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土木学会論文集 B2( 海岸工学 ),Vol. 74, No. 2, I_199 I_204, 河川を遡上する津波の基礎的特性に関する数値解析 楠原嘉 1 柿沼太郎 2 木村晃彦 3 1 学生会員鹿児島大学大学院理工学研究科海洋土木工学専攻 ( 鹿児島県鹿児島市郡元 1

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Academic year: 2021

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河川を遡上する津波の

基礎的特性に関する数値解析

楠原 嘉

1

・柿沼 太郎

2

・木村 晃彦

3 1学生会員 鹿児島大学大学院理工学研究科海洋土木工学専攻 (〒890-0065 鹿児島県鹿児島市郡元 1-21-40) E-mail: [email protected] 2正会員 鹿児島大学准教授 学術研究院理工学域工学系海洋土木工学専攻 (〒890-0065 鹿児島県鹿児島市郡元 1-21-40) E-mail: [email protected] 3非会員 枕崎市建設課土木係 (〒898-8501 鹿児島県枕崎市千代田町 27 番地) E-mail: [email protected] 河川を遡上する津波の基礎的な特性を把握することを目的として,3 次元数値解析を行なった.河川幅 が狭い場合ほど,津波高さが大きくなった.そして,河川幅が狭く,ソリトン分裂が生じる場合,上流ほ ど津波高さが大きくなった.他方,河川幅が広く,ソリトン分裂が発生しない場合には,河川幅に依存し て現れる津波高さのピークの位置より上流で,津波が伝播するにつれて,津波高さが徐々に低減した.ま た,複断面を有する河川を津波が遡上する場合,横断方向で位相速度に分布が生じ,高水敷上で,波向き が河道に対して斜め方向となった.上流ほど河川幅が狭い河川を津波が遡上する場合には,河川幅の収縮 と,ソリトン分裂の両者の効果により,津波の伝播に伴い波高が増大した.

Key Words: tsunami, river, tsunami ascent, soliton disintegration, compound channel

1. 序 論

2011 年東日本大震災において,津波は,河川を遡上 し,河川堤防を超えて沿川域にも甚大な被害をもたらし た.これ以前にも,1983 年日本海中部地震1) や,2003 年 十勝沖地震の際に,河川を遡上する津波が確認されてい る.こうした河川津波は,一般に,陸上を遡上する津波 に比べて伝播速度が大きく,遡上距離が長い.また,河 川を遡上する過程で津波が分裂し,津波高さが増大する 可能性がある.そのため,海岸から遠く離れた沿川域に も被害が拡大する危険性があり,河川津波に対する対策 が重視され始めている2). そこで,本研究では,河川津波の基礎的な特性を把握 することを目的として数値解析を実施する.前報3) にお いて,非線形浅水モデルを用いた河川津波の平面 2 次元 数値解析を行ない,支川の合流角度や本川の高水敷が, 津波に与える影響等に関して検討したが,これに引き続 き,ここでは,河川津波の 3 次元数値解析を行ない,河 川幅や,河川の断面形状が,遡上する津波の伝播過程に どのような影響を及ぼすのかを調べる. 図-1 一様断面を有する河川の対象領域(単位: m) 図-2 上流ほど河川幅が狭い河川の対象領域(単位: m)

2. 数値解析の手法及び条件

数値解析モデルとして CADMAS-SURF/3D 4) を適用し, 図-1 及び図-2 に示すような河道を有する河川内の 3 次 元流体運動を対象とする.ここで,両者とも河道が直線 状であるが,前者は,断面が一様であり,後者は,上流

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図-3 河川幅 W = 20 mの一様単断面河川を津波が遡上する場合 における図-1 の破線に沿った水面形の時間変化 に行くにつれて河川幅が狭くなる.なお,線対称性より, 河川の右岸側の半分を対象領域とする.鉛直方向上向き を z軸の正の方向とし,静水位を z = 0.0 mとする.本研 究では,海域及び河川域の静水深を h = 3.0 mで一様とす る.また,簡単のために,河川流量及び底面摩擦の影響 を無視した. 計算格子間隔を∆x = ∆y = 2.0 m及び ∆ z = 0.1 mとし,計 算時間間隔は,CFL 条件を満足するよう自動的に決定し た.海域内の x = 0.0 mで造波する入射波は,孤立波とし, その波高を横断方向である y 軸方向に一様に0.5 m とし た.そして,海域の沖側端と,河川の上流端は, Sommerfeld の放射境界条件を適用して透過境界とした. また,陸域境界では,完全反射条件を仮定した.ここで, 河川堤防が十分に高いものとし,河川の氾濫を考慮しな い.

