高
齢
社会
と
向
か
い
合 う伝 統
産業
に
つ
い て
和 服の文 様 制 作にみ る高 齢 者と伝 統工芸
Traditional Crafts lndustries Confronted with Advanced Age Society
服 部 等 作 神戸芸 術工科 大 学
1 ,
は じめに高 齢
者
が 文 化 を支えて いる側虧は無 視できない,,例 え ば、極まっ た 腕 と技 を もつ 重要無形 文化財 技 術 保持 者、 いわ ゆ る人 間国宝の指定 は、
無 形の 技術、
そ して 文化が途 絶 えることがないよ うに文化 継 承の た めの 制 度でもある。我が 国の 固 有 文 化であ る和服におい て も同様の状況 が あ る。 和服 が 完成に至 る まで には、 その周辺で様々 な材 料、 工程 は もとよ り、 生地の文 様制 作 から染 色 ま で磨きのか か っ た技 術 を さ さえる人々 の 基 盤があ り
、
世界 的にも特長 あ る 文 化 と なっ て いる。 この 伝統 的な 和 服の 文様づ くり を 支 える型 紙 か ら染 色に わ た る 職 人一
製 作技 術 を調査 した,,限定した分 野 に もか かわ らず、
昭和30
年 代におい て6
名いた人 聞 国 宝保
持 者 もすで にな くなり、
産 業に従事 す る後継 職 人 自体が高齢 をむか え、
その延 長 線 上に 日本の伝統文 化 の将来 性が予 見できる。
本稿で は
、
和 服のデ ザ イン の原 点と なっ て いる 型紙 製作を支え る環 境 を述べ ることによ り高 齢 問題 と向か い合う伝 統と産 業、そ して そ のサクセス フ ルエー
ジン グ (幸 福 な加 齢 ) を 考えた い。2 .
型 地 紙一
型紙一
型染め、 その生 産江 戸初 期の職人 達 が狩野吉信 (
1552
〜
1640
年 )によ る重要文化 財紙 本 着色
職 人尽 絵 (川越 市 喜多院蔵品 ) に描かれて いる。 そこで は、
型 紙 を 彫 る初老の 男 性、
糊 置 きをする男 性、
染め と乾燥を する若い女 性、 なら び に手伝 う子 供 が表さ れ、
活発に仕 事 をして い る様 子がく
み 取 れ る。 i二図1
]当 時 は
、
衣類の 中心は、染 織 技 術によ る和服であり、
当然 産 業の 中核 をになっ て い た。 さ らに、
型紙 製 作は、今
日の半導
体の 原 版と同様に基 幹技 術となっ ていたた め、
所属す る紀 州 藩 (注1
)にとっ ては、
技 術の転 出 はもとよ り門外 不 出の技 術であ り、
型紙関連の職 人 達 の育 成は 重要であっ た。 和服における型 染 め 技 術の歴 史 は、7
世 紀 頃の唐 を 経 由 し遠 くササン朝ペ ル シャよ り輸入 品 と し て纐 纈、
臈纈 など型 を使っ た染 色品 が正倉院 宝 物のなかに残 るc,
Hattori
Tosaku
Kobe Design University
図
1
職人 尽 絵 (川 越市 喜 多 院 蔵品 ) (右 :突き彫 り、
左 :道具 彫 リー
鮫 小 紋) 図2
型紙の例 室町 か ら桃 山時代に か け て辻が花、
江 戸時 代に は 江 戸 小紋 型、
鹿の 子絞 り、
友 褝 染め を代 衣とする完成 度 の高い型染めの手 法と して完 成した、, 極めて細 か な文 様の小 紋の場 合、
あ た かも無地の よ うに見え、
洗練された江戸小紋の粋が 出現 した。 江戸 後 期以降は文 様の 大小によ る 分類か ら、
絹 染め は 小 紋、
木 綿地 を 中 形 と呼ぷ ようにな り、
和服における デ ザ イン の完成 期にむ かっ た、, [図21
江戸小 紋のデ ザ インを
詳
細に見る と、
そ こ に は機械 的 な文 様の反復でない味わい深い微 妙な職 人技が垣間 見 ることがで き、
そこ に人 間 と機 械によ る技の決 定 的 な相 違と風 格が ある, 型紙と型 染め制作は、
江 戸時 代、 各 地に点 在 して い た が、
現 在型紙の生産される地 域は限 られて い る。26
sPEciAL IssuE oF JssD vol.
