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更年期症状で婦人科を受診している女性の体験

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Academic year: 2021

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日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 29, No. 1, 59-68, 2015

*1春日井市民病院(Kasugai Municipal Hospital) *2亀田医療大学(Kameda College of Health Sciences) *3愛知県立大学(Aichi Prefectural University) *4創価大学(Soka University)

2014年3月14日受付 2015年3月2日採用

資  料

更年期症状で婦人科を受診している女性の体験

Experiences of women who consult a gynecologist

for menopausal symptoms

横 地 美 那(Mina YOKOCHI)

*1

恵美須 文 枝(Fumie EMISU)

*2

柳 澤 理 子(Satoko YANAGISAWA)

*3

志 村 千鶴子(Chizuko SHIMURA)

*4 抄  録 目 的  更年期症状で婦人科を受診した女性の体験を記述する。 対象と方法  研究デザインは,質的記述的研究とした。A県内のAクリニックを受診している更年期症状を持つ女 性10名に,症状自覚から受診にまつわる体験について,60分程度の半構成的面接を実施した。分析方法 は,逐語録を用いて体験内容の類似性と相違性,関連性に従って分類し,コードを抽出して,更に抽象 度を上げてサブカテゴリーとした。それを分類して7つのカテゴリーを生成した。 結 果  更年期症状で婦人科を受診している女性の体験は,カテゴリーの関連から以下のように説明できる。 女性は,【婦人科受診や更年期にためらいつつ他者の影響を受ける】。更に【自分ではどうしようもな い状況に取り囲まれる】に陥る。そして【日々,症状に翻弄されながら,突破口が見つからず悶々とす る】という状況になる。それはやがて,【婦人科を受診できない状況・受診したくない気持ちを乗り越え, 受診に踏み切る】になる。そして婦人科を【受診してよかったが,治療に対する懸念を抱く】という状況 を経て,【更年期を受け入れ,経験を生かす】にたどり着いていた。更に悶々と過ごす日々の中で【辛さ を分かち合える理解者を求める】という気持ちを抱く。 結 論  更年期女性は,更年期と自覚したのち,様々な感情と葛藤しながらも受診に至る。しかし,更年期医 療を享受して症状が楽になっても,なお治療に対する懸念を抱き,症状の辛さを理解してくれる相手を 求めている実態が見えてきた。 キーワード:更年期症状,更年期女性,婦人科受診,受診体験

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The purpose of this study was to describe the experiences of women who consult a gynecologist for menopaus-al symptoms.

Methods

The study used both qualitative and descriptive research designs. Ten women with menopausal symptoms who visited Clinic A in Prefecture A participated in approximately 1-hour-long semi-structured interviews regarding their experiences from the onset of subjective symptoms until consultation. For analysis, their experiences were classi-fied by similarities, differences, and connections using a verbatim record to identify codes that were then placed into more abstract subcategories. These were then grouped into seven categories.

Results

Experiences of women who consulted a gynecologist for menopausal symptoms can be described as follows. Women "affected by others while hesitated to engage in a gynecology consultation regarding the menopause." Thus, they feel that they are "surrounded by situations they cannot control on their own" and begin to "agonize about be-ing at the mercy of their symptoms day after day without hope of reprieve." They eventually "overcome situations or feelings that they cannot or do not want to discuss with a gynecologist," They see a gynecologist and their "symp-toms diminish, but concerns about treatment remain." They then begin to "accept menopause and change their way of thinking." In addition, throughout the duration of their agony, they "seek others that share their pain."

Conclusions

After becoming aware that they have started menopause; women, burdened with various conflicts, consult with a gynecologist. However, despite recognizing the symptoms that accompany their aging, regardless if those symp-toms diminish with menopause treatment, they continue to worry about treatment and seek counsel from others in order to gain understanding of the distress created by their symptoms.

Keywords: menopausal symptoms, menopausal women, gynecologist consultation, consultation experiences

Ⅰ.緒   言

 加齢に伴う女性の身体・精神機能の変化が最も著明 に現れるのは,閉経を中心とした更年期である。しか し,更年期の女性は心身の変調を感じるものの,それ が更年期症状であるという自覚はあいまいであり,更 年期の健康に関する情報源は,「友人・知人」「マスメ ディア」が多くを占め,医療者から情報を得ている女 性は少ない。従って,女性は入手した間違った情報で 自分の症状を判断している可能性もある(宮本・岩崎 ・細貝他,2002, pp.53-54;上田,2008, p.61;吉留・江 月・後藤他,2003, p.305)。  症状出現時の対処法のひとつとして「医療機関を受 診すること」が考えられるが,更年期女性は婦人科受 診に対して,羞恥心や心理的抵抗があるため,婦人科 治療が必要な場合でも様々な他の診療科を受診し,適 切な時期に婦人科を受診出来ていないことが指摘され ている(佐藤・竹ノ上・堀口,2004, pp.20-23)。  またこれまでの研究では,婦人科を受診していない 女性の心身の変化とその対処法についての報告(飯岡, 2010)はあるものの,更年期症状で婦人科を受診した 女性の気持ちの揺れ動きや受診動機についての詳細な 報告は見当たらない。症状があるにもかかわらず受診 をためらう背景や経過には,何があるのだろうか。そ こで本研究では,更年期症状を主訴として婦人科を受 診した女性の体験を記述することとした。

