.

(3)

冷水性炭酸塩堆積物を含む新生代中頓別層の形成過程(髙清水康博) 41 m(詳細は不明).含礫率は,30∼50%.基質は細粒∼ 中粒砂岩.塊状であり,特徴的な堆積構造は観察され なかった. Ⅱ.1.2 細粒砂岩 平賀内川の河床,および第一弥生橋近くの露頭とそ の上流の沢に分布.厚さおよそ9m以上(最大層厚は不 明).青灰色な細粒砂岩からなる(第4図b).第一弥生 橋近くの露頭付近ではシルト質細粒砂岩から構成され るが,岩相が中粒砂岩へと側方変化する様子が観察さ れた.また,平賀内川や第一弥生橋の上流の沢では, 部分的に貝殻化石を多く含む(第4図c).細粒砂岩は厚 さ数mの礫岩を挟在する.礫岩(第4図d)は,地質図の スケールで不連続であり,側方へ尖滅する. Ⅱ.1.3 中粒砂岩 調査地域全般に渡って観察される.厚さはおよそ 22m以下.中粒砂岩からなる.まれに平行層理が観察 される(第4図e).採石場付近の中粒砂岩は,大型のフ ォーセット型斜交層理を示している(第4図g).貝殻片 を含むことも多い.この中粒砂岩にも厚さ数mの礫岩 を挟在する.礫岩は,地質図のスケールで不連続であ 調査地域の地質断面図 基盤が波蝕崖を形成している.地層は,西にゆるく傾斜するが,ほぼ水平である.東部の基盤との境界 付近では,やや傾斜が急になる.

Cross sections of study area.

Basement forms wave-cut bench.Nakatonbetsu Formation gently dips to the west except in the east close to unconformity, however, it is steeply dipping.

第3図

(4)
(5)

冷水性炭酸塩堆積物を含む新生代中頓別層の形成過程(髙清水康博) 43 第4図 Fig. 4 特徴的な堆積相の写真 a)基盤との不整合境界面.平賀内川.b)シルト質細粒砂岩.青灰色を呈することで特徴付けられる.第 一弥生橋近くの露頭.c)含貝片シルト質細粒砂岩.平賀内川.d)礫岩.細礫∼中礫からなる.礫岩は侵 食されにくいので写真のようにステップを形成している.e)中粒砂岩.この露頭では(第一弥生橋近く の露頭)青灰色シルト混じりであるが,粒度は中粒砂サイズと粗い.弱く平行葉理が観察される.f)中礫 岩.比較的淘汰は悪い.採石場の北の沢.g)採石場付近.地層が西(写真右方向)へ大規模なフォーセッ ト型斜交層理を示している.この場所は基盤岩がすぐ東に分布する場所なので,陸に非常に近い堆積場 である.小規模なデルタ状の堆積体と考えられる.h)石灰岩.平行層理や低角の斜交層理が観察される. これは波浪の影響によって堆積したことを示している.軍艦岩.i)石灰岩のクロースアップ.細かい石 灰岩の破片からなる.これはフジツボ類の破片からなることがわかった.j)シルト質中粒砂岩.調査地 域の西部のごく一部の露頭で見られた.合弁した2枚貝を含んでいる.第一弥生橋近くの露頭.k)シルト 岩.最上部のシルト質砂岩の上に見られた.第一弥生橋近くの露頭でのみ観察された.

Photographs of some characteristic deposits.

a)Unconformity between the basement and Nakatonbetsu Formatiom,Hiraganaigawa River.b)Blue gray colored silty fine-grained sandstone.c)Silty fine-grained sandstone with shell fragments.d)Granule to pebble-sized conglomerate forms a step at river bed.e)Blue gray colored medium-grained sandstone shows weakly parallel lamination.f)Poorly sorted pebble-sized conglomerate.g)Foreset beds prograding to the west(right)are interpreted as a part of small-sized delta.h)Limestone shows parallel lamination and low-angle cross-stratification. i)Close-up photograph of limestone.The bed comprises cirripedia fragments.j)Silty medium-grained sandstone with in situ shells.k)Siltstoe of uppermost part of Nakatonbetsu Formation at north western part of study area.

