J. Jpn. Acad. Mid., Vol. 16, No. 1, pp. 5-14, 2002. 8
原
著
病 院 勤 務 助 産 師 の キ ャ リア 開 発 に 関 す る研 究
― 能力開発 に焦点を当てて
―
Studies
on
the
career
development
of
midwives
working
in
hospitals
•\
A
focus
on
their
studies
and
the
development
of
their
capabilities•\
木
村
千
里 (Chisato KIMURA) *1
松
岡
恵
(Megumi MATSUOKA)*1
平
澤
美恵子
(Mieko
HIRASAWA)
*2
熊
澤
美奈好
(Minako
KUMAZAWA)
*3
佐々木
和
子 (Kazuko SASAKI) *4
要 約 職 場 にお い て 自己 啓 発 の も とに十 分 に能 力 を発 揮 しえた と思 わ れ る助 産 師 の キ ャ リア 開発 過 程 にお け る能 力 開 発 の 内 容 や 方 法 ・時 期 を明 らか にす る 目的 で,本 研 究 を行 った 。 そ の 結 果,助 産 師 の能 力 開 発 の 内容 や 方 法 ・時 期 とし て,以 下 の10項 目が 抽 出 さ れ た。 (1)実 務 の 基 本 を習 得 す る こ とに よ り得 た仕 事 に対 す る 自信 (2)成 長 の き っ か け とな る 良 い先 輩 ・上 司 との 出会 い (3)責 任 者 や 担 当者 な どの権 限 の委 譲 (4)院 内 外研 修 に よ る そ れ まで の学 び の保 証 (5)業 務 の 改 善 や 仕 事 の追 求 (6)院 外 ネ ッ トワー キ ン グ活 動 (7)教 育 ・指 導 的 な役 割 の習 得 (8)活 動 の場 を変 え た こ とに よっ て知 っ た新 た な業 務 の意 味 (9)ラ イ フ イベ ン トの ク リア*1東 京 医 科歯 科 大学 大 学 院 (Graduate School Tokyo Medical and Dental University) *2日 本 赤 十字 看 護大 学 (Japanese Red Cross College of Nursing)
*3亀 田医 療技 術 専 門学 校 (Kameda Institute of Nursing and Advanced Practice) *4国 立 看 護大 学 校 (National College of Nursing)
2001年8月21日 受 付2002年4月4日 採 用
病 院勤 務 助 産師 の キ ャ リア 開発 に関 す る研 究 (10)管 理 者 と して の役 割 へ の適 応 この こ とか ら助 産 師 の能 力 開 発 を促 す た め に,個 々 の助 産 師 の キ ャ リア ・ニ ー ズ を も とに 管理 者 や 組 織 が課 題 や 機 会 を提 供 す る こ との必 要 性 が示 唆 され た 。 キ ー ワー ド 助 産 師,病 院,キ ャ リア 開発,能 力 開 発,キ ャ リア各 期 の発 達 課 題 Abstract
The current studies were carried out with the objective of clarifying the contents, metho-dology and the term during which midwifery capabilities are developed during the career development of a midwife, the capabilities obtained as a result of personal independent learn-ing and development at the workplace through individual independent effort. The following were categorized and are summarily reported as follows :
(1) Confidence in working ability was established through the learning of basic principles through the actual practice of the work involved.
(2) Contact with effective superiors and senior peers triggered personal growth.
(3) The transfer of rights and responsibilities to oneself in order to take charge of tasks and shoulder the responsibilities on hand.
(4) Through work and research both inside and outside the hospital, to gain a clear under-standing of what had been learned.
(5) The ability to improve routines and the pursuit of all round work practices. (6) Activities of networking outside the hospital.
(7) Learning the role of the educating of and directing of other midwives.
(8) Comprehension of the significance of the tasks in hand through the transfer of the scene of activity.
(9) Coping with and overcoming everyday events in areas affecting midwifery. (10) Adjusting to the role of an administrator.
From these results, we were able to realize the necessity of promoting the development of midwives through the provision of, by management and organizations, problems and opportu-nities to meet the career requirements of the respective midwives.
