理学療 法 学
第36巻 第
6FJ
299
一
304
頁 (2009
年 )研 究 論 文
滑 り易
い
床 面
に お
け
る
滑
ら な
い
た
め
の
歩 行 様 式
*長
岡
輝 之
1)#江
原
義 弘
2)小 林 量 作
3)関
根 裕
之
1♪大
西
秀
明
3)要 旨
【
目的
】
本研 究
のII
的
は,
滑 り易
い床 而
で の歩 行
で,
滑
らな
い よう
に どの よう
な身 体 機 能
を発 揮
し てい る のか
,
そ
の メ カニ ズムを明 ら
か にす
ること
であ
る。防 法
】
健 常 成 人 男 性
20
名 を対 象
とした
。赤 外 線
カ メ ラ9
台 を含 む
三次
元動 作 解 析 装 置
と床 反 力 計 を使 用 し
,
滑 り難
い床 面
での歩 行
および滑 り易
い床 面
での歩
行
を 計 測 し た。
得
ら れ た デー
タより
,
股 関節
モー
メ ン ト と床 反力
の作
用線
の 関係
を検 討
し た。
【
結
果】
滑
り易
い床
面 での歩行
で は, 床 反力
の推進
力
と制 動 力
が 滑 り難
い床 面
に 比べ有 意
に 小 さく
な り,逆
に 股 関節
の屈 曲 及
び伸 展
モー
メ ン トの ピー
クは有
意に大 きく
なっ ていた。
ま た,
ピー
クは両
側 支 持 期であり
,
前
方支 持 脚
の伸 展
モー
メ ン ト,
後 方 支 持 脚
の屈 曲
モー
メ ン トが増 加
して いた。【
結 論 】
左右
の下 肢
で前 後
に挟
み込 む
よう
にす
るこ とで股 関 節
モー
メ ントを大 き く発 揮 さ
せ て い た。そ
の結 果 床 反 力 作 用 線
が股 関 節 軸
か ら 離 れ,
より鉛 直
に近 く保 持
する戦 略
が 用い ら れ,
推 進 力
と制 動 力 を減 少
させてい る こ と が今
回の研 究
で確
認で き た。
キー
ワー
ド滑 り
,
転
倒,
股関 節
モー
メン ト はじ
め に大
腿
骨
頚部
骨 折
の89
% は転
倒
に よ るも
の 1)で,平
成
16 年
国
民 生活
基礎
調査
におい てt75歳
以 ヒの後期 高 齢
者
の転 倒
は,
要 介 護
状 態の原
因 と して脳 血管 疾
患,
高 齢
による衰 弱
に次
い で第
3
位
に なっ て い る。
ま た転 倒
は,
身 休 的
な損 傷
に至
らなく
ても
,
転 倒 後 症 候 群
を 引 き起
こす 恐
れが あ
る。転 倒
に関 す
る研 究
は,高 齢 社 会
において重 要 性 を 増
してい る分 野
であ
る。大 渕
の メタ ア ナ リシ ス 研 究 2)で は,
転倒
理由
と し て,
滑 り に よ る機
転 が2
〜
30
% と し てい る。
特
に降 雪
地 域の凍 結
路 面 や,
風 呂場
な どの濡
れ た床 面
,
雨の 日の玄関
,
靴
下 に よ るフロー
リ *Gait
Strategy
toAvoid
$lipping on Shpper}・
Floor Surfaces1) 新 潟 リ
ハ
ビ リ テー
シ ョン病 院 リハ ビ リ テー
ショ ン部 〔〒 950−
3304新 潟 県 新 潟 市 北 区 木 畸761)Teruyu]d Naga〔}ka
.
RPT,
MS,
Ilir〔}yuld Seldne,
RPT,
MS:D巳parm 〕enL bf RehabTliしaLion
.
Niig’
ata Rehub“itation Hosp[LaL 2 〕 新 潟 医療 福 祉 大 学 義 肢 装 具 自立支 援 学 科Y
〔
os.
hihiro Ehara、
PhD:
Department of Prosthetics&Orthotics
and Assistive Technology
,
Ni工gaLa IJ1’
iiversiLy of IleaELh andWelfarc
3 ) 新 潟 医療 福祉 大 学 理学 療 法 学 科
Ryousaku Kobayashi
.