Ⅱ.用語の定義

更年期女性:生殖期reproductive stageから非生殖期 nonreproductive stageへの移行期にある女性で,日 本産婦人科学会(2003, p.182)の規定による45∼55 歳の女性とした。 更年期症状:婦人科を受診した女性自身が更年期症状 であると自覚した身体的感覚すべてと,自覚がなく ても医師より更年期症状との指摘があったと女性が 言語で表現した症状とした。

Ⅲ.研 究 方 法

1.研究デザイン  本研究では更年期女性の体験を記述することを目的 とするため,質的記述的研究デザインとした。

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更年期症状で婦人科を受診している女性の体験 2.研究参加者への依頼方法  研究参加者のリクルートは,更年期医療を標榜した 婦人科診療所に協力を依頼し承諾を得た後,施設長よ り研究参加者の紹介を受けた。参加者として紹介され た方には,外来受診終了後に研究者より研究の趣旨を 文書と口頭にて説明し,施設長の強制力が影響しない よう参加の自由と拒否による不利益の生じないことを 伝えた。また,研究参加者は更年期症状で婦人科を受 診した人で,日本語の会話が可能であり,症状が重篤 ではなく,既往歴・現病歴に精神疾患等がない女性と した。 3.データ収集方法  データ収集は2011年7月∼9月とし,1名の研究者が 全ての研究参加者に対して,参加者が希望した日時 に60分程度の半構成的インタビューをプライバシー が護れる診療所の個室で実施した。60分を超える場合 は相手の確認のもとに継続した。インタビュー内容は, ①研究参加者の背景(年齢,職業,家族構成,既往歴, 現病歴,現在の体調,初めて婦人科を受診した時期), ②婦人科を受診するきっかけとなった症状,③なぜ婦 人科を受診しようと思ったか,④体験を振り返って他 の女性へ伝えたいことについて,自由に語ってもらっ た。許可が得られた場合は,インタビュー内容をIC レコーダーに録音した。 4.分析方法  まず,逐語録を繰り返し読み,全体の文脈を正しく 把握できるように努力した。そして,更年期症状に気 づいて婦人科を受診した女性の体験に着眼して,意味 のある文節で区切り第一段階のコードとした。次に, それを類似性と相違性,関連性に従って分類・要約し て,第二段階のコード化とした。さらに,各コード間 の比較を行いながらグループを作り,グループごとに 最も意味をよく表すと考えられる名前を付けて第三段 階のコードを抽出した。それを更に抽象度を上げてサ ブカテゴリー・カテゴリーを生成した。結果の確証性 を確保するため,3名の質的研究専門家のスーパーバ イズを受け,研究参加者2名のメンバーチェッキング を受けて確実性を確保した。 5.倫理的配慮  本研究は愛知県立大学研究倫理審査委員会の審査を 受け(22愛県大管理第2-41号),協力を得た施設責任 者より,大学の倫理審査を代用する旨の承認を得て 行った。研究参加は,対象となる方の自由意志により, 撤回または中止によっても不利益が生じないこと,イ ンタビューの質問内容について話したくないことは話 さなくてもよいこと,得られたデータは個人及び施設 が特定できないよう匿名化することを保証して,同意 書に署名を得たうえで実施した。データはコード表を 用いて取り扱い,鍵のかかる場所に保管した。

Ⅳ.結   果

1.研究参加者の概要  研究参加者は10名で,インタビュー時の平均年齢 は50.5歳(47∼55歳)で,職業はパート勤務が6名,専 業主婦・自営業が各2名であり,全員が既婚者であっ た。更年期症状は,めまい・発汗・のぼせ・ほてり・ 動悸・脱力感・不眠など一人が2つ以上の症状を併せ 持っていた。症状が気になりだしてから,婦人科を受 診するまでの期間は,最短1ヶ月以内,最長2年であ った。治療内容は,ホルモン補充療法(漢方薬との併 用も含む)9名,漢方薬1名で,治療期間は,1週間∼1 年1ヶ月であった。 2.更年期症状で婦人科を受診した女性の体験(表1)  更年期女性の語りから7つのカテゴリーと18のサブ カテゴリー,51のコードが抽出された。以下,カテゴ リーは【 】,サブカテゴリーは[ ],コードは《 》,研 究参加者の語りは「 」で,さらにその語りの中での第 三者の語りは『 』でそれらの内容を示す。 1 ) 【婦人科受診や更年期にためらいつつ他者からの 影響を受ける】  このカテゴリーは,婦人科受診や更年期に関する考 え方が女性個人の経験や身近な人によって影響を受け ることが示された。  このうちの[経験や先入観から婦人科受診をためら う]では,研究参加者が子宮がん検診で産婦人科を受 診した際,《待合室で妊婦と一緒になる居心地の悪さ と内診への抵抗感から受診をためらう》といった女性 自身の経験や先入観が示された。事例Eでは,「婦人 科にかかるのは,妊娠したときってイメージがあった ので,みんな妊婦さんで,子宮がん検診行ってもなん か,2人ぐらいわたしたちの年代の人がいて,場違い みたいなかんじ」と待合室で妊婦と一緒になる居心地 の悪さを語った。