Key Words midwives, hospitals, career development, development of capabilities, the developmental tasks of the respective levels of their careers
Iは じ め に 今 日の病 院 勤 務 助 産 師 の現 任 教 育 は,看 護 部 の 卒 後 教 育 の 目標 に照 ら し た看 護 全 般 の 院 内 教 育 で 行 わ れ て い る。 また,職 務 に必 要 な能 力 の 維 持 や 向上 ・改 善 を 図 る 目的 と して行 わ れ る職 場 内 の教 育 は,仕 事 を通 じ て上 司 か ら職 場内 教育(On the Job Training,OJT)に よ っ て指 導 を受 け る方 略 が主 体 とな っ て い る。 した が っ て,助 産 師 独 自 の 現 任 教 育 の 多 くは職 場 内 の 勉 強 会 や病 院 外 の研 修 な どに ゆ だ ね られ,系 統 立 っ た教 育 を受 け る機 会 が 少 な い 実 状 に あ る。 そ こで,専 門 職 と して助 産 師 が職 業 上 の キ ャ リア 開 発 を 図 る に は,自 己啓 発 が重 要 と考 え られ る。 しか し,現 状 で は,病 院 勤 務 の 中 堅 助 産 師 は,自 己 啓 発 を十 分 に行 えて い な い(松 岡他,1996)。 一 方,企 業 人 が成 長 して い く 時期 に は 「キ ャ リア 初 期 」 と 「大 き な仕 事 を任 さ れ た 時期 」 が あ り,企 業 人 の能 力 開発 の 「適 齢 期 」 を とら え て教 育 を実 施 す る と効 果 的 で あ る とい わ れ て い る(桐 村,1996)。 助 産 師 の キ ャ リア 開 発 にお い て も,多 くの 助 産 師 が 共 通 して 成 長 した と 考 え る時 期 や そ の契 機 とな る 出来 事 が あ ろ う と推 察 され,そ れ が 明 らか に な る こ とは,個 々 の助 産 6 日本助 産 学会 誌 第16巻 第1号(2002.8)
病 院勤 務 助産 師 の キ ャ リア開 発 に関 す る研 究 師 に 必 要 と され る能 力 の育 成 に 向 け て どの よ うな 教 育 や働 きか けが 必 要 か を知 るた め の基 礎 資料 と な る。 そ こで 本 研 究 で は,職 場 に お い て 自己啓 発 の も と に十 分 に能 力 を発 揮 しつ つ仕 事 を継 続 して い る 助 産 師 の キ ャ リア開 発 過 程 に着 目 し,各 人 の能 力 開 発 の 内 容 や 方 法 ・時 期 を明 らか に し,そ れ らに 共 通 す る能 力 開発 の要 因 を集 約 す る こ とに よ って, 現任 教 育 へ の示 唆 を得 る こ とを 目 的 に した。 用 語 の 定 義 キ ャ リア開 発:個 々 の助 産 師 が 自己 の責 任 で社 会 の ニ ー ズや 個 人 の能 力 お よ び生 活(ラ イ フ サ イ クル)に 応 じて,仕 事 の あ り方 や進 め 方 を計 画 し,そ の 目標 達 成 に必 要 な能 力 の 向上 に取 り組 む こ と。 能 力 開 発:助 産 師 が 仕 事 に関 連 した実 践 能 力 を高 め る た め に計 画,実 践 した学 習 経 験 で あ り,そ の こ とに よ っ て助 産 師 と して,あ る い は管 理 職 とし て在 職 中 に本 人 が 成 長 感 ・職 務 充 実 感 ・能 力 発 揮 感 ・心 理 的 成 功 感 を もつ こ とが で きた状 態 。 II研 究 方 法 1.対 象 同 質対 象 選 択 と し,対 象 を決 定 す る手 順 と して 以 下 の(1)の 条 件 の い ず れ か に該 当 し,(2)の 条 件 を満 た す こ とを選 択 基 準 と した 。 (1)研 究 者 各 々 が,同 僚 ・先 輩 ・後 輩 ・教 え子 な ど,実 際 に助 産 師 として の 活 動 内 容 を知 って い る もの の 中 か ら職 場 で 自己 啓 発 の も とに能 力 を十 分 に発 揮 しつ つ 仕事 を継 続 して い る と考 え られ る助 産 師 を挙 げ た 。 そ の 具体 的 条 件 として,以 下 の① ∼ ④ の条 件 の い ず れ か に該 当 す る もの とした 。 ① 非 常 に意 欲 的 で あ り,か つ建 設 的 な意 見 を もち, 職 場 の改 革 の推 進 役 で あ る こ と。 ② 院 外 の全 国 的規 模 で の学 会,研 修 会,職 能 グ ル ー プ の メ ンバ ー で あ る こ と。 ③ 看 護 や 助 産 学 に関 す る専 門雑 誌 や 学会 誌,ニ ュ ー ス レ ター な どに,積 極 的,か つ 定期 的 に 投稿 して い る こ と。 ④ 職 場 に お け る管 理 的 役 割,も し くは教 育 ・指 導 的 役 割 を経 験 し て い る こ と。 そ れ らの 助 産 師 に関 す る情 報 を研 究 グル ー プ 内 で 持 ち 寄 り,な ぜ 対 象 と した い の か を相 互 に説 明 し,研 究 グル ー プ 内 で 同意 の得 られ た もの と した 。 (2)対 象 の 年齢 は,キ ャ リア の発 達 段 階 的 ア プ ロ ー チ(Schein,1978)を 参 考 に し た。 す な わ ち, 新 従 業 員 は 仕事 を通 して 自己 認 識 を獲 得 し,よ り 明 白 な職 業 上 の 自己 イ メー ジ ー 自覚 さ れ た才 能 と 能 力,自 覚 され た 動 機 と欲 求,自 覚 さ れ た 態度 と 価 値 ― を開発 す るが,こ れ は助 産 師 に も該 当 す る 内容 で あ る。 これ を踏 ま えて 対 象 の 年 齢 を,助 産 師 が 自己 の 才能 や能 力,動 機 や 欲 求,態 度 や価 値 を認 識 で き,職 業 的成 長 を客 観 的 に振 り返 り,あ る程 度 統 合 で きて い る と考 え られ る35歳 以 上60歳 未 満 と した。 以 上 の対 象 選 択 基 準 を満 た し,か つ研 究 協 力 の 承 諾 が 得 られ た病 院 勤 務 助 産 師16名 を今 回 の 研 究 対 象 と した。 2.デ ー タ収 集 期 間 平 成9年4月 上 旬 ∼8月 下 旬 。 3.デ ー タ収 集 1)方 法 半 構 成 的 面 接 法 で 行 った 。 面 接 は約1時 間 を予 定 し,プ ロ トコー ル を作 成 し て2事 例 に 予備 調 査 を行 い,内 容 の 一 部 修 正 を した う え で,研 究 者1 人 につ き2∼4名 の 対 象 者 の イ ン タ ビュ ー を担 当 す るか た ちで,計5名 の 研 究 者 で面 接 を行 った 。 面 接 内 容 は,職 業 選 択 の 動 機(看 護 師 に な った 動 機,助 産 師 に な っ た動 機),在 職 中 に本 人 自 身 が 成 長 した と考 え て い る時 期(入 職 後 の勤 続 年 数)と 内 容,職 場 で の 立 場 が 変 化 した と きの意 識 や 役 割 の と ら え方(昇 進 や 教 育 的 立 場 を 含 む), 仕 事 の 特 性 に対 す る認 識(助 産 師 と して ど うあ り た い か),人 間 関 係(管 理 者,上 司,同 僚 な ど), プ ラス にな った 人 との 出 会 い,職 場 以 外 の助 産 師 との 交 流,家 庭 と仕 事 の 調 整,自 由時 間,リ フ レ ッ シ ュす る方 法 で あ った 。 2)倫 理 的 配 慮 対 象 者 に は書 面 と口頭 で 研 究 の主 旨 と概 要 の 説 明 を行 い,回 答 の 拒 否 や 面 接 中 の 録 音 の 中 止,逐 語 録 か ら 内 容 除 去 が で き る こ と を 保 証 し た 。 ま た,録 音 内容 の 秘 密 保 持 や,プ ラ イバ シー を保 持 日本 助産 学 会誌 第16巻 第1号(2002.8) 7
病院 勤 務助 産 師 の キ ャ リア 開発 に関 す る研 究 し,デ ー タ は研 究 目 的以 外 に使 用 し な い こ と を保 証 した。 4.分 析 分 析 は,逐 語 録 の 中 か ら対 象 者 の 成 長 感 ・職 務 充 実感 ・能 力 発 揮 感 ・心 理 的成 功 感 を表 す句 ・文 章 を抽 出 した 。 それ を入 職 後 の 経 験 年 数 に合 わせ て事 例 ご とに経 時 的 に 図式 化 した 。 それ らの句 ・ 文章 を共 通 す る テ ー マ で分 類 し,研 究 者 間 で見 直 した 。 III結 果 1.対 象 の 概 要 平 均 年 齢 は44.3歳(37歳 ∼58歳),既 婚 者 は10 人 で全 員 に子 ど もが お り,未 婚 者 は6人 で あ った。 助 産 師 として の経 験 年 数 は,平 均19.3年(15∼33 年),う ち准 看 護 師 と して の 勤 務 経 験 者 は2名 で, 経験 年 数 は平 均6.0年(2∼10年),看 護 師 と し て の勤 務経 験 者 は5名 で,経 験 年 数 は平 均3.3年(2 ∼7 .5年)で あった。職位 は師 長以上 が9人,主 任 ・係 長 が3人,ス タ ッ フが4人 で あ った 。 2.能 力 開 発 に有 効 な事 柄 とそ の 内 容(表1) 逐 語 録 か ら研 究 対 象 者 が 能 力 開発 に有 効 で あ っ た と考 えて い た 事 柄 は10項 目 で あ り,そ の 内 容 は 以 下 の とお りで あ った 。 1)実 務 の基 本 を習 得 す る こ とに よ り得 た仕 事 に 対 す る 自信(7名) 勤 務 して い た 病 院 の 職 務 規 律 や実 務 到 達 基 準 を 目標 に―通 りの 仕 事 を覚 え る こ と,多 くの症 例 か ら学 ぶ こ と,実 践 を重 ね る こ と,必 要 とす る仕 事 は何 で も一 生 懸 命 や る こ とな どに よ り,職 務充 実 感 や 仕 事 に対 す る 自信 を得 て い た。 2)成 長 の き っか け と な る良 い先 輩 ・上 司 との 出 会 い(9名) 理 解 あ る医 長 の 支持 や 管 理 者 の支 援 の ほ か,乳 房 ケ ア な どそ の領 域 の権 威 者 との 出会 い,先 輩 か ら知 識 や 技 術,新 しい ケ ア を取 り入 れ る と きの行 動 の と り方 な ど,共 に働 く中 で 教 え て も らっ た こ とな どか ら職 務 充 実 感 や 成 長感 を味 わ う こ とが で きて いた 。 