RPT.
PhD,
Hideaki OnishT,
RPT.
PhD:Depart[nent of Physical Therapy
,
Niiga亡a University of Ileallhand IE「elfure #
E
−
maiE :nirellp.
pt@aiko.
or.
jp
(受付日 2008年ll月21口 /受理 口 2009年SJ]811) ング 上の
歩 行 な
ど,
生活
の場
で滑
る という場 面
は 比較 的
多
い と推
測 さ れ る。
そこ で我
々 は歩 行 中
の転 倒 原 因の中 で,滑
ると
いう
こと
に着
目 した。
滑 る とい
う
現象
を考
え る時
に は,
床 面 との摩
擦 が 関与
す
る。
靴 底 と床 面
との問
には 垂直力
と摩擦 係 数
とで決定
さ れる最 大 摩 擦 力
があ り
,
その値
を越
え た水 平 力
が加
わ る と滑 り
が生 じ る。
す
なわち
,
歩 行
中の水 平 力
を 垂直 力
で徐
した値
が最 大摩 擦 係 数 を超 え
る ことに よっ て滑 り
が生
じ る。そ
こで水 平 力 を 垂 直 力
で徐
した 値
が大 き
い歩
き方
は,
滑 り易い歩
き方
といえ
るu こ の観 点
か ら水
平力
を 垂直 力
で徐
し た値
をPerkins
ら3}は 必要 摩 擦 係 数
(
requircd coefficient offriction
:以下
,
RCOF
)
と呼
んで い る。
滑 り易
い床
i
面
で の歩 行
(
以
下,
滑 路 面 歩 行 〉
で は,
RCOF
を
より小 さ く した 歩 き 方 を しな け れ ば な らな
い。
Lockhart4
) の研究
で は,
滑 り難
い床
面で の歩 行
(
以下,通 常
面歩 行
) と滑路 面 歩 行
で高齢 著
と 健常 成
人 と を 比 較 し,
高 齢 者
ではRCOF
を小 さ く
でき な か
っ た と報 告 し
て い る。一
方
,
健 常
成 人に お い て はRCOF
を小
さく
でき
てい た が,
そ
の要 因
は報 告 さ れ
ていな
い 。Asaka
ら
5〕 は,
成 人男 性
を対
.
象
に し た滑 り易
い床 面
E
で の歩
き出
し の実 験 を 行い,
2
歩ll
を 振 り 出す 時
のRCOF
を増 加
させ ないた め に,
ユ歩
1
」の歩 幅
を減
らす
と樶 告
している,
,
つ300 理 学 療 法 学 第36巻 第6号
ま り
,
RCOF
を小
さくさ
せ る1
つ の要 閃
と し て,
歩 幅 を
減 らす事 を挙 げ
てい る。
同 時
に,
滑 り易
い床 面 と滑 り難
い床 面
で ,歩
1隔
が 同 じでも滑
り 易い床
面のRCOF
が 小 さく
なっ た とも
述べ てい る。
こ の こ と か ら, 歩幅
を減
らす
事
だ け が直
接
RCOF
を 減
らす 要 因
では ない とい え る。
し か し,
そ
の機 序
につ い て は言 及
でき
ていな
い。滑
る事
に対 す
るバイ
オメ カニ クス の研 究
は,
基 礎 的 な
デー
タが少
ない為
にいま
だ解
明 さ れてい ない事
が多
い。
本 研 究の 目 的 は, 基 礎 的 な デー
タ と し て健 常
成 人 を対
象
と し,
滑
路
面 歩
行
で,
滑
ら ない よう
に どの よう
な身体機
能 を 発揮
してRCOF
を 小 さ く して い るのか,
その メカ ニ ズムを 明
ら かにす
る こ とであ
る。対象
お よび
方法
1.
対
象
対
象
は 形 態 異 常 や 運 動 器 疾 患 を 有 さ ない 健 常 成 人 男 性20
名 (
平 均 年 齢
29
,
1
±8
,
4
歳
,
平 均 身長
171
.
6
±3
,
3cm
,
平 均 体 重
67,
2
±7
.
5kg
)
で行
っ た。2
.