4 No.
4 1997 デ サ イ ン学研 究 特集号本 調査では職 人 技 術の持ち味 を活 か し た伝 統産 業を 形 成してき た 型紙生 産 地 と して鈴 鹿市 寺 家町
、
白子 町 (三重県 )、 那 覇 市 (沖縄 県 )、 東 京都、
お よ び 型染め と して京 都市、 那 覇 市、 大宜味 村 (沖縄 県 )の 現地調査 をす す めた結 果につ い て 、 全 国の型 紙の一
大生産地 (約
99
%)と して有名
な鈴
鹿市
寺 家町 (二重 県 )の 「 伊 勢型紙」 につ い て、
その 伝 統 技術の 調査 結果の一
部 を 述べ る。 [表1
] 表1
伊勢型 紙の概要 (1992
年調 査 )伊勢
型紙 組合
員 ;総数102
名 (含
む 準組 合員) 型彫り師
:正組合
員 数85
名 (注2
) 内訳、 錐彫 り・
25
名 程、 道具彫 り25
名 程、 彫 り目 (注 染 )50
名 程 (1968
年 調 査では、 型地 紙販売 業 者39
軒型 彫り
師
は約 400
人 以 上 ) 彫 り師
組合員 外:2G
〜
24
名 紙屋 (渋紙) :現在操業 中2
軒 /6
軒 販売 店 (仲買):注 染一7
軒、
着尺一4 〜 5
軒3
,
今日の制 作 技術 今日 に おいて も型 紙製 作に は 多 くの作 業工程、
熟 練 した技 術 者が 座作 業中 心によ り進 め ら れ、
高度に専門 化し様々な 道具が使われて いる、、型紙の 文化に影響 を うけ触発され た欧米の ステ ン シ ル技 術、
さ らにはシル クスク リー
ン技 術、 ひいて は電子回路の基 板 作 成に 至 る技
術の原点 と なっ ている。 現代に おいて和服生 地の文 様 デザインを制 作し、
そ れ を 染 め る までの 工 程 は、
ほ ぼ3
段 階に分 けること が できる。 まず あ らか じめ 決 め られた文 様の デ ザ インを絹 な ど の生地に型染め す る た め、7、8
枚に重 ね た 型 地紙 (い わ ゆ る、
日本古来の 和 紙に柿 渋を塗っ た柿 渋紙 )に刃 物 を 使っ て型 彫 りや穿孔 し文様 製 作により生 地の染色 用の原 版と な る型 紙 を 得る。L
図2
]こ の 型紙 を 和服 生 地の
表
面 にあて、
糊 を置 き、
乾燥 し た後、
生 地を染めて文様 を生 地の 白さで表 す。 そ れ ぞ れ 型 地紙が 型紙、
型染め段 階で は 型紙が出 発点 と なっ ている。 「伊 勢 型 紙」の それぞれの 仕 事に 占め る技 術 者の役 割、年令
を ふく
め た作 業、
工 程の 特 長を 述べ る。3
.