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 また,〔身近な女性から更年期や婦人科受診のとら え方に影響を受ける〕では,身近な実母や実姉などが 更年期や他の病と闘っていた姿を自分に重ね,心配し て積極的に健康維持に取り組む様子や,身近な友人や 親の経験を見たり聞いたりしながら,《婦人科受診に 抵抗があったが,話を聞いて積極的に受診するように なる》こともあり,更年期に関する情報を入手してい ることが示された。 2 ) 【自分ではどうしようもない状況に取り囲まれる】  更年期女性は[家族それぞれが人生の節目を迎え, 自分の体を気にかけていられない]状況の中で,[医療 機関との物理的条件の不一致から受診をためらう]状 態があり,【自分ではどうしようもない状況に取り囲 まれる】体験をしていることが示された。 1. 婦人科受診や更年 期にためらいつつ 他者からの影響を 受ける 経験や先入観から婦人科受診をた めらう ・受診時に妊婦と一緒になる居心地の悪さと,内診への抵抗感から受診をためらう ・更年期は自分でコントロールし,我慢するものであると思う ・婦人科受診に抵抗はないが,よほどのことがなければ受診はしない 身近な女性から更年期や婦人科受 診のとらえ方に影響を受ける ・身近な女性から,主な更年期症状や対処方法を知る・婦人科受診に抵抗があったが,話を聞いて積極的に受診するようになる 2. 自分ではどうしよ うもない状況に取 り囲まれる 医療機関との物理的条件の不一致 から受診をためらう ・自宅からの距離・診療時間等の物理的条件が合わず,希望する医療機関を受診出来ない・自宅からの距離・診療時間等の物理的条件が合わず,受診が継続できない 家族それぞれが人生の節目を迎え, 自分の体を気にかけていられない ・受験生を抱え,気持ちが落ち着かない・両親や愛犬の介護・死を迎え,自分のからだを気にかけていられない 3. 日々,症状に翻弄 されながら,突破 口 が 見 つ か ら ず 悶々とする 体の違和感に気づき,原因の見当 をつけるが,はっきりしない ・自分自身の経験から,原因の見当をつける ・他者と自分の症状を比較し,合致すると更年期,合致しないと病気と思う ・原因が思い当たらず,年齢から更年期を考える ・老いの現実に直面したくないため,更年期ではないと思いこむ ・月経周期の変動から,更年期を考え始める ・症状について集めた情報から,更年期と気づく ・更年期ではないかと,友人やかかりつけ医から指摘される 症状に合わせて,自分にあった対 処法を模索する ・症状に合わせて市販薬をいろいろ試すが改善しない ・かかりつけ医に相談し,異常がないことがわかり安心する ・身近な人のサポートを得て乗り切ろうと,気持ちを切り替える 日々,症状の変動に翻弄され,受 診への踏ん切りがつかない ・症状に慣れ,我慢するのが当たり前となる ・日々症状に波があり,自分では受診への踏ん切りがつかない ・体力も気力もなく,受診することさえ負担となる 受診しても自分の状態を受け止め てもらえずさまよい続ける ・症状に合わせて医療機関を受診するものの,症状が改善されずさまよう・医療者に気持ちを受け止めてもらえず,見通しが立たないことの不安を抱える 4. 辛さを分かち合え る理解者を求める 辛さを分かち合える仲間を求める ・症状の辛さを家族や友人・医療者にわかってもらいたい・同年代で同じように苦労した女性の共感を得たい 5. 婦人科を受診でき ない状況・受診し たくない気持ちを 乗り越えて受診に 踏み切る 症状の増悪に伴い,なんとかした い気持ちが高まる ・「もっと楽になりたい」や「原因をはっきりさせたい」という気持ちが強くなる ・自分ではどうしようもない切羽詰まった状態となる ・自分が寝こむわけに行かず,早く活力を取戻す必要性を感じる 受診環境が整い,受診に踏み切る ・家族のことに縛られていた状況が好転する ・女医の存在を知り,婦人科受診に踏み切る ・ホルモン補充療法の存在を知り,期待する ・更年期の専門家がいるという安心感 子宮がん検診が突破口となる ・子宮がん検診等で,医師の様子を窺う・子宮がん検診のついでに更年期の相談をするきっかけをつかむ 身近な人や医師からのサポートが, 受診を後押しする ・一歩踏み出す力となる医療者や友人からの後押しに出会う・友人や同年代の女性が多く受診している安心感 受診することで気持ちがスッキリ する ・医師が自分の理解者だと感じる ・医師から説明を受け,ホルモン補充療法に対する不安が和らぐ ・検査結果から更年期だとわかり,スッキリする 6. 受診してよかった が,治療に対する 懸念を抱く 症状が楽になり,もっと早く受診 したかったと思う ・信じられないくらい体が軽くなり,スッキリする ・症状が全くなくなるわけではないが,和らぐ ・もっと早く更年期と気付き,受診したかったと思う ホルモン補充療法に懸念を抱く ・確かな情報がなく,ホルモン補充療法になじめない・人とは違うホルモン補充療法を受けるという孤独を感じる ・ホルモン補充療法をいつまで続ければ良いかを心配する 7. 更年期を受け入れ, 経験を生かす 症状に折り合いをつけながら,客 観的に更年期をとらえなおす ・症状に合わせて無理をせず,自分のペースを大切にする ・病気が潜んでいる可能性もあり,すべて更年期で片付けてはいけないと用心する ・歳相応の美しさを考えるきっかけになるのが更年期だと思いたい 自分の体験を生かして,後に続く 女性のことを考える ・身近な女性に更年期についての知見を広める・女性自身が更年期と気づくための更年期に関する情報の普及を願う