方 法
赤 外 線 反 射
マー
カー
(
直 径
9mm
:以下
マー
カー
) を
両 側の肩 峰
,肘
頭,橈 骨
及び尺骨
茎 状突 起
の中
点,
上前
腸
骨
棘
と 丿t転
子
を結
ん だ線
の大転 子 側
1
/3
の位
置
, 大 腿骨 外 側
上顆
,
外
果
,
第
5
中
足 趾節 問 関
節
部
お よ び右
側の.
E
後 腸 骨 棘
の計
15
箇 所
に貼 付 した
。身 体
へ のマー
カー
貼 付 位 置
は,
臨 床 歩行 分 析 研 究 会
の規 定
に よるも
の とし
た。
運 動 課 題 は 通常
面 歩行
お よ び 滑 路 面歩 行
と し た.
赤
外
線
カ メ ラ9
台
を含
む 三次
元動作解 析
装 置
VICON
MX
(
以 下VICON
,
Oxford
Metrics
) と 床 反力
計 (OR6
−
6
−
2000
,AMTI ,
MA
)
6
台
を 設 置 し た,
直 線約
10m
の歩行 路
があ
る実 験
室で実 施
し た。
床 反 力 計
は直 線
の中 間
にあ り
,
実験 室
の床 而
はパ ン チ カー
ペ ッ トであ
っ た。通 常 面 歩 行
は裸 足
にて行
い,
施 行 前
に数
回練 習
し,床
反力 計
に左 足 部
か ら自然
に接 地
でき
る よう歩 幅
お よび 歩
き 出 し位 置 を 調 整 し た。
その際 被 験 者 に は,
「遠 く ま で歩 く感
じで,
通常
の歩 行
を してく
だ さい」
と指 示
し た。
滑 路 面 歩 行
は,
床 反 力 計
上 に静 冠気
を防
IEし た ポ リエ チ レ ン製
シー
ト を3
枚
重 ね,
足底
の発 汗
によっ て シー
トが張 り付 き
,
歩 行
の障 害
とな
らな
い よう
に足 部 も
ポ リエ チ レン製
の シー
ト で覆
っ て計測
し た。
静
的摩
擦 係 数
は,
任
意に傾 斜 角 度 を 調 整で き る 道 具 を 使 用 し算 出 した 結 果 より
,
お よそ
022
で あっ た。
施 行 前
に,
通常 面 歩 行 同 様
に左
足部
か ら床
反力
計
に自
然 に接
地 で き る よう
に 数 回練
習 し,
どの程 度 滑 るの か を 体 験 さ せ た。
ま た凵頭 指 示 は「
遠く
ま で 歩く感
じで , でき
るだけ滑
ら ない様
に歩
い てく
だ さい」
と し た,被 験 者
には安 全 性 を考 慮
し,
体 幹 及
び大
腿 部に移 動 式 免 荷 装 置
を装 着
し,
介 助 者
が並走
した。 免荷
装置
はで きるだ け吊 り具
に伸 張 力
を か け ない で装着
し,
通 常 面歩 行 時 も滑 路 面歩 行
の条件
に一
致
さ せ た。
実
験 課
題 は,
始
め に通 常 面歩 行 を
,
その後
滑路 面歩 行
を 施行
し た。
そ れ ぞ れの
歩 行
をVICON
と床
反力 計
で各 3
回 計 測
し た。
VICON
と床
反 力 計
の デー
タは サ ンプリ ン グ周 波 数
100Hz
に設 定
し同期 さ
せ,
パー
ソナル コ ンピュー
ター
に記 録
さ せ た。得 ら れ た デ
ー
タ よ り,
運 動 学 的パ ラメー
ター
と して,
両
側支 持 期
の時 問率
と歩 幅
を床
反力 計
の足
圧中
心の デー
タ より計
算
して求
め,
歩 行
スピ
ー
ド はVICON
の デー
タ よ り,
質
量中
心の移 動 ス ピー
ド を求
め,
前
足部
のマー
カー
位 置
,
ド腿
の接 地 時
の角 度 も
VICON
のデー
タ より計
算
しそれぞ れ求