3. 一様単断面を有する河川を遡上する津波

図-1 に示すような,一様断面を有する河川に遡上す る津波の伝播過程を対象とする.ここで,河川断面を長 方形の一様単断面とする. 図-3 に,河川幅 W = 20 mの場合における,図-1の破 線に沿った水面形の時間変化を示す.また,比較のため に,河道のない一様静水深域を伝播する孤立波の水面形 図-4 河道のない一様静水深域を津波が伝播する場合における 図-1 の破線に沿った水面形の時間変化 の時間変化を図-4 に示す.図-4 より,河道がなければ, 入射させた孤立波が,安定して伝播することが認められ る.これに対し,図-3 の場合には,ソリトン分裂5) が発 生して波高が増加し,分裂によって生じた波群が,伝播 につれて後方に伸びている.このように,一様静水深の 河川内においても,条件によっては,ソリトン分裂が生 じ得る. 図-5 に,河川幅 W = 60 mの場合における,図-1の破 線に沿った水面形の時間変化を示す.W = 20 mの場合と 比較して僅かな分裂波が確認できるが,W = 20 m の場合 ほど第 1 波の波高が大きくならない.また,図-6 に, 河川幅 W = 100 mの場合における,図-1の破線に沿った 水面形の時間変化を示す.この場合には,顕著な分裂波 が見られない. 図-7 に,W = 10 m,16 m,20 m,22 m,24 m,30 m, 40 m,50 m,60 m,100 m及び 200 mの場合における,図 -1 の破線に沿った水面変動の最大値,すなわち,津波 高さの分布を示す.河川幅が狭いほど,各地点における 津波高さが大きい.また,W = 10 m,16 m及び 20 mの 場合にのみ,上流ほど津波高さが大きくなる.これは, 図-3 に示したように,ソリトン分裂が生じ,津波が伝 播するにつれて,第1波の津波高さが増加していくため である.河川幅がこれより広い他の場合(W  22 m)に は,ソリトン分裂が発生せず,河川幅に依存して現れる

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図-5 河川幅 W = 60 mの一様単断面河川を津波が遡上する場合 における図-1 の破線に沿った水面形の時間変化 図-7 様々な河川幅 W の一様単断面河川を津波が遡上する場 合における図-1 の破線に沿った津波高さ 津波高さのピークの位置より上流では,津波の伝播に伴 い津波高さが徐々に低減する.

4. 一様複断面を有する河川を遡上する津波

図-1 に示すような一様断面を有する河川の,河川断 図-6 河川幅 W = 100 mの一様単断面河川を津波が遡上する場 合における図-1 の破線に沿った水面形の時間変化 図-8 複断面河川の断面形状(単位: m) 面を複断面とする.ここで対象とする河川の断面形状を 図-8 に示す.ここで,低水路における静水深が3.0 mで あり,他方,高水敷上の静水深が 0.5 mである. 図-9 に,造波位置からの距離 x = 600 mにおける,鉛 直断面 y - z内の各時刻の流速ベクトルを示す.河川の横 断方向の波向き成分を有した津波第1波の波峰が,高水 敷上を伝播して,ピークが岸に到達し,t = 135 sにおい て,堤防位置での水位が高くなり,t = 140 sにおいて, 堤防で反射した第1波が,第 2波と重合している. 図-10 に,各時刻における水面変動の分布を示す.高 水敷上では,低水路内よりも水深が浅く,位相速度が遅 くなる.このため,横断方向で位相速度に分布が生じ, 高水敷上では,波向きが河道に対して斜め方向となって いる.また,高水敷上では,砕波も確認され,これら両 者の効果により,津波高さは,入射波波高よりも低くな っている.

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t = 30 s t = 40 s t = 50 s t = 60 s t = 70 s t = 80 s また,低水路の幅は,W = 100 mであり,図-7より, ソリトン分裂が発生しない河川幅であるが,河道に対し て斜め方向に進行する津波が側壁で反射した結果,低水 路内及び高水敷上の両者において,複数の波峰線が現れ ている.

5. 上流ほど河川幅が狭い河川を遡上する津波

図-2 に示すような,上流ほど河川幅が狭い河川を対 象とする.ここで,河川幅は,河口で 200 m,上流端で Wʼとし,上流に行くにつれて線形に減少する. 図-11 に,W ʼ = 20 m,60 m及び 100 mの場合の,図-2 の破線に沿った津波高さの分布を示す.これら3 ケース t = 90 s t = 100 s t = 150 s t = 200 s t = 250 s とも,津波が遡上するにつれて津波高さが増加し,河川 幅の収縮率が大きいほど,津波高さの増加率が大きい. また,W ʼ = 20 mの場合には,x = 1,500 mの位置で津波 高さが約0.6 m となり,その後,津波高さが急激に増大 し,x = 2,000 mでは,津波高さが入射波波高の 2倍近く にまで増加している.これは,河川幅の収縮に伴い津波 高さが増加するが,x = 1,500 mの位置付近でソリトン分 裂が生じ始め,河川幅の収縮と,ソリトン分裂の両者の 効果により,波高が増大していくためである.この場合, x = 1,500 mの位置で,津波高さが約 0.6 m に達しているが, 図-7 より,河川幅 W = 20 m の一様単断面を有する河川 の場合にも,津波高さが約 0.6 m に達してから,ソリト ン分裂が発生している. 図-10 図-8 に示す複断面を有する一様断面河川を津波が遡上する場合の各時刻における水面変動の分布