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更年期症状で婦人科を受診している女性の体験  このうち,[医療機関との物理的条件の不一致から 受診をためらう]では,きっと更年期だろうと見当を つけながらも,受診を考えたが婦人科が遠くて受診を 諦めていたり,自宅から遠い婦人科を受診し,症状は 落ち着いたものの毎回の受診継続に苦労している状況 が示された。事例Fは「ホントはすぐ(病院)変えれば よかったんだろうけど,その体力がないというか,気 力がないというか,やっぱり遠いのがあって」と語っ た。  また,[家族それぞれが人生の節目を迎え,自分の 体を気にかけていられない]では,更年期女性がこれ まで経験したことのない症状や複数の症状が同時に起 こることに戸惑いながらも,介護や子どもの受験など 家族のことに縛られて,自分の体を気にかけていられ ない状況が示された。事例Jは「歳がそういうのにな りますよね,子どもが大きくなってきてとか,受験だ とか,全部そういう絡んだ頃に自分が具合悪くなって きたのを抑えて,いらいらしたりだとか……寝こむこ ともできない」と語った。 3 ) 【日々,症状に翻弄されながら,突破口が見つか らず悶々とする】  このカテゴリーでは,更年期女性は[体の違和感に 気づき,原因の見当をつけるが,はっきりしない]か ら[症状に合わせて,自分にあった対処法を模索する] という体験をする。そして,[日々,症状の変動に翻 弄され,受診への踏ん切りがつかない]状況から医療 機関を[受診しても自分の状態を受け止めてもらえず さまよい続ける]という実態が示された。  このうち,[受診しても自分の状態を受け止めても らえずさまよい続ける]では,症状が身近な対処だけ では解決せず,自分なりに原因の見当をつけて病院を 受診するものの,症状の原因がわからず,医療機関受 診後もどうしたらよいかわからず迷う状況が示された。  また,医療機関を受診した際に,医療者に気持ちを 受け止めてもらえない体験も表出された。事例Aは「手 のしびれが更年期とはわからなかったので,整形外科 に行って,MRIも撮ったんですけど,異常はない。(中 略)ま,整形外科の先生も『これぐらい大したことな い』と。『もっとひどい人がいる』って言われると『そ うなのかな』って,それ以上言えませんから。『まぁ, 我慢して下さい』っちゅう,とりあえず気休めにビタ ミン剤ですか?を出されましたけど,まあ効くわけは ないですよねぇ」と語った。 4 ) 【辛さを分かち合える理解者を求める】  このカテゴリーは,家族や友人,かかりつけ医に相 談を持ちかけても,症状の辛さをわかってもらえな いことがあり,《同年代で同じように苦労した女性の 共感を得たい》と理解者を求める気持ちを示していた。 事例Iは「うち,姉もいないし,母を早く亡くしてる。 早くってこともないんだけど,もぅいないから,聞け ないでしょ。で,主人のお母さんは『わたし更年期な かったの!』で終わっちゃったわけ。その症状見れば, 怠け病に……(思われてしまう)っていうか。(中略) だから,我慢して夕飯作ったりだとか∼」と語った。  事例Gは「男の先生でも知識は持ってらっしゃると 思いますけど,ご自身で,そういう気持ちは分かって はもらえないですよね。そうだと,やっぱり女の先生 がいいかなってで,若い先生よりも,やっぱりそれな りの年齢の方(先生)の方が,分かってもらえるかな ぁっていう。う∼ん……知識よりも体験ですね。(笑 う)更年期の症状って,自分でもこれっていうふうに 決められるものでもないもので,人にも分かってもら いにくいし……」と語った。 5 ) 【婦人科を受診できない状況・受診したくない気 持ちを乗り越えて受診に踏み切る】  このカテゴリーは,症状の増悪に伴い,なんとかし たい気持ちが高まったり,受診したい気持ちがあるも のの婦人科受診をためらっていたが,ためらう理由が 改善・好転したり,更年期とは考えたことがなかった が,医療者や友人の勧めから,婦人科受診に至り,気 持ちがスッキリする体験をしていることが示された。 このうち,[子宮がん検診が突破口となる]では,更年 期症状で婦人科受診をすることをためらっていた女性 が,子宮がん検診の際に医師へ相談ができそうかを伺 う実態として,事例J は,「もう,ぐずぐず漢方薬飲ん でても,即効性がなくって,まぁとりあえずそこ(ホ ルモン補充療法を行なっている婦人科)で,がん検診 やってもらって,それは主人が提案してくれたんだけ ど,『どっちみちがん検診もあるんだから,そこで診 てもらって,ホルモン療法がどういうものか,一回聞 いてみればいいじゃん』って言ってくれて……」と語 っていた。また事例Jは「やっぱり,(病院に)来れな い人もいっぱいいますよ,私の周りにもいます。やっ ぱり来てよかったって思いますね。やっぱり,(症状 のことを)話せる,で,理解者っていうんですか?先 生が理解者だから,いろいろこう『今回はどうでした か?』って(先生が)言ったときに,『朝はすっきり起

