1.は じ め に コンピュータ将棋の棋力向上を背景として,プロ棋士との対局イベントが開催されるなど,コンピュータ将棋が世 間の注目を集めています.ゲームやパズルはルールおよびゴールが明確であるなど研究対象として扱いやすいことも あり,人工知能研究において初期から研究されてきました.ゲームプログラミングやゲーム情報学のゴールとしては, 強いプログラムの作成や完全解析などがあげられます. 人工知能学会「私のブックマーク」では 1999 年に「ゲームプログラミング(囲碁を中心に)」[1] が取り上げられ ています.本稿では,将棋を中心とした二人零和有限確定完全情報ゲームを対象として扱い,近年の主な研究動向と 研究開発に有用なリソースを紹介していきます. 2.ゲーム情報学全般 はじめに,ゲーム情報学全般を概観する解説記事として,2012 年の情報処理学会誌ゲーム情報学特集を紹介します. ・ 松原 仁:ゲーム情報学:1. ゲーム情報学の現在─ゲームの研究は日本で疎外されなくなったのか─ [2],情報処 理,Vol. 53, No. 2, pp. 102-106(2012) ・ 小谷善行:ゲーム情報学:2. ゲーム情報学におけるパズル研究 [3],情報処理,Vol. 53, No. 2, pp. 107-111 (2012) ・ 瀧澤武信:ゲーム情報学:5. 将棋 [4],情報処理,Vol. 53, No. 2, pp. 126-132(2012) ・ 村松正和:ゲーム情報学:6. コンピュータ囲碁の現状 [5],情報処理,Vol. 53, No. 2, pp. 133-138(2012) ・ 岸本章宏:ゲーム情報学:7. その他の二人ゲーム [6],情報処理,Vol. 53, No. 2, pp. 139-145(2012) 続いて紹介するのは,ゲーム情報学とコンピュータ将棋を扱った書籍です.これらはもう少し技術的な内容を扱っ た書籍となっています. ・ 小谷善行 編著,岸本章宏,柴原一友,鈴木 豪 著:ゲーム計算メカニズム─将棋・囲碁・オセロ・チェスのプロ グラムはどう動く? [7],コロナ社(2010) ゲームプログラミングの技術全般を取り扱った書籍です.評価関数の学習やモンテカルロ木探索についてはあ まり触れられていません. ・ 瀧澤武信,松原 仁,小谷善行,鶴岡慶雅,山下 宏,金子知適,保木邦仁,伊藤毅志,竹内 章,篠田正人,古作 登, 橋本 剛 著,コンピュータ将棋協会 監修:人間に勝つコンピュータ将棋の作り方 [8],技術評論社(2012) あから 2010 に関連した書籍で,各プログラムの作者による解説やコンピュータ将棋の対局から見た特徴につ いて紹介されています. ・ 松原 仁 編:コンピュータ将棋の進歩 6 [9],共立出版(2012) 将棋プログラム Bonanza,GPS 将棋,激指,大槻将棋について開発者により解説されるほか,合議と詰将棋 探索についても第一人者が詳しく解説しており,上述の書籍よりも専門的な内容となっています. 3.Web 上のリソース 続いて将棋を中心としてゲームプログラミングに関する,Web 上のリソースを紹介します. コンピュータ将棋で重要である,盤面のデータ構造や探索,評価関数について解説のあるサイトを紹介します.