これ らの充 実感 を伴 う実 践 の経 験 に よ り停 滞 を乗 り切 り,新 しい ス テ ップへ の契 機 に し て い た 。 また,対 象 者 が 得 て い た 上 司 や 先 輩 か ら の サ ポ ー トの 内 容 をみ る と,「 仕 事 の 進 め 方 や 内 容 に つ い て の 説 明 ・教 示 」,「結 果 の評 価 」,「役 割 モ デ ル」 な ど 「管 理 者 行 動 的 機 能 」 が 多 く,相 談 役 や 精 神 的 支 え,信 頼 に 関 す る機 能 で あ る 「情 緒 的 機 能 」 は比 較 的 少 な か った 。 3)責 任 者 や担 当 者 な どの権 限 の 委 譲(3名) 夜 勤 リー ダ ー や 夜 間 の 師長 代 行 業 務,上 司 や 医 師 か ら業 務 を任 され る な ど責 任 を伴 う仕 事 を体 験 して い た 。 また,助 産 師 外 来 の担 当 や 指 導 業 務 な ど担 当 者 や 責 任 者 に な る こ とで,権 限 を委 譲 さ れ て い た 。 これ らの経 験 が 自己 啓 発 の 機 会 に な り, 助 産 師 とし て の責 務 や 業 務 基 準 を 理 解 す る こ とに つ な が っ て い た。 4)院 内 外 研 修 に よ るそ れ ま での 学 び の 保 証(4 名) 対 象 者 は,看 護 教 育 大 学 校 ・看 護 大 学 ・厚 生 省 ・国立 研 究 機 関 な どの研 修 に参 加 して い た 。 こ れ らは 現 任 教 育 の一 環 と し て行 わ れ,施 設 派 遣 や 自助 努 力 に よ っ て各 自参 加 して い た。 仕 事 を離 れ て の 卒後 教 育 は それ まで の 自己 の学 び の再 確 認 や 保 証 を得 る場 とな り,時 期 を得 た 効 果 的 な 教 育 で あ っ た と受 け止 め て い た 。 実 践 を経 た上 で の この よ うな研 修 や 教 育 は,助 産 師 と して楽 し く,成 長 感 や 充 実 感 を味 わ っ て い た 。 5)業 務 の 改 善 や 仕 事 の 追 求(3名) ケ ア 改 善 に向 け て の勉 強会 に参 加 して業 務 を工 夫 した り,外 来 勤 務 を一 人 で 試行 錯 誤 しな が ら仕 事 を追 求 し くこ とに よ り学 習 意 欲 が 高 ま り,妊 産 婦 の ケ ア に コ ミ ッ トして い く こ とが で きて い た 。 6)院 外 ネ ッ トワー キ ン グ活 動(3名) 県 の看 護 協 会 の 役 割 の任 を受 け た り助 産 師 ネ ッ トワ ー クグ ル ー プ の仕 事 に よ り,地 域 の 同職 種 者 や 消 費 者 との 交 流 を通 して,視 野 を拡 大 し,自 ら の能 力 を開 発 し て い た。 7)教 育 ・指 導 的 な役 割 の 習 得(5名) 学 生 指 導 や 後 輩 の 指 導 の ほ か,看 護 学校 や 助 産 師 学 校 教 員 として,ま た 臨 床 指 導 者 と して 看 護 学 校 や 助 産 師 学 校 講義 を担 当 し て い た。 これ ら の教 育 や 指 導 を通 し て,教 え る こ とは学 ぶ こ とで あ る との 意 義 を感 じ,教 育 を 真 剣 に考 え 自己研 鑽 を し て い た。 この 指 導 的 役 割 に対 して は喜 び や 満 足 感 を感 じて い た 。 8 日本 助産 学 会 誌 第16巻 第1号(2002.8)
病院勤務助産師のキャリア開発 に関する研究 表1能 力開 発 に有効 な事 柄 とそ の内容 8)活 動 の 場 を変 え た こ とに よ っ て知 っ た新 た な 業 務 の 意 味(7名) 勤 務 病 院 か ら他 の病 院 に,病 院 か ら助 産 院 に, 助 産 院 か ら病 院 に と常 に 問題 意 識 を もっ て勤 務 場 所 や活 動 の 場 を変 え て,変 化 を通 して新 しい 学 び や 新 た な 自己 の 課 題 を追 求 して い た。 9)ラ イ フ イ ベ ン トの ク リア(2名) 結 婚 ・出産 ・育 児 を通 して 安 定 感 や充 実 感 を も ち,近 隣 との ネ ッ トワー クの 広 が りを 得 て いた 。 10)管 理 者 と して の 役 割 へ の 適 応(14名) 産(婦 人)科 病 棟 師 長 ・一 般 病 棟 師 長 ・訪 問 看 護 室 師 長 ・産(婦 人)科 病 棟 主 任(係 長 ・主 査)・ 一 般 病棟 主 任 へ の 昇 格 後,数 々 の 試 行 錯 誤 を経 て 日本 助 産学 会 誌 第16巻 第1号(2002.8) 9