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うな感じで,だから,わかってくれるっていうかね」 と語っていた。 6 ) 【受診してよかったが,治療に対する懸念を抱く】  このカテゴリーは,婦人科を受診しひとまず症状は 落ち着いたものの,ホルモン補充療法の副作用に対す る不安や,まわりに同じ経験をしている人のいない孤 独感や治療がいつまで続くのかといった将来への不 安は残る様子が示された。このうち[症状が楽になり, もっと早く受診したかったと思う]では,婦人科を受 診し治療を開始したことで症状が軽快し もっと早く 受診したかった と思う体験を示している。  一方,[ホルモン補充療法に懸念を抱く]では,婦人 科を受診し,治療を開始したことで症状は軽快したが, 治療を受けている自分は特殊であると感じたり,治療 の副作用について心配したりと,症状が軽快してもな お不安が残ることが表出された。事例Eは「(ホルモン 治療は)あんまり浸透してないですもんね(周りに)い ないんですよね。そういう治療を受けたって,話を 聞いたことがないので,身近なところでは。だから, ちょっと(自分は)変わったことをしてるのかなって, 思いはあるんだけどどうなんだろうねぇ。なんだかわ からない世界ですよね」と語った。 7 ) 【更年期を受け入れ,経験を生かす】  このカテゴリーは,更年期を受け入れ,自分のペー スを大切にしながら,自分の体験を生かして,後に続 く女性のことを考える更年期女性の姿を示していた。 このうち,[症状に折り合いをつけながら,客観的に 更年期をとらえなおす]では,これまで更年期に対し て抵抗感があったり,更年期はとにかく熱いことや天 井が回ることと思い込んでいた女性が,症状を受け入 れながら日々自分のペースを大切に過ごし,すべて更 年期で片付けてはいけないと危機感を持つことが表出 された。  事例Cは「最近は,無理しないで,若い人と同じこ とは絶対できないんだから,いろんな意味において ペースダウンをしてます。楽なんですよ,気持ちに余 裕があるし」と語っていた。事例Dは「友達としゃべ ってると,ちょうどこの40,50くらいになってくると, 全部なんでも更年期のせいにする。風邪引いても更年 期みたいな。ちょっと具合悪くても『更年期じゃない の』みたいな。なんでも更年期みたいな……,全部更 年期になっちゃう。ちょっと体調悪いと更年期。何で ってもいけないし……」と語った。  また,[自分の体験を活かして,後に続く女性のこ とを考える]のサブカテゴリーでは,自分の体験を娘 や身近な女性に生かしてもらうため,話したり,更年 期の話題が普通に話せる社会になるように願って,娘 にも隠さず話すようにしているなど,更年期を体験し た女性たちが,後に続く女性のことを考え,身近な人 に働きかけている様子が示された。 3.更年期症状で婦人科を受診した女性の経過(図1)  更年期症状で婦人科を受診した女性の体験は,7つ のカテゴリーを関連付けて以下のようなストーリーラ インとして説明できる。  更年期症状を持つ女性は,[経験や先入観から婦人 科受診をためらう]気持ちを抱き,[身近な女性から更 年期や婦人科受診のとらえ方に影響を受ける]体験を し,【婦人科受診や更年期にためらいつつ他者からの 影響を受ける】。同時に更年期には,子どもの受験や 親の介護など[家族それぞれが人生の節目を迎え,自 分の体を気にかけていられない]状況の中で,更年期 治療を行なっている医療機関が近隣にない等の[医療 機関との物理的条件の不一致から受診をためらう]状 態があり,【自分ではどうしようもない状況に取り囲 まれる】状況に陥る。そして,女性は[体の違和感に 気づき,原因の見当をつけるがはっきりしない]状況 から,[症状に合わせて,自分にあった対処法を模索 する]という体験をし,[日々,症状の変動に翻弄され, 受診への踏ん切りがつかない]という状態に置かれる。 そしてさらに,[受診しても自分の状態を受け止めて もらえずさまよい続ける]という【日々,症状に翻弄 されながら,突破口が見つからず悶々とする】となっ てしまう。その状況下で,女性は【辛さを分かち合え る理解者を求める】気持ちを抱いていた。そしてやが て,[症状の増悪に伴い,なんとかしたい気持ちが高 まる]状態になり,[受診環境が整い受診に踏み切る] 体験となったり,[子宮がん検診が突破口となる]こと や[身近な人や医師からのサポートが,受診を後押し する]ことで,【婦人科を受診できない状況・受診した くない気持ちを乗り越えて受診に踏み切る】。そして, [受診することで気持ちがスッキリする]に至り,そ して,治療によって[症状が楽になり,もっと早く受 診したかったと思う]や[ホルモン補充療法に懸念を

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更年期症状で婦人科を受診している女性の体験 抱く]という気持ちから,【受診してよかったが,治療 に対する懸念を抱く】という経過を経て,[自分の体験 を活かして,後に続く女性のことを考える]ことや[症 状に折り合いをつけながら,客観的に更年期をとらえ なおす]ことで,【更年期を受け入れ,経験を生かす】 に到達していた。  しかし,この流れは,皆が一様に順次に辿っていく と言うわけではなく,そこには個人差が大きかった。 更年期や婦人科に対するとらえ方や,更には自分では どうしようもない状況は一人ひとり違っていて,体の 違和感に気づいてから突破口が見つかるまでの期間も, 相談する相手や症状が出たタイミングなどによって異 なっていた。突破口が見つかってから婦人科受診に至 るまでも婦人科受診へのためらいや時間的余裕などの 個人的要因が大きく影響していた。また,調査時点で は,まだ【更年期を受け入れ,経験を生かす】に至っ ていない女性もいた。