1
型 地 紙 製 作 技 術 型紙の素材となる型地 紙と よ ぶ 渋紙 は、楮 をっ かっ た 日本 伝 統の紙す き製 法による和 紙に柿 渋 を塗布した もの である。 後の 工程に くる高 度な 彫 刻技 術と 共に、
強靭で伸 縮しない 和紙が型紙に か か せない。作 業と工 程 は
、1
) 法 造 り:200〜 50
〔}枚の美濃和 紙 を重 ね て 規格 寸法 に裁 断 する。2
)紙つ け :お き台に3
枚の美 濃 和 紙 を紙の 目に従っ てタテ、 ヨ コ、 タ テ と積 層ベニ ヤ板 上に のせ、
座 りなが ら柿 渋 を手の旋 回によ りく
りか え し塗布 し貼り合わせることに より台紙とす る。3
)乾 燥 ;紙つ けの 終わっ た紙を 桧の 張板に貼り、
天日干しをおこない、
さ らに4
) 室 干 ら し:乾燥 し た 紙 を燻 煙室に いれて、 約1
週間いぶ しつづ けて、
伸 縮 しに くい コ ゲ 茶 色の 型 地 紙とする。 さ らに もう一
度柿 渋に浸 し、
天H
干 し、
室干ら し、
乾燥後の型 地 紙を裁 断刀で付 着し たゴ ミ、
小 石 とりを繰 り返 した あ と、
型 地 紙が完 成 する。 その効 果は、
和 紙の特 性 強化、 長期 保 存が ・∫能、 伸 縮 を 抑え、
染めに狂いが 生 じない型紙になる。6G
歳 以 上の 作 業 者 に よ る作 業が、 ほ とん ど手作 業である。 紙 つ けの 場 合、
座姿 勢を とり上半身
を紙の お き台にむ け、 美 濃和 紙を紙の 目に従っ て縦、
横、
縦、
横 と積 層 状にの せ 、柿 渋 をつ けた刷毛を持っ 上腕 を到 達 範 囲の 限界にまで保 持、
く りか え し和 紙に塗 布し貼 り合わせ 型 地紙と す る 作 業 を す る,
,
「図31
現 在、鈴鹿市におい て操 業 中の紙屋 は、
6
軒 中の2
軒 と存続が危ぶ まれて い る。作 業 環 境と しては 柿 渋によ る臭気、 汚 れ、姿 勢 を考えあわせれ ば、3K
(汚い、 き つ い、
危 険)的環 境 条 件か ら後 継 者の 育 成が困 難と なっ て いる。3
,
2
型 紙 製 作 技 術一
般 的に型彫は、数ミリか ら数セ ンチ租 度に型 紙 師 自 らが調整した彫 刻刀の刃先を、文 様の デ ザイ ン下書 きに従いな が ら型地 紙に彫 刻や穿孔する。
こ の型 彫 り技 術には、
大 きく
4
っ の技 術、
突 き 彫 り、
錐 (きり)彫 り、
道具彫 り、
縞彫 りにわ け られ、
さ らに引 彫 り、.
.
一
枚 突 き を あげることがで き、 他に その仕上げ と して付 帯的 な糸人 れ技 術が あ る。
作 業は
、
5
〜
8
枚の型地 紙を穴 板という高さ約20cm
前後の作 業 台 (寺家の場 合、 沖縄で は倚座作 業が 見 ら れた)に置い て、
現在では直線 や大 きな柄を 彫 る場合 に、
肘は少 し浮 か し小 刃を手 前に 引くように彫る。 作 業 姿 勢の安 定の た めにあ ぐらを かいて右 脚部を机の 外 側に出して座 り、
作 業の た めに視線は、
型 地紙の真上デ ザ イ ン学研究 特 集 号 sPECIAL ISSuEOF JSsD voL
.
4 No,
4 1997 27一
(
1
) 法 づ く り (2
) 紙つ け 図3
型 地 紙に お け る作 業 者 に常 時 お く姿 勢 を とる。精 密 な凵視 作 業のた め作
業台 の 作 業面高さ は235
か ら178cm
と低 く設 定 さ れ、
脊 椎 を前方に著しく
屈曲した猫 背に近いような 拘束された 作 業姿 勢 を とる。
高度 な技 術 を もつ 型 彫の製 作 姿 勢と 道具刀の関係は 密 接である。 最高
の切
れ味
をも
っ た 型 彫 用の道 具刀 は、
特に渋 紙づ く りにより強固 となっ た 型紙の 台紙に 対して意 図 し た文 様の組み合わ せ と最 高の 切れ 味 を もっ て切 り出す 必要がある。 その道 具 類としては、
刃物 とするハ ガ ネ材、
研磨 す る た めの砥 石、
固 定 用の台、
焼 き入れのた めの炭
と油、製
作 を 効 率 的にま た確 実にする ため 定規、
あて場 とよ ぶ製 作 台、 さらに は職人の長い経 験や好み に合わせ て 工夫
さ れ た工 具 類な どの 道 具 箱が横に常 置され、 こ う した絶
え 間 ない改