め た。歩 幅
,
前 足 部
の床
面か ら の最 大 距 離は,身
長差
を考 慮
し,身
長で徐
し た。
ま た,床
反力
の 鉛直 成
分 か ら 立脚
前
期
での第
1
ピー
ク値
と,
立脚
後
期
で の第2
ピー
ク値
を 抽 出 し た。
左 右方 向
成分
か ら そ れ ぞ れ の内
に向 か う
ピー
ク値 を抽 出 し
た。進 行 方 向 成 分
から
,
推 進 力
と制 動 力
の ピー
ク値 を抽 出 した
。
運 動 力 学 的
パ ラ メー
ター
とし て,足
関節 底
屈・
背
屈モー
メ ン ト,
股 関節
の川 曲
・
仲 歴
・
内 転
・
外 転
のモー
メ ン トのピー
クを
そ れ ぞれ 求
め た。
統 計 学 的 処
理 はShapiro
−
Wilk
検 定 を行
っ た後
,WilcOxion
符 号 付 順
f
立検
定
お よ び対
応の あ るt
検
定
を行
っts,
,
有 意 水 準
は5
% と し た。床 反 力
と各 関 節
モー
メ ン1
・
は,
被 験 者
20
人,
各
3
回全
て の歩 行
デー
タ より左 側
の踵 接 地 か ら
の1
歩 行 周 期 を
抽 出 し
た。遊 脚 期
と立脚 期 を分 け
て検 討 す
るた
め に,
各
周期
か ら 立 脚 期と遊 脚 期の割 合 を 算 出 し,
踵 接 地 とつ ま先
離
地の タ イ ミング が合
う様
に⊥歩
行
周 期
を 正規 化
し,
平 均
の グラ フを作
成 し た。
この実 験 は
,
新
潟 医療 福
祉大 学
の倫
理委 員
会の承 認
を得
た後
,
事 前
に研 究
の主旨
と実 験
に伴 う
リス ク を被 験 者
に十 分
に説
明 し,
書 面
で 同意
を得
た(
承認 番 号
院17008
)
。
結
果
運
動 学 的
パ ラメー
ター
と運 動 力 学 的
パ ラ メー
ター
の検
定 結 果
を表
1
に示 す
。
滑 路 面 歩 行
は 通常 面 歩 行
と比較
し て,
両側 支 持 期
の割 合
が大
きく
,
歩 行
ス ピー
ドは遅
かっ た。歩 幅
は狭 くな り
,
足 部
を より高 く
上げ
,
下 腿
を床 面
に対
し より
鉛直
に 近く
な る よう
に接
地 して い た。
ま た,
床 反 力 は,
鉛 直 成 分の第1
・
第2
ピー
ク,
推 進 力・
制 動力
の ピー
ク は有 意
に 小 さく
なっ ていた。
関 節
モー
メ ン ト は 股 関節
の屈
曲・
伸
展・
内 転
が有 意
に 大 き く な り,
股 関 節の外 転モー
メ ン ト,
足 関 節の底 屈モー
メ ン トが 有 意 に小
さく
なっ ていた。
図
1
は床 反 力
のデー
タを体 重
で正規 化
し た後
,
平 均
し て グ ラフ化
し たも
の である。鉛 直 成 分
と左 右
成分
は,
滑
路 面
歩行
では 通常
面 歩行
と 比較
して2
峰性
の ピー
ク値
が滑 り易い床 面 に お け る 滑 ら ない た めの歩行 様 式
301
表1 歩 行の諸 要 素 項目 通 常 両 歩 行 滑 路 面 歩 行 両 側 支持 期の時 間 率 (対 歩 行 周期 %)#b 歩 行スピー
ド (m /S )# 歩幅
(cm)
右 前 足 部マー
カー
の床 面か らの最 大 距 離 (mm )& 右下腿の接 地 角 度 (度)
&ll
.
3
±1
、
71
.
3
±0
.
252
ユ±5
.
311
ユ ±0
.
872
.
5±3
.
2
13.
1±221.
1
±0
、
247
、
3
±6
.
4 ⊥2
.
8
‡1
.
877
.
5
±4
.