病 院 勤務 助 産 師 の キ ャ リア 開発 に 関す る研 究 実 務 の 基 本 を 習 得 す る こ と に よ り得 た仕 事 に対 す る 自信(1.57∼4.20年) 成 長 の き っか け と な る良 い先 輩 ・上 司 と の出 会 い(2.56∼7.00年) 責 任 者 や担 当 者 な ど の権 限 の委 譲(3.67∼7,33年) 院 内 外研 修 に よ る それ ま で の学 び の保 証(4.75∼5.75年) 業 務 の 改善 や仕 事 の 追 求(6.33∼13.33年) 院 外 ネ ッ トワー キ ング活 動(7.00∼9.67年) 教 育 ・指 導 的 な 役割 の 習 得(7.40∼13.25年) 活 動 の場 を変 え た こ と に よ って知 った新 た な業 務 の 意 味(10.43∼13.40年) ラ イ フ イ ベ ン トの ク リ ア (14.50∼16.00年) 管 理 者 と して の役 割 へ の 適 応(16,43∼18.31年) 図1能 力 開発 に有 効 な事柄 とそ の時期 管 理 者 と して の 役 割 に適 応 で き て い た 。 思考 の 中 核 は 発 想 の 転 換 で あ り,場 に対 応 した発 想 に よ っ て 管理 者 として の 役 割 を理 解 し,充 実感 や 成 長 感 を得 て い た 。 3.能 力 開 発 に有 効 な 事 柄 とその 時 期(図1) 対 象 者 が 能 力 開 発 に有 効 で あ っ た と考 えて いた 事 柄 が み られ た 時期 は,お お むね 「キ ャ リア7年 ごろ まで 」,「キ ャ リア7∼14年 ごろ まで 」,「キ ャ リア14年 以 降 」 の3つ の 時 期 に分 類 で きた 。 1)キ ャ リア7年 ごろ まで の 能 力開 発 に有 効 な 事 柄 ① 実 務 の基 本 を習 得 す る こ とに よ り得 た仕 事 に対 す る 自信 ー キ ャ リア1.57∼4.20年 ② 成 長 の きっ か け とな る良 い先 輩 ・上 司 との 出会 い ー キ ャ リア2.56∼7 .00年 ③ 責 任 者 や 担 当 者 な どの 権 限 の 委 譲 ―キ ャ リア 3.67∼7.33年 ④ 院 内外 研 修 に よ るそ れ まで の 学 び の保 証 ― キ ャ リア4.75∼5,75年 2)キ ャ リア7∼14年 ごろ まで の 能 力開 発 に有 効 な事 柄 ⑤ 業 務 の 改 善 や 仕 事 の 追 求 ― キ ャ リ ア6.33∼ 13.33年 ⑥ 院 外 ネ ッ トワ ー キ ン グ活 動 ― キ ャ リ ア7.00∼ 9.67年 ⑦ 教 育 ・指 導 的 な 役 割 の 習 得 ― キ ャ リ ア7.40∼ 13.25年 ⑧ 活 動 の場 を変 え た こ とに よ って 知 っ た新 た な 業 務 の意 味 一 キ ャ リア10.43∼13.40年 3)キ ャ リア14年 以 降 の能 力 開 発 に有 効 な 事柄 ⑨ ラ イ フ イ ベ ン トの ク リ ア ー キ ャ リ ア14,50∼ 16.00年 ⑩ 管 理 者 と して の 役 割 へ の適 応 一 キ ャ リ ア16.43 ∼18 .31年 IV考 察 1.能 力 開 発 に有 効 な事 柄 とそ の 内 容 ・時 期 1)キ ャ リア7年 ごろ ま で の 能 力 開 発 に有 効 な 事 柄 対 象 者 は,最 初 に基 本 的 訓 練 を終 え て実 務 の 基 本 を習 得 し,業 務 の遂 行 が で き るメ ンバ ー とな り, 入職 後 最 初 の 組 織 的社 会 化 とい う課 題 を ク リア し, それ を能 力 開 発 と と らえ て い た 。 これ は,自 立 し た助 産 師 と し て業 務 の遂 行 が で き る メ ンバ ー に な る とい う組 織 側 か ら の期 待 と,自 己 の欲 求 とが 一 致 して い た か らで あ る と考 え られ る。 この よ うな 実 務 の習 得 を主体 と した キ ャ リア初 期 の発 達 課 題 は,一 般 職 に お い て は,Schein(1978)やKatz 10 日本 助産 学 会誌 第16巻 第1号(2002.8)
病院勤務助産師のキャ リア開発に関す る研究 (1980)に よ っ て も明 示 され,一 方,看 護 師 を対 象 と したSovie(1982)や 小 林 ら(2001)の 研 究 に よ っ て も,業 務 を覚 えて い くこ とが 自分 の能 力 を 自覚 す る こ と に つ なが る,と 同様 の主 張 が な さ れ て い る。 この こ とか らキ ャ リア の初 期 に あ る助 産 師 に,最 初 に業 務 を体 験 す る こ とか ら学 び,業 務 を覚 え,そ れ を振 り返 る作 業 を積 み重 ね られ る よ う な学 習 体 験 を させ る こ とが 重 要 で あ る とい う こ とが 示 唆 さ れ た。 次 に,キ ャ リア初 期 の職 業 的発 達 の大 切 な 要 因 と な る役 割 モ デ ル と出会 い,適 切 な助 言 や支 援 を 得 て,彼 らか ら助 産 師 と して の理 念 や行 動 を学 び なが ら業 務 を遂 行 し,責 任 を全 うす る こ とが で き て い た。 そ の よ うな上 司 や 先輩 か ら受 けた サ ポ ー トの機 能 は,管 理 者 的 行 動 機能 が 多 く,情 緒 的機 能 は比 較 的 少 な か った 。 この 結 果 は,キ ャ リア ・ ア ップ や キ ャ リア ・サ クセ ス に メ ン タ リング が 関 与 す る とい う点 で は,看 護 職 を対 象 と した研 究 結 果(小 野,2000)や 一 般 職 を対 象 と した 調査 結果 (日 本 経 営 協 会,1993)と 一 致 す る。 