良と念 入 りな調整をし た道 具 類が、
出来上 が りを左右 すること は述べ るまで もない。 (1
)突き 彫 り 技 術 刃 先 が1 〜 2
ミ リの 刃で手 前 か ら先へ 彫 り刀 を 突 く ようにする突 き彫 り技 術である。 補 強 用に後述する紗 張 りをする事 も多い。 [図4
」 (2
) 道具 彫 り彫 り
師
が 刃 を菱、
花、
扇など の形 に組み合わ せ [作 した 道具刀で文様を 彫 り抜く。文 様 と 多 様 な 形 を 均一
に表 現するよ う道 具刀の研 磨と調 整が型 紙の完成 度 を 左右する。 「図5
] (1)刃先を 浮 か し図 柄 を突き 彫 り操 作 図4
突き彫 リと作 業 姿 勢 (大杉 石 美 氏) (3
) 錐 彫 り 錐 彫 りは、
刃先が半 円 形の彫 刻刀を 型 地 紙に 垂直に たて、
錐を 回 転 させ小 さ な穴を 彫っ てい く 小紋の 技 法で鮫 小 紋、
行儀、
アラレ等の 種 類 が あ るc,
江 戸 小 紋では、 リズ ミカ ル な作 業 (ゴッ ト リ と需 う)で ある。 小紋のな かで もその精 緻さ が 追及される鮫 小紋 の なかに は、 ほ ぼ無 地に近い極 印という約2.5cm
平 方 中に1
,
〔}00
粒の穴を あけた型 紙まである。
単 調 な柄だ け 非 常に高 度 な 技 術 で あ る。 [図61
(1
) 顎で刀 を押下げる操 作 図5
道 具 彫 リと作 業 姿 勢 (中 村 喬 氏 )28 sPEclAL IssuE oF JssD vol
.
4 No.
4 1997 デ ザ イン学 研 究 特 集 号(
1
)刃先を回転 し前 屈 す る 錐 彫 りの姿 勢 図6
錐 彫 りと作 業 姿 勢 (六谷博臣 氏 ) 図8
糸 入 れの技 術 (4
) 縞 彫 リ定 規と彫 刻 刀で均 等の縞 柄 を 彫る
。
単 純 作業の よう で、一
本の縞を 彫 るの に同じ所を 二度 続 けて小 刀でな ぞ るため、
極めて 正確な技 術が 必要で ある。1cm
幅に 最 高で11
本の縞 を彫 る神 技のよ うな 型 紙が ある。
こ の 彫 りには、 切っ た際の弛みを補 強す る た めの後 述 す る 糸人れ が必 要である。 「図7
] (5
) 糸入 れ技術糸入 れ とは
、
渋 紙に花の 花弁 模 様 を彫れば真んiliの 花弁
が脱 落して模 様ができ な くな り 「型彫.
1
工程か ら 必然 的に模 様が脱 落 する、
,そこ で花弁
を彫 らない釣 り と 呼 ぶっ な ぎ を 要 所 につ けrtiの花弁 を持た せる 。 特に 縞 彫 りや、彫 り残しの少
ない型紙には型 染 めする時に 動 きやすく
不 安定 な た めこ の技 術が必要 と な る「図81
。 糸入 れの場 合 古 くは、型 地 紙の段 階 で2
枚には が し、
重 ねて彫 っ て か ら、
そ の間に絹糸 を 張 り、
ズレないよ うに柿 渋で張 り合わせ念入 り な 作 業であっ た。しか し大正
10
年
頃に絹の網 を彫刻 した型 紙に か ぶ 図7
縞彫 り (引 彫 ) と作 業 姿 勢 (故 児玉博 氏 ) せ、
漆で固定し、 補 強 する紗張 り技 術が開発され、
今 日では すべ て紗 を張 り付け ている。 現 在で はこ の糸入 れ 技術
が出来る 人 はも ういな くなっ た、, いっ ぽう沖縄の 「紅型 」 は あ えて釣 り を 模様に加 え た デ ザ イ ン によっ て効 果 を 出 して いる、,3
,
3
型染め工 程型 紙に糊 置 きすることに より染め上 げ
、
最終的に和 服の反物 となる。
その 流れには糸目糊置 き、
伏 せ 糊置 き、
地 染め、
蒸し・
水洗、
地 入 れ、
色挿 し、
蒸 し・
ゴ ム水 洗、 湯の し、
彩 色、
地直 し、
付帯 加工 といっ た過 程 を経て完成にいた る。
「
図91
こ の過 程で は
、
最 終の 型染めの た め、
経験に頼っ た 微 妙な色の 調合、
糊と 型 紙の 洗 浄の た め水や蒸気と いっ た染 色工程の作 業 環 境は決 して、
快 適な作業環境 とはいえ ず、 また糊 置 きの作 業 も中腰で 繰 り返 さ れ る た め、
高 齢 者にはきつ い作 業 となっ てい る。
(1
) 型 紙へ の糊 置き 図9
型染め作 業デザ イン学 研 究 特 集 号 sPEclAL IssuE OF JssD vol
.