6
** ** ** * * ** 右 床 反力 鉛 直 成 分 第1ピー
ク値 (体重 比 %) 第2
ピー
ク値 (体 重 比 % ) 左 右 成 分ピー
クfrl
冤 (体 重 比 % )推
進力
ピー
ク値 (
体
重 比 % )制 動 力ピ
ー
ク値 (体 重 比 %)右
足関節底
屈モー
メ ン トピー
ク値 (
Nm
)
背 屈モー
メ ン トピー
ク値 (Nm
) 右 股 関節 屈 曲モー
メ ン トピー
ク値 (Nm ) 仲 展モー
メ ン トピー
ク値 (Nm ) 内 転モー
メ ン トピー
ク値 (Nm
> 外 転モー
メ ン ト ピー
ク値 (Nm > 108,
6± 8.
3 99.
2± 4.
5 ** 107.
0
±4.
8
103.
0土4.
9 **2
.
6
±1
.
8
2
.
9
±0
.
8
20
,
4
±42
8
.
9
±2
.
3
** 韮9.
2± 4.
382
±1
.
8
* * 95.
9± 14.
492
.
5ゴ:13.
9
6、
6± 3.
26
.
7± 5.
7 49.
3± 9.
7 70.
1± 17.
5 ** 24.
7± 6.
2 52.
4± 159 ** 4.
7
± 2.
3
7.
0 ±2.
8 * *70
.
6
± 11.
2 64.
5 ± 10.
4 * * 左 床反力鉛直成分 第⊥ピー
ク値 (体重 比 %) 第2ピー
ク値 (体重 比 %) 左右 成 分ピー
ク値 (体 重比 %) 推 進 力ピー
ク値 (体 重 比 % ) 制 動 力ピー
ク値 (体 重 比 % ) 左 足 関 節 底 屈モー
メ ン ト ピー
ク値 (Nm ) 背屈モー
メン ト ピー
ク値 (Nm
) 左 股関節 屈 曲モー
メン ト ピー
ク値
(Nm
)伸
展モー
メン ト ピー
ク値 (
Nm
) 内転モー
メ ン ト ピー
ク値 (Nm
)外
転モー
メ ン トピー
ク値〔
Nm)
llL7 ± 9,
4 109.
8
± 6.
8 2.
9± L320,
8
±3
.
718
,
9
±3
,
8995
±12
.
6
9
.
3
±4
.
852
、
2± 12.
328
,
8
±5
,
7
5ユ± 2270.
3± ll.
1100
.
6
±4
.
6
* *105
.
7 ±6
.
1
* 3.
0 ± 1.
0 9.
7± 1,
7 **7
.
9
±L8
**95
.
2
±13
.
0
*7
、
1
±3
.
975
.
4± 15.
6 **58
.
1
±12
.
4
* * 6.
7± 2.
4 * 63.
6± 1.
1.
6 ** *’
p< 0,
05* * ;p<0
.
0ユ #’
WilcoxiOll符 号付 順 位 検 定 を行い,
それ 以外は対 応のあるt
検 定 を 行った.
b右踵接地 か ら左つ ま先 離 地 まで の 両側 支 持 期の時 間 率 を表 示 した
.
& ;左 踵 接 地 よ り測 定 開始のた め, 右 側のみ記 載 した,
〔体 重1:対 ず 強暢) 睾2
彝聯
鉛 直 臨 分60
糞0
20
0
−
i
紘
躍澎 毳両 億 支 葛 期一 黴
通 簫 函歩 行驚
蝿時・
言骨魎 歩 行 1:対轟 勁2
°麹
Jge
一
蕊 右 成 分
o
軈
馨
雛
囀
...
.
.
.
.
__… ..
一.
譲 麟
_
_ _ _
〔体 重 に対 ず る 輻 } 前 後 成 分o
.