しか し,一 般 職 に お い て は,女 性 は主 に メ ンタ リング の保 護 機 能(仕 事 上 の サ ポ ー トを提 供 して くれ る)や カ ウ ンセ リン グ機 能(キ ャ リア 上 の悩 み を親 身 に 聞 き,話 を して くれ る)を 多 く受 けて お り(日 本 経 営 協 会,1993),こ の 点 が,看 護 職 を対 象 と した 本 研 究 や 小 野(2000)の 調 査 結 果 とは,若 干 異 な っ て い た 。 この こ とか ら看 護職 な ど比 較 的 専 門 性 が 高 い とみ な され る職 種 は,管 理 者 的 行 動 機 能 が 主 体 の メ ンタ リング を受 け る こ とが 多 い の が 特 徴 で は な い か と推 察 され た。以 上 の 結 果 か ら,助 産 師 の 能 力 開 発 の た め に組 織 側 の努 力 と して,師 長 ・主 任 ・教 育 委 員 ・看 護 教 育 副 師 長 な どの メ ン タ ー シ ップ ・プ リセ プ ター シ ッ プの 支 援 体 制 を整 備,強 化 す る こ とが 重 要 で あ る と考 え られ た 。 こ の こ と は,上 泉(1998)の 主 張 とも 一致 して いた。 さ らに,対 象 者 は責 任 者 や 担 当 者 とな り権 限 を 委 譲 さ れ,そ の業 務 実 践 や 効 果 的 な職務 遂 行 か ら 心 理 的 に達 成 感 を得 て,成 功体 験 を繰 り返 しな が ら 自己 の 能 力 を伸 ば して い っ た 。 この よ う に心 理 的達 成 感 や 成 功 感 が 自 己 の能 力 の 自覚 や 肯 定 的評 価 とな り,キ ャ リア発 達 の 重 要 な 要 素 で あ る とい う こ と は,Hall(1976)に よ っ て も述 べ られ て い る。 この こ と か ら助 産 師 の 能 力 開 発 の た め に は,助 産 師 自身 が キ ャ リア 目標 を もつ こ と と,管 理 者 が 個 々 の 助 産 師 の キ ャ リア ・ニ ー ズ を把 握 し,そ れ に応 じた課 題 を双 方 で 設 定 した上 で 役 割 を与 え,心 理 的 達 成 感 や 成 功 感 に つ な が る 体 験 を させ る こ とが大 切 で あ る と思 わ れ た 。 最 後 に,対 象者 は,院 内 外 の 研 修 へ の参 加 に よ っ て 自己 の キ ャ リア を振 り返 った り実 績 を判 定 し, そ の後 の 方 向性 を模 索 し,さ らに成 長 す る きっ か け をつ か ん で い た 。 院 内 外研 修 に よ っ て 自 身 の 実 績 や歩 み を振 り返 り,キ ャ リア の棚 卸 し作 業 を行 う こ とは キ ャ リア の テ ー マ を知 る手 段 とな り(福 井,1998),同 時 に,多 様 な 価 値 観 との 交 流 は, 外部 の新 鮮 な 空気 を取 り込 ん で 職 場 以 外 で 成 長 の き っか け を得 る機 会 で あ る(桐 村,1996)。 こ の こ とか ら助 産 師 の能 力 開発 の た め に は,助 産 師 個 人 が キ ャ リア ・ニ ー ズ に 応 じて 院 内 外 研 修 に積 極 的 に参加 し,組 織 側 はそ の た め の サ ポ ー ト ・シ ス テ ム を長 期 的 ・系 統 的 に整 理 して い く こ とが 必 須 で あ る と考 え られ た 。 2)キ ャ リァ7∼14年 ご ろ まで の 能 力 開 発 に有 効 な 事柄 この 時期 は,中 堅 助 産 師 と して 仕 事 上 で の高 い 専 門性 と役割 を担 い,同 時 に個 人 の 関 心 は,組 織 的 社 会化 か ら組 織 に お け る 自己 の 役 割 や 課 題 を 自 覚 しな が ら専 門性 を深 め る こ とに移行 して い た。 す な わ ち,業 務 や 仕事 を深 め た り,実 践 か ら少 し 離 れ た教 育 ・指 導 的 役 割 に移行 し,助 産 師 と して の キ ャ リア を深 め た り,分 化 させ る こ と に よ っ て,専 門 性 や ア イ デ ンテ ィテ ィ を確 立 す る時 期 と な って い た。 この よ うな助 産 師 の 能 力 開 発 の 内容 は,Schein(1978)やKatz(1980)が 示 し た キ ャ リア 中 期 にお け る発 達 課 題 と も一 致 して い た 。 Schein(1978)は,組 織 の3次 元 モ デ ル に お い て キ ャ リア 発 達 を説 明 して い るが,キ ャ リア 中 期 の 助 産 師 の能 力 開発 を そ れ に 当 て は め て 考 え る と,業 務 の 改 善 や 仕 事 を追 求 した の は専 門 性 を深 め た こ とに な り(中 心 性 の 次 元),院 外 ネ ッ トワ ー キ ン グ活 動 に よ っ て広 い視 野 を育 成 した り,教 育 ・指 導 的 役 割 を担 った り,活 動 の場 を変 え た こ と は職 能 を拡 大 した こ と(階 層 ・職 能 の 次 元)に 該 当 す る。 特 に,活 動 の場 の変 更 は,一 般 企 業 人 で は見 られ ない(桐 村,1996)能 力 開 発 で あ っ た が,助 産 師 に とっ て は大 きな成 長 の き っか け と な 日本 助 産学 会 誌 第16巻 第1号(2002.8) 11