4 No,
4 1997 294 .文
様 制作
と高
齢 化の問題石
油
ショ ック以前
の型紙
生産の最盛期の頃は、
80
歳 位まで作 業した と さ れ るが、
今日 では和服産 業自体が 低迷 して いることに加えて、
そこ に従事す る 人 々 も、
一
一
番若い技 術 者ですで に44
歳、 一
番 高齢技 術 者で71
歳 と高 齢 化が す す んでい る (注3
)。
まず、
型地 紙の製 作におけ る高 齢化の問題 として、
全 国 的に紙 す き と和紙 生 産 従事 者が高齢化 してい る現 状 が あ る。 その た め、
伊勢の 白 子、
寺 家の 型紙生 産に おいては、
型紙 製作
の 基本
と な る 型 地紙の 品質
確 保の ため美 濃 和紙の原材 料=
楮 を産 地 よ り契 約 購入 し原 料 確 保 し、
基 本 素 材の備 蓄 を 進め ている。 つ ぎに、
型紙の型彫り師 (4
名 )の 労働 時 間 を調 査 した結果、
6
日/週、
仕 事9
時 問 / 日 で あ る。伊
勢の 型紙 師の 場合は、
現在職 人組 合に属す るのが最盛期に1
,
000
人 以上いたのが現 在102
名と減 少 しつ づけ、
経 験 年 数30
か ら42
年 を 経て、 その ほ と ん どが50
歳 以 上、
熟 練 者になる ほ ど限精 疲 労や腰 痛に悩 まさ れてい る。
仕事
に 見合 う
所 得が合致 しない点 も見逃 せ ない。 後継
希望 を す る若い人 が 修業に入 っ ても収入 と熟練 作 業 とのか ね合いか らほと ん どが脱 落 する。
ま た 型紙の補 強に用い られるつ な ぎ技 術は、当該 技 術 者がすで に いな く、 技 術は、
紗 張 りに技 術 転 移し、存
続しなく
なっ て い る。最後に型染め工 程でも
、
3K
職場のイ メー
ジが強 く 新しい 工場へ の脱 皮に目が向 けられて いる。 京 都の一
工場の染 色 部 門は、 いわ ゆ る3K
職場の特長 が随所に見 ること が出来る。
ある染 色工場の場合は、
和 服の不振に より一
度 廃業に追い込 まれ、 その後、 伝 統の 技 術 を もつ 中高 年 者に再 出 発し た会 社は、
当然高 齢化 が す す んで いる 現状であっ た。5 ,
高 齢 問題 と向か い合
う伝統産 業の今
後5
.