り,側方へ尖滅する(第4図f). Ⅱ.1.4 石灰岩及び石灰質砂岩 調査地域全般の標高およそ90∼100m付近以上にほ ぼ水平に分布している.厚さはおよそ35 m以下.石灰 岩∼石灰質中粒砂岩からなる.平行層理がよく発達し ており,一部に低角度の斜交層理が発達している(第4 図h).この石灰岩は,主にフジツボ(蔓脚類)の破片か ら構成されている(第4図i,第5図).中頓別鍾乳洞は, この石灰岩中に形成された洞穴である.中頓別鍾乳洞 付近では生物遺骸の割合が多いが,西に行くに従って, 砕屑物の割合が多くなり石灰岩から石灰質中粒砂岩へ と岩相が変化する.中頓別鍾乳洞付近では,石灰岩地 域特有のドリーネ地形や鍾乳洞がよく発達している. Ⅱ.1.5 シルト質砂岩 第一弥生橋近くの露頭の最上部においてのみ,観察 された.厚さおよそ3m強.不淘汰シルト質細粒∼中

(6)

Ⅱ.2 産出化石と石灰岩の特徴 調査地域の中頓別層に分布する石灰岩からいくつか の化石を採取した.調査地域中央部∼東部(中頓別鍾 乳洞や軍艦岩付近)に分布する石灰岩は,そのほとん どが,フジツボ類の破片から構成される(第5図).こ のことは岩礁性の波蝕棚と強い波の存在する浅海環境 があったことを示している.また,西部の露頭(第一 弥生橋付近)ではスロドケビッチホタテやナカトンベ ツニシキホタテなどの化石が採取された(第6図).これ らの貝化石の群集は,歌登地域に分布する志 し 美 び 宇 う 丹 たん 層 から産出する化石群集(Ogasawara et al.,1993)と類似 したものである. 川村(1992)は,Rao(1981)とNelson(1988)の報告を まとめて,中∼高緯度地域の陸棚の比較的冷水の環境 下で形成される炭酸塩岩堆積物を意味する“冷水性炭 酸塩岩”の特徴を以下のようにまとめた.すなわち, 1)明瞭な礁が少ないか稀あり,ラグーンがない,2)堆 積物はおもに生物遺骸とその破砕片(生砕片)からなり, その生物種の数は少ない,3)オーイド(ooid)・ペロイ ド(peloid)・凝集粒子等の生物遺骸でない石灰質粒子 が見られない,4)バクテリアによる分解や無機的な沈 殿が少ないため,石灰泥に乏しい,5)堆積速度が,概 して遅い,および6)鉱物学的に見ると,構成物はアラ ゴナイトではなく概して低Mg方解石に富む,である. 本論で報告している中頓別鍾乳洞を形成する石灰岩 は,堆積学的解析の結果,非礁性と考えられ,生砕片 からなり,その生物種数は少ない.また,生物遺骸以 外の石灰質粒子がみられず,石灰泥に乏しい特徴を持 っている.よって,川村(1996)のまとめたような特徴 とよく一致することから,この石灰岩は,“冷水性炭 酸塩岩(cool-water carbonates)”であり,第三紀のこの ような石灰岩が鍾乳洞を形成していることは,大変珍 しく,学術的に興味深い. Ⅱ.3 地質時代 従来,中頓別層は,中頓別層の見かけ上の分布形態 がモペーチャン層の硬質頁岩の下位にあたり,また貝 殻石灰層から産出する化石のうち,Pectinidaeの一部 が中新世示準化石に類似しているなどの点から,中新 世稚内階下部に属すると報告されてきた(橋本,1961; 今西,1953).