病 院勤 務 助産 師 の キ ャ リア開発 に関 す る研 究 っ て い た 。 ま た,そ の時 期 は,大 学 病 院 看 護 管理 者 を対 象 と した研 究(長 友 他,1995)の 移 動(設 置 主 体 の 変 更)の 時 期(26∼35歳)と は ほ ぼ一 致 して い た 。 活 動 の場 の変 更(転 職 ・移 動)の 規 定 要 因 は 「専 門 職 」,「自 己実 現 や 自己 向 上 」 で あ る とい う報 告(鈴 木,1996)か ら考 え る と,専 門 的 志 向 や 自己 実 現 ・自己 向上 の欲 求 な ど,個 人 的 要 因 が 活動 の場 の 変 更 に影 響 す る と考 え られ た 。 い ず れ に して も,本 研 究 の対 象者 の な か で,活 動 の 場 を変 更 した 者 は そ れ を 能 力 開 発 と と ら え て お り,移 動 や 離 転 職 の職 業 的 適 応 や職 業 的 発 達 へ の 肯 定 的 影 響 を示 唆 した 研 究 結 果(Super,1957, 松 本 他,1995,平 野,1999)と 一 致 して いた 。 これ らの こ とか ら,こ の時 期 の助 産 師 の 能 力 開 発 を促 す た め に は,上 記 の よ うな キ ャ リアの 分 化 を効 果 的 に経 過 させ る こ とが 必 要 で あ る。 その 具 体 策 と して,助 産 師 自身 が 助 産 師 と して ど う あ り た い か,ど うい う方 向 性 で 成 長 ・発 展 した い の か を認 識 す る こ と,管 理 者 は個 々 の助 産 師 に 確認 し なが ら適 切 な 時期 に新 しい 仕 事 の機 会 を提 供 す る な ど の ジ ョブ ・チ ェ ン ジ を 促 す こ と が 考 え られ る。 また,移 動 や 離職 な ど の活 動 の場 の変 更 に際 して も,そ れ を助 産 師 の 能 力 開 発 に結 び付 け るた め に,個 々 の助 産 師 と管 理 者 が 活 動 の場 の変 更 を 目的 的 な もの に で き る よ う に,活 動 の場 の変 更 の 理 由 を確 認 しあ う こ とが 重 要 で あ る。 さ らに,助 産 師 間 ネ ッ トワ ー キ ング や施 設 間 ネ ッ トワー キ ン グ を活 性 化 し,助 産 師 が そ れ ら を通 して,そ の後 の 目標 に応 じた情 報 収 集 が で き る よ うに して,建 設 的 な移 動 とな る よ うな努 力 が 必 要 で あ る と考 え られ た 。 3)キ ャ リア14年 以 降 の 能 力 開 発 に有 効 な事 柄 対 象 者 は,こ の 時 期 に多 くの 者 が 管 理 者 役 割 へ の 移行 を体 験 して い た。 そ の適 応 ス タ イル は,職 場 の 問 題 を発 見 し た うえ で 自己 の 役 割 を 自覚 し, ス トレス を感 じなが ら も数 々 の 試 行 錯 誤 や 発 想 を 転 換 す る こ とに よ っ て ス トレス を克 服 し,ス タ ッ フの信 頼 を得 な が ら昇進 とい うジ ョブ ・チ ェ ンジ, ジ ョブ ・ロー テ ー シ ョン に う ま く適 応 す る とい う もの で あ っ た 。 結 果 的 に,そ れ らが 自己 の 成 長 感 や 充 実 感 とな って い た 。 管 理 者 役 割 へ の 移 行 は, ス トレ スな どの危 機 的状 態 で あ る とい う視 点 か ら, Schein(1978)も そ れ を キ ャ リ ア 中 期 の 危 機 で あ る と述 べ て い る。 また,Nicholson(1984,1988) は,管 理 者 へ の昇 進 を含 む仕 事 上 の 変 化 に対 す る 適 応 様 式 を分 類 し たwork role transitionの 理 論 に お い て,役 割 要 求(仕 事 の 自 由 裁 量 と目新 し さ)と 適 応 様 式(個 人 的 変 化 と役 割 革 新)と の関 係 や 個 人 的傾 向 と適 応 様 式(個 人 的変 化 と役 割 革 新)と の関 係 を提 示 した 。Nicholson(1984,1988) の 分 類 に よ る と,対 象 者 の ほ とん どが,適 応 の プ ロセ ス を通 して 高 い個 人 的変 化 と高 い役 割 革新 を 体験 して お り,こ れ は 「探 究 型 」 の適 応 に属 して い た 。 本 研 究 の対 象 者 が 職 場 にお い て 自 己啓 発 の も とに十 分 に能 力 を発 揮 しえ た と思 わ れ る助 産 師 で あ った こ とか ら考 え る と当然 の 結 果 で あ る と思 わ れ た。 しか し,管 理 者 役 割 へ の適 応 に際 して は, 個 々 の助 産 師 が か な りの ス トレス を感 じつ つ,そ の 多 くが 自助 努 力 に よ っ て役 割 に適 応 で き て い る の が 実状 で あ っ た。 