1
高 齢 問題 と向かい合 う伝統産 業高
齢 者にとっ て、 なにより健 康が かけがい の ない こ と は述べ るまでもない。
同様の こと が 伝 統 産 業につ い ても言 うことが できる。産 業 として健 全な体
質、
そのた め伝 統 性の健全・
維 持、 さ らには脱 皮 あ るいは 革 新が必 要 な 場 合 もある。 そ の結 果、 新 陳代 謝が うなが され、
ひ い て は 世 代の 交 代にも結 び 付 く。 本 稿では和 服のデ ザ イン文 様づ く りを さ さえ てきた 型紙 を 中心 とする限られ た分 野につ いて述べ た が、
述 べ てきたよ うな伝 統の技 術が高齢 者によっ て文え られ て い る事 実、
さら にこ の分 野で は間違いな く高齢 化と 需 要低迷によりその 存 続が 困難と なっ て い る、
,
戦 後の 生活における 急 速 な欧 米化によ り和 服の 需 要 は、
日常 使 用する機 会が減 少し、
冠婚葬 祭 や成人 式の 場におい て着用 する位になっ て いる。 こ の和服の衰 退 と と もに 型地 紙、
型紙、
ならび に 型 染めの 生産 地におい て後 継 者不 足が大 きな影 響 を受 け、
確 実にくる 技 術 者の高齢問題に直面 している。 昭 和30
年 代におい て6
名いた人 間 国宝保持 者 もすで にな くな り、
調査 した工場の型染め部 閂におい て は 従業 員 に占め る50
歳以上の比 率が40
%を越 え、 すで に高 齢社 会 (業 種 )に入 っ た とい え る,
、
こ こで産業自体が
直
面 して い るのは、
体 質 的に伝 統 が重 視され、 その た め、 あらゆるもの 、 例と して作 業 姿 勢そ の ものが職 業の要 件となっ て いる傾 向す らみら れ るこ とである,、 これは各種ス ポー
ツ のよう な、 体 技 に関 係する体操、
武道に近い完成されたもの で あ る。 こ のため作 業の基 本と な る姿 勢が、
まず熟練技 術の条 件となる。 茶道、
華道、
書 道 などの 伝統 的 な 世界の 作 法で は体 の 姿 その もの、
動作 その もの が 土 体 で あ る か ら、
姿 勢 の大切なこ と は 他の どの よ う な 修 業にも ま して大 切で あ る。 こ の こと か らも和服にか か わ る 型紙づ くり、
型 紙、
型染 めの伝統のなか で後 継 者 を 寄せ付 け ない ほ ど 完成された姿に なっ て い る。5
.
2
伝統 産業の今 後 今回 調査し たの は伝 統 産 業の ごく一
面にす ぎない が、 新 人が作 家 活 動か ら 入 りやすい陶 芸、 ガラ ス の伝 統.
1/芸分 野 を除い て、
全体で は1
司様の経 過を辿っ て い ると思われる。 いず れにして も新規の需 要 開拓により業 界の活性化の た あのグラ ン ドデ ザイ ンが急 務であり、
そ のた め産 業 の需要掘 り起こ し、 伝 統 技 術の ため 次U11
代の育 成の た め新しい取 り組 み を 取 り上げる 事が出 来 る1,
1
)需 要の拡大 インテ リア分 野 (屏 風、 照明 )に進出(白子、
東京)、、
産 地 デザ イ ンを 積 極 展 開する (沖縄 )、
な ど2
) 生 産 価 格の 引 き 下げ文様パ タ
ー
ン読み 込 み か ら染 色にい た るコ ンピュー
タによる製 造システム の導人、
なら びに生産一
流通 近 代化 (東 京、
京都、
イ タ リア)30 sPEcIAL IssuE oF JssD vol
.
4 No.
4 1997 デザ イン学 研究特集号3
)コ ンピュー
タ 化生産 システムの 確立シ ル クスクリ
ー
ン の 自動走行によ る印刷 技 術が染 色 工場の普及 し は じめ、
生産、 環 境 改 善に直 結 する。 イ タ リアの染色工場で見 受けたシス テ ムと人 間の 役 割 分 担で は、
すな わ ちコ ンピュー
タ制 御された レー
ル上 を任意に走 行 し長 尺布の印刷 位 置 決め す る 型 (シルク ス クリー
ン)に対 して、 作 業者は、
感 性、
経 験と 勘を いか せる色 合わせ、
位置合
わせとい っ た役 割 を持 ち 品 質の鍵 を握る。
これは人間 と 自動化 シ ステム の役 割分 担のデ ザインが 円滑に行な われ 職 人の生きがいにっ な がっ て いると思 う。
L
図10
] 型染め作 業 者と自動 化 (イ タリ ア・RATTI
社) 図10
人 と生産 自動 化の 役 割分担4
)後 継 者、
技 術の育 成主婦 を 中心 とする人を 集 め カ ル チャ
ー
教 室、個 展 発 表会で技 術の普及 を 行 なっ て い る (東 京 )。生 き がいをもっ て伝 統産 業に従 事 する (沖縄 )。
5
)ユー
ザの 伝 統に向かい合 う まな ざし伝 統ヘ ユ
ー
ザ が評 価 する新しい視点 が 必要である。 人間 技 と必 要なコス トを再 評 価 し、 新 しい代 替 技 術、
後 継 者 を と りこんで こ そ和 服、 さらには世界的 な文 化 の保 存と継承可 能となる。
6
.