その後,小山内ほか(1963)は,モペー チャン層と中頓別層の傾斜不整合関係を明らかにし, 南部の中頓別層から産出する化石が滝川-本別動物群 であることを示し,これを根拠に中頓別層を,鮮新世 の地層であるとした. しかしながら,今回の調査地域は,中頓別層南部で はなく北部地域であり,小山内ほか(1963)は,南部地 ド ケ ビ ッ チ ホ タ テ(Mizuhopecten slodokewitschi SINELNIKOVA)を中心とする化石群集は,Ogasawara et al(1993)の報告している歌登地域の志美宇丹層(中期 中新統末世∼後期中新世初頭)から産出する化石群集 と類似していることがわかった.これらのことから, こ の 地 域 の 中 頓 別 層 は 中 新 世 中 期 ∼ 後 期( 約 1 4 . 8 -5.4Ma)の地層と推定される. Ⅲ.1 堆積相 中頓別鍾乳洞付近の中頓別層の岩相,堆積構造,基 底面の形状,地層の重なり様式,分布,化石などの情 報から,この地域の中頓別層は,沖浜,外浜,海浜, ラグーンの堆積環境で形成されたものであると推定さ れた.一般に,波浪や暴浪の卓越する堆積性の海岸は, 沖合から,波浪や暴浪の影響を受けない沖浜,波浪や 暴浪の影響を受ける外浜,波打ち際の海浜,海浜の内 側に形成されるラグーンなどの地形からなり,それぞ れに特有な地層を形成することが知られている. 調査地域西部の第一弥生橋近くの露頭では,連続し た堆積サクセッション(第7図)を観察することができ, 古環境変遷の推定を行った. Ⅲ.1.1 沖浜相 [記載]この堆積相は,最下部付近の青灰色なシルト 質細粒砂岩からなる.西の第一弥生橋近くの露頭での み観察される(第4図b,c).塊状または弱く発達した 平行葉理が観察される.9m以上の層厚を持つ.貝殻 片はほとんど観察されない.一部で,含礫中粒砂岩に 層相が側方変化する. [解釈]この堆積相は,調査地域の中では,比較的細 粒な堆積物から構成される.青灰色で細粒な砂層は, ある程度,静穏で還元的な環境下で堆積したと推定さ れる.ほとんど堆積構造が観察されないのは,この堆 積物が主に浮遊物質から沈積によって形成されたもの であることを示している.これら細粒堆積物に弱く発 達する平行葉理は,暴浪時に形成される暴浪シート砂 層に特徴的な堆積構造と考えられる.一部で観察され る側方への粗粒な堆積物への岩相変化は,海底の沖合 へ発達する小チャネルの一部であると考えられる.こ れらの特徴や,上位の堆積相との積み重なり様式,お よび地層の分布から,これらの堆積物は沖浜の堆積物 と解釈した. Ⅲ.1.2 外浜相 [記載]調査地域の東部(中頓別鍾乳洞公園周辺)では, この堆積相は石灰岩から構成される.この石灰岩は,

Ⅲ 堆積相と古環境復元

(7)

冷水性炭酸塩堆積物を含む新生代中頓別層の形成過程(髙清水康博) 45 第5図 Fig. 5 中頓別層の石灰岩の写真 a)石灰岩の切片の写真.垂直断面.粒度の違い(葉理)が観察される.図中の△は,上方細粒化を示す.粒 子が覆瓦状構造を示している.b)石灰岩の切片の写真.水平断面.ラミナは観察されない.粒子配列も バラバラである.c)石灰岩の薄片写真.オープンニコル.フジツボの殻.d)石灰岩の薄片写真.クロス ニコル.cとdは同じもの.e)石灰岩の薄片写真.オープンニコル.フジツボ類の殻.f)石灰岩の薄片写 真.クロスニコル.eとfは同じもの.