20
e
2
爵 翻6e
80
讙广
oo
i齢 鰐 周 胴 く鶴) 図1 通常面歩 行と滑 路 面 歩 行での床反力の 違い被 験 者20入
,
各3回全て の歩 行デー
タ か ら左 側の踵 接 地か ら1
歩 行 周 期を抽出 し 体 重 により正 規 化 した,
遊 脚 期 と、Z
脚 期 を分 けて検 討 するため に,
各
周 期か ら立 脚 期と遊 脚 期の割 合 を算 出 し,
踵 接 地とつ ま先 離 地の タイミング が合 う様に1
歩 行 周 期を 正 規化し,
平均の グ ラ フを作 成し た,
302
理 学 療法tl 第36巻第6
号低 くな り第
1
と第
2
ピー
ク の間
の谷
は高 くな
っ て いた。図
2
はド肢
の関 節
モー
メ ント
のデー
タを平 均 し
て グ ラ フ化
し たも
の であ
る。 踵接 地 直 後
に膝 関節
の屈 曲
モー
メ ン トを維 持
しつ つ,
股 関 節
の伸 展
モー
メ ン トを大 き く発
揮
さ せ ていた。
立脚 後 期
でも膝
の伸 展
モー
メン トと股
関節 屈
曲モー
メ ン ト を 大 きく発 揮
さ せていた。
特
に 股関 節
の堀 山
い伸 展
モー
メ ン トは通 常 面 歩 行
と 比較
して立脚 期
全 般
で より強
い モー
メ ントを 発揮 し
てい た 。左 右
の股 関節
モー
メ ン トを 図
3
に示 す
。
通 常 面 歩 行
で は反 対 側
の踵 接 地
から伸 展
モー
メ ン トが減 少 す
るの に対
し, 滑路
面歩 行
で は減 少 す
る タ イ ミング が 遅く
な り,屈
曲 と伸 展
両方
のモー
メン トが 両 側支 持 期 内
に ピー
クを
む か えていた。
katsPteqv 審 騨
脚
韓一
・
t.
t−一
・
−
Zlv9?
夢
墨、 羈驪 綬 織欝 騰
,鷲
嘆
1
雛
ま
e だタ。
鬘
騰
織
論
鱗
細 驪曲一
一
一一
く籌 梦 。
華
灘
鄲
・
・
,
ポザ・
,
.
問 側 支持期一
通 常 闘 歩 行 n・
・
・
…”
・
・
滑 絡 面 歩 行 驟 飃 節 屈 曲・
f甲展モー
メ ン ト曙 野 ミ 畷t} 羅 齢・
.
野釀 黌騨蟹鯉 黶 説 諏脚嘸
〕谿
嘩
5
・鷲
駕
難 股開 節 屈 曲・
伸 展 モー
メン トー
pee.
4聰 歙 巽脾
・
鄲
鱗
嚇
購礁
鵡 篝 瑠 縄 鸞.
鎮 趣’
’
嬲 罍聯’
藩丁
嚼辞
蝋
牌
一
轟
罹
…席
漏
席
t.
.
t
凧}疆
,内
…
∴ド
〜内 刪
翫
1歩 得 周 朋(M) 図2 通 常 面 歩 行と滑 路 面 歩 行で の各 関 節モー
メン トの違い 被 験K−
20
人,
各3
回 全ての歩 行デー
タか ら左 側の踵 接 地 か ら1歩 行 周 期 を抽 出 し た.
遊 脚期 と立脚 期 を分 けて検 討 する た め に,
各 周 期から立 脚 期と遊 脚 期の割 合 を 算 出し,
踵 接地 とつ ま先 離地のタ イ ミング が合 う様に1
歩 行 周 期 を正 規 化 し,
平 均 のグ ラフ を作
成 し た.
1
鰍
濁 通 常 面 歩 行 o.
2G49 毛 蠡 著 奪
D 2ξ} 輿藤 60 瓣 聞蟹 } 〔
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’
憩 2〔誹 滑 歴言面 歩 行 靂拇
.
鱒騰
一
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”
『
罵
脳
8G
觀
1歩行周 明 (矯} 図3 股 関 節 屈 曲・
伸 展モー
メ ントの ピー
ク 時 期 モー
メ ン トは,
被 験 者20人,
各3回全て の歩 行デー
タ か ら 左 側の踵 接 地 か ら]歩 行 周 期 を抽 出 した.
遊 脚 期と立脚 期を分 けて検 討 する た め に,
各
周 期か ら立脚期と 遊 脚 期の割 合 を算 出し,
踵接 地とつ ま先離地 の タ イ ミング が合う様
に1
歩 行 周 期 を 正 規化し,
平 均のグラ フを作成 し た,
最初の両 側支 持 期の右 側モー
メ ン トは,
床 反 力 計 を 踏 ん でい ない た め に 計 算 さ れ てい ない.