ゲームプログラミング(将棋を中心に)
†1 竹内 聖悟(科学技術振興機構 ERATO 湊離散構造処理系プロジェクト) †1 http://www.ai-gakkai.or.jp/my-bookmark_vol30-no2・ ミニマックス法とアルファベータ法 [10](M.Hiroi’s Home Page) ゲームで使われる基本的な探索であるミニマックス法とアルファベータ法について解説と Python によるコー ドが掲載されています. ・ 将棋プログラムのつくり方 [11](「うさぴょん」,「ねこにゃ」開発日記) 将棋での流行の盤面データ構造 Bitboard ではありませんが,盤面データ構造のつくり方とアルファベータ探 索に基づく探索手法のサンプルとして参考になります. ・ 囲碁プログラムのつくり方 [12](勝也のページ) 囲碁で主流となったモンテカルロ木探索は使われていませんが,盤面のデータ構造のつくり方は参考になると 思います. ・ Chess Programming Wiki [13] コンピュータチェスの技術について非常によくまとまったサイトです.コンピュータ将棋はコンピュータチェ スを参考にすることが多く,大変に有用です.盤面表現や探索,評価関数は Basics にあり,ここから興味のあ る項目を辿るのがよいと思います. 情報交換や技術交流の場としては次のようなものがあります. ・ コンピュータ将棋協会(CSA)[14] ・ コンピュータ囲碁フォーラム(CGF)[15] ・ コンピュータ将棋や囲碁の掲示板 [16] ・ The Computer-Go ML archives [17] ・ TalkChess.com [18]
また,技術情報やリンクについてまとめられたサイトとしては,前述の Chess Programming Wiki 以外にも次の ようなサイトがあります. ・ YSS と彩のページ [19] ・ コンピュータ将棋の勉強メモ [20](ず’s 将棋) ・ 将棋ソフト・コンピュータ将棋 [21](詰将棋おもちゃ箱) ・ Computer Go at Sensei’s Library [22] 3・1 オープンソースのプログラム 自分ですべてつくるにせよ,他のプログラムがどのようなことをしているかを知るのは重要です.また,自分のア イディアを試したいという場合には,一からプログラムをつくる必要はなく,公開されているプログラムに対して実 装するので十分です. 以下に,代表的なオープンソースのプログラムをあげます. ・ Bonanza [23](将棋) 評価関数の重みの学習に成功し,手法およびソースを公開したことでも有名な強豪ソフトです.学習や合議の コードも含まれています. ・ GPS 将棋 [24](将棋) 600台 超 の マ シ ン で の 分 散 並 列 探 索 を 行 っ た 強 豪 ソ フ ト で す.GPS 将 棋 の ほ か, 将 棋 ラ イ ブ ラ リ OpenShogiLib,チェスプログラム Stockfish を将棋向けにした GPSFish,分散並列探索のコードなどが公開さ れています. ・ Stockfish [25](チェス) トップレベルのチェスプログラムで,多くの将棋プログラムが参考にしています.ソースだけでなく,何を試 したか,どの程度有用であったかなど開発まで公開されています(Stockfish Testing Queue)[26]. ・ Fuego [27],Pachi [28](囲碁) モンテカルロ木探索が実装されたトップレベルの囲碁プログラムです. ・ コンピュータ将棋選手権使用可能ライブラリ [29] 3・2 コンピュータ将棋の大会やネット対局場 コンピュータ将棋の大会やネット対局場について紹介します.
・ 世界コンピュータ将棋選手権 [30] コンピュータ将棋協会が主催する,コンピュータ将棋の進歩を目的としたコンピュータ将棋の大会です.選手 権など CSA が主催した大会などの棋譜は,CSA のサイトにまとめられています. ・ 電王戦 [31] 電王戦は将棋プログラム同士の対局イベントです.トップ 5 のプログラムがプロ棋士と対局していましたが, この形式でのイベントは 2015 年で終わりとのことです.コンピュータに限らず,さまざまな将棋イベントが行 われています. ・ Computer Olympiad [32] ICGA が主催する,さまざまなゲームを対象としたコンピュータの国際大会です.囲碁や将棋だけでなく,幅 広いゲームが見られます. ・ コンピュータ将棋対局場 [33],floodgate [34] 将棋プログラムが 24 時間ネット対局しています.floodgate では,対戦結果から各プログラムのレーティング を算出しており,強さの目安として使われています.対局数が少ないか,同程度の強さのプログ ラムが少ない ときはあまり信用できません.floodgate で指された棋譜は年ごとにまとめられており,2014 年までで 60 万局 以上となっています. 上記の選手権や対局サーバで使われるプロトコルやサーバプログラムなどを紹介します. ・ CSA 通信プロトコル [35] コンピュータ将棋協会が制定するプロトコルです.TCP/IP プロトコルは,世界コンピュータ将棋選手権で使 われているほか,floodgate でも使われています. ・ Universal Shogi Interface(USI)[36]
チェスでは Universal Chess Interface(UCI)により,プログラムと GUI とが接続しています.その将棋版 が USI です.対局サーバへの接続も GUI が処理をしてくれるので,プログラム開発者は USI だけ使えるように すればよく,思考部分の開発に集中することができます.