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図-11 上流ほど河川幅が狭い河川を津波が遡上する場合にお ける図-2 の破線に沿った津波高さ なお,上流端の河川幅が W ʼ = 20 mである河川を津波 が遡上する場合,x = 1,500 mにおける河川幅は,65 mで あり,これは,3. で述べたように,一様単断面を有する 河川では,ソリトン分裂が生じない河川幅である.

6. 結 論

河川津波の基礎的な特性を把握することを目的として 3 次元数値解析を行ない,河川幅や,河川の断面形状が, 遡上する津波の伝播過程にどのような影響を及ぼすのか を調べた.河川幅が狭いほど,津波高さが大きくなった. また,河川幅が狭く,ソリトン分裂が生じる場合,上流 ほど津波高さが大きくなった.河川幅が広い場合には, ソリトン分裂が発生せず,河川幅に依存して現れる津波 高さのピークの位置より上流では,津波が伝播するにつ れて津波高さが徐々に低減した. 複断面を有する河川を津波が遡上する場合,高水敷上 では,低水路内よりも水深が浅く,位相速度が遅くなっ た.すなわち,横断方向で位相速度に分布が生じ,高水 敷上では,波向きが河道に対して斜め方向となった.ま た,高水敷上では,砕波も確認され,これら両者の効果 により,津波高さは,入射波波高よりも低くなった.ま た,高水敷上において,河川堤防で反射した第1 波が,2波と重合した. 上流ほど河川幅が狭い河川を津波が遡上する場合,河 川幅の収縮に伴い津波高さが増加した.この効果により, ソリトン分裂が生じ始める河川幅は,一様単断面を有す る河川でソリトン分裂が生じ始める河川幅よりも広くな った.そして,河川幅の収縮と,ソリトン分裂の両者の 効果により,津波の伝播に伴い波高が増大した. 謝辞: 本研究を遂行するにあたり,平成 29 年度米盛誠 心育成会研究助成の支援を受けた.ここに謝意を表す. 参考文献 1) 首藤伸夫: 秋田県北部海岸における日本海中部地震津 波, 第 31 回海岸工学講演会論文集, pp. 247-251, 1984. 2) 河川津波対策検討会: 河川への遡上津波対策に関する緊急 提言, www.mlit.go.jp/common/000163992.pdf, 9p., 2011. 3) 中村祐輔, 柿沼太郎, 浅野敏之: 河川を遡上する津波の 数値解析, 土木学会論文集 B2(海岸工学), Vol. 73, No. 2, pp. I_331-I_336, 2017. 4) 財団法人沿岸技術研究センター: CADMAS-SURF/3D 数値 波動水槽の研究開発, 沿岸技術ライブラリー, No. 39, 235p., 2010. 5) 藤間功司, 後藤智明, 首藤伸夫: 非線形分散波理論の数値的 な検討, 第 31回海岸工学講演会論文集, pp. 93-97, 1984. (2018.3. 15受付)

A 3D NUMERICAL STUDY FOR THE CHARASTERISTICS OF TSUNAMIS

ASCENDING RIVERS

Yoshimi KUSUHARA, Taro KAKINUMA and Akihiko KIMURA

The tsunamis ascending the rivers, were simulated using a three-dimensional numerical model. The tsunami height, which is the maximum water-surface displacement at each point, increased, as the width of rivers was decreased. When the soliton disintegration occurred in the rivers with a narrow width, the tsunami height increased in the tsunami ascent. Conversely, when no soliton disintegration occurred in the rivers with a wide width, the tsunami height decreased through the tsunami propagation, after the peak of the tsunami height appeared. In the cases determining the tsunamis ascending the rivers with a com-pound channel, the direction of tsunami propagation became inclined. In the present cases, the tsunami height was lower over the flood plain than the incident tsunami height. If the width of rivers is decreased upstream, the tsunami height increased owing to both the contraction in the river width, and the soliton disintegration.

図 -9  図- 8 に示す複断面を有する一様断面河川を津波が遡上する場合の各時刻における y  -  z 断面内の流速分布(x  = 600 m )

参照

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