滑 り易い 床面 に おける滑らないための歩 行 様 式
303
考
察
滑 路 面 歩 行
は,
滑
ら ない よう
に様
々 な身体 機 能
を使
っ てい る。同
・
人 物
が歩 行
した場 合
,
RCOF
を減 少
さ せ る に は床 反 力
の水
’
ド
成分
を減 少
さ せ なけ
れ ば な らず
,
先
行
研 究
でも様
々な 戦 略 を 報 告
して い るuLockhart4 〕は,
滑 路 而 歩 行
で,
歩 幅
の調 整 を報 告 し
,
高 井 ら
6)は,
滑
り易
い床
面の ヒ で,
足 部
と床 面
との接 地 角 度
が有 意
に小
さく
な る と報 告
し てい るttAsaka
ら 5)も , 滑 り易い床
面
上で の歩
き 出 しで,
足を 高 く
上 げ る傾
向
を報告
して い る。
今
回,
我
々の研 究で も,
同様
の戦 略 が確
認 さ れ た(
表
1
>
。歩 行
の床
反力
の垂直 成 分
と左右 成 分
は通 常
21
峰性
と な る(
図1
)
。
本
研究
に おい て,
滑 路 面 歩 行
で の垂 直 成 分
と左 右 成 分
の2
峰 性
は ピー
ク が低 く な り
,
谷
が高 く推 移
してい る。
これ は,
床 反 力 が 最 も 不 安 定 と な る 踵 接 地 時 の影 響
を最 小 限
にす
る戦 略
を とっ て い る と考
え ら れ る。
ま
た,
薩後 成 分
で も前 方
・
後 方
の両 ノ
i
向
へ の反 力
,
つま
り
,
推 進 力
と制 動 力
が 通常 面歩 行
に比べ小
さく
なっ ていた
。 これ は,
歩 行 時
のRCOF
の減 少
に大 き く 関 与 し
て い る。
推 進 力 を少 な くす
る ことで制 動 力 を小
さく
し踵接
地 期 での 進行 方 向
へ の滑 り を 防いでい る もの と考
え ら れ る。
前
方
へ の推
進力
を減 少
さ せ る た め に は ,踵
接
地の前
に 反対
側 下 肢で の推進 力
の 調整
が 働いて い る と考
え ら れ る。推 進 力
の調 整
は,
図
2
の各 関 節
モー
メ ン トを見
る限
り足 関節
モー
メ ン トの影 響
に は差 異
が み ら れず
,
主に膝
関 節
と股 関 節
モー
メ ン ト で の調 整
と考 え
られる。支 持
側 の立 脚 後 期
で は,股 関節 屈 曲
モー
メ ントと
,膝 関 節 伸
展
モー
メ ン トの値
が大 き く
なっ ていること と,
振 りIPI
し側 の 踵 接 地 時で の股 関 節 仰 展モー
メ ン トが 同 じ よ う に増
大 しているこ との相
.
凧作
用で,
両 側 支持 期
に 左右
の下 肢
で酊後
に挟
み込
むよう
に機 能
して,
そ れ ぞれ の モー
メ ン ト を さ らに大
きく
発揮
さ せてい ると考
え ら れる、
t こ の こ と は,
RCOF
を減 少 さ
せるた めに床 反 力
の推 進 力
と制 動 力
を
より小
さく
し な け れ ばな らず
,
その為
に股
関節
で は 屈曲
と仲
展に は大
き な 関節
モー
メ ン トが 必 要とな るこ とを意 味
す る。一
般 的 に 推進 力
と 制動 力
を 小 さくす
る た め に は関 節
モー
メ ン ト を小
さ く し なけ
れ ば な ら ない と考
え が ち だ が,
今 回
の結 果
より実 際
は反 対
の解 釈
とな り
,
推 進
力
と制 動 力
を小 さ くす
る た め に関 節
モー
メ ントを大 き く
し なけ
れ ば ならない こ と を示
した。 こ の ことは 以 ドの よう
に理解
でき
る。 図4
左
は通 常 面 歩 行
の立脚 期
の床
反力
で あ る。
床
反力 作 用 線
は 股関 節
の近 傍
を通 過
してい る。 つ ま り は 股 関節
の屈
曲 と 伸 展モー
メ ン トが 小 さい こ と を 意味
し てい る、
図
4
右
は滑
路面 歩 行
の床 反 力
であ
る。床
反力
f
乍
用線
は 股 関 節 軸 か ら 離 れ ている。
これ は 股関節
の モー
メ ン トが 大 きい こ と を 意 味 してい る。
す な わ ち,
推進 力
と制 動 力
を減 少
させ るた め に 股関 節
モー
メ ン トを大
鋤
/
廴
瀞凶
」
盞
一
蠶
靈
喚一
一….