・ shogi-server [37]
floodgateで使われているネット対局用サーバで CSA の TCP/IP プロトコルとそれを拡張したプロトコルに対 応しています.GPL で配布されています. ネット対局場としては次の二つのサイトもあります.基本的に人間同士が対局する場ですが,許可を得てプログラ ムが対戦,常駐しています. ・ 将棋倶楽部 24 [38] 将棋プログラムボンクラーズや ponanza が参加し,レーティングのトップになるなど,将棋ファンの注目を集 めました. ・ 81Dojo [39] 国際的なネット対局場で,さまざまな機能や将棋類をサポートしています.また,プログラムが常駐しています. 4.最近の研究動向 ここからは,将棋を中心とした,最近の研究動向について紹介していきます. 〈レクチャーシリーズ〉「コンピュータ将棋の技術」 2011年 5 月∼ 2012 年 7 月にかけて本誌において〈レクチャーシリーズ〉「コンピュータ将棋の技術」が全 7 回で 連載されました.探索枝刈りや並列化,評価関数の重みの学習に詰将棋探索など多岐にわたり,最先端の技術が解説 されています(これらはオープンアクセスではありません).
・ 保木邦仁:Crafty と比較した Bonanza の有効分岐因子 [40],人工知能学会誌,Vol. 26, No. 3, pp. 295-300 (2011) ・ 岸本章宏:詰将棋を解くための探索技術について [41],人工知能学会誌,Vol. 26, No. 4, pp. 392-398(2011) ・ 伊藤毅志:コンピュータ将棋における合議アルゴリズム [42],人工知能学会誌,Vol. 26, No. 5, pp. 525-530 (2011) ・ 横山大作:「激指」におけるゲーム木探索並列化手法 [43],人工知能学会誌,Vol. 26, No. 6, pp. 648-654(2011) ・ 金子知適:コンピュータ将棋の評価関数と棋譜を教師とした機械学習 [44],人工知能学会誌,Vol. 27, No. 1, pp. 75-82(2012)
・ 山下 宏:囲碁と将棋のプログラミングの違い [45],人工知能学会誌,Vol. 27, No. 2, pp. 211-215(2012) ・ 竹内 章:コンピュータ将棋における大局観の実現を目指して [46],人工知能学会誌,Vol. 27, No. 4, pp. 443-448(2012) 4・1 棋譜を教師とした,評価関数のパラメータの自動調整 棋譜の指手を教師として,プログラムが教師の手を最善手として選ぶようにパラメータを調整する手法は比較学習 として研究がされていましたが,明確には成功していませんでした.保木邦仁はこの手法に探索を組み合わせること で成功し,プログラム Bonanza を 2005 年に公開し,2006 年の世界コンピュータ将棋選手権で優勝,同年の GPW での招待講演においてその手法を講演しました.その後多くの将棋プログラムがこの手法を採用し,棋力の向上に非 常に大きく貢献しました.チェスでもさまざまに試されていましたが,大規模なパラメータを対象として成功した例 はないようです.
・ Hoki, K. and Kaneko, T.: Large-scale optimization for evaluation functions with minimax search [47],J.
Artificial Intelligence Research, Vol. 49, pp. 527-568(2014)
比較学習を用いるとプログラムが棋譜の指手をまねるようになりますが,このことと強さとの関係は明確ではあり ません.佐藤佳州らはそこに着目し,棋譜の指手とどれだけ一致するかに加え,局面の情報などから局面に重みをつ けてパラメータ調整の行う手法を提案しました.目的関数のメタパラメータを,勝率を適応度とした遺伝的アルゴリ ズムの一種を用いて調整し,対戦実験では有意な結果を得ました.
・ Sato, Y. Miwa, M. Takeuchi, S. and Takahashi, D.: Optimizing objective function parameters for strength in computer game-playing [48],27th AAAI Conf. on Artificial Intelligence(AAAI-13),pp. 869-875(2013) 4・2 探索の分散並列化
探索について,多数のマシンを利用する研究も行われています.「あから」についての書籍やレクチャーシリーズ で解説された合議も効率的ではないですが分散並列化の手法といえます.以下では,将棋における分散並列化,特に 大規模な分散並列化についての研究を取り上げます.
横山氏による講演スライドでは分散並列化のための課題やチェスで研究されてきた手法(Young Brothers Wait Concept,Transposition table Driven work Scheduling),将棋での研究例について詳しく解説しています.Ura らは将棋プログラム激指と 1 536 コアを利用した大規模分散の研究を行いました.効率的な探索のために必要最低 限の部分木を予測し,それを探索のタスク割振りに利用する手法です.論文中の関連研究では前述の手法のほか, Asynchronous Parallel Hierarchical Iterative Deepeningも紹介されています.