Photographs of limestone of Nakatonbetsu Formation.

a)Vertical cross section of limestone.Lamination and grain imbrications are observed.Open triangle shows upward fining.b)Horizontal cross section.c)and d)Microscopic photographs of cirripedia fragments.e)and f) Microscopic photographs of cirripedia fragments.

ほとんどがフジツボの破片から構成されている.調査 地域の西部(第一弥生橋近くの露頭付近)では石灰質中 粒∼極粗粒砂岩から構成される.この堆積相には平行 層理(シート状の貝殻層から構成される)が顕著に発達 する.これらの地層のユニットはアマルガメイト構造 を持ち,泥層を挟まない.一部で低角の斜交層理が発 達する(軍艦岩の露頭; 第4図h).およそ20-30mの層厚 を持つ. [解釈]これらのアマルガメイトした粗粒なシート状 の堆積物は,定常的に波やうねりの影響下にある環境 において形成されたものと考えられる.一部で観察さ れた低角の斜交葉理は,スウェール状∼ハンモック状 斜交層理と考えられる.このような堆積構造は,暴浪 時のうねりによって形成されることが知られている. また,調査地域東部の石灰岩が主にフジツボの破片か ら構成されていることから,岩礁性の海岸を背後にひ かえた浅海海域において形成されたものと推定され る. Ⅲ.1.3 海浜相 [記載]この堆積相は,西部の第一弥生橋近くの露頭 でのみ観察された.上部と下部の2つに分けられる. 下部は,淘汰の良い石灰質中粒∼粗粒砂岩からなる. 平行葉理が発達する.平行葉理の内部堆積構造は露頭

(8)

条件が悪くよく分らないが,上下の堆積相に比べて平 行葉理のユニットの厚さは薄い.厚さは約60cm.上 部は,やや淘汰の悪い石灰質中粒∼極粗粒砂岩から構 成される.この堆積相には弱い平行層理が発達するが, 層理の境界は余り明瞭ではない.1.5m強の層厚を持つ. [解釈]淘汰が良く,細かい堆積相からなる下部は, 砕波帯での堆積物と考えられる.上下の堆積相の積み 重なりや地層の分布などから,この堆積相は前浜の環 境を示していると考えられる.上部は,淘汰が悪く, 弱い平行葉理が発達する.下部の前浜堆積物の上位に 重なるこの堆積相は,後浜環境の堆積物であると考え られる. Ⅲ.1.4 ラグーン相 [記載]この堆積相は,上部と下部の2つに分けられる. 下部は不淘汰シルト質中粒砂岩からなる.およそ3m の層厚を持つ.合弁した貝殻片を含み,弱い平行層理 が発達する.上部は灰色シルト∼粘土層からなる.お よそ2mの層厚を持つ.塊状である.西部の第一弥生 橋近くの露頭でのみ観察された. [解釈]合弁した貝殻片が含まれるこの不淘汰シルト 質砂岩は,普段は比較的流れの無い静穏な環境で堆積 したと考えられる.まれに発達する弱い平行葉理は, 暴浪(あるいは洪水)時の流れによって粗粒な堆積物が もたらされたことを示している.これらのことや下位 の堆積相との積み重なりとの関係から,この堆積相は, 海浜環境の陸側に発達したラグーン(潟湖)の環境であ ると考えられる. Ⅲ.1.5 海進ラグ相 [記載]この堆積相は,不淘汰な中礫∼巨礫岩からな る.基質は不淘汰細粒∼粗粒砂岩.塊状で,数mの層 厚を持つ.この堆積相は,基盤の不整合面上によく発 達する.平賀内川のルートでのみ観察された. [解釈]海岸線が陸側に移動(海進)した時期の外浜侵 食によるラヴィーンメント面上に堆積した礫岩は, 第6図 Fig. 6 調査地域の中頓別層から産出した化石

a),b)Mizuhopecten slodokewitschi SINELNIKOVA; スロドケビッチホタテガイ.c),d)Mizuhopecten cf.

nakatonbetsuensis(AKIYAMA); ナカトンベツニシキホタテガイ.