一
一
L− 一
一一一
.
L−一
.
一
一
.
一
一
一一
野一
一一
一
一一
劉一一
一・
遍一
一一
図4
両 側 支 持 期の ステ ィッ ク ピ ク チャー
通 常 面 歩 行の両 側 支 持 期の床 反 力 作 用 線は
,
左 右 それ ぞ れ股 関 節 軸 に 向 かっ てい る,
滑路 面 歩行の 床 反 力 作 用 線 は,
矢 印 に 示し た様に 股関 節 軸か ら左右そ れ ぞ れ 離 れ た と こ ろ を 通 過 し て,
鉛 直に近 くなっ て いる.
き く発 揮
さ せ,
床 反 力 作 用 線
の角 度 を よ り鉛 直
に近
い角
度で保
持 す る 戦 略 が 使 わ れ てい る。
今
回の 研 究でRCOF
を 小 さく
で き る要 因
の ひ とつ を新
た に確 認
で き た。
加 齢
に伴
い筋 丿
J
が低 ドす
る高 齢
者
は,
股 関節 屈 曲
・
伸
展
モー
メ ン ト を 十分
に発 揮
で き ないた めに滑 路 床 歩 行
の際
,
推 進 力 と制 動 力 を小 さ く
できず
,RCOF
を減 少 さ
せ る こと が困 難
であ
る可 能性
が考 え られ
る。
この こと
から
,
高 齢 者の滑 り
に よ る転 倒 予
防の1
つ と し て,
股関 節
の屈
山 と伸
展
筋力
の強 化
が 重要
で あ ることが示 峻
さ れ た。
結
論
今 回
,
通 常 面 歩 行
と滑 り易
い床 面
をな
るべく滑
らな
い よう
に努 力
した ときの歩 行
の 異差 を
ド肢
に沁
目 して計
測 した
,
,
そ の結
果, 股関
節
の屈 曲 と伸 展
モー
メ ン トを増
加
さ せ,
この こ と に より 制 動 力
と推 進 力
を減
少 さ せ てRCOF
を減
少 さ せていた。
謝 辞
:本 論 文
をま
とめ る にあ
たり
,
ご協力 頂 き
ま した新
潟 医 療 福 祉 大 学
の戸出 朋 子 准 教 授
に感 謝 致
しま す
。文 献
1
)五 [』
嵐三都 男 :高齢者
の転倒
骨 折の背景
と整形外科
的 治 療.
理 学療 法ジャ
ー
ナ ル.
⊥998;32:155−
158.
2
)
大渕 修一
:転 倒 予 防と運 動 療 法,
痛み と臨 床.
2004:・
{: 178184,
3
)PcrkinsPJ
,
Wilson
MP
:Slip
resistancetesting
of shocsnew developmcn {s
.
Ergonomics.
/983
;26:73
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Elderly
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Factors
and
Ergonomics
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,
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−
129.
5)Asaka
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,
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,
et al.
:Relationship
between
the
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fricUon
and gaitinitiation
ヱn yc)u119adults on a [ow friction flo〔)r
.
J
Phys Ther Sci.
2002;1生 33−
39.
6
)
高 井逸史,
宮 野 道 雄,
他 :加 齢に よ る姿 勢 変 化と姿 勢 制 御.
口 本 生 理 人 類学 会 誌.
2001;6:11−
16.
304
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ng36kee6-ny
<Abstract>
Gait
Strategy
to
Avoid
Slipping
onSlippery
Floer
Surfaces
Teruyuki
NAGAOKA,
RPT,
MS,
Hiroyuki
SEKINE,
RPT,
MS
Dqpartment
ofRehabilitation,
Niigata
Rehabilitation
Hbspital
Yoshihiro
EHARA,
PhD
Department
of
Prostheties
&
Orthotics
andAssistive
71echnolcrg),,
Niigata
V}ziversity
ofHbalth
and