Ⅴ.考   察

1.更年期の自覚に対するあいまいさ  今回は,10名の日本人女性に対する聞き取りから, 以下のような体の違和感の原因に自分で見当をつけ ていることが示された。《月経周期の変動から,更年 期を考え始める》,《他者と自分の症状を比較し,合致 すると更年期,合致しないと病気と思う》,《原因が 思い当たらず,年齢から更年期を考える》,《症状に ついて集めた情報から,更年期と気づく》《更年期で はないかと,友人やかかりつけ医から指摘される》の 5つの状況については,既存研究(須賀・谷内・石塚, 2011;菅沼・串間・宮里,1999)とほぼ同様の結果が 示された。しかし,《自分自身の経験から,原因の見 当をつける》,《老いの現実に直面したくないため,更 年期ではないと思いこむ》の2つの状況は,既存研究 ではほとんど論じられていない内容であった。多様な 更年期症状を女性自身がどのように経験し,考え,話 すかは,時代や文化によって様々であり,それをどの ようにとらえるかも個人によって異なることが指摘 されている。(Lock, 1995/2005, p.4, p.17)。更年期症状 の認知はその人の住む社会や時代によって多様であり, その人自身の経験と老いに対する受け入れや加齢に対 する女性自身の価値観によることが示唆された。この ことは,近年の健康志向の高まりや更年期以降の寿命 の延長などが反映されている結果ともいえる。 [自分の体験を生か して、後に続く女性 のことを考える] [症状に折り合いをつ けながら、客観的に 更年期をとらえなお す] 【更年期を受け入れ、 経験を生かす 】 【受診してよかったが、 治 療 に対 す る懸念を 抱く 】 [症状が楽になり、もっ と早く婦人科を受診し たかったと思う] [ホルモン補充療法に 懸念を抱く] 【婦人科を受診できない状況・ 受診したくない気持ちを乗り越 え、受診に踏み切る】 [症状の増悪に伴い、 なんとかしたい気持 ちが高まる] [受診環境が整い、 受診に踏み切る] [子宮がん検診が突 破口となる] [身近な人や医師か らのサポートが、受 診を後押しする] [受診しても自分 の状態を受け止め てもらえずさまよい 続ける] [日々、症状の変 動に翻弄され、受 診への踏ん切りが つかない] 【自分ではどうしようもない状況に取り囲まれる】 [医療機関との物理的条件の不一致から受診をためらう] [家族それぞれが人生の節目を迎え、自分の体を気にかけていられない] 【婦人科受診や更年期にためらいつつ他者からの影響を受ける 】 [経験や先入観から婦人科受診をためらう] [身近な女性から更年期や婦人科受診のとらえ方に影響を受ける] 【日々、症状に翻弄されながら、 突破口が見つからず悶々とする】 【辛さを分かち合える理解者を求める 】 [ 受診す る こ と で 気持ち が ス ッ キ リ す る ] 図1 更年期症状で婦人科を受診した女性の経過