Fossils from Nakatonbetsu Formatin in study area.

(9)

“海進礫岩”といわれる.平賀内川で観察された不整 合面上の不淘汰な中礫∼巨礫岩はこの“海進礫岩”に 冷水性炭酸塩堆積物を含む新生代中頓別層の形成過程(髙清水康博) 47 相当し,海進時のラグ堆積物と解釈される. 調査地域西部,第一弥生橋近くの露頭の堆積柱状図 上方浅海化の堆積サクセッション.

Measured section of Nakatonbetsu Formation cropping out in sand pits close to Daiichi-Yayoibashi bridge. This section indicates upward swallowing.

第7図 Fig. 7

(10)

第8図 Fig. 8 地質や堆積相から推定される調査地域の形 成過程の復元図 中頓別層は,急激な海進の後の海退によっ て埋積された堆積体によって形成されたと 考えられる.

Depositional models for Nakatonbetsu Foarmation. Ⅲ.2 中頓別層の古環境復元 中頓別鍾乳洞公園周辺に分布する中頓別層が堆積し た時代の古環境と形成過程を考える.この地層は下位 の前期ジュラ紀の日高累層群や前期白亜紀の上部蝦夷 層群を不整合で覆い,更新世の段丘堆積物に覆われる. この地域の地層の岩相や分布などから,中期−後期中 新世の中頓別地域には海が入り込んでいたと考えられ る. 中頓別層の堆積学的解析から,この地層が相対的な 海水準の変動に影響されたことが推定される.すなわ ち,相対的海水準が上昇し,海が侵入(海進)してくる と(第8図1,2),この地域の西方の基盤は外浜侵食に よって削り取られ,波蝕棚が形成される(第8図2,3). 現在の基盤や中頓別層の分布は,この時に形成された 波蝕棚と陸側の波蝕崖の地形を残しているものと考え られる.外浜侵食に伴い,不整合面上には,海進時に 形成された基底礫岩が存在する(第8図3).これは,海 進によって侵食された堆積物が海底面上に取り残され たものである.その後,急激な海進が終わって海水準 が安定すると,陸側から河川や沿岸流などによって多 量の堆積物が供給され始め,海岸線は海側に向かって 前進(海退)する(第8図4).このとき,汀線付近では基 盤が形成する波蝕棚上に,多くのフジツボ等が生息し ていたことが中頓別層の産出化石から推定される.と りわけ,現在の中頓別鍾乳洞や軍艦岩付近にはフジツ ボの破片からなる石灰岩が形成されており,特にフジ ツボ類の個体数が多かったことが推定される.一方, 第一弥生橋近くの露頭の石灰岩は,中頓別鍾乳洞や軍 艦岩付近のそれと比べると砕屑性の堆積物の割合が多 くなってくる.このことは,石灰岩が東部の基盤近く でよく発達したことを支持している. 第一弥生橋近くの露頭付近では最上位に淘汰の悪い シルト岩が見られる(第7図).これは,この地域でさ らに海退が進んだ後に,小規模な海進があったことを 示しており,海面下に沈んでいった陸地の一部が,小 規模なラグーンを形成したものと考えられる(第8図5). 以上のような経過を経て新第三紀中新世の中期後半 ∼後期に中頓別層が形成されたと考えられる.その後, 中頓別層の分布地域は,陸化して谷が刻まれ(現在の 平賀内川など),段丘堆積物などが中頓別層を覆い, 現在にいたった. 中頓別鍾乳洞周辺に分布する中頓別層は以下のよう な特徴を持つことがわかった. 1.岩相は,5つに区分された.すなわち,下部から基 底礫岩,細粒砂岩,中粒砂岩,石灰岩・石灰質砂 岩およびシルト質砂岩である. 2.この地域の中頓別層の最大層厚は60m強である. 3.中頓別層は,ゆるく4°∼10数°西に傾くほぼ水平 な分布を示す.東側の不整合面付近では20°W程

Ⅳ まとめ

(11)

冷水性炭酸塩堆積物を含む新生代中頓別層の形成過程(髙清水康博) 49 橋本 亘(1961):北海道の地質, 北海道鉱業振興会. 今西 茂(1953):宇津内層群について.北海道地質要報,22, 39-48. 川村寿郎(1992):cool-water carbonates(「冷水性炭酸塩堆積物」) について.地球科学,46,363-365.