GPS将棋は,世界コンピュータ将棋選手権やプロ棋士の三浦八段(当時)との対局において,600 台以上のマシン
をネットワークで接続した環境での疎結合 並列探索を行いました.選手権や対局イベントの結果,探索深さの比較 から有効な並列探索が実現しているといえます.探索の仕組みやその性能向上については情報処理学会の電王戦特集 に紹介されています.
・ 横山大作:コンピュータ将棋と並列化〜緻密ないい加減さ〜 [49],Electronic Design and Solution Fair 2013,セ ッション 3(2013)
・ Ura, A. Tsuruoka, Y. and Chikayama, T.: Dynamic prediction of minimal trees in large-scale parallel game tree search [50],J. Information Processing, Vol. 23, No. 1(Jan. 2015)(論文はオープンアクセスではありません) ・ 金子知適,田中哲朗:多数の計算機を活用したゲーム木探索技術の進歩─三浦弘行八段と GPS 将棋との対局を 振り返って─ [51],情報処理,Vol. 54, No. 9, pp. 914-922(2013)(2015 年 1 月 15 日現在,記事はオープ ンアクセスではありません) 4・3 棋力の解析や棋譜の解説 プログラムの棋力向上を背景として,人間プレーヤの棋力・レーティング解析のほか,コンピュータによる棋譜の 解説など,強さ以外の目的をもった研究が増えています. 以下に紹介する文献は,コンピュータを使い人間プレーヤの棋力を解析した研究です.前者はチェスを対象とした 研究で,後者は将棋を対象としています.古今の人間プレーヤのレーティング推定は,将棋ファンの興味を惹く内容 です.
・ Regan, K. W. and Haworth, G. McC.: Intrinsic chess ratings [52], 25th AAAI Conf. on Artificial Intelligence (AAAI-11),pp. 834-839(2011)
論文集,pp.9-16(2014) 次に紹介するのはコンピュータ将棋を使い,棋譜の解説を行う試みです.前者はネット上で中継が行われている タイトル戦の棋譜を対象に,将棋プログラムの読み筋や評価値,さらに詰みや詰めろ,狙いなどをリアルタイムで Twitter上で行ったことについて述べられ,後者は,棋譜と解説文から特徴を取り出し,実際の棋譜に対して特徴を 取り出し,自然言語で出力することを試みた研究です. ・ 金子知適:コンピュータ将棋を用いた棋譜の自動解説と評価 [54],情処学論,Vol. 53, No. 11, pp. 2525-2532 (2012) ・ 亀甲博貴,森 信介,鶴岡慶雅:将棋解説文のグラウンディングのための指し手表現と局面状態の対応付け [55], ゲームプログラミングワークショップ 2014 論文集,pp. 202-209(2014) 4・4 モンテカルロ木探索 囲碁では 2000 年代中頃からモンテカルロ木探索と呼ばれる探索手法が提案され,大きな成功を収めました.モン テカルロ法に木探索を組み合わせた手法で,モンテカルロ法,すなわちランダムプレイによる評価を使うため,評価 関数が不要ということが大きな特徴です.その後,多くのゲームへと応用されるだけでなく,ゲーム以外の分野へも 応用されるなど,手法の有用性が示されています. モンテカルロ木探索のバリエーションやヒューリスティック,応用など多岐に渡りまとめられた 2012 年時点での 調査論文,モンテカルロ木探索についてのわかりやすい解説となっている講演スライド,コンピュータ囲碁とモンテ カルロ木探索について,詳しく書かれた日本語の書籍を紹介します. ・ Browne, C. B., Powley, E., Whitehouse, D., Lucas, S. M., Cowling, P. I., Rohlfshagen, P., Tavener, S., Perez, D., Samothrakis, S. and Colton, S.: A survey of Monte Carlo tree search methods [56], IEEE Trans. on
Computational Intelligence and AI in Games, Vol. 4, Issue 1(2012)(論文はオープンアクセスではありません)