この こ とか ら助 産 師 が 管 理 者 役 割 に 円 滑 に適 応 す るた め に は,助 産 部 門 の 管 理 職 に は他 部 門 とは異 な る特 殊 性 もあ る こ と を考 慮 した う えで,管 理 的 役 割 を新 た な課 題 とす る助 産 師 を タ ー ゲ ッ トに した教 育 プ ロ グ ラ ム を検 討 す る 必 要 が あ る と考 え られ た 。 また,こ の 時 期 に対 象 者 は,結 婚 や 妊 娠 ・出 産 ・育 児 とい う ラ イ フ ・タ ス ク を う ま くク リア し て い た。 す な わ ち,家 庭 と地 域 社 会 に しっ か り と 根 を下 ろ して,仕 事 に お い て も生 活 構 造 を脅 か さ な い程 度 にバ ラ ンス を取 りつ つ 前 進 し,仕 事 や 家 庭 ・地 域 生 活 の 両 方 に お い て,自 己 の成 長 感 や充 実 感 が得 られ て いた 。 この結 果 は,既 婚 で家 庭 が あ る こ との 仕 事 へ の 肯 定 的 影 響 を述 べ た 田 尾 ら (1997>の 報 告 と も一 致 した。 この時 期 の発 達課 題 につ い て は,Levinson(1978)やSchein(1978) も仕 事 と家庭 生 活 のバ ラ ンス と して強 調 して い る。 本 研 究 の対 象 者 の よ う に ラ イ フ ・タ ス ク を ク リア し,仕 事 に お い て も家 庭 ・地 域 生 活 に お い て も安 定 し て い られ るの は,各 々 の領 域 で の成 長 欲 求 が 強 い こ とや,各 々 へ のバ ラ ンス の 取 り方 の巧 妙 さ な ど個 人 的要 因 の 関 与 が 考 え られ た 。 この 点 に関 して は,高 石 ら(1992)も 「仕事 を通 じて 自己 実 現 を望 ん で い る成 長 欲 求 の 高 い者 は,心 理 的 に は ワ ー ク(仕 事),ノ ン ワー ク(仕 事 以 外 の もの) へ の 関 与 を別 領 域 と して と ら え,一 方 へ の 関 与 が 他 方 へ の関 与 に 影 響 す る こ と は な い」 と 「成 長 欲 12 日本助 産 学会 誌 第16巻 第1号(2002.8)
病 院 勤務 助 産師 のキ ャ リア開 発 に関 す る研 究 求 」 や 「バ ラ ン ス の取 り方 」 の影 響 が 大 きい こ と を示 唆 して い る。 この結 果 か ら,既 婚 者 や 妊 娠 ・ 出 産 ・育 児 期 に あ る助 産 師 の キ ャ リア ・ニ ー ズ の 特 殊 性 の有 無 や 内容 を知 り,個 別 の 確 認 をす る必 要 性,希 望 時 に は ジ ョブ ・チ ェ ン ジや ジ ョブ ・ロ ー テー シ ョ ンな どの選 択 肢 も検 討 して 本 人 と相 談 の うえ,実 施 す る必 要性 が あ る と考 え られ た 。 2.研 究の 限界 と今 後 の 課 題 本 研 究 の対 象 集 団 は,年 齢 の 幅 が 大 きい た め, 個 人 の 成 長 に対 す る時代 背 景,社 会 的 要 因 の 影 響 を除 去 で きな か った 。 そ の た め,現 在 の 新 卒助 産 師 が この 結 果 を一般 化 す るた め に は,年 齢 層 を限 定 した う えで 前 向 きの デザ イ ン を検 討 す る必 要 が あ る と考 え られ る。 V結 論 助 産 師 の 現 任 教育 の ヒ ン トを得 るた め に,職 場 に お い て 自己啓 発 の も とに十 分 に能力 を発揮 し え た と思 わ れ る助 産 師 の キ ャ リア 開 発過 程 にお け る 能 力 開発 の 内容 ・方 法 と時 期 を調 査 した 。 そ の 結 果 は,以 下 に示 した よ う に,助 産 師 の 能力 開 発 に 有 効 な事 柄 と して10項 目が抽 出 され,そ れ らの事 柄 が み ら れ た 時 期 は,キ ャ リア 年 数 に応 じ て, 「キ ャ リア7年 ご ろ まで 」,「キ ャ リ ア7∼14年 ご ろ まで」,「キ ャ リア14年 以 降 」 の3つ の時 期 に分 類 で きた。 1)キ ャ リァ7年 ご ろ までの 能 力 開発 に有 効 な事 柄 ① 実 務 の基 本 を習 得 す る こ とに よ り得 た仕 事 に対 す る 自信 ② 成 長 の き っか け とな る良 い先 輩 ・上 司 との 出会 い ③ 責 任 者 や 担 当 者 な どの 権 限 の委 譲 ④ 院 内外 研 修 に よ る それ まで の学 び の保 証 2)キ ャ リア7∼14年 ご ろ まで の 能 力開 発 に有 効 な事 柄 ⑤ 業 務 の改 善 や 仕 事 の 追 求 ⑥ 院 外 ネ ッ トワー キ ング 活 動 ⑦ 教 育 ・指 導 的 な役 割 の 習 得 ⑧ 活 動 の 場 を変 え た こ とに よ って 知 った 新 た な 業 務 の 意 味 3)キ ャ リア14年 以 降 の 能 力 開 発 に有 効 な 事柄 ⑨ ラ イ フ イベ ン トの ク リア ⑩ 管 理 者 と して の役 割 へ の適 応 謝辞 本 研究 を行 うに あた り,快 くイ ン タ ビュ ー に応 じ て くだ さった助産 師の皆様 に深 く感謝 いた します。 本 研究 の内容 の一部 は,第12回 日本 助 産 学 会 に お い て発 表 した。 引用文献
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