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うに,更年期の情報源は身近な女性が多く,それは 既存研究(宮本・岩崎・細貝他,2002, pp.53-54;上田, 2008, p.61;吉留・江月・後藤他,2003, p.305)でも指 摘されており,今回の結果でも女性が所属する環境に よって情報が偏ることが確認できた。さらに,身近な 女性は情報源となるばかりでなく,女性自身の更年期 や婦人科受診に関するとらえ方にも影響を与えている ことが示唆され,婦人科を受診した女性たちの正しい 知識を身近な女性に伝えることで,情報が普及してい く可能性もあることが解った。  近年,ヘルスリテラシーという概念が重視され, WHOでは「ヘルスリテラシーは,良い健康を維持促 進するために情報へアクセスし,理解し,活用する動 機付けと能力を決定する認知的,社会的スキルを意 味する(大竹・池崎・山崎,2004, p.72)」と定義されて いる。最近ではインターネットの普及によって,いわ ゆる「井戸端会議」以外に,知識を入手する手段は増 えてきており,更に,更年期の正確な知識の普及と啓 発活動を行う団体も複数存在する。そのような団体を 紹介することも更年期症状に悩む女性のヘルスリテラ シー活用になる。今回の結果では,更年期を正しく認 知する情報は,まだまだ十分とは言えず,今後一層の 工夫が望まれる。  本研究から得られたその他の新たな知見では,[子 宮がん検診が突破口となる]のサブカテゴリーで表わ され,子宮がん検診が婦人科を受診のきっかけになっ ていることであった。子宮がん検診時に医師と実際に 話をし,更年期の相談ができそうかどうか様子を窺が っていたり,子宮がん検診を受けた際に婦人科医に直 接相談を持ちかけることを行っていた。このことから 子宮がん検診の案内は今日では日本全国の女性に届く ため,その案内送付に,更年期に関する情報提供を行 うこともひとつの知識普及の手段になり得るといえる。  以上のことから,更年期女性が自ら必要なセルフケ ア行動を選択し,活用していくためには,誰もが簡単 に必要な情報が入手できる仕組みづくりと,婦人科医 師・看護師・助産師が身近な存在として支援できるネ ットワークや更年期医療に理解と関心のある医療関係 者の増加が求められている。 2.自覚するだけでは更年期医療を享受できない  必ずしも更年期症状を自覚した女性たちが全員,更 で片付けてはいけないと用心する》のコードに表され るように,自分でコントロールしてゆく前に,更年期 症状と病気との鑑別が必要と言える。  これまでの報告では,自分が更年期にあるという自 覚を持つ女性が受診行動をとって,自覚を持つことが 受診行動に関連していることが報告されてきた(浅川 ・遠藤・山口,2010, pp.75-76)。しかし,本研究では《老 いの現実に直面したくないため,更年期ではないと思 いこむ》のコードに表されるように,更年期の自覚を 持っていても,老いに対する受け入れや加齢に対する 女性自身の価値観によって,更年期医療にたどり着か ない人がいることが示唆された。さらに,[家族それ ぞれが人生の節目を迎え,自分の体を気にかけていら れない]というサブカテゴリーに表わされる,更年期 の女性特有の自分を優先できない状況が受診を阻んで いることは,既存研究(三羽・有川・岡安他,2003)と 同様の結果であった。  更に,前述のように婦人科受診の動機は,[症状の 増悪に伴い,なんとかしたい気持ちが高まる]のサブ カテゴリーに表される症状の増悪であることが示され た。受診環境が整い,身近な人や医師からのサポート を受け,更年期医療にたどり着く女性以外に,切羽詰 まった状態で婦人科を受診するこのような女性もいる。 精神科医である松井(1997, p.53)は,女性は状況適応 能力が高く,状況を変えようと努力するよりは,我慢 して何とか役割をこなそうとする方に傾きがちで,我 慢の限界に達するまでは,その女性の適応性が高いた めにそれでうまくいってしまうことを指摘している。 本研究の参加者は,更年期医療の享受を望んでいるも のの,婦人科を受診したくない気持ちも抱えつつ,自 分を優先できない状況の中で,松井の見解のとおり, 症状が増悪するまで我慢している人たちであった。そ してさらに,[医療機関との物理的不一致から受診を ためらう]に示されるように,自宅からの距離や診療 時間の不一致により,医療機関への簡単なアクセスが できない場合の実情も示された。 3.更年期医療を受けた女性たちが求めていること  本研究でインタビューを行った女性はさまざまな過 程を経て,最終的に更年期医療にたどり着いた女性 たちであった。その結果,インタビュー時には《信じ られないくらい体が軽くなり,スッキリする》,《症状

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更年期症状で婦人科を受診している女性の体験 が全くなくなるわけではなかったが,和らぐ》のコー ドで表わされるように,症状の自覚に個人差はあるも のの,比較的症状が落ち着いている女性たちであった。 しかし,本研究より更年期症状で悩む女性たちが医療 にたどり着き,症状が落ち着くと,それで全てが解決 されるわけではない場合もあった。女性たちは,[受 診することで気持ちがスッキリする],[症状が楽にな り,もっと早く受診したかったと思う]と喜びを語る 一方で,《確かな情報がなく,ホルモン補充療法にな じめない》,《人とは違うホルモン補充療法を受けると いう孤独を感じる》,《ホルモン補充療法をいつまで続 けていくのか危惧する》で表されたように,症状が落 ち着いてもなお,治療や将来への不安を抱いているこ とが明らかとなった。Benedict(1967/1972, p.259)は, 日本人は他人の判断を基準にして自己の行動の方針を 決めやすい特徴を指摘している。更年期の女性も治療 によって症状が落ち着いてくると,まわりと違うこと をしている不安定さから「長くは続けたくない」とい う気持ちが顕在化してくる。更年期症状で悩む女性た ちが,どうしたら更年期医療にたどり着けるかという ことと同時に,せっかくたどり着いた対処法をどのよ うに受け入れ,いつまで継続していくのか,先を見通 せる支援も必要とされている。  また,今回の結果で《更年期ではないかと,友人や かかりつけ医から指摘される》,《一歩踏み出す力とな る医療者や友人からの後押し》,《友人や同年代の女性 が多く受診している安心感》からは,身近な女性が自 分と同じように行動していることに対して安心感を抱 き,その人たちの言葉によって婦人科受診にも踏み切 れることが明らかとなった。そして,[受診すること で気持ちがスッキリする]のサブカテゴリーには,《医 師が自分の理解者だと感じる》というコードが含まれ る。このことは,更年期症状で悩む女性たちが症状を 改善することを望んでいることはもちろんのこと,そ れに加えて自分の状況に関する理解者を求めているこ とを明瞭に示している。  以上のことは,Lehmann(1993/1995, p.127)やCohen (2003/2005)が述べている女性特有のコミュニケーシ ョンの特徴や共感力に通じる。相手の立場に立ち,相 手の思いや感情を想像する能力に優れていると,相互 扶助的な共同体を築いたり,おしゃべりを通じて利益 を得たりするだけでなく,うわさ話にも参加する。社 会集団の中で情報を得る一番の方法はおしゃべりの輪 の中に入ることだとCohen(2003/2005, p.225-p.226)も 指摘しており,今回の女性たちにもグループに所属し, 健康維持に必要な情報を得ると同時に,共感し合うこ とで安心感を得ていることは前述の通りといえる。  一方で松井(1997, p.227)は,問題が出現した時,昔 は親族や近隣のネットワークが作動し,知恵や労力を 出し合って支援したが,今では,親族ネットワークは 両親と同胞という範囲に狭小化しており,受容能力・ 問題解決能力は極端に低下していると述べている。核 家族や地縁のつながりが少なくなった現状では,今日, 広まりつつある更年期女性同士のピアカウンセリング やセルフ・ヘルプグループが求められている。さらに, [自分の体験を活かして,後に続く女性のことを考え る]のサブカテゴリーが見出されたことも,それらの 裏付けであると考えられる。また,同年代の女性同士 だけでなく,次の世代に健康情報が自然と共有されて いる点にも注目し,女性の特徴を踏まえた正しい知識 普及の工夫が今後一層望まれる。  本研究の限界は,一か所の診療所でしかも女性医師 による特定の診療機関を受診している更年期女性に限 定した結果であること,さらに参加者の職業や地域特 性,社会的背景についても考慮できていないことであ り,今後,多面的な研究を重ねてゆくことが必要であ る。