まとめ生産 者 側のサクセス フ ルエ
ー
ジング を考え た場 合、
一
つ の ヒン トを沖縄県におい て芭蕉命 を 現 在 も織 り続 ける76
歳の平 敏 子さんと話 し合 うな かで得た。沖
縄北 部、 大宣味 村の喜如 嘉 (きじょか ) は、470
名ほ どが 住 む 山岳地帯にありな が ら村の 自慢が 長寿と喜如嘉の 芭 蕉布 (1974
年 国指 定 無形 重要文化 財 )であり、
65
歳 以 上の高 齢 者が103
名、
90
歳 を越 し た人が8
人、 さ ら に は80
、
90
歳 を過 ぎても芭蕉布の生産に携わ り続 け る 人が多い。 こ の事実 は、
高齢社会におい てコ ミュ ニ テー、
そ し て生きがいがあるこ とが サ クセ ス フルエー
ジングの一
つ の条件 で あ るこ と を 如実に示して いるc一
方、
消 費者側の 態 度はどうであろ うか、
効率 的 な 社会面にの み傾 倒して いく、
すな わ ち基本となる伝統 を支え る高齢 者 を簡 単に切 り捨て続け る我々情報 社会 にあ る消費 文化へ の態 度 を見直 すこと が 健 全 な高齢社 会へ の解 決の側面 がある と 結びたい。7 .
謝辞本 稿は
、
伝 統工芸の 世界における 1一
姿勢 研 究の一
環 と して調 査にあ たり、 各地の現 役 技 術者、
お よ び 財 団法 人一
姿 勢 研 究所 から多 大な ご 協 力 をいた だいた、, とりわけ 伊勢型紙 師の大 杉 石美 氏、
(突き彫り)、 中村 喬氏 (道具 彫 り )、
六 谷 博 臣氏 (錐 彫 り )か らは様々 な ご指 摘を、
さ らには、
テキスタイルデザ インの側 面 よ り、
松本美 保子 教 授、 戸 矢崎 満男助教 授 よ り貴重 なご 意 見 をいた だいた。 さ らに本十と 沖 縄 紅 型 との 比 較に は沖縄 県立博物 館、 お よび現地の関係者にご 協 力 をいた だ き 実 現できた。 こ こに 関係 者に本稿 を かり御 礼 申 しあ げる次 第である。8 .
参 考 資 料D
京 都 国立博 物 館編 :染めの型紙、
京 都国立博 物 館、
1968
年2
)山辺知 行 : 日本の美 術7
染、 至文堂
、
朿京、1966
年
9 .
注釈D
伊
勢型紙が よく知られる理由に、
紀 州藩によ る産 業奨 励策と して領 民の生 業を 保 護 した 点 が あ るtt その
た め 「
出
稼ぎ 鑑札を受 け 1通行 手形
1
を入手 し个国 をめぐる行
商
が保護 され た,、加え て徳川吉 宗の代に幕 府と特別の関係が生じ
、
この制度 は.
一
一
層の効果 を あげる,
,
2
)昭和40
年 (1965
)最 盛期に千人以L
、 石 油ショ ックまで寺
家
町内800
軒、 白子 町の ほと ん ど が 型紙の関係
分 野に従 事して いた とされ る,
、
伊勢 白子町の
12
代 を数え る 旧家の 寺 尾 家蔵の古文書の
古
い伝承には、
「 延暦 年 中 (782
〜
806
年 )に 型紙の型売
商
4
名、
承徳 年 中 (【097
〜
1
〔〕99
年 )に20
人、
応 長正和 年 聞 (1311
〜
1317
年 )に50
人に な り云々一
とす る 起 源に遡 る 記 述 が 見 られる,、
3
)1992
年 調 査 デー
タに加 算し た,、
デ ザ イ ン学 研 究 特 集 号 sPECIAL tSSuE OF JssD vol