・ 美添一樹:コンピュータ囲碁におけるモンテカルロ法─理論編─ [57],エンターテイメントと認知科学研究ステー ション,第 5 回講演会,電気通信大学(June 2008) ・ 松原 仁 編,美添一樹,山下 宏 著:コンピュータ囲碁―モンテカルロ法の理論と実践―[58],共立出版(2012) 著者の一人,山下氏による Web ページ [59] ではサンプルコードや参考文献が公開されています. 4・5 ゲームを解く ゲーム研究の究極的なゴールの一つとして,ゲームの勝敗を知ること,すなわち初期局面からプレーヤが最善を尽 くした場合に先手必勝か後手必勝,または引分けとなるかを解析することがあげられます.ゲームの難しさとして, ゲーム木サイズや可能な局面数が見積もりとして使われます.これまで解かれた中では,ゲーム木サイズが 1030の チェッカーが最大です.よく知られたゲームでは,オセロが 1060,チェスが 10120,将棋が 10220,囲碁は 10360となっ ており,これらのゲームが解かれるまでにはまだまだ時間がかかりそうです. 有名なゲームの解析は非常に大きなインパクトをもちます.実際チェッカーを解いた結果はサイエンス誌に掲載さ れ,その年の The Runners-Up [60] に選ばれています. ・ Schaeffer, J., Burch, N., Björnsson, Y., Kishimoto, A., Müller, M., Lake, R., Lu, P. and Sutphen, S.: Checkers Is Solved [61], Science, Vol. 317, No. 5844, pp. 1518-1522(Sept. 2007)(論文はオープンアクセスではありま せん) 日本語記事としては,チェッカー解析プロジェクトの一員である岸本章宏氏による解説記事「チェッカー解明 秘話」[62](情報処理,Vol. 48, No. 11, pp. 1257-1263(2007))があります. 「どうぶつしょうぎ」は 3 × 4 の小さな盤面の将棋類で,初期局面から最善を尽くすと 78 手で後手が勝つことが解 析されました.一般に将棋類は先手が有利なゲームが多く,後手が勝つこと,小さな盤面で 78 手かかることなど意 外な結果が得られています. ・ 田中哲朗:「どうぶつしょうぎ」の完全解析 [63],情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI),Vol. 2009-GI-22, No. 3, pp. 1-8(2009) 「どうぶつしょうぎ」の完全解析 [64] においてプログラムのソースやデータが公開されています.
二人零和有限確定完全情報ゲームの解析に使われる有効な手法は,Depth-First proof number(df-pn)探索です. Proof Number Searchは Allis らにより提案された And-Or 木探索の手法ですが最良優先探索であるためにメモリ使 用量が問題でした.これを深さ優先で行い,かつ反証数を取り入れた手 法が長井らにより提案され,その有効性が 示されました.その後,グラフを辿るにあたって起こる問題を岸本が改善し,さらに金子によって並列化が行われる などの進歩がありました.以下に紹介する文献は,証明数探索に関するここ 20 年の動向がまとめられたものとなっ
ています. ・ Kishimoto, A., Winands, M. H. M., Müller, M. and Saito, J.-T.: Game-Tree search using proof numbers: The first twenty years [65], ICGA J., Vol. 35, No. 3, pp. 131-156(2012) 5.学会・研究会・国際会議 ゲーム情報学に関連する学会,研究会および国際会議は以下のようなものがあります. ・ ゲーム情報学研究会 [66] ゲーム情報学を扱う研究会です.情報処理学会の研究会の一つで,年に二度の研究会のほか,11 月に箱根で ワークショップ Game Programming Workshop(GPW)[67] を主催しています.それらの予稿は電子図書館 [68] においてオープンアクセスで公開されています.
・ International Computer Games Association(ICGA)[69]
ゲーム情報学を扱う国際的な学会です.国際会議 Computer and Games(CG)および Advances in Computer Games(ACG)を主催するほか,論文誌 ICGA Journal [70] を発行しています.また,さまざまなゲームを扱っ たコンピュータプログラムの国際大会 Computer Olympiad も主催しています. ・ 情報処理学会 [71] 情報処理全般について幅広く扱う学会で,前述のゲーム情報学研究会が所属しています.学会誌ではゲーム情 報学やコンピュータ将棋についての小特集.論文誌ではゲーム情報学の特集号が企画されることがあります.ま た,2010 年には創立 50 周年記念事業の一つとしてコンピュータ将棋プロジェクト [72],「あから 2010」と清水 市代女流王将(当時)との対局イベントを主催しました. ・ 人工知能学会 [73] ゲームと人工知能との関連が深く,コンピュータ将棋に関するレクチャーシリーズや「私のブックマーク」な どが掲載されているほか,学会誌や全国大会でゲームが取り上げられることがあります. ・ IEEE Computational Intelligence Society [74] Computational Intelligence(CI)についての国際的な研究コミュニティです.ゲームについては,国際会議 Computational Intelligence and Games(CIG)を主催のほか,論文誌 IEEE Transactions on Computational Intelligence and AI in Games [75] を発行しています.