Ⅵ.結   論

 更年期症状で婦人科を受診した女性の体験を詳細 に知ることを目的に,研究参加者10名の逐語録を分 析した結果,7つのカテゴリーと18のサブカテゴリー, 51のコードが抽出された。更年期女性は,普段の生活 の中での経験や身近な人の影響から【婦人科受診や更 年期にためらいつつ他者からの影響を受ける】体験を して,【自分ではどうしようもない状況に取り囲まれ る】状況に陥り,【日々,症状に翻弄されながら,突破 口が見つからず悶々とする】日々を送る。やがて,【婦 人科を受診できない状況・受診したくない気持ちを乗 り越え,受診に踏み切る】。そして,婦人科を【受診 してよかったが,治療に対する懸念を抱く】体験を経 て,【更年期を受け入れ,経験を生かす】に至っていた。 そして悶々と過ごす日々の中で,更年期女性は,【辛 さを分かち合える理解者を求める】気持ちを抱くとい う過程が見えてきた。

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加いただき,時間を割いて御自身の更年期の体験をあ りのままに語っていただきました10名の女性へ心よ り感謝と御礼を申し上げます。  また本研究へのご理解をいただき,快く研究フィー ルドを提供して下さいました施設長,ならびに研究へ の御配慮をして下さいましたスタッフの皆様へ心より 感謝と御礼申し上げます。 文 献 浅川真由美,遠藤由美子,山口咲奈枝(2010).更年期症 状に対する受診行動の関連要因に関する検討.北日本 看護学会誌,12(2),69-79. 飯岡由紀子(2010).更年期女性が体験する心身の変化と それに対する対処.日本女性心身医学会雑誌,15(2), 237-247. Lehmann, W.E. (1993)/新田健一訳(1995).アダム・コン プレックス̶自己発見のための男性心理学.東京:勁 草書房. Lock, M.M. (1995)/江口重幸,山村宣子,北中淳子訳 (2005).更年期̶日本女性が語るローカルバイオロ ジー.東京:みすず書房. 松井律子(1997).男医にはわからないこと.東京:三五館. 宮本真澄,岩崎訓子,細貝恵美子,土屋充子,交野好子 (2002).更年期の受け止め方と対処行動̶更年期症状 自覚群と無自覚群の比較検討̶.日本看護学会論文集 母性看護,33,52-54. 三羽良枝,有川はるみ,岡安伊津子,坂田玲子,中山久美 に考え,何を求めているか.日本更年期医学会雑誌, 11(1),78-88. 日本産科婦人科学会(2003).産科婦人科用語集・用語解 説集 改訂新版.東京:金原出版. 大竹聡子,池崎澄江,山崎喜比古(2004).健康教育にお けるヘルスリテラシーの概念と応用.日本健康教育雑 誌,12(2),70-78. Benedict, R. (1967)/長谷川松次(1972).菊と刀̶定訳. 256,東京:社会思想社. 佐藤珠美,竹ノ上ケイ子,堀口和子(2004).広島県の一 地域に生活する女性の更年期体験̶1970∼1980年代 に更年期を過ごしたグループへの面接調査から̶.母 性衛生,45(1),50-57. Cohen, S.B. (2003)/三宅真砂子訳(2005).共感する女脳, システム化する男脳.東京:日本放送出版協会. 須賀万智,谷内麻子,石塚文平(2011).地域在住女性に おける更年期自覚と更年期症状.日本女性医学学会雑 誌,19(1),25-29. 菅沼ひろ子,串間秀子,宮里和子(1999).更年期女性 の健康意識と心身不調の自覚症状.日本助産学会誌, 12(3),192-195. 上田真寿美(2008).更年期女性の望む健康支援とその情 報収集行動に関する研究.母性衛生,49(1),57-64. 吉留厚子,江月優子,後藤由美,富安俊子(2003).成人 女性の更年期についての知識や情報および更年期のと らえ方.母性衛生,44(2),300-306.

参照

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