Nelson,C.S.(1988):An introductory perspective on non-trop ical shelf carbonates.Sed.Geol.,60,3-12.

Ogasawara,K.,Fujimoto,E.,Noda,Y.and Shimamoto,M.(1993): Plaeozoogeographic sigunificance of Mizuhopectenslodkewischi Sinelnikova from the Miocene Shibiutan Formation,northern Hokkaido.Sci.Rep.Inst.Geosci.Univ.Tsukuba,Sec.B,

14,65-76.

小山内煕・三谷勝利・石山昭三・松下勝秀(1963):5万分の1 地質図幅「中頓別」および同説明書, 北海道開発庁, 58p. Rao,C.P.(1981):Criteria for recongnition of cold-water

carbonate sedimentation: Berriedale Limestone(Lower Permian), Tasmania,Australia.Jour. Sed. Petrol., 51, 163-171. 鈴木 要(1935):北見国中頓別付近の地質(MS).北大理地卒 論. 田近 淳(1989):中頓別鍾乳洞−第一洞の洞内形態−.地下資 源調査所報告,61,35-45. 髙清水康博・田近 淳(2002):中頓別鍾乳洞周辺の地質.北海 道立地質研究所受託研究成果報告書.18p. 度の傾斜になる. 4.本層に含まれる貝化石は,歌登地域の志美宇丹層 の貝化石群集と類似の化石群集を示すことから, 中新世中期∼後期の地層であると推定される. 5.中頓別層の各岩相は,沖浜相,外浜相,海浜相, ラグーン相および,海進ラグ相の堆積相を示す. 6.地層は,上方粗粒化を示し,海進-海退とそれに引 き続く小規模な海進によって形成したものと考え られる. 7.中頓別鍾乳洞は,海退時の浅海環境の石灰岩中に 形成したもので,ほとんどフジツボ類の破片から 構成される. 8.中頓別鍾乳洞を構成する石灰岩は,“冷水性炭酸塩 岩”である. この研究は,平成13年度に中頓別町からの依頼で実 施した受託研究の成果である.鍾乳洞周辺での現地調 査にあたっては中頓別町の協力をいただいた.北海道 教育大学の鈴木明彦助教授には貝化石の鑑定をしてい ただいた.北海道大学の加藤誠名誉教授には現地にて 貴重なご意見いただいた.ここに謝意を表します.

謝  辞

文  献

Fig. 2 Geologic map of study area.

参照

関連したドキュメント

In this paper, we will be concerned with a degenerate nonlinear system of diffusion-convection equations in a periodic domain modeling the flow and trans- port of

AIDS,高血圧,糖尿病,気管支喘息など長期の治療が必要な 領域で活用されることがある。Morisky Medication Adherence Scale (MMAS-4-Item) 29, 30) の 4

The dimension d will allow us in the next sections to consider two different solutions of an ordinary differential equation as a function on R 2 with a combined expansion.. The

24日 札幌市立大学講義 上田会長 26日 打合せ会議 上田会長ほか 28日 総会・学会会場打合せ 事務局 5月9日

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”

[r]

海洋技術環境学専攻 教 授 委 員 林  昌奎 生産技術研究所 機械・生体系部門 教 授 委 員 歌田 久司 地震研究所 海半球観測研究センター

平成 21 年東京都告示第 1234 号別記第8号様式 検証結果報告書 A号様式 検証結果の詳細報告書(モニタリング計画).. B号様式