・ The AAAI Conference on Artificial Intelligence [76]
Association for the Advancement of Artificial Intelligence が主催する人工知能についての国際的なトップ会 議.ゲームについての研究発表や競技会があります. ・ International Joint Conference on Artificial Intelligence [77] 人工知能についての国際的なトップ会議です.こちらもゲームについての研究発表や競技会があります. ・ European Conference on AI [78] 2年に一度開催される人工知能についての国際会議で,こちらもゲームについての研究発表や競技会がありま す. 6.お わ り に 将棋を中心として,ゲームプログラミングについて,概観する記事から有用と思われる情報源,研究動向について 紹介してきました. コンピュータ将棋の棋力はプロ棋士レベルに達し,一つの目標を達成したように思えます.しかし,10 年以上前 にその目標を達成したコンピュータチェスはいまだに研究・開発が続いており,コンピュータ将棋でも棋力向上の研 究・開発が続いていくことでしょう.これまでの,そして将来の研究・開発によってさらなる棋力が得られるように なると,対局の解説や棋力解析のような新しい研究が促進されていきますので,今後現れる新しい研究に注目してい きたいと思います. 本稿が,この分野に興味をもつ方の参考になる,あるいは研究や開発を始める方の助けとなれば幸いです. 謝 辞 本稿の執筆にあたり有益なアドバイスをいただいた,金子知適准教授(東京大学),美添一樹博士(科学技術振興機構) に感謝いたします.
[1] http://www.ai-gakkai.or.jp/my-bookmark_vol14-no3/ [2] http://id.nii.ac.jp/1001/00079921/ [3] http://id.nii.ac.jp/1001/00079922/ [4] http://id.nii.ac.jp/1001/00079925/ [5] http://id.nii.ac.jp/1001/00079926/ [6] http://id.nii.ac.jp/1001/00079927/ [7] http://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339025408/ [8] http://gihyo.jp/book/2012/978-4-7741-5326-1 [9] http://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320123212 [10] http://www.geocities.jp/m_hiroi/light/pyalgo24.html [11] http://usapyon.cocolog-nifty.com/shogi/HowToMakeShogiProgram.html [12] http://homepage1.nifty.com/Ike/katsunari/howto_kihon.html [13] https://chessprogramming.wikispaces.com/ [14] http://www.computer-shogi.org/ [15] http://www.computer-go.jp/ [16] http://524.teacup.com/yss/bbs [17] http://computer-go.org/pipermail/computer-go/ [18] http://talkchess.com/forum/index.php [19] http://www32.ocn.ne.jp/~yss/index_j.html [20] http://shogi.zukeran.org/computer-shogi-memo/ [21] http://www.ne.jp/asahi/tetsu/toybox/soft/ [22] http://senseis.xmp.net/?ComputerGo [23] http://www.geocities.jp/bonanza_shogi/ [24] http://gps.tanaka.ecc.u-tokyo.ac.jp/gpsshogi/ [25] http://stockfishchess.org/ [26] http://tests.stockfishchess.org/tests [27] http://fuego.sourceforge.net/ [28] http://pachi.or.cz/ [29] http://www.computer-shogi.org/library/ [30] http://www.computer-shogi.org/wcsc/ [31] http://www.shogi.or.jp/kisen/denou/ [32] http://www.grappa.univ-lille3.fr/icga/competition.php?id=3 [33] http://wdoor.c.u-tokyo.ac.jp/shogi/ [34] http://wdoor.c.u-tokyo.ac.jp/shogi/floodgate.html [35] http://www.computer-shogi.org/protocol/ [36] http://www.glaurungchess.com/shogi/usi.html [37] http://shogi-server.sourceforge.jp/ [38] http://www.shogidojo.com/ [39] http://81dojo.com/ [40] http://ci.nii.ac.jp/naid/110008662159 [41] http://ci.nii.ac.jp/naid/110008673481 [42] http://ci.nii.ac.jp/naid/110008733602 [43] http://ci.nii.ac.jp/naid/110008762239 [44] http://ci.nii.ac.jp/naid/110008898265 [45] http://ci.nii.ac.jp/naid/110009419564 [46] http://ci.nii.ac.jp/naid/110009477065 [47] https://www.jair.org/papers/paper4217.html [48] http://www.aaai.org/ocs/index.php/AAAI/AAAI13/paper/view/6402 [49] http://www.tkl.iis.u-tokyo.ac.jp/top/modules/newdb/extract/1318/data/eds2013_sp03.pdf [50] http://id.nii.ac.jp/1001/00106959/
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